(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】レーザスキャナ
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20221011BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G01C3/06 140
G01C15/00 103E
(21)【出願番号】P 2021145600
(22)【出願日】2021-09-07
(62)【分割の表示】P 2017075434の分割
【原出願日】2017-04-05
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一郎
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255144(JP,A)
【文献】特開2008-241273(JP,A)
【文献】特開2013-156138(JP,A)
【文献】特開2008-139035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0327647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-15/14
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を測定対象面に照射し、前記測距光が照射された測定点の距離を測定する距離測定部と、水平回転モータにより水平回転軸を中心に水平回転する托架部と
、前記托架部に鉛直回転軸を中心に鉛直回転可能に設けられ、鉛直回転モータにより鉛直回転して前記測距光を走査する走査鏡と、前記托架部の水平角を検出する水平角検出部と、前記走査鏡の鉛直角を検出する鉛直角検出部と、前記距離測定部による測距と前記托架部の回転と前記走査鏡の回転とを制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は半径方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第1測定点間隔と設定し、円周方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第2測定点間隔と設定し、
前記走査鏡を所定回数回転させ、半径方向に前記測距光を走査して得られた各測定点を測距した際の前記距離測定部による測距値と、前記鉛直角検出部による鉛直角値とに基づ
き前記測定点に対する前記走査鏡の高さと前記測定点迄の水平距離を演算し、
予め設定された前記第1測定点間隔と、半径方向に沿って隣接する測定点間の間隔が前記第1測定点間隔となる第1測定角度間隔と、前記第2測定点間隔に基づき、演算された高さと水平距離
から前記測定点間の間隔が前記第1測定点間隔となる
前記測定点を選択し、該選択された測定点から円周方向の間隔が前記第2測定点間隔となる第2測定角度間
隔を演算し、前記托架部を水平回転させ、前記走査鏡を鉛直回転させて前記測距光を回転照射し、前記第1測定角度間隔と前記第2測定角度間隔に基づき前記測定対象面の点群データを取得するレーザスキャナ。
【請求項2】
測距光を測定対象面に照射し、前記測距光が照射された測定点の距離を測定する距離測定部と、水平回転モータにより水平回転軸を中心に水平回転する托架部と
、前記托架部に鉛直回転軸を中心に鉛直回転可能に設けられ、鉛直回転モータにより鉛直回転して前記測距光を走査する走査鏡と、前記托架部の水平角を検出する水平角検出部と、前記走査鏡の鉛直角を検出する鉛直角検出部と、前記距離測定部による測距と前記托架部の回転と前記走査鏡の回転とを制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は半径方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第1測定点間隔と設定し、円周方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第2測定点間隔と設定し、
前記走査鏡を所定回数回転させ、半径方向に前記測距光を走査して得られた各測定点を測距した際の前記距離測定部による測距値と、前記鉛直角検出部による鉛直角値とに基づ
き前記測定点に対する前記走査鏡の高さと前記測定点迄の水平距離を演算し、
予め設定された前記第1測定点間隔と、前記第2測定点間隔と、前記測定点迄の水平距離に基づき、該水平距離を満たす前記測定点を選択し、該選択された測定点から半径方向の間隔が前記第1測定点間隔となる第1測定角度間隔
を演算し、前記選択された測定点から円周方向の間隔が前記第2測定点間隔となる第2測定角度間
隔を演算し、前記托架部を水平回転させ、前記走査鏡を鉛直回転させて前記測距光を回転照射し、前記第1測定角度間隔と前記第2測定角度間隔に基づき前記測定対象面の点群データを取得するレーザスキャナ。
【請求項3】
前記演算制御部は、前記測定対象面に対して前記測距光を走査させ、各測定点毎の斜距離と少なくとも前記走査鏡の鉛直角とに基づき、各測定点に対する前記走査鏡の高さと水平距離とをそれぞれ演算し、各測定点毎の前記走査鏡の高さと前記水平距離とに基づき前記測定対象面の概略形状を演算する
請求項1又は請求項2に記載のレーザスキャナ。
【請求項4】
選択された測定点での前記第1測定点間隔と前記第2測定点間隔とを一致又は略一致させた
請求項1~請求項3の内いずれか1つに記載のレーザスキャナ。
【請求項5】
前記演算制御部は、前記第1測定点間隔を満たさない測定点のデータを取得しない様構成された
請求項1~請求項4の内いずれか1つに記載のレーザスキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点群データを取得するレーザスキャナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザスキャナは、測距光を鉛直方向に走査しつつ、水平方向に回転させることで、測定対象物の3次元形状を点群データとして取得する。
【0003】
三脚上に設置したレーザスキャナで水平な地面や路面等の測定対象面を測定した場合、円周方向(接線方向)に隣接する測定点間の間隔(測定点間隔)は、レーザスキャナからの距離の1次関数で広がる。一方で、半径方向(放射方向)に隣接する測定点間の間隔(測定点間隔)は、レーザスキャナからの距離の2次関数で広がる。
【0004】
従来のレーザスキャナも、円周方向、半径方向で独立して測定点間の角度間隔(測定角度間隔)を設定する機能を有しているが、円周方向、半径方向共に同一の角度間隔で測定を行うのが一般的である。従って、測定対象面である地面や路面に対し、半径方向の測定角度間隔が所望の間隔となる様設定し、設定した角度で円周方向の測定角度間隔を設定している。
【0005】
然し乍ら、上記した様に、半径方向の測定点間隔は、レーザスキャナからの距離の2次関数で広がるので、レーザスキャナから離れた位置で所望の測定点間隔を得ようとする場合、測定角度間隔を小さくする必要がある。この場合、円周方向の測定点間隔が極めて小さくなり、取得される点群データのデータ数が増加する。この為、点群データの取得に時間が掛かり、点群データを用いた演算の時間と負担が増大していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、取得される点群データのデータ数を低減し、演算負担の低減、処理時間の短縮を図るレーザスキャナを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、測距光を測定対象面に照射し、前記測距光が照射された測定点の距離を測定する距離測定部と、水平回転モータにより水平回転軸を中心に水平回転する托架部と、前記托架部に鉛直回転軸を中心に鉛直回転可能に設けられ、鉛直回転モータにより鉛直回転して前記測距光を走査する走査鏡と、前記托架部の水平角を検出する水平角検出部と、前記走査鏡の鉛直角を検出する鉛直角検出部と、前記距離測定部による測距と前記托架部の回転と前記走査鏡の回転とを制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は半径方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第1測定点間隔と設定し、円周方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第2測定点間隔と設定し、前記走査鏡を所定回数回転させ、半径方向に前記測距光を走査して得られた各測定点を測距した際の前記距離測定部による測距値と、前記鉛直角検出部による鉛直角値とに基づき前記測定点に対する前記走査鏡の高さと前記測定点迄の水平距離を演算し、予め設定された前記第1測定点間隔と、半径方向に沿って隣接する測定点間の間隔が前記第1測定点間隔となる第1測定角度間隔と、前記第2測定点間隔に基づき、演算された高さと水平距離から前記測定点間の間隔が前記第1測定点間隔となる前記測定点を選択し、該選択された測定点から円周方向の間隔が前記第2測定点間隔となる第2測定角度間隔を演算し、前記托架部を水平回転させ、前記走査鏡を鉛直回転させて前記測距光を回転照射し、前記第1測定角度間隔と前記第2測定角度間隔に基づき前記測定対象面の点群データを取得するレーザスキャナに係るものである。
【0009】
又本発明は、測距光を測定対象面に照射し、前記測距光が照射された測定点の距離を測定する距離測定部と、水平回転モータにより水平回転軸を中心に水平回転する托架部と、前記托架部に鉛直回転軸を中心に鉛直回転可能に設けられ、鉛直回転モータにより鉛直回転して前記測距光を走査する走査鏡と、前記托架部の水平角を検出する水平角検出部と、前記走査鏡の鉛直角を検出する鉛直角検出部と、前記距離測定部による測距と前記托架部の回転と前記走査鏡の回転とを制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は半径方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第1測定点間隔と設定し、円周方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第2測定点間隔と設定し、前記走査鏡を所定回数回転させ、半径方向に前記測距光を走査して得られた各測定点を測距した際の前記距離測定部による測距値と、前記鉛直角検出部による鉛直角値とに基づき前記測定点に対する前記走査鏡の高さと前記測定点迄の水平距離を演算し、予め設定された前記第1測定点間隔と、前記第2測定点間隔と、前記測定点迄の水平距離に基づき、該水平距離を満たす前記測定点を選択し、該選択された測定点から半径方向の間隔が前記第1測定点間隔となる第1測定角度間隔を演算し、前記選択された測定点から円周方向の間隔が前記第2測定点間隔となる第2測定角度間隔を演算し、前記托架部を水平回転させ、前記走査鏡を鉛直回転させて前記測距光を回転照射し、前記第1測定角度間隔と前記第2測定角度間隔に基づき前記測定対象面の点群データを取得するレーザスキャナに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記演算制御部は、前記測定対象面に対して前記測距光を走査させ、各測定点毎の斜距離と少なくとも前記走査鏡の鉛直角とに基づき、各測定点に対する前記走査鏡の高さと水平距離とをそれぞれ演算し、各測定点毎の前記走査鏡の高さと前記水平距離とに基づき前記測定対象面の概略形状を演算するレーザスキャナに係るものである。
【0011】
又本発明は、選択された測定点での前記第1測定点間隔と前記第2測定点間隔とを一致又は略一致させたレーザスキャナに係るものである。
【0012】
更に又本発明は、前記演算制御部は、前記第1測定点間隔を満たさない測定点のデータを取得しない様構成されたレーザスキャナに係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測距光を測定対象面に照射し、前記測距光が照射された測定点の距離を測定する距離測定部と、水平回転モータにより水平回転軸を中心に水平回転する托架部と、前記托架部に鉛直回転軸を中心に鉛直回転可能に設けられ、鉛直回転モータにより鉛直回転して前記測距光を走査する走査鏡と、前記托架部の水平角を検出する水平角検出部と、前記走査鏡の鉛直角を検出する鉛直角検出部と、前記距離測定部による測距と前記托架部の回転と前記走査鏡の回転とを制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は半径方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第1測定点間隔と設定し、円周方向に沿って隣接する測定点間の所定の間隔を第2測定点間隔と設定し、前記走査鏡を所定回数回転させ、半径方向に前記測距光を走査して得られた各測定点を測距した際の前記距離測定部による測距値と、前記鉛直角検出部による鉛直角値とに基づき前記測定点に対する前記走査鏡の高さと前記測定点迄の水平距離を演算し、予め設定された前記第1測定点間隔と、半径方向に沿って隣接する測定点間の間隔が前記第1測定点間隔となる第1測定角度間隔と、前記第2測定点間隔に基づき、演算された高さと水平距離から前記測定点間の間隔が前記第1測定点間隔となる前記測定点を選択し、該選択された測定点から円周方向の間隔が前記第2測定点間隔となる第2測定角度間隔を演算し、前記托架部を水平回転させ、前記走査鏡を鉛直回転させて前記測距光を回転照射し、前記第1測定角度間隔と前記第2測定角度間隔に基づき前記測定対象面の点群データを取得するので、取得されるデータ数が大幅に低減され、点群データの取得時間、前記演算制御部の演算負担が低減され、測距開始から点群データの取得迄の処理時間を大幅に短縮することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係るレーザスキャナを示す正断面図である。
【
図2】半径方向の測定点間隔と測定角度間隔について説明する説明図である。
【
図3】円周方向の測定点間隔と測定角度間隔について説明する説明図である。
【
図4】半径方向と円周方向の測定角度間隔を一致させた場合の、半径方向と円周方向の測定点間隔を示すグラフである。
【
図5】半径方向と円周方向の測定角度間隔を異ならせた場合の、半径方向と円周方向の測定点間隔を示すグラフである。
【
図6】測定対象面が傾斜している場合の、機械高と比高とを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0016】
先ず、
図1に於いて、本発明の実施例に係るレーザスキャナについて説明する。
【0017】
レーザスキャナ1は、三脚22(
図2参照)に取付けられた整準部2と、該整準部2に取付けられたスキャナ本体3とから構成される。
【0018】
前記整準部2は整準ネジ33を有し、該整準ネジ33により前記スキャナ本体3の整準を行う。
【0019】
該スキャナ本体3は、固定部4と、托架部5と、水平回転軸6と、水平回転軸受7と、水平回転駆動部としての水平回転モータ8と、水平角検出部としての水平角エンコーダ9と、鉛直回転軸11と、鉛直回転軸受12と、鉛直回転駆動部としての鉛直回転モータ13と、鉛直角検出部としての鉛直角エンコーダ14と、鉛直回転部である走査鏡15と、操作部と表示部とを兼用する操作パネル16と、演算制御部17と、記憶部18と、距離測定部19等を具備している。
【0020】
前記水平回転軸受7は前記固定部4に固定される。前記水平回転軸6は鉛直な軸心6aを有し、前記水平回転軸6は前記水平回転軸受7に回転自在に支持される。又、前記托架部5は前記水平回転軸6に支持され、前記托架部5は水平方向に前記水平回転軸6と一体に回転する様になっている。
【0021】
前記水平回転軸受7と前記托架部5との間には前記水平回転モータ8が設けられ、該水平回転モータ8は前記演算制御部17により制御される。該演算制御部17は、前記水平回転モータ8により、前記托架部5を前記軸心6aを中心に回転させる。
【0022】
前記托架部5の前記固定部4に対する相対回転角は、前記水平角エンコーダ9によって検出される。該水平角エンコーダ9からの検出信号は前記演算制御部17に入力され、該演算制御部17により水平角データが演算される。該演算制御部17は、前記水平角データに基づき、前記水平回転モータ8に対するフィードバック制御を行う。
【0023】
又、前記托架部5には、水平な軸心11aを有する前記鉛直回転軸11が設けられている。該鉛直回転軸11は、前記鉛直回転軸受12を介して回転自在となっている。尚、前記軸心6aと前記軸心11aの交点が、測距光の射出位置であり、前記スキャナ本体3の座標系の原点となっている。
【0024】
前記托架部5には、凹部23が形成されている。前記鉛直回転軸11は、一端部が前記凹部23内に延出し、前記一端部に前記走査鏡15が固着され、該走査鏡15は前記凹部23に収納されている。又、前記鉛直回転軸11の他端部には、前記鉛直角エンコーダ14が設けられている。
【0025】
前記鉛直回転軸11に前記鉛直回転モータ13が設けられ、該鉛直回転モータ13は前記演算制御部17に制御される。該演算制御部17は、前記鉛直回転モータ13により前記鉛直回転軸11を回転させ、前記走査鏡15は前記軸心11aを中心に回転される。
【0026】
前記走査鏡15の回転角は、前記鉛直角エンコーダ14によって検出され、検出信号は前記演算制御部17に入力される。該演算制御部17は、検出信号に基づき前記走査鏡15の鉛直角データを演算し、該鉛直角データに基づき前記鉛直回転モータ13に対するフィードバック制御を行う。
【0027】
又、前記演算制御部17で演算された水平角データ、鉛直角データや測定結果、測定点間隔(後述)、測定角度間隔(後述)は、前記記憶部18に保存される。該記憶部18には、HDD、CD、メモリカード等種々の記憶手段が用いられる。該記憶部18は、前記托架部5に対して着脱可能であってもよく、或は図示しない通信手段を介して外部記憶装置や外部データ処理装置にデータを送出可能としてもよい。
【0028】
前記操作パネル16は、例えばタッチパネルであり、測距の指示や測定条件、例えば測定点間隔の変更等を行う操作部と、測距結果等を表示する表示部とを兼用している。
【0029】
次に、前記距離測定部19について説明する。
【0030】
発光素子26からパルス光の測距光が射出される。測距光は、投光光学系27、ビームスプリッタ28を介して射出される。該ビームスプリッタ28から射出される測距光の光軸は、前記軸心11aと合致しており、測距光は前記走査鏡15によって直角に偏向される。該走査鏡15が前記軸心11aを中心に回転することで、測距光は前記軸心11aと直交し、且つ前記軸心6aを含む平面内で回転(走査)される。
【0031】
測定対象物で反射された測距光(以下反射測距光)は、前記走査鏡15に入射し、該走査鏡15で偏向される。該走査鏡15で偏向された反射測距光は、前記ビームスプリッタ28、受光光学系29を経て受光素子31で受光される。
【0032】
前記距離測定部19は、前記発光素子26の発光タイミングと、前記受光素子31の受光タイミングの時間差(即ち、パルス光の往復時間)に基づき、測距光の1パルス毎に測距を実行する(Time Of Flight)。前記発光素子26は、発光のタイミング、即ちパルス間隔が変更可能となっている。
【0033】
尚、前記距離測定部19には内部参照光学系(図示せず)が設けられ、該内部参照光学系で受光した測距光の受光タイミングと、反射測距光の受光タイミングとの時間差により測距を行うことで、より高精度な測距が可能となる。
【0034】
前記托架部5と前記走査鏡15とがそれぞれ定速で回転し、該走査鏡15の鉛直方向の回転と、前記托架部5の水平方向の回転との協働により、測距光が2次元に走査される。又、パルス光毎の測距により測距データ(斜距離)が得られ、各パルス光毎に前記鉛直角エンコーダ14、前記水平角エンコーダ9により鉛直角、水平角を検出することで、鉛直角データ、水平角データが取得できる。鉛直角データ、水平角データ、測距データとにより、測定対象物に対応する3次元の点群データが取得できる。
【0035】
次に、
図2、
図3に於いて、前記レーザスキャナ1により点群データを取得する際の、測定点間隔の変更について説明する。
【0036】
図2は、半径方向の測定点間隔を説明する説明図となっている。尚、
図2中では、前記レーザスキャナ1が紙面に対して正面を向いているが、実際には該レーザスキャナ1は紙面に対して平行な方向を向いている。
【0037】
半径方向の測定点間隔を設定する場合には、例えば前記レーザスキャナ1から所望の距離の地面や路面等の測定対象面にある測定点32を基準として、該測定点32と半径方向に沿って前記レーザスキャナ1から離反する方向に隣接する測定点32aとの間隔が設定される。
【0038】
ここで、
図2に示される様に、前記レーザスキャナ1の機械高(設置点から測距光の照射位置(前記走査鏡15の回転中心)迄の高さ)をH、該レーザスキャナ1から前記測定点32迄の水平距離(設置点から前記測定点32迄の距離)をR、前記測定点32,32a間の距離(半径測定点間隔)、即ち第1測定点間隔をS1とした場合、前記測定点32と前記測定点32aを測距した際の前記走査鏡15の鉛直角の差分である半径方向の測定角度間隔(前記走査鏡15の回転角度ピッチ)、即ち第1測定角度間隔Aeは以下の式で表すことができる。
【0039】
Ae=tan-1((S1+R)/H)-tan-1(R/H)(式1)
【0040】
機械高Hは作業者により実測され、前記操作パネル16を介して入力されている。測定対象面に対する高さが既知となった機械高Hと、前記操作パネル16を介して所望の水平距離と第1測定点間隔S1を入力することで、前記演算制御部17は前記測定点32に於いて測定点間隔がS1となる第1測定角度間隔Aeを演算することができる。
【0041】
図3は、円周方向の測定点間隔を説明する説明図となっており、前記レーザスキャナ1を上面から見た状態を示している。円周方向の測定点間隔を設定する場合には、例えば前記レーザスキャナ1から所望の距離の測定対象面にある前記測定点32を基準として、円周方向に沿って隣接する測定点32bとの間隔が設定される。
【0042】
ここで、
図3に示される様に、前記レーザスキャナ1から前記測定点32迄の水平距離をR、前記測定点32,32b間の距離(円周測定点間隔)、即ち第2測定点間隔をS2とした場合、前記測定点32と前記測定点32bを測距した際の前記托架部5の水平角の差分である円周方向の測定角度間隔(前記托架部5の回転角度ピッチ)、即ち第2測定角度間隔Aaは以下の式で表すことができる。
【0043】
Aa=2×sin-1(S2/(2×R))(式2)
【0044】
前記レーザスキャナ1と前記測定点32との水平距離Rは、
図2の場合と同様に演算される。又、前記操作パネル16を介して第2測定点間隔S2を入力することで、前記演算制御部17は前記測定点32に於いて測定点間隔がS2となる第2測定角度間隔Aaを演算することができる。
【0045】
図4は、例として、前記レーザスキャナ1の機械高Hを1.5mとし、第1測定角度間隔Aeと第2測定角度間隔Aaを共に0.31ミリラジアンとした場合の、第1測定点間隔S1と第2測定点間隔S2の分布を示したグラフである。尚、
図4のグラフは、縦軸を隣接する測定点の間隔とし、横軸を前記レーザスキャナ1から前記測定点32迄の距離としている。又、
図4中、34は第2測定点間隔S2の分布を示す直線であり、35は第1測定点間隔S1の分布を示す曲線である。
【0046】
図4に示される様に、前記直線34では、第2測定点間隔S2が前記レーザスキャナ1からの距離に比例した1次関数で広がっていくのに対し、前記曲線35では、第1測定点間隔S1は2次関数で広がっていく。従って、前記レーザスキャナ1と前記測定点32迄の距離が大きくなる程、第1測定点間隔S1と第2測定点間隔S2との差が大きくなる。
【0047】
例えば、前記測定点32が前記レーザスキャナ1から22mの位置にある場合、即ち水平距離Rが22mである場合、第1測定点間隔S1は約0.1mであり、第2測定点間隔S2は0.0062mとなる。
【0048】
上記した様に、第1測定角度間隔Aeと第2測定角度間隔Aaとを一致させた場合、前記レーザスキャナ1から離れた位置では、第2測定点間隔S2が第1測定点間隔S1と比べて非常に高密度となる。従って、点群データの取得に時間が掛かり、又前記演算制御部17の演算負担も大きくなる。
【0049】
又、点群データ取得後の後処理工程に於いて、所望の測定点間隔に満たない測定点を削除し、所望の測定点間隔となった点群データを用いて各種処理を行うので、無駄が多い。
【0050】
そこで、本実施例では、前記レーザスキャナ1から所望の距離にある前記測定点32の第2測定点間隔S2を、第1測定点間隔S1と同一又は略同一の値とし、点群データの取得データ数を低減し、取得時間及び演算負担の低減を図っている。
【0051】
図5は、例えば前記レーザスキャナ1から22mの位置にある前記測定点32に於いて、第2測定点間隔S2を第1測定点間隔S1と同等の約0.1mとした場合の、第1測定点間隔S1と第2測定点間隔S2の分布を示したグラフである。
【0052】
この時の第2測定角度間隔Aaは、(式2)の水平距離Rに22mを代入し、第2測定点間隔S2に0.1mを代入することで演算することができる。この時の第2測定角度間隔Aaは4.6ミリラジアンとなる。
【0053】
上記の様に、前記レーザスキャナ1から22m離れた前記測定点32に於いて、第2測定点間隔S2を第1測定点間隔S1と一致させることで、取得される点群データのデータ数を14.8分の1にまで低減させることができる。
【0054】
尚、点群データを取得する際には、前記托架部5と前記走査鏡15とはそれぞれ異なる速度で定速回転している。従って、各測定点で取得される測距データの間隔は、前記発光素子26の発光タイミングで制御される。或は、前記演算制御部17による内部処理で第1測定角度間隔Ae、第2測定角度間隔Aaに満たない測定角度間隔で照射された測距光からの測定結果を破棄する様にしてもよい。
【0055】
尚、前記曲線35の曲線形状は、前記レーザスキャナ1の機械高Hと第1測定角度間隔Aeとで決定される。通常、機械高Hの高さは略一定なので、前記曲線35の曲線形状を変更する場合には、第1測定角度間隔Aeが変更される。又、前記直線34の直線形状(傾き)は、第2測定角度間隔Aaによって決定される。
【0056】
第1測定角度間隔Aeを変更することで、所望の距離にある前記測定点32に於いて、所望の第1測定点間隔S1を得ることができる。又、第2測定角度間隔Aaを変更することで、所望の距離にある前記測定点32に於いて、所望の第2測定点間隔S2を得ることができる。
【0057】
本実施例では、前記レーザスキャナ1から所望の距離にある測定点を選択し、選択された測定点迄の水平距離Rと機械高Hとから、予め設定した第1測定点間隔S1が得られる第1測定角度間隔Aeを演算する。その後、前記測定点で前記曲線35と交差する様、前記直線34の傾きを設定する。これにより、選択された測定点で第1測定点間隔S1と第2測定点間隔S2とが等しくなる時の第2測定角度間隔Aaを求めることができる。
【0058】
或は、第1測定角度間隔Aeを予め設定した角度で固定とし、機械高Hと第1測定角度間隔Aeとから半径方向に沿って存在する測定点の分布を演算する。又、演算で求められた各測定点から、予め設定した第1測定点間隔S1が得られる測定点を選択する。最後に、選択された測定点で前記曲線35と交差する様、前記直線34の傾きを設定する。これにより、選択された測定点で第1測定点間隔S1と第2測定点間隔S2とが等しくなる時の第2測定角度間隔Aaを求めてもよい。
【0059】
尚、第1測定点間隔S1と第2測定点間隔S2との関係は常に一致させる必要はなく、点群データの用途等に応じて適宜設定される。例えば、選択された測定点に於いて、第2測定点間隔S2が第1測定点間隔S1の半分となる様にしてもよい。
【0060】
この場合、選択された測定点で測定点間隔が前記曲線35の半分となる位置を前記直線34が通過する様、該直線34の傾きを設定する。これにより、選択された測定点で第2測定点間隔S2が第1測定点間隔S1の半分となる時の第2測定角度間隔Aaを求めることができる。
【0061】
上述の様に、本実施例では、前記レーザスキャナ1から所望の距離にある前記測定点32を選択し、該測定点32迄の水平距離Rと機械高Hとから予め設定した第1測定点間隔S1が得られる第1測定角度間隔Aeを設定し、前記測定点32で予め設定した第2測定点間隔S2、即ち第1測定点間隔S1と同一又は略同一の第2測定点間隔S2が得られる様に第2測定角度間隔Aaを設定している。
【0062】
従って、円周方向の点群データの密度が減少し、取得されるデータ数が大幅に低減されるので、点群データの取得時間、前記演算制御部17の演算負担が低減され、測距開始から点群データの取得迄の処理時間を大幅に短縮することができる。
【0063】
又、選択した前記測定点32に於いて、設定された第2測定点間隔S2を満たす測定点のデータのみが取得され、第2測定点間隔S2に満たない測定点を後処理にて間引く必要がないので、処理工程の低減が図れ、処理時間の短縮、作業性の向上を図ることができる。
【0064】
尚、本実施例では、前記レーザスキャナ1の機械高Hは作業者により実測され、前記操作パネル16を介して入力されており、既知となった状態で演算が行われるが、自動で機械高Hを求めてもよい。例えば、測定対象面が水平である場合には、前記レーザスキャナ1により任意の1点(
図6中では測定点32)を測距した際の測距データ(斜距離)と、鉛直角データとに基づき、機械高H(比高h、
図6参照)や水平距離Rを演算することができる。又、演算された機械高Hと水平距離Rとにより、第1測定角度間隔Ae、第2測定角度間隔Aaが演算される。
【0065】
又、
図6に示される様に、測定対象面が傾斜している場合には、任意の前記測定点32を測距した際の測距データ(斜距離)と鉛直角データとに基づき、前記測定点32に対する前記レーザスキャナ1の測距光の照射位置の高さ、即ち比高hや水平距離Rを演算することができる。又、演算された比高hと水平距離Rとにより、第1測定角度間隔Ae、第2測定角度間隔Aaが演算される。尚、測定対象面が平面でも同様に演算できる。
【0066】
又、測定対象面が傾斜していた場合でも、前記托架部5を水平回転させると共に前記走査鏡15を鉛直回転させ、測距光で測定対象面を走査することで、各測定点毎の斜距離と少なくとも前記走査鏡15の鉛直角とに基づき、各測定点に於ける比高hと水平距離Rがそれぞれ求められる。半径方向に隣接する各測定点間の比高hと水平距離Rとの差から、測定対象面の傾斜(概略形状)が演算でき、機械高Hを演算することができる。
【0067】
又、本実施例では、所望の距離にある前記測定点32を選択し、選択した該測定点32の第1測定点間隔S1に対応して、第2測定点間隔S2を設定し、円周方向のデータ数を低減しているが、更に半径方向のデータ数の低減を図ってもよい。例えば、第1測定点間隔S1が設定された値に満たない測定点については、データの取得を行わない様にする。これにより、後処理工程で第1測定点間隔S1が設定値に満たない測定点のデータを間引く必要がなくなり、より後処理量を低減させることができる。
【0068】
更に、本実施例では、実測した機械高Hを前記操作パネル16から入力するか、機械高Hを演算した後、第1測定点間隔S1や第2測定点間隔S2を設定し、第1測定角度間隔Aeや第2測定角度間隔Aaを演算していたが、一連の処理を一度に行う様にしてもよい。
【0069】
例えば、前記操作パネル16より第1測定角度間隔Aeと第1測定点間隔S1を任意に設定し、第2測定点間隔S2が第1測定点間隔S1と一致又は略一致する様設定し、処理を開始する。前記演算制御部17は、前記走査鏡15を1回或は数回回転させ、半径方向に測距光を走査する。各測定点に於ける測定結果から、設定された第1測定点間隔S1を満たす測定点が選択される。各測定点から設定された所望の水平距離にある測定点を選択し、該測定点について第1測定点間隔S1を満たす第1測定角度間隔Aeを演算させてもよい。
【0070】
前記演算制御部17は、選択された測定点について、設定された第2測定点間隔S2を満たす第2測定角度間隔Aaを演算する。前記演算制御部17は、設定された第1測定角度間隔Aeと、演算された第2測定角度間隔Aaに基づき、測定対象面の点群データを取得する。
【0071】
上記の様にすることで、作業者による測定開始等の指示が1度で済み、作業性が向上する。
【0072】
尚、本実施例では、所望の距離に位置する前記測定点32に於いて、予め設定された第1測定点間隔S1と第2測定点間隔S2を満たす第1測定角度間隔Aeと第2測定角度間隔Aaとを演算している。一方で、第1測定角度間隔Aeを固定とし、予め設定された第1測定点間隔S1を満たす前記測定点32を選択してもよいのは言う迄もない。
【符号の説明】
【0073】
1 レーザスキャナ
3 スキャナ本体
6 水平回転軸
8 水平回転モータ
9 水平角エンコーダ
11 鉛直回転軸
13 鉛直回転モータ
14 鉛直角エンコーダ
15 走査鏡
16 操作パネル
17 演算制御部
19 距離測定部
22 三脚
32 測定点