(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】可変ノズル装置および可変容量型排気ターボ過給機
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20221011BHJP
F01D 17/16 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F02B37/24
F01D17/16 C
(21)【出願番号】P 2021528731
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2019025333
(87)【国際公開番号】W WO2020261417
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サンブハブ ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】段本 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋二
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069678(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007022356(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004043928(DE,A1)
【文献】実開昭59-70035(JP,U)
【文献】特開平10-61450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルマウントと、
前記ノズルマウントに回動可能に支持される複数のノズルベーンと、
前記ノズルマウントの軸線回りに回動可能に設けられるドライブリングであって、周方向に沿った複数箇所に被嵌合部を有するドライブリングと、
各々が、前記複数のノズルベーンのうちの一つに固定される固定部と、前記ドライブリングの複数の前記被嵌合部のうちの一つに嵌合する嵌合部と、を含む複数のレバープレートと、を備え、
前記被嵌合部は、一方側案内面と、他方側案内面と、を含み、
前記嵌合部は、前記一方側案内面に接触可能な一方側転動面と、前記他方側案内面に接触可能な他方側転動面と、を含み、
前記一方側転動面は、前記一方側案内面と接触する範囲の少なくとも一部において直線状に延在するレバープレート側直線部を含み、
前記一方側案内面は、前記一方側転動面と接触する範囲の少なくとも一部において凸曲線状に延在するドライブリング側凸曲面部を含む
可変ノズル装置。
【請求項2】
前記レバープレート側直線部は、前記レバープレートの長手方向軸線に沿って延在するように構成された
請求項1に記載の可変ノズル装置。
【請求項3】
前記ドライブリング側凸曲面部は、前記一方側転動面と接触する範囲における径方向外側の限界接触位置における接線に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に長くなるように構成された
請求項2に記載の可変ノズル装置。
【請求項4】
前記他方側案内面は、前記他方側転動面と接触する範囲において直線状に延在するドライブリング側直線部を含み、
前記他方側転動面は、前記他方側案内面と接触する範囲において凸曲線状に延在するレバープレート側凸曲面部を含む
請求項1乃至3の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項5】
前記ドライブリング側直線部は、径方向外側が径方向内側よりも前記レバープレートの長手方向軸線に対する距離が短くなるように傾斜しており、
前記レバープレート側凸曲面部は、前記他方側案内面と接触する範囲における径方向外側の限界接触位置における接線に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に長くなるように構成された
請求項4に記載の可変ノズル装置。
【請求項6】
前記一方側転動面は、前記レバープレート側直線部よりも径方向内側に連なる内側凸曲面部であって、前記一方側案内面と接触する範囲において凸曲線状に延在する内側凸曲面部をさらに含み、
前記内側凸曲面部は、前記レバープレートの長手方向軸線に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に短くなるように構成された
請求項1乃至5の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項7】
前記一方側案内面および前記一方側転動面の夫々は、前記ドライブリングが閉方向に回転する際に互いに接触するように構成された
請求項1乃至6の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の可変ノズル装置を備える可変容量型排気ターボ過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノズルベーンの翼角を可変可能に可能に構成された可変ノズル装置、および上記可変ノズル装置を備える可変容量型排気ターボ過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排ガスのエネルギを利用してエンジンの吸気を過給する排気ターボ過給機として、可変容量型排気ターボ過給機が知られている(例えば特許文献1参照)。可変容量型排気ターボ過給機は、タービンハウジングのスクロール流路からタービンホイールに排ガスを送るノズル流路の断面積を、可変ノズル装置により調整することで、タービンホイールへ送られる排ガスの流速や圧力を変化させて過給効果を高めるものである。
【0003】
特許文献1には、ノズルベーンに支軸により一体に連結される軸支端と、ドライブリング(ユニゾンリング)に形成された溝に嵌合する自由端と、を有するレバープレート(アーム)、を備える可変ノズル装置が開示されている。上記レバープレートは、ドライブリングがノズル流路の断面積を減少させる閉方向に回転した際に、直線状に形成された閉側溝壁面に接触する閉側凸曲面と、ドライブリングがノズル流路の断面積を増大させる開方向に回転した際に、上記閉側溝壁面に対して平行に設けられた開側溝壁面に接触する開側凸曲面と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、可変ノズル装置のレバープレートが閉側凸曲面と開側凸曲面を有することにより、レバープレートとドライブリングとの嵌合部分における応力を低減し、上記嵌合部分における摩耗を低減することが開示されている。しかし、可変ノズル装置には、ノズルベーンの位置精度を長期間にわたり安定させるために、上記嵌合部分における摩耗のさらなる低減が求められている。
【0006】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、レバープレートとドライブリングとが嵌合する嵌合部分における摩耗を抑制することができる可変ノズル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかる可変ノズル装置は、
ノズルマウントと、
上記ノズルマウントに回動可能に支持される複数のノズルベーンと、
上記ノズルマウントの軸線回りに回動可能に設けられるドライブリングであって、周方向に沿った複数箇所に被嵌合部を有するドライブリングと、
各々が、上記複数のノズルベーンのうちの一つに固定される固定部と、上記ドライブリングの複数の上記被嵌合部のうちの一つに嵌合する嵌合部と、を含む複数のレバープレートと、を備え、
上記被嵌合部は、一方側案内面と、他方側案内面と、を含み、
上記嵌合部は、上記一方側案内面に接触可能な一方側転動面と、上記他方側案内面に接触可能な他方側転動面と、を含み、
上記一方側転動面は、上記一方側案内面と接触する範囲の少なくとも一部において直線状に延在するレバープレート側直線部を含み、
上記一方側案内面は、上記一方側転動面と接触する範囲の少なくとも一部において凸曲線状に延在するドライブリング側凸曲面部を含む。
【0008】
上記(1)の構成によれば、レバープレートに直線状に延在するレバープレート側直線部が設けられ、ドライブリングに凸曲線状に延在するドライブリング側凸曲面部が設けられている。ここで、ドライブリングの回転半径は、レバープレートの回転半径よりも大きいため、ドライブリング側凸曲面部は、仮にドライブリングに直線状に延在する直線部を設け、且つ、レバープレートに凸曲面状に延在する凸曲面部を設ける場合に比べて、凸曲面部の形状を緩やかな形状にすることができる。ドライブリング側凸曲面部を緩やかな形状にすることで、レバープレートとドライブリングとの接触部分にかかる応力を低減させることができる。上記接触部分にかかる応力を低減させることで、レバープレートとドライブリングとの嵌合部分の摩耗を抑制することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の可変ノズル装置であって、上記レバープレート側直線部は、上記レバープレートの長手方向軸線に沿って延在するように構成された。
【0010】
上記(2)の構成によれば、レバープレート側直線部は、レバープレートの長手方向軸線に沿って延在しているので、レバープレートのドライブリングとの接触部分にかかる応力を低減させることができる。このため、レバープレートの摩耗を抑制することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の可変ノズル装置であって、上記ドライブリング側凸曲面部は、上記一方側転動面と接触する範囲における径方向外側の限界接触位置における接線に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に長くなるように構成された。
【0012】
上記(3)の構成によれば、ドライブリング側凸曲面部は、一方側転動面と接触する範囲における径方向外側の限界接触位置における接線に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に長くなるように構成されている。この場合には、ドライブリングが周方向における一方側に回転すると、ドライブリング側凸曲面部の一方側転動面(レバープレート側直線部を含む)に対する接触部分が、一方側転動面のドライブリング側凸曲面部に対する接触部分と同じ径方向内側に向かって移動する。このため、ドライブリング側凸曲面部と一方側転動面との接触部分における摩擦抵抗を低減することができる。上記接触部分における摩擦抵抗を低減することで、レバープレートとドライブリングとの嵌合部分の摩耗を抑制することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の何れかに記載の可変ノズル装置であって、上記他方側案内面は、上記他方側転動面と接触する範囲において直線状に延在するドライブリング側直線部を含み、上記他方側転動面は、上記他方側案内面と接触する範囲において凸曲線状に延在するレバープレート側凸曲面部を含む。
【0014】
レバープレートとドライブリングとの嵌合部分におけるクリアランスが大きいと、振動によりレバープレートの嵌合部が大きく揺れ動き、ドライブリングの被嵌合部に繰り返し衝突するため、上記嵌合部分のクリアランスは小さい方が好ましい。上記(4)の構成によれば、レバープレートの一方側にレバープレート側直線部が、他方側にレバープレート側凸曲面部が設けられている。ドライブリングの一方側にドライブリング側凸曲面部が、他方側にドライブリング側直線部が設けられている。この場合には、レバープレートの一方側および他方側の夫々に直線部を設け、且つ、ドライブリングの一方側および他方側の夫々に凸曲面部を設ける場合に比べて、ドライブリングの回動範囲の全範囲のレバープレートとドライブリングとの嵌合部分のクリアランスの最大値を小さくすることができる。上記の構成によれば、上記嵌合部分のクリアランスの最大値を小さくすることができるので、上記嵌合部分の振動による摩耗を抑制することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の可変ノズル装置であって、上記ドライブリング側直線部は、径方向外側が径方向内側よりも前記レバープレートの長手方向軸線に対する距離が短くなるように傾斜しており、上記レバープレート側凸曲面部は、上記他方側案内面と接触する範囲における径方向外側の限界接触位置における接線に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に長くなるように構成された。
【0016】
上記(5)の構成によれば、ドライブリング側直線部は、径方向外側が径方向内側よりも長手方向軸線に対する距離が短くなるように傾斜している。そして、レバープレート側凸曲面部は、他方側案内面と接触する範囲における径方向外側の限界接触位置における接線に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に長くなるように構成されている。この場合には、ドライブリングが周方向における他方側に回転すると、レバープレート側凸曲面部の他方側案内面(ドライブリング側直線部を含む)に対する接触部分が、他方側案内面のレバープレート側凸曲面部に対する接触部分と同じ径方向内側に移動する。このため、レバープレート側凸曲面部と一方側転動面との接触部分における摩擦抵抗を低減することができる。上記接触部分における摩擦抵抗を低減することで、レバープレートとドライブリングとの嵌合部分の摩耗を抑制することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の何れかに記載の可変ノズル装置であって、上記一方側転動面は、上記レバープレート側直線部よりも径方向内側に連なる内側凸曲面部であって、上記一方側案内面と接触する範囲において凸曲線状に延在する内側凸曲面部をさらに含み、上記内側凸曲面部は、上記レバープレートの長手方向軸線に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に短くなるように構成された。
【0018】
上記(6)の構成によれば、一方側転動面は、上述したレバープレート側直線部と、レバープレート側直線部よりも径方向内側に連なる内側凸曲面部であって、一方側案内面と接触する範囲において凸曲線状に延在する内側凸曲面部と、を含んでいる。上記内側凸曲面部は、レバープレートの長手方向軸線に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に短くなるように構成されている。このため、ドライブリング側凸曲面部は、ドライブリングが回転した際に、レバープレート側直線部および内側凸曲面部に接触するようになっている。この場合には、ドライブリング側凸曲面部は、一方側転動面がレバープレート側直線部のみを含む場合に比べて、緩やかな形状にすることができる。ドライブリング側凸曲面部を緩やかな形状にすることで、レバープレートとドライブリングとの接触部分にかかる応力を低減させることができ、ひいてはレバープレートとドライブリングとの嵌合部分の摩耗を抑制することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)~(6)の何れかに記載の可変ノズル装置であって、上記一方側案内面および上記一方側転動面の夫々は、上記ドライブリングが閉方向に回転する際に互いに接触するように構成された。
【0020】
ドライブリングを閉方向に回転させる際には、ノズルベーンによりノズル流路の流路断面積を小さくするため、ノズル流路を流れる排ガスからノズルベーンに加えられる圧力が大きくなる。このため、ドライブリングを開方向に回転させる際に比べて、レバープレートとドライブリングとの接触部分にかかる応力が大きい。上記(7)の構成によれば、一方側案内面および一方側転動面の夫々は、ドライブリングが閉方向に回転する際に互いに接触するように構成されている。この場合には、上記接触部分に大きな応力がかかる回転方向である閉方向に、ドライブリングを回転させる際の上記接触部分にかかる応力を低減させることができるため、上記嵌合部分の摩耗を効果的に抑制することができる。
【0021】
(8)本発明の少なくとも一実施形態にかかる可変容量側排気ターボ過給機は、
上記(1)~(7)の何れかに記載の可変ノズル装置を備える。
【0022】
上記(8)の構成によれば、レバープレートに直線状に延在するレバープレート側直線部が設けられ、ドライブリングに凸曲線状に延在するドライブリング側凸曲面部が設けられているため、レバープレートとドライブリングとの嵌合部分の摩耗を抑制することができる。レバープレートとドライブリングとの嵌合部分の摩耗を抑制することで、ノズルベーンを長期間にわたり精度良く動作させることができるため、可変容量側排気ターボ過給機は、エンジンに供給される燃焼用気体の過給圧を長期間にわたり精度良く調整することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、レバープレートとドライブリングとが嵌合する嵌合部分における摩耗を抑制することができる可変ノズル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる可変ノズル装置、を備える可変容量型排気ターボ過給機を概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる可変容量型排気ターボ過給機を備えるエンジンの構成を概略的に示す概略図である。
【
図3】
図1に示すA-A線矢視の概略断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態におけるレバープレートの概略図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図であって、ドライブリングが閉方向に回動するときのドライブリングとレバープレートの接触部分を説明するための模式図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図であって、ドライブリングが開方向に回動するときのドライブリングとレバープレートの接触部分を説明するための模式図である。
【
図8】比較例におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図である。
【
図9】凸曲面部に近似する近似円の半径と応力の変化量との関係を示すグラフである。
【
図10】第2の比較例におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図である。
【
図11】レバープレート側凸曲面部の形状を説明するための模式図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態にかかる可変ノズル装置、を備える可変容量型排気ターボ過給機を概略的に示す断面図である。
図2は、本発明の一実施形態にかかる可変容量型排気ターボ過給機を備えるエンジンの構成を概略的に示す概略図である。
図3は、
図1に示すA-A線矢視の概略断面図である。
図4は、可変ノズル装置の概略断面図である。
幾つかの実施形態にかかる可変ノズル装置1は、
図1に示されるように、排気ターボ過給機2のハウジング21の内部に搭載される。図示される実施形態では、可変ノズル装置1は、タービンハウジング21Aと軸受ハウジング21Cを組み合わせたものの内部に取付けられている。
【0027】
幾つかの実施形態にかかる排気ターボ過給機2(可変容量型排気ターボ過給機)は、
図2に示されるように、回転シャフト22と、回転シャフト22の一端部に機械的に連結されるタービンホイール23と、回転シャフト22の他端部に機械的に連結されるコンプレッサロータ24と、回転シャフト22を回転可能に支持する軸受25と、これらを収容する上述したハウジング21と、を備える。
【0028】
図示される実施形態では、ハウジング21は、タービンホイール23を収容するタービンハウジング21Aと、コンプレッサロータ24を収容するコンプレッサハウジング21Bと、軸受25を収容する軸受ハウジング21Cと、を含む。軸受ハウジング21Cは、タービンハウジング21Aとコンプレッサハウジング21Bとの間に設けられ、タービンハウジング21A及びコンプレッサハウジング21Bの夫々に、例えばボルトなどの締結部材により締結されている。
【0029】
コンプレッサロータ24は、
図2に示されるように、エンジン本体26(燃焼装置)に空気(燃焼用気体)を供給する供給ライン27に設けられている。タービンホイール23は、エンジン本体26から排ガスを排出する排出ライン28に設けられている。
【0030】
排気ターボ過給機2は、
図2に示されるように、エンジン本体26から排出ライン28を通って、タービンハウジング21Aの内部に導入された排ガスにより、タービンホイール23を回転させるように構成されている。コンプレッサロータ24は、回転シャフト22を介してタービンホイール23に機械的に連結されているので、タービンホイール23の回転に連動して回転する。排気ターボ過給機2は、コンプレッサロータ24の回転により、供給ライン27を通ってコンプレッサハウジング21Bの内部に導入された空気(燃焼用気体)を圧縮してエンジン本体26に送るように構成されている。
【0031】
タービンハウジング21Aには、例えば
図1に示されるように、排ガス導入口31からタービンハウジング21Aの内部に導入された排ガスを、タービンホイール23に送るためのスクロール状の排ガス流路32であるスクロール流路32Aと、タービンホイール23から排ガス排出口33に排ガスを送るための排ガス流路32である排ガス排出流路32Bと、が形成されている。
【0032】
以下、例えば
図1に示されるように、可変ノズル装置1の軸線LAが延在する方向を軸方向Xとし、軸線LAに直交する方向を径方向Yとする。軸方向Xのうち、軸受ハウジング21Cに対してタービンハウジング21Aが位置する側(
図1中右側)を一方側X1とし、タービンハウジング21Aに対して軸受ハウジング21Cが位置する側(
図1中左側)を他方側X2とする。図示される実施形態では、可変ノズル装置1の軸線LAは、タービンホイール23の軸線と同一直線上に延在している。
【0033】
可変ノズル装置1は、
図1に示されるように、タービンホイール23の周囲を囲むように、タービンホイール23の径方向外側に配置される。可変ノズル装置1は、スクロール流路32Aとタービンホイール23との間に、排ガス流路32であるノズル流路32Cを画定するように構成されている。また、可変ノズル装置1は、ノズルベーン5のベーン翼52の翼角を変化させることで、ノズル流路32Cの断面積を調整可能に構成されている。ノズル流路32Cの断面積を増減させることにより、スクロール流路32Aからタービンホイール23に流れる排ガスの流速や圧力を変化させることができる。
【0034】
排ガス導入口31からタービンハウジング21Aの内部に導入された排ガスは、スクロール流路32Aを通り、その次にノズル流路32Cを通った後に、タービンホイール23に送られて、タービンホイール23を回転させる。タービンホイール23を回転させた排ガスは、排ガス排出流路32Bを通った後に、排ガス排出口33からタービンハウジング21Aの外部に排出される。
【0035】
可変ノズル装置1は、
図1に示されるように、ノズルマウント4を備える。ノズルマウント4は、軸線LAに交差(直交)する方向に沿って延在する環状板部41を含む。ノズルマウント4は、ハウジング21の内部に支持されるように構成されている。
【0036】
図示される実施形態では、
図1に示されるように、ノズルマウント4は、環状板部41の外周縁部42が、タービンハウジング21Aおよび軸受ハウジング21Cに挟持されることで、ハウジング21の内部に支持されている。可変ノズル装置1は、ノズルマウント4がハウジング21の内部に支持されることで、ハウジング21の内部に支持されている。ノズルマウント4の環状板部41の軸方向他方側の背面413と、軸受ハウジング21Cに形成された環状の溝部211と、により、それらの内部に内部空間43が画定されている。
【0037】
図示される実施形態では、可変ノズル装置1は、例えば
図1に示されるように、上述したノズルマウント4と、少なくとも一つのノズルベーン5と、ドライブリング6と、少なくとも一つのレバープレート7と、ノズルプレート8と、少なくとも一つのノズルサポート9と、を備える。ドライブリング6およびレバープレート7は、
図1に示されるように、内部空間43の内部に配置される。
【0038】
ノズルプレート8は、
図4に示されるように、軸線LAに交差(直交)する方向に沿って延在するプレート側環状板部81と、プレート側環状板部81の内周縁部82から軸方向の一方側に突出する突出部83と、を含む。
【0039】
少なくとも一つのノズルサポート9は、
図4に示されるように、ノズルプレート8をノズルマウント4から離間して支持するように構成されている。図示される実施形態では、ノズルサポート9は、長手方向を有し、長手方向の一端部91が環状板部41(ノズルマウント4)に機械的に連結され、長手方向の他端部92が、プレート側環状板部81(ノズルプレート8)に機械的に連結されている。
【0040】
或る実施形態では、少なくとも一つのノズルサポート9は、軸線LAの回りに周方向に沿って互いに間隔をおいて配置される複数のノズルサポート9からなる。この場合には、複数のノズルサポート9の夫々が、ノズルマウント4及びノズルプレート8の夫々に機械的に連結される。
【0041】
上述したノズル流路32Cは、
図4に示されるように、ノズルマウント4とノズルプレート8とにより画定される。図示される実施形態では、上述したノズル流路32Cは、環状板部41の軸方向の一方側に位置するマウント側流路壁面411と、プレート側環状板部81の軸方向の他方側に位置するプレート側流路壁面811と、により画定される。プレート側流路壁面811は、マウント側流路壁面411に対向している。
【0042】
少なくとも一つのノズルベーン5は、
図4に示されるように、ノズルマウント4に回動可能に支持されている。少なくとも一つのノズルベーン5は、長手方向を有するベーンシャフト51と、ベーンシャフト51の長手方向の一端部に設けられるベーン翼52と、を含む。ベーン翼52は、ノズル流路32C、すなわちノズルマウント4とノズルプレート8の間に配置されている。図示される実施形態では、ノズルベーン5は、ベーンシャフト51が環状板部41に形成された挿通孔412に、ベーンシャフト51が回転可能に支持されることにより、ベーンシャフト51の軸線LBをノズルベーン5の回転中心として回転可能となっている。
【0043】
図示される実施形態では、少なくとも一つのノズルベーン5は、
図3に示されるように、複数のノズルベーン5からなる。上述した挿通孔412は、ノズルベーン5と同数形成されている。複数の挿通孔412の夫々は、軸線LA周りの周方向に沿って互いに間隔をおいた離れた位置に形成されている。複数のノズルベーン5の夫々は、ベーンシャフト51が複数の挿通孔412のうちの一つに挿通するようになっている。
【0044】
ドライブリング6は、
図4に示されるように、ノズルマウント4の軸線LC回りに回動可能に設けられている。ドライブリング6は、レバープレート7の嵌合部71が転動可能に緩く嵌合するように構成された少なくとも一つの被嵌合部61を有している。ノズルマウント4の軸線LCは、可変ノズル装置1の軸線LAに沿って延在している。図示される実施形態では、軸線LCは、軸線LAと同一直線上に延在している。
【0045】
図示される実施形態では、ノズルマウント4の環状板部41は、
図4に示されるように、上述した挿通孔412が形成された内周側部分44と、内周側部分44よりも径方向外側に位置する外周側部分45と、を含む。内周側部分44は、外周側部分45よりも肉厚に形成されている。ドライブリング6は、軸線LAに交差(直交)する方向に沿って延在するリング側環状板部62を含む。リング側環状板部62の内周面621が、ノズルマウント4の内周側部分44と外周側部分45との境界に形成された段差面431に対向するように配置されている。ドライブリング6は、リング側環状板部62の内周端部63が、ノズルマウント4の内周側部分44の外周端部46に対して回転可能に支持されるようになっている。
【0046】
図5は、本発明の第1の実施形態におけるレバープレートの概略図である。
少なくとも一つのレバープレート7は、
図4に示されるように、ドライブリング6の被嵌合部61に嵌合する上述した嵌合部71と、ノズルベーン5に固定される固定部72と、を含む。図示される実施形態では、少なくとも一つのレバープレート7は、
図5に示されるように、レバープレート7の長手方向軸線LLに沿って長手方向を有している。レバープレート7は、長手方向の一端部73に上述した嵌合部71が設けられ、長手方向の他端部74に上述した固定部72が設けられている。レバープレート7は、一端部73と他端部74との間に、一端部73および他端部74よりも幅が狭い幅狭部75が設けられている。
【0047】
長手方向軸線LLは、レバープレート7の長手方向に沿って軸線である。長手方向軸線LLは、長手方向の他端部74を左右対称に二分割するような設計線であってもよいし、レバープレート7の面積を二等分する面積二等分線などであってもよい。
【0048】
レバープレート7の固定部72は、
図4に示されるように、ノズルベーン5のベーンシャフト51に機械的に連結されている。このため、ノズルベーン5のベーン翼52およびレバープレート7は、ベーンシャフト51の軸線LBを回転中心として一体的に回転可能となっている。
【0049】
図示される実施形態では、ノズルベーン5のベーンシャフト51は、ノズルマウント4の挿通孔412を挿通し、内周側部分44よりも軸方向の他方側に突出した一端部53を含む。レバープレート7の固定部72は、ベーンシャフト51の一端部53が嵌入することで、一端部53に機械的に連結される貫通孔721を含む。
【0050】
図示される実施形態では、ドライブリング6の被嵌合部61は、リング側環状板部62の外周縁部64に形成される溝部65を含む。レバープレート7の嵌合部71は、溝部65の内部に収容され、溝部65に緩く嵌合するように構成されている。
【0051】
図示される実施形態では、少なくとも一つのレバープレート7は、
図3に示されるように、ノズルベーン5と同数設けられている。また、ドライブリング6の少なくとも一つの被嵌合部61は、レバープレート7と同数形成されている。複数の被嵌合部61の夫々は、軸線LA周りの周方向に沿って互いに間隔をおいた離れた位置に形成されている。複数のレバープレート7の夫々は、固定部72が、複数のノズルベーン5のうちの一つに固定されるとともに、嵌合部71が、複数の被嵌合部61のうちの一つに嵌合するようになっている。複数のレバープレート7の夫々は、嵌合部71が、固定部72よりも径方向外側に位置するように配置される。
【0052】
図示される実施形態では、
図1に示されるように、排気ターボ過給機2は、ドライブリング6を軸線LC回りに回動させるように構成されたアクチュエータ29と、アクチュエータ29の駆動シャフト291の駆動(軸線LC回りの周方向に沿った移動量)を制御するように構成されたコントローラ30(制御装置)と、を備える。アクチュエータ29は、電動モータやエアシリンダなどを含む。アクチュエータ29の駆動シャフト291は、ドライブリング6に機械的に連結されている。
【0053】
アクチュエータ29からノズルベーン5までの動力伝達経路では、アクチュエータ29の駆動シャフト291とドライブリング6、ドライブリング6の被嵌合部61とレバープレート7の嵌合部71、レバープレート7の固定部72とノズルベーン5のベーンシャフト51の夫々が、互いに連結し合うように構成されている。
【0054】
コントローラ30によりアクチュエータ29が駆動されると、アクチュエータ29の駆動シャフト291の移動に伴い、ドライブリング6が軸線LCを回転中心として回動され、ドライブリング6の回動に伴い、複数のレバープレート7が同期的に回動される。
【0055】
図3に示されるような、ドライブリング6が周方向における一方側(
図3中時計回り方向、閉方向)に回転すると、全てのレバープレート7は、ベーンシャフト51の軸線LBを中心に上記周方向における一方側に回転される。この際に、周方向において隣接するベーン翼52同士が互いに離れる方向に移動する。上記ベーン翼52の移動に伴い、周方向において隣接するベーン翼52間の排ガスの流路、すなわち、ノズル流路32Cの断面積が大きくなる。ノズル流路32Cの断面積を大きくする回転方向を、閉方向とする。
【0056】
図3に示されるような、ドライブリング6が周方向における他方側(
図3中時計回り方向、開方向)に回転すると、全てのレバープレート7は、ベーンシャフト51の軸線LBを中心に上記周方向における他方側に回転される。この際に、周方向において隣接するベーン翼52同士が互いに近づく方向に移動する。上記ベーン翼52の移動に伴い、周方向において隣接するベーン翼52間の排ガスの流路、すなわち、ノズル流路32Cの断面積が小さくなる。ノズル流路32Cの断面積を小さくする回転方向を、閉方向とする。
【0057】
なお、他の幾つかの実施形態では、ドライブリング6が周方向における一方側に回転すると、ノズル流路32Cの断面積が小さくなり、ドライブリング6が周方向における他方側に回転すると、ノズル流路32Cの断面積が大きくなるように構成されていてもよい。
【0058】
図6は、本発明の第1の実施形態におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図であって、ドライブリングが閉方向に回動するときのドライブリングとレバープレートの接触部分を説明するための模式図である。
図7は、本発明の第1の実施形態におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図であって、ドライブリングが開方向に回動するときのドライブリングとレバープレートの接触部分を説明するための模式図である。
【0059】
ドライブリング6の被嵌合部61は、
図6、7に示されるように、一方側案内面66と、一方側案内面66に対向する他方側案内面67と、を含む。図示される実施形態では、一方側案内面66は、上述した溝部65の周方向他方側の壁面651を含み、他方側案内面67は、上述した溝部65の周方向一方側の壁面652を含む。
【0060】
レバープレート7の嵌合部71は、
図6、7に示されるように、ドライブリング6が回動すると、ドライブリング6の被嵌合部61に対して転動する。つまり、ドライブリング6が回転するにつれて、ドライブリング6とレバープレート7の接触部分CAが徐々に移動する。
【0061】
レバープレート7の嵌合部71は、
図6、7に示されるように、一方側案内面66に接触可能な一方側転動面76と、他方側案内面67に接触可能な他方側転動面77と、を含む。一方側転動面76は、
図6に示されるように、ドライブリング6が閉方向(周方向における一方側)に回転しているときに、一方側案内面66に接触する。他方側転動面77は、
図7に示されるように、ドライブリング6が開方向(周方向における他方側)に回転しているときに、他方側案内面67に接触する。図示される実施形態では、一方側転動面76は、上述した嵌合部71の一面711(周方向他方側の面)を含み、他方側転動面77は、上述した嵌合部71の、一面711とは長手方向軸線LLを挟んで反対側に設けられる他面712(周方向一方側の面)を含む。
【0062】
図6に示されるように、ドライブリング6の一方側案内面66は、径方向外側の限界接触位置PR1から径方向内側の限界接触位置PR2までの範囲において、レバープレート7の一方側転動面76に接触する。一方側案内面66の一方側転動面76と接触する範囲をAR1とする。レバープレート7の一方側転動面76は、径方向外側の限界接触位置PL1から径方向内側の限界接触位置PL2までの範囲において、ドライブリング6の一方側案内面66に接触する。一方側転動面76の一方側案内面66と接触する範囲をAL1とする。
【0063】
図6に示されるように、ドライブリング6が閉方向(周方向における一方側)に回転しているときに、ドライブリング6とレバープレート7の接触部分CAは、径方向外側から径方向内側に向かって移動する。この際、ドライブリング6のレバープレート7に対する接触部分は、限界接触位置PR1から径方向内側に向かって限界接触位置PR2まで移動する。また、レバープレート7のドライブリング6に対する接触部分は、限界接触位置PL1から径方向内側に向かって限界接触位置PL2まで移動する。つまり、ドライブリング6およびレバープレート7の夫々の接触部分CAR,CALは、同じ径方向内側に向かって移動する。
【0064】
図7に示されるように、ドライブリング6の他方側案内面67は、径方向外側の限界接触位置PR3から径方向内側の限界接触位置PR4までの範囲において、レバープレート7の他方側転動面77に接触する。他方側案内面67の他方側転動面77と接触する範囲をAR2とする。レバープレート7の他方側転動面77は、径方向外側の限界接触位置PL3から径方向内側の限界接触位置PL4までの範囲において、ドライブリング6の他方側案内面67に接触する。他方側転動面77の他方側案内面67と接触する範囲をAL2とする。
【0065】
図7に示されるように、ドライブリング6が開方向(周方向における他方側)に回転しているときに、ドライブリング6とレバープレート7の接触部分CAは、径方向内側から径方向外側に向かって移動する。この際、ドライブリング6のレバープレート7に対する接触部分は、限界接触位置PR4から径方向外側に向かって限界接触位置PR3まで移動する。また、レバープレート7のドライブリング6に対する接触部分は、限界接触位置PL4から径方向外側に向かって限界接触位置PL3まで移動する。つまり、ドライブリング6およびレバープレート7の夫々の接触部分CAR,CALは、同じ径方向外側に向かって移動する。
【0066】
幾つかの実施形態にかかる可変ノズル装置1は、
図6に示されるように、上述した被嵌合部61を含むドライブリング6と、上述した嵌合部71を含むレバープレート7と、を備える。被嵌合部61は、上述した一方側案内面66と、上述した他方側案内面67と、を含み、嵌合部71は、上述した一方側転動面76と、上述した他方側転動面77と、を含む。一方側転動面76は、一方側案内面66と接触する範囲AL1の少なくとも一部において直線状に延在するレバープレート側直線部78を含み、一方側案内面66は、一方側転動面76と接触する範囲AR1の少なくとも一部において凸曲線状に延在するドライブリング側凸曲面部68を含む。
【0067】
図示される実施形態では、
図6に示されるように、レバープレート側直線部78は、上記範囲AL1の全範囲にわたり直線状に延在しており、ドライブリング側凸曲面部68は、上記範囲AR1の全範囲にわたり凸曲線状に延在している。
図6に示されるように、ドライブリング側凸曲面部68の上記範囲AR1に近似する近似円の半径(曲率半径)をR1とする。
【0068】
図8は、比較例におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図である。
比較例におけるドライブリング6Aの一方側案内面66Aおよび他方側案内面67Aの夫々は、直線状に延在している。比較例におけるレバープレート7Aの一方側転動面76Aおよび他方側転動面77Aの夫々は、凸曲線状に延在している。一方側転動面76Aに近似する近似円の半径(曲率半径)をR2とする。一方側転動面76Aの上記半径R2は、上述したドライブリング側凸曲面部68の上記半径R1よりも小さくなっている。
図3に示されるように、ドライブリング6の回転半径TR1は、レバープレート7の回転半径TR2よりも大きいので、ドライブリング6が軸線LAを中心として所定角度回転した際に、レバープレート7は、軸線LBを中心として上記所定角度よりも大きな角度だけ回転する。このため、一方側転動面76Aを緩やかな形状にすると、一方側転動面76Aの一方側案内面66Aと接触する範囲が、上述した範囲AR1よりも大きくなり、動作効率の低下を招く虞がある。よって、一方側転動面76Aを緩やかな形状にすることは設計上困難である。
【0069】
図9は、凸曲面部に近似する近似円の半径と応力の変化量との関係を示すグラフである。
図9においては、凸曲面部(ドライブリング側凸曲面部68や一方側転動面76A)に近似する近似円の半径を横軸にし、レバープレート7とドライブリング6との接触部分CAにかかる応力の、上記半径R2における応力に対する変化量を縦軸にしている。ドライブリング側凸曲面部68の上記半径R1は、一方側転動面76Aの上記半径R2よりも大きいため、ドライブリング側凸曲面部68は、レバープレート7とドライブリング6との接触部分CAにかかる応力を、上記半径R2において接触部分CAにかかる応力に比べて、20%程度、低減させることができる。
【0070】
上記の構成によれば、レバープレート7に直線状に延在するレバープレート側直線部78が設けられ、ドライブリング6に凸曲線状に延在するドライブリング側凸曲面部68が設けられている。上述したように、ドライブリング6の回転半径TR1は、レバープレート7の回転半径TR2よりも大きいため、ドライブリング側凸曲面部68は、仮に上記比較例のように、ドライブリング6に直線状に延在する直線部(一方側案内面66A)を設け、且つ、レバープレート7に凸曲面状に延在する凸曲面部(一方側転動面76A)を設ける場合に比べて、凸曲面部の形状を緩やかな形状にすることができる。ドライブリング側凸曲面部68を緩やかな形状にすることで、レバープレート7とドライブリング6との接触部分CAにかかる応力を低減させることができる。上記接触部分CAにかかる応力を低減させることで、レバープレート7とドライブリング6との嵌合部分60(嵌合部71および被嵌合部61を含む)の摩耗を抑制することができる。
【0071】
幾つかの実施形態では、上述した可変ノズル装置1のレバープレート側直線部78は、例えば
図5に示されるように、レバープレート7の長手方向軸線LLに沿って延在するように構成されている。この場合には、レバープレート側直線部78は、レバープレート7の長手方向軸線LLに沿って延在しているので、レバープレート7のドライブリング6との接触部分CAにかかる応力を低減させることができる。このため、レバープレート7の摩耗を抑制することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、上述した可変ノズル装置1のドライブリング側凸曲面部68は、
図6に示されるように、一方側転動面76と接触する範囲AR1における径方向外側の限界接触位置PR1における接線T1に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に長くなるように構成されている。この場合には、ドライブリング6が周方向における一方側に回転すると、ドライブリング側凸曲面部68の一方側転動面76(レバープレート側直線部78を含む)に対する接触部分CARが、一方側転動面76のドライブリング側凸曲面部68に対する接触部分CALと同じ径方向内側に向かって移動する。仮に、特許文献1の
図6に示されるような、上記接触部分CARが径方向内側に向かって移動するのに対して、上記接触部分CALが径方向外側に向かって移動するように構成されていると、ドライブリング側凸曲面部68と一方側転動面76との接触部分CAにおける摩擦抵抗が増大する。このため、ドライブリング側凸曲面部68と一方側転動面76との接触部分CAにおける摩擦抵抗を低減することができる。よって、上記接触部分CAにおける摩擦抵抗を低減することで、レバープレートとドライブリングとの嵌合部分60の摩耗を抑制することができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、上述したドライブリング側凸曲面部68は、ドライブリング側凸曲面部68は、
図6に示されるように、径方向内側に向かうにつれて徐々に曲率が小さくなるように構成されている。
図6に示される実施形態では、径方向外側の限界接触位置PR1において曲率が最大となり、径方向内側の限界接触位置PR2において曲率が最小となるように構成されている。この場合には、ドライブリング側凸曲面部68と一方側転動面76との接触部分CAにおける摩擦抵抗を効果的に低減することができる。上記接触部分CAにおける摩擦抵抗を効果的に低減することで、レバープレート7とドライブリング6との嵌合部分60の摩耗を抑制することができる。
【0074】
幾つかの実施形態では、上述した可変ノズル装置1の他方側案内面67は、
図7に示されるように、上述した他方側転動面77と接触する範囲AR2において直線状に延在するドライブリング側直線部69を含む。上述した他方側転動面77は、上述した他方側案内面67と接触する範囲AL2において凸曲線状に延在するレバープレート側凸曲面部79を含む。
【0075】
図10は、第2の比較例におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図である。
第2の比較例におけるレバープレート7Bの一方側転動面76Bおよび他方側転動面77Bの夫々は、直線状に延在している。第2の比較例におけるドライブリング6Bの一方側案内面66Bおよび他方側案内面67Bの夫々は、凸曲面状に延在している。この場合には、
図10に示されるような、レバープレート7Bとドライブリング6Bとの嵌合部分60BのクリアランスCは、
図6に示されるような、上述したレバープレート7とドライブリング6との嵌合部分60のクリアランスC3よりも大きくなる。ここで、上記クリアランスCは、一方側案内面66Bと一方側転動面76BとのクリアランスC1と、他方側転動面77Bと他方側案内面67BとのクリアランスC2と、の合計である。また、上記クリアランスC3は、一方側案内面66と一方側転動面76とのクリアランスと、他方側転動面77と他方側案内面67とのクリアランスと、の合計である。
【0076】
レバープレート7とドライブリング6との嵌合部分60におけるクリアランスが大きいと、振動によりレバープレート7の嵌合部71が大きく揺れ動き、ドライブリング6の被嵌合部61に繰り返し衝突するため、上記嵌合部分60のクリアランスC3は小さい方が好ましい。上記の構成によれば、レバープレート7の一方側にレバープレート側直線部78が、他方側にレバープレート側凸曲面部79が設けられている。ドライブリング6の一方側にドライブリング側凸曲面部68が、他方側にドライブリング側直線部69が設けられている。この場合には、
図10に示されるような、レバープレート7Bの一方側および他方側の夫々に直線部(一方側転動面76B,他方側転動面77B)を設け、且つ、ドライブリング6Bの一方側および他方側の夫々に凸曲面部(一方側案内面66B,他方側案内面67B)を設ける場合に比べて、レバープレート7とドライブリング6との嵌合部分60のクリアランスC3の最大値を小さくすることができる。上記の構成によれば、上記嵌合部分60のクリアランスC3の最大値を小さくすることができるので、上記嵌合部分60の振動による摩耗を抑制することができる。
【0077】
図11は、レバープレート側凸曲面部の形状を説明するための模式図である。
幾つかの実施形態では、上述したレバープレート側凸曲面部79は、以下の方法により特定される形状を有している。まず、ドライブリング側直線部69の形状を任意の直線SLにより描く。任意の直線SLからクリアランスC4だけ長手方向軸線LLに向かってずれた直線OLを描く。ここで、クリアランスC4は、ドライブリング6が回動する際に必要とするクリアランスである。全開から全閉までの各動作状態における直線OLをまとめて重ね合わせた直線群ODを設ける。直線群ODにおいて重ね合わされた直線OLに対して、長手方向軸線LLが位置する側から上記重ね合わされた直線OLに内接する内接円ICを描写する。上記内接円ICの円弧形状が、レバープレート側凸曲面部79の形状となる。この場合には、レバープレート側凸曲面部79の形状を上記内接円ICの円弧形状とすることで、レバープレート7とドライブリング6との嵌合部分60のクリアランスを、上記クリアランスC4(ドライブリング6が回動する際に必要とするクリアランス)にすることができる。上記の構成によれば、上記嵌合部分60のクリアランスC3(
図6参照)の最大値をクリアランスC4とすることができるので、上記嵌合部分60の振動による摩耗を抑制することができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、
図7に示されるように、上述したドライブリング側直線部69は、径方向外側が径方向内側よりもレバープレート7の長手方向軸線LLに対する距離が短くなるように傾斜している。上述したレバープレート側凸曲面部79は、上述した他方側案内面67と接触する範囲AL2における径方向外側の限界接触位置PL3における接線T2に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に長くなるように構成された。
【0079】
上記の構成によれば、ドライブリング側直線部69は、径方向外側が径方向内側よりも長手方向軸線LLに対する距離が短くなるように傾斜している。そして、レバープレート側凸曲面部79は、他方側案内面67と接触する範囲AL2における径方向外側の限界接触位置PL3における接線T2に対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に長くなるように構成されている。この場合には、ドライブリング6が周方向における他方側に回転すると、レバープレート側凸曲面部79の他方側案内面67(ドライブリング側直線部69を含む)に対する接触部分CALが、他方側案内面67のレバープレート側凸曲面部79に対する接触部分CARと同じ径方向内側に移動する。このため、レバープレート側凸曲面部79と他方側案内面67との接触部分CAにおける摩擦抵抗を低減することができる。上記接触部分CAにおける摩擦抵抗を低減することで、レバープレート7とドライブリング6との嵌合部分60の摩耗を抑制することができる。
【0080】
図12は、本発明の第2の実施形態におけるドライブリングとレバープレートとの関係を説明するための模式図である。
幾つかの実施形態では、上述した一方側転動面76は、上述したレバープレート側直線部78よりも径方向内側に連なる内側凸曲面部70であって、一方側案内面66と接触する範囲AR1において凸曲線状に延在する内側凸曲面部70をさらに含んでいる。つまり、一方側転動面76は、レバープレート側直線部78と、内側凸曲面部70と、を含む。上述した内側凸曲面部70は、レバープレート7の長手方向軸線LLに対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に短くなるように構成された。この場合には、一方側案内面66をより緩やかな形状にすることができる。
【0081】
図示される実施形態では、上述した一方側案内面66は、上記範囲AR1の全範囲にわたり凸曲線状に延在しているドライブリング側凸曲面部68Aを含む。
図12に示されるように、ドライブリング側凸曲面部68Aの上記範囲AR1に近似する近似円の半径(曲率半径)をR3とする。ドライブリング側凸曲面部68Aの上記半径R3は、ドライブリング側凸曲面部68の上記半径R1よりも大きいため、ドライブリング側凸曲面部68Aは、レバープレート7とドライブリング6との接触部分CAにかかる応力を、上記半径R1において接触部分CAにかかる応力に比べて、低減させることができる。
【0082】
上記の構成によれば、一方側転動面76は、上述したレバープレート側直線部78と、レバープレート側直線部78よりも径方向内側に連なる内側凸曲面部70であって、一方側案内面66と接触する範囲AR1において凸曲線状に延在する内側凸曲面部70と、を含んでいる。上記内側凸曲面部70は、レバープレート7の長手方向軸線LLに対して、径方向内側に向かうにつれて距離が徐々に短くなるように構成されている。このため、ドライブリング側凸曲面部68Aは、ドライブリング6が回転した際に、レバープレート側直線部78および内側凸曲面部70に接触するようになっている。この場合には、ドライブリング側凸曲面部68Aは、一方側転動面76がレバープレート側直線部78のみを含む場合に比べて、緩やかな形状にすることができる。ドライブリング側凸曲面部68Aを緩やかな形状にすることで、レバープレート7とドライブリング6との接触部分CAにかかる応力を低減させることができ、ひいてはレバープレート7とドライブリング6との嵌合部分60の摩耗を抑制することができる。
【0083】
幾つかの実施形態では、
図6に示されるように、上述した可変ノズル装置1の一方側案内面66および一方側転動面76の夫々は、ドライブリング6が閉方向に回転する際に互いに接触するように構成された。ドライブリング6を閉方向に回転させる際には、ノズルベーン5によりノズル流路32Cの流路断面積を小さくするため、ノズル流路32Cを流れる排ガスからノズルベーン5に加えられる圧力が大きくなる。このため、ドライブリング6を開方向に回転させる際に比べて、レバープレート7とドライブリング6との接触部分CAにかかる応力が大きい。上記の構成によれば、一方側案内面66および一方側転動面76の夫々は、ドライブリング6が閉方向に回転する際に互いに接触するように構成されている。この場合には、上記接触部分CAに大きな応力がかかる回転方向である閉方向に、ドライブリング6を回転させる際の上記接触部分CAにかかる応力を低減させることができるため、上記嵌合部分60の摩耗を効果的に抑制することができる。
【0084】
幾つかの実施形態にかかる排気ターボ過給機2(可変容量側排気ターボ過給機)は、
図1に示されるように、上述した可変ノズル装置1を備える。この場合には、レバープレート7に直線状に延在するレバープレート側直線部78が設けられ、ドライブリング6に凸曲線状に延在するドライブリング側凸曲面部68が設けられている。このため、レバープレート7とドライブリング6との嵌合部分60の摩耗を抑制することができる。上記嵌合部分60の摩耗を抑制することで、ノズルベーン5を長期間にわたり精度良く動作させることができるため、可変容量側排気ターボ過給機2は、エンジン(エンジン本体26)に供給される燃焼用気体の過給圧を長期間にわたり精度良く調整することができる。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0086】
1 可変ノズル装置
2 排気ターボ過給機
4 ノズルマウント
5 ノズルベーン
6 ドライブリング
6A,6B 比較例のドライブリング
7 レバープレート
7A,7B 比較例のレバープレート
8 ノズルプレート
9 ノズルサポート
21 ハウジング
21A タービンハウジング
21B コンプレッサハウジング
21C 軸受ハウジング
22 回転シャフト
23 タービンホイール
24 コンプレッサロータ
25 軸受
26 エンジン本体
27 供給ライン
28 排出ライン
29 アクチュエータ
30 コントローラ
31 排ガス導入口
32 排ガス流路
32A スクロール流路
32B 排ガス排出流路
32C ノズル流路
33 排ガス排出口
41 環状板部
42 外周縁部
43 内部空間
44 内周側部分
45 外周側部分
46 外周端部
51 ベーンシャフト
52 ベーン翼
53 一端部
60 嵌合部分
61 被嵌合部
62 リング側環状板部
63 内周端部
64 外周縁部
65 溝部
66 一方側案内面
67 他方側案内面
68 ドライブリング側凸曲面部
69 ドライブリング側直線部
70 内側凸曲面図
71 嵌合部
72 固定部
73 一端部
74 他端部
75 幅狭部
76 一方側転動面
77 他方側転動面
78 レバープレート側直線部
79 レバープレート側凸曲面部
81 プレート側環状板部
82 内周縁部
83 突出部
AL1,AL2,AR1,AR2 範囲
C,C1,C2,C3,C4 クリアランス
CA,CAL,CAR 接触部分
IC 内接円
OD 直線群
OL,SL 直線
PL1,PL2,PL3,PL4,PR1,PR2,PR3,PR4 限界接触位置
R1,R2,R3 半径
T1,T2 接線
TR1,TR2 回転半径
X 軸方向
X1 一方側
X2 他方側
Y 径方向