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特許7155297リコピンの超臨界抽出方法及びリコピン含有組成物の製造方法
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  • 特許-リコピンの超臨界抽出方法及びリコピン含有組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】リコピンの超臨界抽出方法及びリコピン含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20221011BHJP
   C07C 11/21 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 7/10 20060101ALI20221011BHJP
   C07B 63/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A23L33/105
C07C11/21
C07C7/10
C07B63/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020569529
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001893
(87)【国際公開番号】W WO2020158502
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2019013911
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹村諒太
(72)【発明者】
【氏名】市橋浩平
【審査官】楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】Yo WATANABE et.al,Rapid and Selective Concentration of Lycopene Z-isomers from Tomato Pulp by Supercritical CO2 with Co-solvents,Solvent Extraction Research and Development, Japan,2018年,Vol.25, No.1,p47-57
【文献】Masaki Honda et.al,Microwave-Accelerated Z-Isomerization of (all-E)-Lycopene in Tomato Oleoresin and Enhancement of the Conversion by Vegetable Oils Containing Disulfide Compounds,European Journal of Lipid Science and Technology,2018年,120,1800060
【文献】Masaki Honda,Application of E/Z-Isomerization Technology for Enhancing Processing Efficiency, Health-Promoting Effects, and Usability of Cartenoids: A Review and Future Perspectives,Journal of Oleo Science,2022年,71(2),p151-165
【文献】新井康彦,超臨界流体のすべて,2002年10月20日,p231, 335
【文献】Juan C. de la Fuente et.al,Solubility of carotenoid pigments (lycopene and astaxanthin) in supercritical carbon dioxide,Fluid Phase Equilibria,2006年,247,p90-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00
C07C 11/21
C07C 7/10
C07B 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リコピン含有組成物(ただし、マイクロウェーブによる加熱を行ったものを除く。)の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、リコピン、及び、揮発性の求電子性成分であり、当該求電子性成分は、イソチオシアネート又はジアリルジスルフィドであり、これによって得られるのは、混合物であり、
超臨界抽出:ここで前記混合物から超臨界抽出されるのは、少なくとも、リコピンであり、その時期は、混合後又は混合と同時であり、ここで用いられる超臨界流体は、超臨界二酸化炭素であり、
揮発性成分除去:ここで除去されるのは、超臨界抽出物に含まれる揮発性成分であり、かつ、
水溶性成分除去:ここで除去されるのは、超臨界抽出物に含まれる水溶性成分であり、 当該水溶性成分は、少なくとも、糖類であり、その時期は、揮発性成分除去の前である。
【請求項2】
請求項1の製造方法であって、
超臨界抽出を行うのは、リコピンと求電子性成分の混合後である。
【請求項3】
請求項1又は2の製造方法であって、
混合される求電子性成分とリコピンの質量比(求電子性成分/リコピン)は、2.8以 上30.9以下である。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの製造方法であって、
混合される求電子性成分とリコピンの質量比(求電子性成分/リコピン)は、2.8以 上14.6以下である。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの製造方法であって、
前記イソチオシアネートがアリルイソチオシアネート又はエチルイソチオシアネートである。
【請求項6】
リコピンを効率的に抽出する方法(ただし、マイクロウェーブによる加熱を行う工程を有するものを除く。)であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、リコピンと揮発性の求電子性成分であり、当該求電子性成分は、イソチオシアネート又はジアリルジスルフィドであり、これによって得られるのは、混合物であり、かつ、
超臨界抽出:ここで前記混合物から超臨界抽出されるのは、少なくとも、リコピンであり、その時期は、混合後又は混合と同時であり、ここで用いられる超臨界流体は、超臨界二酸化炭素であり、
揮発性成分除去:ここで除去されるのは、超臨界抽出物に含まれる揮発性成分であり、かつ、
水溶性成分除去:ここで除去されるのは、超臨界抽出物に含まれる水溶性成分であり、 当該水溶性成分は、少なくとも、糖類であり、その時期は、揮発性成分除去の前である。
【請求項7】
請求項の方法であって、
超臨界抽出を行うのは、リコピンと求電子性成分の混合後である。
【請求項8】
請求項6又は7の方法であって、
前記イソチオシアネートがアリルイソチオシアネート又はエチルイソチオシアネートで ある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、リコピンの超臨界抽出方法及びリコピン含有組成物の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりの下、注目されている食品由来の機能性成分の1つとして、リコピンが挙げられる。リコピンには、幾何異性体としてトランスリコピンとシスリコピンが存在する。リコピンが含まれているのは、主に植物であり、例示すると、トマトやスイカ等である。リコピンは、食品や化粧品等への添加物として広く使用されている。
【0003】
食品や化粧品に用いるリコピン素材に必要なのは、消費者の忌避感がなく、体内吸収性が高いことである。消費者の忌避感がないとは、有機溶媒を使用しないことであり、体内吸収性が高いとは、シスリコピンの含有率が高いことである。有機溶媒を使用せず、シスリコピンの含有率を高めるリコピンの抽出方法として、超臨界二酸化炭素抽出法が知られている。例えば、特許文献1が開示するのは、トマトエキストラクト及びその製造方法、並びにトマトエキストラクトを含んだ飲食品及び化粧品である。より具体的には、超臨界二酸化炭素抽出法によるトマトエキストラクトの製造方法である。また、特許文献2が開示するのは、有機溶媒不含リコペン濃縮物の製造方法、得られる濃縮物および該濃縮物を含む組成物である。より具体的には、超臨界流体及びエントレーナーとして植物油を使用して抽出することにより、有機溶媒を含まないリコピン濃縮物を得る方法である。前記植物油を例示すると、オリーブ油、クルミ油、ヒマワリ油、ナタネ油等である。ただ、従来の超臨界二酸化炭素抽出では、リコピンの回収率が25%程度と低く、リコピン回収率を高める為にエントレーナーを添加すると、リコピン濃度が低下した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017‐19756号公報
【文献】特表2004‐513918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、超臨界抽出したリコピン組成物において、リコピンの濃度及び回収率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上を踏まえて、本発明者が鋭意検討して見出したのは、求電子性成分をリコピンに混合することで、超臨界抽出工程でのリコピンの異性化を促進することである。リコピンが異性化することにより、シスリコピン含有量が高まり、リコピンの溶媒への溶解度が飛躍的に向上するため、抽出されるリコピン量が増加する。さらに、超臨界抽出後に求電子性成分を揮発させることにより、リコピンの濃度及び回収率を高めることができる。この観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。
【0007】
本発明に係るリコピン含有組成物の製造方法を構成するのは、少なくとも、混合工程及び超臨界抽出工程である。混合工程において、リコピンと揮発性の求電子性成分は、混合される。超臨界抽出工程の時期は、混合後または混合と同時であり、好ましくは、混合後である。超臨界抽出工程において、超臨界抽出されるのは、少なくともリコピンである。混合されるリコピンと求電子性成分の質量比(求電子性成分/リコピン)は、2.8以上30.9以下であればよく、好ましくは2.8以上14.6以下、より好ましくは、5.7以上14.6以下である。求電子成分は、揮発性を有するものであればよく、特に限定されないが、イソチオシアネート又はジアリルジスルフィドであることが好ましく、アリルイソチオシアネート又はエチルイソチオシアネートであることがより好ましい。
【0008】
本発明に係るリコピン含有組成物の製造方法を構成するのは、さらに、水溶性成分除去工程及び揮発性成分除去工程である。水溶性成分除去工程において、糖類などの水溶性成分は除去される。揮発性成分除去工程において、揮発性を有する水分及びオイルは除去される。
【0009】
本発明に係るリコピンを効率的に抽出する方法を構成するのは、少なくとも、混合工程及び超臨界抽出工程である。混合工程において、リコピンと揮発性の求電子性成分は、混合される。超臨界抽出の時期は、混合後または同時であり、好ましくは、混合後である。超臨界抽出工程において、超臨界抽出されるのは、少なくともリコピンである。ここで、リコピンを効率的に抽出するとは、抽出するリコピンの濃度と回収率を従来の方法よりも高くすることをいう。
【0010】
本発明に係るリコピンを効率的に抽出する方法を構成するのは、さらに、水溶性成分除去工程及び揮発性成分除去工程である。水溶性成分除去工程において、糖類などの水溶性成分は、除去される。揮発性成分除去工程において、揮発性を有する水分及びオイルは除去される。
【発明の効果】
【0011】
本発明が可能にするのは、超臨界抽出したリコピン組成物において、リコピンの濃度及び回収率を高めることである。すなわち、リコピンを超臨界抽出する際に求電子性成分を含有させることにより、リコピン濃度及び回収率を従来の方法よりも高めることである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係るリコピン含有組成物の製造方法の流れ図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1が示すのは、本実施の形態に係るリコピン含有組成物の製造方法のフローチャートである。本製法を構成するのは、混合(S10)、超臨界抽出(S20)、水溶性成分除去(S30)、揮発性成分除去(S40)である。これらの工程のうち、水溶性成分除去(S30)の採用は、任意である。
【0014】
<リコピン>
リコピンは、天然物であっても化学合成されたものであってもよい。また、液体状であってもよく、濃縮物や乾燥物等の半固形・固形状でもよい。天然物を例示すると、トマト加工品、オレオレジン等が挙げられる。トマト加工品を例示すると、トマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト、トマトパルプ、及びトマトパウダー等である。トマトパルプとは、トマトジュース、トマトピューレ、トマトペーストを遠心分離して得られる沈殿物である。トマトパウダーとは、トマトペーストやトマトパルプ、トマトの皮等の乾燥粉末である。オレオレジンを得る方法は、不問である。例えば、以下のとおりである。青果物又はその加工品から有機溶媒や超臨界二酸化炭素により脂質画分を抽出した後、抽出した脂質画分から溶媒を除去する。オレオレジンは、溶媒と混合した状態であってもよい。オレオレジンは、油分を除去した状態であってもよい。
【0015】
<求電子性成分>
求電子性成分は、求電子性を有する成分である。本発明において、求電子性成分は、揮発性を有する。求電子性成分は、天然物であっても化学合成されたものであってもよい。また、超臨界抽出工程中に求電子性成分に変換されるものも含まれる。求電子性成分は、単一成分であっても2つ以上の成分が混ざっていてもよい。求電子性成分を例示すると、イソチオシアネート類、スルフィド類等が挙げられる。より具体的には、アリルイソチオシアネート、エチルイソチオシアネート、ジアリルジスルフィド等であるがこれに限定されない。イソチオシアネート類やスルフィド類を含むものを例示すると、マスタードオイル、ガーリックオイル等である。
【0016】
<イソチオシアネート>
イソチオシアネートとは、イソチオシアネート基を有する物質の総称である。イソチオシアネートは、アブラナ科の植物等に多く含まれている。イソチオシアネート類を例示すると、アリルイソチオシアネート、パラヒドロキシビンジルイソチオシアネート、フェネチルイソチオシアネート、スルフォラファン、6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート等である。高い揮発性を有するイソチオシアネートが好ましく、アリルイソチオシアネート又はエチルイソチオシアネートが特に好ましい。前述のマスタードオイルは、マスタードシード由来の油である。マスタードオイルは、アリルイソチオシアネートを約95%含有する。
【0017】
<スルフィド>
スルフィドとは、二価の硫黄が2個の炭化水素基で置換された有機化合物である。スルフィドは、ネギ属の植物等に多く含まれている。スルフィド類を例示すると、ジスルフィド類、トリスルフィド類、ポリスルフィド類等である。揮発性のジスルフィドが好ましく、ジスルフィド中でもニンニク等に含まれるジアリルジスルフィドがより好ましい。前述のガーリックオイルは、ジアリルジスルフィドを含有する。
【0018】
<混合工程(S10)>
混合工程では、少なくとも、リコピンと求電子性成分が混合された混合物(以下、「本混合物」とする。)が得られる。求電子性成分を混合する目的は、リコピンの異性化の促進である。混合工程の時期は、超臨界抽出工程の前又は同時である。好ましくは、超臨界抽出工程の前である。超臨界抽出前に混合する手段は、リコピンに求電子性成分を加えればよい。混合する手段は、好ましくは、撹拌である。撹拌する方法は公知の手段でよい。例示すると、ミキサー、ブレンダー、ミル、ホモジナイザー等である。超臨界抽出と同時に混合する場合は、後述する超臨界装置の抽出槽に液体状の求電子性成分を流入させる。
【0019】
<超臨界抽出工程(S20)>
超臨界抽出工程では、少なくとも、リコピンが抽出される。本発明において抽出される物質は、主にリコピンであるが、他の物質も抽出されることを妨げない。超臨界流体は、特に限定されない。例示すると、超臨界水、超臨界二酸化炭素等であり、好ましくは超臨界二酸化炭素である。超臨界抽出には、超臨界装置が使用される。超臨界装置を構成するのは、少なくとも、昇圧ポンプ、加熱機、抽出層、分離ユニットである。昇圧ポンプと加熱機は、供給した二酸化炭素を超臨界状態にする。抽出槽では、超臨界二酸化炭素によって原材料からリコピンが抽出される。分離ユニットは、超臨界二酸化炭素を常圧に戻し、二酸化炭素とリコピンを分離する。超臨界抽出は、超臨界装置の抽出槽における温度、ガス、流量、圧力によって制御される。これらの条件は、原材料からリコピンを抽出できるものであれば良い。例示すると、温度は50度以上90度以下である。好ましくは、70度以上乃至90度以下である。また、圧力は、特に限定されないが、好ましくは、30MPa以上50MPa以下である。ガス流量は、特に限定されず、使用する超臨界装置に合わせて任意に設定すればよい。
【0020】
<水溶性成分除去工程(S30)>
水溶性成分除去工程で除去されるのは、超臨界抽出物に含まれる水溶性成分である。例示すると、多糖類である。糖類が残存すると、後述する揮発性成分除去工程において焦げ及び焦げ臭が発生する。焦げ及び焦げ臭の発生は、商品性を損なう。水溶性成分除去工程を構成するのは、加水及び脱水である。超臨界抽出物に加水すると、水溶性成分が水に溶けだす。加水後に撹拌すると、水溶性成分が溶け出しやすくなる。加える水の条件は、水溶性成分が溶け出せれば良い。例示すると、水の温度は50度以上60度以下である。水の量は質量換算で超臨界抽出物の3倍量以上、好ましくは5倍以上である。加水後の超臨界抽出物を脱水すると、水とともに水溶性成分も除かれる。加水及び脱水は反復してもよい。
【0021】
<揮発性成分除去(S40)>
揮発性成分除去工程では、超臨界抽出物中の水分及びオイルが除去される。揮発性成分を除去する手段は、一般的な方法でよい。例示すると、減圧、減圧加熱、直火加熱、蒸気加熱、ウォーターバス加熱、オイルバス加熱等である。また、直接加熱であっても間接加熱であってもよい。さらに、加熱することにより、リコピンの異性化反応が起こり、シスリコピンの含有率を増加させる効果も期待できる。加熱の温度は、揮発性成分が除去できれば良く、特に限定されない。好ましくは、80度以上140度未満である。より好ましくは、100度以上120度以下である。140度より高い温度では、リコピンの分解が促進され、濃度及び回収率が低くなる。加熱の時間は、揮発性成分が除去できれば良く、特に限定されない。例示すると、10分間である。加熱時間が1時間以上では、リコピンの分解が進み、濃度及び回収率が低くなる。
【0022】
<本混合物のリコピン濃度>
本混合物のリコピン濃度は、リコピン濃度に応じて求電子性成分の添加量を増減させるため、特に限定されない。より多くのリコピンを抽出槽に入れた方が1回の抽出操作で抽出可能なリコピン量が増える。従って、本混合物のリコピン濃度は、高い方が好ましい。具体的には、以下のとおりである。好ましくは、30mg/100g以上である。より好ましくは、360mg/100g以上である。
【0023】
<本混合物の求電子性成分濃度>
本混合物における、求電子性成分の濃度は、以下のとおりである。リコピン濃度が360mg/100gの場合、混合後の全重量あたり1質量%以上10質量%以下である。好ましくは、1質量%以上5質量%以下である。より好ましくは、2質量%以上5質量%以下である。これをリコピンと求電子性成分の質量比(求電子性成分/リコピン)に換算すると、2.8以上30.9以下である。好ましくは、2.8以上14.6以下である。より好ましくは、5.7以上14.6以下である。
【0024】
<リコピン含有組成物のリコピン濃度>
リコピン含有組成物は、リコピンを超臨界抽出した抽出物である。その態様は主にオレオレジンであるが、これに限定されない。リコピンの濃度は、リコピン含有組成物に含まれる全リコピン量の重量割合である。
【0025】
<リコピン回収率>
リコピンの回収率は、原料として使用したリコピン総量あたりの、リコピン含有組成物に含まれる全リコピン量の割合である。リコピンの回収率は、以下の式により示した。
【0026】
[リコピン回収率(%)]=[抽出物量(g)×[抽出物中のリコピン濃度(g/100g)]/[抽出原料充填量(g)×抽出原料中のリコピン濃度(g/100g)]×100
[実施例]
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
<原材料>
トマトパウダーは、以下の方法で作成した。生トマトを搾汁した。得られた搾汁液を遠心分離した。遠心分離により沈殿したパルプ質を取り出した。取り出したパルプ質の水分量が5%乃至10%程度になるまで乾燥させた。乾燥させたパルプ質をトマトパウダーとした。当該トマトパウダーのリコピン濃度は、約360mg/100gであった。
【0029】
<混合>
トマトパウダーをエタノール(日本アルコール産業株式会社製、トレーサブル99 1級)、オリーブオイル(Jオイルミルズ社製、エキストラバージン オリーブオイル)、
マスタードオイル(Volgograd Mustard Oli Plant Sarepta社製、マスタードエッセンシャルオイル、アリルイソチオシアネート:純度95%以上)、エチルイソチオシアネート(東京化成工業社製、純度>97.0%)又はジアリルジスルフィド(富士フィルム和光純薬社製、純度90%以上)と表1に示す量を混合した。
【0030】
<超臨界抽出>
トマトパウダーに対する超臨界抽出工程(S20)は、超臨界抽出装置(アイテック社製)を用いて行った。当該超臨界抽出装置は、昇圧ポンプ、加熱機、抽出槽、分離ユニットによって構成される。超臨界抽出は、以下の条件で行った。なお、以下に示す流量比とは、原料(g)あたりに使用した溶媒の量(g)を溶媒/原料で表したものである。
【0031】
投入量:表1に記載の量
温度:80度
ガス:二酸化炭素
流量:25乃至26L/分
圧力:45MPa
流量比:30
<揮発性成分除去>
揮発性成分除去工程(S40)は、エバポレーターを用いて行った。得られた超臨界抽出物をポリエチレン製カップに入れた。当該カップを回転させながら10分間加熱を行った。加熱は、オイルバスを用い、100度で行った。加熱後の超臨界抽出物をリコピン含有組成物とした。
【0032】
<リコピン濃度>
各区分のリコピン濃度の測定方法は、以下に示した。組成物0.05gを秤量し、アセトン(関東化学社製、HPLC用)にて50mlに定容した。定容した組成物に10分間の超音波処理を行った。超音波処理後の溶液を0.45μmのPTFEフィルター(ADVANTEC社製)に通した。フィルターを通した後の溶液をHPLCに供するサンプルとした。得られたサンプルは、以下の条件でHPLC分析に供した。
【0033】
装置:島津高速液体クロマトグラフLC‐2030C Plus(株式会社島津製作所社製)
カラム:L‐column〔固定相:ODS、内径:4.6mm×150mm、一般財団法人化学物質評価研究機構製〕
カラム温度:40℃
サンプル注入量:10μL
移動相:アセトニトリル/メタノール/テトラヒドロフラン(55:40:5(v/v))混液(α‐トコフェロール50ppm含有)
流速:1.5mL/min
検出波長:453nm
リコピン濃度は、別途市販のリコピン試薬から作成した検量線をもとにHPLC分析によって得られたクロマトグラフ中のピーク面積と抽出に供したサンプルの重量及び定容量から算出した。
【0034】
<実施例1>
トマトパウダーをマスタードオイル、エチルイソチオシアネート又はジアリルジスルフィドと表1に示す量を混合した。次いで、超臨界抽出を行った。その後、100度のオイルバスで撹拌しながら、10分間加熱して揮発性成分除去した。揮発性成分を除去したものを、リコピン含有組成物とした。得られた組成物についてリコピンの濃度及び回収率を測定した。測定結果は表1に示す。
【0035】
<比較例1>
トマトパウダーをエタノール又はオリーブオイルと表2に示す量を混合した。他は実施例1と同様にして、リコピン含有組成物を得た。エタノール及びオリーブオイルは、従来からエントレーナーとして使用されているものである。得られた組成物についてリコピンの濃度及び回収率を測定した。測定結果は表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
<評価結果>
評価結果は表1及び表2のとおりである。表1及び表2によれば、求電子性成分を混合したもの(区分1~10)は、オリーブオイル又はエタノールを添加したもの(区分11~16)と比較して、リコピンの濃度及び回収率が高い結果となった。オリーブオイルは揮発性が低いため、オリーブオイルを添加した区分ではリコピンの濃度が低い結果となっている。求電子性成分の濃度は、リコピン360mg/100gの場合、混合後の全重量あたり1質量%以上10質量%以下であればよい。好ましくは1質量%以上5質量%以下、より好ましくは2質量%以上5質量%以下であった。
【0039】
<実施例2>
トマトパウダーを超臨界状態にした上で、表3に示す量のマスタードオイル、エチルイソチオシアネート又はジアリルジスルフィドを抽出開始と同時に超臨界抽出槽に注入した。それ以外の操作は実施例1と同様にして、リコピン含有組成物を得た。得られた組成物について、リコピンの濃度及び回収率を測定した。測定結果は表3に示す。
【0040】
<比較例2>
トマトパウダーを超臨界状態にした上で、表4に示す量のエタノール又はオリーブオイルを抽出開始と同時に超臨界抽出槽に注入した。それ以外の操作は実施例2と同様にして、リコピン含有組成物を得た。得られた組成物について、リコピンの濃度及び回収率を測定した。測定結果は表4に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
<評価結果>
評価結果は表3及び表4のとおりである。表3及び表4によれば、求電子性成分を混合したもの(区分17~19)は、オリーブオイル又はエタノールを添加したもの(区分20~24)と比較して、リコピンの濃度及び回収率が高い結果となった。求電子性成分の濃度は、リコピンの濃度が360mg/100gの場合、混合後の全重量あたり1質量%以上5質量%以下であることが好ましい結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明が有用な分野は、リコピン含有組成物の製造及びリコピン含有組成物の食品、医薬品又は化粧品等への利用である。
図1