(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】金属ストリップの輪郭および平坦性の分離調整
(51)【国際特許分類】
B21B 37/28 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
B21B37/28
B21B37/28 Z
B21B37/28 110A
(21)【出願番号】P 2021518500
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2019075161
(87)【国際公開番号】W WO2020069875
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-02
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・レーエ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-223605(JP,A)
【文献】国際公開第2017/156122(WO,A1)
【文献】特開2014-073509(JP,A)
【文献】特開平10-005837(JP,A)
【文献】特表2005-527378(JP,A)
【文献】特開昭59-047006(JP,A)
【文献】特開平06-114423(JP,A)
【文献】特開昭54-117357(JP,A)
【文献】特開昭63-199009(JP,A)
【文献】特開2009-066637(JP,A)
【文献】特開2013-188777(JP,A)
【文献】特開2003-305510(JP,A)
【文献】米国特許第06098060(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104511484(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップ(2)が次々に連続的に通過する複数のロールスタンド(3)を有するロールトレイン(1)のための動作方法であって、
前記ロールトレイン(1)の制御デバイス(4)が、下流のロールスタンド(3f)のアクチュエータ(10)と、前記下流のロールスタンド(10)の上流に配列された上流のロールスタンド(3e)のアクチュエータ(9)との両方を制御する、動作方法において、
前記制御デバイス(4)が、実行されるべき下流の平坦性
変化(δF1)を考慮に入れ、実行されるべき
輪郭変化(δC1)をさらに考慮に入れながら、前記上流のロールスタンド(3e)の前記アクチュエータ(9)に対する操作変数を決定し、前記上流のロールスタンド(3e)の前記アクチュエータを適切に制御することと、
前記制御デバイス(4)が、実行されるべき前記
輪郭変化(δC1)を考慮に入れながら、しかし、実行されるべき前記下流の平坦性
変化を(δF1)考慮に入れずに、前記下流のロールスタンド(3f)の前記アクチュエータ(10)に対する操作変数を決定し、前記下流のロールスタンド(3f)の前記アクチュエータ(10)を適切に制御することと、
前記制御デバイス(4)が、前記下流のロールスタンド(3f)の前記アクチュエータ(10)に対する前記操作変数を、前記下流のロールスタンド(3f)の前記アクチュエータ(10)に出力するが、前記上流のロールスタンド(3e)の前記アクチュエータ(9)に対する前記対応する操作変数に関連する下流の転送時間(T1)の遅延を伴うことと、
前記下流の転送時間(T1)が、前記上流のロールスタンド(3e)における前記金属ストリップ(2)の圧延と前記下流のロールスタンド(3f)における前記金属ストリップ(2)の圧延との間に経過する時間であることとを特徴とする、動作方法。
【請求項2】
前記制御デバイス(4)が、前記ロールトレイン(1)の前記下流のロールスタンド(3f)の下流で前記金属ストリップ(2)が有する下流の実際の平坦性(F1)および下流の実際の
輪郭(C1)を受信することと、
前記制御デバイス(4)が、下流の平坦性コントローラ(16)および
輪郭コントローラ(15)を実装することと、
前記制御デバイス(4)が、前記下流の平坦性コントローラ(16)によって、前記下流の実際の平坦性(F1)および下流の平坦性設定点(F1*)から、実行されるべき前記下流の平坦性
変化(δF1)を決定することと、
前記制御デバイス(4)が、前記
輪郭コントローラ(15)によって、前記下流の実際の
輪郭(C1)および
輪郭設定点(C1*)から、実行されるべき前記
輪郭変化(δC1)を決定することとを特徴とする、請求項1に記載の動作方法。
【請求項3】
前記制御デバイス(4)が、前記ロールトレイン(1)の前記上流のロールスタンド(3e)と前記下流のロールスタンド(3f)との間に前記金属ストリップが(2)が有する、上流の実際の平坦性(F2)を受信することと、
前記制御デバイス(4)が、上流の平坦性コントローラ(18)を実装することと、
前記制御デバイス(4)が、前記上流の平坦性コントローラ(18)によって、前記上流の実際の平坦性(F2)および上流の平坦性設定点(F2*)から、実行されるべき上流の平坦性
変化(δF2)を決定することと、
前記制御デバイス(4)が、前記上流のロールスタンド(3e)の上流に配列された、さらなるロールスタンド(3d)のアクチュエータ(19)もさらに制御することと、
前記制御デバイス(4)が、実行されるべき前記下流の平坦性
変化(δF1)、実行されるべき前記
輪郭変化(δC1)、および実行されるべき前記上流の平坦性
変化(δF2)を考慮に入れながら、前記さらなるロールスタンド(3d)の前記アクチュエータ(19)に対する操作変数を決定し、前記さらなるロールスタンド(3d)の前記アクチュエータ(19)を適切に制御することと、
前記制御デバイス(4)が、前記上流のロールスタンド(3e)の前記アクチュエータ(9)に対する前記操作変数を、前記上流のロールスタンド(3e)の前記アクチュエータ(9)に出力するが、前記さらなるロールスタンド(3d)の前記アクチュエータ(19)に対する前記対応する操作変数に関連する上流の転送時間(T2)の遅延を伴うことと、
前記上流の転送時間(T2)が、前記さらなるロールスタンド(3d)における前記金属ストリップ(2)の前記圧延と前記上流のロールスタンド(3e)における前記金属ストリップ(2)の前記圧延との間に経過する時間であることとを特徴とする、請求項2に記載の動作方法。
【請求項4】
前記制御デバイス(4)が、前記ロールスタンド(3e)を選択し、前記ロールスタンド(3e)に関連して、前記ロールスタンド(3e)に続く前記ロールスタンド(3f)の前記制御が、これらの2つのロールスタンド(3e、3f)の一方における前記金属ストリップ(2)の前記圧延と他方における前記金属ストリップ(2)の前記圧延との間に経過する前記転送時間(T1)だけ最初に遅延されることと、
前記制御デバイス(4)が、前記選択されたロールスタンド(3e)の上流に配列された少なくとも1つのロールスタンド(3d)の前記アクチュエータ(19)もさらに制御し、前記選択されたロールスタンド(3e)の上流に配列された前記ロールスタンド(3d)の前記アクチュエータ(19)の設定が、それにより、適切に変更されることと、
前記制御デバイス(4)が、前記選択されたロールスタンド(3e)の前記アクチュエータ(9)の前記制御を考慮に入れながら、前記選択されたロールスタンド(3e)の上流に配列された前記ロールスタンド(3d)の前記アクチュエータ(19)の制御を決定し、前記アクチュエータ(9)の前記制御は
、実行されるべき平坦性
変化(δF1)および実行されるべき
輪郭変化(δC1)を考慮に入れながら決定されていることと、
前記制御デバイス(4)が、ロールスタンド(3d、3e、3f)の間の転送時間(T1、T2)を考慮に入れることなく、前記選択されたロールスタンド(3e)の上流に配列された前記ロールスタンド(3d)の前記アクチュエータ(19)に対する前記操作変数を、前記選択されたロールスタンド(3e)の上流に配列された前記ロールスタンド(3d)の前記アクチュエータ(19)に出力することとを特徴とする、請求項
3に記載の動作方法。
【請求項5】
前記制御デバイス(4)が、前記動作方法をリアルタイムで実行することを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項6】
金属ストリップ(2)が次々に連続的に通過する複数のロールスタンド(3)を有するロールトレイン(1)のための制御デバイス(4)のための制御プログラムであって、前記制御プログラムが、前記制御デバイス(4)によって実行され得る機械コード(6)を含み、前記制御デバイス(4)による前記機械コード(6)の前記実行が、請求項1から
5のいずれか一項に記載の動作方法に従って、前記制御デバイス(4)が前記ロールトレイン(1)を制御する効果を有する、制御プログラム。
【請求項7】
金属ストリップ(2)が次々に連続的に通過する複数のロールスタンド(3)を有するロールトレイン(1)のための制御デバイスであって、
前記制御デバイスは請求項6に記載の制御プログラム(5)で制御され、前記制御デバイスは、前記ロールトレイン(1)の動作の間に、請求項1から5のいずれか一項に記載の動作方法に従って、前記ロールトレイン(1)を制御する、制御デバイス。
【請求項8】
金属ストリップ(2)を圧延するためのロールトレインであって、
前記金属ストリップ(2)が次々に連続的に通過する複数のロールスタンド(3)を有し、
前記ロールトレインを制御する制御デバイス(4)を有する、ロールトレインにおいて、
前記制御デバイス(4)が、請求項
7に記載された制御デバイスであることを特徴とする、ロールトレイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップ、たとえばスチールストリップが次々に連続的に通過する、一般的にマルチスタンドの仕上げロールトレインである、複数のロールスタンドを有するロールトレインのための動作方法から生じる。
【0002】
本発明は、さらに、金属ストリップが次々に連続的に通過する複数のロールスタンドを有するロールトレインのための制御デバイスのための制御プログラムから生じ、制御プログラムは、制御デバイスによって実行され得る機械コードを含み、制御デバイスによる機械コードの実行は、この種の動作方法に従って制御デバイスがロールトレインを制御する効果を有する。
【0003】
本発明は、さらに、金属ストリップが次々に連続的に通過する複数のロールスタンドを有するロールトレインのための制御デバイスから生じ、制御デバイスは、この種の制御プログラムでプログラムされ、ロールトレインの動作の間に制御デバイスがこの種の動作方法に従ってロールトレインを制御するという結果を伴う。
【0004】
本発明は、さらに、金属ストリップを圧延するためのロールトレインから生じ、
- ロールトレインは、金属ストリップが次々に連続的に通過する複数のロールスタンドを有し、
- ロールトレインは、ロールトレインを制御する制御デバイスを有する。
【背景技術】
【0005】
ロールトレインのためのこの種の動作方法および関連するロールトレインは、広く知られている。
【0006】
特許文献1は、金属ストリップがロールスタンドを次々に連続的に通過する、複数のロールスタンドを有するロールトレインのための様々な動作方法を開示している。ロールトレインの制御デバイスは、ロールトレインの下流のロールスタンドのアクチュエータと上流のロールスタンドのアクチュエータの両方を制御し、前記上流のロールスタンドは、下流のロールスタンドの上流に配列される。これらの動作方法のうちの1つでは、制御デバイスは、それぞれのロールスタンドに対して実行されるべき平坦性変更、またはそれぞれのロールスタンドに対して実行されるべき輪郭変更のいずれかを考慮に入れながら、それぞれのロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数をロールスタンドの各々に対して決定する。これらの動作方法のうちの別の動作方法では、制御デバイスは、実行されるべき平坦性変更を考慮に入れ、実行されるべき輪郭変更を付加的に考慮に入れながら、ロールトレインの最後のロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数を決定する。他のロールスタンドに対して、この場合の制御デバイスは、実行されるべき平坦性変更ではなく、実行されるべき輪郭変更を考慮に入れながら、これらのロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数を決定する。ロールトレインの上流のロールスタンドへの操作変数の出力に対して、この場合の制御デバイスは、後続のスタンドへの転送時間を考慮に入れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属ストリップの圧延において、一方では、圧延される金属ストリップは、規定された等高線を有するべきであり、たとえば、わずかに反っているべきであり、ストリップの両端よりストリップの中心においてわずかに厚いという結果を伴うことが望まれる。他方では、圧延される金属ストリップは、可能な限り内部応力をなくすべきであり、すなわち、可能な限り平坦であるべきであることが望まれる。この理由に対して、従来技術における通常の実行は、ロールトレインの最後のスタンドの後の適切な測定位置において、輪郭(または、より一般的には等高線)と平坦性の両方を度量衡学的に記録して制御することである。
【0009】
従来技術では、平坦性制御は、測定位置の直前の上流に配列されたロールスタンド、すなわちロールトレインの最後のロールスタンドに効力を生じる。等高線制御がこのロールスタンドに対しても働くことができるならば理想的である。しかしながら、等高線と平坦性とは、単一のロールスタンドの上で互いに独立して設定され得ない。これは、特に、両目標変数は、関連するロールスタンドの圧延のすき間の形状によって、きわめて有意に決定されるからである。従来技術では、等高線制御は、それゆえ通常、ロールトレインの上流のロールスタンド、特にロールトレインの最初のロールスタンドに対して働く。この手順は、上流のロールスタンドにおける金属ストリップはより厚く、それゆえ材料のクロスフローが可能であるとの判断に基づく。
【0010】
しかしながら、従来技術の手法は、依然として、等高線と平坦性との分離調整をもたらしていない。それどころか、低周波振動が発生する。振動の周波数は、等高線制御システムによって制御される最下流のロールスタンドと測定位置との間に位置する金属ストリップの材料の量によって、材料フローに関連して決定される。さらに、等高線制御システムによって制御される最下流のロールスタンドと測定位置との間に位置するすべての材料は、その等高線についてはもはや修正され得ないので、等高線の修正は、非常にゆっくりとでしか実行され得ない。その上、かなり短い無駄時間で動作することができる平坦性制御システムは、等高線制御システムに対する測定信号を繰り返し偽る。
【0011】
平坦性および等高線が、マルチスタンドのロールトレインにおいて互いに独立して調整され得る手段を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
目的は、請求項1の特徴を有する動作方法によって達成される。動作方法の有利な実施形態が、従属請求項2~7の主題を形成する。
【0013】
本発明によれば、金属ストリップがロールスタンドを次々に連続的に通過する、複数のロールスタンドを有するロールトレインのための動作方法は、以下のような方法で構成される。
- ロールトレインの制御デバイスが、下流のロールスタンドのアクチュエータと、下流のロールスタンドの上流に配列された上流のロールスタンドのアクチュエータの両方を制御すること、
- 制御デバイスが、実行されるべき下流の平坦性変化(以下、「変更」と称することがある)を考慮に入れ、実行されるべき輪郭変化をさらに考慮に入れながら、上流のロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数を決定し、上流のロールスタンドのアクチュエータを適切に制御すること、
- 制御デバイスが、実行されるべき輪郭変化を考慮に入れながら、しかし実行されるべき下流の平坦性変化を考慮に入れずに、下流のロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数を決定し、下流のロールスタンドのアクチュエータを適切に制御すること、
- 制御デバイスが、下流のロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数を、下流のロールスタンドのアクチュエータに出力するが、上流のロールスタンドのアクチュエータに対する対応する操作変数に関連する下流の転送時間の遅延を伴うこと、および
- 下流の転送時間が、上流のロールスタンドにおける金属ストリップの圧延と下流のロールスタンドにおける金属ストリップの圧延との間に経過する時間であること。
【0014】
下流のロールスタンドは、一般に、ロールトレインの最後のロールスタンドである。上流のロールスタンドは、一般に、下流のロールスタンドの直前に位置するロールスタンドである。
【0015】
平坦性と等高線との分離調整は、大抵の場合、対応する閉ループ制御動作の一部として実行される。この場合、動作方法は、以下のように構成される。
- 制御デバイスが、ロールトレインの下流のロールスタンドの下流で金属ストリップが有する下流の実際の平坦性および下流の実際の等高線を受信すること、
- 制御デバイスが、下流の平坦性コントローラおよび等高線コントローラを実装すること、
- 制御デバイスが、下流の平坦性コントローラによって、下流の実際の平坦性および下流の平坦性設定点から、実行されるべき下流の平坦性変更を決定すること、および
- 制御デバイスが、等高線コントローラによって、下流の実際の等高線および等高線設定点から、実行されるべき等高線変更を決定すること。
【0016】
平坦性および等高線は、対応する測定デバイスによって検出される。そのような測定デバイスは、それ自体が周知である。
【0017】
下流の実際の平坦性に加えて、制御デバイスは、ロールトレインの上流のロールスタンドと下流のロールスタンドとの間に金属ストリップが有する、上流の実際の平坦性を受信することができる。この場合、動作方法は、以下のように構成され得る。
- 制御デバイスが、上流の平坦性コントローラを実装すること、
- 制御デバイスが、上流の平坦性コントローラによって、上流の実際の平坦性および上流の平坦性設定点から、実行されるべき上流の平坦性変更を決定すること、
- 制御デバイスが、上流のロールスタンドの上流に配列された、さらなるロールスタンドのアクチュエータもさらに制御すること、
- 制御デバイスが、実行されるべき下流の平坦性変更、実行されるべき等高線変更、および実行されるべき上流の平坦性変更を考慮に入れながら、さらなるロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数を決定し、さらなるロールスタンドのアクチュエータを適切に制御すること、
- 制御デバイスが、上流のロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数を、上流のロールスタンドのアクチュエータに出力するが、さらなるロールスタンドのアクチュエータに対する対応する操作変数に関連する上流の転送時間の遅延を伴うこと、および
- 上流の転送時間が、さらなるロールスタンドにおける金属ストリップの圧延と上流のロールスタンドにおける金属ストリップの圧延との間に経過する時間であること。
【0018】
この実施形態によって、選択的で、かつ下流のロールスタンドの出口側における平坦性および等高線とは無関係な方法で、下流のロールスタンドの入口側における平坦性を調整することも可能である。
【0019】
最後に説明する手順は、必要ならば、他のロールスタンドにも同様に拡張され得る。
【0020】
以下のことが可能である。
- 制御デバイスが、ロールスタンドを選択し、このロールスタンドに関連して、このロールスタンドに続くロールスタンドの制御が、これらの2つのロールスタンドの一方における金属ストリップの圧延と他方における金属ストリップの圧延との間に経過する転送時間だけ最初に遅延されること、
- 制御デバイスが、選択されたロールスタンドの上流に配列された少なくとも1つのロールスタンドのアクチュエータもさらに制御し、選択されたロールスタンドの上流に配列されたロールスタンドのアクチュエータの設定が、それにより、適切に変更されること、
- 制御デバイスが、選択されたロールスタンドのアクチュエータの制御を考慮に入れながら、選択されたロールスタンドの上流に配列されたロールスタンドのアクチュエータの制御を決定し、選択されたロールスタンドのアクチュエータの制御は、その一部に対して、実行されるべき平坦性変更および実行されるべき等高線変更を考慮に入れながら決定されていること、および
- 制御デバイスが、ロールスタンド間の転送時間を考慮に入れることなく、選択されたロールスタンドの上流に配列されたロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数を、選択されたロールスタンドの上流に配列されたロールスタンドのアクチュエータに出力すること。
【0021】
この実施形態は、上流のロールスタンドまたはさらなるロールスタンドの前に、等高線の改善された調整を、それにより生じる平坦性の変化を同時に低減しながら、可能にする。
【0022】
選択されたロールスタンドの上流に配列されたロールスタンドのアクチュエータの制御の決定において、制御デバイスが、選択されたロールスタンドのアクチュエータの制御を、ロールスタンドの金属ストリップの相対的厚さに従うスケーリングが関与する場合より少ない程度に考慮に入れるならば、いっそう良くなる。それにより、本発明による手順によって生じる平坦性の任意の変更が、選択されたロールスタンドの前のいくつかの中間のスタンド領域の間に分配されることを確実にすることが可能になる。
【0023】
特に望ましい実施形態では、以下のことが予測される。
- 制御デバイスが、上流のロールスタンドのアクチュエータの有効性を考慮に入れながら、実行されるべき下流の平坦性変更および実行されるべき等高線変更から、上流のロールスタンドのアクチュエータに対する操作変数を決定し、決定された操作変数に従って上流のロールスタンドのアクチュエータを制御すること、
- 制御デバイスが、識別デバイスを実装すること、
- 制御デバイスが、実行されるべき下流の平坦性変更および/または実行されるべき下流の平坦性変更の基礎となる変数を識別デバイスに供給すること、
- 制御デバイスが、上流のロールスタンドの設定においてもたらされた変更および/または設定においてもたらされた変更の基礎となる変数を識別デバイスに供給すること、
- 識別デバイスが、少なくとも下流の転送時間と追加の転送時間との合計と同じ長さである時間期間の間に供給される変数を記憶すること、
- 追加の転送時間が、下流のロールスタンドにおける金属ストリップの圧延と、下流の実際の平坦性が度量衡学的に記録される測定位置の到達との間に経過する時間であること、
- 識別デバイスが、それぞれのより遅い時点に実行されるべき下流の平坦性変更を参照して、それぞれのより早い時点に実行されるべき下流の平坦性変更を参照して、およびより早い時点に対して決定された設定においてもたらされた変更を参照して、上流のロールスタンドのアクチュエータの有効性を修正すること、および
- より遅い時点とより早い時点との間の差が、下流の転送時間と追加の転送時間との合計に等しいこと。
【0024】
これは、上流のロールスタンドの個々のアクチュエータに働く操作変数を、実際の感度に適応させることを可能にし、したがって、制御エラーを、時間の経過につれて段々と効果的に除くことを可能にする。
【0025】
実行されるべき下流の平坦性変更の基礎となる変数は、下流の実際の平坦性および下流の平坦性設定点、またはそれらの間の差である。設定においてもたらされた変更の基礎となる変数は、実行されるべき下流の平坦性変更および実行されるべき等高線変更である。
【0026】
制御デバイスは、本発明による動作方法をリアルタイムで実行することが望ましい。それゆえ、ロールトレインの制御への直接的統合が存在する。
【0027】
目的は、請求項8の特徴を有する制御プログラムによってさらに達成される。本発明によれば、制御デバイスによるプログラムコードの実行は、制御デバイスが、本発明による動作方法に従ってロールトレインを制御するという効果を有する。
【0028】
目的は、請求項9の特徴を有する制御デバイスによってさらに達成される。本発明によれば、制御デバイスは、本発明による制御プログラムを用いてプログラムされ、それゆえ、制御デバイスは、ロールトレインの動作の間に本発明による動作方法に従ってロールトレインを制御する。
【0029】
目的は、請求項10の特徴を有するロールトレインによってさらに達成される。本発明によれば、制御デバイスは、本発明による制御デバイスとして設計される。
【0030】
上記で説明した本発明の特性、特徴および利点、ならびにこれらが達成される方法は、図面との組合せでより詳細に説明される、例示的な実施形態の以下の記述と併せて、より明確かつ明瞭に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】金属ストリップに対するロールトレインを示す図である。
【
図2】下流と上流のロールスタンド、および関連する構成要素を示す図である。
【
図3】下流、上流のロールスタンド、およびさらなるロールスタンド、ならびに関連する構成要素を示す図である。
【
図4】下流と上流のロールスタンド、およびさらに上流に配列されたロールスタンド、ならびに関連する構成要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1によれば、金属ストリップ2は、ロールトレイン1の中で圧延される。金属ストリップ2は、一般に、ロールトレイン1の中で熱間圧延される。特に、ロールトレイン1は、仕上げトレインとして設計され得る。しかしながら、個々の場合、冷間圧延が実行され得る。
【0033】
ロールトレイン1は、複数のロールスタンド3、
図1の図によれば合計6つのロールスタンド3を有する。
図1および同じく他の図において、(aからfの)小文字がロールスタンド3に付加され、必要な場合に、それらを互いに区別することを可能にする。したがって、ロールスタンド3は、第1のロールスタンド3a、第2のロールスタンド3bなど、ロールトレイン1の第6の最後のロールスタンド3fまである。しかしながら、ロールスタンド3の数は、より大きくてもより小さくてもよい。決定的要因は、少なくとも2つのロールスタンド3が存在すること、および金属ストリップ2が、連続して次々にロールスタンド3を通過することである。関連する転送方向は、
図1のxで示される。この文脈では、「連続して次々に通過する」という用語は、金属ストリップ2がまず始めにロールスタンド3のうちの1つの中で完全に圧延され、次いでロールスタンド3のうちの次のロールスタンドの中で完全に圧延されることを意味するのではない。それに反して、この用語は、金属ストリップ2は、全体としていくつかのロールスタンド3の中で同時に圧延されるが、金属ストリップ2の各個々のセグメントは、連続して次々にロールスタンド3を通過することを意味する。その上、
図1においておよび他の図においても、示されているのはロールスタンド3の作業ロールだけである。一般に、ロールスタンド3は、さらなるロール、特に四段スタンド(four-high stands)としての実施形態の場合のバックアップロール、または六段スタンドとしての実施形態の場合のバックアップロールおよび中間ロールを有する。
【0034】
ロールトレイン1は、制御デバイス4によって制御される。一般に、制御デバイス4は、ソフトウェアプログラマブル制御デバイスとして設計される。制御デバイス4は、制御プログラム5によってプログラムされる。制御プログラム5は、制御デバイス4によって実行され得る機械コード6を含む。動作中、制御デバイス4は、機械コード6を実行する。制御デバイス4による機械コード6の実行は、制御デバイス4が、以下でより詳細に説明する動作方法に従ってロールトレイン1を制御するという効果を有する。ここで、まず始めに
図2と併せて本発明の基本原理が説明され、その後、同様に
図2と併せて従来の実施形態が、および次いで
図3~
図5と併せてさらなる実施形態が説明される。
【0035】
図2は、上流のロールスタンドおよび下流のロールスタンドを示す。
図2に示す2つのロールスタンド3に基づいて、上流のロールスタンドは、金属ストリップ2が最初に通過するロールスタンド3である。再び、
図2に示す2つのロールスタンド3に基づいて、下流のロールスタンドは、したがって、金属ストリップ2が最後に通過するロールスタンド3である。
図2の図に従って、下流のロールスタンドは、一般に、ロールトレイン1の最後ロールスタンド3fであり、上流のロールスタンドは、ロールトレイン1の最後から2番目のロールスタンド3eである。このため、参照記号3fは、以下に、下流のロールスタンドに対して使用され、参照記号3eは、上流のロールスタンドに対して使用される。しかしながら、上流および下流のロールスタンドは、これらの2つのロールスタンド3である必要はない。さらに、上流および下流のロールスタンド3e、3fは、一般に、ロールトレイン1の中で互いにすぐに続いている。
【0036】
図2によれば、平坦性変更δF1が、制御デバイス4に知られている。平坦性変更δF1の決定のさらなる詳細が、以下で与えられる。平坦性変更δF1は、以下で、後で導入される上流の平坦性変更δF2と言葉の上で区別することを可能にするために、下流の平坦性変更δF1と呼ばれる。下流の平坦性変更δF1に従って、金属ストリップ2の平坦性は、下流のロールスタンド3fの下流で変更されることになる。平坦性変更δF1は、ノード7に供給される。
【0037】
図2によれば、等高線変更δC1が、制御デバイス4にさらに知られている。等高線変更δC1の決定のさらなる詳細も、以下で与えられる。等高線変更δC1は、以下で、下流の等高線変更δC1と呼ばれる。なぜならば、等高線変更δC1に従って、金属ストリップ2の等高線は、下流のロールスタンド3fの下流で変更されることになるからである。制御デバイス4は、下流の等高線変更δC1を、まず始めに第1の適応要素8に供給する。第1の適応要素8では、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9および下流のロールスタンド3fの下流のアクチュエータ10の動的挙動、特にこれらの2つの動的挙動の関係が考慮に入れられる。第1の適応要素8の出力信号は、ノード7に供給される。
【0038】
ノード7では、ノード7に供給される2つの値は、加算または減算によって互いに組み合わされる。出力信号は、第2の適応要素11を介して上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9に供給される。第2の適応要素11では、特に、上流のロールスタンド3eにおける金属ストリップ2の厚さと下流のロールスタンド3fにおける金属ストリップ2の厚さとの間の関係と、下流のロールスタンド3fの下流の金属ストリップ2の厚さとに考慮がなされる。
【0039】
制御デバイス4は、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9に直ちに結果を与える、上流のロールスタンド3eに対する設定の変更を供給する。したがって、制御デバイス4は、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9を適切に制御する。結果として生じる対応する制御によって、アクチュエータ9の設定が、設定においてもたらされた変更に従って変更される。その結果、制御デバイス4は、実行されるべき下流の平坦性変更δF1を考慮に入れ、実行されるべき下流の等高線変更δC1をさらに考慮に入れながら、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9に対する操作変数を、そのように決定する。
【0040】
アクチュエータ9は、上流のロールスタンド3eの圧延のすき間に働く。それにより、アクチュエータ9は、上流のロールスタンド3eを出ていく金属ストリップ2の平坦性と等高線の両方に影響を及ぼす。たとえば、アクチュエータ9は、圧延のすき間の非対称くさび調整に対するアクチュエータ、ロール曲げに対するアクチュエータ、ロールねじりに対するアクチュエータ、ロールの軸方向移動に対するアクチュエータ、金属ストリップ2の横方向における位置依存性のロールの冷却または加熱に対するアクチュエータ、あるいは金属ストリップ2の横方向における位置依存性のロールの潤滑に対するアクチュエータであり得る。他のアクチュエータも可能である。唯一の例外は、上流のロールスタンド3eの作業ロール間の間隔の対称的調整、すなわち、(平均)ストリップ厚さの調整であり、この調整は、圧延のすき間の幅にわたって均一である。
【0041】
図2の図に従って、制御デバイス4は、さらに、下流のロールスタンド3fのアクチュエータ10も制御する。アクチュエータ10の設定は、それにより、適切に変更される。制御デバイス4は、下流のロールスタンド3fのアクチュエータ10に対する操作変数を決定するが、実行されるべき下流の等高線変更δC1だけを考慮に入れながら決定する。下流の平坦性変更δF1は、考慮に入れない。
【0042】
さらに、アクチュエータ10の制御は、直接、瞬時に、即座に実行されるのではなく、遅延要素12を介して実行される。遅延要素12は、供給される変数を、以下で下流の転送時間と呼ばれる転送時間T1だけ遅延させる。下流の転送時間T1は、金属ストリップ2の一定のセグメントが上流のロールスタンド3eから下流のロールスタンド3fまで搬送される間の時間である。したがって、下流の転送時間T1は、上流のロールスタンド3eにおける金属ストリップ2の一定のセグメントの圧延と、下流のロールスタンド3fにおける金属ストリップ2の同じセグメントの圧延との間に経過する時間である。転送時間T1は、必ずしも一定であるとは限らず、金属ストリップ2のセグメントのトラッキングに基づいて、いつでも動的に修正され得る。
【0043】
したがって、明らかに、制御デバイス4が、操作変数を上流のロールスタンド3eに出力する時点において、制御デバイス4は、明らかに、操作変数を下流のロールスタンド3fにも出力する。しかしながら、この時点において下流のロールスタンド3fに出力される操作変数は、より早い時点において上流のロールスタンド3eにすでに出力されている、上流のロールスタンド3eに出力された操作変数に基づく。その時間差は、正確に、下流の転送時間T1である。
【0044】
下流のロールスタンド3fのアクチュエータ10は、下流のロールスタンド3fの圧延のすき間に働く。それにより、アクチュエータ10は、下流のロールスタンド3fを出ていく金属ストリップ2の平坦性と等高線の両方に影響を及ぼす。アクチュエータ10は、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9と同じように設計されて働くことができる。
【0045】
測定デバイス13は、通常、下流のロールスタンド3fの下流に配列され、測定デバイス13によって、下流のロールスタンド3fの下流の金属ストリップ2の等高線C1が、度量衡学的に記録される。等高線C1は、以下で、下流の実際の等高線と呼ばれる。さらに、測定デバイス14は、下流のロールスタンド3fの下流に配列され、測定デバイス14によって、下流のロールスタンド3fの下流の金属ストリップ2の平坦性F1が、度量衡学的に記録される。平坦性F1は、以下で、下流の実際の平坦性と呼ばれる。対応する測定デバイス13、14は、当業者には常識の問題である。記録された下流の実際の等高線C1および記録された下流の実際の平坦性F1は、制御デバイス4に供給される。制御デバイス4は、これらの変数C1、F1を受信する。
【0046】
制御デバイス4は、等高線コントローラ15を実装する。制御デバイス4は、記録された下流の実際の等高線C1および等高線設定点C1*を等高線コントローラ15に供給する。等高線コントローラ15によって、制御デバイス4は、下流の実際の等高線C1および等高線設定点C1*から、実行されるべき下流の等高線変更δC1を決定する。等高線コントローラ15が、実行されるべき下流の等高線変更δC1を決定する方式は、必要条件に従って規定され得る。最も単純な場合、等高線コントローラ15は、単に、簡単な輪郭調整、すなわち、輪郭値(スカラー)に対する調整を実行する。しかしながら、等高線コントローラ15が、より複雑なタイプの調整を実行することも可能である。いずれの場合も、等高線コントローラ15が、従来技術においても知られている方式で設計されることは、原理的に可能である。しかしながら、他の実施形態も可能である。
【0047】
制御デバイス4は、さらに、下流の平坦性コントローラ16を実装する。制御デバイス4は、記録された下流の実際の平坦性F1および平坦性設定点F1*を下流の平坦性コントローラ16に供給する。平坦性設定点F1*は、以下で、下流の平坦性設定点と呼ばれる。平坦性コントローラ16によって、制御デバイス4は、下流の実際の平坦性F1および平坦性設定点F1*から、実行されるべき下流の平坦性変更δF1を決定する。下流の平坦性コントローラ16が、従来技術においても知られている方式で設計されることは、原理的に可能である。しかしながら、他の実施形態も可能である。
【0048】
本発明の1つの可能な実施形態が、以下に、
図3と併せて説明される。この実施形態は、
図2における実施形態に基づく。それゆえ、追加の要素だけが、以下で、より詳細に説明される。
【0049】
図3の図に従って、付加的にさらなる測定デバイス17が存在する。さらなる測定デバイス17は、上流のロールスタンド3eと下流のロールスタンド3fとの間に配列される。さらなる測定デバイス17は、金属ストリップ2が、上流のロールスタンド3eと下流のロールスタンド3fとの間に有する平坦性F2を、度量衡学的に記録するための手段として使用される。平坦性F2は、それを下流の実際の平坦性F1と区別するために、以下で、上流の実際の平坦性と呼ばれる。記録された上流の実際の平坦性F2は、同様に、制御デバイス4に供給される。制御デバイス4は、上流の実際の平坦性F2を受信する。
【0050】
制御デバイス4は、さらに、上流の平坦性コントローラ18を実装する。上流の平坦性コントローラ18は、下流の平坦性コントローラ16と同様の設計であり得る。制御デバイス4は、記録された上流の実際の平坦性F2および平坦性設定点F2*を上流の平坦性コントローラ18に供給する。平坦性設定点F2*は、それを下流の平坦性設定点F1*と区別するために、以下で、上流の平坦性設定点と呼ばれる。上流の平坦性コントローラ18によって、制御デバイス4は、上流の実際の平坦性F2および上流の平坦性設定点F2*から、以下で、上流の平坦性変更と呼ばれる、実行されるべき平坦性変更δF2を決定する。
【0051】
図3に示す実施形態の文脈において、制御デバイス4は、さらに付加的に、上流のロールスタンド3eの上流に配列された、さらなるロールスタンド3のアクチュエータ19も制御する。一般に、これは、上流のロールスタンド3eのすぐ上流に配列されたロールスタンドである。このため、参照記号3dが、以下で、さらなるロールスタンドのために使用される。
【0052】
さらなるロールスタンド3dのアクチュエータ19に対してもたらされる制御を決定するために、制御デバイス4は、第3の適応要素20およびさらなるノード21を実装する。制御デバイス4は、第2の適応要素11の出力信号を第3の適応要素20に供給する。上記で説明したように、実行されるべき下流の平坦性変更δF1と実行されるべき下流の等高線変更δC1の両方が、この信号において考慮に入れられる。第3の適応要素20では、たとえば、さらなるロールスタンド3dのアクチュエータ19および上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9の動的挙動、特にこれらの2つの動的挙動の間の関係が、考慮に入れられ得る。これは、実際に望ましい。第3の適応要素20の出力信号は、さらなるノード21に供給される。
【0053】
上流の平坦性変更δF2は、さらに、さらなるノード21に供給される。さらなるノード21では、さらなるノード21に供給される2つの値は、加算または減算によって互いに組み合わされる。さらなるノード21の出力信号は、制御デバイス4によって同様に実装された第4の適応要素22を介して、さらなるロールスタンド3dのアクチュエータ19に供給される。第4の適応要素22では、特に、さらなるロールスタンド3dと上流のロールスタンド3eとの間の金属ストリップ2の厚さと、上流のロールスタンド3eと下流のロールスタンド3fとの間の金属ストリップ2の厚さとの間の関係に考慮がなされる。その結果、制御デバイス4は、実行されるべき両平坦性変更δF1、δF2、および実行されるべき下流の等高線変更δC1を考慮に入れながら、さらなるロールスタンド3dのアクチュエータ19に対する操作変数を、そのように決定する。
【0054】
制御デバイス4は、さらなるロールスタンド3dのアクチュエータ19に直ちに結果を与える、さらなるロールスタンド3dに対する設定の変更を供給する。したがって、制御デバイス4は、さらなるロールスタンド3dのアクチュエータ19を適切に制御する。結果として生じる対応する制御によって、アクチュエータ19の設定が、設定においてもたらされた変更に従って変更される。
【0055】
アクチュエータ19は、さらなるロールスタンド3dの圧延のすき間に働く。それにより、アクチュエータ19は、さらなるロールスタンド3dを出ていく金属ストリップ2の平坦性と等高線の両方に影響を及ぼす。上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9に関連する上記の記述は、同様に適用され得る。
【0056】
上流のロールスタンド3eと下流のロールスタンド3fとの間の遅延と同様に、本発明の文脈において、さらなるロールスタンド3dのアクチュエータ19の制御に関連する転送時間T2によって、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9の制御が遅延されることも必要である。転送時間T2は、以下で、上流の転送時間と呼ばれる。上流の転送時間T2は、さらなるロールスタンド3dにおける金属ストリップ2の一定のセグメントの圧延と、上流のロールスタンド3eにおける金属ストリップ2の同じセグメントの圧延との間に経過する時間である。上流の転送時間T2を実装するために、制御デバイス4は、第2の適応要素11の下流に配列された、さらなる遅延要素23を実装する。さらなる遅延要素23を介して、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9の制御が実行される。
【0057】
上流のロールスタンド3eの制御と下流のロールスタンド3fの制御との間の相対的遅延、すなわち、下流の転送時間T1による遅延は、不変に保持されることになる。これは、たとえば、遅延要素12の遅延時間を適切に適応させることによって達成され得る。システム上の理由に対して、異なる手順が、
図3に示される。この手順では、遅延要素12の遅延時間は不変に保持されているが、追加の遅延要素24が存在し、下流の転送時間T1による遅延に加えて上流の転送時間T2によって、下流のロールスタンド3fに供給される信号が遅延される。
【0058】
必要ならば、上記で説明した手順が、ロールトレイン1の入口側のほうに位置するロールスタンド3、すなわち、この場合はロールスタンド3c、3bおよび3aにさらに拡張されることも原理的に可能である。
【0059】
本発明の別の可能な実施形態が、以下に、
図4と併せて説明される。この実施形態も、
図2における実施形態に基づく。それゆえ、追加の要素だけが、以下で、より詳細に説明される。
【0060】
図4の図に従って、本発明による動作方法の文脈では、制御デバイス4は、さらに、上流のロールスタンド3eの上流に配列されたロールスタンド3dのアクチュエータ19も制御する。アクチュエータ19の設定は、それにより、適切に変更される。
図4に示す実施形態においても、制御デバイス4は、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9の制御を考慮に入れながら、上流のロールスタンド3eの上流に配列されたロールスタンド3dのアクチュエータ19の制御を決定する。しかしながら、上流に配列されたロールスタンド3dのアクチュエータ19の制御の決定において、制御デバイス4は、この構成要素を、ロールスタンド3d、3eの金属ストリップ2の相対的厚さに従うスケーリングが関与する場合より少ない程度だけ考慮に入れることが望ましい。それにより、上流のロールスタンド3eの前に、上流のロールスタンド3eの制御によって生じる金属ストリップ2のゆがみを、ロールトレインの入口側に向かって漸次減衰させることを達成することが可能である。
図4に示す実施形態の文脈では、制御デバイス4は、ロールスタンド3d、3e、3fの間の転送時間T1、T2を考慮に入れることなく、上流のロールスタンド3dのアクチュエータ19に、これらのアクチュエータ19に対する操作変数を出力する。
【0061】
原理的には、
図4における手順も、
図3における手順と組み合わせることができる。この場合、ロールスタンド3dはロールスタンド3eを置換し、ロールスタンド3cはロールスタンド3dを置換する。それぞれの場合、
図4と併せて説明されるフィードフォワード制御が、最前列のロールスタンド3e、3dから始まって行われ、次のロールスタンド3f、3eに対するそれらの転送時間T1、T2が、下流のロールスタンド3fの制御の文脈において考慮に入れられる。
【0062】
上記で説明した手順は、さらに、複数のそのようなロールスタンド3に、言い換えれば、たとえば、
図4に示す実施形態におけるロールスタンド3dに加えてロールスタンド3c、3bおよび3aにも拡張され得る。
【0063】
本発明の別の可能な実施形態が、以下に、
図5と併せて説明される。この実施形態も、
図2における実施形態に基づく。それゆえ、この実施形態の追加の要素だけが、以下で、より詳細に説明される。この実施形態は、さらに、必要ならば、
図3および
図4に示す実施形態の各々と組み合わせることもできる。
【0064】
図5、および同じく
図2~
図4によれば、制御デバイス4は、関連するアクチュエータ9、10、19の有効性を考慮に入れながら、関連するロールスタンド3e、3f、3dのアクチュエータ9、10、19に対する操作変数を決定する。上流のロールスタンド3eだけが、
図5における実施形態の文脈において重要であるので、上流のロールスタンド3eだけが、以下で詳細に説明される。
【0065】
アクチュエータ9の有効性は、たとえば、
図5の図に従って有効性行列Mの中に集めることができ、有効性行列Mは、設定されるべき圧延のすき間の等高線、すなわちここでは、上流のロールスタンド3eの圧延のすき間の等高線における変更を供給され、上流のロールスタンド3eの個々のアクチュエータ9に対する関連する操作変数は、有効性行列Mによって決定される。一方では、設定されるべき圧延のすき間の等高線は、これらの変数δF1、δC1に正確に依存するので、これらの操作変数は、実行されるべき下流の平坦性変更δF1および実行されるべき下流の等高線変更δC1から決定される。他方では、それらは、有効性行列Mから、それゆえ有効性を考慮に入れながら決定される。当然のことながら、アクチュエータ9は、決定された操作変数に従って、制御デバイス4によって制御される。
【0066】
図5によれば、制御デバイス4は、識別デバイス25を実装する。一方では、制御デバイス4は、実行されるべき下流の平坦性変更δF1を識別デバイス25に供給する。代替的に、識別デバイス25は、実行されるべき下流の平坦性変更δF1、特に、下流の実際の平坦性F1および下流の平坦性設定点F1*またはそれらの差の基礎となる変数も供給され得る。制御デバイス4は、さらに、上流のロールスタンド3eの設定においてもたらされた変更、すなわち、第2の適応要素11の出力信号を識別デバイス25に供給する。代替的に、識別デバイス25は、上流のロールスタンド3eの設定においてもたらされた変更の基礎となる変数、特に、実行されるべき下流の平坦性変更δF1および実行されるべき下流の等高線変更δC1も供給され得る。
【0067】
識別デバイス25は、バッファメモリ26を有する。バッファメモリ26は、循環メモリとしてまたはシフトレジスタとして設計され得る。バッファメモリ26では、識別デバイス25は、ある時間期間の間にバッファメモリ26に供給された変数を記憶する。この時間期間は、少なくとも下流の転送時間T1と追加の転送時間T0との合計と同じ長さである。この場合、追加の転送時間T0は、下流のロールスタンド3fにおける金属ストリップ2の一定のセグメントの圧延と、下流の実際の平坦性F1が度量衡学的に記録される測定位置の到達との間に経過する時間である、
【0068】
識別デバイス25は、さらに、決定デバイス27を有する。決定デバイス27では、識別デバイス25は、金属ストリップ2の同じセグメントに関連する変数を処理する。一方では、これらは、それぞれのより早い時点において実行されるべき下流の平坦性変更δF1、およびこれのために決定された上流のロールスタンド3eの設定においてもたらされた変更である。しかしながら、これは、さらに、より遅い時点において実行されるべき下流の平坦性変更δF1でもある。この場合、より遅い時点とより早い時点との間の差は、下流の転送時間T1と追加の転送時間T0との合計に等しい。したがって、より遅い時点において実行されるべき下流の平坦性変更δF1は、より早い時点において実行された修正が、設定においてもたらされた変更を介して、より早い時点に対して決定された下流の平坦性変更δF1に対して実際に引き起こした程度についての情報を含有する。この決定を使用して、識別デバイス25は、それゆえ、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9の有効性を修正することができる。
【0069】
本発明の核となる要素は、
図6と併せて以下で再度、簡単に説明される。
【0070】
図6によれば、制御デバイス4は、ステップS1において、少なくとも下流の実際の平坦性F1および下流の実際の等高線C1に対する測定値を受信する。制御デバイス4は、ステップS1においてさらに測定された値、たとえば、上流の実際の平坦性F2も受信し得る。ステップS2において、制御デバイス4は、下流の平坦性変更δF1および等高線変更δC1を決定する。制御デバイス4は、ステップS2においてさらなる平坦性変更、たとえば、上流の平坦性δF2も決定し得る。ステップS3において、制御デバイス4は、ロールスタンド3のアクチュエータを制御する。この場合、制御デバイス4は、少なくとも、本発明による方式で、上流および下流のロールスタンド3e、3fのアクチュエータ9、10を制御する。ステップS3において、制御デバイスは、本発明による方式で、さらなるロールスタンド3dのアクチュエータ19も制御し得る。アクチュエータ9および10ならびに随意に19の制御は、関連する転送時間T1、T2を考慮に入れながら行われる。随意のステップS4において、制御デバイス4は、識別デバイス25を介して、上流のロールスタンド3eのアクチュエータ9の有効性を修正することができる。
【0071】
図6の図に従って、制御デバイス4は、ステップS1~S4を繰り返し実行する。ステップS1~S4の1回の実行に対するサイクル時間Tは、数ミリ秒の範囲内であり得る。この場合、制御デバイス4は、本発明による動作方法をリアルタイムで実行する。これは、「自動化レベル1」の問題である。代替的に、サイクル時間は、より高い値(数秒まで)も有し得る。この場合、制御デバイス4は、代替的に、自動化レベル1の文脈において、または自動化レベル2の文脈において、本発明による動作方法を実行することができる。
【0072】
本発明は、多くの利点を有する。特に、下流のロールスタンド3fの出口側の等高線C1および平坦性F1は、互いに独立して調整および制御され得る。分離制御によって、等高線コントローラ15および平坦性コントローラ16の概念および設計は、さらに簡略化される。その上、相互結合を考慮に入れる必要がもはやないという事実は、コントローラの設計における自由度を高める。制御デバイスが、次に本発明に従って働くように、従来技術の制御デバイスのプログラミングを遡及的に修正することは、簡単な問題である。制御デバイスをそのように置き換えること、すなわち、ハードウェアを置き換えることは、不要である。
【0073】
本発明が、望ましい例示的な実施形態によって詳細により具体的に示され、説明されたが、本発明は、開示された例によって限定されるものではなく、他の変形形態が、本発明の保護の範囲を逸脱することなく、当業者によって本発明から導出され得る。
【符号の説明】
【0074】
1 ロールトレイン
2 金属ストリップ
3 ロールスタンド
4 制御デバイス
5 制御プログラム
6 機械コード
7、21 ノード
8、11、20、22 適応要素
9、10、19 アクチュエータ
12、23、24 遅延要素
13、14、17 測定デバイス
15 等高線コントローラ
16、18 平坦性コントローラ
25 識別デバイス
26 バッファメモリ
27 決定デバイス
C1、C1* 等高線
F1、F1* 平坦性
F2、F2* 平坦性
δC1 等高線変更
δF1、δF2 平坦性変更
M 有効性行列
S1~S4 ステップ
T サイクル時間
T0、T1、T2 転送時間
x 転送方向