(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】コーティングされた金属板に電気的な接続コンタクトを製作するための方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20221011BHJP
H05K 3/44 20060101ALI20221011BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H05K3/00 K
H05K3/44 Z
H05K3/28 Z
(21)【出願番号】P 2020513741
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2018074149
(87)【国際公開番号】W WO2019048617
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-31
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511136935
【氏名又は名称】フェストアルピーネ シュタール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】voestalpine Stahl GmbH
【住所又は居所原語表記】voestalpine-Strasse 3, A-4020 Linz, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ブライツ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター アツミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ヤコービ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ヒルバー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ゼル
(72)【発明者】
【氏名】ヘアベアト エンザー
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-361464(JP,A)
【文献】特開2012-88226(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0259216(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 3/44
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な絶縁層(5)により被覆された少なくとも1つの電気的な導体路(4)を含むコーティング(2)を有するコーティングされた金属板(1)に電気的な接続コンタクト(6)を製作するための方法であって、
前記電気的な導体路(4)に対して相対的に工具(9)を位置決めし、
引き続き、前記工具(9)を用いて、前記電気的な絶縁層(5)を貫通して少なくとも前記電気的な導体路(4)にまで切欠き(8)を形成し、
次のステップにおいて、前記切欠き(8)内に、一方の端部(7.1)で前記導体路(4)に電気的に接続していて、他方の端部(7.2)に前記電気的な接続コンタクト(6)を形成している導電性のコンタクト素子(7)を設ける、
方法において、
前記金属板(1)を赤外検出器(10)によって走査し、走査データ(12.1,12.2,12.3)から前記金属板(1)の熱分布(12)を形成し、前記熱分布(12)に基づき、前記金属板(1)の前記導体路(4)に対する位置情報(13)を特定し、前記位置情報(13)を前記工具(9)の位置決め時に考慮することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記金属板(1)の走査前に前記コーティング(2)を、特にフラッシュ(15)又は加熱ガス若しくは冷却ガスによって、パルス状に励起することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱分布(12)を所定の期間にわたって検出し、前記熱分布(12)の時間的な変化に基づき、前記コーティング(2)内の前記導体路(4)の深さ情報を推測することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記赤外検出器(10)としてサーモグラフィカメラ(17)を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記導体路(4)に対する前記位置情報(13)を、中赤外線(MIR)に基づいて前記金属板(1)の前記熱分布(12)において特定することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記切欠き(8)を、レーザ(91)又は中空ニードル(92)を有する工具(9)を用いて形成することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コンタクト素子(7)を形成するために、前記切欠き(8)内に導電性の粘性材料(70)、特にペースト/インクを供給することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属板(1)を活性に励起することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属板(1)を反射光により走査することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な絶縁層により被覆された少なくとも1つの電気的な導体路を含むコーティングを有するコーティングされた金属板に電気的な接続コンタクトを製作するための方法であって、電気的な導体路に対して相対的に工具を位置決めし、引き続き、この工具を用いて、電気的な絶縁層を貫通して少なくとも電気的な導体路にまで切欠きを形成し、次のステップにおいて、この切欠き内に、一方の端部で導体路に電気的に接続していて、他方の端部に電気的な接続コンタクトを形成している導電性のコンタクト素子を設ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
金属板上のコーティング内に埋め込まれた導体路を電気的に接続することができるようにするために、先行技術(欧州特許出願公開第1517597号明細書)に基づき、工具を用いて絶縁層を部分的に除去して、切欠きを提供し、これによって、導電性のコンタクト素子を設けることが公知である。工具の位置決めは、金属板から既に判明している、被覆された導体路の延在に対するデータを介して行われる。切欠きが導体路に対して正確に位置決めされていないと、不都合にも、接続コンタクトにおける電気的な抵抗値が高まることとなる。したがって、方法の再現可能性が小さくなり、このように製造された装置の機能も損なわれることとなる。確かに、比較的手間をかけて方法の精度を向上させることによって、方法の再現可能性を改善することは可能である。しかしながら、電気的な接続コンタクトを製作するための方法においては、被覆された導体路の延在に対するデータを逸脱させる、金属板の製作におけるパラメータ変動によって、方法の再現可能性がさらに極めて不確かとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の開示
したがって、本発明の課題は、電気的な接続コンタクトを製作するための方法の再現可能性及び精度を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、金属板を赤外検出器によって走査し、走査データから金属板の熱分布を形成し、この熱分布に基づき、金属板の導体路に対する位置情報を特定し、この位置情報を工具の位置決め時に考慮することによって、前述した課題を解決する。
【0006】
金属板が赤外検出器によって走査され、走査データから金属板の熱分布が形成され、この熱分布に基づき、金属板の導体路に対する位置情報が特定され、この位置情報が工具の位置決め時に考慮されると、方法の再現可能性を大幅に改善することができる。すなわち、こうすることにより、金属板から既に判明している、導体路に対する位置情報のデータを、熱分布に基づき作成された位置情報によって改善することができる。こうして、工具の位置決めの精度を向上させることができる。したがって、本発明に係る方法は、接続コンタクトの形成において、コーティングされた金属板の製作におけるプロセス変動に対して不感となる。これによって、抵抗の小さい接続コンタクトをプロセス安全に得ることができる。当然に、本発明の範疇には、工具の位置決めのために、熱分布に基づき特定される位置情報のみを方法において使用することも含まれる。
【0007】
熱分布を形成するためには、種々異なる方法又はサーモグラフィ法を使用することができる。この場合、アクティブサーモグラフィ法又はパッシブサーモグラフィ法が可能である。このためには、反射光走査若しくは反射光法又は透過光走査若しくは透過光法が可能である。好適には、熱分布を形成するために、アクティブサーモグラフィ法が使用され、例えばパルスサーモグラフィ又はロックインサーモグラフィが可能である。パルスサーモグラフィにおいては、熱励起を、例えばフラッシュランプ又はレーザを用いて行うことができる。ロックインサーモグラフィにおいては、熱励起を、例えばハロゲンランプ又は電圧の印加によって行うことができる。赤外検出器として、冷却式又は非冷却式の赤外検出器を使用することができる。
【0008】
金属板の走査前にコーティングが、特にフラッシュ又は加熱ガス若しくは冷却ガスによって、パルス状に励起されると、熱分布に基づき特定される位置情報をより改善することができる。
【0009】
熱分布が所定の期間にわたって検出され、熱分布の時間的な変化に基づき、コーティング内の導体路の深さ情報が推測されると、導体路の位置情報の精度をより向上させることができる。
【0010】
赤外検出器としてサーモグラフィカメラが使用されると、方法を容易にハンドリングすることができる。
【0011】
導体路に対する位置情報が、中赤外線(MIR)に基づいて金属板の熱分布において特定されると、該当する導体路の位置情報に対する精度を付加的に向上させることができる。すなわち、MIR範囲における有機コーティングのより高い吸収は、信号対雑音比をより増大させることができる。これによって、電気的な接続コンタクトを製作するための方法の精度をより向上させることができる。一般的に述べると、中赤外線MIRは、例えば電磁波の3乃至50μmの波長のスペクトル範囲にあり得る。
【0012】
切欠きが、レーザ又は中空ニードルを有する工具を用いて形成されると、電気的な絶縁層を貫通して少なくとも電気的な導体路にまで延びる切欠きを再現可能に形成することができる。
【0013】
工具の正確な位置決めに基づき、コンタクト素子を形成するために、切欠き内に導電性の粘性材料を供給することも可能となる。これによって、方法を大幅に簡略化することができ、例えば抵抗の少ない接触を確保することができる。導電性の粘性材料として、例えば、導電性のポリマ又はペースト/インクが好適である。
【0014】
一般的に述べると、コンタクト素子を形成するために、導電性のポリマ、例えばポリアニリン、ポリピロール又はポリチオフェンを使用することができる。また、これに代わり、このようなペースト/インクは、金属系、例えば銀、銅若しくは金、有機系、例えばPEDOT((ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン)、又は、グラフェン系を含んでいてもよい。また、このためには、炭素又は黒鉛も可能である。金属系を含んだインク/ペーストは、特に有利な導電率の点において優れている。これに対して、有機系を含んだインク及び/又はペーストは、通常、高められた耐食性を提供することができる。ペーストは、一般的にインクよりも高い粘度、例えば50mPa・s超、好適には1Pa・s超の粘度を有している。例えばPEDOT:PSSは、インクとして製造することもできるし、ペーストとしても製造することもできる。このことは、例えば溶媒の量、一例として水又はイソプロパノールの量を介して調整可能である。
【0015】
金属板が活性に励起されると、熱分布に基づき特定される位置情報をより改善することができる。この熱的な励起は、フラッシュ、レーザ、ハロゲンランプ又は電圧の印加等によって行うことができる。
【0016】
好適には、反射光による金属板の走査が行われる。周知のように、このような反射光走査においては、金属板を活性に励起するための熱源と同一の側に赤外検出器が配置されている。これによって、熱分布に基づき特定される位置情報をより改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の対象を添付の図面に基づき詳細に例説する。
【
図1】金属板上のコーティング内の導体路に対する位置情報を検出するための概略図である。
【
図2】コーティングされた金属板を、切欠きを加工するための工具と共に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明を実施するための形態
図1及び
図2によれば、特に鋼材料から成る金属板1、好ましくは金属薄板が、部分的に切り取られた平面図で示してある。この金属板1はコーティング2を備えている。このコーティング2は、金属板1に塗布された下塗り3、例えばプライマと、この下塗りに設けられた電気的な導体路4と、この導体路4を外部に対して被覆する電気的な絶縁層5、例えば被覆塗料とから成っている。
【0019】
さらに、
図2には、導体路4を電気的に接続することができる記入した電気的な接続コンタクト6を認めることができる。この電気的な接続コンタクト6は導電性のコンタクト素子7によって形成される。
図1に相俟って認めることができるように、このためには、コンタクト素子7が、電気的な絶縁層5に設けられた切欠き8を通って電気的な導体路4にまで突出していて、したがって、この導体路4に接触接続している。これによって、コンタクト素子7が一方の第1の端部7.1で導体路4に電気的に接続されている。このとき、コンタクト素子7は他方の第2の端部7.2に電気的な接続コンタクト6を形成している。
【0020】
切欠き8は、レーザ91を有する工具9を用いて電気的な絶縁層5を貫通して少なくとも電気的な導体路4にまで、例えば工具9のレーザビーム91.1の材料アブレーションによって形成される。このためには、工具9が電気的な導体路4に対して相対的に、例えば電気的な導体路4の直上に、しかも、電気的な導体路4がコンタクトパッド4.1を形成している箇所に位置決めされる。
【0021】
切欠き8の形成後、この切欠き8内に導電性の粘性材料70、すなわち、ペーストが供給され、例えば、この粘性材料11の後続の硬化及び/又は乾燥等によって固形のコンタクト素子7が形成される。
【0022】
一般的には、レーザ91の代わりに、中空ニードル92によって切欠き8を形成することも可能である。中空ニードル92は、さらに、形成された切欠き8からの中空ニードル92の引戻しと同時に切欠き8内に導電性の粘性材料70、すなわち、ペーストを供給することもでき、例えば、この粘性材料11の後続の硬化及び/又は乾燥等によってコンタクト素子7が形成されるという利点を提供する。
【0023】
工具9の特に正確な位置決めを確保するために、本発明によれば、金属板1が、
図1に概略的に示したような赤外検出器10によって走査される。この赤外検出器10の走査データ12.1は演算ユニット11に供給され、この演算ユニット11が、走査データ12.1から金属板1の熱分布12を形成する。導体路4は熱放射にあたり周辺の領域から際だっているため、平面図では透けない絶縁層5を通して導体路4が認められることによって、
図1に熱分布12を認めることができる。この熱分布12に基づき、演算ユニット11によって、金属板1の導体路4に対する位置情報13が特定され、移動装置14に伝送される。引き続き、この移動装置14が位置情報13に基づき工具9を、例示した移動軸x,y,zに沿ってコンタクトパッド4.1の中心に位置決めする。このことは、
図2に部分的に認めることができる。これによって、絶縁層5への、正確に位置決めされた切欠き8の製作を確保することができる。したがって、この位置正確な切欠き8内に形成されたコンタクト素子7によって、抵抗の小さい電気的な接触接続が再現可能に行われる。
【0024】
赤外検出器10による金属板1の走査前には、
図1に認めることができるように、コーティングがIRフラッシュ15によってパルス状に励起される。したがって、本発明によれば、例えば、反射光下での走査又は反射光走査によるアクティブサーモグラフィ法が用いられる。これによって、熱分布12において認めることができる要素を十分に識別するための、走査すべき金属板1の特に良好な励起が達成される。
【0025】
さらに、熱分布に基づき、コーティング5内の導体路4の深さ16が算出される。このためには、所定の期間にわたって又は所定の時間インターバルΔtをおいて、熱分布12が走査され、引き続き、複数の走査データ12.1,12.2,12.3が演算ユニット11に記憶される。これらの走査データ12.1,12.2,12.3に基づいて、演算ユニット11が熱分布12の時間的な変化を算出し、この変化に基づき、コーティング2内の導体路4の深さ情報16が推測される。この深さ情報16は、移動装置14に伝送され、これによって、工具9が押込み深さに応じて開ループ制御/閉ループ制御される。
【0026】
赤外検出器10として、本実施例においては、サーモグラフィカメラ17が使用される。
【0027】
さらに、導体路4に対する位置情報13は、中赤外線(MIR)に基づいて金属板1の熱分布12において特定される。このことは、工具9の正確な位置決めに基づき、特に再現可能な方法を提供する。