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特許7155384ガストーチ及びそれが装着されるガスボンベ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ガストーチ及びそれが装着されるガスボンベ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/28 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
F23D14/28 D
F23D14/28 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021214727
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591098673
【氏名又は名称】小林 始
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 始
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0134403(KR,A)
【文献】特開平08-338595(JP,A)
【文献】特開2017-150739(JP,A)
【文献】特開2000-046309(JP,A)
【文献】実開平03-079017(JP,U)
【文献】実開昭56-033420(JP,U)
【文献】特開2003-166703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00 - 14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化されたガスが充填されたガスボンベに装着されて火炎を噴出するガストーチであって、
その内部にガスが流動する流路が形成され、該流路に前記ガスボンベ内からのガスが供給されるように前記ガスボンベに装着されるトーチ本体と、
前記トーチ本体側から突出する筒状に成形され、その突出した端側である先端側には火炎が放射される放射口が形成され、その内周面側の空間には前記流路から流入したガスが前記放射口に向かって流動する流動スペースが形成され、該流動スペースに燃焼部が設けられた放射管と、
前記燃焼部で発生した熱によってガスボンベが加熱されるように、前記燃焼部側の熱を前記トーチ本体におけるガスボンベに装着される部分であるジョイント部に伝導する伝導手段とを備え
前記トーチ本体は、前記ジョイント部と、前記流路が形成された流路形成部とを有し、
前記放射管は、前記トーチ本体の前記流路形成部から突出形成され、
前記ジョイント部及び前記流路形成部は熱伝導可能な金属材料から構成され、
前記伝導手段は、前記燃焼部の熱を前流路形成部に伝導し、該流路形成部の熱を前記ジョイント部に伝導し、該ジョイント部の熱によって前記ガスボンベを加熱するように構成され
ことを特徴とするガストーチ。
【請求項2】
前記伝導手段は、少なくともその一部が前記放射管の内周面側に挿入され且つ前記放射管と同一の方向を向いた筒状に形成された伝導パイプを有し、
前記伝導パイプの内周面側の空間におけるガスが流動する部分は、前記流動スペースの少なくとも一部を構成するガス流動部であり、
前記伝導パイプは前記燃焼部側で発生した熱を前記トーチ本体側に伝導するように構成された
請求項1に記載のガストーチ。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかに記載のガストーチが装着されるガスボンベであって、
内部にガスが充填されるボンベ本体と、
前記ボンベ本体側から前記ガストーチ側に突出する筒状に成形され、その外周面に前記ガストーチの筒状のジョイント部が外装されて固定される被装着部と、
その少なくとも一部が前記被装着部の内周面側に収容された状態で固定され、その内部に空間が形成されたハウジングと、
弁体とを備え、
前記被装着部の軸方向における前記ガストーチ側の端部には、該ガストーチ側にガスを供給するガス供給口が形成され、その反対側の端部の少なくとも一部は前記ボンベ本体側に向かって開放され、
前記弁体は前記ガス供給口を開閉するように前記ハウジングの内部側に支持され、
前記被装着部は前記ジョイント部側の熱を伝導させることが可能な金属材料から構成された
ことを特徴とするガスボンベ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記被装着部の内周面側に嵌合して固定され、
前記ハウジングは、前記被装着部側の熱を伝導させることが可能な金属材料から構成された
請求項3に記載のガスボンベ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎を噴出するガストーチ及びそれが装着されるガスボンベに関する。
【背景技術】
【0002】
液化されたガスが充填されたガスボンベと、該ガスボンベに装着されて火炎を噴出するガストーチとが従来公知である。
【0003】
具体的な構成について説明すると、ガストーチは、トーチ本体と、該トーチ本体側から突出する筒状に成形された放射管とを備え、トーチ本体の内部にはガスが流動する流路が形成され、トーチ本体は、ガスボンベ内からのガスが前記流路に供給されるようにガスボンベに装着され、放射管の突出した端側である先端側には火炎が放射される放射口が形成され、放射管の内周面側の空間には前記流路から流入したガスが前記放射口に向かって流動する流動スペースが形成され、該流動スペースにガスが燃焼する燃焼部が設けられている。
【0004】
このような構造のガストーチ及びそれが装着されるガスボンベでは、ガスボンベ内で液化された状態のガスを、如何に効率的に気化させてスムーズに燃焼させるかが重要になる。このような観点から、燃料部で発生した熱をトーチ本体側に伝導させる棒状の伝導パイプを設けたガストーチが開発されて公知になっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
上記文献に記載の技術によれば、伝導された熱によってトーチ本体側のガスが加熱され、その気化が促進される。
【0006】
ところで、ガスの気化効率を全体的に向上させるためには、ガスボンベ内でガスを気化させることも重要な要素の1つになる。しかし、ガスの気化に伴う熱吸収によってガスボンベ自体が冷却され、全体的なガスの気化効率を低下させるという問題がある。ガストーチから継続的に長時間火炎を噴出させた場合、この問題が特に顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-304094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、火炎を噴出するガストーチ及びそれが装着されるガスボンベであって、ガスボンベ側でのガスの気化が阻害される事態を効率的に防止できるガストーチ及びそれが装着されるガスボンベを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のガストーチは、液化されたガスが充填されたガスボンベに装着されて火炎を噴出するガストーチであって、その内部にガスが流動する流路が形成され、該流路に前記ガスボンベ内からのガスが供給されるように前記ガスボンベに装着されるトーチ本体と、前記トーチ本体側から突出する筒状に成形され、その突出した端側である先端側には火炎が放射される放射口が形成され、その内周面側の空間には前記流路から流入したガスが前記放射口に向かって流動する流動スペースが形成され、該流動スペースに燃焼部が設けられた放射管と、前記燃焼部で発生した熱によってガスボンベが加熱されるように、前記燃焼部側の熱を前記トーチ本体におけるガスボンベに装着される部分であるジョイント部に伝導する伝導手段とを備え、前記トーチ本体は、前記ジョイント部と、前記流路が形成された流路形成部とを有し、前記放射管は、前記トーチ本体の前記流路形成部から突出形成され、前記ジョイント部及び前記流路形成部は熱伝導可能な金属材料から構成され、前記伝導手段は、前記燃焼部の熱を前流路形成部に伝導し、該流路形成部の熱を前記ジョイント部に伝導し、該ジョイント部の熱によって前記ガスボンベを加熱するように構成されたことを特徴とする。
【0010】
前記伝導手段は、少なくともその一部が前記放射管の内周面側に挿入され且つ前記放射管と同一の方向を向いた筒状に形成された伝導パイプを有し、前記伝導パイプの内周面側の空間におけるガスが流動する部分は、前記流動スペースの少なくとも一部を構成するガス流動部であり、前記伝導パイプは前記燃焼部側で発生した熱を前記トーチ本体側に伝導するように構成されたものとしてもよい。
【0011】
一方、本発明のガスボンベは、前記ガストーチが装着されるガスボンベであって、内部にガスが充填されるボンベ本体と、前記ボンベ本体側から前記ガストーチ側に突出する筒状に成形され、その外周面に前記ガストーチの筒状のジョイント部が外装されて固定される被装着部と、その少なくとも一部が前記被装着部の内周面側に収容された状態で固定され、その内部に空間が形成されたハウジングと、弁体とを備え、前記被装着部の軸方向における前記ガストーチ側の端部には、該ガストーチ側にガスを供給するガス供給口が形成され、その反対側の端部の少なくとも一部は前記ボンベ本体側に向かって開放され、前記弁体は前記ガス供給口を開閉するように前記ハウジングの内部側に支持され、前記被装着部は前記ジョイント部側の熱を伝導させることが可能な金属材料から構成されたことを特徴とする。
【0012】
前記ハウジングは、前記被装着部の内周面側に嵌合して固定され、前記ハウジングは、前記被装着部側の熱を伝導させることが可能な金属材料から構成されたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように構成される本発明によれば、ガストーチ側でのガスの燃焼により発生した熱によってガスボンベが加熱されるため、気化熱による冷却に起因したガスボンベ側でのガスの気化効率の低下が効率的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用したガストーチの平面図である。
図2】本発明を適用したガストーチの側面図である。
図3図1及び図2に示すガストーチの側断面図である。
図4図1及び図2に示すガストーチを、本発明を適用したガスボンベに装着した状態を示す要部側面図である。
図5】閉塞キャップの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図2は本発明を適用したガストーチの平面図及び側面図であり、図3図1及び図2に示すガストーチの側断面図であり、図4図1及び図2に示すガストーチを、本発明を適用したガスボンベに装着した状態を示す要部側面図である。図示するガストーチ1は、カセットコンロに装着可能なガスボンベ50に着脱可能に装着される。図示するガスボンベは一般的に「CB缶」と呼ばれるカセットボンベであるが、「OD缶」と呼ばれるタイプのガスボンベに装着するガストーチに本発明を適用することも勿論可能である。
【0016】
まず、ガスボンベ50について説明すると、該ガスボンベ50は、有底の円筒状に成形されたボンベ本体51と、該ボンベ本体51の軸方向における開口した一端側(図示する例では上端側)を閉塞し且つ該方向においてボンベ本体51から離間する側に盛り上がったドーム状に形成された蓋部52と、該蓋部52の盛り上がった中央部分(言い換えると、ボンベ本体51の軸心寄り部分)を閉塞するマウンテンカップ53と、を有している。
【0017】
マウンテンカップ53は、蓋部52の盛り上がった中央部分からボンベ本体51側に近づく方向に窪んだ皿状に成形され、その底部54がフラットに形成されている。この底部54の中央部分には、ボンベ本体51の軸方向において該ボンベ本体51から離間する側であるガストーチ1側に突出するケース部(被装着部)56が一体的に設けられている。ケース部56は、ボンベ本体51と同一軸心となる円筒状に成形されている。ケース部56の円筒形状の軸方向におけるボンベ本体51側の端部は該ボンベ本体51の内部側に向かって全体的に開放され、その反対側であるガストーチ1側の端部にはボンベ本体51の外部に向かって開口したガス供給口56aが穿設されている。
【0018】
ケース部56の内周面側には、ボンベ本体51と同一の方向に円筒状をなすハウジング57の外周面の一部が挿入された状態で嵌合固定されている。ハウジング57の筒状形状の軸方向におけるボンベ本体51側の端部には、ボンベ本体51の内部に向かって開口した連通孔57aが穿設され、その反対側が開放されてガス供給口56aを介してボンベ本体51の外部と連通している。ハウジング57の内周面側の空間には、弁体58が、該ハウジング57の軸方向に往復移動可能に収容して支持されている。
【0019】
弁体58は、ボンベ本体51から遠ざかる側にスライドすることによって、ガス供給口56aを閉塞し、ガスボンベ50の内部に充填され且つハウジング57の内周面側の空間までに流入したブダン等のガスがその外部に流出することを停止(禁止)させる閉状態への切換を行う一方で、ボンベ本体51に近づく側にスライドすることによって、ガス供給口56aを開放し、上述のガスがその外部に流出することを許容する開状態への切換を行うように構成されている。このようにしてガス供給口56aを開閉するようにハウジング57の内部側に可動可能に支持された弁体58は、ハウジング57内に収容された圧縮スプリング59等の弾性部材によって、閉状態への切換側に常時弾性的に付勢されている。
【0020】
また、ハウジング57においてケース部56から突出し且つボンベ本体51の内部の空間に臨んだ部分の外周面には、有底の円筒状に成形されたキャップ61が装着されている。キャップ61は、気化された状態のガスの流動を許容するとともに液化された状態のガスを含侵させることが可能な材料(例えば、真鍮又はセラミック材等の粉体を焼成して得られる材料)から構成されている。このため、キャップ61の外周面側の空間で液体状態のガスは、該キャップ61を構成する材料に含侵され、気化が促進されながら該キャップ61の内周面側の空間まで移動し、連通孔57aを介してハウジング57の内周面側に流入する。
【0021】
続いて、ガストーチ1について説明すると、該ガストーチ1は、その内部にガスが流動する流路2a,2bが形成されたトーチ本体2と、該トーチ本体2側から所定の方向に一直線状に突出する円筒状に成形され、その突出した端側である先端側には火炎が放射される放射口3が形成され、その内周面側の空間が前記流路2a,2bから流入したガスが前記放射口3に向かって流動する流動スペース4の少なくとも一部(本例では全て)を構成した放射管6と、トーチ本体2側から流動スペース4側(具体的には、放射管6と同一の方向)に突出して形成され、流路2a,2bから流動してくるガスを該流動スペース4に噴出させるノズル7と、ガスの燃焼によって発生する熱によってノズルを加熱する加熱手段と、ガスの燃焼によって発生する熱をガスボンベ50側に伝導する伝導手段と、を備えている。
【0022】
なお、本例では、便宜上、ガスボンベ50は、ケース部56の突出端側を真上に向けた状態において、火炎の平面視における放射方向を前方と定義するものとする。
【0023】
トーチ本体2は、上述した流路2a,2bが形成された金属製の流路形成側部材(流路形成部)8と、流路形成側部材8に形成された流路2a,2bの開閉を行う開閉機構9と、流路形成部8からガスボンベ50側(真下側)に突出する金属製のジョイント部材(ジョイント部)11と、流路形成部材8及び開閉機構9の大部分とジョイント部材11の一部とをカバーする樹脂製のカバー体12と、を有している。
【0024】
ジョイント部材11は、ガスボンベ50のケース部56と同一軸心となる状態で該ケース部56の外周面に装着可能な円筒状に成形された被挿入部13と、被挿入部13よりも小径で該被挿入部13と同一の軸心となる円筒状形状に成形され且つガスボンベ50から離間する方向(真上側)に突出する挿入部14と、被挿入部13の内周面側の空間に配置形成され且つ該被挿入部13と同一軸心となるようにしてガスボンベ50側に突出形成された押込みピン16と、を有している。
【0025】
被挿入部13の内周面には図示しない雌ネジが形成される一方で、ケース部56の内周面には、前記雌ネジをネジ係合される図示しない雄ネジが形成されている。このような構成によれば、ケース部56が係脱可能にネジ係合された状態で被挿入部13に挿入されることによって、ジョイント部材11を含むトーチ本体2がガスボンベ50に着脱可能に装着して固定される。
【0026】
また、このようにしてケース部56を被挿入部13に挿入させた場合、トーチ本体2側の押込みピン16が、圧縮スプリング59の弾性力に抗して弁体58を開状態への切換側にスライドし、ハウジング57の内部のガスが挿入部13の内周面側の空間に流入する。すなわち、挿入部14の内周面側の空間は、ガスボンベ50内からのガスをトーチ本体2に供給する供給部17になる。この機能を実現するため、自身の一部を構成する連通孔17aを介して、該供給部17は流路形成側部材8側にスペースと連通している。
【0027】
流路形成部材8は、ジョイント部材11の筒状形状の軸心方向に対して交差する方向(具体的には水平方向であり、以下、「前後方向」)に形成された主要部18と、該主要部18からジョイント部材11に向かって突出し且つ該ジョイント部材11と同一軸心となる円筒状に形成された上流側接続部19と、該主要部18から放射管6の形成方向(図示する例では、前方斜め上方)に突出した円筒状に成形された下流側接続部21とを一体的に有している。
【0028】
上流側接続部19は、その筒状形成がジョイント部材11側に開放され、その筒状形状の内周面側には雌ネジ19aが形成されている。この雌ネジ19aと係脱可能にネジ係合した状態で挿入可能なように、上述した挿入部14の径が設定されるとともに該挿入部14の外周面には雄ネジ14aが形成されている。そして、この挿入部14を、上流側接続部19の内周面に係脱可能に挿入して固定することによって、ジョイント部材11が流路形成部材8に装着して固定される。このようにしてジョイント部材11を流路形成部材8に固定させることによって、供給部17に供給されたガスが上流側接続部19の筒状形状の内周面側の空間に供給される状態に切り換えられる。
【0029】
下流側接続部21は、主要部18の前部から前方斜め上方に向かって突出し且つ放射管6と同一の軸心をなす円筒状に成形され、その筒状形状の突出端側(先端側)が開放されている。この下流側接続部21の筒状形状の内周面側には、前記ノズル7の突出端と反対の端部(基端部)寄り部分が挿脱可能に挿入して固定されている。
【0030】
具体的には、ノズル7が、放射管6と同一の軸心を有し且つ該放射管6及び下流側接続部21よりも小径の円筒状に成形され、その筒形状の外周面の基端部には、下流側接続部21の内周面に形成された雌ネジ21aとネジ係合する雄ネジ7aが形成されている。ノズル7の内部には、上述した流路2a,2bを介して下流側接続部21の内周面側の空間まで流動してきたガスが流入する空洞部7bが形成されている。空洞部7bに流入したガスは、ノズル7の先端部に開口形成された噴出口7cから前記流動スペース4に噴出される。
【0031】
主要部18には、開閉機構9の一部が収容可能な水平方向(具体的には、前後方向)に延びる円柱状の空間であるとともにガスの流動経路の開閉切換を行う空間でもある切換スペース18aと、切換スペース18aと上流側接続部19の筒状形状の内周面側の空間とを連通させる上述の流路2aと、切換スペース18aと下流側接続部21の筒状形状の内周面側の空間とを連通させる上述の流路2bとが形成されている。
【0032】
切換スペース18aは、その後端側が開放されている。ガスの流動上流側の流路2aは、上流側接続部19の軸心上に形成される。ガスの流動下流側の流路2bは、切換スペース18aの前端部から下流側接続部21の筒状形状の内周面側の空間に向かって前方斜め上方に延設されている。
【0033】
開閉機構9は、その少なくとも一部が切換スペース18aに嵌合した状態で挿入されるプランジャー状の弁体22と、弁体22の外周面と切換スペース18aの内周面との間に設けられ且つ切換スペース18aでのガスの前後方向への流動(特に、流路2bに向かう方向と反対の方向、具体的には後方への流動)を規制又は禁止するOリング等のシール材23と、弁体22側に連結され且つ手動操作が可能なようにカバー体12の外部にその少なくとも一部(図示する例では大部分)が位置する操作具24とを有している。
【0034】
弁体22は、金属製又は合成樹脂製の材料から構成され、その全長が切換スペース18aと同一の方向に向けられ、その全長方向における放射管6に近い側の部分が、切換スペース18aの内部に挿入される。弁体22の外周面の少なくとも一部には雄ネジ22aが形成されている。この雄ネジ22aは、切換スペース18aを構成する内周面の一部に形成された雌ネジ18bと係脱可能にネジ係合するように構成される。弁体22を、その軸回り方向に回転させることによって、その軸方向にスライド移動させることが可能になる。
【0035】
具体的には、弁体22を、その軸回り方向の一方に回転させれば、2つの流路2a,2bが切換スペース18aを介して連通して上流側の流路2aから下流側の流路2bへのガスの流動が許容される開状態に切り換えられる。これに対して、弁体22を、その軸回り方向の他方に回転させれば、2つの流路2a,2bの間のガスの流動経路が該弁体22によって塞がれ、上流側の流路2aから下流側の流路2bへのガスの流動が禁止される閉状態に切り換えられる。
【0036】
操作具24は、流路形成部材8のノズル7を配置する側と反対側の部分(具体的には後部)に配置され、回転操作可能なダイヤル式のタイプであり、押し操作も可能に構成されている。操作具24を回転操作すれば、弁体22がその軸回り方向に回転し、上述した通り、前後何れかの方向に進退作動する。すなわち、操作具24の回転操作は、開状態から閉状態又は閉状態から開状態への切換操作になる。ちなみに、操作具24の回転操作によって、ガスボンベから流路2a,2bを経由してノズル7から噴出されるガスの流量も調整可能である。一方、操作具24を押し操作した場合、カバー体12の内面側と流路形状部材8の上面側との間に充填状態で位置決め収容された圧電素子26に圧力が加わり、後述する点火プラグ27の先端側に設けられた点火部27aを着火させる。すなわち、操作具24の押し操作が着火操作になる。ちなみに、操作具24は、圧電素子26や、その他の図示しない弾性部材によって、押し操作解除側に常時弾性付勢されている。
【0037】
次に図3に基づいて放射管6及び加熱手段の詳細を説明する。
【0038】
放射管6は、その基端部の内周面側が下流側接続部21の筒状形状の外周面側に着脱可能に装着される。詳細を説明すると、下流側接続部21の筒状形状の外周面には、その全周を覆うスリーブ状に成形された装着体28が着脱可能に装着して固定されている。放射管6は、その基端部の内周面に装着体28の外周面が嵌合又は略嵌合状態で挿入された状態で、ボルト等の固定具29によって該装着体28(言い換えると、トーチ本体2)に着脱可能に固定されている。装着体28は、下流側接続部21よりもさらに放射管6の先端側に突出した状態で、該下流側接続部21に固定される。ちなみに、装着体28は、熱を効率的に伝導する金属等の材料から構成されている。
【0039】
加熱手段は、その両端側が開放され且つ放射管6よりも小径な円筒状に成形された伝導パイプ31を有している。この伝導パイプ31は、熱伝導率の高い金属材料から構成されている。また、この伝導パイプ31は、放射管6と同一軸心となるように該放射管6の内周面側のスペースに収容された状態で、その基端部の外周面が、装着体28の先端寄り部分の内周面に嵌合又は係合して挿入することによって、トーチ本体2側に着脱可能に取り付け固定される。
【0040】
上述したノズル7は、伝導パイプ31の内周面側の空間に突出した状態で臨んでいるため、開閉機構9によって開状態に切り換えられた場合、ガスボンベ50内のガスが、伝導パイプ31の内周面側に空間に流入し、その先端側の上述した放射口3に向かって流動する。すなわち、放射管6の内周面側の空間の一部である伝導パイプ31の内周面側の空間が上述した流動スペース4となる。
【0041】
なお、放射管6及び伝導パイプ31の軸心方向における基端側の位置を一致又は略一致させ、放射管6の先端側の位置を、伝導パイプ31よりもさらにガスの放射側に突出させることも可能である。この場合、放射管6の内周面側に空間には、流動スペース4の全てが形成される一方で、伝導パイプ31の内周面側の空間には、流動スペース4の一部が形成される。以下、この伝導パイプ31の内周面側の空間における流動スペース4の少なくとも一部を構成する部分を、ガス流動部31aとする。
【0042】
さらに、伝導パイプ31をトーチ本体2から前方斜め上方に突出させ、この伝導パイプ31と同一軸心となる放射管6を、該伝導パイプ31の途中から上記方向に突出させ、さらに放射管6を、伝導パイプ31よりもガスの放射側に突出させることも可能である。この場合、放射管6の内周面側に空間によって流動スペース4の一部が構成されるとともに、伝導パイプ31の内周面側の空間によって流動スペース4の一部が構成される。
【0043】
伝導パイプ31の基端部及び中途部は、該伝導パイプ31の先端部よりも、その径が小さく設定されている。これに対して、放射管6の内周面の径は、該放射管6の全長方向の全体に亘り同一又は略同一に設定され、その具体的な直径は、伝導パイプ31の先端部の外周面の直径と同一又は略同一に設定される。また、放射管6及び伝導パイプ31の先端の位置は、放射管6及び伝導パイプ31の軸心方向において一致又は略一致している。
【0044】
このため、伝導パイプ31の先端部の外周面は放射管6の先端部の内周面に嵌合又は略嵌合された状態になるのに対して、伝導パイプ31の基端部及び中途部の外周面と放射管6の内周面との間には、その軸方向でドーナツ状なす導入スペース32が形成される。導入スペース32は、装着体28と放射管6との間に形成された隙間33を介して、外部からのエアが導入される。
【0045】
伝導パイプ31の基端寄り部分には、その周方向に並べられて複数の吸気孔31bが穿設されている。導入スペース32に導入されたエアは、吸気孔31bを介して、流動スペース4に流入される。吸気孔31bが形成された位置は、伝導パイプ31の軸方向において、ノズル7の先端側と一致又は略一致しており、吸気孔31bから流動スペース4に導入されたエアは、ノズル7の先端側から噴出するガスと混合され、該ガスとともに放射口3に向かって流動する。すなわち、流動スペース4の基端部及び中途部は、ガスとエアを混合する混合部4aを構成している。
【0046】
また、流動スペース4の先端部(放射管6及び伝導パイプ31の先端部の内周面側の空間)は、上述した点火部27aが配置され、当該箇所まで流動してきたガスが燃焼されて火炎が発生する燃焼部4bを構成している。この燃焼部4bで発生した火炎は、放射口3から外部に放射される。
【0047】
燃焼部4bで発生した火炎によって伝導パイプ31の先端部も加熱される。伝導パイプ31の先端部の熱は、該伝導パイプ31の基端部に伝導され、装着体28及び下流側接続部21を介して、ノズル7に伝導される。加熱されたノズル7は、その内部を流動するガスの気化を促進させる。なお、伝導パイプ31からの上述した熱によってトーチ本体2を加熱し、その内部のガスを加熱して気化を促進することも可能である。この場合、トーチ本体2を構成する材料に熱伝導率が良好な真鍮等の金属材料を採用する必要がある。一方、放射管6は、ノズル7や伝導パイプ31よりも熱伝導率の低い材料から構成され、ガストーチ1の使用時における温度の上昇を抑制する。
【0048】
ところで、ガストーチ1がガスボンベ50に装着され且つ開閉機構9による開状態の切換が行われた状態時、ガスボンベ50内のガスは、供給部17からガストーチ1の内部に導入され、流路2a→切換スペース18a→流路2b→ノズル7→流動スペース4の順に流動し、混合部4aで空気と混合された後、燃焼部4bに至るが、その過程で、気化が促進され、流速が増し、騒音の原因になる。
【0049】
これを防止するため、流動スペース4におけるガスの流動経路の一部を塞ぐことによって、該ガスの流動を規制し、流動の抵抗を増加(単位時間当たりの流量を減少)させる閉塞キャップ(閉塞部材)34を設けている。
【0050】
次に図3及び図5に基づいて閉塞キャップ34の詳細を説明する。
【0051】
図5は閉塞キャップの説明図である。閉塞キャップ34は、流動スペース4を形成する内周面(図示する例では、伝導パイプ31の内周面、言い換えると、ガス流動部31aを形成する内周面)に嵌合して嵌め込み固定される形状に成形されている。具体的には、閉塞キャップ34が厚みのある円盤状(或いは、長さが短い円形の柱状)をなしている。
【0052】
なお、伝導パイプ31を省略する場合、閉塞キャップ34は放射管6の内周面に直接的に嵌め込み固定される。このようにして流動スペース4を形成する内周面に嵌め込み固定される閉塞キャップ34は、伝導パイプ31、ノズル7及び放射管6よりも断熱性が高い(熱伝導率が低い)材料から構成されている。このような材料の適切な選択によって、閉塞キャップ34は、伝導パイプ31、ノズル7及び放射管6よりも断熱性能が高くなるように構成されている。ちなみに、閉塞キャップ34を構成する具体的な材料としては、例えば、セラミック材)等から考えられる。
【0053】
閉塞キャップ34は、放射管6の先端寄り部分に配置されている。すなわち、流動スペース4におけるガスの流動下流側に配置されている。これに対して、燃焼部4bは、流動スペース4における閉塞キャップ34よりもさらにガスの流動下流側(放射管6の先端側)に配置され、ガスが燃焼する手前側で、その流量を減少させる。
【0054】
閉塞キャップ34は、自身を通過して混合部4aから燃焼部4bへのエアの流動を許容する通気孔34aが複数有している。通気孔34aを設ける密度は放射管6及び伝導パイプ31の軸心から遠い側の方よりも、該軸心から近い側の方が低くなるように、各通気孔4aを配置している。さらに具体的には、閉塞キャップ34の中心寄りの円形の範囲に密度高く(満遍なく)に複数の通気孔34aを配置し、その円形の範囲を囲繞するリング状の範囲に密度低く複数の通気孔34aを並べて配置している。
【0055】
続いて、放射管6の内周面側(図示する例では、伝導パイプ31の内周面)への閉塞キャップ34の固定手段について説明すると、伝導パイプ31の先端部の内周面には、該伝導パイプ31と同一の軸心を有し且つその軸方向の全範囲において同一の径を有する円柱状に成形された空間36が形成されている。この空間36は、その径が閉塞キャップ34の外周面を嵌合状態で挿入固定できる長さに設定され、その全長は閉塞キャップ34の厚みよりも長く設定されている。
【0056】
このため、閉塞キャップ34を空間36に最大限嵌め込んで固定させた場合、放射管6及び伝導パイプ31の内周面側に空間において、その先端から閉塞キャップ34に至るまでの範囲に空間が形成され、この空間が上述の燃焼部4bを構成している。ちなみに、上述した点火プラグ27は、放射管6及び伝導パイプ31の軸心と平行な方向に向いた軸状に成形され、閉塞キャップ34に挿通して固定されている。
【0057】
また、閉塞キャップ34の固定を強固にするため、燃焼部4bを形成する内周面(図示する例では、伝導パイプ31の内周面)には、固定スリーブ37の外周面が嵌合して挿入固定されている。固定スリーブ37は、その軸方向の一端が閉塞キャップ34に達し、他端の軸方向に位置が伝導パイプ31及び放射管6の先端と一致しており、その内周面側に空間が上述の燃焼部4bを構成している。
【0058】
次に、上述した伝導手段について説明する。
【0059】
前記伝導手段は、燃焼部4bでの燃焼による熱をトーチ本体2側に伝導する上述した伝導パイプ31と、トーチ本体2の少なくとも一部(本例ではトーチ本体2の一部を構成する流路形成側部材8及びジョイント部材11)とを有している。このため、トーチ本体2における伝導手段の一部を構成する部分は、熱を効率的に伝導させることが可能な金属材料から構成されている。
【0060】
この伝導手段によってジョイント部材11側に伝導された熱は、ジョイント部材11が着脱可能に外装されるケース部56を介してガスボンベ50に伝導される。この熱伝導によってガスボンベ50が部分的又は全体的(本例では全体的)に加熱され、これによってガスボンベ50の内部でのガスの気化が促進される。
【0061】
さらに具体的に説明すると、ケース部56に伝導された熱は、マウンテンカップ53及び蓋部52を介してボンベ本体51に伝導されるとともに、ハウジング57を介してキャップ61に伝導される。このような熱伝導を可能にするため、ボンベ本体51、蓋部52、マウンテンカップ53、ケース部56、ハウジング57及びキャップ61は熱伝導率が良好な金属材料から構成される。
【0062】
キャップ61側の部分はガスの気化が促進される部分であるため、気化熱による冷却の影響を受け易いが、このような加熱の手段によって気化熱の影響を最小限に抑制できる。
【0063】
以上のように構成されるガストーチによれば、ガスの液化を効率化させた場合でも、閉塞キャップ34によって、ガスを過度に速く流動させないように適度な流速に保持させ、それに伴う騒音を効率的に防止又は抑制することが可能になる。
【0064】
なお、点火プラグ27は省略してもよく、この場合、先端側に向かって開放された燃焼部4bに、ライター等の着火手段で直接的に着火させる。
【符号の説明】
【0065】
1 ガストーチ
2 トーチ本体
2a 流路
2b 流路
3 放射口
4 流動スペース
4b 燃焼部
6 放射管
8 流路形成側部材(流路形成部)
11 ジョイント部材(ジョイント部)
31 伝導パイプ
31a ガス流動部
50 ガスボンベ
51 ボンベ本体
56 ケース部(被装着部)
56a ガス供給口
57 ハウジング
58 弁体
【要約】
【課題】火炎を噴出するガストーチ及びそれが装着されるガスボンベであって、ガスボンベ側でのガスの気化が阻害される事態を効率的に防止できるガストーチ及びそれが装着されるガスボンベを提供することを課題とする。
【解決手段】その内部にガスが流動する流路が形成され、該流路にガスボンベ内からのガスが供給されるようにガスボンベに装着されるトーチ本体と、トーチ本体側から突出する筒状に成形され、その突出した先端側には火炎が放射される放射口が形成され、その内周面側の空間には流路から流入したガスが放射口に向かって流動する流動スペースが形成され、流動スペースに燃焼部が設けられた放射管と、燃焼部側の熱をトーチ本体におけるガスボンベに装着される部分であるジョイント部に伝導する伝導手段とを備え、ジョイント部に伝導された熱によってガスボンベが加熱される。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5