(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】移植可能な人工弁のためのスカートアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2020508587
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(86)【国際出願番号】 US2018046487
(87)【国際公開番号】W WO2019036359
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-02
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タミール・エス・リーヴァイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤイール・エー・ニューマン
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0296418(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0027535(US,A1)
【文献】国際公開第2016/124615(WO,A2)
【文献】特表2018-504972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0203576(US,A1)
【文献】米国特許第6730118(US,B2)
【文献】特表2013-543406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な人工弁を作製する方法であって、
第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に配設された織物層を備える積層体であって、前記第2のカバー部材は、前記織物層が露出される1つまたは複数の窓を備える、積層体を形成するステップと、
環状フレームに対して前記積層体を設置するステップと、
前記第2のカバー部材の前記1つまたは複数の窓において前記環状フレームの一部のまわりで前記織物層に縫合糸を通すことによって前記積層体を前記環状フレームに縫合するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記積層体は、血液がフレーム開口部を通って流れるのを防止するように、前記環状フレーム内の前記フレーム開口部を覆うようにサイズ決めおよび成形された環状スカートを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環状スカートは、前記環状フレームの内側に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のカバー部材および前記第2のカバー部材は、前記織物層内の開口部を通して互いに融合されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記積層体を形成する行為は、エレクトロスピニングによって前記第1のカバー部材を形成するステップと、エレクトロスピンされた前記第1のカバー部材上に前記織物層を設置するステップと、エレクトロスピニングによって前記織物層上に前記第2のカバー部材を形成するステップとを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記積層体を形成する行為は、前記第2のカバー部材が前記織物層を覆って形成されるときに、前記第2のカバー部材内に前記1つまたは複数の窓を形成するように、前記第2のカバー部材を形成するステップの前に、前記織物層上の1つまたは複数の領域をマスクするステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記積層体を形成する行為は、前記織物層の少なくとも一方の側の1つまたは複数の領域をマスキング材でマスクするステップと、液化されたポリマー材料に前記織物層を浸漬するステップと、前記液化されたポリマー材料が硬化することを可能にするステップと、前記積層体内に前記1つまたは複数の窓を形成するように前記マスキング材を除去するステップとを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のカバー部材内の前記1つまたは複数の窓は、円周方向に前記積層体のまわりで連続的に延在する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のカバー部材および前記第2のカバー部材は、エラストマー材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記エラストマー材料は、ePTFE、またはUHMWPE、またはポリウレタンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数のフレーム部材を有する環状フレームと、
第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に挟まれた織物層を有する積層体を備えるスカートアセンブリであって、前記織物層は、前記第2のカバー部材内の1つまたは複数の窓において露出される、スカートアセンブリと
を備える移植可能な人工弁であって、
前記スカートアセンブリは、前記1つまたは複数の窓において前記複数のフレーム部材の少なくとも1つのまわりで前記織物層を通って延在する縫合糸によって前記環状フレームに結合される、移植可能な人工弁。
【請求項12】
前記スカートアセンブリは、前記環状フレームの内側に配置される、請求項11に記載の移植可能な人工弁。
【請求項13】
前記スカートアセンブリに縫合された複数の弁尖をさらに備え、前記弁尖は、前記人工弁を通る第1の方向の血液の流れを許容し、前記第1の方向とは反対の第2の方向の前記人工弁を通る血液の流れを阻止するように構成されている、請求項12に記載の移植可能な人工弁。
【請求項14】
前記第1のカバー部材および前記第2のカバー部材は、前記織物層内の開口部を通して互いに融合されている、請求項11から13のいずれか一項に記載の移植可能な人工弁。
【請求項15】
前記第1のカバー部材または前記第2のカバー部材は、不織繊維の膜を備える、請求項11から14のいずれか一項に記載の移植可能な人工弁。
【請求項16】
前記第1のカバー部材または前記第2のカバー部材は、非吸収性であるとともに、周囲組織の内部成長を促進して体管腔内に前記人工弁を固定するのを助ける多孔性微細構造を有する、請求項11から15のいずれか一項に記載の移植可能な人工弁。
【請求項17】
前記環状フレームは、入口端と出口端とを有し、径方向に折り畳み可能および拡張可能に構成されており、前記複数のフレーム部材は、前記フレーム部材間に複数の間隙を画定し、前記スカートアセンブリは、前記スカートアセンブリによって覆われている前記環状フレーム内の前記間隙を通って血液が流れるのを防止するように構成されている、請求項11から16のいずれか一項に記載の移植可能な人工弁。
【請求項18】
前記スカートアセンブリは、前記第2のカバー部材内の前記1つまたは複数の窓においてのみ前記環状フレームに縫合されている、請求項11に記載の移植可能な人工弁。
【請求項19】
前記第1のカバー部材および前記第2のカバー部材は、エラストマー材料を含む、請求項11に記載の移植可能な人工弁。
【請求項20】
前記エラストマー材料は、ePTFE、またはUHMWPE、またはポリウレタンを含む、請求項19に記載の移植可能な人工弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生来の心臓弁輪などの体管の中に移植するための人工弁の実施形態に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の心臓は、様々な弁膜症を患い得る。これらの弁膜症は、心臓の重大な機能不全という結果になる可能性あり、最終的に、生来の弁を人工的な弁に置換することを必要とする。いくつかの知られている人工的な弁、およびこれらの人工的な弁を人間に移植するいくつかの知られている方法が存在する。
【0003】
様々な手術手技が、疾患のある弁または傷ついた弁を置換または修復するために使用され得る。狭窄症および他の心臓弁疾患により、毎年数千人の患者が手術を受け、欠陥のある生来の心臓弁が人工弁に置換される。欠陥のある弁を治療する別の少ない抜本的な方法は、典型的には石灰化が最小限の弁に使用される修復または再建によるものである。外科的療法の問題は、外科的修復に関連した高い罹患率および死亡率を有するこれらの慢性疾患の患者に負わせるかなり大きいリスクである。
【0004】
生来の弁が置換されるとき、典型的には、人工弁の外科移植は、開胸手術を必要とし、その間、心臓が停止され、患者は心肺バイパス(いわゆる「人工心肺」)に配置される。一般的な一外科処置では、疾患のある生来の弁尖は切除され、人工弁が弁輪における周囲の組織に縫合される。処置に関連した外傷、および体外の血液循環の付随する期間のために、一部の患者は、外科処置を生き延びられず、またはその後すぐに死亡する。体外循環に必要な時間量に比例して患者のリスクが増加することがよく知られている。これらのリスクにより、欠陥のある生来の弁を有するかなりの人数の患者は、彼らの状態があまりに弱くて処置に耐えることができないので、手術できないと考えられている。ある推定によれば、80歳をよりも上の年齢である弁狭窄症を患う患者の50%よりも多くは、弁置換のための手術ができない。
【0005】
従来の開胸手術に関連した欠点のために、経皮かつ低侵襲の手術手法が、熱い注目を集めている。一技法では、人工弁は、カテーテル法によるそれほど侵襲性でない処置において移植されるように構成されている。例えば、米国特許第5,411,522号および第6,730,118号は、カテーテルにのって圧縮状態で経皮的に導入され、バルーン膨張によって、または自己拡張式のフレームもしくはステントの利用によって所望の位置において拡張することができる折り畳み可能な経カテーテル心臓弁を説明する。
【0006】
知られている人工弁は、弁構造(例えば、弁尖(leaflets))を内部に装着したフレームと、フレームの内側に固定された内側スカートと、適宜、フレームの外面に固定された外側スカートとを備える。内側スカートは、いくつかの機能を果たすことができる。例えば、内側スカートは、弁周囲逆流を防止し(減少させ)、弁尖をフレームに固着し、縮ませ中および弁の作動サイクル中にフレームと接触することによって引き起こされる損傷から弁尖を保護するために、シール部材として機能することができる。外側スカートは、内側スカートと協働して、弁の移植後に弁周囲逆流をさらに減少させるまたは防ぐことができる。望ましくは、内側スカートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの丈夫で引裂きに強い材料を含むが、他の様々な合成材料または天然材料が使用されてもよい。
【0007】
内側スカートおよび外側スカートは、しばしば、それぞれのスカートの織物をフレームに縫合するまたは縫い合わせることによってフレームに固定される。フレームへの内側スカートの縫合により、弁尖を縫合糸に露出され得る。弁の作動サイクル中、弁尖と露出された縫合糸との間のそれぞれの接触、ならびに弁尖とスカートの織物材料との間の接触は、弁尖の摩耗を引き起こし得る。したがって、人工弁のためのスカートの改善が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5,411,522号
【文献】米国特許第6,730,118号
【文献】米国特許出願公開第2012/0123529号
【文献】米国特許第7,993,394号
【文献】米国特許出願公開第2014/0209238号
【文献】米国特許出願公開第2016/0317305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、人工心臓弁などの人工弁に関する方法および機器に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のいくつかの実施形態は、移植可能な人工弁を作製する方法に関する。方法の一例示的実施形態は、第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に配設された織物層を備える積層体を形成するステップを含む。第2のカバー部材は、織物層が露出される1つまたは複数の窓を備えることができる。この方法は、環状フレームに対して積層体を設置するステップと、第2のカバー部材の1つまたは複数の窓においてフレームの一部のまわりで織物層に縫合糸を通すことによって積層体を環状フレームに縫合するステップとをさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、積層体は、血液がフレーム開口部を通って流れるのを防止するように、フレーム内の開口部を覆うようにサイズ決めおよび成形された環状スカートを備えることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、スカートは、環状フレームの内側に配置されてもよい。
【0013】
前述の実施形態では、第1のカバー部材および第2のカバー部材は、織物層内の開口部を通して互いに融合されてもよい。
【0014】
前述の実施形態では、積層体を形成するステップは、エレクトロスピニングによって第1のカバー部材を形成するステップと、エレクトロスピンされた第1のカバー部材上に織物層を設置するステップと、エレクトロスピニングによって織物層上に第2のカバー部材を形成するステップとを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、積層体を形成するステップは、第2のカバー部材が織物層を覆って形成されるときに、第2のカバー部材内に1つまたは複数の窓を形成するように、第2のカバー部材を形成するステップの前に、織物層上の1つまたは複数の領域をマスクするステップをさらに含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、積層体を形成するステップは、織物層の少なくとも一方の側の1つまたは複数の領域をマスキング材でマスクするステップと、織物層を液化されたポリマー材料に浸漬するステップと、液化されたポリマー材料が硬化することを可能にするステップと、積層体内に1つまたは複数の窓を形成するようにマスキング材を除去するステップとを含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2のカバー部材内の1つまたは複数の窓は、円周方向に積層体のまわりで連続的に延在することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のカバー部材および第2のカバー部材は、エラストマー材料を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、エラストマー材料は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはポリウレタンを含むことができる。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態は、移植可能な人工弁にも関する。代表的な移植可能な人工弁の1つは、複数のフレーム部材を有する環状フレームと、スカートアセンブリとを備えることができる。スカートアセンブリは、第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に挟まれた織物層を有する積層体を含むことができる。織物層は、第2のカバー部材内の1つまたは複数の窓において露出することができる。スカートアセンブリは、1つまたは複数の窓において複数のフレーム部材の少なくとも1つのまわりで織物層を通って延在する縫合糸によって環状フレームに結合することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、スカートアセンブリは、環状フレームの内側に配置することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、移植可能な人工弁は、スカートアセンブリに縫合された複数の弁尖をさらに含んでもよい。弁尖は、人工弁を通る第1の方向の血液の流れを許容し、第1の方向とは反対の第2の方向の人工弁を通る血液の流れを阻止するように構成されてもよい。
【0023】
移植可能な人工弁の前述の実施形態において、第1のカバー部材および第2のカバー部材は、織物層内の開口部を通して互いに融合されてもよい。
【0024】
移植可能な人工弁の前述の実施形態において、第1のカバー部材または第2のカバー部材は、不織繊維の膜を含んでもよい。
【0025】
移植可能な人工弁の前述の実施形態において、第1のまたは第2のカバー部材は、非吸収性とすることができるとともに、周囲組織の内部成長を促進して体管腔内に人工弁を固定するのを助ける多孔性微細構造を有することができる。
【0026】
移植可能な人工弁の前述の実施形態において、環状フレームは、入口端と出口端とを有し、径方向に折り畳み可能および拡張可能に構成され得る。複数のフレーム部材は、フレーム部材間に複数の間隙を画定することができ、スカートアセンブリは、スカートアセンブリによって覆われているフレーム内のそれらの間隙を通って血液が流れるのを防止するように構成することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、スカートアセンブリは、第2のカバー部材内の1つまたは複数の窓のみでフレームに縫合され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1のカバー部材および第2のカバー部材は、エラストマー材料を含むことができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、エラストマー材料は、ePTFE、またはUHMWPE、またはポリウレタンを含むことができる。
【0030】
本発明の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】移植可能な人工弁の例示的実施形態の側面図である。
【
図3】
図1の人工弁の例示的なフレームを示す図である。
【
図4】
図3に示されたフレームの平坦にした図である。
【
図6】
図1の人工弁の内側スカートを作製する例示的プロセスによる、心軸上での第1のカバー部材の形成を示す図である。
【
図7】内側スカートを作製する例示的プロセスによる、
図6に示された第1のカバー部材を覆う織物層の設置を示す図である。
【
図8】内側スカートを作製する例示的プロセスによる、
図7に示された織物層を覆う複数のマスクの設置を示す図である。
【
図9】内側スカートを作製する例示的プロセスによる、
図8に示されたマスクを有する織物層を覆う第2のカバー部材の形成を示す図である。
【
図10】内側スカートを作製する例示的プロセスによる、
図9に示された第2のカバー部材を形成した後にマスクを除去することを示す図である。
【
図11】下にある織物繊維を露出する内側スカートの一方の側の窓を有する内側スカートの一部の断面図である。
【
図12】
図11に示された窓において織物繊維に縫合糸を通すことを示す図である。
【
図13】
図11に示された内側スカートを人工弁のフレームの隣接した支柱に縫合することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1~
図2は、一実施形態による人工弁10の2つの異なる図を示す。他の実施形態では、弁は、心臓の他の生来の輪に移植されるように適合され得るが、例示した弁は、生来の大動脈弁輪に移植されるように適合されている。弁10は、いくつかの主要構成要素、すなわち、ステントまたはフレーム12、弁構造14、およびスカートアセンブリ15を有することができる。スカートアセンブリ15は、内側スカート16と、任意で、外側スカート18とを含むことができる。
【0033】
弁構造14(または弁尖構造)は、三尖配列(tricuspid arrangement)につぶれるように配置され得る弁尖構造を集合的に形成する(より多いまたはより少ない個数の弁尖が使用されてもよいが)3つの弁尖40を備えることができる。弁構造14は、人工弁の入口端48から人工弁の出口端50への方向に人工弁10を通って血液が流れることを許容し、出口端50から入口端48への方向の人工弁を通る血液の流れを阻止するように構成されている。
【0034】
望ましくは、各弁尖40は、曲がったほぼU形の入口縁または尖端縁52を有する。このように、弁構造14の入口縁は、起伏している曲がった波形の形状を有する。弁尖をこの波形の幾何学的形状で形成することによって、弁尖に対する応力は、減少させることができ、これは、弁の耐久性を改善させる。また、波形形状によって、それらの領域における石灰化を早期に引き起きし得る各弁尖の腹(各弁尖の中央領域)におけるひだおよび小じわを、無くすことができる、または少なくとも最小にすることができる。波形の幾何学的形状は、弁尖構造を形成するために使用される組織材料の量も減少させ、それによって弁の流入端でより小さいより一様な縮ませられた外形を可能にする。当業界で知られているように、および米国特許第6,730,118号に記載されているように、弁尖40は、心膜組織(例えば、ウシの心膜組織)、生体適合合成材料、または様々な他の適切な天然もしくは合成材料で形成され得る。
【0035】
ベアフレーム12が、
図3に示されている。図示の実施形態では、フレーム12は、入口端54および出口端56を画定する環状形状を有し、複数の支柱(またはフレーム部材)を備える。米国特許出願公開第2012/0123529号により完全に説明されるように、フレーム12は、弁構造14の接合部58をフレームに取り付けるように適合されている複数の周方向に間隔をおいて配置されたスロットまたは接合部窓20(例示した実施形態では3つ)が形成され得る。
【0036】
フレーム12は、当業界で知られているように、様々な適切に可塑的に拡張可能な材料(例えば、ステンレス鋼など)、または自己拡張性材料(例えば、ニチノール)のいずれかで作製することができる。可塑的に拡張可能な材料で構成されるとき、フレーム12(およびしたがって弁10)は、送達カテーテル上に径方向に圧縮状態に縮ませられ、次いで、膨張可能なバルーンまたは別の適切な拡張機構によって患者の内側で拡張することができる。自己拡張可能な材料で構成されるとき、フレーム12(およびしたがって弁10)は、径方向に圧縮状態に縮ませられ、デリバリーカテーテルのシースまたは均等な機構の中への挿入によって圧縮状態に保持することができる。体内になると、弁は、デリバリーシースから前進させることができ、これにより弁がその機能できるサイズに拡張することを可能にする。
【0037】
フレーム12を形成するために使用され得る適切な可塑的に拡張可能な材料は、限定するものではないが、ステンレス鋼、ニッケル基合金(例えば、コバルトクロム合金またはニッケルコバルトクロム合金)、ポリマー、またはそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、フレーム12は、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金、例えば、MP35N(商標)(SPS Technologies社の商標)で作製することができ、これは、(ASTM F562-02によってカバーされる)UNS R30035に均等である。MP35N(商標)/UNS R30035は、重量によって35%ニッケル、35%コバルト、20%クロム、および10%モリブデンを含む。フレーム12を形成するためにMP35Nを使用することによって、ステンレス鋼を上回る優れた構造的成果をもたらすことが分かっている。詳細には、MP35Nがフレーム材料として使用されると、径方向粉砕力抵抗、耐疲労性、および耐食性における同じまたはより良い性能を実現するのにそれほど材料が必要とされない。また、それほど材料が必要とされないので、フレームの縮ませられた外形が減少され得、それによって体内の治療位置への経皮的な送達のために低い外径の組立体を与える。
【0038】
図3および
図4を参照すると、例示した実施形態におけるフレーム12は、端と端をつないで配置されるとともにフレームの流入端にて周方向に延在する角度付き支柱22の第1の下列Iと、周方向に延在する角度付き支柱24の第2の列IIと、周方向に延在する角度付き支柱26の第3の列IIIと、周方向に延在する角度付き支柱28の第4の列IVと、フレームの流出端56にて周方向に延在する角度付き支柱32の第5の列Vとを含む。複数のほぼ直線の軸方向に延在する支柱34は、第1の列Iの支柱22と第2の列IIの支柱24を相互接続するために使用され得る。角度付き支柱32の第5の列は、(接合部窓20を画定する)複数の軸方向に延在する窓のフレーム部分30および複数の軸方向に延在する支柱31によって角度付き支柱28の第4の列IVに接続される。各軸方向支柱31および各フレーム部分30は、2つの角度付き支柱32の下端の集合点によって定められる位置から2つの角度付き支柱28の上端の集合点によって定められる別の位置へ延在する。
【0039】
各接合部窓フレーム部分30は、弁尖構造14のそれぞれの接合部58を装着する。見ることができるように、各フレーム部分30は、弁尖構造の接合部を支持するための知られている片持ち梁式の支柱と比較して弁の繰返し負荷の下の耐疲労性を強化する頑強な構成を与えるために、支柱の隣接した列のその上端および下端に固定される。この構成は、フレームの壁厚の減少を可能にして、より小さく縮ませられた弁の直径を実現する。特定の実施形態では、内径と外径の間において測定されるフレーム12の厚さT(
図3)は、約0.48mm以下である。
【0040】
フレームの支柱およびフレーム部分は、フレームの複数の開放セルを集合的に定める。フレーム12の流入端において、支柱22、支柱24、および支柱34は、開口部36を画定するセルの下列を定める。支柱24、26、および28の第2、第3、および第4の列は、開口部38を画定するセルの2つの中間列を定める。支柱28および32の第4のおよび第5の列は、フレーム部分30および支柱31と共に、開口部60を画定するセルの上列を定める。開口部60は、比較的大きく、縮まっている外形を最小にするためにフレーム12が縮ませられるときに、弁尖構造14の一部が開口部60の中におよび/または開口部60を通って突出するまたは膨れ出ることを可能にするような寸法に作製されている。
【0041】
図4に示されるように、支柱31の下端は、結節または連結部44において2つの支柱28に接続され、支柱31の上端は、結節または連結部46において2つの支柱32に接続されている。支柱31は、連結部44、46の厚さよりも小さい厚さを有することができる。各々が2つの隣接した支柱32に各々が連結する連結部44、46は、連結部64と共に、フレーム12が縮ませられた状態にあるときに、開口部60の完全な閉塞を防止する。したがって、支柱31、ならびに連結部44、46および64の幾何学的形状は、弁尖の一部が開口部を通って外向きに突出する(すなわち、膨れ出る)ことを可能にするために、縮ませられた状態で開口部60内に十分な空間を作り出すのを助ける。これは、弁尖材の全部が縮ませられたフレーム内に拘束される場合よりも比較的小さい直径に弁が縮ませられることを可能にする。
【0042】
フレーム12は、特に弁尖構造14を支持するフレームの流出端部における、所定のバルーン圧力での弁の可能性ある過膨張を防止するまたは少なくとも最小にするように構成される。一態様では、フレームは、支柱間に比較的大きい角度42a、42b、42c、42d、42eを有するように構成される。角度が大きくなるほど、フレームを開く(拡張する)のに必要な力が大きくなる。したがって、フレームの支柱間の角度は、所与の開口部圧力(例えば、バルーンの膨張圧)でフレームの径方向の拡張を制限するように選択することができる。特定の実施形態では、これらの角度は、フレームがその機能できるサイズまで拡張されるときに少なくとも110度以上であり、さらにより特に、これらの角度は、フレームがその機能できるサイズまで拡張されるときに少なくとも120度以上である。米国特許出願公開第2012/0123529号は、フレーム12、ならびに人工心臓弁に組み込むことができるフレームについての他の構成をさらに説明する。
【0043】
図1~
図2に示されるように、スカートアセンブリ15は、フレーム12の内側に位置する内側スカート16と、フレーム12の外側に位置する外側スカート18とを備えることができる。外側スカート18は、外側スカートの流出縁(例示した実施形態では上縁)に沿って形成された隣接した突出部間に複数の周方向に離間配置された拡張部分または突出部66および凹部68を備えることができる。他の実施形態では、外側スカート18は、いずれの突出部または凹部もない直線流出縁を有することができる。
【0044】
外側スカート18の流入(下)縁および流出(上)縁は、例えば、熱接合、接着、および/または縫合いによってフレーム12および/または内側スカート16に固定することができる。例示した実施形態に示されるように、外側スカート18の流出縁に沿った突出部66は、縫合糸70を有するフレームの支柱に固定することができ、一方、隣接した突出部間の凹部68は、フレーム12および内側スカート16に取り付けられていないままとすることができる。外側スカート18は、生来の弁輪の組織に対してシールすることによって人工弁10のためのシール部材として機能し、人工弁10を過ぎての弁周囲漏出を減少させるのを助ける。
【0045】
いくつかの実施形態では、
図1~
図2に示されるように、外側スカート18は、人工弁10が径方向に拡張された構成にあるときに、フレーム12から径方向外向きに延在するように構成され得る。代替として、外側スカート18は、人工弁10が径方向に拡張された構成にあるときに、外側スカート18がフレーム12の外側面に対して位置するようにフレーム12とのぴったりした嵌りを形成するように構成されてもよい。外側スカート18は、様々な合成材料または天然組織(例えば、心膜組織)のいずれかから形成することができる。適切な合成材料は、様々な生体適合織物(例えば、PET織物)または不織フィルムのいずれかを含み、内側スカート16の補強層88については以下に開示される材料のいずれかを含む。外側スカート18のさらなる詳細は、米国特許出願公開第2012/0123529号にも開示されている。
【0046】
図1~
図2にさらに示されるように、例示した実施形態における内側スカート16は、フレームの入口端54から角度付き支柱28の第4の列IVへ延在する。他の実施形態では、内側スカート16は、フレームの入口端54から支柱の第4の列IVの手前の位置まで(例えば、支柱の第2の列IIまたは第3の列IIIへ)延在することができ、あるいは内側スカートは、フレーム12の全高だけ(例えば、入口端54から出口端56まで)延在することができる。代替の実施形態では、内側スカート16は、
図1~
図2に示された構成とは異なるフレーム12の部分を覆って延在するように配置および/またはサイズ作製され得る。例えば、いくつかの実施形態では、内側スカート16の流入端は、フレーム12の入口端54から軸方向に間隔をおいて配置され得る。
【0047】
典型的には、内側スカート16は、形状が管状または筒状である(弁の縦軸に直交する平面内で断面形状が完全な円を形成する)が、内側スカート16は、フレーム12の内側面に沿って円周方向に360度にわたって延在する必要はない。言い換えれば、内側スカート16は、(弁の内腔の軸に直交する平面内において)完全な円ではない断面形状を有することができる。内側スカート16は、最初に平らなストリップとして形成することができ、次いで例えば、縫製、熱接合、および/または接着により、対向した縁部を一緒に結合することによって環状形状に形成される。代替として、内側スカート16は、以下に説明されるように、例えば、円筒状の心軸に内側層16を構築することによって、環状形状に直接形成され得る。
【0048】
図5を参照すると、内側スカート16は、内側スカートの内側面を定める第1の側72と、内側スカート16の外側面を定める第2の側74とを有する。以下より十分に説明されるように、内側スカート16のフレームに面する側74は、1つまたは複数の窓または開口部を有することができ、別の点では、封緘された織物層が、1つまたは複数の窓または開口部を通じて露出される。縫合糸は、内側スカート16をフレーム12に固定するためのこれらの窓において、内側スカート16の織物層に通されてもよい。外側スカート18は、例示のために、
図5において省略されている。
【0049】
内側スカート16がフレーム12に装着されるときに、内側スカート16の第1の側72は、人工弁10の内面に位置する弁尖構造14に向かって内向きに向いているとともに、内側スカート16の第2の側74は、フレーム12の内側面に対して外向きに向いている。特定の実施形態では、内側スカート16は、第1のカバー部材84と第2のカバー部材86とに挟まれた補強層88を備えることができる。代表的な実施形態では、補強層88は、織物層であり得る。第1および第2のカバー部材84、86は、封緘層とも呼ばれ得るとともに、それぞれ、例示した内側スカート16の内側層および外側層を形成する。特定の実施形態では、補強層88の内側面は、第1の側72において第1のカバー部材84によって完全に覆われてもよく、補強層88の外側面は、第2の側74において第2のカバー部材86によって部分的に覆われており、第2のカバー部材86は、第2の側74において補強層88を露出する1つまたは複数の窓または開口部90を定める(
図10参照)。
【0050】
補強層88は、引裂きに耐えるために内側スカート16を強くすることができる。以下より十分に説明されるように、補強層88は、内側スカート16をフレーム12に縫合するための固定層として、および弁尖40の尖端縁部を支持するために、働くこともできる。さらに、補強層88は、封緘層84、86と協働して、拡張構成にあるときに人工弁10を過ぎての弁周囲漏出を減少させる(または防止する)のを助けることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、補強層88は、様々なタイプの天然繊維または合成繊維(または単繊維、または紡績糸、またはより糸)から織られる織物繊維を含むことができ、ガーゼ、PET繊維(例えば、ダクロン(Dacron))、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、補強層88は、織物構造ではなく編み構造もしくは編組構造を有してもよい。いくつかの実施形態では、補強層88は、フェルトなどの様々な不織繊維のいずれかを含むことができる。補強層88の厚さは、変化してもよく、6ミル未満、望ましくは4ミル未満、およびさらにより望ましくは約2ミル未満とすることができる。
【0052】
代替として、補強層88は、整列されたまたは一部整列された(例えば、平行な)分子鎖を有する様々な半結晶ポリマー材料または熱可塑性物のいずれかから形成される1つまたは複数の層またはフィルムを含むことができる。そのような材料は、分子連鎖の縦方向に沿って増加した機械強度などの異方性機械特性を示し得る。適切な半結晶ポリマー材料には、例えば、PTFE、PET、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが含まれ得、その層またはフィルムは、内側スカート16を補強するために、封緘層84、86に位置し、封緘層84、86によって封入され得る。特段指定されない限り、織物層は、説明のために例示的な補強層として以下の説明において説明され、一方、かなり高い張力を有する不織層も、補強層として使用されてもよいことを理解されたい。
【0053】
封緘層84、86は、任意の適した生体適合材料で作製することができる。望ましくは、封緘層84、86は、弁尖40の摩耗を減少させるために、織物層よりも比較的少ない研磨である材料を含む。封緘層84、86は、例えば、不織繊維または非繊維質材料から形成される膜またはフィルムを含むことができる。層84、86を形成するために使用される生体適合材料は、非吸収性ポリマー材料(すなわち、体内に移植されても溶解しない材料)とすることができ、この材料は、エラストマーであり得る。さらに、封緘層84、86のいずれかは、周囲組織の内部成長を促進して体管腔内に人工弁10を固定するのを助ける多孔性微細構造を有することができる。
【0054】
封緘層材料の例には、限定するものではないが、ePTFE、非発泡性多孔質PTFE、ポリエステルまたは発泡性PTFE紡績糸、PTFE、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、他のポリオレフィン、ePTFEとPTFE繊維またはUHMWPEフィルムとエンベデッドUHMWPE繊維(embedded UHMWPE fibers)などの複合材料、ポリイミド、シリコーン、ポリウレタン、ヒドロゲル、フルオロエチルポリプロピレン(FEP)、ポリプロピルフッ素化アミン(PFA: polypropylfluorinated amines)、他の関連したフッ素化ポリマー、あるいはこれらの材料のいずれかの様々な組合せが含まれる。特定の実施形態では、封緘層84、86は、熱処理を受けるときに互いに接合され得る適切なポリマー材料(例えば、ePTFEチューブ、またはUHMWPEチューブ)製のそれぞれのチューブから形成され得る。いくつかの実施形態では、封緘層84、86は、同じタイプの材料から形成することができるが、特定の用途に応じて、異なる材料が、封緘層を形成するために使用されてもよい。
【0055】
微孔性ePTFEチューブは、いくつかのよく知られている方法によって作製することができる。延伸PTFEは、微粒子状の乾燥したポリテトラフルオロエチレン樹脂を液体潤滑剤と混合して粘性スラリーを形成することによってしばしば生産される。混合物は、型(典型的には円筒形の型)の中に注ぎ込まれ、圧縮されて、円筒形ビレットを形成することができる。次いで、ビレットは、押出ダイを通って、当業界で押出成形物と呼ばれる管状構造またはシート構造のいずれかにラム押出成形され得る。押出成形物は、「ウェットPTFE」と呼ばれる押出成形されたPTFE潤滑剤混合物を含む。ウェットPTFEは、高結晶質状態で合体したコヒーレントなPTFE樹脂粒子の微細構造を有する。押出成形の後に、ウェットPTFEは、PTFE押出成形物から潤滑剤の大部分を揮発させるために、潤滑剤の引火点よりも低いある温度まで加熱される。潤滑剤の大部分のない結果として得られるPTFE押出成形物は、当業界では、ドライPTFEとして知られている。次いで、ドライPTFEは、当業界で知られている適切な機械装置を用いて単軸方向、二軸方向、または径方向に延伸され得る。典型的には、延伸は、例えば、室温よりも高いがPTFEの結晶融点である327℃未満の高温度で実行される。ドライPTFEの単軸方向、二軸方向、または径方向の拡張は、合体したコヒーレントなPTFE樹脂に、結節(合体したPTFEの領域)から発する微小繊維を形成させ、この微小繊維は、延伸軸に平行に向けられている。延伸されると、ドライPTFEは、延伸PTFE(「ePTFE」)または微孔性PTFEと呼ばれる。
【0056】
UHMWPEは、数百万、通常200万から600万の間に達する分子量を有するポリエチレンのとても長連鎖で構成されている。UHMWPEは、高い耐腐食性の化学薬品であり、極端に低い吸湿およびとても低い摩擦係数を有する。UHMWPEは、自己潤滑性および高い耐摩耗性である。UHMWPEは、圧縮成形、ラム押出、ゲル紡糸、焼結を用いて処理される。UHMWPEは、シート状またはロッド状の粉末としておよび繊維として市販されている。
【0057】
封緘層84、86は、いくつかの手段によって形成することができる。例えば、一例では、封緘層84、86は、電気力を使用して数百ナノメートルの程度の繊維径まで溶解されたポリマー溶液またはポリマーの荷電スレッド(charged threads)を引き伸ばすエレクトロスピニングプロセスを用いて形成され得る。別の例では、封緘層84、86は、遠心紡糸技法を用いて形成され得る。遠心紡糸において、スピニング流体は、回転式紡糸ヘッド内に置かれる。回転速度が臨界値に到達するとき、遠心力が、スピニング流体の表面張力に打ち勝って、紡糸ヘッドのノズル先端から液体ジェットを射出する。次いで、ジェットは、延伸プロセスを受け、最終的にコレクタ上に堆積され、固化したナノ繊維を形成する。また、さらなる例では、封緘層84、86は、熱溶射プロセスの空間変化である大気式プラズマ溶射(APS)技法を用いて形成され得る。APSは、電弧を使用して流れているプロセスガスを電離し、高温ガス流は、とても幅広い範囲の粉末原材料物質を溶融して、高品質コーティングをターゲットの対象に施すように制御され得る。他の実施形態では、封緘層84、86は、ディップコーティング、スプレイコーティング、または溶融紡糸などを含む任意の他の適切な方法を用いて形成され得る。例えば、封緘層84、86のいずれか1つは、織物層88を液化されたポリマー材料中に浸漬し、次いで、液化されたポリマー材料が硬化することを可能にすることによって形成され得る。
【0058】
図6~
図10は、内側スカート16を形成する例示的な一プロセスを示す。エレクトロスピニングの使用については、以下に説明されるが、それは、本質的に例示であり、限定として意図されていない。上述したように、遠心紡糸、APS、浸漬コーティングなどのポリマー層を堆積させる他のプロセスを使用することもできることを理解されたい。
【0059】
第1に、
図6に示されるように、第1のコーティング材を備える第1のカバー部材84が、エレクトロスピニングによって(または他の技法を用いて)円筒状心軸100の外側面のまわりに周方向に堆積され得る。当業界で知られているように、エレクトロスピニングシステムは、繊維を形成するように溶解されたポリマー溶液またはポリマーを押出成形するために使用される紡績口金を備えることができる。心軸100を覆って第1のカバー部材84を堆積させるために、エレクトロスピニングシステムは、心軸100のまわりの円運動で繊維押出用の紡糸口金を回転させるように構成されてもよい。代替として、繊維押出用の紡糸口金は、固定しているように構成されてもよく、一方、心軸100は、紡績口金の正面に設置され、その縦軸を中心にして回転する。
【0060】
第2に、
図7に示されるように、織物層88は、第1のカバー部材84を覆って設置され得る。織物層88は、第1のカバー部材84のまわりにきつく巻き付けられる織物材料シートの形態であり得る。例えば、上述したように、織物層88は、互いに直交して延在するたて糸繊維とよこ糸繊維のスレッドを含む織物構造を有することができる。代替の実施形態では、織物層88は、第1のカバー部材84を覆って堆積することもできる。例えば、上述したように、織物層88は、不織繊維を含んでもよく、この不織繊維は、それ自体、エレクトロスピニングによって形成され得るとともに、望ましくは、層84、86よりも比較的高い張力を有する。別の例では、層88は、第1のカバー部材84のまわりに巻き付けられた前もって形成された編組材料であり得る。さらに別の例では、層88は、第1のカバー部材のまわりに編組層を形成するように第1のカバー部材84のまわりに1つまたは複数の紡績糸または単繊維を編むことによって形成され得る。
【0061】
第3に、
図8に示されるように、1つまたは複数のマスク92は、織物の選択領域94において織物層88を覆って設置され得る。第4に、
図9に示されるように、第2のコーティング材で構成される第2のカバー部材86が、エレクトロスピニング(または他の技法)によってマスクされた織物層88を覆って堆積され得る。次に、
図10に示されるように、マスク92は、第2のカバー部材86の堆積後に除去される。したがって、選択領域94に対応する1つまたは複数の窓90は、窓90が下にある織物層88を露出させるように作り出される。
【0062】
図8~
図9に示される実施形態では、マスク92は、織物層88の選択領域94を一時的に覆い、それらの選択領域94が第2のカバー部材86の第2のコーティング材によって堆積されるのを防止することができる。代替として、選択領域94は、物理的マスク94を施す必要なく、機能的にマスクされ得る。例えば、心軸100に対しての繊維押出用の紡糸口金の関連した移動および動作(例えば、起動および/または動作停止)は、第2のカバー部材86の第2のコーティング材が、選択領域94の外側にある織物層88の部分にのみ堆積され得るようにプログラムされてもよい。
【0063】
図8~
図9に示される実施形態では、織物層88の外周に沿った3つの選択領域94にそれぞれ対応するマスク92の3つの環状バンドが示されている。結果として、
図10に示されるように、マスク92の除去後に、3つの環状窓90が生成される。他の実施形態では、マスク92のいずれか1つは、対応する選択領域94および結果として得られる窓90が織物層88を完全には取り囲まないように、非環状形状を有してもよい。例えば、マスク92のいずれか1つは、カスタマイズされた窓90を作り出すようにカスタマイズされた位置においてカスタマイズされた形状を有してもよい。加えて、例示した実施形態に3つの窓90が示されているが、内側スカートは、より少ないまたはより多い個数の窓が形成されてもよく、この窓は、スカートに沿った任意の位置に配置することができる。例えば、いくつかの実施形態では、内側スカートは、1つまたは複数の周方向に延在する窓の列が形成されてもよく、各列は、複数の周方向に離間配置された窓で構成されている。他の実施形態では、1つまたは複数の窓は、内側スカートの入口および/または出口の縁に沿って形成され得る。
【0064】
図示されていないが、上述したステップごとに、各層の位置を一時的に固定するために固定機構が設けられ得ることを理解されたい。非限定の例として、続く処理中に第2のカバー部材86の位置をアセンブリの下にある層および心軸100に固定するのを助けるために、PTFEテープの層は、第2のカバー部材86の一端または両端に巻き付けられ得る。
【0065】
代表的な実施形態では、織物層88は、第1のカバー部材84および第2のカバー部材86がそれらの開口部を通して共に融合することを可能にする複数の開口部を有する。一例では、織物層88内の開口部は、織物層を形成するように織り繊維、編組繊維、または編み繊維、あるいは紡績糸によって作り出され得る。別の例では、織物層88は、開口部を備えた不織多孔性構造を有してもよい。別の例では、不織繊維(例えば、フェルト)が織物層を形成するために使用されるとき等、織物層88内の開口部は、織物層内の開口部を切断(例えば、レーザ切断)することによって形成され得る。
【0066】
例示的一実施形態では、織物層88内の開口部を通した第1のカバー部材84と第2のカバー部材86との間の融合は、マスクされた織物層88を覆って第2のカバー部材86を堆積させるプロセスの最中に同時に行うことができる。紡績口金から押し出される第2のコーティング材が、第2のカバー部材86を形成するように織物層88上に堆積されるとき、第2のコーティング材の一部は、織物層88内のそれらの開口部を貫通し、第1のカバー部材84内の繊維と融合することができる。
【0067】
他の実施形態では、第1のカバー部材84と第2のカバー部材86との間の融合は、マスクされた織物層88を覆う第2のカバー部材86の堆積後に行われてもよい。例えば、
図10に示されたアセンブリは、封緘プロセスにかけられてもよく、それによってアセンブリは、第1および第2のカバー部材84、86を織物層88内の開口部を通して互いに接合させるように熱および/または圧力にかけられる。さらに、織物層88は、織物層88をそれらの間に封緘するために、第1および第2のカバー部材84、86のそれらのそれぞれの端における接合を容易にするように、第1および第2のカバー部材84、86よりも短い軸方向長さを有することができる。同様の封緘プロセスは、米国特許出願公開第2014/0209238号および第2016/0317305号に記載されている。
【0068】
一例示的実施形態では、ePTFEは、第1のカバー部材84を堆積させるための第1のコーティング材、および/また第2のカバー部材864を堆積させるための第2のコーティング材として使用され得る。代替として、上述されたUHMWPE、ポリウレタン複合材料、また任意の他の非吸収性ポリマー材料などの他の材料が、使用されてもよい。望ましくは、内側スカート16は、織物層88が2つの融合された層、すなわち、第1のカバー部材84と第2のカバー部材86との間に挟まれる積層体構造を有することができる。いくつかの実施形態では、同じ材料は、第1および第2のカバー部材84、86を堆積させるために使用されてもよい。層間融合または接合により、第1および第2のカバー部材84、86は、一緒に併合されてもよく、織物層88が封緘されている単一の構造(すなわち、物理的な層間境界は存在しない)を有効に作り出す。第1のカバー部材84の密度は、第2のカバー部材86の密度と同じでもよく、または異なってもよい。他の実施形態では、第1のカバー部材84を堆積させるために使用される第1のコーティング材は、第2のカバー部材86を堆積させるために使用される第2のコーティング材とは異なってもよい。
【0069】
第1および第2のカバー部材84、86が、織物層88を封緘するように共にしっかり融合された後に、内側スカート16は、心軸100から除去することができる。内側スカート16の一端部または両端部は、所望の高さの内側スカートを実現するように切り落とされてもよい。次いで、内側スカート16は、フレーム12に装着されてもよい。
【0070】
図6~
図10および上記説明は、環状形状の内側スカート16を形成するプロセスを示すが、外側スカート18を形成するために、同じプロセスが使用されてもよいことを理解されたい。さらに、上述したように、内側スカート16は、初めに平らなストリップとして形成され、次いでその2つの対向した縁を結合することによって環状形状に形成されてもよい。平らなストリップを形成するために、第1および第2のカバー部材84、86、ならびに織物層88は、上述したような円筒状の心軸100に代えて、平らな基板として構成されてもよい。
【0071】
上述したプロセスは、内側スカート16の第2のカバー部材86上に窓90を作り出すためにマスクキングを用いるが、これらの窓90を作り出すために他の方法が使用されてもよいことを理解されたい。例えば、最初に、第2のカバー部材86が、織物層88の全面を覆って堆積されてもよい。次いで、第2のカバー部材86上の選択領域94が、例えば、レーザ切断、化学的侵食、または他の手段によって設置および除去されてもよい。結果として、窓90は、第2のカバー部材86上の選択領域94に作り出され、その中で下にある織物層88を露出させ得る。別の例では、第2のカバー部材86は、それが選択領域94に第2のコーティング材を持たないように前もって製造されてもよい。次いで、前もって製造された第2のカバー部材86は、織物層88に巻き付けることができる。結果として、織物層88は、選択領域94に作り出された窓90を通じて露出させられ得る。次いで、アセンブリ(第1のカバー部材84、織物層88、および第2のカバー部材86)は、上述したように、熱および/または圧力による封緘プロセスを受け、第1および第2のカバー部材84、86を互いに接合させることができる。
【0072】
内側スカート16は、窓90の位置においてフレーム12に縫合することができる。例えば、内側スカート16は、フレーム12の内側に設置されてもよい。窓90の位置は、それぞれ支柱22、26、および28の第1、第3、および第4の列にほぼ対応するように配置され得るが、他の構成が用いられてもよい。
図11~
図13に関連して以下にさらに説明されるように、内側スカート16は、窓90の位置において織物層88を通って支柱のまわりに延在する縫合糸を用いて第1、第3、および第4の支柱列の支柱に固定することもできる。例示した実施形態における窓は、内側スカートの全周に連続的に延在するので、連続的な周方向に延在するホイップステッチが、各窓90における支柱の各列および織物層88に沿って形成され得る。
【0073】
上述したように、窓90は、選択した位置に作り出されてもよく、様々な形状のいずれかを有することができ、内側スカートが異なる位置でフレームに縫合されることを可能にする。例えば、上述したように、内側スカートは、周方向に離間配置された窓の列が形成され得、これによって、張力または応力をより受けがちである内側スカート上の選択した部分などにおいて支柱の列全体に沿って連続的には延在しない個々の縫合糸またはステッチの配置を可能にする。
【0074】
図11~
図13は、内側スカート16をフレーム12に縫合する例示的な方法を示す。
図11は、第1の側72および第2の側74を有する内側スカート16の一部の断面図を示す。上述したように、内側スカート16は、第1の側72の第1のカバー部材84と第2の側74の第2のカバー部材86との間に挟まれた封緘された織物層88を有する。
図11は、下にある織物層88を露出させる内側スカート16の第2のカバー部材86上の窓90も示す。織物を封緘するただ1つの単一構造を形成するように共に融合または接合され得る存封緘層84、86を形成するために同じ材料が使用されるとき、(破線によって示されるような)層間境界は、存在しなくてもよい。図示の実施形態では、織物層88は、単繊維織物、繊維、または紡績糸96を含む織物構造を有するように示されている。望ましくは、以下説明されるように、単繊維織物96は、縫合糸98を保持するために固定具として働くように十分な強度を有する。
【0075】
図12は、窓90を通じて織物層88と第1のカバー部材84との間に縫合糸98を通すやり方を概略的に示す。図示の実施形態では、縫合糸98は、針102に取り付けられる。望ましくは、針102の先端108は、尖っていない。針先端108に軽い力を付与しつつ第2の側74から窓90を通して針102を滑らせることによって、第1のカバー部材84は、織物層88から離れるようにわずかに押され、したがって、針102が第1のカバー部材84と織物層88との間に挿入される空間を作り出すことができる。図示のように、針102および取り付けられた縫合糸98は、窓90の第1の端部104から織物層88に滑り込み、窓90(例えば、96aおよび96b)によって露出させられる1つまたは複数の単繊維96の背後を通り、次いで、窓80の第2の端部106において織物層88から滑り出る。このようにして、縫合糸98は、内側スカート16の厚さ全体を通って延在しない。いくつかの実施形態では、第1のカバー部材84は、(
図12に示されるように)針102の挿入によって織物層88から分離することができず、この場合には、針102および取り付けられた縫合糸98は、第1のカバー部材84の厚さを部分的に通されてもよいが、内側スカートの厚さ全体を通して延在しない。
【0076】
図13は、内側スカート16の織物層88をフレーム12の隣接した支柱22に縫合することを概略的に示す。望ましくは、内側スカート16の第1の側72は、人工弁10の内面に位置する弁尖構造14に向かって内向きに向いており、内側スカート16の第2の側74は、フレーム12に対して外向きに向いている。窓90を通じて織物層88と第1のカバー部材84との間に針102および取り付けられた縫合糸98を縫うように通すことによって、窓80の第1の端部104と第2の端部106との間の単繊維織物96(例えば、96aおよび96b)は、縫合糸98を保持する固定具として集合的に働くことができる。次いで、縫合糸98は、隣接した支柱22に巻き付けられ、したがって単繊維織物(例えば、96aおよび96b)を隣接した支柱22に固定することができる。よって、内側スカート16は、フレーム12にしっかりと取り付けることができる。
図13は、例示のために、支柱22を示す。同様のやり方で、内側スカート16は、フレームの他の支柱(例えば、26、28、32)に縫合されてもよいことを理解されたい。
【0077】
上述したように、織物層88は、別個の織物糸96を有さない不織物構造を有することもできる。そのような場合には、縫合糸98は、尖った先端を有する針に取り付けられ得る。針は、織物層88を突き刺し、織物層を通して縫合糸98を縫うように通すために使用され得る。このようにして、窓90の第1の端部104と第2の端部106との間にある織物層88の一部は、縫合糸98を保持する固定具として機能することができ、これにより織物の一部を隣接した支柱22に固定する。したがって、内側スカート16をフレーム12にしっかり取り付けることができる。
【0078】
縫合糸98が第1のカバー部材84と織物層88との間に通されるので、縫合糸98は、内側スカート16の第1の側72で露出されない。言い換えれば、縫合糸98は、第1のカバー部材84によって覆われる。織物層の内側面も、第1のカバー部材によって覆われる。したがって、人工弁10の作動サイクル中の弁尖40と内側スカート16との間、および弁尖40と縫合糸98との間の繰り返しの接触による弁尖40の摩耗について防ぐことができる。望ましくは、内側スカート16は、第2のカバー部材86上の1つまたは複数の窓90のみにおいてフレーム12に縫合され、それによって弁尖40の可動部分と縫合糸98との間の接触は防がれ得る。さらに、望ましくは、第1のカバー部材84は、人工弁の作動サイクル中に弁尖の可動部分にそうでなければ接触する織物層の内側面の広がり全体、または織物層の少なくとも一部を覆う。いくつかの実施形態では、縫合糸98は、弁尖の可動部分と接触しない内側スカート上の位置などの内側スカートの厚さ全体を通過することができる。
【0079】
上述したように、弁尖40は、接合部58を形成するように隣接した側部において互いに固定され得る。各接合部58は、米国特許出願公開第2012/0123529号に説明されているように、フレーム12の対応する接合部窓20に固定することができる。弁尖40の流入縁または尖端縁52は、弁尖構造の波形の流入縁の湾曲を追う縫合線に沿って内側スカート16に縫合され得る。織物層88は、縫合糸を保持するのに必要な強度を与えることができる。エチボンド(Ethibond)縫合糸などの任意の適した縫合糸が、弁尖40を内側スカートの織物層88に固定するために使用可能である。
【0080】
いくつかの実施形態では、弁尖40の流入縁52は、内側スカート16をフレームに装着する前に内側スカート16に固定される。弁尖40を内側スカート16に固定した後に、次いで、内側スカートは、上述したようにフレームに固定され、弁尖の接合部58は、フレームに装着される。他の実施形態では、内側スカート16は、弁尖なしでフレームに装着されてもよく、その後、次いで弁尖の流入縁52が、内側スカートに固定される。
【0081】
いくつかの実施形態では、弁尖40の流入縁52は、米国特許第7,993,394号に開示されるように、薄いPET補強ストリップ(図示せず)を介して内側スカートに固定されてもよい。米国特許第7,993,394号に説明されるように、補強ストリップは、弁尖の流入縁に縫合することができる。次いで、補強ストリップおよび弁尖の下縁は、内側スカート16に縫合することができる。望ましくは、補強ストリップは、弁尖の流入縁52は、弁尖および補強ストリップが内側スカートに固定されるときに、補強ストリップと内側スカートとの間に挟まれるように弁尖40の内側面に固定される。補強ストリップは、縫合を固定し、弁尖構造の心膜組織が裂けるのを保護することが可能である。
【0082】
上述したように、外側スカート18は、内側スカート16と同様のやり方で構成されてもよい。すなわち、外側スカート18は、封緘層84と86の間に挟まれた補強層(例えば、織物層88)を有することもできる。同様に、窓90は、封緘層84、86の一方に作り出されてもよい。外側スカート18がフレーム12の外側に固定されるので、望ましくは、外側層18は、フレーム12が窓90を有する外側スカート18の側に面するように配置される。そのような配置では、外側スカート18は、フレームに面す窓90を通じて封緘された織物層88をフレーム12に縫合することによってフレーム12に取り付けることができる。
【0083】
また、別の実施形態では、外側スカート18は、封緘層84、86の一方のみが被覆されている織物層88を有することができる。外側スカート18をフレーム12に取り付けている間、外側スカート18は、織物層88の被覆されていない側がフレーム12に向かって内向きに向いているように配置されてもよく、したがって外側スカート18は、露出させられた織物層88をフレーム12に縫合することによってフレーム12に取り付けられ得る。
【0084】
代替として、外側スカート18は、封緘層84、86のどれもない織物層88だけを備えてもよい。したがって、外側スカート18は、フレーム12に直接縫合することができる。外側スカート18上の縫合糸が弁尖40を動かすことによる繰り返し接触を受けないので、外側スカート18上の縫合糸による弁尖の摩耗は、内側スカート16上の縫合糸よりも心配が少なくなり得る。封緘層84、86の一方または両方をなくすことによって、外側層18は、より薄く構成することができ、したがってそれが径方向に圧縮状態へ縮ませられているときに弁10の外形全体を減少させる。
【0085】
一般論
開示された実施形態は、心臓の生来の輪(例えば、肺、僧帽弁、および三尖弁の輪)のいずれかに人工デバイスを送達および移植するのに適合され得るとともに、様々な送達手段(例えば、逆行、順行、経中隔、経心室、経心房などの)のいずれかと共に使用されてもよいことを理解されたい。
【0086】
本説明のために、本開示の実施形態のいくつかの態様、利点、および新規な特徴が、本明細書中に説明されている。開示した方法、機器、およびシステムは、決して限定であると解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、ならびに様々な組合せおよび互いに対するサブコンビネーションで、開示した様々な実施形態の全ての新規かつ自明でない特徴および態様に向けられている。方法、機器、およびシステムは、任意の特定の態様もしくは特徴またはその組合せに限定されず、開示された実施形態は、任意の1つまたは複数の特定の利点が存在することあるいは課題が解決されることも必要としない。任意の例からの技術は、他の例のいずれか1つまたは複数に説明された技術と組み合わされてもよい。開示した技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、例示した実施形態は、本発明の好ましい例に過ぎず、開示した技術の範囲の限定としてとらえられるべきではないことを認識されたい。
【0087】
開示した実施形態のうちのいくつかの動作は、提示に都合よいように特定の連続した順序で説明されるが、以下に記載される特定の言葉によって特定の順序が必要とされない限り、この説明のやり方は、再構成を包含することを理解されたい。例えば、連続的に説明される動作は、場合によっては、再構成されてもよく、または同時に実行されてもよい。また、簡潔にするために、添付の図は、開示された方法が他の方法と共に使用できる様々なやり方を示さない場合がある。さらに、本説明は、開示した方法を説明するために「実現する(provide)」または「達成する(achieve)」のような用語を使用する場合がある。これらの用語は、実行される実際の動作の高いレベルの抽象概念である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施に応じて変わり得るとともに、当業者によって容易に認識できる。
【0088】
本出願におよび特許請求の範囲に使用されるとき、文脈上特段明確に指示されていない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数形を含む。さらに、用語「含む(include)」は、「備える(comprise)」を意味する。さらに、用語「結合される」および「接続される」は、電気的に、電磁気的に、および/または物理的に(例えば、機械的にまたは化学的に)結合またはリンクされることを一般に意味し、特定の反対の言葉がない場合、結合されたもしくは連結されたまたは関連した要素間に中間要素が存在することを除外しない。
【0089】
方向および他の相対的基準(例えば、内側(inner)、外側(outer)、上側、下側など)は、図面および本明細書中の原理の説明を容易にするために使用され得るが、限定であることは意図されていない。例えば、「内側(inside)」、「外側(outside)」、「上(top)」、「下(down)」、「内面」、「外面」等などのある種の用語が使用され得る。そのような用語は、適用可能である場合、特に例示した実施形態に関して、相対関係を扱うときにいくらか明確な説明を行うために使用される。しかしながら、そのような用語は、絶対的な関係、位置、および/または向きを含意することは意図されていない。例えば、ある物体に関して、「上側」部分は、単にこの物体を裏返すことによって、「下側」部分になり得る。それにも関わらず、それは、未だに同じ部分であり、物体は同じままである。本明細書中で使用されるとき、「および/または」は、「および」または「または」、ならびに「および」および「または」を意味する。
【0090】
開示した本発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、例示した実施形態は、本発明の好ましい例に過ぎず、本発明の範囲の限定としてとらえられるべきではないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。したがって、上記特許請求の範囲の範囲内に入る全部を我々の発明として権利主張する。
【符号の説明】
【0091】
10 人工弁、弁
12 ステント、フレーム、ベアフレーム
14 弁構造、弁尖構造
15 スカートアセンブリ
16 内側スカート
18 外側スカート
20 スロット、接合部窓
22 角度付き支柱、支柱
24 角度付き支柱、支柱
26 角度付き支柱、支柱
28 角度付き支柱、支柱
30 窓フレーム部分、フレーム部分
31 軸方向に延在する支柱、軸方向支柱、支柱
32 角度付き支柱
34 軸方向に延在する支柱、支柱
36 開口部
38 開口部
40 弁尖
42a 比較的大きい角度
42b 比較的大きい角度
42c 比較的大きい角度
42d 比較的大きい角度
42e 比較的大きい角度
44 結節または連結部、連結部
46 結節または連結部、連結部
48 入口端
50 出口端
52 曲がったほぼU形の入口縁または尖端縁、流入縁または尖端縁、流入縁
54 入口端
56 出口端
58 接合部
60 開口部
64 連結部
66 拡張部分または突出部、突出部
68 凹部
70 縫合糸
72 第1の側
74 第2の側、フレームに面する側
84 第1のカバー部材、封緘層、層
86 第2のカバー部材、封緘層、層
88 補強層、織物層、層、下にある織物層
90 窓または開口部、窓
92 マスク
94 選択領域、物理的マスク
96 織物単繊維、繊維、紡績糸、単繊維、織物糸
96a 単繊維
96b 単繊維
98 縫合糸
100 心軸
102 針
104 第1の端部
106 第2の端部
108 先端、針先端