(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】無線周波数回路におけるアディティブ製造技術(AMT)ファラデー境界
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20221011BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20221011BHJP
H01P 3/08 20060101ALI20221011BHJP
H05K 3/04 20060101ALN20221011BHJP
H05K 1/11 20060101ALN20221011BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H05K3/10 E
H01P3/08 200
H05K3/04
H05K1/11 J
(21)【出願番号】P 2020524890
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 US2018059841
(87)【国際公開番号】W WO2019094600
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アザドゾイ,セミラ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト,ジェームズ,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイヴン,ジョン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】シキナ,トーマス,ヴイ.
(72)【発明者】
【氏名】サウスワース,アンドリュー,ア-ル.
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0206617(US,A1)
【文献】特開平04-267586(JP,A)
【文献】特開2010-080716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/10
H01P 3/08
H05K 3/04
H05K 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの誘電体基板と、
前記少なくとも1つの誘電体基板内に形成されたトレンチと、
前記トレンチ内の電気的に連続した導電材料と、
を有し、
前記電気的に連続した導電材料は、前記少なくとも1つの誘電体基板の層内に配置された第1の回路部分を、前記少なくとも1つの誘電体基板の前記層内に配置された第2の回路部分から、少なくとも部分的にアイソレートするように構成され、
前記第1の回路部分は、第1の周波数レンジ内で動作するように構成され、前記第2の回路部分は、前記第1の周波数レンジと重なり合う第2の周波数レンジ内で動作するように構成されている、
無線周波数回路。
【請求項2】
前記電気的に連続した導電材料は、当該無線周波数回路の限られた領域内に電磁場を少なくとも部分的に閉じ込めるように構成されている、請求項1に記載の無線周波数回路。
【請求項3】
前記第1の回路部分及び前記第2の回路部分のうち少なくとも一方は、マイクロ波周波数レンジ又はミリメートル波周波数レンジのうち少なくとも一方内で動作するように構成されている、請求項1に記載の無線周波数回路。
【請求項4】
少なくとも1つの誘電体基板と、
前記少なくとも1つの誘電体基板内に形成されたトレンチと、
前記トレンチ内の電気的に連続した導電材料と、
を有し、
前記電気的に連続した導電材料は、前記少なくとも1つの誘電体基板の層内に配置された第1の回路部分を、前記少なくとも1つの誘電体基板の前記層内に配置された第2の回路部分から、少なくとも部分的にアイソレートするように構成され、
前記第1の回路部分は、第1の周波数レンジ内で動作するように構成され、前記第2の回路部分は、第2の周波数レンジ内で動作するように構成され、前記第2の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数は、前記第1の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数の1オクターブ内にある、
無線周波数回路。
【請求項5】
前記少なくとも1つの誘電体基板は、第1の誘電体基板及び第2の誘電体基板を含み、前記トレンチは、前記第1及び第2の誘電体基板内に形成されている、請求項1又は4に記載の無線周波数回路。
【請求項6】
前記第2の誘電体基板の底面上に配置された第1のグランドプレーンと、前記第1の誘電体基板の頂面上に配置された第2のグランドプレーンと、端子パッドを含む信号トレースと、を更に有する請求項5に記載の無線周波数回路。
【請求項7】
前記信号トレースの前記端子パッドに固定された縦方向導体、を更に有する請求項6に記載の無線周波数回路。
【請求項8】
前記電気的に連続した導電材料は、前記縦方向導体を少なくとも部分的に取り囲んでいる、請求項7に記載の無線周波数回路。
【請求項9】
電磁回路を製造する方法であって、
第1の誘電体基板を用意し、
第2の誘電体基板を用意し、
前記第1及び第2の誘電体基板内にトレンチを機械加工し、
前記トレンチを導電材料で充填して、電気的に連続した導体を形成する、
ことを有
し、
前記電気的に連続した導体は、前記第1及び第2の誘電体基板の層内に配置された第1の回路部分を、前記第1及び第2の誘電体基板の前記層内に配置された第2の回路部分から、少なくとも部分的にアイソレートするように構成され、
前記第1の回路部分は、第1の周波数レンジ内で動作するように構成され、前記第2の回路部分は、前記第1の周波数レンジと重なり合う第2の周波数レンジ内で動作するように構成されている、
方法。
【請求項10】
前記第2の誘電体基板の底面上に第1のグランドプレーンを形成し、前記第1の誘電体基板の頂面上に第2のグランドプレーンを形成し、端子パッドを含む信号トレースを設ける、ことを更に有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記信号トレースの前記端子パッドに縦方向導体を固定する、ことを更に有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電気的に連続した導体は、前記縦方向導体を少なくとも部分的に取り囲む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電磁回路を製造する方法であって、
第1の基板上に配置された導電材料をミリングして信号トレースを形成し、該信号トレースは端子パッドを含み、
前記第1の基板に第2の基板を接合して、前記信号トレース及び端子パッドを前記第1の基板と前記第2の基板との間に実質的に封入し、
前記第2の基板に孔を開けて、前記端子パッドへのアクセス孔を設け、
前記第1及び第2の基板中にミリングしてトレンチを形成し、該トレンチは少なくとも部分的に前記端子パッドの周りに位置付けられ、
前記アクセス孔の中に導電体を堆積させ、該導電体が前記端子パッドへの電気接続をなし、
前記トレンチの中に導電性インクを堆積させて、前記第1及び第2の基板内に電気的に連続した導体を形成する、
ことを有する方法。
【請求項14】
前記電気的に連続した導体は、前記第1の基板及び第2の基板内に配置された第1の回路部分を、前記第1の基板及び前記第2の基板内に配置された第2の回路部分から、少なくとも部分的にアイソレートするように構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の回路部分及び前記第2の回路部分のうち少なくとも一方は、マイクロ波周波数レンジ又はミリメートル波周波数レンジのうち少なくとも一方内で動作するように構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の回路部分は、第1の周波数レンジ内で動作するように構成され、前記第2の回路部分は、前記第1の周波数レンジと重なり合う第2の周波数レンジ内で動作するように構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の回路部分は、第1の周波数レンジ内で動作するように構成され、前記第2の回路部分は、第2の周波数レンジ内で動作するように構成され、前記第2の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数は、前記第1の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数の1オクターブ内にある、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2018年5月18日に出願された“ADDITIVE MANUFACTURING TECHNOLOGY (AMT) FARADAY BOUNDARIES IN RADIO FREQUENCY CIRCUITS”と題された同時係属中の米国仮特許出願第62/673,491号、2017年11月10日に出願された“SPIRAL ANTENNA AND RELATED FABRICATION TECHNIQUES”と題された米国仮特許出願第62/584,260号、2017年11月10日に出願された“ADDITIVE MANUFACTURING TECHNOLOGY (AMT) LOW PROFILE RADIATOR”と題された米国仮特許出願第62/584,264号、2018年2月28日に出願された“SNAP-RF INTERCONNECTIONS”と題された米国仮特許出願第62/636,364号、及び2018年2月28日に出願された“ADDITIVE MANUFACTURING TECHNOLOGY (AMT) LOW PROFILE SIGNAL DIVIDER”と題された米国特許仮出願第62/636,375号の利益を主張するものであり、これらの各々を、あらゆる目的でその全体において、ここに援用する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF)及び電磁回路は、従来のプリント回路基板(PCB)プロセスを用いて製造されることがある。従来のPCB製造プロセスは、ラミネーション、電気めっき、マスキング、エッチング、及び他の複雑なプロセス工程を含み得るものであり、複数の工程、高価且つ/或いは危険な材料、複数回の反復、大きな労力などを必要とすることがあり、全てが、より高いコストと、より遅いターンアラウンド時間とにつながる。さらに、従来のPCB製造プロセスは、例えば信号トレース(例えば、ストリップライン)寸法、及び導電体間の誘電体材料の寸法(例えば、誘電体厚さ、ビア間の間隔など)などのフィーチャサイズを小さくすることを可能にする能力が限られており、それにより、そのような回路によってサポートされ得る最も高い周波数の信号の範囲を制限してしまう。
【発明の概要】
【0003】
ここに記載される態様及び実施形態は、回路内での特には無線周波数信号である電気信号の伝達のための簡略化された回路構造及びその製造方法を提供し、より具体的には、回路内に連続的な電磁境界(例えば、導電体)を設けることによって、マイクロ波レンジ及びミリメートル波レンジの中までの、コンポーネント間での及び信号ラインに沿っての、強化された信号のアイソレーションを提供する。ここに記載される回路、構造、及び製造方法は、サブトラクティブ及びアディティブ製造技術を用いて、回路内での電磁アイソレーションを提供する電磁境界として、導電材料で充填された縦方向の(例えば、レイヤ群の間を延在する)トレンチを配設して、従来技術(例えばグランドビアなど)よりも高い周波数動作で強化されたアイソレーションを提供する実質的に連続した境界を達成する。様々な信号導体、ファラデー境界、及び他の回路構造が、従来技術よりも、単純に、且つ小さいフィーチャサイズで製造され得る。このような回路構造は、マイクロ波レンジ及びミリメートル波レンジの中での動作に好適である。
【0004】
更なる他の態様、例、及び利点が、以下にて詳細に説明される。ここに開示される実施形態は、ここに開示される原理のうちの少なくとも1つと一貫したやり方で他の実施形態と組み合わされることができ、“実施形態”、“一部の実施形態”、“代替実施形態”、“様々な実施形態”、“一実施形態”、又はこれらに類するものへの言及は、必ずしも相互に排他的なものではなく、記載される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを指し示すことを意図したものである。ここにこれらの用語が複数現れることは、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。ここに記載される様々な態様及び実施形態は、記載される方法又は機能のいずれかを実行する手段を含み得る。
【0005】
本開示の一態様は、無線周波数回路に向けられ、当該無線周波数回路は、少なくとも1つの誘電体基板と、該誘電体基板内に形成されたトレンチと、該トレンチ内の電気的に連続した導電材料とを有する。
【0006】
当該無線周波数回路の実施形態は更に、第1の誘電体基板及び第2の誘電体基板を含むことができ、トレンチは、第1及び第2の誘電体基板内に形成され得る。無線周波数回路は更に、第2の基板の底面上に配置された第1のグランドプレーンと、第2の基板の頂面上に配置された第2のグランドプレーンとをふくむことができ、第2のグランドプレーンの一部が、端子パッドを含む信号トレースを形成し得る。無線周波数回路は更に、信号トレースの端子パッドに固定された縦方向導体を含み得る。電気的に連続した導電材料は、縦方向導体を少なくとも部分的に取り囲み得る。電気的に連続した導電材料は、無線周波数回路の限られた領域内に電磁場を少なくとも部分的に閉じ込めるように構成され得る。電気的に連続した導電材料は、上記少なくとも1つの誘電体基板の層内に配置された第1の回路部分を、上記少なくとも1つの誘電体基板の該層内に配置された第2の回路部分から、少なくとも部分的にアイソレートするように構成され得る。第1の回路部分及び第2の回路部分のうち少なくとも一方は、マイクロ波周波数レンジ又はミリメートル波周波数レンジのうち少なくとも一方内で動作するように構成され得る。第1の回路部分は、第1の周波数レンジ内で動作するように構成されることができ、第2の回路部分は、第1の周波数レンジと重なり合う第2の周波数レンジ内で動作するように構成されることができる。第1の回路部分は、第1の周波数レンジ内で動作するように構成されることができ、第2の回路部分は、第2の周波数レンジ内で動作するように構成され、第2の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数は、第1の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数の1オクターブ内にある。
【0007】
本開示の他の一態様は、電磁回路を製造する方法に向けられる。一実施形態において、当該方法は、少なくとも1つの誘電体基板を用意し、該少なくとも1つの誘電体基板内にトレンチを機械加工し、該トレンチを導電材料で充填して、電気的に連続した導体を形成することを有する。
【0008】
当該方法の実施形態は更に、第2の基板の底面上に第1のグランドプレーンを形成し、第2の基板の頂面上に第2のグランドプレーンを形成し、第2のグランドプレーンの一部が、端子パッドを含む信号トレースを形成することを含み得る。当該方法は更に、信号トレースの端子パッドに縦方向導体を固定することを含み得る。電気的に連続した導体は、縦方向導体を少なくとも部分的に取り囲み得る。上記少なくとも1つの誘電体基板を用意することは、第1の誘電体基板及び第2の誘電体基板を用意することを含むことができ、トレンチは、第1及び第2の誘電体基板内に形成され得る。
る、請求項11に記載の方法。
【0009】
本開示の更なる他の一態様は、電磁回路を製造する方法に向けられる。一実施形態において、当該方法は、第1の基板上に配置された導電材料をミリングして信号トレースを形成し、該信号トレースは端子パッドを含み、第1の基板に第2の基板を接合して、信号トレース及び端子パッドを第1の基板と第2の基板との間に実質的に封入し、第2の基板に孔を開けて、端子パッドへのアクセス孔を設け、第1及び第2の基板中にミリングしてトレンチを形成し、該トレンチは少なくとも部分的に端子パッドの周りに位置付けられ、アクセス孔の中に導電体を堆積させ、該導電体が端子パッドへの電気接続をなし、トレンチの中に導電性インクを堆積させて、第1及び第2の基板内に電気的に連続した導体を形成することを有する。
【0010】
当該方法の実施形態は更に、電気的に連続した導体が、第1の基板内に配置された第1の回路部分を、第2の基板内に配置された第2の回路部分から、少なくとも部分的にアイソレートするように構成される、ことを含み得る。第1の回路部分及び第2の回路部分のうち少なくとも一方は、マイクロ波周波数レンジ又はミリメートル波周波数レンジのうち少なくとも一方内で動作するように構成され得る。第1の回路部分は、第1の周波数レンジ内で動作するように構成されることができ、第2の回路部分は、第1の周波数レンジと重なり合う第2の周波数レンジ内で動作するように構成されることができる。第1の回路部分は、第1の周波数レンジ内で動作するように構成されることができ、第2の回路部分は、第2の周波数レンジ内で動作するように構成されることができ、第2の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数は、第1の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数の1オクターブ内にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下、縮尺通りに描くことは意図していない添付の図面を参照して、少なくとも1つの実施形態の様々な態様を説明する。図面は、様々な態様及び実施形態の例示及び更なる理解を提供するために含められており、本明細書に組み込まれてその一部を構成するが、開示の限定を規定するものとして意図したものではない。図面において、様々な図に示される同じ又は略同じ構成要素は各々、似通った参照符号によって表されることがある。明瞭さの目的のため、全ての図で全ての構成要素にラベルを付すことはしていない場合がある。
【
図1】ファラデーウォールを含む電磁回路部分の一例の概略図である。
【
図2】
図1の電磁回路部分の製造の一段階の概略図である。
【
図3】
図1の電磁回路部分の製造の他の一段階の概略図である。
【
図4】
図1の電磁回路部分の製造の他の一段階の概略図である。
【
図5】
図1の電磁回路部分の製造の他の一段階の概略図である。
【
図6】
図1の電磁回路部分の製造の他の一段階の概略図である。
【
図7】ファラデーウォールを含む電磁回路の他の一例の概略図である。
【
図8】ファラデーウォールを製造する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここに記載される態様及び例は、無線周波数回路の実施形態を含め、様々な回路基板製造に好適な、様々な回路内の信号導体(例えば、信号トレース、ストリップライン、層間“縦方向”フィード)並びに基準表面及び導体(例えば、グランドプレーン、ファラデー境界若しくは“ウォール(壁)”)を提供する。ここに記載される態様及び例は、有利には、アディティブ及びサブトラクティブ製造技術を適用して、様々な信号の、特には、例えば300GHz以上に至るようなマイクロ波及びミリメートル波のレンジ内の無線周波数信号の、伝達及び閉じ込めのための構造を提供する。
【0013】
一部の実施形態において、基板の表面から金属被覆(例えば、電気めっき銅)の一部を機械加工(例えば、ミリング)により除去することによって、誘電体基板上に信号トレース(例えば、導体)が形成され得る。
【0014】
一部の実施形態において、ワイヤ導体が、回路基板内の層間で(例えば、信号トレースラインへ/から)“縦方向”に信号を伝達し得るとともに、例えば導波路、放射器(例えば、アンテナ)、コネクタ、又は他の回路構造などの、様々な他の層又は回路コンポーネントに又はから信号を送るために使用され得る。そのような“縦方向”の層間信号フィードは、1つ以上の誘電体基板内に孔を機械加工し、1つ以上の導体表面にはんだを塗布し、孔の中にワイヤ(例えば、銅ワイヤ)のセグメントを挿入し、そして、はんだをリフローして接続を機械的且つ電気的に固定することによって形成され得る。
【0015】
一部の実施形態において、電磁境界を形成するように、トレンチを機械加工し、例えば3Dプリンティング技術を用いて塗布される導電性インクなどの導電体でトレンチを充填することによって、1つ以上の誘電体基板内に、連続した導電構造が形成され得る。このような電磁境界は、電磁信号の境界条件を強制して、例えば、信号のモード及び/又は特性インピーダンスを制御又は制限することができ、あるいは、例えばファラデー境界といった電磁回路の領域に信号を閉じ込めるアイソレーションを提供して、回路のある領域内の信号が回路の別の領域に影響を及ぼすことを防止、例えば遮蔽、することができる。
【0016】
ここに記載される製造プロセスは特に、例えば8-75GHz以上のレンジ内の、また、300GHz以上に至るレンジ内の、電磁信号をサポートすることができる小さい回路フィーチャを持つ回路構造の、好適なサブトラクティブ(例えば、機械加工、ミリング、孔開け、切断、スタンピング)及びアディティブ(例えば、充填、流動、3Dプリンティング)製造装置を用いた製造に好適である。ここに記載されるシステム及び方法に従った電磁回路構造は特に、ミリメートル波通信、センシング、測距などを含め、28-70GHzシステムにおける適用に好適である。記載される態様及び実施形態はまた、例えばSバンド(2-4GHz)、Xバンド(8-12GHz)、又はその他においてなど、より低い周波数レンジにも好適であり得る。
【0017】
理解されるべきことには、ここに説明される方法及び装置の実施形態は、適用において、以下の記載に説明され又は添付図面に図示される構成の詳細及び構成要素の配置に限定されるものではない。これらの方法及び装置は、他の実施形態での実装が可能であり、また、様々なやり方で実施あるいは実行されることが可能である。具体的な実装の例が、単に例示の目的でここに提供されるが、限定することを意図したものではない。また、ここで使用される言葉遣い及び用語は、記述目的でのものであり、限定するものとして見なされるべきでない。“含む”、“有する”、“持つ”、“含有する”、“伴う”及びこれらの変形のここでの使用は、その後に挙げられる品目及びそれらの均等物並びに更なる品目を含む意味である。“又は”への言及は、“又は”を用いて記載される項目が、記載される項目のうちの、単一の、1つよりも多くの、及び全ての、の何れかを指し示し得るように、包含的なものとして解釈され得る。前方及び後方、左及び右、頂部及び底部、上側及び下側、端部、側部、縦及び横、並びにこれらに類するものへの如何なる言及も、説明の便宜上のものであり、本システム及び本方法やそれらのコンポーネントを何らかの1つの位置的又は空間的な向きに限定するものではない。
【0018】
ここで使用される用語“無線周波数”は、明示的に述べられない限り、及び/又は文脈によって具体的に示されない限り、特定の周波数、周波数レンジ、バンド、スペクトルなどに限定されることを意図するものではない。同様に、用語“無線周波数信号”及び“電磁信号”は、交換可能に使用されるとともに、任意の特定の実装での情報搬送信号の伝播に好適な様々な周波数の信号を指し得る。このような無線周波数信号は、一般に、低い側キロヘルツ(kHz)レンジの周波数によって境界付けられ、高い側で何百ギガヘルツ(GHz)に至る周波数によって境界付けられ、マイクロ波レンジ又はミリメートル波レンジの信号を明示的に含む。一般に、ここに記載されるものに従ったシステム及び方法は、例えば赤外線信号よりも低い周波数の、従来から光学分野で取り扱われている周波数より低い周波数の非電離放射線を取り扱うのに好適であり得る。
【0019】
無線周波数回路の様々な実施形態は、様々な周波数で動作するように選択され且つ/或いは公称的に製造される寸法で設計され得る。適切な寸法の選択は、一般的な電磁気原理から行われることができ、ここで詳細に提示することはしない。
【0020】
ここに記載される方法及び装置は、従来プロセスが可能であるよりも小さい構成及び寸法をサポートし得る。そのような従来の回路基板は、約30GHzよりも低い周波数に制限され得る。ここに記載される方法及び装置は、より安全であまり複雑でない製造を用いて、より低いコストで、より高い周波数で動作されることが意図される無線周波数回路に好適な、より小さい寸法の電磁回路の製造を可能にし、又はそれに適合し得る。
【0021】
ここに記載されるものに従った電磁回路及び製造方法は、従来の回路及び方法よりも、低いプロファイルで、低減されたコスト、サイクル時間及び設計リスクで、より高い周波数を取り扱うことが可能な電磁回路及びコンポーネントを製造する様々なアディティブ及びサブトラクティブ製造技術を含む。技術の例は、従来のPCBプロセスによって可能にされるよりも有意に小さいものであり得る信号トレース(例えば、信号導体、ストリップライン)又は開口を形成するための、基板の表面からの導電材料の機械加工(例えば、ミリング)、トレンチを形成するための1つ以上の基板の機械加工、(それらの間の間隔を最小にした一連のグランドビアとは対照的な)連続した電気的バリア(例えば、ファラデーウォール)を形成するための、3次元プリンティング技術を用いた、トレンチ内への印刷導電性インクの堆積、基板(又は対向する基板)の表面上に配置された信号トレースへの電気接触を行うための、基板の一部を貫いて、その中にワイヤが配置され(且つ/或いは導電性インクが印刷される)孔を機械加工(例えば、ミリング、孔明け、又はパンチングなど)することによって形成される“垂直立ち上げ”信号経路、及び抵抗成分を形成するための、3次元プリンティング技術を用いた印刷抵抗性インクの堆積を含む。
【0022】
以上の技術例のいずれか及び/又は他の技術(例えば、はんだ付け及び/又ははんだリフロー)が、様々な電磁コンポーネント及び/又は回路を作製するために組み合わされ得る。そのような技術の態様及び例を、1つの次元で電磁回路の層に沿って、そして別の1つの次元で回路の他の層まで縦方向に、電磁信号を閉じ込めて伝達する無線周波数インターコネクトに関して、ここに記載及び図示する。ここに記載される技術は、様々な電磁コンポーネント、コネクタ、回路、アセンブリ、及びシステムを形成するために使用され得る。
【0023】
図1は、より大きい電磁回路の一部とし得る電磁回路構造100の一例を示している。回路構造100は、共に接合されて、それらの間に信号トレース120を包囲した、一対の誘電体基板110を含んでいる。信号トレース120は、例えば回路構造100内でなど、回路内で電磁信号を伝達するように構成された導電体であり、基板110のいずれかの表面から例えば電気めっきされた銅などの金属被覆を、機械加工により除去することによって形成され得る。信号トレース120はまた、例えば基板110b内の機械加工された孔の中に配置されたワイヤとし得る“縦方向”導体130への、例えばはんだによる、端子パッド上に形成された電気接続を有する。従って、導体130及び信号トレース120は、電気的に連続した信号伝達を形成し、各々が、
図1に示された部分の範囲を越えて信号を伝達及び提供し得る。
【0024】
一部の実施形態において、グランドプレーン140が、基板110aの“底”面上に配置された導電性金属被覆で形成されて設けられ得る。更なるグランドプレーン150が、基板110bの“頂”面上に設けられ得る。例えば、グランドプレーン150は、基板110b上に配置された導電性金属被覆により形成され得る。例えば、信号トレース120用のグランドプレーン150として作用するのに好適であるように、適切な物理的寸法、形状、又は広がりを有するグランドプレーンを提供するよう、導電性金属被覆の一部が機械加工(例えば、ミリング)によって除去され得る。
【0025】
回路構造100はまた、基板110を“縦方向”に貫く電磁境界を提供する導体であるファラデーウォール160(“電気的に連続した導電材料”として参照するときもある)を含んでいる。ファラデーウォール160は、基板110を貫いて下方にグランドプレーン140までトレンチを機械加工し、例えば3Dプリンティングといったアディティブ製造技術を用いて塗布される導電性インクなどの導電材料でトレンチを充填することによって形成され得る。導電性インクは、配置されたとき、電気的に実質的に連続した導体を形成し得る。図示のように、その中にファラデーウォール160が形成されるトレンチは、グランドプレーン140を貫通したり、通り抜けたりしない。ファラデーウォール160は、故に、グランドプレーン140と電気的に接触し得る。さらに、ファラデーウォール160の“頂部”が、グランドプレーン150と電気的に接触することができ、これは例えば、導電性インクとグランドプレーン150との間の接触を確実にするための、機械加工されたトレンチの僅かな過充填によって、及び/又ははんだの塗布によって遂行され得る。
【0026】
図1に例示するように、グランドプレーン140、グランドプレーン150、及びファラデーウォール160は一緒になって、信号トレース120によって伝達される(1つ以上の)信号に対する境界を提供する電気的に実質的に連続した導体を形成する。一部の実施形態において、グランドプレーン140、150及びファラデーウォール160の寸法的配置は、信号トレース120によって伝達される信号の伝播モードを制御若しくは制限するため、及び/又は信号トレース120によって伝達される(1つ以上の)信号に対する特性インピーダンスを確立するために選定され得る。特定の実施形態において、グランドプレーン140、150、及びファラデーウォール160は、信号トレース120に沿って横電磁(transverse electromagnetic;TEM)信号モードのみが伝播し得るように位置付けられ得る。他の実施形態において、ファラデーウォール160は、特定の伝播モードを強制することなく、及び/又は特定の(1つ以上の)信号に対するインピーダンスに寄与することなく、回路の1つの部分を回路の別の1つの部分からアイソレートするように位置付けられてもよい。
【0027】
上述のように、構造100は、単に一例であるとともに、その中に電磁回路が設けられ得る構造の一部である。図示の基板の更なる広がりが、様々な回路コンポーネントを収容してもよく、また、様々な実施形態において、更なる回路コンポーネントを収容する更なる層を有する更なる基板が設けられてもよい。典型的に、回路の一部が、特定の層上に配置されて、上及び/又は下にグランドプレーンを含み得るとともに、全体の回路(又はシステム)の他の部分が、同じ層の異なる領域に、又は他の層上に存在し得る。
【0028】
図2は、ここに記載されるシステム及び方法の態様及び実施形態に従った、製造の一段階における回路構造100の部分構造100aを示している。部分構造100aは、様々な表面上に導電性(例えば、銅)金属被覆を備え得る基板110aを含んでいる。この例において、基板110aは、一方の表面上に、それから信号トレース120が形成される導電材料として機能する導電性金属被覆112を有する。また、この例では、基板110aは、反対側の表面上に、グランドプレーン140として機能する導電性金属被覆を有する。信号トレース120は、金属被覆112の少なくとも一部122を機械加工によって除去し、それにより、信号トレース120として機能する導電材料の部分を、金属被覆112の残りの部分とは別個に残すことによって形成され得る。様々な例が、基板110aの表面に隣接して配置された他のタイプの回路コンポーネントを提供し、それらに対して、信号を伝達するために導体が設けられることができ、また、その回路コンポーネントへの又はからの信号をアイソレートするためのファラデー境界が設けられ得る。図示のように、信号トレースは端子パッド124を含む。
【0029】
図3は、他の製造段階における回路構造100の他の部分構造100bを示している。部分構造100bでは、共に接合されるように、基板110bが基板110aとアライメントされている。一部の例では、例えば硬化のため又は接合の永久性を確保するために熱又はベークを必要とし得る接合など、一時的な接合又は付着が適用されて、後の時点で、永久的な接合工程が適用され得る。基板110bを貫いて孔132を機械加工することができ、孔132は、信号トレース120の一部と揃うように位置付けられる。例えば、孔132は、信号トレース120の端子端と揃えられ得る。様々な例が、孔を、信号トレースの他の部分及び/又は他のタイプの回路コンポーネントの部分と揃えさせ得る。様々な実施形態において、基板110bの“頂”面が、導電性金属被覆を含んでもよく、それが、必要に応じてグランドプレーンを提供するために使用され、また、一部が機械加工されて、様々な他の構造、コンポーネント、又は所望の形状若しくは広がりを持つグランドプレーンを形成し得る。
【0030】
図2を参照するに、それから信号トレース120が形成される導電性金属被覆112は、基板110aに付随することに代えて、等価的に、例えば
図3に関する“底”面上で基板110bに付随してもよい。換言すれば、それから信号トレース120が提供される導電材料は、これらの基板110のいずれかに付随する導電性金属被覆とし得る。さらに、信号トレース120又は他の回路コンポーネント(例えば、これらの基板110間に存在する)が、様々な実施形態において、異なる材料から及び/又は他の手段を通じて設けられてもよい。
【0031】
図4は、他の製造段階における回路構造100の他の部分構造100cを示している。部分構造100cでは、孔132の中に導電体130が示されている。導電体130上及び/又は信号トレース120の例えば端子パッド124である端子端上に(例えば、導体130の一端に隣接して)、はんだスズめっきを設けることができ、該はんだがリフローされて、信号トレース120と導電体130との間の物理的且つ電気的な接続を確実にし得る。例えば、導電体130の露出端への熱の印加が、導電体130を通って進行し、はんだを少なくとも部分的に溶融して接続を確実にし得る。はんだリフローは、製造プロセスの様々な時点で実行され得る。例えば、導電体の露出端に更なるコンポーネントを固定するための後のはんだ付与が、信号トレース120と導電体130との間の接点におけるはんだのリフローを遂行するための熱を提供してもよい。
【0032】
図5は、他の製造段階における回路構造100の他の部分構造100dを示している。部分構造100dでは、基板110を貫いてトレンチ162がミリングされている。この例において、トレンチ162は、グランドプレーン140を貫通することなく、基板110を貫いて、グランドプレーン140を形成する導電性金属被覆までミリングされている。一部の実施形態において、無傷のグランドプレーン140は、トレンチが空である間、構造100dの部分への幾らかの構造的支持を提供し得る。
【0033】
図6は、他の製造段階における回路構造100の他の部分構造100eを示している。部分構造100eでは、ファラデーウォール160を形成するように、トレンチ162が導電性の充填物164で充たされている。導電性充填物164は、グランドプレーン140との電気接触をなして、電気的に実質的に連続したグランド境界を形成し得る。
図1に関して上述したように、更なるグランドプレーン150が含められてもよく、それに対して導電性充填物164が、物理的接触によって及び/又はファラデーウォール160に沿った位置でのはんだの更なる付与によって電気的に接続されて、グランドプレーン150と電気的につながる。一部の実施形態において、無傷のグランドプレーン140及び硬化(例えば、冷却された、固化された)導電性充填物164が、例えば、トレンチ162を形成するために機械加工により除去された材料に代わって、構造100eへの構造的支持を提供し得る。
【0034】
上述のように、ファラデーウォール160の位置決めは、信号トレース120によって伝達される(1つ以上の)信号に対するその影響に関して選定され得る。様々な実施形態において、ファラデーウォールは、アイソレーションを提供する以外の特定の方法で信号に影響するかにかかわらずに、アイソレーションを提供するように位置付けられ得る。例えば、
図7を参照するに、回路構造700の様々な部分の間での信号リーク(例えば、高周波エネルギー)を低減又は除去するように配置された様々なファラデーウォール760を含む回路構造700が示されている。別の言い方をすれば、ファラデーウォール760は、電気的に連続した導電材料として参照されるときもあり、回路構造700の限られた領域内に電磁場を少なくとも部分的に閉じ込めるように構成される。この例において、回路構造700は、3つのウィルキンソン分配器724を相互接続する様々な信号トレース720への電気アクセスを各々が提供する5つのアクセス導体730を有する4:1信号結合器/分割器を実装している。例えば、信号トレース720及びウィルキンソン分配器724は、回路基板の中間層上に配置され得る。ファラデーウォール760は、“下”にグランドプレーンまで、そして回路構造700の“頂”面に至るまで(例えば、信号トレース720及びウィルキンソン分配器724が存在する中間層を貫いて)図の面内に延在し得る。アクセス導体730は各々、信号トレース720との電気接触を達成するように、“頂”面から下に中間層まで延在する孔を通る例えばワイヤのセグメントなどの導電体とし得る。上述のように、ファラデーウォール760は、回路構造700の一部を機械加工してトレンチを形成し、アディティブ製造技術を用いて適用され得るものである例えば導電性インクなどの導電材料でトレンチに充填することによって形成される。
【0035】
なおも
図7を参照するに、図示のように、ファラデーウォール760aは、回路構造700のある層内に配置された第1の回路部分770aを、回路構造の該層内に配置された第2の回路部分770bから少なくとも部分的にアイソレートするように構成されている。一実施形態において、第1の回路部分770a及び第2の回路部分770bは、マイクロ波周波数レンジ又はミリメートル波周波数レンジのうち少なくとも一方内で動作するように構成される。特定の一実施形態において、第1の回路部分770aは、第1の周波数レンジ内で動作するように構成され、第2の回路部分770bは、第1の周波数レンジと重なり合う第2の周波数レンジ内で動作するように構成される。特定の他の一実施形態において、第1の回路部分770aは、第1の周波数レンジ内で動作するように構成され、第2の回路部分770bは、第2の周波数レンジ内で動作するように構成され、第2の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数は、第1の周波数レンジ内の少なくとも1つの周波数の1オクターブ内にある。
【0036】
一実施形態において、ファラデーウォール760を形成すること(例えば、電気的に連続した導電体を形成すること)は、流体中への部分的又は完全な浸漬、電気めっき、マスキング、エッチング、又は溶解のいかなる工程も含まない。
【0037】
図8は、ファラデーウォールを製造する方法800を例示している。方法800は、回路構造の1つ以上の基板の一部を機械加工により除去してトレンチを形成すること(ブロック810)と、例えば導電性インクなどの導電材料でトレンチを充填すること(ブロック820)とを含む。トレンチを形成することは、実質的にサブトラクティブ工程であり、トレンチを充填することは、実質的にアディティブ工程である。導電性インクは、様々な実施形態において、3Dプリンティング技術を用いてトレンチ内に付与され得る。
【0038】
ここに記載されたシステム及び方法の更なる利点が実現され得る。例えば、従来のPCB製造は、例えば信号トレースの幅などの回路のフィーチャサイズに制限を課すことがあり、故に、従来製造された電磁回路が好適であり得る最も高い周波数を制限してしまい得る。さらに、基板の厚さは、トレースの幅に関係して、特性インピーダンスに影響を与える(例えば、反対側の表面上に配置されるグランドプレーンまでの距離に起因して)。従って、従来のPCBプロセスによって必要とされるより幅広のトレースは、(特定の特性インピーダンスを維持するために)より厚い基板の選択を引き起こし、故に、どれだけ薄く回路が製造され得るかを制限してしまう。例えば、従来のPCB製造の下での一般的推奨は、約60ミル(0.060インチ)の全体厚さを含む。比較して、記載された態様及び実施形態に従った電磁回路は、アディティブ製造技術を使用して、約10ミル又はそれ未満の厚さまで下げられた低プロファイルを有する回路基板をもたらすことができ、信号線トレースは約4.4ミル又は2.7ミル又はそれ未満の幅を有し、インターコネクトジオメトリは基板の表面と実質的に面一である。
【0039】
従来は、グランドビアが、(例えば、基板の両面の)グランドプレーンの間の電気接続を提供し、トレース上の信号の、近傍にあり得る他のトレースからの、幾らかのアイソレーションを提供する。従来のグランドビアは、直径約8ミル以上の孔開けされた孔であり、基板の構造的完全性を維持するために、最小限の距離だけ離間される必要である。従って、グランドビアは、リークのある構造であり、特に高めの周波数で電磁信号の損失を呈する。高めの周波数の信号のサポートを種々の用途が必要とするので、グランドビア間の最小限の間隔が、比較的短い波長の電磁エネルギーが逃げ出てしまい得る大きい開口のように作用する。
【0040】
比較して、ここに記載された態様及び実施形態に従った電磁回路及び方法は、アディティブ製造技術を使用するものであり、更にグランドプレーンに電気的に結合され得るものである電気的に連続したファラデー境界を可能にする。従って、(例えば、基板の両面間で)1つ以上の基板を貫いて縦方向に、電気的に連続した構造が配設されて、電磁場を閉じ込める“ファラデーウォール”を形成する。様々な実施形態において、このようなファラデーウォールは、2つ以上のグランドプレーンを電気的に結合し得る。さらに、様々な実施形態において、このようなファラデーウォールは、電磁場を閉じ込め、それを隣接する回路コンポーネントからアイソレートし得る。一部の実施形態において、このようなファラデーウォールは、局所的に横電磁(TEM)場であるように電磁信号を制限する境界条件を強制し、例えば、信号伝播をTEMモードに制限し得る。
【0041】
様々な実施形態において、様々なサブトラクティブ(機械加工、ミリング、孔開け)、アディティブ(プリンティング、充填)、及び接着(接合)工程が、様々な順序で、必要に応じてはんだ付け及びリフロー処理とともに、実行されて、ここに記載されたような1つ以上のファラデー境界を含み得るものである1つ又は任意数の基板層を有した電磁回路を形成し得る。
【0042】
様々な電磁回路のいずれかを製造するための一般化された方法は、回路フィーチャを形成するように、基板上に配置された導電材料をミリングすることを含む。この方法は、例えば抵抗性のインクで形成された抵抗などの更なる回路フィーチャを印刷する(又は、例えばアディティブ製造技術である3Dプリンティングによって堆積させる)ことを含んでもよい。この方法は、必要に応じて、何らかのフィーチャ上にはんだを堆積させることを含んでもよい。この方法はまた、例えば空所又はトレンチなどの開口を形成するために、基板材料(及び/又は導電材料)を貫いてミリングする(又は孔開けする)ことを含み得るとともに、例えばファラデーウォール又は垂直信号立ち上げ(例えば銅)を形成するために、空所/トレンチ内に導電材料(例えば導電性インク又はワイヤ導体など)を堆積させる又は印刷する(例えば、アディティブ製造技術である3Dプリンティングにより)することを含み得る。これらの工程のいずれかが、所与の回路設計に必要なように、異なる順序で行われ、繰り返され、又は省略されてもよい。一部の実施形態において、複数の基板が電磁回路の製造に関与し、この方法は、必要に応じて更なる基板を接合すること、更なるミリング及び充填処理、並びに更なるはんだ付け及び/又はリフロー処理を含む。
【0043】
少なくとも1つの実施形態の幾つかの態様及び電磁回路を製造する方法を説明したが、以上の説明は、10ミル(0.010インチ、254ミクロン)以下の全体厚さを有する様々な電磁回路を製造するために使用され得るとともに、使用される様々なミリング及びアディティブ製造装置の公差及び精度に応じて、4.4ミル(111.8ミクロン)の狭さ、2.7ミル(68.6ミクロン)の狭さ、又は更には1.97ミル(50ミクロン)の狭さのトレースなどの、信号トレースを含み得る。従って、ここに記載されたものに従った電磁回路は、Sバンド、Xバンド、Kバンド、及びより高い周波数を含め、マイクロ波及びミリメートル波の用途に好適であることができ、様々な実施形態は、28GHzを超えて70GHz以上に至る周波数に適合することができる。一部の実施形態は、300GHz以上に至る周波数レンジに好適であり得る。
【0044】
さらに、ここに記載されたものに従った電磁回路は、宇宙空間に位置付けられたときに開くことによって展開される折畳み構造を含め、宇宙空間用途に適するのに十分な低さのプロファイル(例えば、10ミル以下の厚さ)を、それに従った軽量さとともに有し得る。
【0045】
また、ここに記載された方法に従って製造される電磁回路は、腐食性化学薬品、マスキング、エッチング、電気めっきなどを必要としない、より安価でより速い試作を提供する。予めめっきされた導電材料を一方又は両方の表面(面)に有する単純な基板が、コアの開始材料を形成することができ、電磁回路の全ての要素が、ミリング(サブトラクティブ、孔開け)、充填(アディティブ、導電性及び/又は抵抗性インクの印刷)、及び1つ以上の基板の接合によって形成され得る。単純なはんだリフロー処理及び単純な導電体(例えば、銅線)の挿入が、ここに記載された方法及びシステムによって提供される。
【0046】
また、ここに記載された方法に従って製造される電磁回路は、平面でない表面上への展開、又は平面でない表面を要求する設計に適合し得る。例えばここに記載されたもの及びその他のものなどの薄い低プロファイルの電磁回路は、例えば、任意の所望の輪郭を持つ電磁回路を生成するため、表面(例えば乗り物など)への接着のため、又は複雑なアレイ構造をサポートするために、ここに記載されたようなミリング、充填、及び接合技術を用いて製造され得る。
【0047】
様々な更なる詳細及び態様を含む付録が、ここで同時に提出され、ここに援用され、この明細書の一部をなす。
【0048】
斯くして少なくとも1つの実施形態の幾つかの態様を説明してきたが、理解されるべきことには、当業者には様々な改変、変更、及び改良が容易に浮かぶであろう。そのような改変、変更、及び改良は、この開示の一部であることが意図され、また、開示の範囲内であることが意図される。従って、以上の説明及び図面は単に例によるものである。