(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 1/36 20060101AFI20221011BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20221011BHJP
F02B 37/16 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F16K1/36 Z
F16K31/06 305L
F16K31/06 385A
F02B37/16 B
(21)【出願番号】P 2021510884
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019062934
(87)【国際公開番号】W WO2020043330
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】102018214458.3
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロザリオ ボナンノ
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017202511(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008031738(DE,A1)
【文献】特開昭57-097966(JP,A)
【文献】国際公開第2018/114529(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/36
F16K 31/06
F02B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を遮断および解放するためのバルブ(1)であって、
-電磁的なアクチュエータユニット(5)と、
-前記電磁的なアクチュエータユニット(5)によって軸方向で可動であるピン(7)と、該ピン(7)に接続されている閉鎖体(8)であって、流路を遮断および解放するように形成されており、前記流路から離間して配置され前記ピン(7)に接続されている第1の軸方向の端部(19)と、前記流路内に配置可能である第2の軸方向の端部(21)とを有している閉鎖体(8)と、
-少なくとも前記ピン(7)と、前記閉鎖体(8)の前記第1の軸方向の端部(19)とを収容するハウジング(2,13)と、
を有しており、
前記閉鎖体(8)は、少なくとも前記第1の軸方向の端部(19)の領域に
、円周シール部材(15)を有しており、該
円周シール部材
(15)は、
半径方向の外側に向かって張り出すシールリップ(16)を備えており、
前記半径方向は前記軸方向に垂直であり、該シールリップ(16)は、前記バルブ(1)の閉鎖状態で、前記ハウジング(2,13)の領域に密に当接しており、前記シールリップ(16)は少なくとも1つ
の円周ビード(17)を有して
おり、
前記シールリップ(16)は、前記円周ビード(17)よりも前記半径方向の外側にあり、前記バルブ(1)の閉鎖状態で、前記シールリップ(16)と前記ハウジング(2,13)との間に接触領域Pが形成されており、当該接触領域Pは、前記シールリップ(16)と前記ハウジング(2,13)との間の接触により、前記シールリップ(16)を上方に向かって曲げるように形成されている、バルブ(1)。
【請求項2】
前記
円周ビード(17)は、
前記半径方向
において、前記
円周シール部材(15)のシール領域と、前記閉鎖体(8)との間に配置されている、請求項1記載のバルブ(1)。
【請求項3】
前記
円周ビード(17)は縦断面半円形に、前記第2の軸方向の端部(21)の方向で開かれて形成されている、請求項1または2記載のバルブ(1)。
【請求項4】
前記
円周ビード(17)は縦断面半楕円形に形成されている、請求項1または2記載のバルブ(1)。
【請求項5】
前記
円周ビード(17)は、0.4mm≦d≦0.8mmの壁厚dを有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のバルブ(1)。
【請求項6】
前記シールリップ(16)は、前記
円周ビード(17)への移行領域で、0.5mm≦r≦1.5mmの曲率半径rを有している、請求項1から5までのいずれか1項記載のバルブ(1)。
【請求項7】
前記閉鎖体(8)はポット状であって、上方に向かって開かれて形成されており、前記
円周シール部材(15)は、前記閉鎖体(8)の側壁の外面(23)および内面(25)をカバーしている、請求項1から6までのいずれか1項記載のバルブ(1)。
【請求項8】
前記
円周シール部材(15)はさらに、前記閉鎖体(8)の底面(9)の少なくとも所定の領域をカバーしている、請求項7記載のバルブ(1)。
【請求項9】
前記
円周シール部材(15)は、ゴム、特にフッ素ゴムから形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のバルブ(1)。
【請求項10】
前記閉鎖体(8)は深絞り部品として形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のバルブ(1)。
【請求項11】
ターボチャージャ装置を備えた自動車であって、コンプレッサを備えた吸気側と、タービンを備えたタービン側とを有しており、前記吸気側には、前記コンプレッサへのバイパス管路(4)が設けられており、前記バイパス管路(4)には、前記バイパス管路(4)を解放または遮断するために、請求項1から10までのいずれか1項記載のバルブ(1)が配置されている、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁的なアクチュエータユニットによって操作可能な、流路を遮断および解放するためのバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなバルブは例えば、自動車のターボチャージャで、惰走運転中に吸気側へのバイパスを解放するために、ブローオフバルブとして使用される。低回転数でのターボチャージャのタービンの急激な制動を阻止するために、さらに、迅速な始動を保証するために、バルブの迅速な開閉過程が求められる。特に、閉鎖過程では、バルブシートへの閉鎖体の当接による極めて迅速な閉鎖が得られるよう努力がなされている。バルブシートは、バルブがフランジ固定されている、ターボチャージャのハウジングによって形成される。さらに、軸方向で摺動可能な閉鎖体はハウジングに対してシールされていなければならない。このために、例えば、V字型のシール部材であって、その脚がそれぞれハウジングと、ポット状の閉鎖体の周面とに当接しているシール部材をハウジング内に配置することが知られている。両脚の予荷重により、シール効果が得られる。この場合の欠点は、閉鎖体に当接する一方の脚のシールリップが、開閉の際の閉鎖体の運動により摩擦にさらされ、これにより結果として高い摩耗が生じることにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の根底にある課題は、改善されたシール機能を備えたバルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。好適な別の構成は、従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明の一態様によれば、流路を遮断および解放するためのバルブであって、電磁的なアクチュエータユニットと、電磁的なアクチュエータユニットによって軸方向で可動であるピンと、ピンに接続されている閉鎖体であって、流路を遮断および解放するように形成されており、流路から離間して配置されピンに接続されている第1の軸方向の端部と、流路内に配置可能である第2の軸方向の端部とを有している閉鎖体と、を有しているバルブが提供される。
【0006】
さらにこのバルブは、少なくともピンと閉鎖体の第1の軸方向の端部とを収容するハウジングを有しており、閉鎖体は、少なくとも1つのシール部材によって、このハウジングに対してシールされている。
【0007】
閉鎖体は、少なくとも第1の軸方向の端部の領域に、半径方向の円周シール部材を有しており、シール部材は、外側に向かって張り出すシールリップを備えており、シールリップは、バルブの閉鎖状態で、ハウジングの領域に密に当接しており、シールリップは少なくとも1つの半径方向の円周ビードを有している。
【0008】
この場合、本記載および以下の記載では、バルブの閉鎖状態とは、閉鎖体が流路を遮断している、バルブの切替状態であると理解される。
【0009】
外側に向かって張り出すシールリップとは、本記載および以下の記載では、少なくとも外側に向かっても延在しているシールリップであると理解される。特にこれは、斜め上方に向かって外側に延在している、すなわち半径方向外側に向かってかつピンの方向に延在しているシールリップであるとも理解される。
【0010】
ビードとはこの場合、本記載および以下の記載では、シールリップの溝状の隆起部であると理解され、シールリップは、ビードの内側で、ビードの周囲と実質的に同じ壁厚を有している。シールリップをプラスチック材料から形成する場合、ビードを例えば射出成形プロセスによって成形することができる。
【0011】
このバルブは、ハウジングに対する閉鎖体のシールが、閉鎖体が静止する直前の時間を含む、閉鎖体が閉鎖位置に位置している時間内に限定されるという利点を有している。したがって、閉鎖体に配属されたシール部材は、ハウジングと常に摩擦接触しているのではなく、閉鎖位置および閉鎖位置の直前で初めてハウジングと摩擦接触するので、シール部材とハウジングとの間には、殆ど摩擦が生じない。したがって、生じる摩耗も僅かであるように維持される。
【0012】
シール作用は特に、バルブの閉鎖状態で、シールリップがハウジングの一領域に密に当接することによって生じる。外側に向かって張り出すシールリップは、シールリップの柔軟性を高める半径方向の円周ビードが設けられていることにより、特に柔軟に形成されている。
【0013】
これにより、ばね力の作用下で、閉鎖体は閉鎖位置へと押し付けられ、弾性的なシールリップは、確実なシール作用を形成するために変形するので、特に良好なシール作用が得られる。この場合、ビードはシールリップの変形可能性を改善している。
【0014】
一実施形態によれば、ビードは、半径方向でシール部材のシール領域と、閉鎖体との間に配置されている。
【0015】
シール領域とは、本記載および以下の記載では、バルブの閉鎖状態で、シールリップとハウジングとの間の接触が生じる領域であると理解される。この領域は特にリング状の面として形成されている。
【0016】
リング状のシール領域と閉鎖体との間にビードが配置されていることにより、シールリップの柔軟性は、良好なシール作用を得るためにこの柔軟性が特に有利である領域でまさに高められる。
【0017】
一実施形態によれば、ビードは縦断面半円形に、閉鎖体の第2の軸方向の端部の方向で開かれて形成されている。
【0018】
しかしながら、ビードは、例えば縦断面半楕円形にまたは不規則的に湾曲して形成されていてもよく、第1の軸方向の端部の方向に湾曲していてもよい。
【0019】
閉鎖体を半径方向で取り囲む、または実質的に半径方向で取り囲む複数のビードをシールリップに設けることも考えられ、この場合は、ビードの様々な形状が組み合わせ可能である。
【0020】
特に、ビードは、0.4mm≦d≦0.8mmの壁厚dを有している。
【0021】
シールリップは、ビードへの移行領域で、0.5mm≦r≦1.5mmの曲率半径rを有していてよい。
【0022】
最小0.4mmかつ最大0.8mmのビードの壁厚、およびシールリップへの移行領域で最小0.5mmかつ最大1.5mmの曲率半径を有している、シールリップのこのような形状が、所望の柔軟性を得るために特に良好に適していることがわかった。
【0023】
閉鎖体は特にポット状に、上方に向かって開かれて形成されていてよく、シール部材は、閉鎖体の側壁の外面および内面をカバーしていてよい。シール部材は、閉鎖体の底面の少なくとも所定の領域もカバーしていてよい。
【0024】
この構成は、一度だけの作業ステップでシール部材を閉鎖体に結合することができるので、簡単に製作される特に確実な結合が、閉鎖体とシール部材との間に形成されるという利点を有している。この場合、シール部材を、特に閉鎖体上に加硫によって固定させることができる。このために、閉鎖体を例えば注型用の型内に配置し、シール部材の材料をその周囲に注入することができる。
【0025】
シール部材は、特にゴム、特にフッ素ゴムから形成することができる。
【0026】
閉鎖体は、例えばクロム・ニッケル鋼から形成されている深絞り部品である。このような閉鎖体は、攻撃性の媒体および高温に対する高い耐性を有しており、したがって、長い耐用期間を有している。
【0027】
本発明の別の態様によれば、ターボチャージャ装置を備えた自動車であって、コンプレッサを備えた吸気側と、タービンを備えたタービン側とを有しており、吸気側には、コンプレッサへのバイパス管路が設けられており、バイパス管路には、バイパス管路を解放または遮断するための説明したバルブが配置されている、自動車が提供される。
【0028】
したがって、この態様によれば、記載したバルブは、ブローオフバルブとしてターボチャージャで使用される。シール部材の特に柔軟に形成されたシールリップにより、バルブは改善されたシール機能を有している。
【0029】
本発明の実施形態は、添付の図面に基づき詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】従来技術によるターボチャージャ用のブローオフバルブを概略的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態によるバルブを概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、従来技術により公知の、車両のターボチャージャ(図示せず)用のブローオフバルブとして形成されたバルブ1が概略的に示されている。バルブ1は
図1では、全ての図面と同様に縦断面図で示されており、すなわちバルブの長手方向軸線に対して平行に切断されている。
【0032】
バルブ1はハウジング2を有しており、ハウジングは、孔3aを有している一体成形されたフランジ3を備えており、孔を介してハウジング2は、バイパス管路4の領域でターボチャージャ(図示せず)にフランジ固定されている。図示した組付け状態では、フランジ3に、バルブ1の第2のハウジング部分13が接続されている。
【0033】
ハウジング2内には、コイル6と、アーマチュアとして機能する金属ピン7とを備えた電磁的なアクチュエータユニット5が配置されている。ピン7はポット状の閉鎖体8に堅固に接続されている。ピストンとして働くポット状の閉鎖体8は、バイパス管路4を遮断または解放するために、バルブシート11と協働する。このために閉鎖体8は、バイパス管路4の横断面をシールすることができるリング状のシール面10を有しており、これにより管路4と管路12との間で媒体が流れることはできない。ばね7aは、閉鎖体8をバルブシート11の方向に押す。ばね7aによって生成される、例えば3.5Nの力に抗しては、管路12内の圧力に基づき閉鎖体8の底面9に作用する力が作用する。
【0034】
閉鎖体8は、第2のハウジング部分13に対して、V字型のプロフィールを有するリング状のシール部材14によってシールされている。
【0035】
図2には、本発明の実施形態による、流路を遮断および解放するためのバルブ1の一部が示されている。
図2に示したバルブ1は、
図1に示した公知のバルブとは、特に、閉鎖体8と第2のハウジング部分13との間のシール部材の構成が異なっている。
【0036】
図2のバルブ1は、閉鎖体8の第1の軸方向の端部19で、半径方向の円周シール部材15を有しており、このシール部材は、外側に向かって張り出すシールリップ16を備えている。この場合、シールリップ16は、閉鎖体8を起点として半径方向外側に向かって延在しており、少なくとも
図2に示したバルブ1の閉鎖位置では、ピン7(
図2には図示せず)の方向で上方に向かっても延在している。第2のハウジング部分13に弾性的なシールリップ16が当接することによりシール作用が得られる。
【0037】
シールリップ16は、半径方向の円周ビード17を有しており、このビードにより、シールリップ16の弾性が特に良好になり、ひいてはシール作用が特に良好になる。ビード17の形状の詳細は、
図3に基づきより詳しく説明する。
【0038】
シール部材15は、閉鎖体8の第1の軸方向の端部19の領域のみに配置されているのではなく、シール部材は、第2の軸方向の端部21に到るまで、ポット状の閉鎖体8の外面23上および内面25上にも延在している。外面23上のシール部材15は、ポット状の閉鎖体8の底面9の縁部領域27で、閉鎖体8に僅かに係合し、これによってアンダカットを形成しており、このアンダカットにより、シール部材15は特に確実に閉鎖体8に取り付けられている。さらに、シール部材15はこの領域で、バイパス管路4のシールのためのシール面10を形成する。
【0039】
図3には、半径方向の円周ビード17を備えたシールリップ16の細部が示されている。
【0040】
ビード17は、シールリップ16の溝状の隆起部によって形成されており、閉鎖体8の長手方向軸線を同心的に取り囲んでいる。したがって、ビード17は、シールリップ16に、このシールリップよりも僅かな壁厚を有した凹部として形成されているのではなく、シールリップ16は、ビード17の領域で変形されている。すなわち、シールリップ16は、延在全体にわたって、すなわちビード17の領域でも、実質的に同じ壁厚を有している。
【0041】
バルブ1の閉鎖状態で、シールリップ16と第2のハウジング部分13との間に接触領域Pが形成されている。この接触領域Pは、同時に、シール面またはシール領域として、かつシールリップ16と第2のハウジング部分との間の接触によりシールリップ16を上方に向かって曲げる、ひいては変形させる、てこの力の作用点として機能する。本発明によるバルブ1では、シールリップ16の変形性は特に良好である。これは、シールリップ16がビード17により、より長い曲げ距離を有していて、これにより、同様に加えられる力によって、特にばね7aによって加えられる力によって、より大きく変形されるからである。したがって、同じ良好なシール作用を維持しながら、より小さい力を加えることによって、バルブ1を閉じることができる。
【0042】
図示した実施形態では、シールリップ16は、その全延在にわたって、6mmの壁厚を有している。ビード17の内面の曲率半径riは、0.6mmであり、外面の曲率半径は1.2mmである。ビード17からシールリップ16の他方の領域への移行領域29では、内面の曲率半径は0.5mmであり、湾曲の外面では1mmである。図示した実施形態では、シールリップ16から、シール部材15のその他の領域への移行領域31の曲率半径は、0.25mmである。
【0043】
図示した実施形態では、ビード17は、縦断面で半円形を有している。しかしながら、例えばビード17の半楕円の形状も可能である。