(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】パレットコンテナ
(51)【国際特許分類】
B65D 19/06 20060101AFI20221011BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B65D19/06
B65D77/04 A
(21)【出願番号】P 2020501286
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2018000356
(87)【国際公開番号】W WO2019011468
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102017006653.1
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591112326
【氏名又は名称】マウザー-ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Mauser-Werke GmbH
【住所又は居所原語表記】Schildgesstrasse 71-163, D-50321 Bruehl, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ヴァイラオホ
【審査官】蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-524611(JP,A)
【文献】特許第2711529(JP,B2)
【文献】米国特許第05678688(US,A)
【文献】特表2015-511913(JP,A)
【文献】国際公開第2004/039691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/06
B65D 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の充填物または流動可能な充填物を保管しかつ搬送するためのパレットコンテナ(10)であって、熱可塑性プラスチックから成る薄壁で剛性の
プラスチックインナコンテナ(16)、該プラスチックインナコンテナ(16)を支持周壁として密に包囲する、交差領域において互いに溶接された水平方向の管棒(18)と鉛直方向の管棒(20)とから成る管格子フレーム(14)、および前記プラスチックインナコンテナ(16)が載置されかつ前記管格子フレーム(14)が固く結合された矩形の底部パレット(12)を備えており、前記
水平方向の管棒(18)および/または前記鉛直方
向の管棒
(20)は、長手方向に見て正方形または丸形の中空断面を
、基本断面として有していると共に、
少なくとも1つの前記水平方向の管棒(18)および/または前記鉛直方向の管棒(20)が、部分的に、
前記基本断面に機械的な変形加工
を施した管断
面を有している、パレットコンテナ(10)において、
少なくとも1つの
前記水平方向
の管棒(18)および/または
前記鉛直方向の管棒
(20)の
前記機械的な変形加工を施した管断面は、互いに溶接された前記水平方向
の管棒(18)および
前記鉛直方向の管棒
(20)の交差領域(26)において
、前記基本断面の高さまたは前記管棒の直径よりも、予め設定可能な距離だけ
大きく形成されてい
る、高く延ばされた背面領域(30)を備えており、
前記機械的な変形加工を施した管断面は、前記高く延ばされた背面領域(30)の範囲において
、三角形の中空断面を有しており、前記高く延ばされた背面領域(30)は
、管棒長手方向に延在する細い背面を有していることを特徴とする、パレットコンテナ(10)。
【請求項2】
前記高く延ばされた背面領域(30)は、前記管棒(18,20)の、前記管格子フレーム(14)に対して外向きまたは内向きの側に配置されている、請求項1記載のパレットコンテナ。
【請求項3】
前記高く延ばされた背面領域(30)は、
前記鉛直方向
の管棒(20)の場合には前記管格子フレーム(14)に対して内向きの側に形成されておりかつ/または
前記水平方向
の管棒(18)の場合には外向きの側に配置されている、請求項1または2記載のパレットコンテナ。
【請求項4】
前記高く延ばされた背面領域(30)は、管棒長手方向において制限された所定の延在長さを有している、請求項1、2または3記載のパレットコンテナ。
【請求項5】
前記高く延ばされた背面領域(30)の、管棒長手方向の前記延在長さは、管棒幅もしくは管棒直径の2倍~10
倍である、請求項
4記載のパレットコンテナ。
【請求項6】
前記基本断面は、正方形の管断面として形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のパレットコンテナ。
【請求項7】
前記高く延ばされた背面領域(30)は、前記交差領域(26)において、前記鉛直方向の管棒(20)のみに形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のパレットコンテナ。
【請求項8】
前記正方形
の管断面を有する前記管棒(18,20)は、0.8mm~1.0mmの壁厚さを有している、請求項
6記載のパレットコンテナ。
【請求項9】
前記正方形
の管断面を有する前記鉛直方向の管棒(20)は、0.8mmの壁厚さを有しており、前記正方形
の管断面を有する前記水平方向の管棒(18)は、0.9mmの壁厚さを有している、請求項
6または8記載のパレットコンテナ。
【請求項10】
前記正方形
の管断面は、対向して位置する平行でまっすぐな2つの側壁と、対向して位置する平行
で曲げられた2つの側壁とを有しており、一方の前記曲げられた側壁は、内側に向かっ
て凹状に形成されており、かつ他方の前記曲げられた側壁は、外側に向かっ
て凸状に形成されている、請求項6
、8および9のいずれか1項記載のパレットコンテナ。
【請求項11】
前
記基本断面は、丸管断面として形成されている、請求項1から5までのいずれか1項または請求項7記載のパレットコンテナ。
【請求項12】
前記三角形の中空断面は、前記高く延ばされた背面領域(30)の範囲において、少なくとも20mmの断面高さを有している、請求項1から11までのいずれか1項記載のパレットコンテナ。
【請求項13】
前記交差領域(26)における前記高く延ばされた背面領域(30)は
、前記管格子フレーム(14)の側壁の領域、すなわち前記管格子フレーム(14)の下から2番目と3番目の前記水平方向の管棒(18)の中央領域において最大の膨らみを備えて構成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のパレットコンテナ。
【請求項14】
請求項6から10または11から13までの
いずれか1項に記載のパレットコンテナ用の格子管フレームの格子管棒における正方形の基本断面から、三角形の中空断面を形成する方法において、
前記管棒の交差領域用の中央の背面部を形成するために、相応に形成されたプレス工具によりプレス圧力が、格子壁の平面に対して平行な方向において、対向して位置する2つの平行な側壁から同時に、基本管断面の所定の領域に加えられることを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記プレス圧力は、対向して位置し平行にまっすぐに延在する前記2つの
平行な側壁に対し、実質的に、前記正方形の基本断面の外側に向かっ
て凸状に曲げられた側壁に続くもしくは隣接する領域もしくは部分のみに加えられる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
対向して位置し平行に延在する前記2つの
平行な側壁に対する前記プレス圧力は、互いに接近運動するプレス工具の、前方が斜めになった先端部が、最終位置において、前記プレス工具の先端部の間にV字形のギャップを生ぜしめ、これにより、前記管棒の変形加工された領域に、管断面高さを高く延ばされた三角形の管横断面が形成されるように、加えられる、請求項14または15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のまたは流動可能な充填物を保管しかつ搬送するためのパレットコンテナであって、熱可塑性プラスチックから成る薄壁のインナコンテナ、プラスチックインナコンテナを支持周壁として密に包囲する、互いに溶接された水平方向の管棒と鉛直方向の管棒とから成る管格子フレーム、およびプラスチックコンテナが載置されかつ管格子フレームが固く結合された矩形の底部パレットを備えた、パレットコンテナに関する。
【0002】
問題点:
化学工業においてパレットコンテナ(慣用の呼称「中型バルクコンテナ」もしくは「IBC」;したがって以下では短縮して「IBC」と言うこともある)は広範にわたり、主に液状の化学物質の搬送に用いられる。これらの化学製品は、大部分が危険な液体充填物として等級付けされている。よってこのような製品を搬送しかつ保管するためには、相応する危険物認可を有する包装容器のみが使用され得る。危険物認可を得るために、パレットコンテナは構成形式試験を受け、様々な負荷状態に関する試験、例えば内部圧力試験、落下試験、積重ね荷重試験、振動テーブル上での振動試験およびその他の多数の試験に合格する必要がある。内部圧力が生じた場合、液体充填物で満たされた立方体形のプラスチックインナコンテナは、その4つの側壁および上底部において広がると共に膨張しようとする。充填されたIBCは、通常例えばトラックに2段重ねされた状態で搬送されるため、下側のIBCは、追加的に上側のIBCの積重ね荷重を運ばねばならない。特に、充填されたIBCをトラック搬送する場合には、-特に劣悪な道程における-搬送衝撃および搬送車両の動きに基づき液体充填物のかなりの打寄せ運動が生じ、これにより常に変化する押圧力がインナコンテナの壁に加えられることになり、この押圧力もやはり、矩形のパレットコンテナの場合には管格子フレームの半径方向の振動を招くと共に、格子管棒の交差箇所の溶接点に対する、引張り荷重/圧縮荷重の交番を伴う動的な連続振動を成すことになる。過剰な荷重が加えられた場合、または比較的長時間にわたり荷重が加えられた後には、管棒に疲れ破損が生じ、交差箇所では溶接点の破断が生じることがある。危険物認可を有するパレットコンテナの場合には、このような破損を減らすための特別な手段が設けられていることが多い。
【0003】
背景技術
刊行物である米国特許第5678688号明細書(=欧州特許出願公開第0734967号明細書)から公知のパレットコンテナでは、鉛直方向および水平方向の管棒が、丸管基本断面から成っており、丸管基本断面は、溶接された交差箇所において強力に押しつぶされており、これによりそこに、交差した管の電気的な抵抗溶接のための4点支持部が得られる。しかしながら、この公知の実施形態における欠点は、管格子フレームの鉛直方向および垂直方向の格子棒の丸管基本断面が、交差箇所の領域においてまさにもっぱら、それぞれ溶接箇所の側においてのみ著しく押し込まれていて、曲げ抵抗モーメントが、他の領域におけるよりも大幅に小さくなっている、という点にある。これに加え、丸管基本断面は交差箇所のすぐ隣において、溶接点に加えられる荷重を軽減するために、同じ凹みに発生する曲げ応力により、さらに深く凹まされておりひいては大幅に弱化されている。
【0004】
国際公開第0189955号から公知のパレットコンテナの場合、管格子フレームの垂直方向および鉛直方向の格子棒は、中空成形材から成り、基本断面としては、正方形の管が考えられる。管格子フレームの搬送耐荷重を向上させると共に、比較的高度な搬送負荷もしくは長時間の振動負荷に対する管格子フレームの抵抗能力を改良するためには、鉛直方向または/および水平方向の管棒が、交差箇所の領域におけるそれらの接触平面内では実質的に加工成形されておらず、管棒はそれぞれ交差箇所もしくは溶接箇所の横隣において、管基本断面に-目標曲げ箇所として-相応する加工成形部を備えており、これらの加工成形部は、溶接箇所からそれぞれ少なくとも管成形材幅の1/10の所定の最低間隔を有している、ということが想定されている。この場合、2つの交差箇所の間の鉛直方向または/および水平方向の管棒に少なくとも2つの加工成形部が設けられていると、管格子フレームの曲げ弾性の向上が達成される。
【0005】
国際公開第2004096660号から公知の別のパレットコンテナでは、2つの交差箇所の間に細長い加工成形部が1つだけ、鉛直方向または/および水平方向の管棒に設けられている。
【0006】
さらに刊行物である欧州特許第2301860号明細書から公知の、正方形管基本断面を備えたパレットコンテナでは、交差箇所から、棒の幅と実質的に同じかまたはそれよりも長い間隔をあけて、複数の凹みもしくは窪みが形成されており、これらの窪みは、棒の、溶接された結合部が配置されている側にのみ形成されている。
【0007】
閉じられた基本断面を備えた台形、丸管または正方形管の格子棒を有する、公知の種々様々なパレットコンテナの構成は全て、格子管棒の基本断面が、溶接点におけるピーク応力軽減のために、溶接点の横隣の所定の箇所において凹まされており、ひいては変形されていない個々の管棒ならびに管格子フレーム全体の壁にも元来存在する剛性が減らされて低下させられる、という共通の欠点を有している。
【0008】
課題:
本発明の根底を成す課題は、パレットコンテナ(IBC)の管格子フレームの剛性を高め、ひいては特に危険な液体充填物に使用する場合に、このような大型コンテナの安全性の向上を保証することにある。
【0009】
解決手段:
この課題は、特許請求項1記載の特別な特徴により解決される。下位請求項に記載の特徴は、本発明によるパレットコンテナの別の有利な構成手段を表している。
【0010】
提案する技術的な教義は、比較的簡単な構造手段により、パレットコンテナの管格子フレームの剛性を高めることができる手段を示すものである。本発明に基づき、少なくとも1つの水平方向および/または鉛直方向の管棒の元々の基本断面が、互いに溶接された水平方向および鉛直方向の管棒の交差領域にわたり予め設定可能な距離だけ、管棒長手方向に延在するように高くされて形成されているもしくは高く延ばされた背面領域を備えている。
【0011】
この場合、従来周知の全ての構成と異なり、管棒の基本断面は、凹まされて弱化されているのではなく、逆に、互いに溶接された水平方向および鉛直方向の管棒の交差領域にわたり延在する、高く延ばされた背面領域により補強され、強化されて形成されている。この場合、基本管断面の隆起部における元々の基本断面は、側方からプレス圧力を作用させる機械的な変形加工により、元々の基本断面から形成されており、管棒長手方向に延在する比較的細い背面部を有している。交差領域内の管断面の構造高さを、元々の基本断面からほぼ三角形に変形加工された中空断面に増大することにより、この領域における管棒の曲げ剛性が大幅に向上されることになる。これにより、全体的に見て有利には管格子フレーム全体の剛性も、向上もしくは改良されることになる。これによりやはり、充填されたパレットコンテナの流体静力学的な圧力の作用による管格子フレームの側壁の膨らみも、大幅に減少されることになる。同様に、管格子フレームの、より剛性の側壁も、例えば直射日光における熱膨張による温度変化に基づき生じる内部圧力に、より良好に耐えられる。さらに、搬送振動および液体充填物による打寄せ荷重が加えられた場合の、管格子フレームの側壁の振動も減少される。その結果、全体として、管棒自体ならびに格子管棒の交差箇所における個々の溶接点に対する応力負荷が、より小さくなる。この構造的な手段により、パレットコンテナの管格子フレームの剛性が下げられるのではなく高められ、これに関連して、特に危険な液体充填物に使用する場合に、本発明によるIBCの安全性の向上が保証される。
【0012】
本発明の構成では、高く延ばされた背面領域が、水平方向の管棒ではもっぱら管棒の-管格子フレームに対して-外向きの側に配置されておりかつ/または鉛直方向の管棒ではもっぱら管棒の内向きの側に配置されている、ということが想定されている。管格子フレームの剛性を改良するために重要なのは、管断面の高さが、半径方向もしくは管格子フレームの側壁に対して垂直に高くされるもしくは増大される、という点である。つまり、高く延ばされた背面領域が鉛直方向棒に配置されている場合、高く延ばされた背面領域は、-管格子フレームに対して-内向きの側に形成されていることが望ましい。隆起部が水平方向の管棒に配置されている場合には、高く延ばされた背面領域は、外向きの側に形成されていることが望ましい。この構成では、交差領域において互いに重なり合う水平方向および鉛直方向の管棒の溶接に関する問題が一切生じない。
【0013】
本発明の別の構成では、高く延ばされた背面領域は、管棒長手方向において制限された所定の延在長さを有している、ということが想定されている。管格子フレームの最適な性能向上もしくは剛性向上は、高く延ばされた背面領域の、管棒長手方向の延在長さが、管棒幅もしくは管棒直径の2倍~10倍、好適には5倍である場合に達成される。高く延ばされた背面領域を方法技術的に最も簡単かつ最も効率的に形成するために特に適しているのは、正方形の横断面(以下「正方形断面」とも言う)を備えた管棒であり、この場合、この断面が完璧な正方形を形成している必要はない。つまりこの意味では例えば、各側壁の高さにやや差がある断面または完全には平行でない側壁を備えた断面も、特に適した正方形断面である。
【0014】
本発明は、1つの好適な実施例に関して、以下の特別な特徴に基づき優れている。すなわち:
-高くされた背面は、基本的に管棒の交差領域においてのみ実現される;
-高くされた背面は、鉛直方向の管棒では基本的に(管格子フレームに対して)内向きにのみ実現される;
-高くされた背面は、水平方向の管棒では基本的に(管格子フレームに対して)外向きにのみ実現される;
-高くされた背面は、好適には管格子フレームの側壁の下半分の領域における交差領域において実現される;
-高くされた背面は、好適には管格子フレームの側壁の領域内の交差領域において最大の膨らみを備えて実現され、これは管格子フレームの下から2番目と3番目の水平方向棒の中間領域である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下に、本発明を図中に略示した実施例に基づき、より詳細に説明する。
【
図2】実質的に正方形の横断面を有する管棒基本断面BPの1つの好適な実施例を示す横断面図である。
【
図3】実質的に三角形の横断面を有するように変形された後の、
図1に示した管棒の断面を示す横断面図である。
【
図4】円形の横断面を有する管棒基本断面の別の実施例を示す横断面図である。
【
図5】交差し合う管棒の4点支持部を備えた溶接可能な横断面に変形する第1の変形ステップ後の、
図4に示した管棒の断面を示す横断面図である。
【
図6】さらに三角形の横断面に変形された後の、
図4に示した管棒の断面を示す横断面図である。
【
図7】正方形の横断面を有する鉛直方向の管棒を示す部分側面図である。
【
図8】管格子フレームの内側から見た、正方形の横断面を有する鉛直方向の管棒を示す部分平面図である。
【0016】
図1には、特に危険な液体のまたは流動可能な充填物を保管しかつ搬送するための本発明によるパレットコンテナが符号10で表されている。危険な充填物の保管および/または搬送に用いるために、パレットコンテナ10は特別な試験基準を満たしており、相応する公的な危険物認可を受けている。約1000lの充填物体積用の構成において、パレットコンテナ10は、約1200mmの長さ、約1000mmの幅および約1150mmの高さを備えた、規格化された寸法を有している。パレットコンテナ10の主要部材は、ブロー成形法で熱可塑性プラスチックから製造された、薄壁で剛性のインナコンテナ
16と、支持周壁としてプラスチックインナコンテナ
16を密に包囲する鋼管格子フレーム14と、プラスチックインナコンテナ
16が載置されておりかつ鋼管格子フレーム14と固く結合された底部パレット
12とから成る。外側の管格子フレーム14は、互いに溶接された水平方向の鋼管棒18と鉛直方向の鋼管棒20とから成る。水平方向および鉛直方向の管棒18,20の閉じられた基本断面BPは、管棒長手方向に対して横方向において、断面の高さを減じる加工成形部またはへこみ部を一切有していない。
【0017】
底部パレット12は、図示の態様では複合パレットとして形成されている。管格子フレーム14の正面側には、薄い鋼板から成るラベル板22が、その時々の液体充填物の特徴を示すために取り付けられている。プラスチックインナコンテナ16の底部の中央には、液体充填物を取り出すために、取出し栓24が接続されている。
【0018】
水平方向の管棒18は、交差領域26において4点支持部を介して、管格子フレーム14の鉛直方向の管棒20と、慣用の抵抗溶接により、固く溶接されている。本発明の場合、鋼管格子フレーム14は、それぞれ約1000mmの長さを有する18本の鉛直方向の管棒20と、周方向に延在する6本の水平方向の管棒18とから成り、水平方向の管棒18は、4つの90°の屈曲部にわたり、それぞれ約4400mmの全長および管両端部の接続箇所でもって1つの矩形の管リングを成すように形成されている。管格子フレーム14には、72箇所の純粋な交差箇所26と、18箇所の上部交差突合せ箇所ならびに18箇所の下部交差突合せ箇所28が存在する。交差突合せ箇所28では、鉛直方向の管棒20の上下の端部がそれぞれ、周方向に延在する最上位および最下位の水平方向の管棒18と固く溶接されている。パレットコンテナ10は大型コンテナとして、500l~1300lの異なる容積サイズで形成されていてもよい。
【0019】
図2には好適な実施例として、ほぼ正方形の管横断面を備えた管棒基本断面BPが横断面図で示されている。鉛直方向の管棒20の基本断面BPは、管棒長手方向に対して横方向において、加工成形部またはへこみ部を一切有していない。外寸は約16×16mmになる、つまり正方形断面の辺の長さとしての高さH
(Q)も、やはり16mmである。本発明による、鋼管格子フレームの剛性向上に基づき、従来の1.0mmの鋼管の壁厚さを減少させることができ、この場合、正方形断面は、0.7mm~1.0mm、好適には0.9mmの、減少された壁厚さを有している。
【0020】
1つの好適な実施形態では、鉛直方向の管棒20の正方形断面は、0.8mmの壁厚さを有しており、水平方向の管棒18の正方形断面は、0.9m
mの壁厚さを有している。これにより、高い壁剛性を保ちつつ、パレットコンテナの重量および材料費を削減することができる。
【0021】
好適には、基本正方形断面BPは、対向して位置する平行でまっすぐな2つの側壁32と、対向して位置し、やや曲げられた、ほぼ平行な2つの側壁34,36とを有しており、この場合、一方の曲げられた側壁34は、内側に向かってやや凹状に形成されており、かつ他方の曲げられた側壁36は、外側に向かってやや凸状に形成されている。管棒18,20の、内側に向かってやや凹状に曲げられた側壁は、その両方の横方向外側縁部にそれぞれ、管棒の長手方向に延在する扁平な背面部40を有している。
【0022】
交差箇所26では、水平方向の管棒18と鉛直方向の管棒20とが、それぞれ内側に向かってやや凹状に曲げられた側壁34もしくは長手方向に延在する外側の両背面部40でもって互いに重なり合っており、管棒18,20の溶接に必要とされる4点支持部を形成している。正方形の基本断面の、外側に向かってやや凸状に形成された側壁36は、交差箇所26の領域において、両側から加えられるプレス圧力により比較的容易に、中央に加工成形された背面部30を備えた三角形の変形断面に変形されるようになっている。背中状の隆起部は、基本断面である正方形の管から冷間変形加工により、簡単な液圧プライヤを用いて生ぜしめられる。
【0023】
このように交差箇所26の領域において加工されかつ変形された管棒の断面形状は、
図3に横断面図で示されているように、本発明に基づきほぼ三角形の横断面と、中央に加工成形された背面部30とを備えている。
【0024】
16mmの辺の長さもしくは高さH(Q)を有する正方形の基本断面の場合、三角形の横断面の領域内では、交差し合う管棒を溶接するための4点接触箇所用の基底壁を成す内側に向かってやや凹状に曲げられた側壁から、中央の背面部30の先端まで、-背面先端における曲率半径アールの大きさに応じて-約20.5mmの三角形の管棒断面の高さH(D)が生じる。この場合、対向して位置し、平行にまっすぐに延在する2つの側壁32と、外側に向かってやや凸状に成形された側壁36の各半分とが、2つの二等辺三角形の側壁38に変形されている。
【0025】
変形過程に際しては、横断面で見て、対向して位置し平行にまっすぐに延在する2つの側壁32と、外側に向かってやや凸状に成形された側壁36との間の2つの90°の屈曲部から、2つの外向きの突出部48が、変形加工された2つの三角形の側壁38に生じる。正方形の基本断面BPは、最初にロール圧延架台において、鋼丸管から正方形断面に変形加工されたものである。この場合、隣り合う2つの側壁の間の4つの90°の屈曲部は、冷間変形加工により形成される。冷間変形加工に際しては、鋼材料中の組織変化に基づき、局所的な強度向上が生じる。変形加工された三角形の横断面の領域では、外側に向かってやや凸状に成形された側壁36に隣接する2つの90°の屈曲部が再び曲げられる。両方の90°の屈曲部における強度向上に基づき、曲げ戻しは不完全となり、2つの二等辺三角形の側壁38には2つ突出部48が残留することになる。
【0026】
この場合、基本断面管棒の加工および変形は、従来周知の構成とは異なり、格子壁の平面に対して垂直な1方向に行われるのではなく、格子壁の平面に対して平行な1方向において行われ、この場合、中央の背面部30を形成するためには、相応に形成されたプレス工具によりプレス圧力が、管棒の、対向して位置する2つの側壁から同時に所定の領域に向かって加えられる。この場合、このプレス圧力は、対向して位置し平行にまっすぐに延在する2つの側壁32に対して加えられ、それも外側に向かってやや凸状に曲げられた側壁36に続くもしくは隣接する正方形の基本断面の領域もしくは部分に最初に加えられる。このことは例えば、前端部が相応に斜めにされた、互いに接近運動する2つのプレスプランジャを備えたプレス工具により行うことができ、これにより最終位置においては、各プレスプランジャの先端部の間にV字形のギャップと、管棒の変形加工された領域の管成形高さが増大された、ほぼ三角形のまたは三角形に類似した管横断面とが生じることになる。この変形過程は、プレスプライヤ工具により適宜に行われてもよく、この場合は2つのプライヤジョーが支点を越えて、対向して位置し、平行にまっすぐに延在する2つの側壁32に作用する。この場合、水平方向および鉛直方向の管棒18,20の交差領域26における4点溶接用の、内側に向かってやや凹状に曲げられた各側壁34だけが、変形加工されないままになっている。
【0027】
基本断面が正方形の管は、やや内側に向かって成形された基底側壁を有しており、これにより、4点抵抗溶接用の外側の長手方向リブが生ぜしめられている。冷間変形加工の場合、基底側壁とは反対の側に位置する2つの90°の屈曲部が曲げられて、直線状の延在部に可能な限り近づけられる一方で、基底側壁とは反対の側に位置するまっすぐな側壁は、中央部において変形加工されて、小さな曲率半径を有する比較的狭い湾曲部が形成される。
【0028】
図4には、周知の管棒基本断面の1つの別の実施例が横断面図で示されている。この元々の管棒基本断面は丸管断面42として形成されており、約18mmの外径D
(AR)と、1.0mmの壁厚さとを有している。交差領域において、管棒の4点溶接に対応する相互支持を達成するためには、次の
図5に明示されているような第1の変形ステップにおいて、管棒断面の一方の側が、半径方向において小さな距離だけ加工成形され、これにより、外側に長手方向リブもしくは長手方向突出部を備えた、やや凹状のもしくは内側に向かって軽く成形された壁部44を形成し、長手方向リブもしくは長手方向突出部は、交差した管棒において4点支持部を形成することになる。4つの溶接接触点を形成するために管棒を凹ませることにより、周知のパレットコンテナの丸管は、剛性もしくは曲げ抵抗モーメントの大幅な損失を被ることになる。この剛性損失は
図6から判るように、別の変形加工ステップにおいて、高く延ばされた背面領域30(
図7)が形成された、ほぼ三角形の横断面に変形加工することにより、再び良好に埋め合わされる。三角形の中空成形材によるこの実施例も、高く延ばされた背面領域30の範囲に、少なくとも20mmの断面高さH
Dを有している。
【0029】
図7には、交差領域26において側方から見た、正方形の横断面を備えた鉛直方向の管棒20の部分図が示されている。水平方向の管棒18は、同じ基本断面BPの正方形の横断面を有している。交差領域26において、鉛直方向の管棒20の元々の正方形の基本断面BPは変形加工され、中央が高く延ばされた背面領域30を備える、ほぼ三角形の中空成形材として形成されている。プレス圧力を側方に作用させて機械的に変形加工することにより、元々の基本断面から成形された、中央が高く延ばされた背面領域30は、管棒長手方向に延在する細い背面を有しており、この場合、高く延ばされた背面領域30は、管棒長手方向において、所定の延在長さに制限されている。この、高く延ばされた背面領域30の管棒長手方向における延在長さは、管棒幅もしくは管棒直径(丸管の場合)の2倍~10倍、好適には5倍であることが望ましい。
【0030】
変形されていない元々の基本断面と、変形加工により形成された、中央が高く延ばされた背面領域30との間には、両側に、傾斜して延在する移行領域46が生じている。この傾斜して延在する移行領域46は、管棒の交差領域用に高く延ばされた背面領域を形成するために、相応に形成されたプレス工具によりプレス圧力が、格子壁の平面に対して平行な方向において、対向して位置する2つの平行な側壁から同時に、基本管断面の所定の領域に加えられることにより、生ぜしめられる。この場合、プレス圧力は、対向して位置し平行にまっすぐに延在する2つの側壁に対し、実質的に、外側に向かってやや凸状に曲げられた側壁に続くもしくは隣接する正方形の基本断面の領域もしくは部分にのみ、加えられる。この場合、変形加工過程は、対向して位置し平行に延在する2つの側壁に対して、プレス圧力が、例えばプレス工具の、互いに接近運動する2つのプレスプランジャまたはプレスプライヤの旋回可能なプライヤジョーの、前方が斜めになった2つの先端部によりもたらされることにより行われ、このとき最終位置において、プレスプランジャもしくはプレスプライヤのプライヤジョーの先端部の間にV字形のギャップが生じ、これにより、管棒の変形加工された領域に、管断面高さが高く延ばされた、ほぼ三角形の管横断面が形成されることになる。
【0031】
これに関して
図8には、鉛直方向の管棒20の、変形加工により形成された、中央が高く延ばされた背面領域30と、両側に続く移行領域46とを備えた、変形加工された三角形の横断面領域を管格子フレームの内側から見た、正方形の基本横断面を備えた鉛直方向の管棒20の部分平面図が示されている。傾斜した移行領域46の長手方向延在長さは、例えば正方形の基本断面の側壁の高さの1倍~2倍、すなわち15~35mm、好適には約20mmであることが望ましい。
【0032】
搬送時に加えられる荷重により充填物が往復して打ち寄せ、これにより格子管フレームの側壁に作用する押圧力が変化することになる、液体充填物で満たされたIBCの具体的なケースを見ると、このことは、管断面において常に増減する引張り応力および圧縮応力による動的な連続荷重を生ぜしめ、これが長く続くと、最も高い荷重が加えられた管断面領域における亀裂や、交差箇所における溶接点の破断を招く恐れがある。この場合、プラスチックインナコンテナ内の内部圧力による、管格子フレームの外側に向かう側壁の膨出は、弾性的な復帰力による、管格子フレームの内側に向かう「凹み」もしくは跳ね返りの約2倍の大きさである。つまりこの場合、半径方向において異なる大きさの曲げ荷重が、管格子フレームの管棒(=曲げ支柱)に対して発生する。
【0033】
曲げに対する抵抗力の程度は、軸方向の抵抗モーメントWとも、または曲げ抵抗モーメントとも呼ばれる。抵抗モーメントは、技術的なメカニズムにおいて、支柱横断面の幾何学形状(形状および寸法)からのみ導出される値であり、内部応力の発生により加えられた荷重に曲げ支柱が対抗する抵抗力の基準である。この場合、値として最大の応力σmaxは常に、中立線からの最大距離を有する、曲げ支柱の縁部において生じる。支柱横断面の抵抗モーメントWは、単に幾何学的な理由により断面の慣性モーメント(断面二次モーメント)Iに関連しており、横断面設計時に、断面の慣性モーメントIを用いて、荷重が加えられた場合の支柱の変形を算出することで、曲げ剛性が求められる。抵抗モーメントWは、断面の慣性モーメントIと最大応力σmaxとの商として定義されている。抵抗モーメントの単位はm3である。
【0034】
正方形の基本断面の曲げ剛性と、変形加工され、高く延ばされた背面領域を備えた三角形の管横断面の曲げ剛性との比較測定では、次のことが判った。すなわち:正方形の基本断面は、約1610mm4の断面の慣性モーメントIxを有しているのに対し、三角形の横断面においては、約2000mm4の断面の慣性モーメントIxが得られる。結果として、約24%の大幅な向上が得られることになる。
【0035】
相応する比較測定では、周知のパレットコンテナの、変形されていない丸管断面において、約1770mm4の断面の慣性モーメントIxが得られ、この断面の慣性モーメントIxは、交差領域において従来行われた加工変形および横断面減少の場合には、さらに大幅に低下することになる。これに対して、この場合も丸管横断面を、高く延ばされた背面領域を備える三角形断面に変形加工し、断面の慣性モーメントIxを2000mm4超に増加させることにより、高い性能向上が生ぜしめられる、と考えられる。
【0036】
結論:
つまり本発明は、パレットコンテナの管格子フレームの剛性を有利に向上させるための、簡単に適用されて申し分無く機能する廉価な構成を提供する。追加的な材料が必要とされるのではなく、管棒基本断面の特別な、部分的な変形加工のみが適用される。それどころか逆に、管棒の壁厚さの減少により、材料およびコストの節減も達成され得る。
【0037】
結果的に、特に危険な液体充填物のための、このような大型コンテナの使用時に加えられる、搬送時の過度に高い荷重により生じる破損に対して、高められた安全性が保証されることになる。
【符号の説明】
【0038】
10 パレットコンテナ
12 底部パレット
14 管格子フレーム
16 プラスチックインナコンテナ
18 水平方向の管棒(14)
20 鉛直方向の管棒(14)
22 ラベル板
24 取出し栓
26 交差領域(14)
28 交差突合せ領域(14)
30 高く延ばされた背面領域(18,20)
32 平行でまっすぐな側壁
34 凹状の側壁
36 凸状の側壁
38 三角形の側壁
40 側方の背面部(18,20)
42 丸管基本断面(28)
44 凹状の壁部(42)
46 移行領域(BP,30)
48 突出部(38)
H(Q) 高さ 辺の長さ
H(D) 高さ 三角形
WS(R) 壁厚さ 丸管
D(R) 直径 丸管
WS(Q) 壁厚さ 正方形管
D(AR) 外径 丸管
BP 正方形の基本断面