(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】コネクタ付き樹脂チューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 53/08 20060101AFI20221011BHJP
B29C 65/16 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B29C53/08
B29C65/16
(21)【出願番号】P 2021070634
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2022-07-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋木 計宏
(72)【発明者】
【氏名】水谷 幸治
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 依史
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-193614(JP,A)
【文献】特開昭56-058833(JP,A)
【文献】特開昭52-100585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 53/08,65/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲がり部を有するコネクタ付き樹脂チューブの製造方法であって、
直管部を有する樹脂チューブ素材の端部を、筒状のコネクタの端部に嵌装する嵌装工程と、
前記嵌装工程の後に、前記嵌装工程にて嵌装された前記樹脂チューブ素材の端部と前記コネクタの端部とをレーザ溶着により接合する接合工程と、
前記接合工程の後に、前記直管部を曲げ加工するための曲げ加工部を有する姿勢保持型を用い、前記姿勢保持型の前記曲げ加工部にて、
前記接合工程にて前記コネクタが接合された前記樹脂チューブの前記直管部を、加熱した状態かつ曲げた状態で保持する加熱保持工程と、
前記加熱保持工程の後に、前記加熱保持工程にて加熱された状態かつ曲げられた状態の前記直管部を冷却する冷却工程と、
を備える、コネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項2】
前記嵌装工程は、前記樹脂チューブ素材の第一端部を前記コネクタである第一コネクタの端部に嵌装し、かつ、前記樹脂チューブ素材の第二端部を前記コネクタである第二コネクタの端部に嵌装し、
前記接合工程は、前記樹脂チューブ素材の前記第一端部と前記第一コネクタの端部とをレーザ溶着により接合し、続いて前記樹脂チューブ素材の前記第二端部と前記第二コネクタの端部とをレーザ溶着により接合する、請求項1に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項3】
前記嵌装工程は、前記樹脂チューブ素材の第一端部を前記コネクタである第一コネクタの端部に嵌装し、かつ、前記樹脂チューブ素材の第二端部を前記コネクタである第二コネクタの端部に嵌装し、
前記接合工程は、前記樹脂チューブ素材の前記第一端部と前記第一コネクタの端部とをレーザ溶着により接合するのと同時に、前記樹脂チューブ素材の前記第二端部と前記第二コネクタの端部とをレーザ溶着により接合する、請求項1に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項4】
前記嵌装工程は、全長に亘って前記直管部により構成される前記樹脂チューブ素材の端部を前記コネクタの端部に嵌装する、請求項1~3のいずれか1項に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項5】
前記直管部は、少なくとも一部に蛇腹筒部を有し、
前記加熱保持工程は、前記姿勢保持型の前記曲げ加工部にて、前記直管部の前記蛇腹筒部を、加熱した状態かつ曲げた状態で保持する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項6】
前記直管部は、前記蛇腹筒部と、非蛇腹筒部と、を有し、
前記加熱保持工程は、
前記姿勢保持型の前記曲げ加工部にて、前記直管部の前記蛇腹筒部を、加熱した状態かつ曲げた状態で保持し、
前記非蛇腹筒部を直管状態で保持する、請求項5に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項7】
前記直管部は、少なくとも一部に非蛇腹筒部を有し、
前記加熱保持工程は、前記姿勢保持型の前記曲げ加工部にて、前記直管部の前記非蛇腹筒部を、加熱した状態かつ曲げた状態で保持する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項8】
前記加熱保持工程は、
前記樹脂チューブ素材の前記直管部を加熱する前加熱工程と、
前記前加熱工程の後に、前記前加熱工程にて加熱された前記樹脂チューブ素材の前記直管部を前記姿勢保持型の前記曲げ加工部に配置し、前記姿勢保持型の前記曲げ加工部にて前記樹脂チューブ素材の前記直管部を曲げた状態で保持する曲げ保持工程と、
を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項9】
前記加熱保持工程は、
前記樹脂チューブ素材の前記直管部を前記姿勢保持型の前記曲げ加工部に配置し、前記姿勢保持型の前記曲げ加工部にて前記樹脂チューブ素材の前記直管部を曲げた状態で保持する曲げ保持工程と、
前記曲げ保持工程の後に、前記曲げ保持工程にて前記姿勢保持型に保持された曲げられた状態の前記直管部を加熱する後加熱工程と、
を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項10】
前記嵌装工程は、前記樹脂チューブ素材の端部を前記コネクタの端部の径方向内側に挿入する、請求項1~9のいずれか1項に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項11】
前記接合工程は、前記コネクタの端部の径方向外側から前記コネクタの端部の外周面に向けてレーザ光を照射し、前記コネクタの端部を透過したレーザ光により前記樹脂チューブ素材の端部と前記コネクタの端部とをレーザ溶着により接合する、請求項10に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項12】
前記接合工程は、複数の支持治具により前記樹脂チューブ素材の複数箇所を支持した状態で、嵌装された前記樹脂チューブ素材の端部と前記コネクタの端部とをレーザ溶着により接合する、請求項1~11のいずれか1項に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項13】
前記接合工程は、複数の前記支持治具により前記樹脂チューブ素材の前記直管部の複数箇所を支持する、請求項12に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項14】
前記接合工程は、前記樹脂チューブ素材および前記コネクタを回転させながらレーザ光を照射することにより、前記樹脂チューブ素材の端部と前記コネクタの端部とをレーザ溶着により接合する、請求項1~13のいずれか1項に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【請求項15】
前記加熱保持工程は、前記樹脂チューブ素材の全体を加熱する、請求項1~14のいずれか1項に記載のコネクタ付き樹脂チューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ付き樹脂チューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の燃料供給路や他の流体を流通させる経路には、樹脂製の長尺状のチューブ(パイプとも称する)を用いることが知られている。また、当該樹脂製のチューブと他部材とを連結するために、樹脂製のチューブの端部には、他部材と連結するためのコネクタが取り付けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、樹脂製のチューブをコネクタに挿入し、レーザ光を照射して、樹脂製のチューブとコネクタとをレーザ溶着により接合することが記載されている。また、特許文献2に記載されているように、樹脂チューブは、レイアウトの関係上、曲がり部を有する形状に形成されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4161823号公報
【文献】特許第6710058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂チューブに曲がり部を形成した後に、樹脂チューブの端部にコネクタをレーザ溶着により接合する方法においては、レーザ溶着の設備が大型化する。例えば、対象の周方向全周に亘ってレーザ溶着を行う場合には、溶着対象を回転させながら、レーザ光を照射する。従って、樹脂チューブの曲がり部の存在によって、樹脂チューブの回転半径が大きくなる。そのため、レーザ溶着の設備が大型化する。
【0006】
さらに、レーザ溶着の設備において、レーザ溶着を行う際に樹脂チューブを支持する必要がある。曲がり部を有する樹脂チューブを支持するためには、支持治具を、樹脂チューブの曲がり形状に合わせた位置に配置することになる。従って、溶着対象の樹脂チューブの形状が変更された場合には、支持治具の段取り替えが必要となり、多大な工数を要する。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、レーザ溶着の設備の小型化を図ることができるとともに、レーザ溶着の設備における支持治具の段取り替えを削減することができるコネクタ付き樹脂チューブの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
曲がり部を有するコネクタ付き樹脂チューブの製造方法であって、
直管部を有する樹脂チューブ素材の端部を、筒状のコネクタの端部に嵌装する嵌装工程と、
前記嵌装工程の後に、前記嵌装工程にて嵌装された前記樹脂チューブ素材の端部と前記コネクタの端部とをレーザ溶着により接合する接合工程と、
前記接合工程の後に、前記直管部を曲げ加工するための曲げ加工部を有する姿勢保持型を用い、前記姿勢保持型の前記曲げ加工部にて、前記接合工程にて前記コネクタが接合された前記樹脂チューブの前記直管部を、加熱した状態かつ曲げた状態で保持する加熱保持工程と、
前記加熱保持工程の後に、前記加熱保持工程にて加熱された状態かつ曲げられた状態の前記直管部を冷却する冷却工程と、
を備える、コネクタ付き樹脂チューブの製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
樹脂チューブ素材の端部と筒状のコネクタの端部とを嵌装させる工程において、樹脂チューブ素材は直管部を有する状態となる。さらに、樹脂チューブ素材が直管部を有する状態において、樹脂チューブ素材の端部とコネクタの端部とがレーザ溶着により接合される。その後に、加熱保持工程において、姿勢保持型を用いて、樹脂チューブ素材の直管部に曲げ加工が施されている。
【0010】
つまり、樹脂チューブ素材が直管部を有する状態において、樹脂チューブ素材とコネクタとをレーザ溶着により接合し、その後に、加熱保持工程にて樹脂チューブ素材に対する曲げ加工を行っている。従って、レーザ溶着の際には、上記曲げ加工が施される前の状態の樹脂チューブ素材を支持することになる。つまり、溶着対象を回転しながらレーザ溶着を行う際に、上記曲げ加工が施される前の樹脂チューブ素材と曲げ加工が施された最終成形品とを比較すると、前者の回転半径が格段に小さい。従って、曲げ加工が施される前の樹脂チューブ素材とコネクタとをレーザ溶着することにより、レーザ溶着の設備の小型化を図ることができる。
【0011】
また、レーザ溶着の際に、曲げ加工が施される前の状態の樹脂チューブ素材が、レーザ溶着の設備における支持治具によって支持される。樹脂チューブ素材の直管部を支持治具により支持することが可能となる。最終成形品であるコネクタ付き樹脂チューブを構成する樹脂チューブの部分の形状が異なる種類のものであっても、レーザ溶着の際には、曲げ加工が施される前のそれぞれの樹脂チューブ素材の直管部を支持することができる。そのため、レーザ溶着の設備における支持治具の段取り替えを行わなくても良い場合がある。支持治具の段取り替えを行うとしても、その工数は少なくて済む。従って、支持治具の段取り替えに要する工数を削減することができる。
【0012】
上記のように、支持治具が、曲げ加工が施される前の状態の樹脂チューブ素材を支持している。このような構成とすることにより、支持治具が、曲げ加工が施された後の樹脂チューブの部分を支持する場合に比べて、レーザ溶着の設備において、支持治具の設置位置の確保のためのスペースを小さくすることができる。従って、レーザ溶着の設備の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一実施形態の製造方法の対象であるコネクタ付き樹脂チューブの最終形態を示す図である。
【
図2】第一実施形態の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図2の第一接合工程にて用いる設備の平面図である。
【
図6】
図2の第二接合工程にて用いる設備の平面図である。
【
図7】
図2の加熱保持工程にて用いる姿勢保持型を示す斜視図である。
【
図8】第二実施形態の製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図8の接合工程にて用いる設備の平面図である。
【
図10】第三実施形態の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】第四実施形態の製造方法の対象であるコネクタ付き樹脂チューブの最終形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.第一実施形態)
(1-1.コネクタ付き樹脂チューブ1の構成)
本形態の製造方法の対象であるコネクタ付き樹脂チューブ1について、
図1を参照して説明する。コネクタ付き樹脂チューブ1は、例えば、自動車における燃料供給路、冷却水流通路、潤滑油流通路など、種々の流体流通路に適用される。コネクタ付き樹脂チューブ1は、全体として、長尺筒状に形成されており、両端が他の配管やチューブなどの部材に連結される。つまり、コネクタ付き樹脂チューブ1は、一端に連結される一方の相手部材(図示せず)と他端に連結される他方の相手部材(図示せず)との間にて、流体を流通させる。
【0015】
例えば、コネクタ付き樹脂チューブ1が燃料供給路に適用される場合の例として、コネクタ付き樹脂チューブ1の一端は、エンジンのインジェクタに接続されるフューエルデリバリパイプに連結され、他端は、燃料タンク側の配管部材などに連結される。
【0016】
図1に示すように、コネクタ付き樹脂チューブ1は、樹脂チューブ2と、第一コネクタ3と、第二コネクタ4とを備える。コネクタ付き樹脂チューブ1は、樹脂チューブ2に第一コネクタ3および第二コネクタ4が接合されることにより、一体物を構成している。なお、本形態においては、コネクタ付き樹脂チューブ1は、第一コネクタ3および第二コネクタ4を備える例を示すが、一方のコネクタのみ、例えば、第一コネクタ3のみを備えるようにしても良い。
【0017】
樹脂チューブ2は、長尺筒状に形成されており、少なくとも1箇所の曲がり部を有する。樹脂チューブ2が配置される環境に応じて、曲がり部の数、角度、隣り合う曲がり部の距離など適宜変更される。
図1においては、樹脂チューブ2は、S字状、すなわちUターン状の曲がり部を2か所有する例を示す。
【0018】
樹脂チューブ2は、例えば、ガソリンを流通する場合には、耐ガソリン性、耐燃料透過性、耐候性などを考慮して多層構造を有する。つまり、樹脂チューブ2は、流通させる流体に応じた樹脂材料により構成されている。また、本形態においては、樹脂チューブ2は、第一コネクタ3および第二コネクタ4とレーザ溶着により接合させるため、第一コネクタ3および第二コネクタ4よりもレーザ光の吸収率の高い材料により成形される。
【0019】
樹脂チューブ2は、第一端筒部21、第二端筒部22、中間筒部23を備える。第一端筒部21は、樹脂チューブ2の一端側の部分を構成する。本形態においては、第一端筒部21は、直管状に形成された部分であって、非蛇腹筒状に形成されている。ただし、第一端筒部21は、直管状に限定されず例えば波状など任意の形状に形成されるようにしても良く、非蛇腹筒状に限定されず蛇腹筒状に形成されるようにしても良い。第一端筒部21の開口側の端部21A(以下、「第一端部」と称する)は、樹脂チューブ2の第一開口側の端部を構成する。ここで、直管状とは、中心軸が直線上に位置する筒状を意味し、以下も同様である。
【0020】
第二端筒部22は、樹脂チューブ2の他端側の部分を構成する。本形態においては、第二端筒部22は、直管状に形成された部分であって、非蛇腹筒状に形成されている。ただし、第二端筒部22は、直管状に限定されず例えば波状など任意の形状に形成されるようにしても良く、非蛇腹筒状に限定されず蛇腹筒状に形成されるようにしても良い。第二端筒部22の開口側の端部22A(以下、「第二端部」と称する)は、樹脂チューブ2の第二開口側の端部を構成する。
【0021】
中間筒部23は、樹脂チューブ2の中間部分を構成する。つまり、中間筒部23は、第一端筒部21と第二端筒部22とを接続する部分である。中間筒部23は、曲がり部を有する。本形態においては、中間筒部23は、Uターン状の曲がり部を2か所有しており、S字状に形成されている。ただし、中間筒部23は、任意の曲がり部を有すれば良い。また、中間筒部23は、蛇腹筒状に形成されている。ただし、中間筒部23は、蛇腹筒状に限定されず、非蛇腹筒状に形成されるようにしても良い。
【0022】
第一コネクタ3は、樹脂により、筒状に形成されている。第一コネクタ3は、樹脂チューブ2の一端側である、第一端筒部21の第一端部21Aに、レーザ溶着により接合されている。第一コネクタ3は、少なくとも筒状の端部31を有する。第一コネクタ3の端部31には、樹脂チューブ2の第一端筒部21の第一端部21Aが嵌装されており、さらに、第一コネクタ3の端部31は、第一端筒部21の第一端部21Aに接合される。
【0023】
本形態においては、第一コネクタ3の端部31の径方向内側に、樹脂チューブ2の第一端筒部21の第一端部21Aが挿入されている。そして、第一コネクタ3の端部31の内周面と、第一端筒部21の第一端部21Aの外周面とが、レーザ溶着により接合されている。ただし、第一コネクタ3の端部31の径方向外側に、樹脂チューブ2の第一端筒部21の第一端部21Aが嵌装されるようにしても良い。この場合、第一コネクタ3の端部31の外周面と、第一端筒部21の第一端部21Aの内周面とが、レーザ溶着により接合される。
【0024】
第一コネクタ3の少なくとも端部31は、樹脂チューブ2よりもレーザ光の吸収率の低い樹脂材料により成形される。第一コネクタ3全体が、樹脂チューブ2よりもレーザ光の吸収率の低い樹脂材料により成形されるようにしても良い。
【0025】
第一コネクタ3の母材樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリメチルペンテン、ポリエチレン、ポリアセタール、フッ素樹脂などが用いられる。ポリプロピレンとしては、例えば、屈折率が1.47~1.51のものが用いられる。また、ポリアミドとしては、例えば、屈折率が1.51~1.55のものが用いられる。
【0026】
第一コネクタ3は、強度を必要とする場合には、補強フィラーを含有するようにしても良い。補強フィラーは、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウム、ガラスビーズ、ミルドファイバーおよびタルクなどが用いられる。
【0027】
第一コネクタ3は、1つの部品要素により構成されるようにしても良いし、複数の部品要素により構成されており、相互に連結されるようにしても良い。例えば、第一コネクタ3が、公知のクイックコネクタである場合には、複数の部品要素により構成される。
【0028】
第二コネクタ4は、樹脂により、筒状に形成されている。第二コネクタ4は、樹脂チューブ2の他端側である、第二端筒部22の第二端部22Aに、レーザ溶着により接合されている。第二コネクタ4は、少なくとも筒状の端部41を有する。第二コネクタ4の端部41には、樹脂チューブ2の第二端筒部22の第二端部22Aが嵌装されており、さらに、第二コネクタ4の端部41は、第二端筒部22の第二端部22Aに接合される。
【0029】
本形態においては、第二コネクタ4の端部41の径方向内側に、樹脂チューブ2の第二端筒部22の第二端部22Aが挿入されている。そして、第二コネクタ4の端部41の内周面と、第二端筒部22の第二端部22Aの外周面とが、レーザ溶着により接合されている。ただし、第二コネクタ4の端部41の径方向外側に、樹脂チューブ2の第二端筒部22の第二端部22Aが嵌装されるようにしても良い。この場合、第二コネクタ4の端部41の外周面と、第二端筒部22の第二端部22Aの内周面とが、レーザ溶着により接合される。
【0030】
第二コネクタ4の少なくとも端部41は、樹脂チューブ2よりもレーザ光の吸収率の低い樹脂材料により成形される。第二コネクタ4全体が、樹脂チューブ2よりもレーザ光の吸収率の低い樹脂材料により成形されるようにしても良い。第二コネクタ4は、例えば、第一コネクタ3と同様の樹脂材料により成形されるようにしても良い。第二コネクタ4は、第一コネクタ3とは異なる樹脂材料により成形されるようにしても良い。また、第二コネクタ4は、第一コネクタ3と同様に、1つの部品要素により構成されるようにしても良いし、複数の部品要素により構成されており、相互に連結されるようにしても良い。
【0031】
(1-2.コネクタ付き樹脂チューブ1の製造方法)
コネクタ付き樹脂チューブ1の製造方法について、
図2~
図7を参照して説明する。
図2および
図3の(A)に示すように、樹脂チューブ素材5を形成する(S1:樹脂チューブ素材形成工程)。樹脂チューブ素材5は、例えば、押出成形により成形されている。なお、本形態における樹脂チューブ素材5は、後述するように蛇腹筒部を有するため、押出成形かつコルゲート成形により成形されている。例えば、押出吸引成形や押出ブロー成形などが適用される。なお、樹脂チューブ素材5は、蛇腹筒部を有しない筒状、すなわち、全長に亘って非蛇腹筒部により構成されるようにしても良い。
【0032】
樹脂チューブ素材5は、
図1に示す樹脂チューブ2とは異なり、中間筒部24に曲げ加工が施されていない形状である。例えば、
図3の(A)に示すように、樹脂チューブ素材5は、全長に亘って直管部(直管状の筒部)により構成される。この場合、樹脂チューブ素材5を構成する第一端筒部21、第二端筒部22および中間筒部24は、全て、同軸の直管状に形成されている。ここで、便宜上、樹脂チューブ素材5において直管状の部分、すなわち第一端筒部21、第二端筒部22および中間筒部24を直管部(21,22,24)と称する。なお、樹脂チューブ素材5は、全長に亘って直管部により構成されるのが好適ではあるが、僅かに曲がり部を有しても良い。
【0033】
第一端筒部21および第二端筒部22は、
図1に示す最終形態であるコネクタ付き樹脂チューブ1を構成する第一端筒部21および第二端筒部22と同様である。中間筒部24は、
図1に示す最終形態であるコネクタ付き樹脂チューブ1を構成する中間筒部23を直管状にした部分に対応する。つまり、中間筒部24は、直管状の蛇腹筒部である。そして、中間筒部24は、第一端筒部21および第二端筒部22と同軸上に位置する。
【0034】
従って、樹脂チューブ素材5は、非蛇腹筒部である第一端筒部21、非蛇腹筒部である第二端筒部22、および、蛇腹筒部である中間筒部24を有しており、これらすべての構成要素が同軸上に位置する。
【0035】
コネクタ付き樹脂チューブ1の製造方法は、
図2に示すように、第一コネクタ3および第二コネクタ4を形成する(S2:コネクタ形成工程)。第一コネクタ3および第二コネクタ4は、例えば、射出成形により成形される。もちろん、第一コネクタ3および第二コネクタ4は、射出成形に限定されず、任意の方法により成形されるようにしても良い。
【0036】
続いて、
図2および
図3の(A)(B)に示すように、全長に亘って直管部(21,22,24)により構成される樹脂チューブ素材5の第一端部、すなわち、第一端筒部21の第一端部21Aを、筒状の第一コネクタ3の端部31に嵌装する(S3:嵌装工程)。本形態の嵌装工程S3においては、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aを第一コネクタ3の端部31の径方向内側に挿入する。このとき、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aを縮管させながら、第一コネクタ3の端部31に圧入すると良い。これにより、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aの外周面と第一コネクタ3の端部31の内周面とが密着した状態となる。
【0037】
樹脂チューブ素材5の第一端部21Aと第一コネクタ3の端部31との嵌合部分について、
図4を参照して詳細に説明する。
図4に示すように、第一コネクタ3の端部31は、第一コネクタ3の端部31の開口端(
図4の右端)の内周面に、テーパ状に形成されるガイド部31Aを備える。
【0038】
ガイド部31Aにおけるテーパ状の最大内径は、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aの縮管変形前の外径と同程度、もしくは、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aの縮管変形前の外径より僅かに大きい。また、ガイド部31Aにおけるテーパ状の最小内径は、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aの縮管変形前の外径よりも小さい。従って、樹脂チューブ素材5が第一コネクタ3の第一端部31の内側に挿入される際に、ガイド部31Aは、樹脂チューブ素材5の外周面に当接する。そして、ガイド部31Aは、樹脂チューブ素材5の縮管をガイドする。
【0039】
さらに、第一コネクタ3の第一端部31は、内周面においてガイド部31Aに隣接して形成され、円筒内周面状に形成された円筒内周面部31Bを備える。第一コネクタ3の第一端部31の円筒内周面部31Bの内径は、ガイド部31Aの最小内径に一致する。つまり、円筒内周面部31Bの内径は、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aの縮管変形前の外径よりも小さい。従って、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aは、円筒内周面部31Bの径方向内側に、縮管した状態で挿入されている。つまり、円筒内周面部31Bは、縮管された樹脂チューブ素材5の第一端部21Aの外周面が密着した状態となる。
【0040】
さらに、第一コネクタ3の第一端部31は、第一端部31の開口側(
図4の右側)を法線とする位置決め用端面31Cを備える。位置決め用端面31Cは、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aの先端面との当接により樹脂チューブ素材5に対する位置決めを行う。このようにして、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aが、第一コネクタ3の端部31に嵌装される。
【0041】
なお、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aを第一コネクタ3の端部31の径方向外側に嵌装するようにしても良い。この場合、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aを拡管させながら、第一コネクタ3の端部31に圧入すると良い。これにより、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aの内周面と第一コネクタ3の端部31の外周面とが密着した状態となる。
【0042】
また、同様に、樹脂チューブ素材5の第二端部、すなわち、第二端筒部22の第二端部22Aを、筒状の第二コネクタ4の端部41に嵌装する(S3:嵌装工程)。本形態の嵌装工程S3においては、樹脂チューブ素材5の第二端部22Aを第二コネクタ4の端部41の径方向内側に挿入する。このとき、樹脂チューブ素材5の第二端部22Aを縮管させながら、第二コネクタ4の端部41に圧入すると良い。これにより、樹脂チューブ素材5の第二端部22Aの外周面と第二コネクタ4の端部41の内周面とが密着した状態となる。ここで、第二コネクタ4の端部41は、第一コネクタ3の端部31と同様に形成すると良い。
【0043】
なお、樹脂チューブ素材5の第二端部22Aを第二コネクタ4の端部41の径方向外側に嵌装するようにしても良い。この場合、樹脂チューブ素材5の第二端部22Aを拡管させながら、第二コネクタ4の端部41に圧入すると良い。これにより、樹脂チューブ素材5の第二端部22Aの内周面と第二コネクタ4の端部41の外周面とが密着した状態となる。
【0044】
図3の(B)に示すように、嵌装工程S3によって、樹脂チューブ素材5に第一コネクタ3および第二コネクタ4が嵌装された、コネクタ付き樹脂チューブの一次成形体101が形成される。一次成形体101においては、樹脂チューブ素材5と第一コネクタ3、および、樹脂チューブ素材5と第二コネクタ4は、それぞれ嵌合により一体化されている。
【0045】
続いて、
図2に示すように、嵌装された樹脂チューブ素材5と第一コネクタ3および第二コネクタ4のそれぞれとをレーザ溶着により接合し、コネクタ付き樹脂チューブの二次成形体201を形成する(S4:接合工程)。
【0046】
ここで、レーザ溶着の設備6の一例について、
図5を参照して説明する。設備6は、例えば、ベース61、複数の支持治具62,63、ガイドレール64、レーザ光照射装置65、図示しない回転駆動装置を備える。複数の支持治具62,63は、ベース61上に設置されており、設置位置を変更可能である。例えば、複数の支持治具62,63は、相対的な距離を変化できるように、ベース61に設けられている。
【0047】
複数の支持治具62,63は、嵌装工程S3において嵌装された一次成形体101を支持する。例えば、複数の支持治具62,63は、一次成形体101を構成する樹脂チューブ素材5の部分を支持する。ただし、複数の支持治具62,63は、一次成形体101を構成する第一コネクタ3および第二コネクタ4の部分を支持するようにしても良い。さらに、複数の支持治具62,63は、一次成形体101を回転可能に支持する。
【0048】
図示しない回転駆動装置は、複数の支持治具62,63により支持された一次成形体101を回転駆動する。回転駆動装置は、支持治具62,63に構成されるようにしても良いし、支持治具62,63とは別の構成要素として設けても良い。ここで、回転駆動装置は、一次成形体101の中心軸を中心に、一次成形体101を回転する。つまり、一次成形体101の回転半径は、一次成形体101を構成する樹脂チューブ素材5、第一コネクタ3および第二コネクタ4のうちの最大外径部分の半径に等しくなる。
【0049】
ガイドレール64は、複数の支持治具62,63が配列されている方向(
図5の左右方向)に直交する方向に離れた位置に、複数の支持治具62,63が配列されている方向(
図5の左右方向)に平行な方向に延在するように設けられている。
【0050】
レーザ光照射装置65は、ガイドレール64に沿って移動可能に設けられており、レーザ溶着のためのレーザ光RBを照射する装置である。なお、設備6は、一次成形体101とレーザ光照射装置65とを、一次成形体101の中心軸方向に相対移動させることができれば良い。例えば、設備6は、一次成形体101を支持する支持治具62,63をガイドレールに沿って移動可能な構成としても良い。この場合、一次成形体101がベース61に対して移動することになる。
【0051】
本形態においては、接合工程S4は、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aと第一コネクタ3の端部31とを接合する第一接合工程S4Aと、第一接合工程S4Aに続いて、樹脂チューブ素材5の第二端部22Aと第二コネクタ4の端部41とを接合する第二接合工程S4Bとを備える。
【0052】
第一接合工程S4Aについて、
図4および
図5を参照して説明する。まず、一次成形体101を複数の支持治具62,63に支持した状態とする。特に、複数の支持治具62,63は、一次成形体101の樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)を支持するようにしている。そして、レーザ光照射装置65を、一次成形体101における樹脂チューブ素材5の第一端部21Aと第一コネクタ3の端部31との嵌合部分に対向する位置に位置決めする。続いて、回転駆動装置により、一次成形体101を、一次成形体101の中心軸を中心として回転させながら、レーザ光照射装置65によりレーザ光RBを照射する。
【0053】
そうすると、レーザ光照射装置65は、第一コネクタ3の端部31の外周面に向けてレーザ光RBを照射する。照射された第一コネクタ3の端部31は、レーザ光RBをレーザ透過率の高い樹脂材料により成形されている。従って、レーザ光RBは、第一コネクタ3の端部31を透過して、第一コネクタ3の端部31と樹脂チューブ素材5の第一端部21Aとの密着面に到達する。
図4において、レーザ光RBは、第一コネクタ3の端部31の円筒内周面部31Bに到達する。樹脂チューブ素材5の第一端部21Aにて、レーザ光RBが吸収されて、発熱する。
【0054】
そして、第一コネクタ3の端部31と樹脂チューブ素材5の第一端部21Aとがレーザ溶着により接合される。レーザ光RBは、第一コネクタ3の端部31の外周面全周に照射される。従って、第一コネクタ3の端部31と樹脂チューブ素材5の第一端部21Aとが、全周に亘ってレーザ溶着により接合される。
【0055】
次に、第二接合工程S4Bについて、
図6を参照して説明する。一次成形体101に対して、第一コネクタ3の端部31と樹脂チューブ素材5の第一端部21Aとを接合した後に、続いて、第二コネクタ4の端部41と樹脂チューブ素材5の第二端部22Aとを接合する。
【0056】
まず、一次成形体101を複数の支持治具62,63に支持した状態を維持する。そして、レーザ光照射装置65を、一次成形体101における樹脂チューブ素材5の第二端部22Aと第二コネクタ4の端部41との嵌合部分に対向する位置に位置決めする。続いて、回転駆動装置により、一次成形体101を、一次成形体101の中心軸を中心として回転させながら、レーザ光照射装置65によりレーザ光RBを照射する。
【0057】
そうすると、レーザ光照射装置65は、第二コネクタ4の端部41の外周面に向けてレーザ光RBを照射する。照射された第二コネクタ4の端部41は、レーザ光RBをレーザ透過率の高い樹脂材料により成形されている。従って、レーザ光RBは、第二コネクタ4の端部41を透過して、第二コネクタ4の端部41と樹脂チューブ素材5の第二端部22Aとの密着面に到達する。樹脂チューブ素材5の第二端部22Aにて、レーザ光RBが吸収されて、発熱する。
【0058】
そして、第二コネクタ4の端部41と樹脂チューブ素材5の第二端部22Aとがレーザ溶着により接合される。レーザ光RBは、第二コネクタ4の端部41の外周面全周に照射される。従って、第二コネクタ4の端部41と樹脂チューブ素材5の第二端部22Aとが、全周に亘ってレーザ溶着により接合される。このようにして、樹脂チューブ素材5に第一コネクタ3および第二コネクタ4が接合された二次成形体201が形成される。二次成形体201は、直管状である。
【0059】
続いて、
図2に示すように、樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)の一部分を曲げ加工するための姿勢保持型7を用いて、二次成形体201を構成する樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)の少なくとも一部分を加熱した状態かつ曲げた状態で保持する(S5:加熱保持工程)。
【0060】
姿勢保持型7について、
図7を参照して説明する。姿勢保持型7は、二次成形体201の樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)の一部分を曲げ加工するための曲げ加工部71を備える。本形態においては、曲げ加工部71は、二次成形体201の形状を保持するために、二次成形体201を嵌め込み可能な溝である。曲げ加工部71としての溝は、二次成形体201の全長を嵌め込むことができるように形成されている。ただし、曲げ加工部71としての溝は、二次成形体201の一部、特に曲げ加工を施す部位のみに形成しても良い。なお、姿勢保持型7は、二次成形体201を曲げた状態で姿勢保持可能であれば良く、曲げ加工部71は、溝の他に、任意の形状に形成することができる。姿勢保持型7(曲げ型)の種類については、本実施形態に限定されるものではなく、任意の形状や材質の姿勢保持型に適用可能である。
【0061】
また、本形態においては、樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)のうち中間筒部24に対して曲げ加工を施す。つまり、蛇腹筒部である中間筒部24が、曲げ加工の対象部位である。従って、姿勢保持型7の曲げ加工部71は、樹脂チューブ素材5の蛇腹筒部である中間筒部24を曲げた状態で保持することができれば良い。
【0062】
さらに、樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)のうち第一端筒部21および第二端筒部22は、直管状態を維持するようにしている。そこで、姿勢保持型7の曲げ加工部71は、二次成形体201の全長を保持しており、当該曲げ加工部71の一部は、非蛇腹筒部である第一端筒部21および第二端筒部22を直管状態で保持する。
【0063】
本形態においては、加熱保持工程S5は、前加熱工程S5Aと、曲げ保持工程S5Bとを備える。前加熱工程S5Aは、樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)のうち少なくとも曲げ加工を施す中間筒部24を加熱する。ただし、本形態においては、前加熱工程S5Aでは、樹脂チューブ素材5の全長、すなわち、直管部(21,22,24)全長に亘って加熱する。
【0064】
曲げ保持工程S5Bは、加熱された樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)のうち少なくとも中間筒部24を姿勢保持型7の曲げ加工部71に配置し、姿勢保持型7の曲げ加工部71にて樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)のうち中間筒部24を曲げた状態で保持する。
【0065】
樹脂チューブ素材5を加熱して、樹脂チューブ素材5の中間筒部24を曲げた状態で一定時間保持することにより、樹脂チューブ素材5の中間筒部24に対して曲げ加工を施すとともに、加熱により曲げ加工部位における応力が緩和され、曲げ加工部位が安定する。また、樹脂チューブ素材5の全体が加熱されることで、曲げ加工部位以外においても応力が緩和され、形状が安定する。
【0066】
続いて、
図2に示すように、加熱保持工程S5にて加熱かつ曲げ加工を施された二次成形体201を冷却する(S6:冷却工程)。そうすると、
図1に示すコネクタ付き樹脂チューブ1が形成される。ここで、二次成形体201を姿勢保持型7に保持した状態のまま冷却しても良いし、姿勢保持型7から取り外して冷却しても良い。
【0067】
(1-3.効果)
樹脂チューブ素材5の端部21A,22Aと筒状のコネクタ3,4の端部31,41とを嵌装させる嵌装工程S3において、樹脂チューブ素材5は直管部(21,22,24)を有する状態となる。さらに、樹脂チューブ素材5が直管部(21,22,24)を有する状態において、樹脂チューブ素材5の端部21A,22Aとコネクタ3,4の端部31,41とがレーザ溶着により接合される。その後に、加熱保持工程S5において、姿勢保持型7を用いて、樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)のうち中間筒部24に曲げ加工が施されている。
【0068】
つまり、樹脂チューブ素材5が直管部(21,22,24)を有する状態において、樹脂チューブ素材5とコネクタ3,4とをレーザ溶着により接合し、その後に、加熱保持工程S5にて樹脂チューブ素材5に対する曲げ加工を行っている。従って、レーザ溶着の際には、曲げ加工が施される前の状態の樹脂チューブ素材5を支持することになる。つまり、溶着対象である一次成形体101を回転しながらレーザ溶着を行う際に、上記曲げ加工が施される前の樹脂チューブ素材5と、曲げ加工が施された最終成形品であるコネクタ付き樹脂チューブ1とを比較すると、前者の回転半径が格段に小さい。従って、曲げ加工が施される前の樹脂チューブ素材5とコネクタ3,4とをレーザ溶着することにより、レーザ溶着の設備6の小型化を図ることができる。
【0069】
また、レーザ溶着の際に、曲げ加工が施される前の状態の樹脂チューブ素材5が、レーザ溶着の設備6における支持治具62,63によって支持される。樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)を支持治具62,63により支持することが可能となる。最終成形品であるコネクタ付き樹脂チューブ1を構成する樹脂チューブ2の部分の形状が異なる種類のものであっても、レーザ溶着の際には、曲げ加工が施される前のそれぞれの樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)を支持することができる。そのため、レーザ溶着の設備6における支持治具62,63の段取り替えを行わなくても良い場合がある。支持治具62,63の段取り替えを行うとしても、その工数は少なくて済む。従って、支持治具62,63の段取り替えに要する工数を削減することができる。
【0070】
上記のように、支持治具62,63が、曲げ加工が施される前の状態の樹脂チューブ素材5を支持している。このような構成とすることにより、支持治具62,63が曲げ加工が施された後の樹脂チューブ2の部分を支持する場合に比べて、レーザ溶着の設備6において、支持治具62,63の設置位置の確保のためのスペースを小さくすることができる。従って、レーザ溶着の設備6の小型化を図ることができる。
【0071】
接合工程S4は、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aと第一コネクタ3の端部31とをレーザ溶着により接合し、続いて樹脂チューブ素材5の第二端部22Aと第二コネクタ4の端部41とをレーザ溶着により接合する。そして、樹脂チューブ素材5の中間筒部24には後工程にて曲げ加工を施す。従って、2か所を連続してレーザ溶着を行う際に、レーザ光照射装置65と樹脂チューブ素材5とを、樹脂チューブ素材5の中心軸方向に相対移動させることで足りる。このように、1つのレーザ光照射装置65を用いたとしても、容易に2か所を連続してレーザ溶着が可能となる。
【0072】
特に、嵌装工程S3においては、全長に亘って直管部(21,22,24)により構成される樹脂チューブ素材5の端部21A,22Aをコネクタ3,4の端部31,41に嵌装している。つまり、接合工程S4において、全長に亘って直管状の状態の樹脂チューブ素材5と、コネクタ3,4とがレーザ溶着される。従って、溶着対象である一次成形体101を回転しながらレーザ溶着を行う際に、回転半径が最も小さい。従って、レーザ溶着の設備6の小型化を図ることができる。
【0073】
また、樹脂チューブ素材5は、蛇腹筒部である中間筒部24を有している。そして、加熱保持工程S5において、姿勢保持型7の曲げ加工部71にて、直管部(21,22,24)のうちの蛇腹筒部である中間筒部24を、加熱した状態かつ曲げた状態で保持する。従って、樹脂チューブ素材5を姿勢保持型7に配置することが容易にできる。
【0074】
また、樹脂チューブ素材5における直管部(21,22,24)は、蛇腹筒部である第一端筒部21および第二端筒部22と、非蛇腹筒部である中間筒部24とを有する。そして、加熱保持工程S5では、姿勢保持型7の曲げ加工部71にて、直管部(21,22,24)のうちの蛇腹筒部である中間筒部24を、加熱した状態かつ曲げた状態で保持する。一方、非蛇腹筒部である第一端筒部21および第二端筒部22を直管状態で保持している。従って、曲げ加工を施す中間筒部24のみならず、直管状態を維持する第一端筒部21および第二端筒部22も、応力が緩和して安定した形状となる。
【0075】
また、加熱保持工程S5は、前加熱工程S5Aの後に、曲げ保持工程S5Bを行っている。二次成形体201を加熱した後に、二次成形体201を曲げた状態で姿勢保持型7に保持する。二次成形体201が加熱されているため、姿勢保持型7への配置が容易にできる。
【0076】
また、嵌装工程S3では、樹脂チューブ素材5の端部21A,22Aをコネクタ3,4の端部31,41の径方向内側に挿入している。そして、接合工程S4にて、コネクタ3,4の端部31,41の径方向外側からコネクタ3,4の端部31,41の外周面に向けてレーザ光RBを照射し、コネクタ3,4の端部31,41を透過したレーザ光RBにより樹脂チューブ素材5の端部21A,22Aとコネクタ3,4の端部31,41とをレーザ溶着により接合している。レーザ光RBを径方向外側から照射可能となるため、レーザ溶着の設備6が簡易な構成となる。さらに、1つのレーザ光照射装置65を用いたとしても、容易に2か所を連続してレーザ溶着が可能となる。
【0077】
また、接合工程S4では、複数の支持治具62,63により樹脂チューブ素材5の複数箇所を支持している。特に、複数の支持治具62,63により樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)の複数箇所を支持する。この状態で、嵌装された樹脂チューブ素材5の端部21A,22Aとコネクタ3,4の端部31,41とをレーザ溶着により接合している。このように、樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)の複数箇所を支持治具62,63により支持している。溶着対象の樹脂チューブ素材5の長さが変わったとしても、複数の支持治具62,63の位置は、全く変更する必要がないか、変更するとしても僅かで足りる。
【0078】
特に、接合工程S4は、樹脂チューブ素材5およびコネクタ3,4を回転させながらレーザ光RBを照射することにより、樹脂チューブ素材5の端部21A,22Aとコネクタ3,4の端部31,41とをレーザ溶着により接合している。これにより、容易に、コネクタ3,4の全周に亘ってレーザ溶着することができる。そして、このような方法を適用した場合であっても、レーザ溶着の設備6の小型化を図ることができる。
【0079】
本実施形態においては、接合工程S4において、樹脂チューブ素材5およびコネクタ3,4を回転させながらレーザ光RBを照射することにより、樹脂チューブ素材5の端部21A,22Aとコネクタ3,4の端部31,41とをレーザ溶着により接合した。この他に、接合工程S4において、レーザ光照射装置65を回転させながら、レーザ光RBを照射することにより、樹脂チューブ素材5の端部21A,22Aとコネクタ3,4の端部31,41とをレーザ溶着により接合するようにしても良い。
【0080】
(2.第二実施形態)
第二実施形態のコネクタ付き樹脂チューブ1の製造方法について、
図8および
図9を参照して説明する。
図8に示すように、樹脂チューブ素材5の形成工程S11、第一コネクタ3および第二コネクタ4の形成工程S12、嵌装工程S13を実施する。S11,S12,S13は、第一実施形態におけるS1,S2,S3と同一である。
【0081】
続いて、接合工程S14にて、第一接合と第二接合とを同時に行う。つまり、接合工程S14は、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aと第一コネクタ3の端部31とをレーザ溶着により接合するのと同時に、樹脂チューブ素材5の第二端部22Aと第二コネクタ4の端部41とをレーザ溶着により接合する。
【0082】
ここで、接合工程S14を実現するためのレーザ溶着の設備8について、
図9を参照して説明する。設備8は、2個のレーザ光照射装置65A,65Bを備える。一方のレーザ光照射装置65Aが、樹脂チューブ素材5の第一端部21Aと第一コネクタ3の端部31とのレーザ溶着を行う。他方のレーザ光照射装置65Bが、樹脂チューブ素材5の第二端部22Aと第二コネクタ4の端部41とのレーザ溶着を行う。つまり、一次成形体101を回転させながら、2か所にてレーザ光RBを照射することで、二次成形体201が形成される。
【0083】
続いて、加熱保持工程S15を行い、冷却工程S16を行う。加熱保持工程S15は、前加熱工程S15Aの後に、曲げ保持工程S15Bを行う。S15,S15A,S15B、S16は、第一実施形態におけるS5,S5A,S5B、S6と同一である。このようにして、コネクタ付き樹脂チューブ1が製造される。
【0084】
本形態においては、2個のレーザ光照射装置65A,65Bを用いて、2か所のレーザ溶着を同時に行っている。このことは、曲げ加工を施す前の樹脂チューブ素材5に対してレーザ溶着を行っているために実現できる。特に、樹脂チューブ素材5が全長に亘って直管状とすることで、より容易となる。その結果、レーザ溶着に要する時間を短縮できる。
【0085】
(3.第三実施形態)
第三実施形態のコネクタ付き樹脂チューブ1の製造方法について
図10を参照して説明する。
図10に示すように、樹脂チューブ素材5の形成工程S21、第一コネクタ3および第二コネクタ4の形成工程S22、嵌装工程S23、接合工程S24を実施する。接合工程S24は、第一接合工程S24Aに続いて、第二接合工程S24Bを行う。ここで、S21,S22,S23,S24,S24A,S24Bは、第一実施形態におけるS1,S2,S3,S4,S4A,S4Bと同一である。
【0086】
続いて、加熱保持工程S25を行う。加熱保持工程S25は、曲げ保持工程S25Aの後に、後加熱工程S25Bを行う。曲げ保持工程S25Aは、樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)のうち少なくとも中間筒部24を姿勢保持型7の曲げ加工部71に配置し、姿勢保持型7の曲げ加工部71にて樹脂チューブ素材5の直管部(21,22,24)のうち中間筒部24を曲げた状態で保持する。
【0087】
そして、後加熱工程S25Bは、姿勢保持型7に保持された樹脂チューブ素材5を加熱する。つまり、直管部(21,22,24)のうち中間筒部24が曲げられた状態で加熱される。このとき、中間筒部24以外の部位、すなわち、第一端筒部21および第二端筒部22も加熱される。
【0088】
続いて、冷却工程S26を行う。S26は、第一実施形態におけるS6と同一である。このようにして、コネクタ付き樹脂チューブ1が製造される。本形態においても、第一実施形態と同様の効果を奏する。なお、本形態における接合工程S24は、第二実施形態の接合工程S14の処理に置換しても良い。つまり、接合工程S24は、第一接合と第二接合とを同時に行うことになる。
【0089】
(4.第四実施形態)
第四実施形態のコネクタ付き樹脂チューブ301の製造方法について
図11を参照して説明する。
図11には、本形態の製造方法の対象であるコネクタ付き樹脂チューブ301を示す。コネクタ付き樹脂チューブ301は、全長に亘って非蛇腹筒部により構成されている。つまり、コネクタ付き樹脂チューブ301を構成する樹脂チューブ9は、第一端筒部21、第二端筒部22、中間筒部25を備える。第一端筒部21および第二端筒部22は、第一実施形態と同一である。
【0090】
中間筒部25は、非蛇腹筒部により構成されている。第一実施形態における中間筒部23が蛇腹筒部であるのに対して、本形態における中間筒部25が非蛇腹筒部である点が相違する。中間筒部25が非蛇腹筒部であっても、実質的に、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0091】
1,301 コネクタ付き樹脂チューブ
2,9 樹脂チューブ
3 第一コネクタ
4 第二コネクタ
5 樹脂チューブ素材
7 姿勢保持型
21A 樹脂チューブの第一端部
22A 樹脂チューブの第二端部
23,25 樹脂チューブの中間筒部
24 樹脂チューブ素材の中間筒部
31 第一コネクタの端部
41 第二コネクタの端部
62,63 支持治具
S3,S13,S23 嵌装工程
S4,S14,S24 接合工程
S5,S15,S25 加熱保持工程
S6,S16,S26 冷却工程
【要約】
【課題】レーザ溶着の設備の小型化を図ることができるとともに、レーザ溶着の設備における支持治具の段取り替えを削減することができるコネクタ付き樹脂チューブの製造方法を提供する。
【解決手段】コネクタ付き樹脂チューブ1の製造方法は、直管部24を有する樹脂チューブ素材5の端部21A,21Bを、筒状のコネクタ3,4の端部31,41に嵌装する嵌装工程S3と、嵌装された樹脂チューブ素材5の端部21A,21Bとコネクタ3,4の端部31,41とをレーザ溶着により接合する接合工程S4と、直管部24を曲げ加工するための曲げ加工部71を有する姿勢保持型7を用い、姿勢保持型7の曲げ加工部71にて、直管部24を、加熱した状態かつ曲げた状態で保持する加熱保持工程S5と、直管部24を冷却する冷却工程S6とを備える。
【選択図】
図2