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特許7155373液封式ポンプの運転方法、膜脱気装置、純水製造システム及び純水製造方法
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  • 特許-液封式ポンプの運転方法、膜脱気装置、純水製造システム及び純水製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】液封式ポンプの運転方法、膜脱気装置、純水製造システム及び純水製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20221011BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20221011BHJP
   C02F 9/02 20060101ALI20221011BHJP
   C02F 9/04 20060101ALI20221011BHJP
   C02F 9/08 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B01D61/00
B01D19/00 H
C02F9/02
C02F9/04
C02F9/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021164278
(22)【出願日】2021-10-05
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 克美
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 貴次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信介
(72)【発明者】
【氏名】鳥村 修平
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-185203(JP,A)
【文献】特開2017-166413(JP,A)
【文献】特開2017-192898(JP,A)
【文献】特開2004-132328(JP,A)
【文献】特開平10-028805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00- 29/12
F04B 25/00- 37/20
F04B 41/00- 41/06
B01D 53/22
B01D 61/00- 71/82
C02F 1/44
B01D 19/00- 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液封式真空ポンプに接続された真空配管から液体を排出し、
封液を加圧供給し前記液封式真空ポンプに所定量満たすと共に前記真空配管の圧力が所定圧力に減圧されるまで前記液封式真空ポンプを駆動し、
前記真空配管の圧力が所定圧力に減圧されると加圧した前記封液の前記液封式真空ポンプへの供給を停止し、前記液封式真空ポンプから循環流路に前記封液を循環させ前記封液が前記液封式真空ポンプに所定量存在している状態を維持する、
液封式真空ポンプの運転方法。
【請求項2】
前記真空配管からの前記液体の排出を、前記真空配管への加圧気体の供給により行う請求項1に記載の液封式真空ポンプの運転方法。
【請求項3】
前記真空配管への加圧気体の供給により前記真空配管内の前記液体を前記液封式真空ポンプに送る請求項2に記載の液封式真空ポンプの運転方法。
【請求項4】
加圧した前記封液を前記循環流路の途中から前記液封式真空ポンプに供給する請求項1~請求項3の何れか一項に記載の液封式真空ポンプの運転方法。
【請求項5】
加圧した前記封液を前記循環流路の途中の気液分離槽と前記液封式真空ポンプとの間の前記循環流路に送る請求項4に記載の液封式真空ポンプの運転方法。
【請求項6】
前記循環流路を通じて前記液封式真空ポンプの過剰の封液を排出する請求項1~請求項5の何れか一項に記載の液封式真空ポンプの運転方法。
【請求項7】
液封式真空ポンプと、
前記液封式真空ポンプに接続された真空配管により内部が吸引される膜脱気部材と、
前記真空配管から液体を排出する排出手段と、
前記液封式真空ポンプに接続され封液を循環させる循環流路と、
前記液封式真空ポンプに加圧した前記封液を供給する供給部材と、
を有する膜脱気装置。
【請求項8】
原水から、不純物が除去された純水を製造する純水製造装置と、
前記純水製造装置の一部を成し前記純水の製造途中の処理水、又は製造された前記純水から気体を除去する請求項7に記載の膜脱気装置と、
を有する純水製造システム。
【請求項9】
原水から、不純物が除去された純水を製造する純水製造装置と、
前記純水製造装置の一部を成し前記純水の製造途中の処理水、又は製造された前記純水から気体を除去する膜脱気装置と、
を備えた純水製造システムにより純水を製造する純水製造方法であって、
前記膜脱気装置と液封式真空ポンプとを接続する真空配管から液体を排出し、
封液を加圧供給し前記液封式真空ポンプに所定量満たすと共に、前記真空配管の圧力が所定圧力に減圧されるまで前記液封式真空ポンプを駆動し、
前記真空配管の圧力が所定圧力に減圧されると加圧した前記封液の前記液封式真空ポンプへの供給を停止し、前記液封式真空ポンプから循環流路に前記封液を循環させ前記封液が前記液封式真空ポンプに所定量存在している状態を維持する、
純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、液封式ポンプの運転方法、膜脱気装置、純水製造システム及び純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水製造装置等の一部を成す膜脱気装置では、膜脱気装置における気相側に凝縮水が発生する。この凝縮水は、膜脱気装置の不具合を起こす要因となり得る。この凝縮水により、例えば、真空ポンプの運転が不良となったり、脱気時に気体が透過する膜面積が減少し、性能低下を引き起したりすることがある。
【0003】
このような不都合を解消するために、特許文献1には、通水脱気工程を停止した後に、中空糸膜内部に不活性ガスを供給して真空を解消することで、中空糸膜が正常な状態を維持する膜脱気装置の運転方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-185203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、膜脱気装置等を吸引する液封式真空ポンプでは、循環流路によって封液を循環させるようにした構成のものがある。
【0006】
ここで、たとえば膜脱気装置を停止した後にあらためて駆動(起動)する場合等において、膜脱気装置から液封式真空ポンプに至る真空配管に液体が残留して真空度が低くなると共に、液封式真空ポンプの内部においても真空度が低くなることがある。もしくは、膜脱気装置の停止後に、真空配管内が常圧に戻る場合もあり得る。
【0007】
液封式真空ポンプは、内部が所定の真空状態で運転され、封液を吐出するには一定以上の真空度が必要である。したがって、このように真空度が低いと、循環流路に封液を循環させることができず、液封式真空ポンプを駆動させることができない。
【0008】
しかしながら、真空配管の真空度が低くなっている状態でも、液封式真空ポンプを駆動できるようにする技術はない。たとえば、上記の特許文献1では、膜脱気装置の気相側に凝縮水が生じることで真空配管の真空度が低下し液封式真空ポンプが駆動できなくなるおそれがある、という点は考慮されていない。
【0009】
また、液封式真空ポンプが適正な駆動をするためには、液封式真空ポンプ内の封液量が適正となっている必要がある。例えば、液風式真空ポンプ内が封液で満たされたり、封液が不足したりしてしまうと、液封式真空ポンプ内は駆動できずに停止してしまう。
【0010】
本願の目的は、真空配管の真空度が低くなっている状態であっても、液封式真空ポンプを駆動することが可能な液封式真空ポンプの運転方法と、このような液封式真空ポンプを備えることで、真空配管の真空度が低くなっている状態であっても、被処理液から確実に脱気できる膜脱気装置、この膜脱気装置を備えた純水製造システム、及び、この純水製造システムによる純水製造方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一態様の液封式真空ポンプの運転方法では、液封式真空ポンプに接続された真空配管から液体を排出し、封液を加圧し前記液封式真空ポンプに所定量満たすと共に前記真空配管の圧力が所定圧力に減圧されるまで前記液封式真空ポンプを駆動し、前記真空配管の圧力が所定圧力に減圧されると加圧した前記封液の前記液封式真空ポンプへの供給を停止し、前記液封式真空ポンプから循環流路に前記封液を循環させ前記封液が前記液封式真空ポンプに所定量存在している状態を維持する。
【0012】
すなわち、液封式真空ポンプの起動時等に真空配管に液体が存在していても、この液体を排出するので、真空配管内の液体によって真空ポンプ内が満たされてしまい、液封式真空ポンプが駆動できない状態になる、という事態の発生を避けられる。
【0013】
そして、封液を加圧供給し液封式真空ポンプに所定量満たす。これにより、液封式真空ポンプの封液量を、駆動に適した量にできる。また、真空配管の圧力が所定圧力に減圧されるまで封液を加圧供給する状態で液封式真空ポンプを駆動するので、液封式真空ポンプが停止することなく運転を継続でき、真空配管の真空度を所定範囲に到達できる。
【0014】
真空配管の圧力が所定圧力に減圧されると、液封式真空ポンプへの封液の供給を停止する。そして、循環流路に封液を循環させ、封液が液封式真空ポンプに所定量存在している状態を維持する。これにより、循環流路を循環する封液を利用して液封式真空ポンプの運転状態を維持できる。
【0015】
このように、第一態様の液封式真空ポンプの運転方法では、真空配管の真空度が低くなっている状態であっても、液封式真空ポンプを駆動することが可能である。
【0016】
第二態様では、前記真空配管からの前記液体の排出を、前記真空配管への加圧気体の供給により行う。
【0017】
真空配管へ加圧気体を供給するので、真空配管からの液体の排出が容易である。
【0018】
第三態様では、前記真空配管への加圧気体の供給により前記真空配管内の前記液体を前記液封式真空ポンプに送る。
【0019】
真空配管の液体を液封式真空ポンプ以外の部材に排出する工程が不要であり、真空配管からの液体の排出が容易である。
【0020】
第四態様では、加圧した前記封液を前記循環流路の途中から前記液封式真空ポンプに供給する。
【0021】
加圧した封液を液封式真空ポンプに供給する流路の一部として循環流路を用いるので、封液の供給が容易である。
【0022】
第五態様では、加圧した前記封液を前記循環流路の途中の気液分離槽と前記液封式真空ポンプとの間の前記循環流路から導入する。
【0023】
したがって、加圧した封液を気液分離槽に送ることなく、液封式真空ポンプに供給することができる。
【0024】
第六態様では、前記循環流路を通じて前記液封式真空ポンプの過剰の封液を排出する。
【0025】
液封式真空ポンプの過剰の封液を循環流路により循環できるので、液封式真空ポンプの排液を液封式真空ポンプから直接的に廃棄する構成と比較して、封液が無駄にならない。
【0026】
第七態様の膜脱気装置では、液封式真空ポンプと、前記液封式真空ポンプに接続された真空配管により内部が吸引される膜脱気部材と、前記真空配管から液体を排出する排出手段と、前記液封式真空ポンプに接続され封液を循環させる循環流路と、前記液封式真空ポンプに加圧した前記封液を供給する供給部材と、を有する。
【0027】
この膜脱気装置では、排出手段を有するので、液封式真空ポンプの起動時等に真空配管に液体が存在していても、この液体を排出することで、真空配管の真空度を高い状態にでき、液封式真空ポンプの真空度も高い状態にできる。
【0028】
そして、供給部材により、加圧した封液を液封式真空ポンプに供給することで、液封式真空ポンプの封液量を、駆動に適した量にできる。真空配管の圧力が所定圧力に達するまで液封式真空ポンプを駆動することで、真空配管の真空度を所定範囲にできる。
【0029】
真空配管の圧力が所定圧力に達すると、供給部材による封液の供給を停止し、循環流路に封液を循環させる。すなわち、循環流路委を循環する封液を利用して液封式真空ポンプの運転状態を維持でき、膜脱気部材による脱気を行うことが可能である。膜脱気装置の停止により真空配管の真空度が低くなっている状態であっても、液封式真空ポンプを確実に駆動し、膜脱気部材による脱気を行うことが可能である。
【0030】
第八態様の純水製造システムでは、原水から、不純物が除去された純水を製造する純水製造装置と、前記純水製造装置の一部を成し前記純水の製造途中の処理水、又は製造された前記純水から気体を除去する第七態様の膜脱気装置と、を有する。
【0031】
この純水製造システムでは、第七態様の膜脱気装置を有しているので、膜脱気装置の停止により真空配管の真空度が低くなっている状態であっても、液封式真空ポンプを確実に駆動し、各脱気部材による脱気を行うことが可能である。そして、純水の製造途中の処理水、又は製造された前記純水から、膜脱気部材によって、気体を除去することが可能である。
【0032】
第九態様の純水製造方法では、原水から、不純物が除去された純水を製造する純水製造装置と、前記純水製造装置の一部を成し前記純水の製造途中の処理水、又は製造された前記純水から気体を除去する膜脱気装置と、を備えた純水製造システムにより純水を製造する純水製造方法であって、前記膜脱気装置と液封式真空ポンプとを接続する真空配管から液体を排出し、封液を加圧供給し前記液封式真空ポンプに所定量満たすと共に、前記真空配管の圧力が所定圧力に減圧されるまで前記液封式真空ポンプを駆動し、前記真空配管の圧力が所定圧力に減圧されると加圧した前記封液の前記液封式真空ポンプへの供給を停止し、前記液封式真空ポンプから循環流路に前記封液を循環させ前記封液が前記液封式真空ポンプに所定量存在している状態を維持する。
【0033】
この純水製造方法では、純水製造システムで純水を製造するにあたり、純水の製造途中の処理水、又は製造された純水から、膜脱気装置により気体を除去できる。膜脱気装置の内部は、液封式真空ポンプを用い、真空配管を通じて吸引される。
【0034】
液封式真空ポンプの起動時等に真空配管に液体が存在していても、この液体を排出するので、真空配管内の液体によって真空ポンプ内が満たされてしまい、液封式真空ポンプが駆動できない状態になる、という事態の発生を避けられる。
【0035】
そして、封液を加圧供給し液封式真空ポンプに所定量満たす。これにより、液封式真空ポンプの封液量を、駆動に適した量にできる。また、真空配管の圧力が所定圧力に減圧されるまで封液を加圧供給する状態で液封式真空ポンプを駆動するので、液封式真空ポンプが停止することなく運転を継続でき、真空配管の真空度を所定範囲に到達できる。
【0036】
真空配管の圧力が所定圧力に減圧されると、液封式真空ポンプへの封液の供給を停止する。そして、循環流路に封液を循環させ、封液が液封式真空ポンプに所定量存在している状態を維持する。これにより、循環流路を循環する封液を利用して液封式真空ポンプの運転状態を維持できる。
【0037】
このように、第九態様の純水製造方法では、真空配管の真空度が低くなっている状態であっても、液封式真空ポンプを駆動することが可能である。そして、液封式真空ポンプの運転により膜脱気装置の内部を吸引できる。
【発明の効果】
【0038】
本願では、真空配管の真空度が低くなっている状態であっても、液封式真空ポンプを駆動することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は第一実施形態の膜脱気装置を備えた純水製造システムの構成図である。
図2図2は第一実施形態の膜脱気装置を示す構成図である。
図3図3は第一実施形態の膜脱気装置の駆動途中の状態を示す構成図である。
図4図4は第一実施形態の膜脱気装置の駆動途中の状態を示す構成図である。
図5図5は第一実施形態の膜脱気装置の駆動途中の状態を示す構成図である。
図6図6は第一実施形態の膜脱気装置の駆動途中の状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して第一実施形態に係る液封式真空ポンプによって内部が吸引される膜脱気装置と、この膜脱気装置を備えた純水製造システムについて説明する。
【0041】
第一実施形態の純水製造システム12は、前処理装置14、一次純水装置16、純水タンク18、二次純水装置20、及びユースポイント22を有している。
【0042】
前処理装置14には、原水が供給される。原水としては、工業用水、水道水、地下水、河川水等を挙げることができる。
【0043】
前処理装置14では、除濁等の処理を行い、原水中の懸濁物質及び有機物の一部が除去された前処理水を得る。なお、原水の水質によっては、前処理装置14は省略してもよい。
【0044】
一次純水装置16では、活性炭等の吸着剤を用いて、前処理水に残存する粒子を吸着するとともに、逆浸透膜装置等の膜濾過装置を用いて、無機イオン、有機物、微粒子等を除去する。また、一次純水装置16がイオン交換装置や紫外線照射装置を備えていてもよい。イオン交換装置は、前処理水から、残存するイオン等を除去する。
【0045】
第一実施形態では、一次純水装置16は、さらに、膜脱気装置24(図2参照)を用いて、前処理水から溶存酸素等の溶存ガスの除去を行う。
【0046】
一次純水装置16における上記した各種装置の位置、すなわち前処理水の流れ方向における順序は、各処理に適切な順序とされ、特定の順序に限定されない。
【0047】
一次純水装置16では、このようにして、前処理装置14で処理して得られた前処理水に対し、必要に応じてさらに清浄化処理を行って不純物を除去し、一次純水を得る。
【0048】
一次純水装置16で得られた一次純水は、純水タンク18へ送水される。純水タンク18は、一次純水装置16で得られた一次純水を一時的に貯留する容器である。
【0049】
純水タンク18に貯留された一次純水は、二次純水装置20に送られる。
【0050】
二次純水装置20は、たとえば、紫外線照射装置を有している。紫外線照射装置は、一次純水に対して紫外線を照射することにより、一次純水中の有機物の分解や生菌の死滅処理(殺菌)等を行う。二次純水装置20はさらに、紫外線照射装置で生じた有機酸などの不純物イオンをイオン交換装置によって除去する構成を有していてもよい。また、二次純水装置20においても一次純水装置16と同様に、膜脱気装置によって一次純水中の気体、特に溶存酸素を除去する構成としてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態の二次純水装置20は、膜濾過装置(UF)を有している。膜濾過装置(UF)は、一次純水から微粒子を除去して超純水を得る。
【0052】
二次純水装置20によって得られた超純水は、使用場所であるユースポイント22へ送出される。送出された超純水のうち、使用されなかった超純水はそのまま一次純水装置16または純水タンク18へ循環される。
【0053】
図2には、一次純水装置16で用いられる膜脱気装置24が示されている。膜脱気装置24は、被処理液である一次純水が流れる一次純水流路に設置されており、膜脱気部材26を有している。膜脱気部材26の内部には、一例として中空糸膜が配置されており、この中空糸膜によって、気相部と液相部とに区画されている。
【0054】
膜脱気部材26の液相部には、脱気の対象である液体、本願の開示の技術では一次純水が供給される。そして、気相部が、後述する液封式真空ポンプ28によって減圧されることで、一次純水中の気体が中空糸膜を透過して気相部に移動する。これにより、一次純水から、溶存ガスが除去される。
【0055】
膜脱気部材26と液封式真空ポンプ28とは真空配管30で接続されている。さらに、本実施形態では、膜脱気部材26の気相部には気体供給配管32が接続されている。気体供給配管32には気体供給弁34が設けられている。図示しない気体供給ポンプを駆動し、且つ気体供給弁34を開弁状態とすることで、膜脱気部材26の気相部に、所定のガス(たとえばNガス)を供給することが可能である。
【0056】
真空配管30には、内部の圧力を検知する気体圧力センサ36と、この真空配管30を開閉する真空開閉弁38とが設けられている。
【0057】
液封式真空ポンプ28には、循環流路40が接続されている。循環流路40は、気液分離槽42及び熱交換器44を有しており、複数の循環配管46A、46B及び46Cにより、液封式真空ポンプ28から、封液が気液分離槽42及び熱交換器44を経て液封式真空ポンプ28に循環するように構成されている。このように封液を循環させることで、液封式真空ポンプ28から排出された封液を液封式真空ポンプ28に戻して再利用することが可能である。
【0058】
液封式真空ポンプ28から排出した封液には気体が含まれていることがある。気液分離槽42では、この封液に対し気液分離を行う。そして、気液分離槽42によって気体が除去された封液が、循環配管46Bに流れ熱交換器44に至る。
【0059】
熱交換器44では、気液分離槽42から液封式真空ポンプ28に送られる封液と、図示しない熱媒との間で熱交換を行い、封液の液温を所定範囲内にする。熱交換器44によって温度調整された封液は、循環配管46Cに流れる。
【0060】
循環配管46Cには循環開閉弁48及び流量計50が設けられている。循環開閉弁48を開弁状態とすることで、循環流路40において封液を循環させることが可能となる。
【0061】
流量計50は、循環流路40における封液の循環量(単位時間あたりに流れる封液の量)を検出する。検出された循環量のデータは、図示しない制御装置に送られる。制御装置では、封液の循環量が所定範囲内にある場合は液封式真空ポンプ28を駆動状態とし、封液の循環量が所定範囲にない場合に、液封式真空ポンプ28を停止状態とするように制御する。
【0062】
気液分離槽42には、封液供給配管52と、封液排出配管54とが接続されている。封液供給配管52には、封液供給弁56が設けられている。さらに、封液供給配管52には、図示しない加圧ポンプが設けられている。加圧ポンプを駆動し、封液供給弁56を開弁することで、封液を気液分離槽42に供給することができる。気液分離槽42からオーバーフローした封液は、封液排出配管54から排出される。
【0063】
封液供給配管52からは、封液供給弁56よりも封液の流れ方向の上流側(図2の右側)から、分岐配管58が分岐している。この分岐配管58は、循環開閉弁48と流量計50の間で循環配管46Cに合流している。
【0064】
分岐配管58には分岐開閉弁60が設けられている。封液供給弁56を閉弁状態とすると共に分岐開閉弁60を開弁状態にすることで、加圧された封液を、気液分離槽42を経由することなく、液封式真空ポンプ28に送ることができる。
【0065】
次に、本実施形態の作用、及び、液封式真空ポンプの運転方法について説明する。なお、図3図6における各弁において、閉弁状態にある場合を白抜きで、開弁状態にある場合を黒塗りで表示している。また、各配管において、流体が流れている状態を太線で、流体が流れていない状態を細線で表示している。
【0066】
ここでは、膜脱気装置24が停止した状態から、運転を再開する場合を例に挙げる。この場合、真空配管30には、たとえば膜脱気装置24の気相側に生じた凝縮水(真空配管30内の液体の一例)が存在することがある。そしてこの凝縮水により真空配管30の真空度が低い状態となってしまい、液封式真空ポンプ28の内部の真空度も低い状態となっていることがある。なお、このように真空配管30の真空度が低く、液封式真空ポンプ28の内部の真空度も低い状態は、たとえば、新規の膜脱気装置24を運転開始する場合や、既設の膜脱気装置24において、一部の要素、一例として液封式真空ポンプ28の交換を行った場合、もしくは、何らかの理由で膜脱気装置24が緊急停止した際にも生じ得る。
【0067】
ところが、液封式真空ポンプ28は、内部が所定の真空度になっている状態で駆動されるポンプである。そして、液封式真空ポンプ28の真空度が低い場合には、封液を循環流路40において循環させることができない。この場合には、循環流路40における封液の循環量が所定範囲にないことを流量計50が検知するので、図示しない制御装置は、液封式真空ポンプ28がたとえ駆動していても、この液封式真空ポンプ28の駆動を停止することになってしまう。
【0068】
これに対し、本願の開示の技術の液封式真空ポンプの運転方法では、まず、図3に示すように、液封式真空ポンプ28を駆動させずに、真空配管30から凝縮水を排出する。本実施形態の膜脱気装置24では、膜脱気部材26に気体供給配管32が接続されているので、たとえば、気体供給弁34及び真空開閉弁38を共に開弁状態にし、気体供給配管32から膜脱気装置24を経て真空配管30に気体を流す。これにより、真空配管30の液体を、供給された気体と共に液封式真空ポンプ28に送りこみ、真空配管30から凝縮水を排出できる。この時気体を供給する圧力は、真空配管30内の凝縮水が排出できれば良いので、高い圧力は必要でない。例えば、供給圧は、0.01~0.4MPaが好ましく、0.04~1.5MPaがより好ましい。気体としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスや、空気等を用いることが可能である。
【0069】
ここで、液封式真空ポンプ28から排出した封液は、循環配管46Aを経て気液分離槽42に流れる。さらに、気液分離槽42からした封液は、封液排出配管54から外部に排出される。
【0070】
なお、この段階では、循環開閉弁48及び分岐開閉弁60は閉弁状態とし、循環流路40から封液が液封式真空ポンプ28に流入しないようにする。また、封液供給弁56は開弁状態とすることで、加圧された封液が気液分離槽42に供給されるようにしておくと良い。
【0071】
次に、図4に示すように、封液供給弁56を閉弁状態にすると共に、分岐開閉弁60を開弁状態にする。これにより、加圧された封液が分岐配管58及び循環配管46Cの一部(分岐配管58の合流部よりも下流側の部分)を経て、液封式真空ポンプ28に送られる。この状態においても、液封式真空ポンプ28から排出した封液は、循環配管46Aを経て気液分離槽42に流れる。ただし、循環開閉弁48は閉弁状態を維持しており、封液が気液分離槽42から液封式真空ポンプ28に流れることはない。加圧供給する封液は、水が好ましい。市水、工水等の原水、純水、超純水、精製水等及びこれらを製造する際の中間処理水が使用可能である。膜脱気装置24内、特に膜脱気部材26内を清浄に保つ観点から、封水は、純水、超純水、精製水等及びこれらを製造する際の中間処理水がより好ましく、純水、超純水がさらに好ましい。封液の供給圧は、0.05~0.4MPaが好ましく、0.1~0.2MPaがより好ましい。
【0072】
そして、図5に示すように、図示しない制御装置により液封式真空ポンプ28を駆動し、真空配管30から気体を吸引する。これにより、真空配管30の真空度が上昇する。また、液封式真空ポンプ28の真空度も上昇する。気体圧力センサ36で真空配管30の圧力を検知しているので、真空配管30の真空度が所定範囲に達する(所定圧力に減圧される)まで、液封式真空ポンプ28を継続して駆動する。
【0073】
真空配管30の真空度が所定範囲に達すると、図6に示すように、分岐開閉弁60を閉弁状態にすると共に、循環開閉弁48を開弁状態にする。これにより、循環流路40を循環する封液により、液封式真空ポンプ28に封液が送られる。すなわち、液封式真空ポンプ28には所定量の封液が存在している状態が維持され、液封式真空ポンプ28が継続的に運転される。
【0074】
以上の説明から分かるように、本実施形態では、真空配管30に液体が存在し真空配管30の真空度が低くなっている状態であっても、液封式真空ポンプ28を駆動することが可能である。
【0075】
液封式真空ポンプ28を備えた膜脱気装置24は、本実施形態では一次純水装置16に組み込まれている。すなわち、一次純水装置16によって一次純水を製造する過程において、膜脱気装置24を停止した状態から確実に駆動し、被処理水(前処理水)から脱気することが可能である。
【0076】
このように上記では、膜脱気装置24が一次純水装置16に組み込まれた例を挙げたが、一次純水装置16に代えて、あるいは併用して、二次純水装置20に膜脱気装置24が組み込まれていてもよい。要するに、膜脱気装置24が、純水製造システム12の一部に組み込まれていればよい。
【0077】
また、本願の開示の技術に係る純水製造システムとしては、二次純水装置20を備えた構成に限定されず、一次純水装置16で製造された純水がユースポイント22に送られる構成でもよい。二次純水装置20を備えた構成では、二次純水装置20によって得られた純水は、一次純水装置16で得られた一次純水よりもさらに不純物が除去されており、超純水と称されることがある。すなわち、本願の開示の技術に係る純水製造システムには、実質的に超純水を製造することが可能な超純水製造システムも含まれる。
【0078】
また、本願の開示の技術に係る純水製造装置では、原水の種類によっては、前処理装置14を省略してもよい場合がある。すなわち、前処理装置14を有さない構成であっても、本願の開示の技術の純水製造システムに含まれる。
【0079】
上記の例では、真空配管30から液体を排出する排出手段の一例として、気体供給配管32から供給される気体の圧力により液封式真空ポンプ28に液体を送る構成を挙げたが、真空配管30から液体を排出する排出手段の構成はこれに限定されない。たとえば、真空配管30の最下部に液封式真空ポンプ28を位置させることで、真空配管30内の液体が重力により液封式真空ポンプ28に排出される構成でもよい。上記実施形態のように真空配管30に加圧された気体を供給すること構成とすることで、真空配管30内の液体をより確実にかつ短時間で排出することが可能である。
【0080】
また、真空配管30内の液体の排出先は、液封式真空ポンプ28に限定されない。たとえば、真空配管30における鉛直方向の最下部から、先端が開放された排出配管を分岐すると共にこの排出配管を開閉する開閉弁を設けた構成としてもよい。この構成では、真空配管30から液体を排出する場合には、この開閉弁を開弁状態とすればよい。本願の第一実施形態では、真空配管30内の液体が液封式真空ポンプ28に移動するようにしているので、上記した真空配管30からの分岐配管や開閉弁が不要である。また、開閉弁の開閉操作も不要であり、簡易に真空配管30から液体を排出できる。
【0081】
また、上記の例では、液封式真空ポンプ28に加圧した封液を供給する供給部材の一例として、分岐配管58を封液供給配管52から分岐させると共に、循環流路40(循環配管46C)に合流する構成を挙げた。この分岐配管58は、封液供給配管52や循環流路40とは独立して設けられていてもよい。上記の分岐配管58のように、封液供給配管52から分岐し、循環流路40に合流する配管を設けた構成では、封液供給配管52及び循環流路40が、液封式真空ポンプ28に加圧された封液を送る流路の一部を兼ねるので、構造を簡素化できる。
【0082】
分岐配管58は、循環流路40において気液分離槽42よりも下流側で合流している。したがって、加圧した封液を気液分離槽42に送ることなく、液封式真空ポンプ28に供給できる。
【0083】
上記では、液封式真空ポンプ28に加圧した封液を供給する過程で排出した封液を、循環流路40を通じて気液分離槽42に排出している。液封式真空ポンプ28から排出した封液が循環流路40を流れて、再度液封式真空ポンプ28に戻るようになり、封液の無駄が生じない。
【符号の説明】
【0084】
12 純水製造システム
14 前処理装置
16 一次純水装置
18 純水タンク
20 二次純水装置
20 一時純水装置
22 ユースポイント
24 膜脱気装置
26 膜脱気部材
28 液封式真空ポンプ
30 真空配管
32 気体供給配管
34 気体供給弁
36 気体圧力センサ
38 真空開閉弁
40 循環流路
42 気液分離槽
44 熱交換器
46A、46B、46C 循環配管
48 循環開閉弁
50 流量計
52 封液供給配管
54 封液排出配管
56 封液供給弁
58 分岐配管
60 分岐開閉弁
【要約】
【課題】真空配管の真空度が低くなっている状態であっても、液封式真空ポンプを確実に駆動する。
【解決手段】液封式真空ポンプの運転方法は、液封式真空ポンプ28に接続された真空配管30から液体を排出し、封液を加圧供給し液封式真空ポンプ28に所定量満たすと共に真空配管30の圧力が所定圧力に減圧されるまで液封式真空ポンプ28を駆動し、真空配管30の圧力が所定圧力に減圧されると加圧した封液の液封式真空ポンプ28への供給を停止し、液封式真空ポンプ28から循環流路40に封液を循環させ封液が液封式真空ポンプ28に所定量存在している状態を維持する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6