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特許7155211逆合成開口レーダ装置および信号処理方法
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  • 特許-逆合成開口レーダ装置および信号処理方法 図1
  • 特許-逆合成開口レーダ装置および信号処理方法 図2
  • 特許-逆合成開口レーダ装置および信号処理方法 図3
  • 特許-逆合成開口レーダ装置および信号処理方法 図4
  • 特許-逆合成開口レーダ装置および信号処理方法 図5
  • 特許-逆合成開口レーダ装置および信号処理方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】逆合成開口レーダ装置および信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20221011BHJP
   G01S 13/524 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G01S13/90 164
G01S13/524
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020157845
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051396
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】三上 成
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125749(JP,A)
【文献】特開2009-085743(JP,A)
【文献】特開2008-256409(JP,A)
【文献】特開2000-275332(JP,A)
【文献】特開2001-166034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0346548(US,A1)
【文献】特開2009-257907(JP,A)
【文献】特開2006-349669(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176016(WO,A1)
【文献】特開平11-183606(JP,A)
【文献】特開2000-088955(JP,A)
【文献】特開2009-236720(JP,A)
【文献】特開2001-141821(JP,A)
【文献】特開2018-044888(JP,A)
【文献】古川 英俊 ほか,リサンプリングと短時間フーリエ変換を用いた目標検出,電子情報通信学会2007年総合大会講演論文集 通信1,日本,社団法人電子情報通信学会,2007年03月07日,271~271
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナからレーダ波を放射する送信部と、
前記レーダ波のエコーを含む受信信号を得る受信部と、
前記受信信号から逆合成開口処理により目標を検出する信号処理部と、を具備し、
前記信号処理部は、
前記受信信号をディジタル変換して目標信号を得る受信処理部と、
前記目標の想定速度を予め複数設定し、前記想定速度ごとに前記目標信号をレンジ方向にシフトするシフト処理部と、
前記想定速度ごとにシフトされた目標信号を時間方向に積分する積分処理部と、
前記積分の結果に示されるピークに基づいて目標速度を特定する特定部と、
前記特定された目標速度に基づいて、前記目標信号に対するレンジウォーク補正を行う補正部と、
前記補正された目標信号から前記目標を検出する検出部とを備える、逆合成開口レーダ装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記積分の結果に最も高いピークを与える想定速度を前記目標速度として特定する、請求項1に記載の逆合成開口レーダ装置。
【請求項3】
前記シフト処理部は、前記目標信号のレンジに対するフーリエ変換を逆フーリエ変換して、当該目標信号をレンジ方向にシフトする、請求項1に記載の逆合成開口レーダ装置。
【請求項4】
アンテナと、前記アンテナからレーダ波を放射する送信部と、前記レーダ波のエコーを含む受信信号を得る受信部と、前記受信信号から逆合成開口処理により目標を検出する信号処理部とを具備する逆合成開口レーダ装置の、前記信号処理部における信号処理方法であって、
前記信号処理部が、前記受信信号をディジタル変換して目標信号を得る過程と、
前記信号処理部が、前記目標の想定速度を予め複数設定し、前記想定速度ごとに前記目標信号をレンジ方向にシフトする過程と、
前記信号処理部が、前記想定速度ごとにシフトされた目標信号を時間方向に積分する過程と、
前記信号処理部が、前記積分の結果に示されるピークに基づいて目標速度を特定する過程と、
前記信号処理部が、前記特定された目標速度に基づいて、前記目標信号に対するレンジウォーク補正を行う過程と、
前記信号処理部が、前記補正された目標信号から前記目標を検出する過程とを具備する、信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、逆合成開口レーダ装置および信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse Synthetic Aperture RADAR)に代表される高分解能レーダ(High Resolution RADAR)装置がある。この種のレーダでは、レンジ分解能が高くレンジビンの幅が狭いため、目標が高速で移動する場合にはレンジウォーク損失の発生することが知られている。レンジウォーク損失とは、パルス積分処理の間に目標が複数のレンジビンをまたいで移動してしまうこと(レンジウォーク)で積分数が減少し、検出性能の劣化をもたらす現象である。レンジウォークを補正するための技術もいくつか知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5072694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レンジウォーク損失を回避するための処理として、ストレッチ処理が知られている。ストレッチ処理は、複数のレンジビンから最大値を拾い上げる(ピックアップする)処理である。しかしながら従来の技術では、目標を含まないレンジビンに含まれるノイズの最大値もピックアップされてしまうので、信号対雑音比(S/N)が低下してしまっていた。レンジウォーク損失を回避して、高分解能レーダにおける目標の検出性能を高め得る技術が求められる。
そこで、目的は、検出性能を高めた逆合成開口レーダ装置および信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、レーダ装置は、アンテナと、アンテナからレーダ波を放射する送信部と、レーダ波のエコーを含む受信信号を得る受信部と、受信信号から目標を検出する信号処理部とを具備する。信号処理部は、受信処理部、シフト処理部、積分処理部、特定部、補正部、および検出部を備える。受信処理部は、受信信号をディジタル変換して目標信号を得る。シフト処理部は、目標の想定速度を予め複数設定し、想定速度ごとに目標信号をレンジ方向にシフトする。積分処理部は、シフトされた目標信号を時間方向に積分する。特定部は、積分の結果に示されるピークに基づいて目標速度を特定する。補正部は、特定された目標速度に基づいて、目標信号に対するレンジウォーク補正を行う。検出部は、補正された目標信号から目標を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係わる逆合成開口レーダ装置の一例を示す機能ブロック図である。
図2図2は、信号処理部110の一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、ストレッチ処理について説明するための図である。
図4図4は、積分結果の一例を模式的に示す図である。
図5図5は、或る目標想定速度について得られる積分結果の一例を模式的に示す図である。
図6図6は、図5とは異なる目標想定速度について得られる積分結果の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、実施形態に係わる逆合成開口レーダ装置(以下、レーダ装置)の一例を示す機能ブロック図である。レーダ装置100は、航空機などの移動体に搭載されることができる。レーダ装置100は、アンテナ102、サーキュレータ104、送信部106、受信部108、信号処理部110、記憶部112、および、表示部114を備える。
【0008】
アンテナ102は、レーダ装置100を搭載する移動体の外装などに取り付けられ、電波を送受信する。アンテナ102は、例えば、アレイ状に配列される複数のアンテナ素子を有する、フェーズドアレイアンテナである。
【0009】
送信部106は、レーダ波をサーキュレータ104経由でアンテナ102に送出する。アンテナ102は、送信部106からのレーダ波を空間に放射し、目標から反射されたエコーを含む到来信号を捕捉する。到来信号は、サーキュレータ104経由で受信部108に出力される。
【0010】
受信部108は、到来信号を処理して、エコーを含む受信信号を得る。受信信号は、信号処理装置としての信号処理部110に入力される。信号処理部110は、目標信号から目標を検出して目標画像信号を生成する。目標画像信号は、表示部114に出力される。
【0011】
表示部114は、LCD(Liquid Crystal Display)デバイス、あるいは有機EL(Electro-luminescence)表示デバイス等であり、信号処理部110で生成された目標画像信号を画像化して表示する。
【0012】
記憶部112は、信号処理部110の機能を実現するためのプログラムや各種のデータ、およびパラメータなどを記憶する。記憶部112は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、または、これらの複数が組み合わされたハイブリッド型記憶装置などにより実現される。
【0013】
信号処理部110の機能は、例えば、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが記憶部112に記憶されたプログラムを実行することにより、実現される。信号処理部110の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0014】
図2は、信号処理部110の一例を示す機能ブロック図である。信号処理部110は、実施形態に係わる機能ブロックとして、受信処理部202、シフト処理部204、積分処理部206、目標速度特定部208、補正部210、および、検出部212を備える。
【0015】
受信処理部202は、受信部108からの受信信号をディジタル変換し、ディジタルのI信号およびQ信号(IQデータ)を生成する。IQデータはシフト処理部204、および補正部210に送られる。
【0016】
シフト処理部204は、目標の想定速度を予め複数設定する。そして、それぞれの想定速度に対して式(1)による演算を施し、目標信号をレンジ方向にシフトさせる。
【数1】
【0017】
式(1)の右辺の( )内は、目標信号のレンジxに対するフーリエ変換である。これを(例えば時間tに対して)逆フーリエ変換することにより、左辺に示されるように、レンジにおける目標信号をレンジシフトaだけシフトさせることができる。つまり、目標信号をレンジ方向にシフトするには、フーリエ変換の性質を利用することができる。
【0018】
積分処理部206は、シフト処理部204により想定速度(v1、v2、…、vn)ごとにシフトされた目標信号を、時間方向に積分する。ここでいう積分とはいわゆるドップラ積分であり、高速フーリエ変換(FFT)処理に基づく積分である。目標速度特定部208は、積分処理部206による積分の結果に示されるピークに基づいて、目標速度を特定する。
【0019】
補正部210は、目標速度特定部208により特定された目標速度に基づいて、目標信号に対するレンジウォーク補正を行う。検出部212は、補正部210により補正された目標信号から目標を検出する。
【0020】
ここで、ストレッチ処理について説明する。
図3は、ストレッチ処理について説明するための図である。パルスヒットに対応する時間T1、T2、T3…ごとに、目標が現れる。しかし高分解能レーダではレンジビンが狭いので、目標が高速で移動するとレンジウォークを生じることがある。そこで、隣り合ういくつかのレンジビンをまとめてストレッチ範囲を設定する。ストレッチ範囲は、例えば、目標が積分期間内に移動する範囲として設定される。
【0021】
ストレッチ範囲内で最大値を探し、時間方向に最大値を積分することで、目標信号を漏れなく積分することができる。目標の存在するストレッチ範囲(a)ではこれでよいが、目標の存在しないストレッチ範囲(b)では、ノイズの最大値を探して積分を行うこととなってしまう。このため、積分だけ行う場合には平均化されるのに対して、ノイズのレベルが大きくなる。このことは、積分後のS/Nが、積分だけを行う場合と比べて低下することを意味し、好ましくない。
【0022】
図4図6は、異なる目標想定速度ごとに得られる積分結果の一例を模式的に示す図である。式(1)によるシフト処理を経ていない目標信号を積分すると、その結果として得られるピークはS/N劣化のため顕著でない。
【0023】
図5のように、目標想定速度v1としてシフトされた目標信号の積分結果は、目標がレンジ方向に集約されたことと相俟って、図4と比較して高いピークを示す。さらに、目標想定速度v2としてシフトされた目標信号の積分結果は、図6に示されるように、目標がほぼ同じレンジに現れたことで、最大のピークを示す。
【0024】
この結果に基づいて目標速度特定部208は、目標想定速度v2を目標の速度として特定する。補正部210は、この速度v2に基づいて、目標信号に対するレンジウォーク補正を行う。これにより検出部212は、高いS/Nで目標を検出することができる。
【0025】
以上説明したようにこの実施形態では、目標移動速度を複数想定し、目標信号を距離方向にシフトしながら積分処理を行う。そして、複数の積分結果のうち最大値を得られる目標移動速度の結果を出力するようにした。
【0026】
特に、式(1)を用いることで、目標信号は複素数を用いて、シフト量は実数を用いて計算することができる。よって、積分の方法としてドップラ積分を適用することが可能となる。ドップラ積分を適用できることにより、高分解能レーダにおけるレンジウォーク損失を回避して目標の検出性能を向上させることができる。従って実施形態によれば、検出性能を高めた逆合成開口レーダ装置および信号処理方法を提供することが可能となる。
【0027】
なお、実施形態では、レーダ装置100は航空機に搭載されることを想定した。これに限らず、例えば飛しょう体等の高速の移動体、あるいは、ドローンなどの移動体にレーダ装置100を搭載し、目標画像を得ることも可能である。
【0028】
実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
100…レーダ装置、102…アンテナ、104…サーキュレータ、106…送信部、108…受信部、110…信号処理部、112…記憶部、114…表示部、202…受信処理部、204…シフト処理部、206…積分処理部、208…目標速度特定部、210…補正部、212…検出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6