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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】部分放電検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20221011BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20221011BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/52
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021071983
(22)【出願日】2021-04-21
(62)【分割の表示】P 2019167108の分割
【原出願日】2015-09-17
(65)【公開番号】P2021105622
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】塩入 哲
(72)【発明者】
【氏名】長 広明
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇介
(72)【発明者】
【氏名】松崎 順
(72)【発明者】
【氏名】大竹 史郎
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-139025(JP,A)
【文献】特開平09-005386(JP,A)
【文献】特開2009-168489(JP,A)
【文献】特開2001-249156(JP,A)
【文献】特開2010-133746(JP,A)
【文献】特開平04-055770(JP,A)
【文献】特開2012-220209(JP,A)
【文献】特開2013-113691(JP,A)
【文献】特開2019-184322(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0098161(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0324746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収納した第1の箱体と、電気機器を収納するとともに前記第1の箱体の接地母線に共通に接続される第nの箱体との間に絶縁部材が設けられた状態で、
前記第1の箱体に接触固定するための第1の電極により表面電位を検出し、
前記第nの箱体に接触固定するための第nの電極により表面電位を検出し、
前記第1の電極と前記第nの電極により検出した前記表面電位を減算した電位差に基づいて、部分放電の発生を判定することを特徴とする部分放電検出方法。
【請求項2】
電気機器を収納した第1の箱体に接触固定するための第1の電極により表面電位を検出し、
電気機器を収納するとともに、前記第1の箱体の接地母線に共通に接続される第nの箱体に接触固定するための第nの電極により表面電位を検出し、
前記第1の電極と前記第nの電極により検出した前記表面電位をそれぞれ数回平均化処理した後、減算した電位差に基づいて、部分放電の発生を判定することを特徴とする部分放電検出方法。
【請求項3】
電気機器を収納した第1の箱体に接触固定するための第1の電極により表面電位を検出し、
電気機器を収納するとともに、前記第1の箱体の接地母線に共通に接続される第nの箱体に接触固定するための第nの電極により表面電位を検出し、
前記第1の電極と前記第nの電極により検出した前記表面電位を減算した電位差を周波数変換するウェーブレット処理を行って、部分放電の発生を判定することを特徴とする部分放電検出方法。
【請求項4】
電気機器を収納した第1の箱体に接触固定するための第1の電極により表面電位を検出し、
電気機器を収納するとともに、前記第1の箱体の接地母線に共通に接続される第nの箱体
に接触固定するための第nの電極により表面電位を検出し、
前記第1の電極と前記第nの電極により検出した前記表面電位を減算した電位差が閾値を数回超えたとき、部分放電の発生と判定することを特徴とする部分放電検出方法。
【請求項5】
第1のモールド部材の表面に設けられた第1の接地層に接触固定するための第1の電極により表面電位を検出し、
第nのモールド部材の表面に設けられるとともに、前記第1の接地層の接地母線に共通に接続される第nの接地層に接触固定するための第nの電極により表面電位を検出し、
前記第1の電極と前記第nの電極により検出した前記表面電位をそれぞれ数回平均化処理した後、減算した電位差に基づいて、部分放電の発生を判定することを特徴とする部分放電検出方法。
【請求項6】
第1のモールド部材の表面に設けられた第1の接地層に接触固定するための第1の電極により表面電位を検出し、
第nのモールド部材の表面に設けられるとともに、前記第1の接地層の接地母線に共通に接続される第nの接地層に接触固定するための第nの電極により表面電位を検出し、
前記第1の電極と前記第nの電極により検出した前記表面電位を減算した電位差を、周波数変換をするウェーブレット処理を行って、部分放電の発生を判定することを特徴とする部分放電検出方法。
【請求項7】
第1のモールド部材の表面に設けられた第1の接地層に接触固定するための第1の電極により表面電位を検出し、
第nのモールド部材の表面に設けられるとともに、前記第1の接地層の接地母線に共通に接続される第nの接地層に接触固定するための第nの電極表面電位を検出し、
前記第1の電極と前記第nの電極とで検出した前記表面電位を減算した電位差が閾値を数回超えたとき、部分放電の発生を判定することを特徴とする部分放電検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力機器で発生する部分放電を高感度で検出する部分放電検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチギヤのような箱体内に遮断器などを収納する電力機器においては、箱体に複数の部分放電センサーを取り付け、部分放電の発生位置を特定するものが知られている。部分放電センサーでは、浮遊容量を介して伝搬する部分放電パルスによる信号を検出し、到達するまでの時間差から三次元位置も特定できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、主回路導体のような電気部材を絶縁材料でモールドしたスイッチギヤでは、接地層の表面に表面電位を検出する複数の電極を設け、所定のものを基準電極とし、他のものを測定電極とし、基準電極から測定電極の表面電位を減算して電位差を求め、部分放電を検出する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、表面電位を検出する一対の電極を準備し、一方の電極を接地層の表面に取り付け、他方の電極を接地層と非接触として配設し、これらの出力を差分してS/N比を向上させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
これらの部分放電検出装置は、箱体やモールド部材が単独構成であり、内部で発生する部分放電の発生位置の特定や検出感度を向上させるものである。ここで、スイッチギヤにおいては、複雑な電力系統を構成する上から、複数の箱体が列盤されることが多い。列盤されたスイッチギヤでは、他電力系統に接続されたり、電力変換器やモータなどの電力機器が接続されたりしており、複雑なノイズ(BGN)が発生、侵入し、電源に重畳される。このように列盤されたスイッチギヤでは、周波数成分やパワーの異なるノイズに対応するノイズ除去には限界があり、微弱な信号である部分放電の検出は困難なものとなっていた。このため、複雑なノイズが侵入され易い列盤されたスイッチギヤの部分放電を高感度で検出できる方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-149896号公報
【文献】特開2012-220209号公報
【文献】特開2012-220208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、各種の電源系統や電力機器に接続されて大きなノイズが重畳される列盤されたスイッチギヤにおいて、箱体単位で部分放電を高感度で検出することができる部分放電検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態の部分放電検出方法は、電気機器を収納した第1の箱体、電気機器を収納するとともに前記第1の箱体の接地母線に共通に接続される第nの箱体との間に絶縁部材が設けられた状態で、前記第1の箱体に接触固定するための第1の電極により表面電位を検出し、前記第nの箱体に接触固定するための第nの電極により表面電位を検出し、前記第1の電極と前記第nの電極から検出した前記表面電位を減算した電位差に基づいて、部分放電の発生を判定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に用いる部分放電検出装置の構成を示す概要図。
図2】本発明の実施例1に用いる部分放電検出装置の回路構成を説明する図。
図3】本発明の実施例1に用いる部分放電検出装置のノイズ除去を説明する図。
図4】本発明の実施例2に用いる部分放電検出装置の回路構成を説明する図。
図5】本発明の実施例3に用いる部分放電検出装置の回路構成を説明する図。
図6】本発明の実施例4に用いる部分放電検出装置の構成を示す概要図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
先ず、本発明の実施例1に用いる部分放電検出装置を図1図3を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に用いる部分放電検出装置の構成を示す概要図、図2は、本発明の実施例1に用いる部分放電検出装置の回路構成を説明する図、図3は、本発明の実施例1に用いる部分放電検出装置のノイズ除去を説明する図である。
【0012】
図1に示すように、遮断器や主回路導体などの電気機器を収納した複数の第1~第nの箱体1a~1nはほぼ直線状に配置され、所定の電源系統が構成されている。第1~第nの箱体1a~1nには、表面電位を検出する第1~第nの電極2a~2nが接触固定されている。第1~第nの電極2a~2nの出力は、微弱な信号を取出す部分放電判定装置3に入力されている。第1~第nの箱体1a~1nの下部には、共通の接地母線4が配設され、接地極5に接続されている。第1~第nの電極2a~2nは、収納された電気機器との間で形成される浮遊容量を介して検出される表面電位を検出する。ここで、第1~第nの箱体1a~1nの個々は、正面板、天井板、背面板、床板、側面板で構成されており、いずれか1枚の板面に第1~第nの電極2a~2nが接触固定される。このため、正面板、天井板、背面板、床板、側面板のそれぞれを箱体を構成する構成板と称する。構成板は、接地母線4に接続される。
【0013】
次に、部分放電判定装置3の回路構成を図2を参照して説明する。図2に示すように、部分放電判定装置3は、第1~第nの電極2a~2nの出力が入力される減算処理部6、減算処理部6の出力が接続される判定部7、判定部7の出力が接続される表示部8で構成されている。
【0014】
次に、部分放電の判定方法を図3(a)~(c)を参照して説明する。図3(a)に示すように、例えば、第1の箱体1a内で部分放電が発生すると、第1の電極2aでは上段のような減衰する部分放電よるものと、下段のようなノイズが重畳されたランダムな振動波形の表面電位を検出する。第2~第nの電極2b~2nでは、図3(b)に示すように、第1の箱体1aから伝搬してくる部分放電によるものは小さく、ノイズは同程度の大きさのものを検出する。これらを減算処理部6で時間を合わせて減算し、電位差を求めると、図3(c)に示すように、ノイズが除去され、部分放電によるものだけが抽出される。第1~第nの箱体1a~1nの構成板は接地母線4に接続されているので、ノイズは全ての構成板で同程度のものが検出され、部分放電によるものは当該箱体のみで大きく検出されるものとなる。
【0015】
これらの処理を第1~第nの電極2a~2nの相互間で行い、判定部7で所定の電位差が検出されると、発生場所を特定し、表示部8に表示する。判定部7では、電位差のピーク値、継続時間、発生頻度などに閾値を設け、いずれかの項目で閾値を超えたときに部分放電の発生とする。なお、ピーク値、継続時間、発生頻度を乗算して放電エネルギーを算出したものを用いてもよい。また、部分放電は間欠放電が多いので、判定部7での電位差の検出が数回続いたときに、部分放電の発生と判定するようにすれば、誤動作を防止することができる。
【0016】
これらにより、第1~第nの箱体1a~1nが列盤されたスイッチギヤにおいて、部分放電の発生を箱体単位で検出することができる。スイッチギヤでは、他電力系統やノイズを出し易い電力機器が接続され、周波数成分やパワーの異なる複雑で大きなノイズが主回路に重畳されるが、これらのノイズを箱体単位で減算するので、第1~第nの箱体1a~1n全体に重畳されたノイズを確実に除去することができる。なお、部分放電の発生箱体が特定された場合には、他の箱体と切り離して一般的な部分放電測定器を用いて発生個所を見つけ部品交換、または箱体全体の交換などを行うことができる。
【0017】
上記実施例1の部分放電検出方法によれば、列盤された複数の第1~第nの箱体1a~1nの構成板にそれぞれ第1~第nの電極2a~2nを接触固定し、これらの出力を部分放電判定装置3の減算処理部6で減算し、主回路に重畳されたノイズを箱体単位で除去しているので、周波数成分やパワーの異なる複雑で大きなノイズでも確実に除去することができ、部分放電を高感度で検出することができる。
【0018】
上記実施例1では、列盤されたスイッチギヤを第1~第nの箱体1a~1nを用いて説明したが、真空バルブや主回路導体のような電気機器を絶縁材料でモールドし、これらのモールド部材を複数接続したスイッチギヤにおいても、各モールド部材の接地層に第1~第nの電極2a~2nを取り付け、これらを減算処理部6でモールド部材の単位で減算することにより、大きなノイズを除去することができる。
【実施例2】
【0019】
次に、本発明の実施例2に用いる部分放電検出装置を図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施例2に用いる部分放電検出装置の回路構成を説明する図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、部分放電の信号を平均化処理したことである。図4において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0020】
図4に示すように、部分放電判定装置3に平均化処理部9を設け、この出力を減算処理部6に入力している。平均化処理部9では、数回を平均化処理するので、突発的なものを抑えることができ、検出感度を向上させることができる。
【0021】
上記実施例2の部分放電検出方法によれば、実施例1による効果のほかに、部分放電の検出感度を向上させることができる。
【実施例3】
【0022】
次に、本発明の実施例3に用いる部分放電検出装置を図5を参照して説明する。図5は、本発明の実施例3に用いる部分放電検出装置の回路構成を説明する図である。なお、この実施例3が実施例2と異なる点は、部分放電信号を周波数変換するウェーブレット変換することである。図5において、実施例2に用いた装置と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0023】
図5に示すように、減算処理部6と判定部7との間には、ウェーブレット変換部10を接続している。ウェーブレット変換部10では、周波数1~20MHzに高い結果が得られたとき、絶縁物からの部分放電と判定するようにしている。
【0024】
上記実施例3の部分放電検出方法によれば、実施例2による効果のほかに、ウェーブレット変換により、部分放電を確実に検出することができる。
【実施例4】
【0025】
次に、本発明の実施例4に用いる部分放電検出装置を図6を参照して説明する。図6は、本発明の実施例4に用いる部分放電検出装置の構成を示す概要図である。なお、この実施例4に用いる装置が実施例1と異なる点は、盤間を絶縁したことである。図6において、実施例1に用いた装置と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0026】
図6に示すように、第1の箱体1aと第2の箱体1b間、第2の箱体1bと第3の箱体1c間、第3の箱体1cと第nの箱体1n間、所謂、箱体間には、絶縁部材11a、11b、11c、11nを設けている。絶縁部材11a、11b、11c、11nは、絶縁シート、絶縁薄板、第1~第nの箱体1a~1nに塗布された絶縁被膜などでよく、部分放電に伴って発生する数mV~数Vの電位差に耐え得る厚さを有するものとする。
【0027】
これにより、第1~第nの箱体1a~1nの各箱体の接地電位が電気的に独立し、部分放電による電位差を当該箱体で確実に検出することができる。例えば、第1の箱体1aで部分放電が発生した場合、第2の箱体1b以降への接地電流の分流を絶縁部材11aで遮断し、第1の電極2aで表面電位を確実に検出することができる。
【0028】
なお、実施例1に用いた装置の第1~第nの箱体1a~1nにおいても、一般的に構成板に塗装が施されて箱体間が絶縁されているか、微妙な接触による高抵抗接続されており、接地電流の分流が防げるものは、絶縁部材11a、11b、11c、11nを不要とすることができる。
【0029】
上記実施例4の部分放電検出方法によれば、実施例3による効果のほかに、第1~第nの箱体1a~1nでの部分放電を確実に検出することができる。
【0030】
以上述べたような実施形態によれば、列盤された複数の箱体の構成板にそれぞれ表面電位を検出する電極を取り付け、これらの出力を各箱体の相互で減算して電位差を求めているので、大きなノイズを箱体単位で確実に除去することができ、微弱な信号の部分放電を高感度で検出することができる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1a~1n 第1~第nの箱体
2a~2n 第1~第nの電極
3 部分放電判定装置
4 接地母線
6 減算処理部
7 判定部
9 平均化処理部
10 ウェーブレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6