(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】電子タバコチップ用のトウバンド、電子タバコ用チップ、電子タバコチップ用のトウバンドの製造方法、及び電子タバコチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/42 20200101AFI20221011BHJP
A24F 40/70 20200101ALI20221011BHJP
A24D 3/10 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A24F40/42
A24F40/70
A24D3/10
(21)【出願番号】P 2020552448
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2018039654
(87)【国際公開番号】W WO2020084732
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 知治
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533764(JP,A)
【文献】特表2016-539254(JP,A)
【文献】特開2018-096010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/42
A24F 40/70
A24D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1項に記載の製造方法により製造された前記トウバンドに可塑剤を添加して前記トウバンドをロッド状に成形する成形ステップを有する、電子タバコチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子タバコチップ用のトウバンド、電子タバコ用チップ、電子タバコチップ用のトウバンドの製造方法、及び電子タバコチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本書では、以下の定義された各用語を使用する。
TD:全繊維度(トータルデニール)であり、トウバンド又は一束の複数本のフィラメントの繊維度(9000m当たりのグラム数)を指す。
【0003】
FD:単繊維度(フィラメントデニール)であり、単繊維(1本のフィラメント)の繊維度(9000m当たりのグラム数)を指す。単繊維デニールとも称する。
【0004】
フィラメント:連続する長繊維(long fiber)を指す。特には、紡糸口金の紡糸孔から吐出された単繊維を指す。
【0005】
紡糸孔:紡糸筒の紡糸口金に形成され、フィラメントを吐出(紡糸)する。
【0006】
トウバンド:複数の紡糸筒の各紡糸口金から吐出されたフィラメント(単繊維)の集合体であるヤーンが合一され、複数のヤーンが合一され且つTDが所定の数値に設定されてエンドとなる。このエンドは捲縮される。この捲縮されたエンド(フィラメントの集合体)をトウバンドと称する。即ちトウバンドは、TDと捲縮数を有する。トウバンドは、ベール状に梱包される。
【0007】
エンド:複数の紡糸筒の紡糸孔から吐出された複数本のフィラメントが所定のトータルデニールを持つように合一(収束)されたフィラメントの集合体を指す。
【0008】
ヤーン:1つの紡糸筒から吐出されたフィラメントの束を指す。従って、ヤーンは、合一される前のフィラメントの集合体である。
【0009】
チップ:シガレットの喫煙時や電子タバコの使用時にタバコ成分を通過させるフィルターを指す。チップは、例えば、所定の通気性材料をロッド状に成形して、その外周に巻紙を巻回して構成される。
【0010】
近年、加熱式電子タバコの普及が進んでいる。この電子タバコは、例えば特許文献1に開示されるように、タバコ成分である揮発成分を含有する基材と、基材を加熱する加熱部と、加熱した基材からの揮発成分を冷却・凝集させてエアロゾルを形成する冷却部と、冷却部を通過したエアロゾルを濾過するチップとを備える。
【0011】
チップは、電子タバコの使用時にユーザに咥えられる。チップは、例えば、捲縮された長繊維のセルロースアセテートの複数本のフィラメントからなるトウバンド(以下、単にトウバンドとも称する。)を用いて製造される。
【0012】
チップの製造時には、例えば、捲縮されて梱包されたベール状のトウバンドが、梱包容器から繰り出され、搬送されながら開繊されて可塑剤を添着され、ロッド状に成形される。トウバンドの成形体の外周には、巻紙が巻回される。成形体と巻紙とを所定寸法に切断することで、チップが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
電子タバコ用チップに用いられるトウバンドには、チップに適度なPD(通気抵抗)と硬度とを付与するため、例えば、FDが比較的大きく、TDが比較的小さいトウバンドが用いられる。
【0015】
しかしながら、トウバンド及びチップの製造時において、FDが比較的大きいフィラメントに外力が加わることで、フィラメントの断片(以下、フライとも称する。)が発生することがある。例えば、フィラメントの断片が可塑剤を吸収した状態で成形体に混入すると、フィラメントが溶解してメルトホールが生じる場合がある。これにより、チップの製造効率及び品質が低下するおそれがある。
【0016】
そこで本発明は、トウバンドを用いて電子タバコ用チップを製造する場合において、フィラメントの断片が発生することにより電子タバコ用チップの製造効率及び品質が低下するのを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る電子タバコチップ用トウバンドは、複数本のフィラメントを束状に合一し且つ捲縮してなる、セルロースアセテートのトウバンドであって、トータルデニールが、10000以上40000以下の範囲の値に設定され、フィラメントデニールが、6.0以上20.0以下の範囲の値に設定され、前記トータルデニールをTD、破断強力をFとするとき、比F/TDが、0.0015N/デニール以上の値に設定されている。
【0018】
上記構成によれば、トウバンドのTD及びFDを上記範囲内の所望の値に設定しながら、比F/TDを上記値に設定することで、フィラメントの一本当たりの強度を向上できる。これにより、例えば、FDが比較的大きいフィラメントを用いてトウバンド及びチップを製造する場合、フィラメントに外力が加わっても、フィラメントの断片が発生するのを防止できるため、電子タバコ用チップを良好に製造できる。従って、電子タバコ用チップの製造効率及び品質が低下するのを防止できる。
【0019】
前記トータルデニールが、20000以上40000以下の範囲の値に設定され、前記フィラメントデニールが、8.0以上20.0以下の範囲の値に設定されていてもよい。
【0020】
前記トータルデニールが、10000以上20000以下の範囲の値に設定され、前記フィラメントデニールが、6.0以上12.0以下の範囲の値に設定されていてもよい。
【0021】
本発明の一態様に係る電子タバコ用チップは、上記したいずれかのトウバンドがロッド状に成形されてなる成形体と、前記成形体の周面に巻回された巻紙とを備える。この構成によれば、フィラメントの断片が発生するのを防止しながら良好に捲縮されたトウバンドにより成形体を形成できる。従って、電子タバコ用チップの製造効率及び品質が低下するのを防止できる。
【0022】
本発明の一態様に係る電子タバコチップ用トウバンドの製造方法は、トータルデニールが、10000以上40000以下の範囲の値に設定され、フィラメントデニールが、6.0以上20.0以下の範囲の値に設定された複数本のフィラメントを搬送しながら、一対のニップロールよりも前記複数本のフィラメントの搬送方向の上流側において、前記一対のニップロールのロール幅方向に前記複数本のフィラメントを整列させる整列ステップと、前記整列ステップにより整列させられた前記複数本のフィラメントを前記一対のニップロールにより捲縮する捲縮ステップと、前記一対のニップロールよりも前記搬送方向の上流側及び下流側の少なくともいずれかにおいて、前記複数本のフィラメントからなるフィラメント集合体の厚み寸法を監視する監視ステップとを有し、前記捲縮ステップでは、前記トータルデニールをTD、前記一対のニップロールのロール幅寸法をDとするとき、比TD/Dが800デニール/mm以上2000デニール/mm以下に設定された前記一対のニップロールを用いる。
【0023】
上記方法によれば、監視ステップにおいてフィラメント集合体の厚み寸法を監視することで、例えば、フィラメント集合体の厚み寸法の値が基準範囲よりも大きく変動した場合には、フィラメント集合体の厚み寸法の値が基準範囲内に収まるように整列ステップを行うことができる。
【0024】
また、トウバンドのTD及びFDを上記範囲内の所望の値に設定しながら、比TD/Dを800デニール/mm以上2000デニール/mm以下に設定することで、複数本のフィラメントを、一対のニップロールのロール幅方向に均一に整列して、適度な強さの外力により捲縮し、トウバンドを製造できる。
【0025】
これにより、例えば、一対のニップロールによりフィラメントを捲縮する際にフィラメントに加えられる過度の外力によりフィラメントの断片が発生するのを防止できる。また、このようにフィラメントの断片が発生するのが防止されることで、フィラメントの高い破断強力を保持できる。このため、例えば捲縮された搬送中のフィラメントに外力が及んでフィラメントの断片が発生することも防止できる。よって、例えば、トウバンドをロッド状に成形することで電子タバコ用チップを良好に製造でき、電子タバコ用チップの製造効率及び品質が低下するのを防止できる。
【0026】
前記捲縮ステップでは、前記比TD/Dが800デニール/mm以上1300デニール/mm以下に設定された前記一対のニップロールを用いてもよい。
【0027】
前記捲縮ステップでは、前記トータルデニールが、20000以上40000以下の範囲の値に設定され、前記フィラメントデニールが、8.0以上20.0以下の範囲の値に設定された前記複数本のフィラメントを捲縮してもよい。
【0028】
前記捲縮ステップでは、前記トータルデニールが、10000以上20000以下の範囲の値に設定され、前記フィラメントデニールが、6.0以上12.0以下の範囲の値に設定された前記複数本のフィラメントを捲縮してもよい。
【0029】
本発明の一態様に係る電子タバコ用チップの製造方法は、上記したいずれかの製造方法により製造された前記トウバンドに可塑剤を添加して前記トウバンドをロッド状に成形する成形ステップを有する。
【0030】
上記方法によれば、フィラメントが断片化するのを防止しながら良好に捲縮されたトウバンドにより成形体を形成できる。このため、例えば、フィラメントの断片が可塑剤を吸収してメルトホールが発生するのを防止できる。従って、電子タバコ用チップの製造効率及び品質が低下するのを防止できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の各態様によれば、トウバンドを用いて電子タバコ用チップを製造する場合において、フィラメントの断片が発生することにより電子タバコ用チップの製造効率及び品質が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態に係るトウバンド製造装置の全体図である。
【
図3】第1実施形態に係るチップ製造装置の全体図である。
【
図4】第1実施形態に係る加熱式電子タバコの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の各実施形態について、図を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
[セルロースアセテートトウバンド製造装置]
【0034】
図1は、セルロースアセテート(以下、CAとも称する。)トウバンド製造装置1の全体図である。
図2は、
図1の捲縮装置9の上面図である。
図1に示すCAトウバンド製造装置1は、乾式紡糸法によりCAフィラメント61を紡糸する。またCAトウバンド製造装置1は、CAフィラメント61により、ヤーン62、エンド63、及びCAトウバンド64を製造する。
【0035】
CAトウバンド64は、加熱式電子タバコチップ用のトウバンドである。製造装置1では、TDが、10000以上40000以下の範囲の値に設定され、FDが、6.0以上20.0以下の範囲の値に設定された複数本のCAフィラメント61(CAトウバンド64)が製造される。
【0036】
CAトウバンド製造装置1は、混合装置2、濾過装置3、紡糸ユニット4、油剤添着ユニット5、ゴデットロール6、ガイドピン7,8、捲縮装置9、揺動装置10、ガイド装置12、乾燥装置11、監視システム84、及び振込機85を備える。
【0037】
CAトウバンド製造装置1では、セルロースジアセテート等のCAフレークが、所定濃度(例えば紡糸原液60の20wt%以上30wt%以下の範囲の重量濃度値)で有機溶媒に溶解された紡糸原液60が用いられる。
【0038】
紡糸原液60は、混合装置2により混合された後、濾過装置3により濾過される。濾過装置3を通過した紡糸原液60は、紡糸ユニット4の紡糸筒14上に備えられた紡糸口金15が有する複数の紡糸孔15aから吐出される。
【0039】
紡糸孔15aは、周縁形状が所定形状(一例として円形)に形成されている。紡糸孔15aの直径は、製造後のCAフィラメント61のFDに合わせて適宜設定される。各紡糸孔15aから吐出された紡糸原液60は、不図示の乾燥ユニットから紡糸筒14内に供給される熱風により加熱されて有機溶媒を蒸発させられることで乾燥する。これにより、固体のCAフィラメント61が形成される。
【0040】
図1に示すように、1つの紡糸筒14を通過した複数本のCAフィラメント61は、ガイドピン7,8により集束されてヤーン62となる。ヤーン62は、油剤添着ユニット5により繊維油剤を添着された後、ゴデットロール6により巻き取られる。
【0041】
ヤーン62を製造する一連のユニット、即ち、紡糸口金15からの紡糸原液60を吐出してCAフィラメント61を紡糸する紡糸ユニット4、乾燥ユニット、油剤添着ユニット5、及び、ゴデットロール6を有する巻取ユニットは、併せてステーションと称される。通常では、複数のステーションが、一列に並べて配置されている。
【0042】
ヤーン62は、ゴデットロール6の周面から巻取装置により引き取られる。
図2に示すように、各ステーションを通過したヤーン62は、ガイドピン7,8に案内されてステーションの配列方向に沿って搬送方向Pに搬送(並走)され、順次集積又は積層される。これにより、複数のヤーン62が収束されて、ヤーン62の偏平な集合体であるエンド63が形成される。エンド63は、複数のヤーン62を収束して所定のTDに設定されたものである。エンド63は、搬送されて捲縮装置9へと導かれる。
【0043】
図1に示すように、捲縮装置9は、一対のニップロール16,17と、スタッフィングボックス18とを有する。一対のニップロール16,17は、互いの回転軸が平行に配置されている。一対のニップロール16,17は、互いの周面間においてエンド63を押圧する。
【0044】
スタッフィングボックス18は、一対のニップロール16,17の下流側に配置されている。スタッフィングボックス18は、搬送方向Pに延びる板面を有する一対の板材86,87と、付勢部材88とを有する。
【0045】
一対の板材86,87は、互いの板面を間隙をおいて対向させ且つ間隙が上流側から下流側に向けて減少するように配置されている。この間隙内には、一対のニップロール16,17を通過したエンド63(複数本のCAフィラメント61)が搬送される。
【0046】
エンド63は、一対のニップロール16,17の間において一対のニップロール16,17により押圧された後、スタッフィングボックス18の内部に押し込まれる。エンド63は、スタッフィングボックス18の一対の板材86,87の板面の間で蛇行して搬送されながら、付勢部材88により、一方の板材86の板面に向けて押圧される。
【0047】
エンド63が一対のニップロール16,17によりスタッフィングボックス18内に押し込まれる際の抵抗よりも大きな力で、エンド63がスタッフィングボックス18内に押し込まれることで、エンド63に捲縮が付与される。これにより、CAトウバンド64が得られる。
【0048】
捲縮装置9を通過したCAトウバンド64は、揺動装置10により幅方向に蛇行するように調整されながら、ガイド装置12により乾燥装置11に案内される。CAトウバンド64は、乾燥装置11により乾燥される。乾燥装置11を通過したCAトウバンド64は、振込機85により梱包容器19に振り込まれ、集積され且つ圧縮梱包されてベール状となる。
図1の梱包容器19は、断面構造を示している。
【0049】
監視システム84は、一対のニップロール16,17よりも上流側及び下流側の少なくともいずれかにおいて、複数本のCAフィラメント61からなるフィラメント集合体(ここではエンド63又はCAトウバンド64)の厚み寸法を監視する。本実施形態の監視システム84は、一対のニップロール16,17よりも上流側において、エンド63の厚み寸法を監視する。監視システム84は、上側変位計81,下側変位計82、及び監視装置83を有する。
【0050】
上側変位計81は、フィラメント集合体の上面の高さ位置を検出する。下側変位計82は、フィラメント集合体の下面の高さ位置を検出する。変位計81,82は、一例として非接触式であり、ここではレーザ変位計である。変位計81,82としては、例えば、キーエンス(株)製レーザ変位計「LK-5000」シリーズを用いることができる。変位計81,82の計測結果は、監視装置83に送信される。
【0051】
監視装置83は、一例としてパーソナルコンピュータであり、CPU、ROM、及びRAMの他、オペレータが入力する情報を受け付ける入力部と、オペレータに所定情報を表示する表示部とを有する。
【0052】
ここで、搬送方向Pに搬送されるフィラメント集合体中の複数本のCAフィラメント61の配列が乱れると、フィラメント集合体の上面及び下面のいずれかの高さ位置が変動する。監視装置83は、CAトウバンド64の製造時において、変位計81,82の測定結果に基づいて、搬送されるフィラメント集合体の厚み寸法を算出し、算出したフィラメント集合体の厚み寸法が、許容範囲内の値であるか否かを判定する。この方法によれば、搬送中のフィラメント集合体をサンプリングすることなく、フィラメント集合体の厚み寸法がオンラインにより連続的に監視される。
【0053】
監視装置83は、フィラメント集合体の厚み寸法が、許容範囲内の値ではないと判定した場合、フィラメント集合体中の複数本のCAフィラメント61の配列が乱れていることを、表示部に表示し或いは警告音を発する警告処理を行うことにより、オペレータに伝達する。オペレータは、この警告処理に基づいて、フィラメント集合体の厚み寸法が許容範囲内の値となるように、フィラメント集合体中の複数本のCAフィラメント61の配列を整列させる。
【0054】
ここで、フィラメント集合体の厚み寸法の許容範囲の値は、適宜設定可能であるが、例えば、フィラメント集合体を平面視した場合に、フィラメント集合体に穴が発生していることを肉眼により視認できる程度の値に設定できる。
【0055】
なお、フィラメント集合体の厚み寸法は、搬送されるCAトウバンド64をサンプリングすることでオフラインにより監視してもよい。また変位計81,82は、乾燥装置11を通過したCAトウバンド64の上面及び下面の高さ位置を、振込機85を用いてCAトウバンド64を梱包容器19に梱包する前に測定するように配置されていてもよい。
【0056】
このようにCAトウバンド64は、CAトウバンド製造装置1を用いて製造される。この製造方法は、以下の整列ステップ、捲縮ステップ、及び監視ステップを有する。整列ステップは、TDが、10000以上40000以下の範囲の値に設定され、FDが、6.0以上20.0以下の範囲の値に設定された複数本のCAフィラメント61を搬送しながら、一対のニップロール16,17よりも上流側において、一対のニップロール16,17のロール幅方向に複数本のCAフィラメント61(エンド63)を整列させるステップである。
【0057】
この整列ステップは、具体的には、例えば、搬送される複数本のCAフィラメント61(エンド63)を案内するガイドピン7,8の位置を調整することにより行われる。
【0058】
捲縮ステップは、整列ステップにより整列させられた複数本のCAフィラメント61(エンド63)を一対のニップロール16,17により捲縮するステップである。また監視ステップは、一対のニップロール16,17よりも上流側及び下流側の少なくともいずれかにおいて、複数本のCAフィラメント61からなるフィラメント集合体の厚み寸法を監視するステップである。監視ステップでは、監視システム84が用いられる。
【0059】
TDが比較的小さく、FDが比較的大きいCAトウバンド64を製造する場合、エンド63に含まれる複数本のCAフィラメント61を一対のニップロール16,17により捲縮しようとすると、複数本のCAフィラメント61を捲縮するために必要な外力(ニップ圧)が増大する。これに伴い、CAフィラメント61が損傷し、断片を生じる場合がある。この場合、CAフィラメント61の引張強度等の強度が減少し、例えば、搬送中にCAフィラメント61が切断する等の不具合を生じるおそれがある。
【0060】
ここで発明者の検討により、一対のニップロール16,17の間隙における複数本のCAフィラメント61の重なりが多く、且つ、CAフィラメント61が太くなるにつれて、エンド63に含まれる複数本のCAフィラメント61を捲縮するために必要なニップ圧が増大する(言い換えると、複数本のCAフィラメント61からなる集合体であるエンド63の断面二次モーメントが増大する)ことが明らかになった。
【0061】
そこで本実施形態では、複数本のCAフィラメント61のトータルデニールをTD、一対のニップロール16,17のロール幅寸法をDとするとき、比TD/Dが800デニール/mm以上2000デニール/mm以下に設定された一対のニップロール16,17を用いて捲縮ステップを行う。
【0062】
このように比TD/Dを設定することにより、複数本のCAフィラメント61を、一対のニップロール16,17のロール幅方向に均一に整列して、適度な強さの外力により捲縮し、CAトウバンド64を製造できる。これにより、CAフィラメント61を捲縮する際にCAフィラメント61に与えられる過度の外力によりCAフィラメント61の断片が発生するのを防止できる。
【0063】
即ち、上記のように比TD/Dを設定することにより、複数本のCAフィラメント61が一対のニップロール16,17のロール幅方向に広く分布しながら配列させられ、一対のニップロール16,17の間隙における複数本のCAフィラメント61の重なりが低減且つ均一化される。これにより、エンド63の厚み寸法がロール幅方向で均一に薄くなる。
【0064】
よって、CAフィラメント61が太い場合でも、比較的小さいニップ圧により複数本のCAフィラメント61を捲縮できると共に、過度の外力がCAフィラメント61に及んでCAフィラメント61の断片が発生するのが防止される。
【0065】
また、CAフィラメント61の断片が発生するのが防止されることで、CAフィラメント61の高い破断強力を保持できる。このため、例えば捲縮された搬送中のCAフィラメント61に外力が及んでCAフィラメント61の断片が発生することも防止できる。よって後述するように、CAトウバンド64をロッド状に成形することでチップ67を良好に製造でき、チップ67の製造効率及び品質が低下するのを防止できる。
【0066】
なお、ここで言う「破断強力」とは、繊維を破断させるのに必要な引っ張り荷重である。JIS L 1015「化学繊維ステープル試験方法 8.9 引掛強さ」に準拠して測定され、測定試料がトウバンド64である場合の切断時の荷重を破断強力と定義できる。
【0067】
ここで本実施形態の捲縮ステップでは、比TD/Dが800デニール/mm以上1300デニール/mm以下に設定された一対のニップロール16,17を用いる。これにより、一対のニップロール16,17のロール幅方向に複数本のCAフィラメント61が一層均一に配列させられ、より均一に捲縮されたCAトウバンド64が得られる。
【0068】
図2に示すように、本実施形態の一対のニップロール16,17のロール幅(軸方向)寸法W2は、一対のニップロール16,17に導入されるエンド63の幅寸法W1よりも大きい値に設定されている。整列ステップにより、エンド63に含まれる複数本のCAフィラメント61をロール幅方向に良好に広げられるようにするため、ロール幅寸法W2は、エンド63の幅寸法W1よりも大きい値に設定される。一例として、ロール幅寸法W2は、エンド63の幅寸法W1よりも数mm以上大きい値に設定されている。
【0069】
また本実施形態では、監視ステップにおいてフィラメント集合体の厚み寸法を監視することで、例えば、フィラメント集合体の厚み寸法の値が基準範囲よりも大きく変動した場合には、フィラメント集合体の厚み寸法の値が基準範囲内に収まるように整列ステップを行う。
【0070】
これにより、一対のニップロール16,17によりCAフィラメント61を捲縮する際にCAフィラメント61に加えられる外力によりCAフィラメント61が断片化するのを一層防止できる。従って、チップ67の製造効率の低下を防止できると共に、チップ67の品質が低下するのを防止できる。
【0071】
また、他の例の捲縮ステップでは、TDが、20000以上40000以下の範囲の値に設定され、FDが、8.0以上20.0以下の範囲の値に設定された複数本のCAフィラメント61を捲縮する。
【0072】
また、他の例の捲縮ステップでは、TDが、10000以上20000以下の範囲の値に設定され、FDが、6.0以上12.0以下の範囲の値に設定された複数本のCAフィラメント61を捲縮する。
[チップ製造装置]
【0073】
図3は、実施形態に係るチップ製造装置20の全体図である。
図2に示すように、チップ製造装置20は、収束リング21、第1開繊ユニット22、ターンバッフル23、第2開繊ユニット24、プレテンションロール対25、第1開繊ロール対26、第2開繊ロール対27、第3開繊ユニット28、可塑剤添着装置29、搬送ロール対30、トランスポートジェット31、巻管部32、及び切断装置33を備える。
図3の梱包容器19は、断面構造を示している。
【0074】
チップ製造装置20では、梱包容器19内から繰り上げられたCAトウバンド64が、収束リング21に挿通された後、第1開繊ユニット22において加圧空気により幅方向に開繊される。その後CAトウバンド64は、ターンバッフル23により案内される。
【0075】
次にCAトウバンド64は、第2開繊ユニット24において加圧空気により更に幅方向に開繊された後、プレテンションロール対25間、第1開繊ロール対26間、及び第2開繊ロール対27間に順に挿通されることにより、CAトウバンド64の搬送方向に開繊される。
【0076】
第2開繊ロール対27間を通過したCAトウバンド64は、第3開繊ユニット28において加圧空気により更に幅方向に開繊された後、可塑剤添着装置29により可塑剤を添着される。
【0077】
可塑剤添着装置29を通過したCAトウバンド64は、搬送ロール対30間に挿通された後、トランスポートジェット31に導入されて、ジェット気流により巻管部32に搬入される。
【0078】
巻管部32は、ファンネル41、トング42、及びガニチャー43を有する。巻管部32に搬入されたCAトウバンド64は、ファンネル41において渦巻状に巻き取られてロッド状に成形される。これにより、CAトウバンド64がロッド状に成形されてなる成形体(ロッド)65が形成される。
【0079】
また巻紙40が、トング42により成形体65に向けて案内される。成形体65は、ガニチャー43により搬送されると共に、その外周に巻紙40が巻回され且つ固定される。切断装置33は、成形体65を間隔をあけて切断する。これによりプラグ66が製造される。プラグ66を更に切断することで、チップ67が製造される。
【0080】
このようにチップ67は、チップ製造装置20を用いて製造される。この製造方法は、上記した製造方法により製造されたCAトウバンド64に可塑剤を添加してCAトウバンド64をロッド状に成形する成形ステップを有する。
【0081】
ここで、CAトウバンド64に含まれる複数本のCAフィラメント61が断片を生じている場合、例えば、断片が可塑剤添着装置29の内部において可塑剤を吸収し、成形体65の内部に混入することがある。この場合、成形体65内のCAフィラメント61が断片に含まれる可塑剤により溶解して、メルトホールが生じるおそれがある。
【0082】
これに対して本実施形態では、上記したように、複数本のCAフィラメント61が断片を生じるのが適切に防止される。これにより、チップ67を製造する場合には、CAフィラメント61が断片化するのを防止しながら良好に捲縮されたCAトウバンド64により成形体65を形成できる。このため、例えば、CAフィラメント61の断片が可塑剤を吸収してメルトホールが発生するのを防止できる。従って、チップ67の製造効率及び品質が低下するのを防止できる。
[電子タバコ用チップ]
【0083】
図4は、実施形態に係る加熱式電子タバコ50の断面図である。
図4に示すように、電子タバコ50は長尺状であり、電子タバコユニット51と、エアロゾル発生物品52とを備える。電子タバコユニット51は、筐体53、電源54、表示部55、制御部56、加熱部57、及び操作部58を有する。
【0084】
筐体53は長尺状に形成されている。電源54、制御部56、及び加熱部57は、筐体53に収容されている。表示部55と操作部58とは、筐体53の外表面(ここでは紙面裏側における筐体53の側面)に配置されている。筐体53の形状は、本実施形態では電子タバコユニット51の長手方向一端が閉塞された直管状であるが、これに限定されない。
【0085】
制御部56は、配線68により電源54、表示部55、及び加熱部57に接続されている。制御部56は、一例としてワンチップマイクロコンピュータであり、操作部58からのユーザの操作入力を受け付ける。これにより制御部56は、所定のタイミングで電源54の電力を加熱部57に供給、又は、該電力の加熱部57への供給を遮断するように、電子タバコユニット51の電源回路を制御する。また制御部56は、ユーザに向けて所定情報を表示するように、表示部55を制御する。
【0086】
加熱部57は、電源54から供給される電力により、エアロゾル発生物品52の基材70を加熱する。加熱部57は、基材70内に差し込まれて基材70を内部からジュール熱により加熱するためのブレード70aを有する。筐体53と加熱部57との間には、差込口51aとエアロゾル発生物品52との隙間から基材70に向けて外気を流通させるための流通路59が設けられている。
【0087】
エアロゾル発生物品52は、電子タバコ50の使用時に電子タバコユニット51の長手方向他端に形成された差込口51aに差し込まれる。エアロゾル発生物品52はロッド状であり、基材70、セパレータパイプ71、エアロゾル発生部72、チップ67、及び巻紙73を有する。エアロゾル発生物品52では、その長手方向一端から他端に向けて、基材70、セパレータパイプ71、エアロゾル発生部72、及びチップ67が、この順に配置されている。巻紙73は、これらの要素66,70~72の外周を一体的に巻回している。
【0088】
基材70は、エアロゾル発生物品52の長手方向一端に配置されている。基材70は、タバコ成分である揮発成分を含有すると共に、電子タバコユニット51の差込口51aから電子タバコユニット51の内部に差し込まれる。基材70は、電子タバコ50の使用時に加熱部57に加熱されることで揮発成分を発生する。
【0089】
基材70は、揮発成分を発生する香味材料、例えばニコチンを含む。具体的に基材70は、タバコ葉、タバコリブ、膨張タバコ、均質化タバコ、及びハーブ葉の少なくともいずれかを含んでいることが好ましい。また基材70は、ニコチン以外の香味材料を含んでいてもよい。
【0090】
セパレータパイプ71は、エアロゾル発生物品52の長手方向に延び、基材70とエアロゾル発生部72との間に配置されることで、基材70とエアロゾル発生部72とを離隔するセパレータとして機能する。これによりセパレータパイプ71は、エアロゾル発生物品52が差込口51aから電子タバコユニット51の内部に差し込まれる際、エアロゾル発生物品52が長手方向に圧縮されて基材70がエアロゾル発生部72に接触する程度まで押し潰されるのを防止する。
【0091】
本実施形態のセパレータパイプ71は、中空のロッド状に形成されている。セパレータパイプ71の中空部には、電子タバコ50の使用時に基材70から発生した揮発成分が、チップ67に向けて流通する。
【0092】
エアロゾル発生部72は、エアロゾル発生物品52の長手方向に延び、セパレータパイプ71を通過した基材70からの揮発成分を冷却・凝集することで、エアロゾルを発生させる。
【0093】
エアロゾル発生部72は、例えば、エアロゾル発生物品52の周方向に巻回された帯状のシート体、又は、各折り目がエアロゾル発生物品52の長手方向に延びるように細かく折り畳まれた帯状のシート体により構成される。エアロゾル発生部72では、このように巻回され又は細かく折り畳まれたシート体の間隙により、エアロゾルの流通経路が形成されている。
【0094】
本実施形態のチップ67は、CAトウバンド製造装置1により製造されたCAトウバンド64を用いて、チップ製造装置20により製造されたものである。チップ67は、エアロゾル発生物品52の長手方向他端に配置されている。
【0095】
チップ67は、CAトウバンド64がロッド状に成形されてなる成形体65と、この成形体65の周面に巻回された巻紙40とを備える。チップ67は、電子タバコ50の使用時にユーザに咥えられ、エアロゾル発生部72を通過したエアロゾルを濾過する。成形体65の内部には、香味成分等を含む液体が封入されたカプセルが配置されていてもよい。
【0096】
チップ67の長さ寸法(電子タバコ50の差込口51aに対する差し込み方向におけるチップ67の寸法)は、適宜設定可能であり、例えば4mm以上35mm以下の範囲の値(ここでは7mm)に設定されている。またチップ67の長さ寸法は、例えば、下限値を4mm,7mm,10mmのいずれかとし、上限値を17mm,20mm,25mm,28mm,30mm,35mmのいずれかとする範囲の値に設定できる。別の例では、チップ67の長さ寸法は、7mm以上12mm以下の範囲の値に設定されている。チップ67の周長は、適宜設定可能であり、例えば16.5mm以上24.5mm以下の範囲の値に設定されている。
【0097】
ここで、成形体65を構成するCAトウバンド64は、TDが、10000以上40000以下の範囲の値に設定され、FDが、6.0以上20.0以下の範囲の値に設定され、比F/TDが、0.0015N/デニール以上の値に設定されている。
【0098】
別の例では、成形体65を構成するCAトウバンド64は、TDが、20000以上40000以下の範囲の値に設定され、FDが、8.0以上20.0以下の範囲の値に設定されている。
【0099】
また別の例では、成形体65を構成するCAトウバンド64は、TDが、10000以上20000以下の範囲の値に設定され、FDが、6.0以上12.0以下の範囲の値に設定されている。
【0100】
電子タバコ50の使用時には、ユーザは、エアロゾル発生物品52を差込口51aから電子タバコユニット51の内部に差し込み、操作部58を操作して、電子タバコユニット51の電源をONにする。またユーザは、チップ67の内部にカプセルが配置されている場合、エアロゾル発生物品52の側部を押圧して、カプセルを潰す。
【0101】
これにより制御部56は、電源54からの電力により加熱部57を加熱するように電源回路を制御する。加熱部57が所定温度まで加熱された状態で所定時間が経過すると、制御部56は表示部55を通じて喫煙可能になった旨をユーザに表示する。
【0102】
ユーザがチップ67を咥えて吸引することで、加熱部57により加熱されて揮発した基材70からの揮発成分が、セパレータパイプ71を流通する。セパレータパイプ71を通過した揮発成分は、エアロゾル発生部72の間隙を流通する際に冷却・凝集される。これにより、揮発成分を含むエアロゾル(液滴)が発生する。
【0103】
エアロゾル発生部72を通過したエアロゾルは、チップ67において適切に濾過された後、ユーザに吸引される。チップ67に用いられたCAトウバンド64にエアロゾルが衝突することで、エアロゾルは更に温度低下されてユーザに吸引される。また、ユーザがカプセルを潰すことによりチップ67内に拡散されたカプセル内の香味成分は、エアロゾルと共にユーザに吸引される。
【0104】
ここで本実施形態では、CAフィラメント61の断片が発生するのを防止しながら良好に捲縮されたCAトウバンド64により成形体65を形成できる。従って、チップ67の製造効率及び品質が低下するのを防止できる。ユーザは、安定した品質で製造されたチップ67を有するエアロゾル発生物品52を用いて、例えば、CAフィラメント61の断片がエアロゾルと共に口内に入り込むのを防止しながら、良好に電子タバコ50を吸引できる。
【0105】
以上説明したように、本実施形態のCAトウバンド64は、複数本のフィラメントを束状に合一し且つ捲縮してなる、セルロースアセテートのトウバンドであって、TDが、10000以上40000以下の範囲の値に設定され、FDが、6.0以上20.0以下の範囲の値に設定され、比F/TDが、0.0015N/デニール以上の値に設定されている。
【0106】
この構成によれば、CAトウバンド64のTD及びFDを上記範囲内の所望の値に設定しながら、CAトウバンド64に含まれるCAフィラメント61の一本当たりの強度を向上できる。これにより、CAトウバンド64及びチップ67の製造中にCAフィラメント61に外力が加わっても、CAフィラメント61の断片が発生するのを防止できるため、チップ67を良好に製造できる。従って、チップ67の製造効率及び品質が低下するのを防止できる。なお、比F/TDの上限値は、適宜設定可能であるが、例えば、0.01N/デニール以下が望ましい。
【0107】
(確認試験)
次に、確認試験について説明するが、本発明は、以下に示す各実施例に限定されるものではない。
【0108】
第1実施形態のCAトウバンド64の製造方法に基づき、表1に示すFD及びTDの値に設定された実施例1~4のCAトウバンド64をそれぞれ製造した。実施例1~4のCAトウバンド64の製造時には、表1に示す値に比TD/Dを設定し、監視ステップを行った。この監視ステップは、一対のニップロール16,17よりも上流側、且つ、後述するフィラメント集合体(エンド63)の穴の有無を確認した位置よりも上流側の位置において行った。
【0109】
監視ステップを省略したこと以外は第1実施形態のCAトウバンド64の製造方法と同様の製造方法に基づき、表1に示すFD及びTDの値に設定された比較例1及び2のCAトウバンド64をそれぞれ製造した。また、CAフィラメント61の配列のみを目視にて監視することにより、監視ステップを一部のみ実施した点を除き、第1実施形態のCAトウバンド64の製造方法と同様の製造方法に基づき、表1に示すFD及びTDの値に設定された比較例3及び4のCAトウバンド64をそれぞれ製造した。実施例1~4及び比較例1~4のCAトウバンドの製造に用いたニップロールの幅寸法D、及びTD/Dを、表1に示す値に設定した。
【0110】
実施例1~4及び比較例1~4の破断強力F及び比F/TDを測定すると共に、一対のニップロールよりも搬送方向上流側を搬送されるフィラメント集合体(エンド)の穴の有無を目視により確認した。その結果を表1に示す。
【0111】
また、実施例1~4及び比較例1~4のCAトウバンドを用いて、チップ製造装置20(Hauni(株)製巻上機「KDF-2」)により電子タバコ用チップを製造した。このとき、プレテンションロール対25の圧力を0.5barに設定し、第1開繊ロール対26及び第2開繊ロール対27の圧力を1.8barに設定した。また、第1開繊ロール対26の回転速度V1と第2開繊ロール対27の回転速度V2との速度比V2/V1を1.4に設定し、第2開繊ロール対27の回転速度V2と搬送ロール対30の回転速度V3との速度比V3/V2を1.48に設定した。
【0112】
実施例1及び比較例1,3では、チップの円周長を22.5mmに設定し、チップ内へのCAトウバンドの詰込量(正味トウ重量)を0.47g/rodに設定した。実施例3では、チップの円周長を16.5mmに設定し、チップ内へのCAトウバンドの詰込量(正味トウ重量)を0.30g/rodに設定した。
【0113】
また、実施例1,3及び比較例1,3の製造途中のプラグ(ロッド)の長さ寸法を120mmに設定した。また、実施例1及び比較例1,3のチップにおける成形体の長さ寸法を7mmに設定し、実施例3のチップにおける成形体の長さ寸法を8mmに設定した。
【0114】
実施例1,3及び比較例1,3のチップの製造に際して、チップ製造装置20において、CAトウバンドの表面に、可塑剤を噴霧した直後のCAトウバンドの総重量の7wt%に相当する可塑剤(グリセリントリアセテート)を可塑剤添着装置29により均一に噴霧して添着した。このチップの製造中に発生した15分あたりのフライの発生量を測定した。このフライの発生量の測定に際しては、第1開繊ロール対26と第2開繊ロール対27とが収容されているボックスの内部に残留したフライをエアサッカーで収集し、天秤で計量した。
【0115】
また、実施例1及び比較例1,3のチップに、フィリップモリス(株)製「iQOS」用エアロゾル発生物品「ヒートスティック」(登録商標)からチップを切除した残余部分を接続し、実施例1及び比較例1のエアロゾル発生物品を作製した。また、実施例3のチップに、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(株)製「glo」用エアロゾル発生物品「ネオスティック」(登録商標)からチップを切除した残余部分を接続し、実施例3のエアロゾル発生物品を作製した。
【0116】
作製した実施例1,3及び比較例1,3のエアロゾル発生物品を用い、それぞれのチップのPDを、Celulean(株)社製のフィルタープラグ測定器(自動通気抵抗測定器)「QTM」を用いて測定した。また、実施例1,3及び比較例1,3のチップの外観異常を目視で確認した。その結果を表1に示す。なお表1中、実施例2,4及び比較例2,4のフライの発生量は、CAトウバンド64の製造中に発生したフライを目視で確認したときの量を示している。
【0117】
【0118】
表1に示すように、実施例1~4は、比F/TDが、0.0015N/デニール以上の値に設定され、CAフィラメント61の強度が比較例1,2のCAフィラメントの強度と同等以上であることが分かった。また実施例1~4は、フィラメント集合体の穴開きが無く、フライの発生量が少ないことが分かった。
【0119】
この理由として、実施例1~4では、CAトウバンド64のF/TDが0.0015(N/デニール)以上の値に設定されたことにより、CAフィラメントの強度が高められ、CAフィラメントの断片の発生が防止されたことが考えられる。実施例1~4の試験結果では、CAトウバンド64のF/TDは、0.0015(N/デニール)以上0.0021(N/デニール)以下の範囲の値に設定されている。
【0120】
また実施例1~4では、監視ステップが行われたことにより、フィラメント集合体の厚み寸法が均一になるように整列ステップが適切に行われ、CAフィラメント61の断片の発生が防止されながらCAフィラメント61が捲縮され、CAフィラメント61の高い破断強力が保持されたことが考えられる。
【0121】
なお、実施例3のチップ67が実施例1のチップ67に比べてPDが高い理由の一つとしては、実施例3のチップ67の円周長が実施例1のチップ67の円周長に比べて小さいためであると考えられる。
【0122】
これに対して比較例1は、F/TD値が、実施例1~4よりも低い値に設定され、CAフィラメントの強度が実施例1~4よりも低いことが分かった。また比較例1は、実施例1~4に比べてフライの発生量が多く、且つ、チップのメルトホールが発生していることが分かった。
【0123】
この原因として、比較例1では、一対のニップロール16,17により比較的大きなニップ圧で複数のCAフィラメントが捲縮されたため、CAフィラメントが損傷して、CAフィラメントの引っ張り強度が低下したことが考えられる。また、CAフィラメントが損傷したことにより、フライが多く発生し、フライが可塑剤を吸収してチップに混入し、メルトホールが発生したことが考えられる。
【0124】
また比較例2は、実施例4とFDが同値であるが、比F/TDの値が実施例4に比べて低く、フィラメント集合体に穴開きが発生していることが分かった。この穴開きの原因としては、比較例2は、実施例4に比べて、TDが小さく、CAフィラメントの本数が少ないため、CAトウバンドの製造時に複数本のCAフィラメントが搬送される際に、フィラメント集合体内において、一対のニップロール16,17のロール幅方向にCAフィラメントの偏りが生じたことが考えられる。これにより、比較例2のCAトウバンドは、捲縮が不均一になされていると推測される。
【0125】
また比較例3及び4は、CAフィラメント61の配列のみを目視にて監視したものの、比F/TDの値が相当に低く、実施例1~4に比べて性能が劣ることが分かった。また比較例3では、フライの発生量が多く、チップにおいてメルトホールの発生が確認された。比較例4では、フライの発生量は少ないものの、フィラメント集合体に穴開きが発生していることが確認された。
【0126】
本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように本発明は、トウバンドを用いて電子タバコ用チップを製造する場合において、フィラメントの断片が発生することにより電子タバコ用チップの製造効率及び品質が低下するのを防止できる優れた効果を有する。従って、この効果の意義を発揮できる電子タバコチップ用のトウバンド、電子タバコ用チップ、電子タバコチップ用のトウバンドの製造方法、及び電子タバコチップの製造方法に、本発明を広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0128】
16,17 ニップロール
61 CAフィラメント(フィラメント)
64 CAトウバンド(トウバンド)
65 成形体
67 チップ
73 巻紙