(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】毛様体筋活動を測定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/389 20210101AFI20221011BHJP
【FI】
A61B5/389
(21)【出願番号】P 2020520493
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 IB2018058008
(87)【国際公開番号】W WO2019077488
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-22
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ジョン キャンピン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン リーデル
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ハンター ペティット
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第9144376(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0079771(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/389
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科システム(600)であって、
(1)患者の目の表面と接触するように構成されたコンタクトレンズ
(602)であって、前記コンタクトレンズが、
複数の同心リングを含む複数の双極電極を含み、
各同心リングが複数のセグメントを含み、前記複数のセグメントのそれぞれが、患者の毛様体筋に関連する電界を
示す信号を生成するように構成されるコンタクトレンズ
;
(2)1つ又は複数のプロセッサ
(612)及びメモリ(614)を含む診断システム(606)であって、前記診断システムは、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するための命令を含み、
前記診断システムは、
毛様体筋評価手順中に
前記同心リングの前記複数の
セグメントによって生成された複数の信号
(604)を受信し、前記複数の信号のそれぞれが、患者の毛様体筋に関連する電界を
示すように
構成され、
前記複数のセグメントから受信した前記複数の信号の品質及び正確性の差異を評価するために、前記受信した信号を比較することを含む前記受信信号を解析するように
構成され、
前記患者の毛様体筋の評価に使用するための前記毛様体筋からの電気的活動の正確な測定を提供する信号のサブセットを識別するように構成され、ここで、前記解析によって識別された前記信号のサブセットは、前記患者の毛様体筋と整列された同心リングの前記複数のセグメントのサブセットから受信される、且つ
前記複数のセグメントの前記識別されたサブセットに関連する値を計算するように
構成され、ここで、前記値を計算することが、第1の同心リングの少なくも1つのセグメントによって生成された信号のサブセットの第1の信号と、第2の同心リングの少なくも1つのセグメントによって生成された信号のサブセットの第2の信号との和を計算することを含み、前記第1の同心リング及び第2の同心リングは、前記複数の同心リングの隣接リングである;並びに
(3)前記プロセッサに通信可能に結合された、且つ前記
複数のセグメントの識別された
サブセットに関連する前記計算された値を表示するように構成されたディスプレイ
(608)
を含む、眼科システム。
【請求項2】
前記複数のセグメントから受信した前記複数の信号を評価することが、前記信号と、閾値又は平均もしくは中央値とを比較することを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数のセグメントから受信した前記複数の信号を評価することが信号を処理することを更に含み、前記信号が、毛様体筋活動の最も正確な及び/又は最も信頼性のある示唆を提供する信号のサブセットを識別かつ選択するために、合計、平均化、比較及び統計処理から選択される1つ又は複数のアルゴリズムを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
毛様体筋活動の評価に使用するための前記診断システムによって実行されるプロセシングアルゴリズムによって、前記信号のサブセットを識別することが、毛様体筋の周囲又は周辺内に位置し、且つその周囲又は周辺と整列される前記セグメントのサブセットから受信した信号を識別することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記命令が、前記1つ又は複数のプロセッサによって実行された場合に、前記
選択された信号のサブセットの前記計算された和を所定値と比較するように動作可能である、請求項
1に記載のシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項で定義された眼科システム(600)の1つ又は複数のプロセッサ(612)及びメモリ(614)を含むコンピュータ(606)を用いて実行される、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力の解析方法であって、
前記眼科システムが、患者の目の表面と接触するように構成されたコンタクトレンズ(602)を含み、前記コンタクトレンズが、複数の同心リングを含む複数の双極電極を含み、各同心リングが複数のセグメントを含み、前記複数のセグメントのそれぞれが、患者の毛様体筋に関連する電界を示す信号(604)を生成するように構成される複数のセグメントを含み、
前記方法が、
(1)毛様体筋評価手順中に前記複数の同心リングによって生成された複数の信号を1つ又は複数のプロセッサで受信する工程、ここで、各同心リングが複数のセグメントを含み、前記複数の信号のそれぞれが毛様体筋に関連する電界を示す;及び
(2)前記遠近調節の潜在力を評価するために、前記受信した信号を解析する工程
を含み、
前記遠近調節の潜在力を評価するために、前記受信した信号を解析することが、
(i)患者の毛様体筋と整列された前記同心リングの前記複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを識別すること;
(ii)前記複数のセグメントからの前記複数の受信した信号の品質及び正確性の差異を評価するために、閾値、平均又は中央値を比較することを含む、前記受信した信号を分析すること;
(iii)患者の毛様体筋の評価に使用するための毛様体筋からの電気的活動の正確な測定を提供する信号のサブセットを、前記複数の受信した信号から選択すること;
(iv)前記複数のセグメントの前記識別されたサブセットに関連する値を計算すること、ここで、前記値を計算することが、第1の同心リングの少なくも1つのセグメントによって生成された信号のサブセットの第1の信号と、第2の同心リングの少なくも1つのセグメントによって生成された信号のサブセットの第2の信号との和を計算することを含み、前記第1の同心リング及び第2の同心リングは、前記複数の同心リングの隣接リングである;並びに
(v)前記計算された値に基づいて遠近調節の潜在力を評価すること
を含む、方法。
【請求項7】
前記計算された値に基づいて毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価することが、前記識別された信号のサブセットの前記計算された和を所定値と比較することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
毛様体筋が光パワーを変化させて、異なった距離で1つ又は複数の標的に焦点を合わせるように、前記毛様体筋の評価手段が、前記複数の受信した信号の変化を検出することを含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、一般に眼科の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の目は、角膜と呼ばれる透明な外側部分を通して光を送ること、及び水晶体を介して網膜上に画像の焦点を合わせることによって、視力を提供する。合焦画像の質は、目のサイズ及び形状、並びに角膜及び水晶体の透明度を含む多くの要因に依存する。
【0003】
年齢又は病気が、水晶体の透明度を低下させる場合に、視力は、網膜に送られ得る光の減少ゆえに、悪化する。目の水晶体におけるこの欠陥は、医学的には白内障として知られている。この状態の一般に認められた治療法は、水晶体の外科切除及び人工眼内レンズ(IOL)による水晶体機能の取り替えである。
【0004】
米国において、白内障水晶体の大部分は、水晶体超音波乳化吸引術と呼ばれる外科的技術によって切除される。この処置中に、開口が、水晶体前嚢に作られ、薄い水晶体超音波乳化吸引術切削チップが、病気の水晶体に挿入され、超音波で振動される。振動する切削チップは、水晶体が目から吸引されるように、水晶体を液化又は乳化する。病気の水晶体は、ひとたび切除されると、IOLによって取り替えられる。
【0005】
生来の水晶体において、遠見及び近見視力は、遠近調節として知られている機構によって提供される。生来の水晶体は、水晶体嚢内に含まれ、生存中の早期には柔らかい。水晶体嚢は、毛様小帯によって毛様体筋から吊り下げられている。毛様体筋の弛緩は、毛様小帯を緊張させ、水晶体嚢を引き伸ばす。結果として、生来の水晶体は、平らになる傾向がある。毛様体筋の緊張は、毛様小帯の緊張を緩め、水晶体嚢及び生来の水晶体が、より丸い形状を取ることができるようにする。このように、生来の水晶体は、近く及び遠くの対象に交互に焦点を合わせることができる。
【0006】
水晶体は、老化するにつれて、より硬くなり、且つ毛様体筋の緊張に応じてその形状を変えることがそれほどできなくなる。更に、毛様体筋は、柔軟性及び可動域を失う。これは、水晶体が、近くの対象に焦点を合わせることをより困難にする。即ち老視として知られている医学的状態である。老視は、45~50歳に達すると、ほぼ全ての大人に影響する。加えて、患者はまた、加齢黄斑変性(AMD)などの他の状態に悩まされる可能性があり、加齢黄斑変性(AMD)は、読書などの視機能を実行できるようにするために、更に大きな拡大度を必要とする可能性がある。
【0007】
老視補正を提供する一アプローチは、眼内レンズ(IOL)又はコンタクトレンズなどの眼用レンズにおける電気活性光学素子の使用である。かかる電気活性素子は、毛様体筋による働き又は関連する電気的活動の検出に応じて、光パワー(及び従って患者の焦点距離)を変化させるように設計されてもよい。例示的なアプローチが、SENSORS FOR TRIGGERING ELECTRO-ACTIVE OPHTHALMIC LENSES(電気活性眼用レンズをトリガするためのセンサ)なる名称の米国特許第9,226,818号明細書に開示され、その特許は、参照によりその全体において本明細書で援用される。
【0008】
進行した老視者において、加齢に関連した筋肉低下は、毛様体筋の収縮する能力を抑制する可能性があり、毛様体筋運動に付随する電気信号は、減衰されるか又は欠如する可能性がある。結果として、筋肉が機能しない可能性がある毛様体筋で駆動される働きに依存する遠近調節IOLに関する固有のリスクが存在し、IOLは、適切に動作しない可能性がある。従って、毛様体筋における電気的活動を判定し特徴付ける必要があり、患者が、かかる電気活性眼用レンズを利用するための必須の毛様体筋活動を有するかどうかを判定するために、プレスクリーニング手順が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
或る実施形態によれば、方法は、毛様体筋評価手順中に複数の双極電極によって生成された複数の信号を受信することであって、複数の信号のそれぞれが、患者の毛様体筋に関連する電界を表示することと、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために信号を解析することと、を含む。毛様体筋評価手順は、患者からの相異なる距離で、1つ又は複数の目標に焦点を合わせることを含んでもよい。方法は、患者の目に適用されるコンタクトレンズを提供することであって、コンタクトレンズが、複数の双極電極を含むことを更に含んでもよい。双極電極の少なくとも1つは、患者の目に適用される場合に、患者の毛様体筋の周囲と整列されてもよい。
【0010】
或る例において、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために信号を解析することは、患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別することと、識別された信号のサブセットに基づいて値を計算することと、計算された値に基づいて、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価することと、を含む。識別された信号のサブセットに基づいて値を計算することは、識別された信号のサブセットの和を計算することを含んでもよい。計算された値に基づいて患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価することは、識別された信号のサブセットの計算された和を所定値と比較することを含んでもよい。
【0011】
或る例において、複数の双極電極は、複数の同心リングを含み、各同心リングは、複数のセグメントを含む。患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別することは、第1のリングのセグメントからの少なくとも1つの信号を識別すること、及び第2のリングのセグメントからの少なくとも1つの信号を識別することを含んでもよい。
【0012】
或る実施形態において、眼科システムは、患者の目の表面と接触するように構成されたコンタクトレンズを含む。コンタクトレンズは、複数の双極電極を含んでもよく、各双極電極は、患者の毛様体筋に関連する電界を表示する信号を生成するように構成される。システムは、毛様体筋評価手順中に複数の双極電極によって生成された複数の信号を受信するように構成されたプロセッサ及びメモリを含む診断システムを更に含んでもよく、複数の信号のそれぞれは、患者の毛様体筋に関連する電界を表示する。診断システムのプロセッサ及びメモリは、患者の毛様体と整列された双極電極のサブセットに対応する信号のサブセットを識別するために受信信号を解析するように、且つ識別された電極のサブセットに関連する値を計算するように更に構成されてもよい。システムは、プロセッサに通信可能に結合された、且つ識別された電極セットに関連する計算された値を表示するように構成されたディスプレイを更に含んでもよい。
【0013】
或る例において、診断システムのプロセッサ及びメモリは、患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別すること、及び識別された信号のサブセットに基づいて値を計算することによって、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために、信号を解析するように構成される。
【0014】
識別された信号のサブセットに基づいて値を計算することは、識別された信号のサブセットの和を計算することを含んでもよく、診断システムのプロセッサ及びメモリは、識別された信号のサブセットの計算された和をメモリに格納された所定値と比較するように更に構成されてもよい。
【0015】
或る実施形態において、複数の双極電極は、複数の同心リングを含み、各同心リングは、複数のセグメントを含んでもよい。患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別することは、第1のリングのセグメントからの少なくとも1つの信号を識別すること、及び第2のリングのセグメントからの少なくとも1つの信号を識別することを含んでもよい。
【0016】
前述の一般的な説明並びに以下の図面及び詳細な説明の両方が、本来例示的で説明的であり、本開示の範囲を制限せずに、本開示についての理解を提供するように意図されていることが理解されるべきである。その点で、本開示の追加の態様、特徴、及び利点は、下記から当業者には明らかになろう。
【0017】
添付の図面は、本明細書で開示されるシステム、装置、及び方法の実装形態を例示し、且つ説明と一緒に本開示の原理を明白にする働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】或る実施形態による、毛様体で駆動される眼科装置用に患者を評価する方法である。
【
図2A】患者の目の上でうまく整列された電極コンタクトレンズを表現する。
【
図2B】患者の目の上で偏心された(上方へと位置がずれた)電極コンタクトレンズを表現する。
【
図3】或る実施形態に従って、電極コンタクトレンズを例示する。
【
図4】或る実施形態に従って、電極コンタクトレンズを例示する。
【
図5A】患者の目の上でうまく整列された
図3の電極コンタクトレンズを表現する。
【
図5B】患者の目の上で偏心された(上方へと位置がずれた)
図3の電極コンタクトレンズを表現する。
【
図6】或る実施形態に従って、眼科システムを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これらの図は、以下の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解されよう。
【0020】
毛様体筋における変化に応じて、IOLなどの眼用レンズの倍率を変化させるように設計された遠近調節IOLを開発する努力が進行中である。筋肉活動の検出用の比較的成功した1つの感知技術は、筋電図検査である。筋電図検査は、筋収縮の程度を判定するために、筋肉を囲む電界パターンが、(電位測定などによって)経時的に測定される技術である。神経信号のカルシウムチャネルイオン検出又は他の直接検出などの方法とは対照的に、筋電図検査は、筋肉自体の電気的活動に集中し、かかるものとして、筋肉活動のより信頼できる測定基準であると分かった。更に、それは、筋肉活動の程度の連続的な指標、及び特に神経信号の2値検出ではなく、筋肉によって行使される力の程度を提供することができる。
【0021】
筋繊維の運動は、イオンの運動が伴う筋繊維内の脱分極によってトリガされ、それは、電界における変化をもたらす。脱分極波、筋繊維に沿って伝播するにつれて、脱分極波がファイバに沿って移動するときに正から負に符号を切り替える二相電界信号が生成される。筋電図検査センサは、電界におけるこの変化を検出し、それは、筋肉活動を測定できるようにする。骨格筋における測定は、強度が、単調に、且つ一般に筋肉によって行使される力と共に直線的に変化することを示し、その結果、電界は、筋肉によって行使される力の量の指標として用いることができる。
【0022】
眼用レンズ及び特にIOLへの適用において、遠近調節要求(筋肉活動が、視覚刺激に応じて要求される程度)と、筋肉における電界量との間の相関は、レンズを較正するために観察することができる。水晶体の硬化、並びに毛様体筋及び周囲の結合組織の老化ゆえに、遠近調節が老後に無力になるにもかかわらず、毛様体筋は、老眼においてさえ収縮し続ける。これは、遠近調節用のトリガとして、神経活動の検出又は電気的活動の全体的検出など、以前の感知技術よりもっと粒度の細かい検出を可能にする遠近調節要求の指標を提供することができる。結果として、近見及び遠見視力間の2値遷移の検出ではなく、かかるシステムは、毛様体筋組織の電気的活動に相関される連続的な調整範囲を可能にすることができ、それは、今度は、観察された遠近調節要求に基づいて較正される。かかる較正は、母集団における平均応答に基づくことが可能である。代替として、較正は、患者特有なものにすることが可能である。
【0023】
参照によって本明細書で援用される米国特許第9,226,818号明細書は、毛様体筋の電界を検出し、電界を示す信号を生成し、且つ信号に基づいて電気活性光学素子用の光パワーを調整するように構成された筋電図検査センサを含む例示的な電気活性眼用レンズを開示する。特定の実施形態において、センサは、電気活性レンズの自動制御に備える。他の実施形態において、センサは、電気活性レンズを操作するためのユーザ制御インターフェースを提供する。
【0024】
ほとんどの遠近調節IOLは、毛様体筋による働きに応じて光パワー(及び従って患者の焦点距離)を変化させるように設計される。幾つかの場合に、かかる眼科製品の性能は、残りの毛様体筋力を含む、目の内の生理的制約ゆえに制限され得る。例えば、進行した老視者において、毛様体筋の加齢に関連した低下は、その収縮する能力を低下させるか又はことによると除く可能性がある。適切なスクリーニングなしでは、かかる患者は、移植後に適切には働かない可能性がある高度な遠近調節IOLを外科的に受け入れるという高いリスクを冒す。従って、光パワーを変化させる指標として、毛様体筋の電気的活動を検出することによって働く遠近調節IOL又は他の眼科装置は、患者の毛様体筋活動から取得された電気信号が、実質的に減衰されているか又は欠如している場合に、効率的に働かない可能性がある。
【0025】
(例えばIOL移植用の水晶体の切除に先立って)有水晶体眼における毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために利用可能な技術は、現在は存在しない。それに応じて、本開示の実施形態は、患者の毛様体の電気的活動を手術前に評価し、且つ遠近調節する患者の潜在力を評価する非侵襲性のスクリーニング技術及びツールを提供する。これは、本明細書で説明されるように、遠近調節IOLの移植又はあつらえの毛様体筋で駆動される遠近調節コンタクトレンズの適用前に、例えば毛様体筋の電気的活動の感知を介して達成されてもよい。幾つかの実施形態は、かかる装置が、特定の個人に適切かどうかに関する決定を導くために、手術又は購入に先立って、毛様体筋で駆動される遠近調節眼科装置が、意図されるように機能しないであろう目を識別してもよい。以下の説明は、主としてIOLに集中するが、説明される技術はまた、毛様体筋活動によって駆動されるコンタクトレンズ又は眼鏡で用いることが可能である。
【0026】
図1は、或る実施形態に従って、毛様体で駆動される眼科装置用に患者をスクリーニングする方法100を示す高レベルの概略である。ステップ101において、測定装置が、患者の目に適用される。或る例において、測定装置は、以下で説明されるような電極コンタクトレンズを含む。レンズは、コンタクトレンズにおける又はその上の1つ又は複数の電極が、毛様体筋運動に基づいて電気信号データを取得するために、毛様体筋(又はそれの周囲/周辺)に隣接し、その上にあり、その回りにあり、且つ/又はその内部にあるように、目の上に配置される。
【0027】
ステップ102において、毛様体の機能スクリーニングが実行される。一例において、ケア提供者は、患者の毛様体筋活動を判定し特徴付けるために手術前検査を実行してもよい。例えば、ひとたび電極コンタクトレンズが、目の上に配置されると、患者は、確立された手順の下で、近く(例えば40cm内)及び遠く(例えば3m超)など、様々な距離で対象を見る指示に従ってもよい。患者が、相異なる目標距離へ焦点を変化させる(又は場合により、焦点を変化させるように試みる)につれ、それに応じて、毛様体筋は、生来の水晶体の合焦能力を変化させようと試みる。これは、コンタクトレンズ上の電極によって検出し伝達できる患者の毛様体筋の電界における変化を引き起こす。
【0028】
それに応じて、ステップ103において、各距離における毛様体筋の電界に応じて電極によって生成された電気信号は、後続の提示及び評価用に、コンピュータ606に向けられ、コンピュータ606によって受信され、処理され、且つ/又は記録されてもよい。幾つかの事例において、電気信号は、レンズの電極からコンピュータ606に、有線又は無線通信を介して送信される。以下で言及されるように、複数の信号が、スクリーニング手順中に、レンズ上の様々な電極から受信されてもよく、受信信号は、毛様体筋活動の最も正確な且つ/又は信頼できる指標を提供する信号を選択するために、(例えば、合計アルゴリズム、平均化アルゴリズム、比較アルゴリズム、及び/又は統計処理アルゴリズム等を用いて)コンピュータ606によって評価されてもよい。選択された特定の電極信号は、患者の目自体の特徴と同様に、患者の目の上のコンタクトレンズの位置にも依存し得る。コンピュータ606はまた、信号を処理し、且つ毛様体筋活動、応答性、強度、及び/又は遠近調節能力を特徴付ける数値又は他の測定値にそれらの信号を変換してもよい。生の又は処理された信号データは、コンピュータによって出力され、且つディスプレイ608上で表示されてもよい。
【0029】
ステップ104において、ステップ103の結果が評価される。ステップ103で生成され且つ/又は表示された信号値又は測定値は、患者用の手術上の推奨又は選択(例えば、毛様体で駆動される遠近調節装置を推奨又は提供するべきか否か)を行うために、コンピュータ606及び/又はケア提供者によって検討され評価されてもよい。ステップ104は、ケア提供者によって手動で、又はコンピュータ606によって自動的に実行されてもよい。例えば、ケア提供者は、測定値が、所定の閾値以上か若しくはそれ未満か、又は毛様体で駆動される眼科装置の利用に適していると考えられる所定範囲若しくは目標の結果内かどうかを判定するために、ステップ103で生成された毛様体筋活動の測定値を調査し評価してもよい。他の例において、コンピュータ606は、ステップ103で生成された毛様体筋活動の測定値を自動的に解析し、且つかかる評価を自動的に実行するために、メモリに格納された命令を実行してもよい。比較用の適用可能な閾値、範囲、又は目標は、コンピュータ606のメモリに格納され、且つユーザによって構成されてもよい。
【0030】
ステップ102で生成される測定された毛様体筋活動が、満足でき、且つステップ104における評価を通る(例えば、筋肉活動が、閾値以上か、目標通りか、又は所定範囲内である)場合に、ケア提供者は、ステップ106に進んでもよい。かかる場合に、毛様体筋活動は、電気活性遠近調節IOLなどの毛様体で駆動される眼科装置の適切な機能をサポートするのに十分であり得る。ケア提供者は、患者用の推奨を選択又は処方する場合に、毛様体で駆動される眼科装置を考慮し評価してもよい。
【0031】
ステップ102で生成される測定された毛様体筋活動が、不満足で、ステップ104における評価を通らない(例えば、筋肉活動が、閾値未満か、目標から遠くにあるか、又は所定範囲外である)場合に、ケア提供者は、ステップ108に進んでもよい。かかる場合に、毛様体筋活動は、電気活性遠近調節IOLなどの毛様体で駆動される眼科装置の適切な機能をサポートするのに不十分であり得、ケア提供者は、患者用の推奨を選択又は処方する場合に、毛様体で駆動される眼科装置の代替を考慮し、評価してもよい。
【0032】
従って、本開示の或る実施形態は、移植可能IOLを含む、毛様体で駆動される眼科装置用の非侵襲性クリーニング用の技術を提供する。
【0033】
ここで、眼科システム及び電極コンタクトレンズの設計及び機能が、付加的に詳細に説明される。毛様体筋活動を特徴付け測定するための様々な電極設計が、開発され用いられ得る。例えば、毛様体筋電気信号を測定するための電極は、コンタクトレンズに接着された又は埋め込まれた金属又はワイヤを含んでもよい。かかるレンズは、毛様体の電気信号を測定するために目の上に配置されてもよい。
【0034】
一般に、毛様体筋の位置に対する電極の位置及び間隔は、電気信号を検出する能力に影響する可能性がある。例えば、連続電極(例えばコンタクトレンズの光学軸のまわりの360度)の場合に、電極位置が偏心される(例えば
図3B及び5Bに示されているように、上方へと位置がずれる)か、又は目の上で移動する(潜在的には重力、眼球運動又はまばたきによる)とき、信号は、電極が筋肉位置から移動すると共に劣化されるか又は電位的に反転される。レンズ移動の影響を最小化する一アプローチは、レンズを角膜表面上に吸引することである。しかしながら、これは、不快になり得、完全には効果的でない可能性がある。更に、かかるアプローチは、毛様体筋運動に関係する電位的な信号変化に取り組まない可能性がある。
【0035】
毛様体の電気信号変化を測定する能力に影響し得る別の要因は、毛様体筋の直径と電極の直径との間の潜在的ミスマッチである。実際に、毛様体筋直径の患者間の相違さえ存在し得る。更に、これは、静的問題とすることができるか、又は毛様体筋がかなり収縮した場合に、遠近調節の機能として変化する可能性がある。
【0036】
毛様体筋活動の正確な測定及び特徴付けに関するこれらや他の潜在的な困難に取り組むために、或る実施形態は、専用の電極設計を用いる。例えば、多数の双極電極が用いられてもよい。かかる電極は、セグメント化するか又は多面にすることができ、且つ例えば、毛様体筋の周囲又は周辺の外部に位置する電極リングの一側、及び毛様体筋の周囲又は周辺の内部の対向側電極を含んでもよい。この構成は、信号をキャンセルするために、且つ/又は全体的な信号の大きさを低減するために用いられてもよい。
【0037】
加えて、或る実施形態は、毛様体の電気的活動のより包括的な地図を生成するために、電極をセグメント又は個別コンポーネントに分割してもよい。かかる例において、相異なるエリアは、真の電気信号をよりよく特徴付けるために(即ち毛様体筋運動に起因する電気的活動の正確な測定値を取得するために)、(例えば、毛様体筋の周囲又は周辺に対する整列及び位置に基づき)必要に応じて、(ケア提供者によって手動で、又はコンピュータ606によって自動的に)選択又は無視することができる。
【0038】
例えば、電極コンタクトレンズの各個別電極セグメントは、検出された毛様体筋活動の測定値を受信し、処理し、且つ表示する(例えばディスプレイ608を介して)ように構成されたプロセッサ及びメモリを含む眼科診断システム(例えばコンピュータ606)に接続されてもよい。ケア提供者は、ステップ104によって説明されているように、評価の基礎となる適切なセグメント(例えば毛様体筋と最もうまく整列されるセグメント)を識別し選択するために、患者の毛様体筋と様々な電極セグメントの整列を検査してもよい。他の例において、診断システムは、評価の基礎となる適切なセグメントを自動的に選択する。相異なる実装形態において、各セグメントは、時間ベースの多重化技術を用いて、連続的にサンプリングされるか又は断続的にサンプリングされてもよい。これらの特徴の1つ又は複数は、信号の特徴付けを最適化するために、且つ事情によっては、一側からの位置ずれ信号が、電極位置が変化するにつれて対向側を劣化させる可能性がある外部レンズの移動、遠近調節に関する毛様体筋運動、及び目の構造における差などの変数を説明するために用いられてもよい。
【0039】
図2A及び2Bは、毛様体筋活動を測定し、且つ本開示の原理を示すための、2つの埋め込み円形電極を備えたコンタクトレンズの例を示す。目200は、虹彩(ラベル付けされていない)のまわりの円によって表現された毛様体筋202を含む。目200の角膜上に置かれた透明コンタクトレンズは、基準電極204及び測定電極206を含む。測定電極206は、毛様体筋202の周囲を覆う大きさにされ、一方で基準電極204は、より大きく、且つ周辺の外側で毛様体筋202から更に離れて位置する。(代替実施形態において、基準電極204は、測定電極206より小さく、毛様体202から更に離れて位置するが、目200の瞳に一層近いことが可能である。)基準電極204及び測定電極206から受信される電気信号における差は、毛様体202における電気信号の大きさを測定するために用いることができる。
図2Aに示されているように、うまく整列された例において、基準電極204と測定電極206との間の信号強度の差は、どんな角度でも同じか又は似ている。例えば、目200の瞳の左側に対する信号差は、瞳の右側に対する信号差と同じか、又は同様にその上若しくはその下になろう。或る例において、(360度にわたる)測定信号は、全ての角度にわたってこれらの差を合計することによって決定されてもよい。
【0040】
図2Bは、
図2Aと同じ特徴を例示するが、基準電極204及び測定電極206は、毛様体筋202に対して上方に位置がずれている。この例において、基準電極206は、下方で毛様体筋202の上に配置され、この位置における差信号(基準電極204と測定電極206との間の)は、
図2Aに示された位置における類似の差信号から劇的に外れる可能性がある。幾つかの場合に、(電極204、206の底部の近くで)
図2Bにおいて測定された下方の信号は、
図2Aにおける信号の逆になり得る。
【0041】
上方では、基準電極204も測定電極206も、毛様体筋202とうまく整列されず、
図2Bで(電極204及び206の上端近くで)測定された上方の測定差信号は、非常に小さくなり得る。結果として、360度にわたる測定信号は、
図2Aに示された配置で取得された測定値と比較して、
図2Bでは著しく異なり得る。この例には上方変位が示されているが、電極204、206と毛様体202との間の相対変位は、どの方向でも発生する可能性がある。
【0042】
図3は、或る実施形態に従って、変位によって引き起こされた困難の克服を支援できる毛様体活動検出コンタクトレンズ用の電極配置を例示する。特に、レンズ300は、4つの同心電極リング301~304を含み、各同心電極リングは、グループ310、312、314及び316として示された4つのセグメントに分割される。外側リング電極304及び各より小さなリング302、303及び304は、それぞれ、各セグメント310、312、314及び316における電気的活動を測定し、16の別個のセグメント又はチャネルにおける示度を提供することができる。合計16のセグメント又はチャネルが、
図3に示されているが、リング及びそれらの分割の数は、ますます多くのチャネルが、電気設計及び処理要件における複雑さの増加を必要とするにつれて、複雑さを管理しながら性能を最適化するために、必要に応じて変更されてもよい。例えば、或る実施形態は、2~6のグループに分割された2~6の同心電極リングを含み、それによって、4~36のセグメント又はチャネルをどこでも提供してもよい。他の変更が、本開示の範囲内で考えられる。
【0043】
とりわけ、本開示は、
図3に示されているようなセグメント化された環形の電極構成には制限されない。他の実施形態は、相異なる形状、サイズ、又は配置の電極を有するレンズを含んでもよい。
図4は、例えば、電極410の外側リング及び電極420の内側リングを含むレンズ400の実施形態を例示し、各リングは、16の電極セグメントを含む。従って、
図4の実施形態は、32までのチャネルをサポートし得る。繰り返すと、合計32のチャネルが、
図4に示されているが、電極及びリングの数は、ますます多くのチャネルが、電気設計及び処理要件における複雑さの増加を必要とするにつれて、複雑さを管理しながら性能を最適化するために、必要に応じて変化してもよい。例えば、或る実施形態は、2~6の同心電極リングを含み、各リングは、3~20の電極を含み、それによって、6~120のチャネルをどこで提供してもよい。他の変更が、本開示の範囲内で考えられる。
【0044】
図5は、(
図4に示されているレンズ300と同一の)電極リングを含むコンタクトレンズを患者に適用することに由来する可能なシナリオを例示する。
図5Aにおいて、レンズ300は、目200の上で中心に置かれ、(
図3のリング303に対応する)中心からの第3のリングの4つの全てのセグメントは、毛様体筋202の周囲又は周辺とうまく整列されている。リング303の4つのセグメントのそれぞれによって生成された信号の合計は、
図2Aに示されている測定電極206から取得された信号に匹敵する信号を生じる-正確で信頼できると考えられ得る結果である。
【0045】
対照的に、
図5Bのレンズ300は、目200の上で偏心されている(
図3Bと類似して、上方へと位置がずれている)。結果として、リング303のセグメントは、
図5Bにおいて毛様体202とうまく整列されず、リング303の4つのセグメントのそれぞれによって生成された信号の合計は、
図2Bに示されている測定電極206から取得された信号に匹敵する信号を生じることになろう-信頼できず不正確な結果であると思われる。
【0046】
しかしながら、
図5Bにおいて、(
図3に示されているセグメント314及び316に対応する
図5Bの底部の方の)リング304の下部電極は、毛様体202とうまく整列されている。同様に、(
図3に示されているセグメント310及び312に対応する
図5Bの上部の方の)リング302の上部電極は、毛様体202と適切に整列されている。結果として、リング304の2つの下部電極及びリング302の2つの上部電極によって生成された信号の合計は、
図2Aに示されている測定電極206から取得された結果に匹敵する結果を生じる-再び、正確で信頼できると考えられ得る結果である。
【0047】
このように、信号を独立して生成し送信するように構成された複数の電極セグメントを含むレンズは、たとえレンズが、毛様体に対して位置がずれている場合でも、
図1の方法に従って、毛様体筋活動を正確に評価するために用いられ得る。これは、毛様体筋とうまく整列された電極からの信号を選択することによって達成することができる。かかる選択は、以下で説明されるように、ケア提供者によって手動で、又はコンピュータ606によって自動的に実行されてもよい。
【0048】
図6は、或る実施形態に従って、方法100を実行するために使用可能な眼科システム600を例示する。システムは、毛様体筋評価手順用に、患者の目の角膜の表面上に配置するように設計される1つ又は複数の電極コンタクトレンズ602を含む。レンズ602は、
図3及び5に示されているような多数の電極及びセグメントを含んでもよいが、それらの実施形態に示されている配置には制限されない。
【0049】
ひとたびレンズ602が、患者の目の上に配置されると、ケア提供者は、
図1のステップ102に関連して上記で図示されて説明されたステップを実行してもよい。幾つかの事例において、患者が、様々な距離で対象を見るときに、それに応じて、毛様体筋は、生来の水晶体の合焦能力を変化させようと試みる。これは、患者の毛様体筋の電界における変化を引き起こす。各距離において、レンズ602の各電極又はチャネルによって生成された電気信号604は、信号604を処理するための命令を実行するように構成されたプロセッサ及びメモリを含むコンピュータ606に送信され、且つコンピュータ606によって受信されてもよい。信号604は、有線又は無線通信を介してコンピュータ606に送信されてもよい。或る実施形態において、患者の毛様体と整列された多重電極レンズ602の特定のセグメント又はチャネルは、
図5Bの例に関連して上記で説明されたように、コンピュータ606によって識別され選択されてもよい。
【0050】
コンピュータ606は、1つ又は複数のプロセッサ612と、メモリ614と、を含む。メモリ614は、永続的及び揮発性媒体、固定及び取り外し可能媒体、並びに磁気及び半導体媒体を含んでもよい。メモリ614は、プログラム、コード、スクリプト、命令、データなどを格納するように操作可能である。図示されているようなメモリ614は、命令のセット又はシーケンス、即ちオペレーティングシステムと、眼科診断プログラムと、を含む。オペレーティングシステムは、UNIX若しくはUNIX系オペレーティングシステム、Windows(登録商標)ファミリーオペレーティングシステム、Apple(登録商標)ファミリーオペレーティングシステム(例えばmacOS、iOS)、又は別の適切なオペレーティングシステムであってもよい。メモリ614に格納された命令及びデータは、本明細書で説明されたステップを実行するために、プロセッサ612にとってアクセス可能であり、且つプロセッサ612によって実行可能である。プロセッサ612は、専用コプロセッサ又は別のタイプのデータ処理機器と同様に、汎用マイクロプロセッサであるか又はそれを含んでもよい。幾つかの場合に、プロセッサ612は、本明細書で説明される毛様体機能診断評価の高レベル動作を実行する。プロセッサ612は、(例えば
図1のプロセス100で説明されるように)毛様体筋スクリーニング中に電極によって生成された信号を受信し、解釈し、処理し、且つ評価するために、メモリ614に格納されたソフトウェア、スクリプト、プログラム、関数、実行可能ファイル、又は他の命令を実行又は解釈するように構成されてもよい。従って、コンピュータ606は、本明細書で説明されるように、毛様体筋機能と関係する眼科特有のプロセスを実行するように特に適合される。
【0051】
例えば、コンピュータ606のプロセッサは、更なる処理及び/又は評価用の最良の信号を判定し選択するために、レンズ602の各電極又はチャネルから受信された信号604を比較し評価するための命令を実行してもよい。或る例において、コンピュータ604のプロセッサは、毛様体筋活動の最も正確で且つ/又は信頼できる指標を提供する信号のサブセットを識別し選択するために、受信信号を用いて、合計アルゴリズム、平均化アルゴリズム、比較アルゴリズム、及び/又は統計処理アルゴリズムを実行してもよい。幾つかの例において、これは、プロセッサによって実行されるアルゴリズムに基づいて、毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号を識別及び選択することを含んでもよい。プロセッサによって実行されるアルゴリズムはまた、上部及び下部閾値、平均若しくは中央値(それらは、受信信号に基づいて計算されてもよい)、又は受信信号の品質及び/若しくは信頼性を評価するのに役立つ他の徴候と各受信信号を比較することを含んでもよい。上記で言及したように、選択された電極信号のサブセットは、患者の目自体の特徴と同様に、患者の目の上のコンタクトレンズの位置に依存し得る。
【0052】
追加又は代替として、命令は、予めプログラムされた若しくは再プログラム可能な論理回路、論理ゲート、又は他のタイプのハードウェア若しくはファームウェアコンポーネントとしてコード化することができる。
【0053】
幾つかの例において、ユーザは、評価ステップ用に、多重電極レンズ602の特定のセグメント又はチャネルの識別及び選択で支援するために、入力装置610(例えばキーボード、マウス、タッチスクリーン、音声認識等)を用いてもよい。追加又は代替として、コンピュータ606は、上記で言及したアルゴリズムに基づいて、評価ステップ用に、多重電極レンズ602の特定のセグメント又はチャネルを自動的に識別及び選択してもよい。
【0054】
加えて、コンピュータ606のプロセッサは、生の信号データを処理し、且つ毛様体筋活動、応答性、強度及び/又は遠近調節能力を特徴付ける数値又は他の測定値に生の信号データを変換するための命令を実行してもよい。生の又は処理された信号データは、コンピュータによって出力され、且つディスプレイ608(例えばモニター、スクリーン、ヘッドアップディスプレイ、タブレット装置等)に表示されてもよい。次に、表示されたデータ及び情報に基づいて、ケア提供者は、ステップ104に進み、且つ多重電極レンズ602から取得された結果及びデータを評価してもよい。追加又は代替として、コンピュータ606のプロセッサは、ディスプレイ608を介してケア提供者に通知、推奨又は警告を提供するために、選択された測定平均値及びデータを所定の閾値、目標及び範囲と比較してもよい。
【0055】
コンピュータ606のプロセッサが、1つ又は複数のCPU、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、システムオンチップ(SoC)プロセッサ、又は類似のコンポーネントを含んでもよいことが注目される。コンピュータ606のメモリは、磁気媒体、光媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、取り外し可能媒体、若しくは類似のコンポーネントを含む揮発性又は不揮発性メモリを含んでもよい。コンピュータ606のメモリは、上記で説明したように、プロセッサによって実行された場合にレンズ602から受信された信号を解析するソフトウエアプログラム及びアルゴリズム用の命令を格納してもよい。特許請求の範囲で用いられるとき、用語「プロセッサ」、「メモリ」、「命令」などは、当業者に周知の構造クラスを指す。かかるものとして、これらの用語は、開示されるシステムの機能要素ではなく構造要素を表示するものとして理解されるべきである。
【0056】
従って、本開示の実施形態は、患者の毛様体の電気的活動を手術前に評価するための新規で有用なシステム及び方法を提供する。開示されるシステム及び方法を用いて、ケア提供者は、かかる装置が特定の個人に適切かどうかに関する決定を導くために、手術又は購入に先立って、毛様体で駆動される遠近調節眼科装置が、意図されるように機能しないであろう目を識別してもよい。反対に、開示されるシステム及び方法を用いて、ケア提供者は、かかる装置が特定の個人に適切かどうかに関する決定を導くために、手術又は購入に先立って、毛様体で駆動される遠近調節眼科装置が、恐らくうまく機能するであろう目を識別してもよい。
【0057】
当業者は、本開示によって包含される実装形態が、上記で説明された特定の例示的な実装形態に制限されないことを認識されよう。その点において、実例となる実装形態が図示され説明されたが、広範囲な修正、変更、組み合わせ、及び代替が、前述の開示において考えられる。かかる変形が、本開示の範囲から逸脱せずに、前述のものに対して行われ得ることが理解される。従って、添付の請求項が、広く且つ本開示と一致する方法で解釈されることが適切である。