(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20221011BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20221011BHJP
【FI】
A01B69/00 303F
A01B69/00 303K
G05D1/02 N
(21)【出願番号】P 2021073724
(22)【出願日】2021-04-26
(62)【分割の表示】P 2017014189の分割
【原出願日】2017-01-30
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】平松 敏史
(72)【発明者】
【氏名】小倉 康平
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特公平03-027931(JP,B2)
【文献】特開2002-186309(JP,A)
【文献】特開2014-218139(JP,A)
【文献】特開平07-281743(JP,A)
【文献】特開昭63-240708(JP,A)
【文献】実開昭59-113806(JP,U)
【文献】特許第2711690(JP,B2)
【文献】特開2001-001930(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0160961(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B52D 6/00 - 6/10
G05D 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた複数の作業経路と、当該作業経路の端同士を接続し、
前進から後進又は、後進から前進の切換えを含む旋回路と、を有する走行経路に沿って自律走行する作業車両において、
車輪と、
前記走行経路に沿って、前記車輪の回転方向、及び、前記車輪の切れ角である舵角を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記旋回路における前進から後進又は、後進から前進に切り換えるタイミングにおける前記舵角が所定角度以下であると判定した場合、前記舵角が中立角度でない状態で、前記車輪の回転方向を前進方向から後進方向、又は、後進方向から前進方向へ変更させることが可能であることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両であって、
前記所定角度以下とは、前記車輪の中立角度に対する舵角である判定角度が第1角度以下である場合であることを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業車両であって、
前記旋回路は、
直進路と、前進しながら旋回する経路である前進旋回路
と、を含み、
前記制御部は、前記前進旋回路から前記直進路へ切り
換える場合に前記車輪の回転方向を前進方向から後進方向へ変更させることが可能であり、前記直進路から前記前進旋回路へ切り
換える場合に前記車輪の回転方向を後進方向から前進方向へ変更させることが可能であることを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、本発明は、主として、予め定められた経路に沿って自律走行する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衛星測位システムを利用して自律走行可能な作業車両が知られている。特許文献1は、この種の作業車両を開示する。特許文献1の作業車両は、衛星測位システムを利用して機体の位置を測位する位置算出手段と、設定した走行経路に沿って自動的に走行及び作業をさせる制御装置と、を備えており、遠隔操作装置は、この作業車両と無線で相互に通信可能に構成されている。この構成により、特許文献1では、作業車両に作業者が乗ることなく作業車両を遠隔で操作することができる。
【0003】
また、特許文献2では、作業者が乗っている状態において、作業車両を手動で走行させるモードと、作業車両を自律的に走行させるモードと、を実行可能な作業車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-188423号公報
【文献】特開2014-182453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1及び2では、前進から後進(又はその反対)を切り換える際において、舵角をどのように制御するかについて記載されていない。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、予め定められた経路に沿って自律走行する作業車両において、前後進をスムーズに切り換えることが可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の作業車両が提供される。即ち、作業車両は、予め定められた複数の作業経路と、当該作業経路の端同士を接続し、前進から後進又は、後進から前進の切換えを含む旋回路と、を有する走行経路に沿って自律走行する。作業車両は、車輪と、制御部と、を備える。前記制御部は、前記走行経路に沿って、前記車輪の回転方向、及び、前記車輪の切れ角である舵角を制御する。前記制御部は、前記旋回路における前進から後進又は、後進から前進に切り換えタイミングにおける前記舵角が所定角度以下であると判定した場合、前記舵角が中立角度でない状態で、前記車輪の回転方向を前進方向から後進方向、又は、後進方向から前進方向へ変更させることが可能である。
【0009】
前記の作業車両においては、前記所定角度以下とは、前記車輪の中立角度に対する舵角である判定角度が第1角度以下である場合であることが好ましい。
【0010】
前記の作業車両においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記旋回路は、直進路と、前進しながら旋回する経路である前進旋回路と、を含む。前記制御部は、前記前進旋回路から前記直進路へ切り換える場合に前記車輪の回転方向を前進方向から後進方向へ変更させることが可能であり、前記直進路から前記前進旋回路へ切り換える場合に前記車輪の回転方向を後進方向から前進方向へ変更させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るロボットトラクタの全体的な構成を示す側面図。
【
図3】自律走行システムに備えられる無線通信端末を示す図。
【
図4】ロボットトラクタ及び無線通信端末の制御系の主要な構成を示すブロック図。
【
図5】無線通信端末のディスプレイにおける監視画面の表示例を示す図。
【
図6】無線通信端末が生成する自律走行経路の例を示す模式図。
【
図7】前後進を切り換えて旋回するときの流れを説明する模式図。
【
図8】中立角度を基準角度とした場合の判定角度θを示す模式図。
【
図9】前後進の切換時における舵角変更に関する処理を示すフローチャート。
【
図10】前進時と後進時とで現在位置を異ならせることを示す模式図。
【
図11】前後進を切り換えて旋回する別の方法を説明する模式図。
【
図12】目標角度を基準角度とした場合の判定角度θを示す模式図。
【
図13】前後進の開始時における舵角変更に関する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、図面の各図において同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、同一の符号に対応する部材等の名称が、簡略的に言い換えられたり、上位概念又は下位概念の名称で言い換えられたりすることがある。
【0013】
自律走行システムは、作業領域及び非作業領域内で1台又は複数台の作業車両を自律的に走行させて、作業の全部又は一部を実行させるものである。本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建設作業装置、除雪車等、乗用型作業機に加え、歩行型作業機も含まれる。本明細書において自律走行とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタが備える走行に関する構成が制御されて予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味し、自律作業とは、トラクタが備える制御部によりトラクタが備える作業に関する構成が制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが作業を行うことを意味する。なお、自律走行、自律作業時には、トラクタに人が乗っていてる場合と、トラクタに人が乗っていない場合が含まれる。これに対して、手動走行・手動作業とは、トラクタが備える各構成がユーザにより操作され、走行・作業が行われることを意味する。
【0014】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自律走行システム99に備えられるロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。
図2は、ロボットトラクタ1の平面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る自律走行システム99に備えられる無線通信端末46を示す図である。
図4は、ロボットトラクタ1及び無線通信端末46の制御系の主要な構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の一形態に係る自律走行システム99に備えられるロボットトラクタ(作業車両)1は、無線通信端末46との間で無線通信を行うことにより操作される作業車両である。ユーザが無線通信端末46を操作して、当該トラクタ1の制御部4との間で信号のやり取りを適宜行うことにより、トラクタ1を自律走行・自律作業させることができる。
【0016】
初めに、本発明の実施の一形態に係る自律走行システム99に備えられるロボットトラクタ(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)1について、主として
図1及び
図2を参照して説明する。
【0017】
トラクタ1は、圃場(走行領域)内を自律走行することが可能な走行機体(車体部)2を備える。走行機体2には、
図1及び
図2に示す作業機3が着脱可能に取り付けられている。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して走行機体2に装着することができる。走行機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
【0018】
トラクタ1の構成について、
図1及び
図2を参照してより詳細に説明する。トラクタ1の走行機体2は、
図1に示すように、その前部が左右1対の前輪(車輪)7,7で支持され、その後部が左右1対の後輪8,8で支持されている。
【0019】
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内には、トラクタ1の駆動源であるエンジン10及び燃料タンク(図略)が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としては、エンジンに加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用してもよい。
【0020】
ボンネット9の後方には、ユーザが搭乗するためのキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、ユーザが操向操作するためのステアリングハンドル12と、ユーザが着座可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
【0021】
上記の操作装置としては、
図2に示すモニタ装置14、スロットルレバー15、主変速レバー27、複数の油圧操作レバー16、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、副変速レバー19、及び作業機昇降スイッチ28等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
【0022】
モニタ装置14は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー15は、エンジン10の出力回転数を設定するための操作具である。主変速レバー27は、トラクタ1の走行速度を無段階で変更するための操作具である。油圧操作レバー16は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作するための操作具である。PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出した図略のPTO軸(動力取出軸)への動力の伝達/遮断を切換操作するための操作具である。即ち、PTOスイッチ17がON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチ17がOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止される。PTO変速レバー18は、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うための操作具である。副変速レバー19は、トランスミッション22内の走行副変速ギア機構の変速比を切り換えるための操作具である。作業機昇降スイッチ28は、走行機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するための操作具である。
【0023】
図1に示すように、走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
【0024】
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。前輪7及び後輪8が前進方向に回転することで、トラクタ1が前進する。前輪7及び後輪8が後進方向に回転することで、トラクタ1が後進する。
【0025】
図4に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)並びに作業機3の動作(昇降、駆動及び停止等)を制御するための制御部4を備える。制御部4は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えて構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。制御部4には、トラクタ1が備える各構成(例えば、エンジン10等)を制御するためのコントローラ、及び、他の無線通信機器と無線通信可能な無線通信部40等がそれぞれ電気的に接続されている。
【0026】
上記のコントローラとして、トラクタ1は少なくとも、図略のエンジンコントローラ、車速コントローラ、操向コントローラ及び昇降コントローラを備える。それぞれのコントローラは、制御部4からの電気信号に応じて、トラクタ1の各構成を制御することができる。
【0027】
エンジンコントローラは、エンジン10の回転数等を制御するものである。具体的には、エンジン10には、当該エンジン10の回転数を変更させる図略のアクチュエータを備えたガバナ装置41が設けられている。エンジンコントローラは、ガバナ装置41を制御することで、エンジン10の回転数を制御することができる。また、エンジン10には、エンジン10の燃焼室内に噴射(供給)するための燃料の噴射時期・噴射量を調整する燃料噴射装置45が付設されている。エンジンコントローラは、燃料噴射装置45を制御することで、例えばエンジン10への燃料の供給を停止させ、エンジン10の駆動を停止させることができる。
【0028】
車速コントローラは、トラクタ1の車速を制御するものである。具体的には、トランスミッション22には、例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置である変速装置42が設けられている。車速コントローラは、変速装置42の斜板の角度を図略のアクチュエータによって変更することで、トランスミッション22の変速比を変更し、所望の車速を実現することができる。
【0029】
操向コントローラは、ステアリングハンドル12の回動角度を制御するものである。具体的には、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部には、操向アクチュエータ43が設けられている。この構成で、予め定められた経路をトラクタ1が走行する場合、制御部4は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を計算し、得られた回動角度となるように操向コントローラに制御信号を出力する。操向コントローラは、制御部4から入力された制御信号に基づいて操向アクチュエータ43を駆動し、ステアリングハンドル12の回動角度を制御する。
【0030】
昇降コントローラは、作業機3の昇降を制御するものである。具体的には、トラクタ1は、作業機3を走行機体2に連結している3点リンク機構の近傍に、油圧シリンダ等からなる昇降アクチュエータ44を備えている。この構成で、昇降コントローラは、制御部4から入力された制御信号に基づいて昇降アクチュエータ44を駆動して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、所望の高さで作業機3により農作業を行うことができる。この制御により、作業機3を、退避高さ(農作業を行わない高さ)及び作業高さ(農作業を行う高さ)等の所望の高さで支持することができる。
【0031】
なお、上述した図略の複数のコントローラは、制御部4から入力される信号に基づいてエンジン10等の各部を制御していることから、制御部4が実質的に各部を制御していると把握することができる。
【0032】
上述のような制御部4を備えるトラクタ1は、ユーザがキャビン11内に搭乗して各種操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1の各部(走行機体2、作業機3等)を制御して、圃場内を走行しながら農作業を行うことができるように構成されている。また、トラクタ1は、ユーザがトラクタ1に搭乗している状態又は搭乗していない状態において、無線通信端末46により出力される所定の制御信号に基づいて自律走行及び自律作業をさせることが可能となっている。
【0033】
具体的には、
図4等に示すように、トラクタ1は、自律走行・自律作業を可能とするための各種の構成を備えている。例えば、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(走行機体2)の位置情報を取得するために必要な測位用アンテナ6等を備える。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場上を自律走行することが可能となっている。
【0034】
次に、自律走行を可能とするためにトラクタ1が備える構成について、より詳細に説明する。具体的には、本実施形態のトラクタ1は、
図4等に示すように、測位用アンテナ6、無線通信用アンテナ48、前方カメラ56、後方カメラ57、記憶部55、車速センサ53、及び舵角センサ52等を備える。また、これらに加えて、トラクタ1には、走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を特定することが可能な慣性計測ユニット(IMU)が備えられている。
【0035】
測位用アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。
図1に示すように、測位用アンテナ6は、トラクタ1のキャビン11のルーフ92の上面に取り付けられている。測位用アンテナ6で受信された測位信号は、
図4に示す位置検出部としての位置情報取得部49に入力される。位置情報取得部49は、トラクタ1の走行機体2(厳密には、測位用アンテナ6)の位置情報を、例えば緯度・経度情報として算出し、取得する。当該位置情報取得部49で取得された位置情報は、制御部4に入力されて、自律走行に利用される。
【0036】
なお、本実施形態ではGNSS-RTK法を利用した高精度の衛星測位システムが用いられているが、これに限るものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。例えば、相対測位方式(DGPS)、又は静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)を使用することが考えられる。
【0037】
無線通信用アンテナ48は、ユーザが操作する無線通信端末46からの信号を受信したり、無線通信端末46への信号を送信したりするものである。
図1に示すように、無線通信用アンテナ48は、トラクタ1のキャビン11が備えるルーフ92の上面に取り付けられている。無線通信用アンテナ48で受信した無線通信端末46からの信号は、
図4に示す無線通信部40で信号処理された後、制御部4に入力される。また、制御部4等から無線通信端末46に送信する信号は、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて無線通信端末46で受信される。
【0038】
前方カメラ56はトラクタ1の前方を撮影するものである。後方カメラ57はトラクタ1の後方を撮影するものである。前方カメラ56及び後方カメラ57はトラクタ1のルーフ92に取り付けられている。前方カメラ56及び後方カメラ57で撮影された動画データは、無線通信部40により、無線通信用アンテナ48から無線通信端末46に送信される。動画データを受信した無線通信端末46は、その内容をディスプレイ37に表示する。
【0039】
車速センサ53は、トラクタ1の車速を検出するものであり、例えば前輪7,7の間の車軸に設けられる。車速センサ53で得られた検出結果のデータは、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて無線通信端末46で受信されて、その内容がディスプレイ37に表示される。舵角センサ52は、前輪7,7の舵角を検出するセンサである。本実施形態において、舵角センサ52は前輪7,7に設けられた図示しないキングピンに備えられている。舵角センサ52で得られた検出結果のデータは、制御部4へ出力される。なお、舵角センサ52をステアリングハンドル12に備える構成としてもよい。
【0040】
記憶部55は、トラクタ1を自律走行させる走行経路や自律作業させる作業経路を記憶したり、自律走行中のトラクタ1(厳密には、測位用アンテナ6)の位置の推移(走行軌跡)を記憶したりするメモリである。その他にも、記憶部55は、トラクタ1を自律走行・自律作業させるために必要な様々な情報を記憶している。
【0041】
無線通信端末46は、
図3に示すように、タッチパネル39を備えるタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。ユーザは、無線通信端末46のディスプレイ37に表示された情報(例えば、前方カメラ56や、後方カメラ57や、車速センサ等からの情報)を参照して確認することができる。また、ユーザは、上記のタッチパネル39、又はディスプレイ37の近傍に配置されたハードウェアキー38等を操作して、トラクタ1の制御部4に、トラクタ1を制御するための制御信号(例えば、一時停止信号等)を送信することができる。なお、無線通信端末46はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、こえに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。
【0042】
このように構成されたトラクタ1は、無線通信端末46を用いるユーザの指示に基づいて、圃場上の走行経路Pに沿って走行しつつ、作業経路P1に沿って作業機3による農作業を行うことができる。
【0043】
具体的には、ユーザは、無線通信端末46を用いて各種設定を行うことにより、農作業を行う直線状又は折れ線状の作業経路P1と、当該作業経路P1の端同士を繋ぐ円弧状の旋回路(トラクタ1が旋回を行う非作業経路)P2と、を交互に繋いだ一連の経路としての走行経路(パス)Pを生成することができる(
図6を参照)。そして、このようにして生成した走行経路(作業経路P1及び非作業経路P2)Pの情報を、トラクタ1の制御部4に電気的に接続された記憶部55に入力(転送)して所定の操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1を制御して、当該トラクタ1を走行経路Pに沿って自律走行させながら、作業経路P1に沿って作業機3により自律作業させることができる。
【0044】
以下では、
図3から
図6までを参照して、無線通信端末46の構成についてより詳細に説明する。
図5は、無線通信端末46のディスプレイ37における監視画面100の表示例を示す図である。
図6は、無線通信端末が生成する自律走行経路の例を示す模式図である。
【0045】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の無線通信端末46は、ディスプレイ37、ハードウェアキー38、及びタッチパネル39の他、制御系の主要な構成として、表示制御部31、記憶部32、圃場取得部33、作業領域取得部34、及び走行経路取得部35等を備える。
【0046】
具体的には、無線通信端末46は上述のとおりコンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM等を備える。また、前記ROMには、トラクタ1に自律走行・自律作業を行わせるための適宜のプログラムが記憶されている。このソフトウェアとハードウェアの協働により、無線通信端末46を、表示制御部31、記憶部32、圃場取得部33、作業領域取得部34、走行経路取得部35等として動作させることができる。
【0047】
表示制御部31は、ディスプレイ37に表示する表示用データを作成し、表示内容を適宜に制御する。例えば、表示制御部31は、トラクタ1を走行経路Pに沿って自律走行させながら作業経路P1に沿って自律作業させている間は、
図5に示す監視画面100をディスプレイ37に表示させる。
【0048】
記憶部32は、ユーザが無線通信端末46のタッチパネル39を操作することにより入力したトラクタ1に関する情報や圃場に関する情報等を記憶するとともに、作成された走行経路P(作業経路P1及び非作業経路P2)の情報等を記憶するメモリである。
【0049】
圃場取得部33は、トラクタ1が自律走行・自律作業を行う対象となる圃場(走行領域)の位置及び形状を記憶する。圃場の位置及び形状は、例えばユーザがトラクタ1に搭乗して圃場の外周に沿って1回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ6の位置情報の推移を記録することで、取得することができる。圃場取得部33が取得した圃場の位置及び形状は、圃場情報として記憶部32に記憶される。
【0050】
作業領域取得部34は、トラクタ1が自律走行を行う対象の圃場内に配置される、農作業を行う作業領域の位置を設定するものである。具体的に説明すると、本実施形態の無線通信端末46においては、所定の操作をすることにより、枕地の幅と、非耕作地の幅と、を設定可能に構成されている。そして、枕地及び非耕作地からなる非作業領域が、上記の設定内容と、圃場取得部33で取得された圃場の位置及び形状と、に基づいて定められるとともに、圃場の領域から非作業領域を除いた領域が作業領域として定められる。
【0051】
走行経路取得部35は、圃場内においてトラクタ1が自律的に農作業を行う作業経路P1と、この作業経路P1の端同士を結ぶ非作業経路(旋回路)P2と、を交互に繋いだ走行経路Pを生成し、取得する。走行経路Pの生成に必要な情報をユーザがタッチパネル39等により入力すると、走行経路取得部35は、その情報に基づいて自動的に走行経路P(作業経路P1及び非作業経路P2)を作成する。この走行経路Pは、直線状又は折れ線状の作業経路P1が作業領域に含まれ、非作業経路(旋回路)P2が枕地等の非作業領域に含まれるように生成される。走行経路取得部35が生成した走行経路Pは、記憶部32に記憶される。
【0052】
ユーザは、無線通信端末46を適宜操作して、走行経路取得部35で生成された走行経路Pの情報をトラクタ1の記憶部55に入力(転送)する。その後、ユーザはトラクタ1に搭乗して運転することで、トラクタ1を走行経路Pの開始位置に配置する。続いて、ユーザがトラクタ1から降車して無線通信端末46を操作し、自律走行・自律作業の開始を指示する。これにより、トラクタ1が当該走行経路Pに沿って走行しながら作業経路P1に沿って農作業を行うように、制御部4がトラクタ1の走行及び農作業を制御する。
【0053】
自律走行・自律作業の開始に伴って、ディスプレイ37の表示画面は、
図5に示す監視画面100に切り換わる。
【0054】
監視画面100の左部には、前方カメラ56及び後方カメラ57から送信されてきたデータをそれぞれ動画データとして表示する前方カメラ表示部101及び後方カメラ表示部102が上下に配置される。監視画面100の右部には、トラクタ1の走行経路P及び現在位置等を図面等でグラフィカルに示す作業状態表示部103が配置される。前方カメラ表示部101の上方には、トラクタ1の現在の車速を表示する車速表示部106が設けられる。車速表示部106には、上述の車速センサから送信されてきたデータに基づいて取得された、トラクタ1の現在の車速が表示される。
【0055】
次に、自律走行時において前後進の切換時における舵角変更に関する制御について、
図7から
図9を参照して説明する。
図7は、前後進を切り換えて旋回するときの流れを説明する模式図である。
図8は、中立角度を基準角度とした場合の判定角度θを示す模式図である。
図9は、前後進の切換時における舵角変更に関する処理を示すフローチャートである。
【0056】
初めに、自律走行時において前後進を切り換える状況について説明する。例えば、作業経路P1同士の間隔が狭く、トラクタ1の前進のみによる旋回では、次の作業経路P1に到達できない場合、前後進を切り換えて旋回することが行われる。具体的に説明すると、初めに
図7の左端の図に示すように前進で次の作業経路P1側に略90°旋回させ(第1工程)、その後
図7の中央の図に示すように後進させ(第2工程)、その後
図7の右端の図に示すように目的の作業経路P1まで前進で旋回させる(第3工程)。なお、第1工程における旋回角度は略90°に限られない。
【0057】
ここで、旋回に掛かる時間を短縮するために、第1工程から第2工程に切り替える際の切換時間や、第2工程から第3工程に切り換える際の切換時間を短時間とすることが好ましい。しかしながら、第1工程が完了した段階では、
図8に示すように舵角が中立角度でない場合がある。また、第2工程では、舵角を中立角度にして後進することが想定されている。ここで、第1工程から第2工程への切換時(即ち前後進の切換時)において、トラクタ1を停止させて舵角を中立角度に戻す場合、第1工程から第2工程への切替時間(即ちトラクタ1の停止時間)が長くなってしまい、前後進の切換えがスムーズに行われない。
【0058】
この点、本実施形態では、
図9に示す制御を行うことにより、前後進の切換えをスムーズに行うことができる。以下、具体的に説明する。制御部4は、前後進の切換タイミングか否かを判定し(S101)、前後進の切換タイミングと判定した場合(例えば、第1工程と第2工程の間、第2工程と第3工程の間)、舵角(判定角度)が第1角度以下か否かを判定する(S102)。なお、本実施形態では、中立角度を基準角度として、中立角度に対する舵角を判定角度(
図9の判定処理等で用いる角度)としているため、舵角と判定角度は等しいが、後述の第1変形例に示すように、中立角度以外を基準角度としてもよい。また、第1角度は、例えば10°(左方向に10°、右方向に10°)である。
【0059】
制御部4は、舵角(判定角度)が第1角度以下であると判定した場合、トラクタ1を停止させると同時に前後進を切り換える(S103)。つまり、制御部4は、舵角(判定角度)が第1角度以下である場合は、トラクタ1の停止中に舵角を変更しない。その後、制御部4は、舵角と目標角度に差異がある場合は目標角度まで舵角を変更する(S104)。
【0060】
一方、制御部4は、舵角(判定角度)が第1角度より大きいと判定した場合、トラクタ1を停止させる(S105)。そして、制御部4は、トラクタ1の停止中において、舵角を第2角度に変更する(S106)。つまり、制御部4は、舵角(判定角度)が第1角度より大きい場合は、トラクタ1の停止中に舵角を変更する。ただし、トラクタ1の停止時間を短くするために、制御部4は、舵角を中立角度ではなく、判定角度が第2角度になるように舵角を変更する。第2角度は、第1角度より小さい値であり、例えば2°である。
【0061】
制御部4は、舵角を第2角度に変更した後に、前後進を切り換える(S106)。その後、制御部4は、目標角度まで舵角を変更する(S104)。
【0062】
このように、トラクタ1の停止中ではなく、前後進の切換後に舵角を変更することで、トラクタ1の停止時間を短くすることができるので、前後進の切換えをスムーズに行うことができる。つまり、本実施形態では、舵角が非中立角度以外であっても、前後進を切り換えることができる。更に、停止時の舵角が大きい場合は、トラクタ1の停止中にある程度(第2角度まで)舵角を変更することで、トラクタ1の停止時間を抑えつつ、前後進の切換後に大幅に舵角が変更されることを防止できる。前後進の切換後に大幅に舵角が変更されることを防止できることで、前後進の切換前後の揺れを小さくしたり、経路の逸脱量を低減できる。
【0063】
また、ステップS106において、舵角を中立角度に変更してもよいし、舵角を第1角度に変更してもよい。また、本実施形態では、ステップS102の処理は、トラクタ1の停止前に実行するが、トラクタ1の停止中に実行してもよい。この場合、ステップS103の1行目及びステップS105が不要となる。
【0064】
また、本実施形態のトラクタ1は、
図10に示すように、トラクタ1の前後方向の中央から外れた位置(前側の位置)に測位用アンテナ6が配置されている。従って、前進時はトラクタの前後方向の中央よりも進行方向側の位置を現在位置として利用するのに対し、後進時はトラクタの前後方向の中央よりも進行方向反対側の位置を現在位置として利用することとなる。従って、前進時と後進時とで自律走行の制御方法を異ならせなければならない可能性がある。
【0065】
これを考慮し、本実施形態では、後進時においてトラクタ1の現在位置の算出方法を異ならせる。つまり、
図10に示すように、後進時においてトラクタ1の中央を通る線を対称線として対称となる位置に測位用アンテナ6があるように、測位用アンテナ6の位置を仮想的に補正する。実際に行う処理としては、トラクタ1の前後方向の中央から測位用アンテナ6までの前後方向の距離Lを予め記憶しておき、後進時は、検出された現在位置から、トラクタ1の後方向に距離Lの2倍の長さオフセットさせた値を、現在位置として取り扱う。これにより、前進時と後進時とで自律走行の制御方法を同じにすることができる。
【0066】
図7で示した旋回方法では、第1工程の完了時においては舵角が中立角度でない可能性があるが、第2工程の完了時においては基本的には舵角は中立角度であると考えられる。つまり、第2工程と第3工程の間では、前後進の切換は行われるため
図9の処理は実行されるが、前後進の切換時の舵角変更は不要であるため行われない。従って、この旋回方向では、前進から後進に切り換える際に、中立角度でない状態で前後進が切り換えられる。これに対し、本実施形態の制御を用いることで、例えば
図11に示す旋回方法では、後進から前進に切り換える際に、中立角度でない状態で前後進を切り換えることができる。
【0067】
図11の旋回方法は、例えば障害物Aがあることにより、通常の旋回方法又は
図7の旋回方法を用いることができない場合に用いられる。具体的には、初めに
図11の左端の図に示すようにトラクタ1を前進させながら一方向(左方向)に旋回させる(第1工程)。その後
図11の左から2番目の図に示すように、トラクタ1を前進させながら他方向(右方向)に旋回させる(第2工程)。その後
図11の右から2番目の図に示すように後進させながら略90°旋回させ(第3工程)、その後
図11の右端の図に示すように次の作業経路P1まで前進で旋回させる(第4工程)。なお、第3工程における旋回角度は90°に限られない。第1工程と第2工程とではともにトラクタ1を前進させるが、第1工程と第2工程とでトラクタ1を旋回させる方向が異なるため、制御部4は、第1工程と第2工程の間においても、
図9と同様の処理を行う。即ち、制御部4は、舵角(判定角度)と第1角度との比較結果に基づいて、停止中に舵角を変更することなくトラクタ1を前進させるか、トラクタ1を停止させて舵角を変更するかを決定する。また、第3工程では旋回後にすぐに停止することが好ましいため、第3工程が完了した段階では、舵角が中立角度でない場合がある。従って、
図11の旋回方法を用いる場合、舵角が中立角度でない状態で、後進から前進に切り換えられることとなる。従って、制御部4は、第2工程と第3工程の間においても、
図9と同様の処理を行う。即ち、制御部4は、舵角(判定角度)と第1角度との比較結果に基づいて、トラクタ1を停止させると同時に(舵角を変更することなく)前進に切り換えるか、トラクタ1の停止中に舵角を変更するかを決定する。
【0068】
次に、上記実施形態の第1変形例を説明する。
図12は、目標角度を基準角度とした場合の判定角度θを示す模式図である。なお、第1変形例及び後述の第2変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0069】
上記実施形態では、基準角度が中立角度であるため、舵角と判定角度が同じであったが、第1変形例では、基準角度が中立角度以外の角度である。第1変形例の基準角度としては、例えば、前後進の切換後の舵角の目標角度を用いることができる。第1変形例で行われる、前後進の切換時における舵角変更に関する処理は、本実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0070】
次に、上記実施形態の第2変形例を説明する。
図13は、前後進の開始時における舵角変更に関する処理を示すフローチャートである。
【0071】
上記実施形態では、前後進の切換時の舵角変更に関する処理を説明したが、第2変形例の制御部4は、更に、前後進の開始時の舵角変更に関しても同様の処理を行う。
【0072】
以下、具体的に説明する。制御部4は、前後進の開始タイミングか否かを判定し(S201)、前後進の開始タイミングと判定した場合、舵角(判定角度)が第3角度以下か否かを判定する(S202)。第3角度は、自律走行による前後進の開始条件となっている舵角であり、第3角度より大きい舵角では前後進を開始することができない。第3角度は、第1角度よりも大きい値であるが、小さい値であってもよい。また、第3角度は例えば15°であるが、10°~20°の間の別の値であってもよい。
【0073】
制御部4は、舵角が第3角度以下であると判定した場合、舵角を変更することなく前後進を開始する(S203)。その後、制御部4は、舵角と目標角度に差異がある場合は目標角度まで舵角を変更する(S204)。
【0074】
一方、制御部4は、舵角が第3角度より大きいと判定した場合、前後進を開始せずに舵角を第2角度に変更する(S205)。制御部4は、舵角を第2角度に変更した後に、前後進を開始する(S206)。その後、制御部4は、目標角度まで舵角を変更する(S204)。
【0075】
上記実施形態と同様に、ステップS205において、舵角を中立角度に変更してもよいし、舵角を目標角度に変更してもよいし、舵角を第1角度に変更してもよい。また、第1変形例と同様に、第2変形例においても基準角度は中立角度以外であってもよい。
【0076】
以上に説明したように、本実施形態のトラクタ1は、車輪(前輪7及び後輪8)と、制御部4と、を備える。制御部4は、走行経路に沿って、後輪8の回転方向、及び、前輪7の切れ角である舵角を制御する。制御部4は、舵角が非中立角度である場合に、後輪8の回転方向を前進方向から後進方向、又は、後進方向から前進方向へ変更させることが可能である。
【0077】
これにより、舵角が非中立角度である場合においても前進から後進、又は、後進から前進に移行できるため、前後進をスムーズに切り換えることができる。
【0078】
また、本実施形態のトラクタ1では、制御部4は、基準角度に対する舵角である判定角度が第1角度以下である場合、後輪8の回転の停止中に舵角を変更することなく、後輪8の回転方向を前進方向から後進方向、又は、後進方向から前進方向へ変更させることが可能である。
【0079】
これにより、判定角度が所定の第1角度以下であれば前後進をスムーズに切り換えることができる。また、第1角度を閾値として設定することで、前後進の切換後に舵角が大幅に変更されることを防止できる。
【0080】
また、本実施形態のトラクタ1では、制御部4は、判定角度が第1角度を超える場合に、後輪8の回転を停止し、判定角度が第1角度又は第1角度よりも小さい第2角度になるように舵角を変更した後に、後輪8が前進方向に回転していた場合は後進方向へ変更し、後輪8が後進方向に回転していた場合は前進方向に変更させる。
【0081】
これにより、判定角度が大きい場合は、いったん停止した上で、舵角を変更し、前後進を切り換えるため、前後進の切換時の衝撃を小さくすることができる。
【0082】
また、本実施形態のトラクタ1では、第2角度は非中立角度である。
【0083】
これにより、中立角度に至らせることなく、前後進切換を行うので、迅速に前後進を切り換えることができる。
【0084】
また、本実施形態のトラクタ1では、制御部4は、後輪8の回転方向を前進方向から後進方向、又は、後進方向から前進方向へ変更させた後に、舵角と目標角度に差異がある場合は舵角を目標角度まで変更する。
【0085】
これにより、舵角と目標角度に差異がある場合においても、トラクタ1の前後進を切り換えた後に舵角を変更するため、前後進をスムーズに切り換えることができる。
【0086】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0087】
上記実施形態及び変形例では、停止中又は前後進の切換後の何れか一方で舵角を変更する処理を説明したが、前後進の切換直前と停止中にわたって舵角が変更される構成であってもよいし、停止中と前後進の切換直後にわたって舵角が変更される構成であってもよいし、前後進の切換直前から直後にわたって舵角が変更される構成であってもよい。
【0088】
上記実施形態及び変形例では、舵角変更の制御対象の車輪が前輪7であり、回転方向の制御対象の車輪が後輪8であるため、2つの制御で制御対象の車輪が異なるが、同じであってもよい。例えば、前輪駆動又は四輪駆動の場合、2つの制御で制御対象の車輪が同じとなる。また、舵角変更の制御対象の車輪が前輪7及び後輪8の両方であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 トラクタ(作業車両)
4 制御部
7 前輪(車輪)