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特許7155352熱硬化性樹脂組成物、難燃性樹脂組成物、液状パッケージ材料およびその使用ならびにフィルムおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、難燃性樹脂組成物、液状パッケージ材料およびその使用ならびにフィルムおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/34 20060101AFI20221011BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20221011BHJP
   C08G 14/12 20060101ALI20221011BHJP
   C08K 5/5397 20060101ALI20221011BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20221011BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221011BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221011BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C08L61/34
C08L79/00 B
C08G14/12
C08K5/5397
C08K5/3415
H05K1/03 610H
H01L23/30 R
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021105305
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2021152182
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】110109137
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517239348
【氏名又は名称】晉一化工股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHIN YEE CHEMICAL INDUSTRIES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】郭 碧濤
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/189467(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054218(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/078300(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0208765(US,A1)
【文献】国際公開第2017/002319(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/045408(WO,A1)
【文献】特表2018-531317(JP,A)
【文献】国際公開第2007/018110(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0269641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 4/00- 16/06
H01L23/28- 23/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物であって、前記組成物は、少なくとも、
(a)ベンゾオキサジン樹脂であって、
【化1】
からなる群から選択される少なくとも1つを備える、ベンゾオキサジン樹脂と、
(b)式(1)で示される化学構造を有するビスマレイミドと、
【化2】
を含有し、
ここで、Rは
【化3】
であり、*は結合位置であり、nは0~3から選択される整数であり、ベンゾオキサジン樹脂:ビスマレイミドの当量比は0.1~0.5:1.0である、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の前記熱硬化性樹脂組成物を構成要素として含有する、液状パッケージ材料。
【請求項3】
請求項1に記載の前記熱硬化性樹脂組成物を構成要素として含有するフィルム。
【請求項4】
半導体パッケージを製造するための、請求項2に記載の前記液状パッケージ材料の使用。
【請求項5】
半導体パッケージまたは層間絶縁膜の製造のための、請求項3に記載の前記フィルムの使用。
【請求項6】
難燃性樹脂組成物であって、少なくとも、
(a)ベンゾオキサジン樹脂であって、
【化4】
からなる群から選択される少なくとも1つを備える、ベンゾオキサジン樹脂と、
(b)式(1)で示される化学構造を有するビスマレイミドと、
【化5】
(c)式(2)で示される化学構造を有する、難燃剤と、
【化6】
を含有し、
ここで、Rは
【化7】
であり、*は結合位置であり、nは0~3から選択される整数であり、ベンゾオキサジン樹脂:ビスマレイミドの当量比は0.1~0.5:1.0である、
難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の前記難燃性樹脂組成物を構成要素として含有する、液状パッケージ材料。
【請求項8】
請求項6に記載の前記難燃性樹脂組成物を構成要素として含有する、フィルム。
【請求項9】
半導体パッケージを製造するための、請求項7に記載の前記液状パッケージ材料の使用。
【請求項10】
半導体パッケージまたは層間絶縁膜の製造のための、請求項8に記載の前記フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物を開示し、この組成物は、(a)ベンゾオキサジン樹脂と、(b)ビスマレイミドと、を少なくとも含有する。本開示は、難燃性樹脂組成物を開示しており、この組成物は、(a)ベンゾオキサジン樹脂と、(b)ビスマレイミドと、(c)難燃剤と、を少なくとも含有する。本発明の熱硬化性樹脂組成物および難燃性樹脂組成物は、半導体液状パッケージ材料および層間絶縁膜の構成要素として用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
5G通信時代の始まりとともに、半導体関連材料の急速な革新により、従来のSiに代わる次世代のパワー半導体として、SiCおよびGaNのワイドバンドギャップ半導体が開発されている。半導体パッケージにおいては、配線の長さを短くするために、構成部品を短い距離で接続するFOWLP(Fan-Out Wafer Level Packaging、ファンアウト型ウエハーレベルパッケージ)などの次世代パッケージの開発および適用が活発に行われている。低誘電率特性を有するパッケージ材料および再配線材料の開発が進行している。FOWLPは集積回路(IC)キャリアボードを必要としないため、半導体パッケージ全体をより薄くする。そのため、米国のアップル社はFOWLP技術をiPhone7に採用した。
【0003】
近年、自動車に使用される電子モジュールが注目を集めている。たとえば、電気自動車、自動運転、自動車の電子技術の急速な発展もまた、半導体産業の継続的な成長を促進している。自動車用電子モジュールには、電子制御ユニット(ECU)、電力制御ユニットおよび先進運転支援システム(ADAS)が含まれる。
【0004】
ADASシステムは自動運転の重要な基盤であり、その中で最も重要なのは、さまざまなセンサーを使用して車両内外のデータを収集することである。センサーには、ミリ波レーダー、超音波レーダー、赤外線レーダー、レーザーレーダー、CCD/CMOSイメージセンサー、ホイールスピードセンサーが含まれる。具体的には、ミリ波レーダーはADASの重要な構成部品である。高周波領域で注目を集めているFOWLPの用途には、ミリ波レーダーおよびアンテナパッケージなどが含まれる。
【0005】
ミリ波レーダーには、24GHzおよび77GHz/79GHzの、2つの頻繁に使用される周波数帯域がある。24GHzセンサーレーダーは、主に、死角検出、歩行者検出、駐車支援などの短距離および中距離検出用途で使用される。一方、77GHz/79 GHzセンサーレーダーはより長い検出範囲を有するため、クルーズコントロールおよび衝突警告に使用され得る。これらのセンサーレーダーは、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)の形で採用されている。ミリ波レーダーのMMICパッケージの場合、液状パッケージ材料の誘電損失(Df)が増加するにつれ、信号波形が不活性化される。したがって、液状パッケージ材料の誘電損失(Df)は、信号伝送損失の主な原因であり、自動運転の安全性の鍵である。ミリ波レーダーに使用される半導体液状パッケージ材料には、これまでにない高い特性と高い信頼性が求められる。特に信号が出入りするフィードスルー部の気密封止の場合、ミリ波場で特性の良い気密封止を製造することは容易ではない。
【0006】
チップと基板との間で、リードおよびテープ自動ボンディング(TAB)法によって回路が接続され、チップ表面および接合部は液状パッケージ材料でコーティングされている。フリップチップを接続すると、チップと基板との隙間に液状封止が施される。接合部を保護および補強するための液状パッケージ材料をアンダーフィル材料と呼ぶ。高速・高周波通信分野では、金属接合部で信号を伝送する場合、金属絶縁に使用される液状パッケージ材料の誘電損失が信号伝送損失に与える影響を考慮する必要がある。
【0007】
特許文献1~4では、従来の液状パッケージ材料は、主材料としてエポキシ樹脂と硬化剤とを採用している。欠点は、エポキシ樹脂が硬化した後、水を吸収するヒドロキシル基(OH基)が生成し、誘電損失が著しく増大するため、高速・高周波通信分野には不向きであることである。
【0008】
特許文献5は、ベンゾオキサジン樹脂およびシアネートエステル樹脂を主成分として採用し、硬化促進を加えない場合の上記材料の硬化温度は約280~300°Cである。加えて、シアン酸エステル樹脂硬化物は吸水率が高いため、誘電性Dk=3.6およびDf=0.009もまた高くなり、これは高度な半導体パッケージには不適である。
【0009】
特許文献6の脂肪族骨格ベンゾオキサジン樹脂の硬化温度は約250~270°Cであり、特許文献7の脂肪族骨格ビスマレイミドの硬化温度は約290~300°Cであり、これは半導体パッケージの信頼性には有利ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2020-122161号公報(JP2020122161A)
【文献】国際公開第2019-138919号(JPWO2019138919A1)
【文献】国際公開第2018-198992号(JPWO2018198992A1)
【文献】特開2018-135429号公報(JP2018135429A)
【文献】特許4570419号公報(JP4570419B)
【文献】台湾特許第471358号明細書(TWI471358B)
【文献】台湾特許第429639号明細書(TWI429639)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示が解決しようとする課題は、現在の半導体用液状パッケージ材料は、信頼性や熱膨張の要因のために、未だに液状エポキシ樹脂が主流であることである。しかしながら、エポキシ樹脂は硬化後に吸水性のあるOH基を生成する。このような極性基の存在は、材料の比誘電率および誘電損失を増加させ、高周波部品のパッケージには不適である。加えて、このエポキシ樹脂は、吸水性のため、ミリ波レーダーセンサーの用途には不適である。特に、人や車両の安全性へ高い要求を有する車載用ミリ波レーダーセンサーの場合、液状パッケージ材料に占める無機充填剤の割合が約50%以下であるため、多量の充填剤で難燃性を実現することは困難である。このような液状パッケージ材料では、難燃性と低誘電性との両方を両立させることは困難である。今後の高周波部品の消費電力は増加を続け、部品の内部熱もまた増加する。液状パッケージ材料の耐熱性および難燃性の問題をいかに解決するかが注目されている。パッケージ材料の薄化の点では、低Tgおよび低弾性率設計を通じて反りを抑制することは可能であるが、封止材料の厚さを削減した後の硬化樹脂の靭性をいかに向上させるかも解決すべき課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題に鑑み、課題を解決するための本開示の技術的手段は、新しいタイプの液状パッケージ材料を提供することであり、本材料はベンゾオキサジン変性ビスマレイミド耐熱性樹脂を主材料とし、低誘電性、低Tg、低弾性率、高耐熱性、高靭性およびその他の特性を有し、それにより高周波領域の半導体パッケージ材料として採用するのに適している。
【0013】
本開示の一実施形態は、熱硬化性樹脂組成物を提供する。この組成物は、
(a)ベンゾオキサジン樹脂であって、
【化1】
からなる群から選択される少なくとも1つを含む、ベンゾオキサジン樹脂と、
(b)ビスマレイミドであって、その化学構造は式(1)に示される、
【化2】
ビスマレイミドと、
を少なくとも含有し、
ここで、Rは脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素基であり、nは0~3から選択される整数であり、ベンゾオキサジン樹脂:ビスマレイミドの当量比は0.1~0.5:1.0である。
【0014】
本開示の別の実施形態では、難燃性樹脂組成物を提供する。この組成物は、
(a)ベンゾオキサジン樹脂であって、
【化3】
からなる群から選択される少なくとも1つを含む、ベンゾオキサジン樹脂と、
(b)ビスマレイミドであって、その化学構造は式(1)に示される、
【化4】

ビスマレイミドと、
(c)難燃剤であって、その化学構造は式(2)に示される、
【化5】

難燃剤と、
を少なくとも含有し、
ここで、Rは脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素基であり、nは0~3から選択される整数であり、ベンゾオキサジン樹脂:ビスマレイミドの当量比は0.1~0.5:1.0である。
【0015】
本開示では、熱硬化性樹脂組成物のベンゾオキサジン変性ビスマレイミドを開示している。これは、長鎖脂肪族骨格含有ベンゾオキサジンと長鎖脂肪族骨格含有ビスマレイミドとの当量比が0.3:1の混合物であり、また、低温反応挙動をも有する。さらに、ベンゾオキサジン変性ビスマレイミドは、長鎖脂肪族骨格含有ベンゾオキサジンおよび長鎖脂肪族骨格含有ビスマレイミドよりも良好な誘電特性、耐熱性、機械的特性を有することを決定するための基盤として、0.3:1の当量比を採用している。
【0016】
車載用電子モジュールは、しばしば高温・高湿などの過酷な環境にさらされる。そのため、自動車の電子モジュールでは、半導体パッケージ材料の絶縁ポリマーは低誘電性や耐熱性を有することが求められている。また、パッケージ材料に添加する難燃剤の誘電特性や耐熱特性をも考慮しなければならない。BPOリン系難燃剤(上記(c)難燃剤)は、高熱分解温度Td3=359°C、高融点mp=336°C、高屈折率n=1.700などの特徴があり、通常のリン系難燃剤に比べて分子の結晶化度が高くなっている。BPOリン系難燃剤の結晶性は分子の動きを抑制するため、誘電損失を低減することが可能である。BPOリン系難燃剤をベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂にそれぞれ添加することによって、誘電特性、耐熱性、機械的特性を向上させ得る。
【0017】
従来技術の有効性とは対照的に、本開示では、熱硬化性樹脂組成物中のベンゾオキサジン変性ビスマレイミドが開示されており、このベンゾオキサジン変性ビスマレイミドは、従来のエポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミドよりも優れた低誘電特性を有している。
【発明の効果】
【0018】
本開示のベンゾオキサジン変性ビスマレイミドでは、ベンゾオキサジンまたはビスマレイミドに長鎖脂肪族が導入されると、粘度が低下し、靭性が向上する。極性イミン基が希釈されているため、比誘電率および誘電損失は効果的に低減され得る。ビスマレイミドがベンゾオキサジンのフェノール性水酸基と反応してエーテル結合を形成し、これによりベンゾオキサジンのフェノール性水酸基が除去および還元され得る。その一方で、架橋およびブリッジの機能もまた果たされ得、物理的特性を改善し、比誘電率および誘電損失が低減され得る。加えて、ベンゾオキサジン変性ビスマレイミドの硬化温度はまた、ベンゾオキサジンおよびビスマレイミドの硬化温度よりも低くなっている。液状のベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂は、低誘電率特性、高耐熱性、高靭性、低貯蔵弾性率およびその他の特性を獲得し得る。BPOリン系難燃剤を添加することにより、さらに誘電損失の低減、耐熱性の向上、難燃性の実現が可能となる。加えて、環境適合性を考慮して、バイオマス原料やリン系難燃剤が採用される。これらは液状パッケージ材料や高速・高周波通信分野の層間絶縁膜としての応用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の第1の実施形態によるベンゾオキサジンおよびビスマレイミドの硬化物の示差走査熱量測定(DSC)分析図である。
図2】本開示の第2の実施形態による、ベンゾオキサジンおよびビスマレイミドの硬化物のDSC分析図である。
図3図3は、本開示の第3の実施形態による、ベンゾオキサジンおよびビスマレイミドの硬化物のDSC分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の実施形態は、熱硬化性樹脂組成物を提供し、この組成物は、
(a)ベンゾオキサジン樹脂であって、
【化6】
(以下、「TPda」と呼ぶ)、
【化7】
(以下、「APda」と呼ぶ)、
【化8】
(以下、「CPda」と呼ぶ)、
からなる群から選択される少なくとも1つを含む、ベンゾオキサジン樹脂と、
(b)ビスマレイミドであって、その化学構造が式(1)に示される、
【化9】
(以下、「B36」と呼ぶ)
ビスマレイミドと、
を少なくとも含有する。
ここで、Rは脂肪族側鎖を有する36の炭素数を有する(以下、「C36」と呼ぶ)二価炭化水素基であり、nは0~3から選択される整数であり、ベンゾオキサジン樹脂:ビスマレイミドの当量比は0.1~0.5:1.0である。
【0021】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物を提供し、ここで、Rは脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素基であり、ベンゾオキサジン樹脂およびビスマレイミドに用いられる脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素ジアミン(略称:C36DA)は、C18不飽和脂肪族酸を含有する植物由来二量体を還元的アミノ化して得られる製品である。脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素ジアミンの既知の構造は、
【化10】

などを含む。
【0022】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物を提供し、使用されるフェノール類は、ブチルフェノール、アリルフェノール、カルダノール、C1~C18ヒドロカルビルフェノール、またはそれらの組み合わせであり、その中で、植物由来のカルダノール(cardanol)は、主に3種類のフェノール類から構成されており、それらの化学構造および組成比は以下の通りである。
【化11】
【0023】
本開示は、ビスマレイミド樹脂をベンゾオキサジンで修飾した熱硬化性樹脂組成物を提供する。一般的に、ベンゾオキサジン反応の熱開環重合によって生じたヒドロキシル基が二重結合と反応してエーテル構造を形成すると、ベンゾオキサジンの熱開環反応によってフェノキシアニオンおよびイミンカチオンのイオンペアが形成される。具体的には、フェノキシアニオンは強い求核性を有し、フェノキシアニオンはまた電子欠乏二重結合をも攻撃し得、ベンゾオキサジンとビスマレイミドとの反応において、以下の開環・アニオン重合に示されるような、触媒的な役割を果たし得る。
【0024】
(ポリベンゾオキサジンとビスマレイミドの二重結合の反応)
【化12】

(ビスマレイミドの二重結合と求核性成分との反応(ビスマレイミドのアニオン性重合))
【化13】
【0025】
本開示は、ビスマレイミド樹脂をベンゾオキサジンで修飾した熱硬化性樹脂組成物を提供する。図1は、本開示の第1の実施形態によるベンゾオキサジンおよびビスマレイミドの硬化物の示差走査熱量測定(DSC)分析図である(後述の実施例6に対応)。図1では、ビスマレイミドB36の曲線を破線で、ベンゾオキサジンTPdaの曲線を実線で示している。ビスマレイミドB36とベンゾオキサジンTPdaとの当量比が1.0:0.3のとき、曲線は点鎖破線である。加えて、図1では、熱硬化プロセス中にベンゾオキサジンTPdaとビスマレイミドB36とが互いに触媒作用を及ぼすため、ビスマレイミドB36とベンゾオキサジンTPdaとの当量比が=1.0:0.3のとき、元来のビスマレイミドB36の発熱ピーク293.22°CおよびベンゾオキサジンTPdaの発熱ピーク274.08°Cが消失し、低温で新たな発熱ピーク228.81°Cが発生する。
【0026】
図2は、本開示の第2の実施形態によるベンゾオキサジンおよびビスマレイミドの硬化物のDSC分析図である(後述の実施例9に対応)。図2では、ビスマレイミドB36の曲線は点鎖破線、ベンゾオキサジンCPdaの曲線は破線、ビスマレイミドB36とベンゾオキサジンCPdaとの当量比=1.0:0.3の時の曲線は実線である。加えて、図2では、第1の実施形態と同様の理由で、ビスマレイミドB36とベンゾオキサジンCPdaとの当量比が=1.0:0.3の場合、ビスマレイミドB36の元来の発熱ピーク293.22°CとベンゾオキサジンCPdaの発熱ピーク262.10°Cが消失し、低温で新たな発熱ピーク218.48°Cが発生する。
【0027】
図3は、本開示の第3の実施形態によるベンゾオキサジンおよびビスマレイミドの硬化物のDSC分析図である(後述の実施例12に対応)。図3では、ビスマレイミドB36の曲線は破線、ベンゾオキサジンAPdaの曲線は点鎖破線であり、ビスマレイミドB36とベンゾオキサジンAPdaとの当量比が1.0:0.3のときの曲線は実線である。加えて、図3では、第1の実施形態と同様の理由で、ビスマレイミドB36とベンゾオキサジンAPdaとの当量比=1.0:0.3であるとき、ビスマレイミドB36の元来の発熱ピーク293°CおよびベンゾオキサジンAPdaの発熱ピーク270°C/187°Cが消失し、新たな発熱ピーク210°C/162°Cが低温で発生する。図3から、約210°Cで、ベンゾオキサジンとビスマレイミドとが完全に相互作用していることがわかる。162.59°Cでは、アリルおよびビスマレイミドがエン反応で結合しており、低温での硬化は半導体パッケージの信頼性向上に有利である。さらに、ビスマレイミドB36とベンゾオキサジンApdaとの混合物は、2段階の硬化性能を有している。すなわちこれは、162.59°Cで硬化させるとBステージの事前硬化であり、210.90°Cで硬化させるとCステージの完全硬化である。このようにして、フィルム製造工程での糊付け性を低下させ得、ラミネート時のコーキング性を向上させ得る。2段階の硬化特性は、層間絶縁膜の製造に非常に適している。
【0028】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物を提供する。これは、ベンゾオキサジンおよびビスマレイミドを合成する原料として、脂肪族側鎖を有する植物由来のC36二価炭化水素ジアミンを用いてベンゾオキサジンで修飾したビスマレイミド樹脂である。液状のTPda、CPda、APda、B36樹脂が得られ得、流動性を必要とする液状パッケージ材料に適用され得る。ベンゾオキサジンおよびビスマレイミドをブレンドして、ベンゾオキサジン変性ビスマレイミドの硬化物が得られる。エーテル結合により強度および靭性が強化されるため、共硬化物を強度と靭性のあるものにすることが可能であり、共硬化物は強度と靭性を必要とする薄層パッケージ材料に適用するのに適している。
【0029】
本開示は、ベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂である熱硬化性樹脂組成物を提供し、これはベンゾオキサジンおよびビスマレイミドを合成する原料として、脂肪族側鎖を有する植物由来のC36二価炭化水素ジアミンを用いる。脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素ジアミンは分子量が大きいため、極性の低いC36脂肪族鎖が極性イミニウム基の濃度を希釈し得る。加えて、ベンゾオキサジンの開環後にフェノール基とビスマレイミドとがエーテル結合することで、吸水性が大幅に低下するため、誘電損失を低減し得る。加えて、樹脂にアミド基を導入することで、C36脂肪族鎖の耐熱性が不十分であるという欠点を解決し得る。Tgと弾性率の観点で、C36脂肪族鎖の導入により、チップと基板との間の熱膨張率の不一致に起因する反りを大幅に低減し得る。このように、低Tg、低弾性率の設計により、ベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂の内部応力が緩和され得、反り現象を抑制し得る。
【0030】
本開示は、(a)ベンゾオキサジン樹脂および(b)ビスマレイミドを少なくとも含有する熱硬化性樹脂組成物を提供し、ここで、ベンゾオキサジン樹脂:ビスマレイミド(当量比)=0.1~0.5:1.0であり、好ましくはベンゾオキサジン樹脂:ビスマレイミド(当量比)=0.15~0.4:1.0、より好ましくはベンゾオキサジン樹脂:ビスマレイミド(当量比)=0.25~0.3:1.0である。
【0031】
本開示は、ベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂である熱硬化性樹脂組成物を提供する。ビスマレイミドの熱的フリーラジカル重合に加えて、その求核攻撃はアニオン重合を起こし得、これは反応性の向上に役立っている。ビスマレイミドとベンゾオキサジンとの相互作用により、ビスマレイミドの硬化性が向上する。この系は、高耐熱性および低誘電性などの優れた物理的・化学的特性を有する。
【0032】
本開示の別の実施形態では、難燃性樹脂組成物を提供し、この組成物は、
(a)ベンゾオキサジン樹脂であって、
【化14】

からなる群から選択される少なくとも1つを含む、ベンゾオキサジン樹脂、
(b)その化学構造が式(1)に示される、ビスマレイミド、
【化15】

および
(c)その化学構造が式(2)に示される、難燃剤、
【化16】
(パラキシリレンビスジフェニルホスフィンオキシド(BPO))
を少なくとも含有する。
ここで、Rは脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素基であり、nは0~3から選択される整数であり、ベンゾオキサジン樹脂:ビスマレイミドの当量比は0.1~0.5:1.0である、
【0033】
本開示は、自動車用電子モジュールで使用され得る難燃性樹脂組成物を提供する。自動車用電子モジュールは、高温多湿などの過酷な環境に長時間さらされなければならない。自動車用電子モジュールの半導体パッケージ材料として使用される絶縁ポリマーは、低い誘電性と高い耐熱性を有する必要がある。同様に、パッケージ材料に添加される難燃剤も、低誘電性と高耐熱特性とを有する必要がある。
【0034】
本開示は、難燃性樹脂組成物を提供し、ここでBPO難燃剤(すなわち、式(2)によって表される化合物)は高い熱分解温度Td3=359°C、融点mp=336°Cおよび屈折率n=1.700を有する。BPO難燃剤の分子の結晶化度は、通常のリン難燃剤の結晶化度よりも高い。BPO難燃剤の結晶化度は分子の動きを阻害するため、誘電損失を低減することが可能である。BPO難燃剤がベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂に添加され、BPO分子構造が高い対称性を有し、分子の双極子モーメントが小さいため、比誘電率および誘電損失の上昇を抑制することが可能であり、それにより機械的特性を向上させる。
【0035】
本開示は、難燃性樹脂組成物を提供し、ここでBPO難燃剤の粒子サイズは10nm~5μm、好ましくは100nm~1μmである。BPO難燃剤をベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂に添加すると、BPO難燃剤を多く添加するほど、樹脂の硬化物の熱膨張が小さくなる。粒子サイズが大きいほど、樹脂の硬化生成物の熱膨張は小さくなる。
【0036】
本開示は、ベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂である、難燃性樹脂組成物を提供し、ベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂にBPO難燃剤を添加することで、硬化樹脂に難燃性を付与し、硬化樹脂の耐熱性を向上させ、誘電正接や熱膨張係数を低減させる。その一方で、難燃性および低誘電性は維持され得るため、本開示の難燃性樹脂組成物は、高周波通信分野の液状パッケージ材料として使用するのに適している。
【0037】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物または難燃性樹脂組成物を構成要素として含有する液状パッケージ材料を提供する。本開示は、熱硬化性樹脂組成物または難燃性樹脂組成物を構成要素として含有するフィルムを提供する。本開示は、半導体パッケージの製造に使用される、液状パッケージ材料を提供する。本開示は、半導体パッケージおよび層間絶縁膜の製造に用いられるフィルムを提供する。
【0038】
以下、実施例を参照しながら、本開示の内容を詳細に説明する。以下の例は、開示を説明するために提供され、開示の範囲は、特許請求の範囲およびそれらの置換および修正に記載される範囲を含み、実施例の範囲に限定されない。
【実施例
【0039】
(実施例1)
脂肪族側鎖を有する0.10molのC36二価炭化水素ジアミン(略称:C36DA、商品名:Priamine 1074、クローダジャパン株式会社製、アミン価:205)、トルエン150g、イソブタノール100gを、撹拌機、コンデンサー、蒸留受器、窒素管、等圧滴下漏斗を備えた4つ口反応フラスコに加えた。0.40molの37%ホルムアルデヒドを反応フラスコに滴下し、温度を20~30°Cに制御して、5時間反応を続けた。その後、0.20molのp-tert-ブチルフェノール(PTBP)を加え、90~120°Cに加熱して、生成水を共沸除去した後、減圧下で蒸留して溶媒を除去し、ベンゾオキサジンTPdaを得た。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)の結果、C36DAの残存量は0.030%であり、PTBPの残存量は0.022%以下であった。
【化17】

Rは、脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素基である。
【0040】
(実施例2)
0.10molのC36DA(Priamine 1074、クローダ社製、アミン価205)、200gのトルエン、100gのイソブタノールを、撹拌機、コンデンサー、蒸留受器、窒素管、等圧滴下漏斗を備えた4つ口の反応フラスコに添加した。反応フラスコに0.40molの37%ホルムアルデヒドを滴下し、温度20~30°Cで5時間反応させた後、0.20molのカルダノール(商品名:NX-2026、カードライト社製、純度99.2%、「CP」と略す)を加え、温度を90~120°Cに加熱して、生成水を共沸除去した後、減圧下で蒸留して溶媒を除去し、ベンゾオキサジンCPdaを得た。HPLCで分析した結果、C36DAの残存量は0.026%、CPの残存量は0.020%以下であった。
【化18】

ここで、Rは脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素基であり、nは0~3から選択される整数である。
【0041】
(実施例3)
0.10molのC36DA(Priamine 1074、クローダ社製、アミン価205)、150gのトルエン、100gのイソブタノールを、撹拌機、コンデンサー、蒸留受器、窒素管、等圧滴下漏斗を備えた4つ口の反応フラスコに添加した。0.40molの37%ホルムアルデヒドを反応フラスコに滴下し、温度を20~30°Cに制御し、5時間反応を続けた。0.20molのアリルフェノール(シグマアルドリッチ製、純度99.%、「AP」と略す)を加え、温度を90~120°Cに加熱して、生成水を共沸除去した後、減圧下で蒸留して溶媒を除去し、ベンゾオキサジンAPdaを得た。HPLCで分析した結果、C36DAの残存量は0.030%で、APの残存量は0.022%以下であった。
【化19】

Rは、脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素基である。
【0042】
(実施例4)
0.2モルの無水マレイン酸、150gのキシレン、30gのジメチルホルムアミド、0.06gの硫酸銅、0.3gのp-メトキシフェノールを、撹拌機、コンデンサー、蒸留受器、窒素管、等圧滴下漏斗を備えた4つ口の反応フラスコに加えた。氷浴を行い、反応温度を5~10°Cに下げる。0.099molのC36DAを少量ずつ数回に分けて加え、1時間反応を続けた後、1gの硫酸を加え、120~150°Cに加熱し、還流させて水を共沸除去した。室温まで冷却し、下部の触媒層を分離・除去してビスマレイミド溶液を得た。ビスマレイミド溶液を水で2回洗浄してジメチルホルムアミドを除去した後、1%炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、蒸留水で3回洗浄した後、100°Cで減圧下に蒸留して溶媒を除去し、ビスマレイミドB36を得た。収率は80%、HPLC分析による純度は99.5%であった。
【化20】

Rは、脂肪族側鎖を有するC36二価炭化水素基である。
【0043】
(実施例5~13)
表1によれば、実施例5~13は、ベンゾオキサジン樹脂(実施例1のベンゾオキサジンTPda、実施例2のベンゾオキサジンCPda、実施例3のベンゾオキサジンApda)とビスマレイミドB36(実施例4のB36)との下記の当量比に基づいて行った。
TPda:B36=0.15:1.0 (実施例5)
TPda:B36=0.30:1.0 (実施例6)
TPda:B36=0.50:1.0 (実施例7)
CPda:B36=0.15:1.0 (実施例8)
CPda:B36=0.30:1.0 (実施例9)
CPda:B36=0.50:1.0 (実施例10)
APda:B36=0.15:1.0 (実施例11)
APda:B36=0.30:1.0 (実施例12)
APda:B36=0.50:1.0 (実施例13)
上記実施例を均一に混合した後、接着剤溶液を製造し、170°Cで2時間乾燥し、200°Cで2時間乾燥し、最後に220°Cで2時間焼成して、膜厚1.0mmの硬化物を形成した。その後、硬化物の比誘電率(Dk)および誘電損失(Df)を測定した。また、実施例7、実施例10、実施例12の硬化物の、ガラス転移温度、弾性率(elastic modulus)(「elasticity modulus」とも呼ばれる)、熱分解温度、ひずみ、最大応力、靭性、吸水率を測定した。詳細な測定結果は表1および表2を参照されたい。
【0044】
(比較例1)
30gのビスマレイミド(実施例4のB36)と0.05gの過酸化ジクミルを均一に混合して接着剤溶液を作製し、180°Cで2時間乾燥した後、210°Cで2時間乾燥し、最後に220°Cで2時間焼成して膜厚1.0mmの硬化物を作製した。その後、硬化物の比誘電率(Dk)、誘電損失(Df)、ガラス転移温度、弾性率、熱分解温度、ひずみ、最大応力、靭性、吸水率を測定した。詳細な測定結果は表1および表2を参照されたい。
【0045】
(比較例2~4)
表1によれば、比較例2~4は、ベンゾオキサジン樹脂の接着剤溶液(実施例1ではTPda、実施例2ではCPda、実施例3ではApda)であり、これらを180°Cで2時間乾燥させた後、210°Cで2時間乾燥させ、最後に250°Cで2時間焼成して、膜厚1.0mmの硬化物を生成した。その後、硬化物の比誘電率(Dk)、誘電損失(Df)、ガラス転移温度、弾性率、熱分解温度、ひずみ、最大応力、靭性、吸水率を測定した。詳細な測定結果は表1および表2を参照されたい。
【0046】
(比較例5)
19.0gのビスフェノールエポキシ樹脂(「R139」と呼ばれる、エポキシ当量=190)、16.6gのメチルテトラヒドロフタル酸無水物、0.2gのトリフェニルリンを均一に混合して接着剤溶液を作製し、これを120°Cで1時間乾燥した後、160°Cで1時間乾燥し、最後に200°Cで2時間焼成して膜厚1.0mmの硬化物を生成した。その後、硬化物の比誘電率(Dk)、誘電損失(Df)、ガラス転移温度、弾性率、熱分解温度、ひずみ、最大応力、靭性、吸水率を測定した。詳細な測定結果は表1および表2を参照されたい。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
(実施例14~16)
表3によれば、B36-TPda(すなわち、実施例6のTPda:B36=0.30:1.0(当量比))の均一な接着剤溶液と、p-キシリルビスジフェニルホスフィンオキシド(難燃剤として「BPO」と略記、Jinyi Chemical Co., Ltd.製、純度99.8%)と、の以下の重量比に基づいて、実施例14~16を行った。
B36-TPda:DPB=100:20 (実施例14)
B36-TPda:DPB=100:30 (実施例15)
B36-TPda:DPB=100:50 (実施例16)
実施例14~16を均一に混合した後、接着剤溶液を製造、これを170°Cで2時間乾燥させ、200°Cで2時間乾燥させ、最後に220°Cで2時間焼成して、膜厚1.0mmの硬化物を形成した。その後、硬化物の比誘電率(Dk)、誘電損失(Df)、ガラス転移温度、弾性率、熱分解温度、熱膨張係数(CTE)、難燃性(UL-94)を測定した。詳細な測定結果は表3を参照されたい。
【0050】
(実施例17~19)
表3によれば、実施例17~19は、B36-CPda(すなわち、実施例9のCPda:B36=0.30:1.0(当量比))の均一な接着剤溶液とBPO難燃剤との以下の重量比に基づいて行った。
B36-CPda:DPB=100:20(実施例17)
B36-CPda:DPB=100:30(実施例18)
B36-CPda:DPB=100:50(実施例19)
上記実施例を均一に混合した後、接着剤溶液を製造し、120°Cで1時間乾燥し、150°Cで1時間乾燥し、180°Cで1時間乾燥し、最後に220°Cで1時間焼成して、膜厚1.0mmの硬化物を形成した。その後、硬化物の比誘電率(Dk)、誘電損失(Df)、ガラス転移温度、弾性率、熱分解温度、熱膨張係数(CTE)、難燃性(UL-94)を測定した。詳細な測定結果は表3を参照されたい。
【0051】
(実施例20~22)
表3によれば、実施例20~22は、B36-APdaの均一な接着剤溶液(すなわち、実施例12のAPda:B36=0.30:1.0(当量比))とBPO難燃剤との以下の重量比に基づいて行った。
B36-APda:DPB=100:20 (実施例20)
B36-APda:DPB=100:30 (実施例21)
B36-APda:DPB=100:50 (実施例22)
上記実施例を均一に混合した後、接着剤溶液を製造し、170°Cで2時間乾燥、200°Cで2時間乾燥、最後に220°Cで2時間焼成して、膜厚1.0mmの硬化物を形成した。その後、硬化物の比誘電率(Dk)、誘電損失(Df)、ガラス転移温度、弾性率、熱分解温度、熱膨張係数(CTE)、難燃性(UL-94)を測定した。詳細な結果は表3を参照されたい。
【0052】
【表3】
【0053】
評価方法:
ガラス転移温度(Tg):最大ピーク温度は、TAインスツルメント製の動的粘弾性測定装置DMA-Q800によって測定される。ガラス転移温度の測定単位は°Cである。
弾性率(貯蔵弾性率):TA社製DMA-Q800で測定した貯蔵弾性率の測定単位はGPaである。
熱分解温度(Td3/Td5):TA社製のTGA(Q500)で測定した熱重量減少が3%と5%になる熱分解温度で、測定単位は°Cである。
熱膨張係数(CTE):50~300°Cの温度での熱膨張係数(CTE)は、TA社製のTMA(Q400)熱機械分析(TMA)によって検査された。
5mm(または5mm未満)×5mm(または5mm未満)×10mmの試験片を、5°C/分の加熱速度および5.0gの重量で20ml/分の窒素流量で測定した。
比誘電率(Dk)および誘電損失(Df):アジレント製のネットワークアナライザ(E5071C、KEYSIGHT)を採用して、周波数10GHzの共振空洞法で測定した。
吸水率:IPC-TM-650 2.6.2.1法に従い、50.8mm×50.8mmの試験片を120°Cで1時間乾燥し、23°Cの蒸留水に24時間浸漬して、表面の水を拭き取り、試験片の増加重量を測定し、パーセンテージとして表した。
最大応力、ひずみ、靭性:引張試験機(PRO、PT-1699V)を測定に採用した。測定は、ASTM D638試験方法、23°C、およびTYPEIV試験片の条件下で実施した。最大応力の測定単位は(Kgf/mm2)、ひずみの測定単位は(%)、応力-ひずみ曲線で定義される靭性領域の測定単位は(Kgf-mm/mm3)である。
高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析:条件は、C-18逆相クロマトグラフィーカラム、アセトニトリル/HO= 8/2、流速1.0ml/minとして設定され、純度を測定する。
粘度:東京計器製のBM2回転粘度計(30rpm、40°C)を粘度の測定に採用した。
難燃性(UL-94):UL-94規格に従って、垂直燃焼法によって難燃性を測定した。試験片のサイズは、長さ125mm、幅13mm、厚さ1.5mmである。表3において、「NG」は垂直配置されたサンプルの燃焼時間が30秒を超えることを意味し、「V-1」は垂直配置されたサンプルが30秒以内に燃焼を停止し、不燃性粒子の滴下が可能であることを意味し、「V0」は垂直配置されたサンプルが10秒以内に燃焼を停止し、不燃性粒子の滴下が可能であることを意味する。
【0054】
表1から分かるように、比誘電率(Dk)において、実施例5~13のベンゾオキサジン(TPda/CPda/APda)変性ビスマレイミド(B36)の誘電率は、比較例1のビスマレイミド(B36)の比誘電率よりも低い。誘電損失(Df)の観点から見ると、実施例5~13のベンゾオキサジン(TPda/CPda/APda)変性ビスマレイミド(B36)の誘電損失は、比較例2~4のベンゾオキサジン(TPda/CPda/APda)の誘電損失よりも低い。実施例5~13では、ベンゾオキサジン:B36=0.3:1(当量比)の場合、DkおよびDfが最も低い値を示した。低誘電性を総合的に評価すると、実施例5~13のベンゾオキサジン変性ビスマレイミドは、比較例5の従来のエポキシ無水物型液状パッケージ樹脂よりも優れている。
【0055】
表2から、熱分解温度(Td3/Td5)において、実施例6、9、12のベンゾオキサジン変性ビスマレイミド硬化物の熱分解温度は、それぞれ比較例2、3、4のベンゾオキサジンの硬化物の熱分解温度よりも高いことがわかる。液状パッケージ材料の分野では、チップと基板との接着に低弾性樹脂を用いることで、チップと基板との熱膨張係数の不一致による応力を緩和し、接着の信頼性を向上させ得る。さらに、実施例6、9、12のベンゾオキサジン変性ビスマレイミドに由来する硬化物の貯蔵弾性率は0.3~0.6GPaに維持されており、液状パッケージ材料に要求される1.0GPaを下回っている。靭性の面では、実施例6、9、12のベンゾオキサジン変性ビスマレイミドに由来する硬化物の靭性は、比較例1のビスマレイミドに由来する硬化物および比較例2、3、4のベンゾオキサジンに由来する硬化物に比べて著しく高い。吸水性の観点から見ると、実施例6、9、12のベンゾオキサジン変性ビスマレイミドの硬化物の吸水性は、比較例1のビスマレイミドに由来する硬化物や比較例2、3、4のベンゾオキサジンに由来する硬化物に比べて低い。
【0056】
表3から、実施例6、9、12のベンゾオキサジン変性ビスマレイミドに、異なる割合のBPO難燃剤を添加した後に試験を行ったことがわかる。BPO難燃剤の添加量が30phr以上であれば、UL-94 V-0の効果が得られることが確認された。BPO難燃剤の添加量が増えると、熱分解温度(Td3/Td5)が上昇し、誘電損失(Df)が減少し、熱膨張係数(CTE)が低下し、貯蔵弾性率も0.58GPa未満を維持し得る。
【0057】
本開示では、B36樹脂をTPda/CPda/APda樹脂で改質することにより、ベンゾオキサジン変性ビスマレイミド樹脂に高靭性と低誘電性を付与する。さらに、本開示では、分子構造中の極性基の数を減らし、B36(原料にバイオマスC36DAを採用)とベンゾオキサジンとの当量比が1:0.3である混合系に、比誘電率および誘電損失が低く環境に優しいリン系難燃剤を添加している。本開示の組成物は、高周波通信分野のパッケージ材料として使用するのに適しており、これにより、ハロゲンフリー、難燃性、低誘電率の特性を実現している。
【0058】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物を開示する。本組成物および難燃性樹脂組成物は、高速・高周波通信分野の半導体液状パッケージ材料および層間絶縁膜などに適用され得る。
【0059】
上記の具体的な実施形態および比較例を参照して本開示を説明した。本開示が属する技術分野の通常の知識を有する者は、上記の説明に基づいて様々な変更を行うことができ、それは本開示の範囲を制限しない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の熱硬化性樹脂組成物および難燃性樹脂組成物は、半導体液状パッケージ材料および層間絶縁膜の構成要素として用いられ得る。
図1
図2
図3