IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特許-車輌用灯具ユニット 図1
  • 特許-車輌用灯具ユニット 図2
  • 特許-車輌用灯具ユニット 図3
  • 特許-車輌用灯具ユニット 図4
  • 特許-車輌用灯具ユニット 図5
  • 特許-車輌用灯具ユニット 図6
  • 特許-車輌用灯具ユニット 図7
  • 特許-車輌用灯具ユニット 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】車輌用灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/689 20180101AFI20221011BHJP
   F21S 41/255 20180101ALI20221011BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20221011BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20221011BHJP
   F21V 29/67 20150101ALI20221011BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20221011BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20221011BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221011BHJP
【FI】
F21S41/689
F21S41/255
F21S41/148
F21V29/503
F21V29/67
F21S41/32
F21W102:155
F21Y115:10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021120756
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2019205180の分割
【原出願日】2012-07-18
(65)【公開番号】P2021166210
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕己
(72)【発明者】
【氏名】横井 正一郎
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0092884(US,A1)
【文献】特開2011-29121(JP,A)
【文献】特開2010-123403(JP,A)
【文献】特開2008-27768(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10216678(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/689
F21S 41/255
F21S 41/148
F21V 29/503
F21V 29/67
F21S 41/32
F21W 102/155
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクと、前記ヒートシンクの上側に発光面が上向きに取り付けられている光源と、を含む光源ユニットと、
前記光源ユニットの上方に配置され、前記光源から出射された光を前方に反射するリフレクターと、
前記リフレクターにより反射された光を投影する投影レンズと、
前記リフレクターにより反射された光の遮蔽量を切り替える可動シェードと、
前記可動シェードをその回動軸回りに回動させるためのアクチュエーターであって、左右方向又は前後方向へ移動する出力軸を有し、かつ前記投影レンズと前記ヒートシンクの間に配置されるアクチュエーターと、
前記アクチュエーターの前記出力軸の運動を前記可動シェードに伝達して、前記可動シェードを前記回動軸回りに回動させる伝達体と、
前記可動シェードの前記回動軸が左右方向に延在する状態で前方から組み付けられて前記可動シェードを支持する軸受部を有するとともに、前後方向を向く受け面部を有し、前記受け面部において、前記アクチュエーターを保持する保持部と、
を備え、
前記可動シェードの前記回動軸は、前記伝達体に設けられた軸受部前記保持部の前記軸受部と、によって前後方向から挟まれていることを特徴とする車輌用灯具ユニット。
【請求項2】
前記ヒートシンクと冷却ファンが上下方向に並んで配置されるとともに、前記冷却ファンが前記ヒートシンクの下方向に収まるように配置された請求項1に記載の車輌用灯具ユニット。
【請求項3】
前記アクチュエーター、前記可動シェードおよび前記伝達体を含む光量制御機構は、前記投影レンズと前記投影レンズの焦点との間に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の車輌用灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用灯具ユニットの小型化を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、例えば、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に、光源等を有する灯具ユニットが配置されたものがある。
【0003】
車輌用前照灯の灯具ユニットには、光源から出射された光量を制御する光量制御機構が設けられているものがある(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0004】
光量制御機構は光源から出射された光量の遮蔽量を変更する可動シェードと可動シェードを動作させるアクチュエーターとを有している。特許文献1乃至特許文献3に記載された車輌用前照灯にあっては、例えば、可動シェードが第1の位置に回動されることにより近距離を照射するロービーム用の照射モードに切り替えられ、可動シェードが第2の位置に回動されることにより遠距離を照射するハイビーム用の照射モードに切り替えられる。
【0005】
光量制御機構は連結板、固定アーム、光源ユニット、レンズホルダー等の所定の各部に支持又は取り付けられて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-65960号公報
【文献】特開2011-119184号公報
【文献】特開2010-3589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1乃至特許文献3に記載された車輌用前照灯のように灯具ユニットを有するタイプにおいては、投影レンズの後方に投影レンズによって投影される光の遮蔽量を制御する光量制御機構が設けられている。
【0008】
従って、投影レンズと光量制御機構の位置関係によっては光軸方向(前後方向)における全長が長くなってしまい、車輌用前照灯が大型になるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明車輌用灯具ユニットは、上記した問題点を克服し、車輌用灯具ユニットの小型化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
車輌用灯具ユニットは、上記した課題を解決するために、光源が搭載されヒートシンクが設けられた光源ユニットと、前記光源から出射された光の遮蔽量を切り替える可動シェードと前記可動シェードを動作させるソレノイドとを有する光量制御機構と、前記光源から出射された光を前方へ投影する投影レンズとを備え、前記可動シェードの回動軸及び前記ソレノイドの出力軸はそれぞれ左右方向に延在するように配置され、前記投影レンズと前記投影レンズの焦点との間に前記可動シェードの回動軸と前記ソレノイドの出力軸が配置されたものである。
【0011】
従って、車輌用灯具ユニットにあっては、可動シェードの回動軸とソレノイドの出力軸がそれぞれ左右方向に延在するように配置されると共に、投影レンズと投影レンズの焦点との間に可動シェードの回動軸とソレノイドの出力軸が配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明車輌用灯具ユニットは、光源が搭載されヒートシンクが設けられた光源ユニットと、前記光源から出射された光の遮蔽量を切り替える可動シェードと前記可動シェードを動作させるソレノイドとを有する光量制御機構と、前記光源から出射された光を前方へ投影する投影レンズとを備え、前記可動シェードの回動軸及び前記ソレノイドの出力軸はそれぞれ左右方向に延在するように配置され、前記投影レンズと前記投影レンズの焦点との間に前記可動シェードの回動軸と前記ソレノイドの出力軸が配置されたことを特徴とする。
【0013】
従って、可動シェードの回動軸とソレノイドの出力軸がそれぞれ左右方向に延在するように配置され、投影レンズと投影レンズの焦点との間に可動シェードの回動軸とソレノイドの出力軸が配置されるため、車輌用灯具ユニットの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図2乃至図8と共に本発明車輌用灯具ユニットの実施の形態と比較例を示すものであり、本図は、概略縦断面図である。
図2】灯具ユニットの分解斜視図である。
図3】レンズホルダーの斜視図である。
図4】レンズホルダーに光量制御機構が組み付けられた状態を示す斜視図である。
図5】可動シェードが第1の位置に保持されている状態を示す拡大斜視図である。
図6】可動シェードが第2の位置に保持されている状態を示す拡大斜視図である。
図7図8と共に比較例に係るレンズホルダーと光量制御機構を示すものであり、本図は、光量制御機構がレンズホルダーに組み付けられる前の状態を示す斜視図である。
図8】光量制御機構がレンズホルダーに組み付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明車輌用灯具ユニットを実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
車輌用前照灯1は、それぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0017】
車輌用前照灯1は、図1に示すように、前方に開口された凹部を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口を閉塞するカバー3とを備えている。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部空間は灯室5として形成されている。
【0018】
ランプハウジング2の後端部には前後に貫通された取付孔2aが形成されている。取付孔2aにはバックカバー6が取り付けられている。
【0019】
灯室5には灯具ユニット7が配置されている(図1及び図2参照)。灯具ユニット7は、レンズホルダー8とレンズホルダー8の前端部に取り付けられた投影レンズ9と光を反射するリフレクター10とリフレクター10の下方に配置された光源ユニット11と光源ユニット11の下面に取り付けられた冷却ファン12とを有している。
【0020】
レンズホルダー8は前後に貫通された円弧状のレンズ取付部13とレンズ取付部13の左右両端部からそれぞれ後方へ突出された側部14、14と側部14、14間に設けられた保持部15とを有している(図2及び図3参照)。
【0021】
レンズ取付部13は下方に開口された円弧状に形成されている。
【0022】
側部14、14は略左右方向を向く板状に形成されている。
【0023】
保持部15は上下方向を向く取付面部16と取付面部16の前端部に左右に離隔して設けられた軸受部17、17と取付面部16の前側に設けられたアクチュエーター取付部18と取付面部16の左右両端部からそれぞれ下方へ突出された結合用突部19、19とを有している。
【0024】
軸受部17は取付面部16から上斜め前方へ突出されている。
【0025】
アクチュエーター取付部18には前後方向を向く受け面部20と受け面部20の外周部の各一部からそれぞれ前方へ突出された支持突部21、21と受け面部20の上端部から前方へ突出された係合突部22とが設けられている。受け面部20には位置決め孔20a、20a、20aが形成されている。支持突部21、21は左右に離隔して設けられている。
【0026】
投影レンズ9は略半球状に形成されレンズホルダー8のレンズ取付部13に取り付けられている(図1及び図2参照)。
【0027】
リフレクター10は内面が反射面10aとして形成されている。リフレクター10は光源ユニット11の上面に取り付けられている。
【0028】
光源ユニット11は回路基板23と回路基板23の上面に搭載された光源24とを有し、光源24としては、例えば、発光ダイオード(LED)が用いられている。
【0029】
光源ユニット11には側方(外方)へ突出された被取付片11a、11aが設けられている。光源ユニット11は被取付片11a、11aがそれぞれ結合用突部19、19に後方から押し当てられ、ネジ止め等によってそれぞれ結合用突部19、19に結合されてレンズホルダー8に取り付けられる。
【0030】
光源ユニット11には回路基板23の下側に位置するヒートシンク25が設けられている。
【0031】
冷却ファン12はヒートシンク25の下面に取り付けられている。
【0032】
光源ユニット11の前端部を除く部分とリフレクター10は投影レンズ9の焦点Sの後方に配置されている(図1参照)。
【0033】
レンズホルダー8には光量制御機構26が前方から組み付けられる(図1図2及び図4参照)。
【0034】
光量制御機構26はアクチュエーター27と伝達体28と可動シェード29を有している。
【0035】
アクチュエーター27はヨークケース30とヨークケース30の内部に配置されたコイル体31と左右方向へ移動可能とされた出力軸32とを有している。
【0036】
ヨークケース30は横長の状態にされ、コイル体31は軸方向が左右方向にされ、出力軸32は軸方向が左右方向にされて一部がヨークケース30から側方へ突出されている。ヨークケース30には後方へ突出された位置決め突部30a、30a、30aが設けられている。
【0037】
伝達体28は出力軸32のヨークケース30から側方へ突出された側の端部に連結されている。伝達体28は被支持部33と被支持部33の一方の側部から下方へ突出された連結部34と被支持部33に支持された駆動軸35とから成る。
【0038】
被支持部33には前後に延びる軸支持部33aと左右に離隔しそれぞれ後方へ突出された軸受部33b、33bとが設けられている。被支持部33には一方の側面にバネ係合突部33cが設けられている。伝達体28は連結部34の下端部が出力軸32に連結されている。
【0039】
駆動軸35は前後方向に延びる丸軸状に形成され、被支持部33の軸支持部33aに回転自在に支持されている。
【0040】
アクチュエーター27は出力軸32に伝達体28が連結された状態において、位置決め突部30a、30a、30aがそれぞれ受け面部20の位置決め孔20a、20a、20aに挿入されて位置決めされ、受け面部20に加締め等によって取り付けられる。このときヨークケース30が係合突部22に係合されてアクチュエーター取付部18に組み付けられる。
【0041】
アクチュエーター27がアクチュエーター取付部18に組み付けられた状態においては、伝達体28の軸受部33b、33bに回動軸39が挿入され、伝達体28と回動軸39が連結される。伝達体28は回動軸39の軸方向へ移動可能とされる。
【0042】
可動シェード29は略円弧面状に形成された光量制御部29aと光量制御部29aの左右両端寄りの位置からそれぞれ略下方へ突出された連結腕部29b、29bとを有している(図5及び図6参照)。
【0043】
可動シェード29には被駆動部36が設けられ、被駆動部36は光量制御部29aから下方へ突出され連結腕部29b、29b間に位置されている。被駆動部36の下端には前後に離隔して第1の摺動面37と第2の摺動面38が形成され、第1の摺動面37と第2の摺動面38の間には略下方に開口された受け凹部36aが形成されている。
【0044】
第1の摺動面37は平面状に形成された第1の被位置規制面37aと第1の被位置規制面37aから側方へ離隔するに従って捩れながら下方へ変位する捩れ面37bと捩れ面37bを挟んで第1の被位置規制面37aの反対側に位置された平面状の第2の被位置規制面37cとから成る。
【0045】
第2の摺動面38は平面状に形成された第1の被位置規制面38aと第1の被位置規制面38aから側方へ離隔するに従って捩れながら上方へ変位する捩れ面38bと捩れ面38bを挟んで第1の被位置規制面38aの反対側に位置された平面状の第2の被位置規制面38cとから成る。
【0046】
第2の摺動面38の第1の被位置規制面38aは第1の摺動面37の第2の被位置規制面37cの真後ろに位置され、第2の摺動面38の第2の被位置規制面38cは第1の摺動面37の第1の被位置規制面37aの真後ろに位置されている。
【0047】
可動シェード29の連結腕部29b、29bには左右方向に延びる回動軸39が連結されている。可動シェード29が回動軸39に連結された状態においては、受け凹部36aに回動軸39が挿入され第1の摺動面37と第2の摺動面38が伝達体28の駆動軸35に上方から接する。
【0048】
回動軸39は保持部15の軸受部17、17に組み付けられる。
【0049】
可動シェード29は光源24から出射された光の一部を遮蔽する第1の位置と第1の位置より遮蔽量が少なくなる第2の位置との間で回動軸39を支点として回動される。第1の位置は近距離を照射するロービームの位置であり可動シェード29の光量制御部29aが略垂直な状態とされ、第2の位置は遠距離を照射するハイビームの位置であり可動シェード29の光量制御部29aが傾斜された状態とされる。
【0050】
回動軸39には、例えば、圧縮コイルバネである付勢バネ40が外嵌状に支持されている。
【0051】
付勢バネ40は一端部が可動シェード29の光量制御部29aの下面に係合され他端部が伝達体28の被支持部33に設けられたバネ係合突部33cに係合される。従って、可動シェード29は付勢バネ40によって第2の位置から第1の位置へ向けて回動される方向へ付勢される。
【0052】
伝達体28の軸受部33b、33bに回動軸39が挿入された状態においては、付勢バネ40の両端部がそれぞれ可動シェード29の一方の連結腕部29bと伝達体28の一方の軸受部33bの間で圧縮された状態とされる。従って、アクチュエーター27の出力軸32がヨークケース30から突出される方向へ伝達体28を介して付勢バネ40によって付勢される。
【0053】
可動シェード29は第1の と第2の摺動面38が伝達体28の駆動軸35に上方から接する。このとき可動シェード29が第1の位置に回動されている状態においては駆動軸35に第1の摺動面37の第1の被位置規制面37aと第2の摺動面38の第2の被位置規制面38cが接する。また、可動シェード29が第2の位置に回動されている状態においては駆動軸35に第1の摺動面37の第2の被位置規制面37cと第2の摺動面38の第2の被位置規制面38aが接する。
【0054】
上記のように構成された光量制御機構26は投影レンズ9と投影レンズ9の焦点Sとの間に配置されている(図1参照)。
【0055】
灯具ユニット7は図示しないエイミング調整機構を介してランプハウジング2に傾動自在に支持されている。従って、エイミング調整機構の動作により灯具ユニット7が上下方向又は左右方向へ傾動され、光源24の光軸調整(初期調整)が行われる。
【0056】
また、灯具ユニット7は、例えば、ランプハウジング2に上下方向へ傾動可能に支持されていてもよい。灯具ユニット7がランプハウジング2に上下方向へ傾動可能に支持されている場合には、灯具ユニット7に図示しないレベリング調整機構が連結され、レベリング調整機構の動作によって灯具ユニット7が上下方向へ傾動され、車載物の重量に応じて光源24の光軸の向きが調整される。
【0057】
さらに、灯具ユニット7は、例えば、水平方向へ回動可能にされていてもよい。灯具ユニット7が水平方向へ回動可能にされている場合には、灯具ユニット7に図示しないスイブル機構が連結され、スイブル機構の動作によって灯具ユニット7が水平方向へ回動され、車輌の走行方向に追従して光軸の向きが変更される。
【0058】
上記のように構成された車輌用前照灯1において、アクチュエーター27のコイル体31に駆動電流が供給されていない状態において、出力軸32は付勢バネ40の付勢力によってヨークケース30から突出される方向における移動端に位置されている。このとき可動シェード29には、第1の位置から第2の位置へ向かう方向への回動力が付与されておらず、伝達体28は左方の移動端に位置され、可動シェード29は付勢バネ40によって第1の摺動面37の第1の被位置規制面37aが伝達体28の駆動軸35に上方から押し付けられて第1の位置に保持されている(図5参照)。第1の位置においては第2の摺動面38の第2の被位置規制面38cが駆動軸35に接した状態とされている。
【0059】
可動シェード29が第1の位置にある状態において、光源24から光が出射されると、可動シェード29によって光の一部が遮蔽され、遮蔽されなかった光が投影レンズ9に入射され、投影レンズ9によって光が投影されて近距離を照射するロービームの配光パターンが形成される。
【0060】
アクチュエーター27のコイル体31に通電が行われると、出力軸32がヨークケース30に引き込まれる方向へ移動され、伝達体28が出力軸32の移動に伴って右方へ移動される。伝達体28が右方へ移動されると駆動軸35が第1の摺動面37を捩れ面37bから第2の被位置規制面37cまで摺動され、可動シェード29が第1の位置から第2の位置まで回動される(図6参照)。このとき駆動軸35が第2の摺動面38の捩れ面38bと第1の被位置規制面38aに摺動される。可動シェード29は付勢バネ40によって第1の摺動面37の第2の被位置規制面37cが駆動軸35に上方から押し付けられて第2の位置に保持される。
【0061】
可動シェード29が第2の位置まで回動されることにより、光源24から出射される光の遮蔽量が少なくなり、遠距離を照射するハイビームの配光パターンが形成される。
【0062】
コイル体31に対する通電が停止されると、付勢バネ40の付勢力によって出力軸32がヨークケース30から突出される方向へ移動され、伝達体28が出力軸32の移動に伴って左方へ移動される。伝達体28が左方へ移動されると駆動軸35が第1の摺動面37を捩れ面37bから第1の被位置規制面37aまで摺動され、可動シェード29が第2の位置から第1の位置まで回動される(図5参照)。このとき駆動軸35が第2の摺動面38の捩れ面38bと第2の被位置規制面38cに摺動される。可動シェード29は付勢バネ40によって第1の摺動面37の第1の被位置規制面37aが駆動軸35に上方から押し付けられて第1の位置に再び保持される。
【0063】
上記したように、光量制御機構26を有する車輌用前照灯1にあっては、アクチュエーター27の出力軸32が左右方向へ移動されて可動シェード29が回動されるように構成されている。
【0064】
従って、アクチュエーター27の前後方向における大きさが小さくて済み、車輌用前照灯1の前後方向における小型化を図ることができる。
【0065】
以下に、レンズホルダー及び光量制御機構の比較例について説明する(図7及び図8参照)。
【0066】
比較例に係るレンズホルダー8Aは前後に貫通された円形状のレンズ取付部43とレンズ取付部43の左右両端部からそれぞれ後方へ突出された側部44、44と側部44、44間に設けられた保持部45とを有している。
【0067】
側部44、44はそれぞれ略左右方向を向く板状に形成されている。
【0068】
保持部45は上下方向を向く取付面部46と取付面部46の前端部に左右に離隔して設けられた軸受部47、47と取付面部46の前端側に設けられたアクチュエーター取付部48と取付面部46の左右両端部からそれぞれ下方へ突出された結合用突部49、49とを有している。
【0069】
取付面部46の上面にはバネ支持突部46aが設けられている。
【0070】
軸受部47は取付面部46から上方へ突出されている。
【0071】
アクチュエーター取付部48には前後方向を向く受け面部50と受け面部50の下端部から前方へ突出された支持突部51と支持突部51の左右両端部からそれぞれ上方へ突出された係合突部52、52とが設けられている。支持突部51には位置決め孔51a、51a、51aが形成されている。
【0072】
光源ユニット11は被取付片11a、11aがそれぞれ結合用突部49、49に後方から押し当てられ、ネジ止め等によってそれぞれ結合用突部49、49に結合されてレンズホルダー8Aに取り付けられる。
【0073】
レンズホルダー8Aには光量制御機構56が上方から組み付けられる。
【0074】
光源ユニット11の前端部を除く部分とリフレクター10は投影レンズ9の焦点Sの後方に配置されている。
【0075】
光量制御機構56はアクチュエーター57と伝達部材58と可動シェード59を有している。
【0076】
アクチュエーター57はヨークケース60とヨークケース60の内部に配置されたコイル体61と前後方向へ移動可能とされた出力軸62とを有している。
【0077】
コイル体61は軸方向が前後方向にされ、出力軸62は軸方向が前後方向にされて一部がヨークケース60から前方へ突出されている。ヨークケース60には下方へ突出された位置決め突部60a、60a、60aが設けられている。
【0078】
伝達部材58は、例えば、ワイヤー状の部材であり、一端部が出力軸62のヨークケース60から前方へ突出された側の端部に連結されている。
【0079】
アクチュエーター57は出力軸62に伝達部材58が連結された状態において、位置決め突部60a、60a、60aがそれぞれ支持突部51の位置決め孔51a、51a、51aに挿入されて位置決めされ、支持突部51に加締め等によって取り付けられる。このときヨークケース60の両側面がそれぞれ係合突部52、52に係合されてアクチュエーター取付部48に組み付けられる。
【0080】
アクチュエーター57がアクチュエーター取付部48に組み付けられた状態においては、伝達部材58の他端部が連結用突部59cに連結され、伝達部材58と可動シェード59が連結される。
【0081】
可動シェード59は略円弧面状に形成された光量制御部59aと光量制御部59aの左右両端寄りの位置からそれぞれ略下方へ突出された連結腕部59b、59bと光量制御部59aの左右方向における略中央部から略下方へ突出された連結用突部59cとを有している。可動シェード59の連結用突部59cには伝達部材58の他端部が連結される。
【0082】
可動シェード59の連結腕部59b、59bには左右方向に延びる回動軸63が連結されている。
【0083】
回動軸63は保持部45の軸受部47、47に組み付けられる。
【0084】
可動シェード59は光源24から出射された光の一部を遮蔽する第1の位置と第1の位置より遮蔽量が少なくなる第2の位置との間で回動軸63を支点として回動される。第1の位置は近距離を照射するロービームの位置であり可動シェード59の光量制御部59aが略垂直な状態とされ、第2の位置は遠距離を照射するハイビームの位置であり可動シェード59の光量制御部59aが傾斜される。
【0085】
回動軸63には、例えば、コイルバネである付勢バネ64が外嵌状に支持されている。
【0086】
付勢バネ64は一端部が可動シェード59の光量制御部59aの下面に係合され他端部がレンズホルダー8Aの取付面部46に設けられたバネ支持突部46aに係合される。従って、可動シェード59は付勢バネ64によって第2の位置から第1の位置へ向けて回動される方向へ付勢される。
【0087】
伝達部材58が可動シェード59に連結された状態においては、付勢バネ64によって可動シェード59が第2の位置から第1の位置へ向けて回動される方向へ付勢されているため、付勢バネ64の付勢力が伝達部材58を介してアクチュエーター57の出力軸62に伝達され、出力軸62がヨークケース60から突出される方向へ付勢される。
【0088】
上記のように構成された光量制御機構56は投影レンズ9と投影レンズ9の焦点Sとの間に配置されている。
【0089】
上記のように構成されたレンズホルダー8A及び光量制御機構56を有する車輌用前照灯1において、アクチュエーター57のコイル体61に駆動電流が供給されていない状態において、出力軸62は付勢バネ64の付勢力によってヨークケース60から突出される方向における移動端に位置されている。このとき可動シェード59には、第1の位置から第2の位置へ向かう方向への回動力が付与されておらず、可動シェード59は付勢バネ64によって第1の位置に保持されている。
【0090】
可動シェード59が第1の位置にある状態において、光源24から光が出射されると、可動シェード59によって光の一部が遮蔽され、遮蔽されなかった光が投影レンズ9に入射され、投影レンズ9によって光が投影されて近距離を照射するロービームの配光パターンが形成される。
【0091】
アクチュエーター57のコイル体61に通電が行われると、出力軸62がヨークケース60に引き込まれる方向へ移動され、伝達部材58が出力軸62の移動に伴って後方へ移動される。伝達部材58が後方へ移動されると付勢バネ64の付勢力に反して可動シェード59が第1の位置から第2の位置まで回動される。
【0092】
可動シェード59が第2の位置まで回動されることにより、光源24から出射される光の遮蔽量が少なくなり、遠距離を照射するハイビームの配光パターンが形成される。
【0093】
コイル体61に対する通電が停止されると、付勢バネ64の付勢力によって出力軸62がヨークケース60から突出される方向へ移動され、伝達部材58が出力軸62の移動に伴って前方へ移動される。伝達部材58が前方へ移動されると付勢バネ64の付勢力によって可動シェード59が第2の位置から第1の位置まで回動され、第1の位置に再び保持される。
【0094】
上記したように、光量制御機構56を有する車輌用前照灯1にあっては、アクチュエーター57の出力軸62が前後方向へ移動されて可動シェード59が回動されるように構成されている。
【0095】
従って、可動シェード59の回動方向と出力軸の移動方向とが同じ方向になるため、光量制御機構26に可動シェード59を回動させるための直交変換機構を設ける必要がなく、その分、部品点数の削減による機構の簡素化を図ることができる。
【0096】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、投影レンズ9と投影レンズ9の焦点Sとの間に光量制御機構26、56が配置されている。
【0097】
従って、投影レンズ9と光量制御機構26、56の位置関係が考慮されており、光量制御機構26、56が投影レンズ9に近付いて配置され、光軸方向(前後方向)における全長が短縮化されるため、車輌用前照灯1の小型化を図ることができる。
【0098】
また、投影レンズ9の焦点の後方に光源ユニット11の前端部を除いた部分とリフレクター10とが配置されているため、光量制御機構26と光源ユニット11及びリフレクター10とが干渉せず動作の適正化を確保することができると共に光源24から出射される光によって所望の配光パターンを形成することができる。
【0099】
さらに、光源ユニット11がリフレクター10の下方に配置されているため、その分、車輌用前照灯1の前後方向における小型化を図ることができる。
【0100】
尚、上記には、リフレクター10を有する車輌用前照灯1を例として示したが、本発明は、リフレクターを有さない所謂直射型の車輌用前照灯にも適用することが可能である。
【0101】
上記した発明を実施するための形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【符号の説明】
【0102】
7…灯具ユニット(車輌用灯具ユニット)、9…投影レンズ、11…光源ユニット、24…光源、25…ヒートシンク、26…光量制御機構、29…可動シェード、31…コイル体(ソレノイド)、32…出力軸、39…回動軸、S…投影レンズの焦点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8