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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ガス遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/915 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
H01H33/915
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020552469
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2018039836
(87)【国際公開番号】W WO2020084754
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】内井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】石井 嵩人
(72)【発明者】
【氏名】島村 旭
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 朋寛
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智之
(72)【発明者】
【氏名】今澤 優子
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-079635(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146390(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/915
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される第1の口出し導体に電気的に接続された第1のアーク接触子と、
第2の口出し導体に電気的に接続された第2のアーク接触子と、
前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子の間を移動可能に配置され、電流遮断時の前半には移動に伴って前記第1のアーク接触子との間に発生するアークが点弧され、電流遮断時の後半には移動に伴って、前記アークを前記第2のアーク接触子に点弧させるトリガー電極と、
円筒状に形成された外壁および内壁を有し、前記第2のアーク接触子に設けられたシリンダと、
前記トリガー電極と連動して前記外壁と前記内壁の間を摺動するピストンと、
により構成された消弧性ガスを昇圧する圧縮室と、
前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子との間に点弧したアークに、前記圧縮室により昇圧された消弧性ガスを導く絶縁ノズルと、
を有し、
前記絶縁ノズルは、前記シリンダの前記内壁に支持された、
ガス遮断器。
【請求項2】
前記絶縁ノズルは外周に第1の段差を有し、前記シリンダの前記内壁は内周に第2の段差を有し、前記第1の段差と前記第2の段差が嵌合することにより前記絶縁ノズルは、前記シリンダを構成する前記内壁に支持される、
請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記絶縁ノズルは、Oリングを介して前記シリンダを構成する前記内壁に支持される、
請求項1または請求項2に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記トリガー電極は、電流遮断時に発生するアークが点弧されない主接点を構成する可動通電接触子と接合されており、
前記絶縁ノズルは、前記可動通電接触子よりも発生したアークから離間した位置で、前記シリンダを構成する前記内壁に支持され接合される、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記トリガー電極は、電流遮断時に発生するアークが点弧されない主接点を構成する可動通電接触子と接合されており、
前記シリンダの前記外壁は前記可動通電接触子に周回して配置される静電シールドを有し、
前記絶縁ノズルは、前記静電シールドよりも発生したアークから離間した位置で、前記シリンダを構成する前記内壁に支持され接合される、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力系統において電流遮断を行うガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の電力供給線に流れる電流を遮断するためにガス遮断器が使用されている。ガス遮断器は、系統事故時において事故の生じた系統を切り離す際に流れる電流を遮断するために電力供給線に配置される。
【0003】
上記のようなガス遮断器として、パッファ形ガス遮断器が普及している。パッファ形ガス遮断器は、消弧性ガスが充填された密閉容器内に、対向して配置された一対の電極を有する。これらの一対の電極が、ガス遮断器の外部に配置された駆動装置により駆動されて開閉する。
【0004】
ガス遮断器が開状態とされる時には、この一対の電極が、ガス遮断器の外部に配置された駆動装置により駆動され、機械的に切り離される。しかしながら、電力系統における電圧は高電圧であるため、一対の電極が機械的に切り離された後も、アーク電流が流れ続ける。パッファ形ガス遮断器は、密閉容器内の消弧性ガスをアークに吹き付け消弧することにより、このアーク電流を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭61-14444公報
【文献】再表2013/030963
【文献】特開2014-72032公報
【文献】特開2015-185467公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のようなガス遮断器における電流の遮断は、移動電極が、固定電極から離間するように移動することにより行われる。移動電極と固定電極の間に発生したアークは、昇圧された消弧性ガスが吹き付けられ消弧される。消弧性ガスは、絶縁材料により構成されたノズルにより流れ方向および流速が確保される。このためノズルは、移動電極の近傍に配置されることが望ましい。
【0007】
しかしながら、移動電極の移動時の機械振動により、移動電極と絶縁材料により構成されたノズルとの近接および離間が繰り返される。これにより、金属、絶縁物、消弧性ガスが互いに接触する所謂トリプルジャンクション(三重点)が発生する可能性がある。金属、絶縁物、消弧性ガスが互いに接触するトリプルジャンクションでは、電界強度が極めて高くなる。その結果、ガス遮断器の電気絶縁性能が低下する可能性があるとの問題点があった。
【0008】
したがって、ノズルは、適切な距離で移動電極から離間して配置されることが望ましい。また、経年的に、ノズルと移動電極との離間距離が確保されることが望ましい。
【0009】
本実施形態は、絶縁ノズルの変形、アークに吹付けるために圧縮された消弧性ガスの漏えいを軽減し、電気絶縁性能をより確実に維持することができるガス遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態のガス遮断器は次のような構成を有することを特徴とする。
(1)電力系統に接続される第1の口出し導体に電気的に接続された第1のアーク接触子。
(2)第2の口出し導体に電気的に接続された第2のアーク接触子。
(3)前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子の間を移動可能に配置され、電流遮断時の前半には移動に伴って前記第1のアーク接触子との間に発生するアークが点弧され、電流遮断時の後半には移動に伴って、前記アークを前記第2のアーク接触子に点弧させるトリガー電極。
(4)以下により構成された消弧性ガスを昇圧する圧縮室。
(4-1)円筒状に形成された外壁および内壁を有し、前記第2のアーク接触子に設けられたシリンダ。
(4-2)前記トリガー電極と連動して前記外壁と前記内壁の間を摺動するピストン。
(5)前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子との間に点弧したアークに、前記圧縮室により昇圧された消弧性ガスを導く絶縁ノズル。
(6)前記絶縁ノズルは、前記シリンダの前記内壁に支持される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかるガス遮断器の閉路状態を示す図
図2】第1実施形態にかかるガス遮断器の電流遮断時の前半の状態を示す図
図3】第1実施形態にかかるガス遮断器の電流遮断時の後半の状態を示す図
図4】第1実施形態にかかるガス遮断器の絶縁ノズルとシリンダの内壁の位置関係を示す拡大図
図5】他の実施形態にかかるガス遮断器の電流遮断時の後半の状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
[1-1.概略構成]
以下では、図1図4を参照しつつ、本実施形態のガス遮断器の全体構成を説明する。図1は、ガス遮断器1が閉路状態である時の内部構造を示している。
【0013】
ガス遮断器1は、第1の固定接触子部2(以降、「固定接触子部2」と総称する)、可動接触子部3、第2の固定接触子部4(以降、「固定接触子部4」と総称する)、密閉容器8を有する。密閉容器8を介し、口出し導体7aが固定接触子部2に、口出し導体7bが固定接触子部4に接続される。口出し導体7a、7bは、電力系統に接続される。ガス遮断器1は、変電所等の電力供給設備に設置される。
【0014】
固定接触子部2、固定接触子部4は、導体金属により構成された円筒状の部材である。可動接触子部3は、固定接触子部2、固定接触子部4の内径と密着し摺動可能に配置された、導体金属により構成された円筒状の部材である。固定接触子部2、固定接触子部4は、密閉容器8内に離間して絶縁物(図中不示)にて固定される。
【0015】
可動接触子部3は、導体金属により構成された円筒状の部材である。可動接触子部3が、ガス遮断器1の外部に配置された駆動装置9により駆動され、固定接触子部2と固定接触子部4との間を移動することにより、固定接触子部2と固定接触子部4が電気的に遮断または導通とされる。これにより口出し導体7a、7b間が、電気的に遮断または導通となる。
【0016】
なお、ここでは簡単のため固定接触子部2は固定され動かないものとして説明するが、固定接触子部2を可動接触子部3と相対的に駆動する構成も考え得る。構造は複雑になるものの、開路状態時に、固定接触子部2と可動接触子部3との間の絶縁距離を速く増大させることができるからである。
【0017】
ガス遮断器1が開路状態となるときに固定接触子部2と可動接触子部3との間にアークが発生する。このアークは、密閉容器8内に充填された消弧性ガスが高圧で吹き付けられることにより消弧される。
【0018】
密閉容器8は、金属や碍子等からなる円筒状の密閉容器であり、内部に消弧性ガスが充填される。消弧性ガスとして、消弧性能及び絶縁性能に優れた六フッ化硫黄ガス(SF6ガス)が使用される。密閉容器8は、金属製の場合、接地電位に接続される。密閉容器8内の圧力は通常運転時においていずれの部分でも単一の圧力、例えば消弧性ガスの充気圧力となっている。
【0019】
消弧性ガスは、アークを消滅させるための電気絶縁性のガスである。現在、消弧性ガスとしてSF6ガスが使用される場合が多い。しかしSF6ガスは、地球温暖化効果が高い。従ってSF6ガスに代替して、他のガスが消弧性ガスとして使用されてもよい。SF6ガスに代替する消弧性ガスとしては、絶縁性、アーク冷却性(消弧性)、化学的安定性、環境適合性、入手性、コストなどが優れることが望ましい。図1から図3に示した本実施形態によれば、吹き付けガスは、断熱圧縮により昇圧されるため、SF6の代替となる消弧性ガスは、同じシリンダ容積および圧縮率で圧力が上がりやすい比熱比が大きいガスであることが望ましい。
【0020】
駆動装置9は、ガス遮断器1の開閉時に、可動接触子部3を駆動するための装置である。駆動装置9は、内部に動力源を有し、動力源として、ばね、油圧、高圧気体、電動機などが適用される。駆動装置9により可動接触子部3が、固定接触子部2と固定接触子部4との間を移動させられ、固定接触子部2と固定接触子部4が電気的に遮断または導通とされる。
【0021】
駆動装置9は、ガス遮断器1の開閉時に、外部から送信された指令信号に基づき動作する。駆動装置9には、大きな駆動エネルギーを安定的に蓄積すること、かつ指令信号に対する極めて速い応答性と、より確実な動作が求められる。駆動装置9は、消弧性ガス中にある必要はない。
【0022】
ガス遮断器1の開路状態時に、後述する圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスが、後述する蓄圧流路38を通りアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間へと放出されて圧縮室36内の圧力が十分に低下するまでは、可動接触子部3のピストン33が逆行しないようにピストン33の位置を保持しておくことが望ましい。ピストン33が逆行することで圧縮室36の体積が拡大し、圧縮室36および蓄圧流路38の圧力が低下してしまう。これによりアークへの吹付け圧力が低下してしまうことは望ましくないからである。この逆行を防止するために駆動装置9に逆行防止構造を設けるようにしてもよい。
【0023】
固定接触子部2は、密閉容器8内に配置された円筒状の部材である。固定接触子部2は、アーク接触子(固定側)21、固定通電接触子22、絶縁ノズル23、排気筒24を有する。アーク接触子(固定側)21が請求項における第1のアーク接触子に相当する。これらの部材の詳細については後述する。密閉容器8を介し、口出し導体7aが固定接触子部2に接続される。固定接触子部2は、密閉容器8に固定され配置される。固定接触子部2は、ガス遮断器1の閉路状態時に、可動接触子部3を介し固定接触子部4と電気的に接続され、口出し導体7a、7b間の電流を導通する。一方、固定接触子部2は、ガス遮断器1の開路状態時に、可動接触子部3と電気的に非接続となり、口出し導体7a、7b間の電流を遮断する。
【0024】
固定接触子部4は、密閉容器8内に配置された円筒状の部材である。固定接触子部4は、アーク接触子(可動側)41、シリンダ42、サポート43を有する。アーク接触子(可動側)41が請求項における第2のアーク接触子に相当する。なお、アーク接触子(可動側)41自体は、可動しない。これらの部材の詳細については後述する。密閉容器8を介し、口出し導体7bが固定接触子部4に接続される。固定接触子部4は、密閉容器8に固定され配置される。
【0025】
固定接触子部4は、ガス遮断器1の閉路状態時に、可動接触子部3を介し固定接触子部2と電気的に接続され、口出し導体7a、7b間の電流を導通する。一方、固定接触子部4は、ガス遮断器1の開路状態時に、固定接触子部2と可動接触子部3が電気的に非接続となるため、口出し導体7a、7b間の電流を遮断する。
【0026】
可動接触子部3は、密閉容器8内に配置された円筒状の部材である。可動接触子部3は、トリガー電極31、可動通電接触子32、ピストン33、ピストン支え33a、絶縁ロッド37を有する。これらの部材の詳細については後述する。可動接触子部3は、固定接触子部2および固定接触子部4との間を往復移動可能なように配置される。
【0027】
可動接触子部3は、ガス遮断器1の外部に配置された駆動装置9に機械的に接続される。ガス遮断器1の開閉時には、駆動装置9により可動接触子部3が駆動され、口出し導体7a、7bに流れる電流が遮断、導通される。可動接触子部3は、ガス遮断器1の閉路状態時に、固定接触子部2と固定接触子部4を電気的に接続し、口出し導体7a、7b間の電流を導通する。一方、可動接触子部3は、ガス遮断器1の開路状態時に、固定接触子部2と電気的に非接続となり、口出し導体7a、7b間の電流を遮断する。
【0028】
また、可動接触子部3は、ピストン33によりシリンダ42に蓄積された消弧性ガスを圧縮し、絶縁ノズル23を介し噴出し、固定接触子部2と可動接触子部3との間に発生したアークを消弧することにより、アーク電流を遮断する。
【0029】
固定接触子部2、可動接触子部3、固定接触子部4、密閉容器8は、同心円を描く円筒状の部材であり共通の中心軸を有し、同一軸上に配置される。なお、以下では、各部材の位置関係及び方向を説明するにあたり、固定接触子部2側の方向を開放端方向と、その反対側の固定接触子部4側の方向を駆動装置方向と呼ぶ。
【0030】
[1-2.詳細構成]
(固定接触子部2)
固定接触子部2は、アーク接触子(固定側)21、固定通電接触子22、絶縁ノズル23、排気筒24、を有する。アーク接触子(固定側)21が、請求項中の第1のアーク接触子に相当する。また、本文においてもアーク接触子(固定側)21を、第1のアーク接触子と呼ぶ場合がある。
【0031】
(固定通電接触子22)
固定通電接触子22は、固定接触子部2の駆動装置方向の外周部端面に配置されたリング状の電極である。固定通電接触子22は、削り出し等により、内径側に膨出したリング状に形成された金属導体により構成される。固定通電接触子22を構成する金属は、電気導電性、軽量性、強度、加工性からアルミニウムが望ましいが、それ以外にも例えば銅であってもよい。
【0032】
固定通電接触子22は、可動接触子部3の可動通電接触子32の外径と摺動可能な、一定のクリアランスを持つ内径を有する。固定通電接触子22は、円筒状の導体金属により構成された排気筒24の駆動装置方向の端部に配置される。排気筒24には、密閉容器8を介し、口出し導体7aが接続される。排気筒24は密閉容器8に絶縁部材を介して固定される。
【0033】
ガス遮断器1の閉路状態時に、固定通電接触子22には、可動接触子部3の可動通電接触子32が挿入される。これにより固定通電接触子22は、可動通電接触子32と接触し、固定接触子部2と可動接触子部3を電気的に導通させる。固定通電接触子22は、通電時には定格電流を流す。
【0034】
一方、遮断器1の開路状態時に、固定通電接触子22は、可動接触子部3の可動通電接触子32と物理的に離間し、固定接触子部2と可動接触子部3を電気的に遮断する。
【0035】
(アーク接触子(固定側)21)
アーク接触子(固定側)21は、固定接触子部2の円筒の中心軸に沿い、固定接触子部2の駆動装置方向の端部に配置された円筒状の電極である。アーク接触子(固定側)21は、駆動装置方向の端部が丸みを帯びた、固定通電接触子22より小径の円筒状に形成された金属導体により構成される。アーク接触子(固定側)21は、銅を10%から40%およびタングステンを90%から60%含有する金属等により構成される。
【0036】
アーク接触子(固定側)21は、ガス遮断器1の閉路状態時に、可動接触子部3のトリガー電極31の外径部分と接触する。アーク接触子(固定側)21は、固定接触子部2の外周を構成する排気筒24の内壁面に設けられた支持部材により、固定接触子部2に一体固定される。アーク接触子(固定側)21は、消弧性ガス中に配置され、消弧性ガス中に発生したアークを点弧する。
【0037】
アーク接触子(固定側)21は、固定されており、駆動装置9が駆動すべき可動部の重量に寄与しない。したがって、熱容量と表面積を大きく構成することができ、その結果、アーク接触子(固定側)21の耐久性を向上させることができる。
【0038】
アーク接触子(固定側)21の耐久性、アーク接触子(可動側)41の耐久性、トリガー電極31の耐久性は以下の関係であることが望ましい。
アーク接触子(固定側)21の耐久性≧アーク接触子(可動側)41の耐久性>トリガー電極31の耐久性
アーク接触子21には高温となった消弧性ガス流が加速後に衝突するため、アーク接触子(固定側)21は、アーク接触子(可動側)41に比べ摩耗しやすいためである。また、可動部であるトリガー電極31は、アーク接触子(固定側)21、アーク接触子(可動側)41に比べ軽量化されることが望ましいと同時に、後述のとおり、高温のアークを点弧するのはアーク接触子(可動側)41にアークを転流するまでの一定期間のみであり、摩耗の程度はアーク接触子(固定側)21およびアーク接触子(可動側)41に比べると限定的だからである。
【0039】
アーク接触子(固定側)21は、アーク接触子(可動側)41と、アークが消弧された後に絶縁性が確保できる距離に離間して配置される。アーク接触子(固定側)21およびアーク接触子(可動側)41は、固定され可動しないので大きなものにすることができる。このためアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41間の空間の電界は従来に比べて平等的な分布(電界集中の少ない分布)となり、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41間の距離を、従来技術に比べ、短くすることができる。
【0040】
また、絶縁ノズル23とアーク接触子(固定側)21およびアーク接触子(可動側)41の距離により、アークに吹き付ける消弧性ガスの流量や流速を規定することができる。アーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23の間の距離が、アーク接触子(可動側)41と絶縁ノズル23の間の距離より大きい方が、アークに吹付けた消弧性ガスが速やかに開放端方向へ排気されやすく望ましい。
【0041】
ガス遮断器1の閉路状態時に、アーク接触子(固定側)21に、可動接触子部3のトリガー電極31が挿入される。これによりアーク接触子(固定側)21は、可動接触子部3のトリガー電極31と接触し、固定接触子部2と可動接触子部3を電気的に導通させる。ガス遮断器1の閉路状態時に、アーク接触子(固定側)21は、口出し導体7a、7bを電気的に導通させるための電流回路の一部を構成する導体となる。
【0042】
一方、ガス遮断器1の開路状態時に、アーク接触子(固定側)21は、可動接触子部3のトリガー電極31と離間し、固定接触子部2と可動接触子部3との間に発生するアークを点弧する。アーク接触子(固定側)21は、トリガー電極31に対向して配置された1対の電極を構成し、ガス遮断器1が開路状態となる時に、アークと接する電極の一方となる。固定通電接触子22と可動通電接触子32は、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31に先立ち離間し、通電電流をアーク接触子(固定側)21とトリガー電極31側へ転流させた後に離間するため、固定通電接触子22と可動通電接触子32間にアークは発生しない。
【0043】
アーク接触子(固定側)21およびトリガー電極31は、固定通電接触子22と可動通電接触子32よりも時間的に後に開離するため、アークは必ずアーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の間に点呼するように構成されている。これにより固定通電接触子22と可動通電接触子32のアークによる劣化が軽減される。
【0044】
ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3は、駆動装置9により駆動され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間を開放端方向から駆動装置方向へと移動する。これに伴い、トリガー電極31も、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間を開放端方向から駆動装置方向へと移動する。トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する前に、固定通電接触子22と可動通電接触子32が離間する。アークが固定通電接触子22と可動通電接触子32の間に発生しないようにするためである。
【0045】
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなる時点までの間、アークはトリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。
【0046】
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が概ね等しくなると、アークはトリガー電極31からアーク接触子(可動側)41に転移する。アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が概ね等しくなった時点から、アークが消弧される時点までの間、アークはアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。このときアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、対向して配置された1対の電極を構成し、アークを点弧する。
【0047】
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなるまでの時間を「電流遮断時の前半」と呼ぶ場合がある。
【0048】
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなった時点から、アークが消弧されるまでの時間を、「電流遮断時の後半」と呼ぶ場合がある。
【0049】
トリガー電極31は、さらに駆動装置方向に、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離より大きくなる方向に移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21の間に発生したアークから離間することとなり、トリガー電極31の劣化が軽減される。
【0050】
トリガー電極31は、さらに駆動装置方向に移動する。この時、ピストン33とシリンダ42により構成される圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスが、蓄圧流路38、絶縁ノズル23を介し噴出され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間のアークが、消弧される。
【0051】
なお、アーク接触子(固定側)21の先端は円周方向に分割され、指状電極となっていてもよい。この場合、アーク接触子(固定側)21は可撓性を有し、アーク接触子(固定側)21の開口縁の内径は、トリガー電極31の外径より若干小さくされてすぼめられている。トリガー電極31がアーク接触子(固定側)21の開口に差し込まれることで、アーク接触子(固定側)21、トリガー電極31が互いに接触し、導通する。
【0052】
(絶縁ノズル23)
絶縁ノズル23は、圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスの流速バランスを規定するスロート部23aを有する円筒状の整流部材である。絶縁ノズル23は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂などの耐熱性の絶縁物により構成される。
【0053】
絶縁ノズル23は、固定接触子部2に一体固定され、絶縁ノズル23の円筒を構成する軸が、アーク接触子(固定側)21の円筒軸上に来るように配置される。絶縁ノズル23は、後述するシリンダ42の内壁52に支持される。
【0054】
絶縁ノズル23は、駆動装置方向の端部の外周に段差231を有し、シリンダ42の内壁52の内周に設けられた段差521と嵌合する。絶縁ノズル23の段差231とシリンダ42の内壁52の段差521が嵌合することにより絶縁ノズル23は、シリンダ42を構成する内壁52に支持される。
【0055】
段差231が請求項における第1の段差に、段差521が請求項における第2の段差に相当する。また、絶縁ノズル23は、Oリング53を介してシリンダ42を構成する内壁52に支持される。Oリング53により、絶縁ノズル23とシリンダ42を構成する内壁52との間の気密が確保される。
【0056】
絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、アークに吹付けるために圧縮された消弧性ガスの圧力低下を軽減するために薄く形成されることが望ましい。絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、15mm以下程度に形成されることが望ましい。
【0057】
仮に絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52が厚く形成された場合、高温となった高圧の消弧性ガスによる絶縁ノズル23の変形は軽減される。しかしながら圧縮室36で昇圧された消弧性ガスの圧力は、蓄圧流路38に流入するとき低下してしまう。
【0058】
絶縁ノズル23の段差231の外周が、シリンダ42の内壁52の段差521の内周に嵌合して、絶縁ノズル23はシリンダ42の内壁52に支持される構造とすることで、絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、薄く形成され得る。これにより、圧縮室36から蓄圧流路38に流入するときの消弧性ガスの圧力が確保される。
【0059】
トリガー電極31は、電流遮断時に発生するアークが点弧されない主接点を構成する可動通電接触子32と接合されており、絶縁ノズル23は、可動通電接触子32よりも駆動装置方向、つまり、発生したアークから離間した位置で、シリンダ42を構成する内壁52に支持され接合される。
【0060】
絶縁ノズル23は、可動通電接触子32よりも発生したアークから駆動装置方向に離間した位置で、シリンダ42を構成する内壁52に支持され接合される。
【0061】
絶縁ノズル23は、ガス遮断器1が閉路状態である時のトリガー電極31を包囲するように配置される。絶縁ノズル23は、開放端方向から駆動装置方向にかけ、内側が円錐状の空間を形成するような形状を有する。絶縁ノズル23は、軸に沿いアーク接触子(固定側)21からアーク接触子(可動側)41側へ延び、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間に最小径となるスロート部23aを有する。
【0062】
絶縁ノズル23により、圧縮室36で昇圧された消弧性ガスは、アーク空間へ誘導される。また、絶縁ノズル23のスロート部23aにより、消弧性ガスがアーク空間に集中されると共に、スロート部23aより拡大される流路において消弧性ガスの流速が高速化される。
【0063】
ガス遮断器1が開路状態となる時に、可動接触子部3のピストン33と固定接触子部4のシリンダ42により構成される圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧される。アーク接触子(可動側)41の外周とシリンダ42の内壁52の内周は、昇圧された消弧性ガスの流路となる蓄圧流路38を構成している。
【0064】
圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧過程の終盤において、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられる。
【0065】
このとき絶縁ノズル23により、昇圧された消弧性ガスが、アーク空間に集中される。これにより、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間のアークが効率的に消弧され、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
【0066】
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられ高温となった消弧性ガスは、固定接触子部2の排気筒24を通り冷却され、絶縁性を回復したうえで密閉容器8内に排気される。
【0067】
アーク放電により発生する熱エネルギーは、消弧性ガスにより除去される。その結果、消弧性ガスは、アーク放電による熱エネルギーを含み高温、高圧力になる。高温、高圧力となった消弧性ガスは、排気筒24の排気口24a、24bから排出され、これらの熱エネルギーを電極領域から排除する。
【0068】
絶縁ノズル23は、スロート部23aにより昇圧された消弧性ガスをアーク空間へ集中的に導く。さらに、絶縁ノズル23は、スロート部23aからの拡大部において消弧性ガスを加速し、熱エネルギーの排気性を高める。また、絶縁ノズル23は、アークにより高温化された消弧性ガスの排気流路を規定し、例えば、固定通電接触子22と可動通電接触子32の間での絶縁破壊を抑制する。
【0069】
さらに、絶縁ノズル23は、スロート部23aによりアークの広がりを抑制し、スロート部23aにおいてアークの最小径を規定する。また、絶縁ノズル23は、スロート部23aにより消弧性ガスの流量と流速を適切に制御する。
【0070】
これにより、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間に発生したアークに消弧性ガスが効率的に吹き付けられ、また熱エネルギーが効率的に除去され、アークが消弧される。その結果、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
【0071】
従来技術において、絶縁ノズル23は可動通電接触子32と共に可動接触子部3に設けられる場合が多かった。しかしながら、可動接触子部3は可動するため軽量化することが望ましい。従って絶縁ノズル23は、可動しない固定接触子部2に設けられることが望ましい。なお、絶縁ノズル23は、可動接触子部3に設けられていてもよい。
【0072】
絶縁ノズル23は、固定接触子部2、可動接触子部3のどちらに設置させても良いが、可動接触子部3は可動による振動がある。このため固定接触子部2に設置した場合の方が可動接触子部3に設置した場合に比べ、振動による電気的性能の悪化を抑制することができる。
【0073】
また、絶縁ノズル23は、絶縁性の低い高温となった消弧性ガスの固定通電接触子22への流れ込みを抑制することができるため、固定接触子部2に設置されることが望ましい。
【0074】
シリンダ42の内壁52は、絶縁ノズル23を支持する。シリンダ42の内壁52に支持されることにより、絶縁ノズル23とトリガー電極31との離間距離が確保される。アーク接触子(可動側)41とトリガー電極31の接触時のクリアランス距離より絶縁ノズル23とトリガー電極31のクリアランス距離が大きいことが望ましい。
【0075】
絶縁ノズル23とトリガー電極31は接触すると高電界部を生じ、電気的性能の著しい劣化を引き起こす。上記のように構成することで、トリガー電極31の中心軸からの最大ずれ幅をアーク接触子(可動側)41の内径で制限することができ、トリガー電極31と絶縁ノズル23の接触を防止することができる。また、アーク接触子(可動側)41とトリガー電極31のクリアランス距離を制限することで、消弧性ガスの蓄圧流路38からのリーク量を抑制することができる。
【0076】
消弧性ガスをアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間に発生したアークに吹き付けるにあたり、絶縁ノズル23の内圧は低い方が望ましい。従って、アーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23とにより形成される消弧性ガスの流路の流路断面積が開放端方向に向かって広くなるような、絶縁ノズル23の形状とすることが望ましい。
【0077】
試験結果によると、良好な遮断性能を得るためには、以下の流路構成にすることが好ましい。
アーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23の間に形成される流路の面積>絶縁ノズル23のスロート部23aの流路の面積>アーク接触子(可動側)41の吹き出し部分の面積
【0078】
絶縁ノズル23は、アークを効率的に冷やせるように、圧縮室36、蓄圧室38を介して噴出された消弧性ガスの流れを制御する。絶縁ノズル23内の圧力は、消弧性ガスの噴出時に、下流圧となるため、常に低圧に保たれる構造であることが望ましい。
【0079】
絶縁ノズル23は、駆動装置方向から開放端方向にかけ軸に並行な消弧性ガスの流れを作るだけでなく、アークを横切る方向に消弧性ガスの流れを作る。この流れによりアークは効率的に冷却される。アークに吹き付けられ高温となった消弧性ガスは絶縁性が低いため、固定通電接触子22、可動通電接触子32に接触せず排気されることが望ましい。
【0080】
(Oリング53)
Oリング53は、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との間の気密を確保する部材である。Oリング53は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)等の絶縁性のゴム材料により構成されたリング状の部材である。Oリング53は、高温下であっても、経年的に弾性を保つ部材により構成されることが望ましい。
【0081】
Oリング53は、絶縁ノズル23の段差231の外周に配置される。絶縁ノズル23は、Oリング53を介してシリンダ42を構成する内壁52に支持される。Oリング53は、絶縁ノズル23とシリンダ42を構成する内壁52との間の気密を確保する。
【0082】
(排気筒24)
排気筒24は、削り出された導体金属により構成された円筒状の部材である。排気筒24の駆動装置方向の端部には、円筒の軸を揃え、アーク接触子(固定側)21および固定通電接触子22が配置される。排気筒24は、高温となった消弧性ガスを排出する排気口24a、24bを有する。排気筒24は、アーク接触子(固定側)21および固定通電接触子22と一体に成形されていてもよい。
【0083】
排気筒24には、密閉容器8を介し、口出し導体7aが接続される。排気筒24は、消弧性ガスの流路となっており、アークに吹き付けられ高温になった消弧性ガスを、アーク接触子(固定側)21およびトリガー電極31の間のアーク空間から密閉容器8へ導く。
【0084】
ガス遮断器1が開路状態となる時に、可動接触子部3のピストン33と固定接触子部4のシリンダ42により構成される圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられる。アークに吹き付けられ高温になった消弧性ガスは、最終的には排気筒24の排気口24a、24bから密閉容器8内へ排出される。
【0085】
(固定接触子部4)
固定接触子部4は、アーク接触子(可動側)41、シリンダ42、サポート43を有する。アーク接触子(可動側)41が、請求項中の第2のアーク接触子に相当する。また、本文においてもアーク接触子(可動側)41を、第2のアーク接触子と呼ぶ場合がある。
【0086】
(アーク接触子(可動側)41)
アーク接触子(可動側)41は、固定接触子部4の円筒の中心軸に沿い、固定接触子部4の開放端方向の端部に配置された円筒状の電極である。アーク接触子(可動側)41は、開放端方向の端部が丸みを帯び、固定通電接触子22と略同径の円筒状に形成された金属導体により構成される。アーク接触子(可動側)41は、銅を10%から40%およびタングステンを90%から60%含有する金属等により構成される。
【0087】
図4に示すようにアーク接触子(可動側)41の外周とシリンダ42の内壁52の内周は、昇圧された消弧性ガスの流路となる蓄圧流路38を構成している。圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧過程の終盤において、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられる。
【0088】
アーク接触子(可動側)41は、固定接触子部4の外周を構成するサポート43を介し、絶縁支持部材により固定される。アーク接触子(可動側)41は、サポート43に固定され可動しない。このためアーク接触子(可動側)41は、駆動装置9が駆動する可動部重量には含まれない。したがって、駆動装置9の駆動力を上げることなく熱容量と表面積を向上することができ、アーク接触子(可動側)41の耐久性を向上させることができる。
【0089】
アーク接触子(可動側)41は、アーク接触子(固定側)21と、アークが消弧された後に絶縁性が確保できる距離に離間して配置される。アーク接触子(可動側)41およびアーク接触子(固定側)21は、固定され可動しないため駆動装置9の駆動力を増大させることなく、表面積を大きくすることができる。このため、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間の電界分布をより平等電界に近づけることができ、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21間の距離を、従来技術に比べ、短くすることができる。
【0090】
また、絶縁ノズル23とアーク接触子(固定側)21およびアーク接触子(可動側)41の距離により、アークに吹き付ける消弧性ガスの流量を規定することができる。アーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23の間の距離が、アーク接触子(可動側)41と絶縁ノズル23の間の距離より大きいことが望ましい。
【0091】
固定接触子部4と可動接触子部3は、摺動接点などを介して常に同電位かつ導通状態となるように構成される。ガス遮断器1の閉路状態時には、可動接触子部3のトリガー電極31がアーク接触子(固定側)21に挿入されるため、可動接触子部3を介し、固定接触子部2と固定接触子部4は、電気的に導通される。ガス遮断器1の閉路状態時に、アーク接触子(可動側)41は、口出し導体7a、7bを電気的に導通させるための電気回路の一部を構成する導体となる。
【0092】
一方、ガス遮断器1の開路状態時には、可動接触子部3のトリガー電極31が固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21と離間するため、アーク接触子(可動側)41は、アーク接触子(固定側)21と電気的に遮断される。
【0093】
しかしながら、ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3のトリガー電極31と固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21は機械的に離間しているが、発生したアークにより電気的に導通状態となっている。従って、アークが存在する状態では、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、電気的に導通状態である。
【0094】
ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3は、駆動装置9により駆動され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間を開放端方向から駆動装置方向へと移動する。これに伴い、トリガー電極31も、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間を開放端方向から駆動装置方向へと移動する。
【0095】
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する前に、固定通電接触子22と可動通電接触子32が離間する。アークが固定通電接触子22と可動通電接触子32の間に発生せず、確実にトリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間において発生するようにするためである。
【0096】
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなる時点までの間、アークはトリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。
【0097】
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなると、アークはトリガー電極31からアーク接触子(可動側)41に転移する。
【0098】
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなった時点から、アークが消弧される時点までの間、アークはアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。このときアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、対向して配置された1対の電極を構成し、アークを負担する。
【0099】
トリガー電極31は、さらに駆動装置方向に、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離より大きくなる方向に移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21の間に発生したアークから離間することとなり、トリガー電極31の劣化が軽減される。
【0100】
トリガー電極31は、さらに駆動装置方向に移動する。このとき、圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(可動側)41および絶縁ノズル23を介し噴出され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間のアークが、消弧される。
【0101】
駆動装置9によりトリガー電極31が駆動装置方向に移動することにより、トリガー電極31から、アーク接触子(可動側)41にアークが転移する。アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、アークにより電気的に導通となるが、アークが消弧性ガスにより消弧されることにより開路状態となる。
【0102】
また、ガス遮断器1が開路状態となる時に、アークによる、固定通電接触子22と可動通電接触子32の劣化を軽減することが望ましい。固定通電接触子22と可動通電接触子32は離間するが、固定通電接触子22と可動通電接触子32間にアークが発生することを防止するため、アーク接触子(固定側)21、トリガー電極31、アーク接触子(可動側)41でアークを負担する。このため、固定通電接触子22と可動通電接触子32が離間するまでの時間、トリガー電極31とアーク接触子(固定側)21は十分に高い導電率を保ち接触し、電気的に良導通状態を保つ。
【0103】
ガス遮断器1が開路状態となる時に、可動接触子部3のピストン33と固定接触子部4のシリンダ42により構成される圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧される。
【0104】
圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧が完了もしくは一定程度進んだ後に、アーク接触子(可動側)41とトリガー電極31は離間し、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられる。
【0105】
これにより、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧され、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
【0106】
なお、アーク接触子(可動側)41の先端は円周方向に分割され、指状電極となっていてもよい。この場合、アーク接触子(可動側)41は可撓性を有し、アーク接触子(可動側)41の開口縁の内径は、トリガー電極31の外径より若干小さくされてすぼめられている。トリガー電極31がアーク接触子(可動側)41の開口に差し込まれることで、トリガー電極31、アーク接触子(可動側)41が互いに接触し、導通するようにしてもよい。
【0107】
(シリンダ42)
シリンダ42は、金属導体により構成された、一端に有底部を他端に開口部を有する筒形状の部材である。シリンダ42は、内部に円筒状の内壁52を有し、ドーナツ状の空間を形成する。シリンダ42は、外周部分を構成する外壁51を有する。内壁52、外壁51は、アーク接触子(可動側)41と同心円を描くように構成される。シリンダ42は、外壁51および内壁52により仕切られたドーナツ状の空間を形成する。
【0108】
シリンダ42の外壁51は、可動接触子部3のピストン33の外径と摺動可能な内径を有する。さらに、シリンダ42の内壁52は、ピストン33のドーナツ状の穴径と摺動可能な外径を有する。
【0109】
シリンダ42の内壁52は、開放端方向の端部の内周に段差521を有し、絶縁ノズル23の駆動装置方向の端部外周に設けられた段差231と嵌合する。シリンダ42の内壁52の段差521と絶縁ノズル23の段差231が嵌合することにより絶縁ノズル23は、シリンダ42を構成する内壁52に支持される。
【0110】
段差231が請求項における第1の段差に、段差521が請求項における第2の段差に相当する。また、シリンダ42の内壁52の段差521は、Oリング53を介して絶縁ノズル23の段差231を支持する。Oリング53は、絶縁ノズル23とシリンダ42を構成する内壁52との間の気密を確保する。
【0111】
絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、アークに吹付けるために圧縮された消弧性ガスの圧力低下を軽減するために薄く形成されることが望ましい。絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、15mm以下程度に形成されることが望ましい。
【0112】
仮に絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52が厚く形成された場合、高温となった高圧の消弧性ガスによる絶縁ノズル23の変形は軽減される。しかしながら圧縮室36で昇圧された消弧性ガスの圧力は、蓄圧流路38に流入するとき低下してしまう。
【0113】
絶縁ノズル23の段差231の外周が、シリンダ42の内壁52の段差521の内周に嵌合して、絶縁ノズル23はシリンダ42の内壁52に支持される構造とすることで、絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、薄く形成され得る。これにより、圧縮室36から蓄圧流路38に流入するときの消弧性ガスの圧力が確保される。
【0114】
絶縁ノズル23は、可動通電接触子32よりも発生したアークから駆動装置方向に離間した位置で、シリンダ42を構成する内壁52に支持され接合される。絶縁ノズル23は、静電シールド61よりも発生したアークから駆動装置方向に離間した位置で、シリンダ42を構成する内壁52に支持され接合される。
【0115】
シリンダ42は、有底部が駆動装置方向に、開口部が開放端方向になるように固定接触子部4に配置される。シリンダ42は、消弧性ガス中に配置される。シリンダ42は、有底部に可動接触子部3のピストン33を支えるピストン支え33aが挿通される挿通穴42aを有する。
【0116】
シリンダ42は、ピストン33が挿入され、シリンダ42とピストン33により、消弧性ガスを昇圧するための圧縮室36が形成される。シリンダ42とピストン33は、ガス遮断器1が開路状態となる時に、圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。シリンダ42とピストン33は、圧縮室36の気密を確保する。これにより圧縮室36内の消弧性ガスは、昇圧される。
【0117】
シリンダ42の内壁52には貫通孔42bが設けられている。貫通孔42bは、圧縮室36と蓄圧流路38を導通させる。圧縮室36で昇圧された消弧性ガスは、トリガー電極31によるアーク接触子(可動側)41の密閉が解放されると蓄圧流路38、絶縁ノズル23を介しアーク空間へ誘導される。
【0118】
圧縮室36内と蓄圧流路38を連通させるシリンダ42の貫通孔42bには、圧縮室36内の圧力が蓄圧流路38内の圧力より低圧になった時に、蓄圧流路38から圧縮室36への消弧性ガスの流入を防止する逆止弁42eが設けられていてもよい。
【0119】
ガス遮断器1が開路状態となる時に、シリンダ42は、ピストン33と協調して圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。
【0120】
圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧が完了もしくは一定程度進んだ後に、アーク接触子(可動側)41とトリガー電極31は離間し、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられる。
【0121】
これにより、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧され、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
【0122】
シリンダ42は、ピストン33と協調して圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。従ってシリンダ42とピストン33は、消弧性ガスの圧縮時には密封状態であり、圧力のリークを防ぐ。しかし、圧縮された消弧性ガスによる過剰な圧力がピストン33に継続的に印加されると、ピストン33、トリガー電極31、可動通電接触子32の逆行を招く恐れがある。この逆行を防止するためにシリンダ42の底部に圧力弁を配した穴を設け、適切に開閉させることにより放圧するようにしてもよい。もしくは、逆止弁42eを配置することでピストン33、トリガー電極31、可動通電接触子32の逆行を抑制することができる。
【0123】
シリンダ42は、有底部に吸気穴42c、および吸気穴42cに配置された吸気バルブ42dを有する。再度、ガス遮断器1が閉路状態となる時に、駆動装置9により可動接触子部3は、駆動装置方向から開放端方向へと移動される。これに伴いピストン33も駆動装置方向から開放端方向へと移動する。このときピストン33とシリンダ42により形成される圧縮室36が広げられ、圧縮室36内の圧力が低下する。圧縮室36内の圧力の低下により、密閉容器8内の消弧性ガスが、吸気穴42cおよび吸気バルブ42dを介し、圧縮室36内に吸気される。吸気される消弧性ガスは高温になるアーク空間からは十分に離れているため、温度が低い消弧性ガスが、圧縮室36内に充填される。
【0124】
(サポート43)
サポート43は、一端面が有底の円筒形状の導体であり、有底の端面が駆動装置方向に配置される。サポート43には、密閉容器8を介し、口出し導体7bが接続される。サポート43は密閉容器8に絶縁部材により固定される。サポート43は、アーク接触子(可動側)41、シリンダ42を支持する。
【0125】
(可動接触子部3)
可動接触子部3は、トリガー電極31、可動通電接触子32、ピストン33、絶縁ロッド37を有する。従来技術では、可動接触子部がノズル、シリンダ、アーク電極を有しており、大がかりなものとなっていたが、本実施形態により大幅な軽量化を実現することができる。トリガー電極31とピストン33は、一体化して同時に動作する必要性は必ずしもないが、一体化した場合、構造を簡単にすることができる。なお、トリガー電極31をピストン33より早く動かす構造とした方が、遮断性能上有利な場合がある。
【0126】
(可動通電接触子32)
可動通電接触子32は、可動接触子部3の円筒の中心軸に沿い、可動接触子部3の開放端方向の端部に配置された円筒状の電極である。可動通電接触子32は、開放端方向の端部が丸みを持つように形成された円筒状の金属導体により構成される。可動通電接触子32を構成する金属は導電性が高く軽量のアルミニウムが望ましいが、銅であってもよい。可動通電接触子32は、可動するため軽量に構成されることが望ましい。
【0127】
可動通電接触子32は、固定接触子部2の固定通電接触子22の内径部分と接触、摺動可能な外径を有する。可動通電接触子32は、ピストン33の開放端方向の面に配置される。
【0128】
ガス遮断器1の閉路状態時に、可動通電接触子32は、固定接触子部2の固定通電接触子22に挿入される。これにより可動通電接触子32は、固定通電接触子22と接触し、可動接触子部3と固定接触子部2を電気的に導通させる。可動通電接触子32は、通電時には定格電流を流す能力を有する。
【0129】
一方、ガス遮断器1の開路状態時に、可動通電接触子32は、固定接触子部2の固定通電接触子22と物理的に離間し、可動接触子部3と固定接触子部2を電気的に遮断する。
【0130】
可動通電接触子32は、導体により構成されたピストン33と一体に形成されている。ガス遮断器1の閉路状態時および開路状態時に、ピストン33が固定接触子部4のシリンダ42に挿入されて接触し、可動接触子部3と固定接触子部4を電気的に導通させる。ピストン33が、固定接触子部4のシリンダ42内を、摺動するため、ガス遮断器1の閉路状態、開路状態にかかわらず、可動接触子部3と固定接触子部4は電気的に導通となる。
【0131】
(トリガー電極31)
トリガー電極31は、可動接触子部3の円筒の中心軸に沿い、可動接触子部3の開放端方向の端部に配置された棒状の電極である。トリガー電極31は、削り出し等により、一端が丸みを帯びた中実の円柱状に形成された金属導体により構成される。トリガー電極31の少なくとも先端は、銅を10%から40%およびタングステンを90%から60%含有する金属等により構成される。
【0132】
トリガー電極31は、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21の内径と接触、摺動可能な外径を有する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41の、さらに内側に配置される。熱容量から鑑みた耐久性および重量、表面積が有利なように、トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41の内側に配置される。
【0133】
なお、トリガー電極31は、ピストン33とともに、絶縁ロッド37に接続され、この絶縁ロッド37が駆動装置9により駆動されることにより固定接触子部2と固定接触子部4の間を往復移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(固定側)21に対して相対的に可動する。トリガー電極31は、消弧性ガス中に配置されており、消弧性ガス中に発生するアーク放電を負担する。
【0134】
ガス遮断器1は開路状態となる時に、電流を迅速に遮断することが必要とされる。可動接触子部3を高速に動かすため、トリガー電極31も軽量に構成することが望ましい。しかしトリガー電極31を軽量化した場合、トリガー電極31のアークに対する耐久性が不足することとなる。
【0135】
しかしながら、トリガー電極31が、アークを負担する時間は、トリガー電極31が移動を開始した初期の5~10ms程度である。トリガー電極31が移動する後半の時間において、トリガー電極31が受ける熱によるストレスは、加速度的に大きくなるが、アークは、アーク接触子(可動側)41に転移される。従って、トリガー電極31のアークに対する耐久性は、軽量化しても問題にはならない。
【0136】
アーク接触子(固定側)21の耐久性、アーク接触子(可動側)41の耐久性、トリガー電極31の耐久性は以下の関係であることが望ましい。
アーク接触子(固定側)21の耐久性≧アーク接触子(可動側)41の耐久性≧トリガー電極31の耐久性
アーク接触子21には高温となった消弧性ガス流が加速後に衝突するため、アーク接触子(固定側)21は、アーク接触子(可動側)41に比べ摩耗しやすいためである。また、可動部であるトリガー電極31は、アーク接触子(固定側)21、アーク接触子(可動側)41に比べ軽量化されることが望ましいと同時に、高温のアークを点弧するのはアーク接触子(可動側)41にアークを転移するまでの一定期間のみであり、トリガー電極31の摩耗の程度はアーク接触子(固定側)21およびアーク接触子(可動側)41に比べると限定的だからである。
【0137】
耐久性を低くすることによりトリガー電極31は、軽量に構成することができる。トリガー電極31を軽量にすることで、同じ駆動力を有する駆動装置9を用いた場合、より迅速にガス遮断器1を閉路状態とすることができ遮断性能を高めることができる。また、同じ速度でトリガー電極31を駆動する場合、駆動装置9の駆動力を低減することができ、その結果、駆動装置9を軽量小型化することができる。
【0138】
一方、アーク接触子(可動側)41は、可動しない固定部分であるため重量が大きいことの不利益は少なく、太く構成することができる。その結果、アーク接触子(可動側)41は、トリガー電極31に比べて耐久性を高いものとすることができる。
【0139】
ガス遮断器1の閉路状態時に、トリガー電極31は、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21に挿入される。これによりトリガー電極31は、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21および固定接触子部4のアーク接触子(可動側)41と接触し、固定接触子部2、可動接触子部3、固定接触子部4を電気的に導通させる。ガス遮断器1の閉路状態時に、トリガー電極31は、口出し導体7a、7bを電気的に導通させるための電流回路の一部を構成する導体となる。
【0140】
一方、ガス遮断器1が開路状態となる時に、トリガー電極31は、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21と離間する。これによりトリガー電極31は、可動接触子部3と固定接触子部2との間に発生するアークを負担する。可動通電接触子32と固定接触子部2の固定通電接触子22は、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31に先立ち離間し、通電電流をアーク接触子(固定側)21とトリガー電極31へ転流させた後に離間するため、可動通電接触子32と固定通電接触子22の間に、アークは発生しない。トリガー電極31は、アーク接触子(固定側)21に対向して配置された1対の電極を構成し、ガス遮断器1が開路状態となる時に、アークと接する電極の一方の電極となる。
【0141】
ガス遮断器1の開路状態時に発生するアークは、トリガー電極31およびアーク接触子(固定側)21間に集中する。可動通電接触子32と固定通電接触子22の間のアークの発生が避けられ、可動通電接触子32と固定通電接触子22の劣化が軽減される。
【0142】
ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3は、駆動装置9により駆動され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間を開放端方向から駆動装置方向へと移動する。これに伴い、トリガー電極31も、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間を開放端方向から駆動装置方向へと移動する。トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する前に、固定通電接触子22と可動通電接触子32が離間する。アークが固定通電接触子22と可動通電接触子32の間に発生しないようにするためである。
【0143】
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなる時点までの間、アークはトリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。
【0144】
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなると、アークはトリガー電極31からアーク接触子(可動側)41に転移する。アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなった時点から、アークが消弧される時点までの間、アークはアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。このときアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、対向して配置された1対の電極を構成し、アークを負担する。
【0145】
トリガー電極31は、さらに駆動装置方向に、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離より大きくなる方向に移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21の間に発生したアークから離間することとなり、トリガー電極31の劣化が軽減される。
【0146】
トリガー電極31は、さらに駆動装置方向に移動する。この時、ピストン33とシリンダ42により構成される圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスが、蓄圧流路38、絶縁ノズル23を介し噴出され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間のアークが、消弧される。
【0147】
ガス遮断器1が開路状態となる時に、シリンダ42は、ピストン33と協調して圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。その結果、圧縮室36内の消弧性ガスは、昇圧される。
【0148】
圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧が完了もしくは一定程度進んだ後に、アーク接触子(可動側)41とトリガー電極31は離間し、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられる。
【0149】
これにより、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧され、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。アークが消弧された後は、トリガー電極31にアーク電流は流れない。
【0150】
アーク接触子(固定側)21およびアーク接触子(可動側)41に対するトリガー電極31の移動は、トリガー電極31およびピストン33に固定支持された絶縁ロッド37によって引き起こされる。絶縁ロッド37は、駆動装置9により駆動される。絶縁ロッド37は、絶縁材料により構成される。絶縁ロッド37は、トリガー電極31、アーク接触子(固定側)21、アーク接触子(可動側)41の中心軸上に配置される。
【0151】
(ピストン33)
ピストン33は、可動接触子部3の開放端方向の端面に配置されたドーナツ形状の板である。ピストン33は、開放端方向の面に可動通電接触子32を有する。ピストン33は、削り出し等により、ドーナツ形状の板に形成された金属導体により構成される。
【0152】
ピストン33は、固定接触子部4のシリンダ42の外壁51の内径と摺動可能な外径を有する。ピストン33は、固定接触子部4のシリンダ42の内壁52と摺動可能なドーナツ状の穴径を有する。
【0153】
ピストン33は、駆動装置方向の面に接続された、複数のピストン支え33aを有する。ピストン支え33aは、ロッド状に形成された金属導体により構成された部材である。ピストン支え33aは、シリンダ42の挿通穴42aを介し、ピストン33をトリガー電極31に固定する。ピストン33は、ピストン支え33a、トリガー電極31を介し絶縁ロッド37に接続される。
【0154】
ピストン33は、固定接触子部4のシリンダ42と摺動可能に挿入され配置される。ピストン33とシリンダ42により、消弧性ガスを昇圧するための圧縮室36が形成される。ピストン33は、消弧性ガス中に配置される。
【0155】
ピストン33は、絶縁ロッド37を介し、駆動装置9により往復移動される。駆動装置9による往復移動は、ガス遮断器1を閉路状態にする時および開路状態にする時に行われる。
【0156】
ガス遮断器1が開路状態となる時に、ピストン33は、シリンダ42と協調して圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。その結果、圧縮室36内の消弧性ガスは、昇圧される。
【0157】
蓄圧流路38と圧縮室36は、シリンダ42に設けられた貫通孔42bにより連通している。ピストン33とシリンダ42により圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧されている段階では、蓄圧流路38の圧力のリークは防がれている。従って、圧縮室36内と蓄圧流路38には、同圧に昇圧された消弧性ガスが充填される。
【0158】
圧縮室36内と蓄圧流路38を連通させるシリンダ42の貫通孔42bには、圧縮室36内の圧力が蓄圧流路38内の圧力より低圧になった時に、蓄圧流路38から圧縮室36への消弧性ガスの流入を防止する逆止弁42eが設けられていてもよい。
【0159】
これにより、ガス遮断器1の開路時に圧縮室36の圧力により、たとえ可動接触子部3が開放端方向へ逆行した場合においても、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間のアーク空間に消弧性ガスを供給する蓄圧流路38の圧力が大きく低下することが抑制される。
【0160】
また、ピストン33とシリンダ42により構成された圧縮室36および蓄圧流路38は、圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧されている段階では、密封状態を保っており、アークと隔離されている。アークによる熱の影響を受けにくいため、圧縮室36および蓄圧流路38内の昇圧された消弧性ガスは、低温である。低温の消弧性ガスがアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間のアークに吹き付けられるので、効率よくアークの消弧が行われる。
【0161】
ピストン33は、トリガー電極31またはアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間に発生したアークおよびアークにより高温化された消弧性ガスの圧力を受圧するが、この圧力は可動接触子部3全体を、駆動装置方向側へ移動させる力として作用する。これにより駆動装置9の出力を軽減することができ、その結果、駆動装置9を小型化することができる。
【0162】
圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧が完了もしくは一定程度進んだ後に、アーク接触子(可動側)41とトリガー電極31は離間し、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられる。
【0163】
これにより、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧され、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
【0164】
アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31間またはアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41間に発生したアークによる熱およびアークにより高温化された消弧性ガスは、その発生と同時に排気口24a、24bを通り、密閉容器8内へ速やかに排気される。
【0165】
(絶縁ロッド37)
絶縁ロッド37は、絶縁材料により構成された棒状の部材である。絶縁ロッド37の開放端方向には、トリガー電極31およびピストン33が固定される。絶縁ロッド37の駆動装置方向は、駆動装置9に接続される。
【0166】
絶縁ロッド37は、トリガー電極31、アーク接触子(固定側)21、アーク接触子(可動側)41の中心軸上に配置される。トリガー電極31は絶縁ロッド37の開放端方向の端部に立設している。
【0167】
絶縁ロッド37は、トリガー電極31およびピストン33を駆動装置9および密閉容器8との電気絶縁性を維持しながら往復移動させる。絶縁ロッド37の往復移動は、駆動装置9により行われる。駆動装置9による往復移動は、ガス遮断器1を閉路状態にする時および開路状態にする時に行われる。
【0168】
[1-3.作用]
次に、本実施形態のガス遮断器の作用を、図1~4に基づき説明する。
【0169】
[A.ガス遮断器1が閉路状態の場合]
最初に、本実施形態のガス遮断器1が閉路状態である場合について説明する。ガス遮断器1は、閉路状態の場合、口出し導体7a、7bに流れる電流を導通する。
【0170】
ガス遮断器1が閉路状態である場合、固定接触子部2と固定接触子部4は、可動接触子部3を介し電気的に接続され、口出し導体7a、7b間の電流を導通する。具体的には、固定接触子部2の固定通電接触子22には、可動接触子部3の可動通電接触子32が挿入される。これにより固定通電接触子22は、可動通電接触子32と接触し、固定接触子部2と可動接触子部3は電気的に導通状態とされる。
【0171】
また、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21には、可動接触子部3のトリガー電極31が挿入される。これによりアーク接触子(固定側)21は、トリガー電極31と接触し、固定接触子部2と可動接触子部3は電気的に導通状態とされる。
【0172】
さらに、固定接触子部4のシリンダ42には、可動接触子部3のピストン33が挿入される。ピストン33と可動通電接触子32は、一体に形成され電気的に導通している。これにより可動通電接触子32は、シリンダ42と電気的に導通となり、固定接触子部4と可動接触子部3は電気的に導通状態とされる。
【0173】
この結果、固定接触子部2と固定接触子部4は、可動接触子部3を介し電気的に接続され、口出し導体7a、7b間が電気的に導通状態となる。
【0174】
この状態において、トリガー電極31またはアーク接触子(可動側)41と、アーク接触子(固定側)21との間の空間に、アークは発生していない。また、消弧性ガスは、密閉容器8内における各部で均一の圧力となっている。従って、可動接触子部3のピストン33および固定接触子部4のシリンダ42により形成される圧縮室36内の消弧性ガスは昇圧されていない。また、蓄圧流路38内の消弧性ガスも昇圧されていない。
【0175】
ガス遮断器1が閉路状態である時、密閉容器8内の消弧性ガスの圧力は均一である。従って、消弧性ガスによるガス流は、発生しない。
【0176】
[B.ガス遮断器1が開路状態となる場合]
次に、本実施形態のガス遮断器1が開路状態となる場合について説明する。ガス遮断器1は、開路状態となり、口出し導体7a、7bに流れる電流を遮断する。
【0177】
ガス遮断器1を開路状態とする遮断動作は、事故電流もしくは負荷電流の遮断、あるいは送電回路の切り替えなどの際に、ガス遮断器1を導通状態から遮断状態に切り替える場合に行われる。
【0178】
ガス遮断器1を閉路状態から開路状態とする場合、駆動装置9を駆動させる。駆動装置9により、可動接触子部3が、軸に沿い固定接触子部4内を駆動装置方向に移動させられる。これにより、固定通電接触子22から可動通電接触子32が開離するとともに、アーク接触子(固定側)21からトリガー電極31が開離する。
【0179】
ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3は、駆動装置9により駆動され、固定接触子部2と固定接触子部4の間を開放端方向から駆動装置方向へと移動する。これに伴い、可動通電接触子32が、固定通電接触子22から離間し、開放端方向から駆動装置方向へと移動する。
【0180】
さらに、トリガー電極31も、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の間を開放端方向から駆動装置方向へと移動する。トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する前に、固定通電接触子22と可動通電接触子32が離間する。これにより、遮断すべき電流がトリガー電極31およびアーク接触子(固定側)21側へ転流し、アークが固定通電接触子22と可動通電接触子32の間に発生しないようにするためである。
【0181】
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなる時点までの間、アークはトリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。
【0182】
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなると、アークはトリガー電極31からアーク接触子(可動側)41に転移する。アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなった時点から、アークが消弧される時点までの間、アークはアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。このときアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、対向して配置された1対の電極を構成し、アークを負担する。
【0183】
トリガー電極31は、さらに駆動装置方向に、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41の離間距離より大きくなる方向に移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21の間に発生したアークから離間することとなり、トリガー電極31の劣化が軽減される。
【0184】
ガス遮断器1が開路状態となる時に、可動接触子部3が駆動装置9により駆動されるため、ピストン33も、開放端方向から駆動装置方向へと移動する。ピストン33は、シリンダ42と協調して圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。その結果、圧縮室36内の消弧性ガスは、昇圧される。
【0185】
トリガー電極31は、駆動装置9に駆動され、さらに駆動装置方向に移動する。圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧が完了もしくは一定程度進んだ後に、アーク接触子(可動側)41とトリガー電極31は離間し、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられる。
【0186】
これにより、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧され、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
【0187】
シリンダ42の内壁52は、開放端方向の端部の内周に段差521を有し、絶縁ノズル23の駆動装置方向の端部外周に設けられた段差231と嵌合する。シリンダ42の内壁52の段差521と絶縁ノズル23の段差231が嵌合することにより絶縁ノズル23は、シリンダ42を構成する内壁52に支持される。
【0188】
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に吹き付けられる消弧性ガスは、ピストン33とシリンダ42により昇圧されている。また、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間は高温になっている。絶縁ノズル23は高圧となった高温の消弧性ガスを、流速が高速化してアーク空間へ誘導する。
【0189】
このため、絶縁ノズル23が変形する可能性がある。高圧となった高温の消弧性ガスにより、絶縁ノズル23の内径が拡張してしまう可能性があった。絶縁ノズル23の内径が拡張してしまうと、消弧性ガスを高速でアーク空間へ誘導することができなくなり、遮断を確実に行うことができなくなる可能性がある。
【0190】
ガス遮断器は、消弧性ガスを昇圧し、この昇圧された消弧性ガスをアークへ噴出することにより、アークを消弧する。従って、アークへの噴出時に昇圧された消弧性ガスの圧力が低下し噴出速度が遅くなることは望ましくない。昇圧された消弧性ガスの圧力低下は、消弧性ガスの流速を下げ、確実なアークの消弧を行いにくくするためである。
【0191】
しかしながら、本実施形態にかかるガス遮断器1は、シリンダ42の内壁52の段差521が、絶縁ノズル23の段差231と嵌合し、絶縁ノズル23は、シリンダ42を構成する内壁52に支持される。これにより絶縁ノズルの変形が軽減され、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能がより確実に維持される。
【0192】
また、シリンダ42の内壁52の段差521は、Oリング53を介して絶縁ノズル23の段差231を支持する。Oリング53は、絶縁ノズル23とシリンダ42を構成する内壁52との間の気密を確保する。
【0193】
これによりアークに吹付けるために圧縮された消弧性ガスの漏えいが軽減され、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能がより確実に維持される。
【0194】
絶縁ノズル23は、可動通電接触子32よりも発生したアークから駆動装置方向に離間した位置で、シリンダ42を構成する内壁52に支持され接合される。これにより絶縁ノズル23とシリンダ42を構成する内壁52との接合箇所が、アークに接触して変形することが軽減され、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能がより確実に維持される。
【0195】
絶縁ノズル23は、静電シールド61よりも発生したアークから駆動装置方向に離間した位置で、シリンダ42を構成する内壁52に支持され接合される。これにより絶縁ノズル23とシリンダ42を構成する内壁52との接合箇所が、高電位勾配となる箇所から離間される。その結果、高電位勾配による絶縁破壊が、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合箇所で、発生する可能性が軽減され、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能がより確実に維持される。
【0196】
絶縁ノズル23は、蓄圧流路38を流れ噴出口部から噴出した消弧性ガスをアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に導く。
【0197】
絶縁ノズル23のスロート部23aは、消弧性ガスを昇圧し、スロート部23aより下流の拡大流路においてアークに吹き付けられる消弧性ガスの流速を高める。絶縁ノズル23のスロート部23aは、昇圧された消弧性ガスをアーク空間へ集中させる。また、絶縁ノズル23は、アークにより高温化された消弧性ガスの排気流路を規定する。
【0198】
さらに、絶縁ノズル23は、スロート部23aによりアークの広がりを抑制しアークの最大径を規定する。また、絶縁ノズル23は、スロート部23aにより消弧性ガスの流量を制御する。これにより、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間に発生したアークに消弧性ガスが効果的に吹き付けられ、アークが消弧される。その結果、アーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
【0199】
絶縁ノズル23は、トリガー電極31を周回するように配置され、アークへの噴出時の圧力低下により、消弧性ガスの噴出速度が遅くなることを軽減する。
【0200】
ガス遮断器1は、消弧性ガスを昇圧し、この昇圧された消弧性ガスをアークへ噴出することにより、アークを消弧する。従って、アークへの噴出時に昇圧された消弧性ガスの圧力が低下し噴出速度が遅くなることは望ましくない。昇圧された消弧性ガスの圧力低下は、消弧性ガスの流速を下げ、確実なアークの消弧を行いにくくするためである。
【0201】
従って、アークへの噴出時に消弧性ガスが漏れることを軽減するため絶縁ノズル23とトリガー電極31との離間距離(クリアランス)を小さくすることが望ましい。
【0202】
一方、絶縁ノズル23とトリガー電極31との離間距離(クリアランス)を小さくすれば、昇圧された消弧性ガスが漏れることによる圧力低下は軽減される。しかしながら、絶縁ノズル23とトリガー電極31との離間距離(クリアランス)を小さくし過ぎると、絶縁ノズル23のスロート部23aにおいて金属、絶縁物、消弧性ガスが互いに接触し、電界強度が極めて高くなるトリプルジャンクションが発生する。
【0203】
金属、絶縁物、消弧性ガスが互いに接触するトリプルジャンクションでは、電界強度が極めて高くなり、ガス遮断器1の電気絶縁性能を脅かす恐れがあった。
【0204】
アーク接触子(可動側)41とトリガー電極31のクリアランス距離より絶縁ノズル23とトリガー電極31のクリアランス距離が大きいことが望ましい。絶縁ノズル23とトリガー電極31は接触すると高電界となるトリプルジャンクション部を生じ、電気的性能の著しい劣化を引き起こす。
【0205】
しかしながら、本実施形態にかかるガス遮断器1は、シリンダ42の内壁52の段差521が、絶縁ノズル23の段差231と嵌合し、絶縁ノズル23は、シリンダ42を構成する内壁52に支持される。これにより絶縁ノズル23の変形が軽減される。したがって絶縁ノズル23のスロート部23aの開口径が適切な径に維持される。これにより、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能がより確実に維持される。
【0206】
絶縁ノズル23の変形が軽減され、スロート部23aの開口径が適切な径に維持されることにより、アークへの噴出時の圧力低下により、消弧性ガスの噴出速度が遅くなることを軽減することができる。
【0207】
従来技術において、絶縁ノズル23は可動通電接触子32と共に可動接触子部3に設けられる場合が多かった。しかしながら、可動接触子部3は可動するため軽量化することが望ましい。従って絶縁ノズル23は、可動しない固定接触子部2に設けられることが望ましい。なお、絶縁ノズル23は、可動接触子部3に設けられていてもよい。
【0208】
絶縁ノズル23は、固定接触子部2、可動接触子部3のどちらに設置させても良いが、可動接触子部3は可動による振動および衝撃がある。このため絶縁ノズル23が固定接触子部2に設置された方が、可動接触子部3に設置された場合に比べ、振動による電気的性能の悪化および機械的衝撃による絶縁ノズル23の破損を抑制することができる。
【0209】
また、絶縁ノズル23は、絶縁性の低い高温となった消弧性ガスの固定通電接触子22への流れ込みを抑制することができるため、固定接触子部2に設置されることが望ましい。アーク接触子(可動側)41とトリガー電極31の接触時のクリアランス距離より絶縁ノズル23とトリガー電極31のクリアランス距離が大きいことが望ましい。
【0210】
絶縁ノズル23とトリガー電極31は、接触すると高電界部を生じ、電気的性能の著しい劣化を引き起こすため、これを軽減するためである。上記のように構成することで、絶縁ノズル23の変形が軽減され、トリガー電極31と絶縁ノズル23の接触を防止することができる。
【0211】
また、シリンダ42の内壁52の段差521は、Oリング53を介して絶縁ノズル23の段差231を支持する。Oリング53は、絶縁ノズル23とシリンダ42を構成する内壁52との間の気密を確保する。これにより、消弧性ガスの蓄圧流路38からのリーク量を抑制することができる。
【0212】
消弧性ガスをアーク接触子(可動側)41とアーク接触子(固定側)21との間に発生したアークに吹き付けるにあたり、絶縁ノズル23の内圧は低い方が望ましい。従って、アーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23とにより形成される消弧性ガスの流路の流路断面積は開放端方向へ向かって徐々に拡大するような、絶縁ノズル23の形状とすることが望ましい。
【0213】
試験結果によると、良好な遮断性能を得るためには、以下の流路構成にすることが好ましい。
アーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23の間に形成される流路の面積>絶縁ノズル23のスロート部23aの流路の面積≧アーク接触子(可動側)41の吹き出し部分の面積
さらに、アーク接触子(可動側)41と絶縁ノズル23の間に形成される流路の面積は、アーク接触子(可動側)41の吹き出し部分の面積の20%から200%の間に適正値があることが、判明した。このように構成することにより、アーク接触子(可動側)41の消弧性ガス吹き出し口近傍のアーク冷却性を最大化しつつ、絶縁ノズル23のスロート部23aより開放端方向へ向かう消弧性ガスのガス流を必要十分に供給することができる。
【0214】
絶縁ノズル23は、アークを効率的に冷やせるように、圧縮室36、蓄圧流路38を介して噴出された消弧性ガスを制御する。絶縁ノズル23内の圧力は、消弧性ガスの噴出時に、下流圧となるため、常に低圧に保たれる構造であることが望ましい。
【0215】
絶縁ノズル23は、駆動装置方向から開放端方向にかけ軸に並行な消弧性ガスの流れを作るだけでなく、アークを横切る方向に消弧性ガスの流れを作る。この流れによりアークは効率的に冷却される。アークに吹き付けられ高温となった消弧性ガスは絶縁性が低いため、固定通電接触子22、可動通電接触子32に接触せず排気されることが望ましい。
【0216】
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41との間のアーク空間に発生したアークは、非常に高温である。アークに吹き付けられ高温になった消弧性ガスは、排気筒24の排気口24a、24bから密閉容器8内に排出される。
【0217】
口出し導体7a、7bから供給された交流電流の電流零点では、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41間のアークが小さくなり、消弧性ガスが吹き付けられることにより消弧に至る。その結果、ガス遮断器1は、開路状態となり、口出し導体7a、7bに流れる電流が遮断される。
【0218】
[1-4.効果]
(1)本実施形態によれば、ガス遮断器1は、電力系統に接続される第1の口出し導体7aに電気的に接続された第1のアーク接触子21と、第2の口出し導体7bに電気的に接続された第2のアーク接触子41と、第1のアーク接触子21と第2のアーク接触子41の間を移動可能に配置され、電流遮断時の前半には移動に伴って第1のアーク接触子21との間に発生するアークが点弧され、電流遮断時の後半には移動に伴って、アークを第2のアーク接触子41に点弧させるトリガー電極31と、円筒状に形成された外壁51および内壁52を有し、第2のアーク接触子41に設けられたシリンダ42と、トリガー電極31と連動して外壁51と内壁52の間を摺動するピストン33と、により構成された消弧性ガスを昇圧する圧縮室36と、第1のアーク接触子21と第2のアーク接触子41との間に点弧したアークに、圧縮室36により昇圧された消弧性ガスを導く絶縁ノズル23と、を有し、絶縁ノズル23は、シリンダ42の内壁52に支持されるので、絶縁ノズル23の変形およびアークに吹付けるために圧縮された消弧性ガスの漏えいを軽減し、電気絶縁性能をより確実に維持することができるガス遮断器1を提供することができる。
【0219】
絶縁ノズル23がシリンダ42の内壁52に支持されない場合、高温となった高圧の消弧性ガスが吹き付けられ絶縁ノズル23が外周方向に変形する。これにより絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との間に空隙が発生し、消弧性ガスが漏えいし、消弧性ガスの圧力が低下することになる。その結果、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能が低下することになる。
【0220】
しかしながら、本実施形態によれば、ガス遮断器1の絶縁ノズル23は、シリンダ42の内壁52に支持されるので、高温となった高圧の消弧性ガスが吹き付けられても、絶縁ノズル23の変形が抑制される。これにより絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との間に空隙が発生することが抑制され、消弧性ガスの漏えいが軽減される。その結果、消弧性ガスの圧力低下が抑止され、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能がより確実に維持される。
【0221】
(2)本実施形態によれば、絶縁ノズル23は外周に第1の段差231を有し、シリンダ42の内壁52は内周に第2の段差521を有し、第1の段差231と第2の段差521が嵌合することにより絶縁ノズル23は、シリンダ42を構成する内壁52に支持されるので、絶縁ノズル23の変形およびアークに吹付けるために圧縮された消弧性ガスの漏えいを軽減し、電気絶縁性能をより確実に維持することができるガス遮断器1を提供することができる。
【0222】
本実施形態によれば、絶縁ノズル23の第1の段差231の外周が、シリンダ42の内壁52の第2の段差521の内周に嵌合して、絶縁ノズル23はシリンダ42の内壁52に支持されるので、ガス遮断器1の絶縁ノズル23は、絶縁ノズル23が外周方向に変形することがより確実に抑制される。
【0223】
絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、アークに吹付けるために圧縮された消弧性ガスの圧力低下を軽減するために薄く形成されることが望ましい。絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、15mm以下程度に形成されることが望ましい。
【0224】
仮に絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52が厚く形成された場合、高温となった高圧の消弧性ガスによる絶縁ノズル23の変形は軽減される。しかしながら圧縮室36で昇圧された消弧性ガスの圧力は、蓄圧流路38に流入するとき低下してしまう。
【0225】
本実施形態によれば、絶縁ノズル23の第1の段差231の外周が、シリンダ42の内壁52の第2の段差521の内周に嵌合して、絶縁ノズル23はシリンダ42の内壁52に支持される。このため、絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、薄く形成され得る。
【0226】
絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52が薄く形成されるので、圧縮室36から蓄圧流路38に流入するときの消弧性ガスの圧力低下を軽減することができる。その結果、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能がより確実に維持される。
【0227】
(3)本実施形態によれば、絶縁ノズル23は、Oリング53を介してシリンダ42を構成する内壁52に支持されるので、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との間における消弧性ガスの漏えいを軽減し、電気絶縁性能をより確実に維持することができるガス遮断器1を提供することができる。
【0228】
(4)本実施形態によれば、トリガー電極31は、電流遮断時に発生するアークが点弧されない主接点を構成する可動通電接触子32と接合されており、絶縁ノズル23は、可動通電接触子32よりも発生したアークから離間した位置で、シリンダ42を構成する内壁52に支持され接合されるので、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分における電位勾配が軽減される。これにより、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分におけるトリプルジャンクション(三重点)の発生が軽減される。
【0229】
その結果、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分で、絶縁破壊が発生する可能性を軽減することができ、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能をより確実に維持することができる。
【0230】
[2.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0231】
(1)図5に示すように、ガス遮断器1は、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分の電位勾配を軽減する静電シールド61が設けられたものであってもよい。静電シールド61は、シリンダ42の外壁51から可動通電接触子32方向に伸びた部材である。静電シールド61の断面は、開放端方向に突出した半円形に形成される。
【0232】
静電シールド61はボルト等の固定部材(図中不示)によりシリンダ42の外壁51に固定される。また、静電シールド61は、シリンダ42の外壁51と一体に成形されるものであってもよい。静電シールド61は、可動通電接触子32に周回して配置される。静電シールド61は、アルミニウム、鉄、銅等の導電材料により構成される。
【0233】
静電シールド61は、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分よりも開放端方向に配置される、静電シールド61は、静電シールド61と固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21、固定通電接触子22との間に電位勾配を集中させる。静電シールド61は、静電シールド61より駆動装置方向における電位勾配を軽減させる。
【0234】
したがって、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分における電位勾配が軽減される。これにより、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分におけるトリプルジャンクション(三重点)の発生が軽減される。
【0235】
その結果、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分で、絶縁破壊が発生する可能性を軽減することができ、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能をより確実に維持することができる。
【0236】
静電シールド61は、特に、ガス遮断器1の電流遮断時において、可動通電接触子32が絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分より駆動装置方向に位置する場合に有効である。
【0237】
(2)上記実施形態では、固定接触子部2および固定接触子部4は、密閉容器8に固定されるものとしたが、固定接触子部2および固定接触子部4は、可動するものであってもよい。ガス遮断器1が開路状態となるときに、例えば、固定接触子部2が開放端方向に可動するようにしてもよい。また、固定接触子部4が駆動装置方向に可動するようにしてもよい。固定接触子部2または4が、あるいは固定接触子部2および4が可動することにより、より迅速に口出し導体7a、7b間の電力を遮断することができる。
【符号の説明】
【0238】
1・・・ガス遮断器
2,4・・・固定接触子部
3・・・可動接触子部
7a,7b・・・口出し導体
8・・・密閉容器
9・・・駆動装置
21・・・アーク接触子(固定側)
22・・・固定通電接触子
23・・・絶縁ノズル
23a・・・スロート部
24・・・排気筒
24a,24b・・・排気口
31・・トリガー電極
32・・・可動通電接触子
33・・・ピストン
33a・・・ピストン支え
36・・・圧縮室
37・・・絶縁ロッド
38・・・蓄圧流路
41・・・アーク接触子(可動側)
42・・・シリンダ
42a・・・挿通穴
42b・・・貫通孔
42c・・・吸気穴
42d・・・吸気バルブ
42e・・・逆止弁
43・・・サポート
51・・・外壁
52・・・内壁
53・・・Oリング
61・・・静電シールド
231,521・・・段差

図1
図2
図3
図4
図5