(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】CPR中の心拍検出及びパルスオキシメトリ測定のアクティブ化及び構成を制御するための装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20221011BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20221011BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20221011BHJP
A61H 31/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/0245
A61B5/02 310B
A61H31/00
A61B5/1455 ZDM
(21)【出願番号】P 2021576226
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2020069044
(87)【国際公開番号】W WO2021008925
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-12-21
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ワイショフ ラルフ ウィルヘルム クリスティアヌス ゲンマ ローサ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ラール ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】ムュールステフ イェンス
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-198656(JP,A)
【文献】特開2012-200384(JP,A)
【文献】国際公開第2017/211814(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/06-5/22
A61H 19/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心肺蘇生処置において酸素飽和度測定のアクティブ化を制御する装置であって、
圧迫信号を受信し、圧迫存在データ及び圧迫速度データを提供するための、圧迫検出モジュールと、
1つ以上のフォトプレチスモグラフィ信号を受信し、フォトプレチスモグラフィデータを提供するための、パルスオキシメトリモジュールと、
前記受信された圧迫存在データ、圧迫速度データ及びフォトプレチスモグラフィデータに基づいて、圧迫検出アルゴリズム、フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズム及び酸素飽和度測定アルゴリズムを実行するための、信号処理ユニットと、
を有し、
前記酸素飽和度測定アルゴリズムは、圧迫が存在する場合に非アクティブ化され、
前記酸素飽和度測定アルゴリズムは、自発的な心拍が検出され、所定の時間の間、圧迫が検出されない場合にアクティブ化される、
装置。
【請求項2】
前記酸素飽和度測定アルゴリズムは、前記装置のユーザ入力スイッチのモード選択により決定される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ユーザ入力スイッチは、タッチスクリーン型ユーザインタフェースにおけるソフトウェアベースのボタンである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記酸素飽和度測定アルゴリズムは、前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズムの出力及び前記圧迫検出アルゴリズムの出力から、自動的に決定される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズム及び前記酸素飽和度測定アルゴリズムは、いずれも前記装置がスイッチオンされるとアクティブ化され、前記信号処理ユニットは、前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズムの出力及び前記圧迫検出アルゴリズムの出力の両方を監視し、前記酸素飽和度測定アルゴリズムは次いで、前記圧迫検出アルゴリズムの出力が、圧迫が存在することを示すか、又は前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズムが、自発的な心拍の喪失を示す場合、非アクティブ化され、前記酸素飽和度測定アルゴリズムは次いで、前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズムが、自発的な心拍が検出されたことを示すか、又は前記圧迫検出アルゴリズムが、所定の時間の間、圧迫が検出されないことを示す場合、再アクティブ化される、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
心拍検出及び酸素飽和度測定のための前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィ信号は、同一のパルスオキシメトリモジュールにより収集される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記パルスオキシメトリモジュールは、前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィ信号が、心拍数検出のためのみに用いられているか、心拍数検出及び酸素飽和度測定のために用いられているか、に依存して、最適な構成を可能とするよう構成された、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
心拍数検出のためのみに用いられる前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィ信号の測定は、1つの波長における測定に基づき、心拍数検出及び酸素飽和度測定のために用いられるフォトプレチスモグラフィ信号の測定は、2つの波長における測定に基づく、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズムのパラメータは、胸部圧迫が手動で行われているか、自動化された装置により行われているかに依存して、自動的に調節される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズムは、手動の胸部圧迫と自動化された胸部圧迫とで異なる最適パラメータ設定を持ち、前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズムのパラメータ設定は、測定された圧迫信号及び
胸部圧迫が手動で行われているか、自動化された装置により行われているかを決定するための圧迫基準信号の解析に基づいて調節される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記圧迫検出モジュールは、パッドのインピーダンス、圧迫深さ、圧迫速度、圧迫加速度又は圧迫力に基づいて、前記圧迫基準信号を決定するよう構成された、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
心肺蘇生処置において酸素飽和度測定のアクティブ化を制御するシステムであって、
胸部圧迫信号を提供するよう構成された、圧迫センサと、
1つ以上のフォトプレチスモグラフィ信号を提供するよう構成された、パルスオキシメトリセンサと、
前記胸部圧迫信号及び前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィ信号を受信するよう構成された、請求項1に記載の装置と、
を有し、前記装置は、胸部圧迫が手動で行われているか自動的に行われているかを決定するよう構成され、前記圧迫検出アルゴリズム、前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズム及び前記酸素飽和度測定アルゴリズムのためのパラメータ選択が、それに応じて調節される、システム。
【請求項13】
心拍検出及び酸素飽和度測定のための前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィ信号は、同一のパルスオキシメトリモジュール及びパルスオキシメトリセンサにより収集される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記パルスオキシメトリモジュール及び前記パルスオキシメトリセンサの構成は、前記フォトプレチスモグラフィ信号が、心拍数検出のためのみに用いられているか、心拍数検出及び酸素飽和度測定のために用いられているか、に依存して、異なるフォトプレチスモグラフィ信号を測定するよう構成された、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
心肺蘇生処置において酸素飽和度測定のアクティブ化を制御する方法であって、
圧迫センサから圧迫存在データ及び圧迫速度データを取得するステップと、
パルスオキシメトリセンサからフォトプレチスモグラフィデータを取得するステップと、
圧迫検出アルゴリズムを用いて、前記圧迫存在データ及び前記圧迫速度データを処理し、胸部圧迫が存在するか否かを決定するステップと、
圧迫が存在する場合、フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズムのみを実行するステップと、
自発的な心拍が検出され、所定の時間の間、圧迫が検出されない場合、前記フォトプレチスモグラフィベースの心拍検出アルゴリズム及び酸素飽和度測定アルゴリズムの両方を実行するステップと、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心肺蘇生(CPR)処置中に心拍検出及びパルスオキシメトリ(SpO2)測定のアクティブ化及び構成を制御するための装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CPRは、心停止を起こした人に対する緊急処置である。CPR中は、人工的に血液を循環させるために胸骨圧迫を行い、酸素を血液に供給するために換気を行う。CPRの目標は、自然循環の帰還(ROSC)を達成することである。ROSCが達成されると、患者の心臓は拍動を再開し、生命を維持する自発循環を生成する。心拍再開後はCPRを中止できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CPR中にROSCを検出することは困難であり、時間がかかる。患者がROSCを達成したかどうかを決定するには、患者が自発的な循環心拍を持つか、即ち、心臓が拍動しており、出力を発生しているかどうかをチェックする必要がある。典型的には、ROSC検出は、胸部圧迫を中断することを必要とする動脈血心拍の手動触診を伴う。CPR手順は、一般に、手順中の改善されたモニタリング及びフィードバックから利益を得る。例えば、欧州特許出願公開EP2502560A1は、胸部圧迫の質を評価し改善するために、進行中の圧迫中に酸素飽和値を得るためのCPR監視装置を記載している。更に、自発心拍が戻り、胸骨圧迫が停止した後、臨床医は患者の酸素飽和度を知り、患者を更に監視し、患者の治療を調整することを欲する。
【0004】
それ故、心臓監視装置における心拍検出及びSpO2測定値のCPRワークフローの態様を改善し、患者に対して行われる胸部圧迫シーケンスの中断に関連する欠点を最小限に抑えることが継続的に必要とされている。
【0005】
開示される主題は、CPR手順全体に亘る心拍検出及びSpO2測定値の組み合わせの有用性の態様に関する。
【0006】
CPR中の心拍検出は、フォトプレチスモグラフィ(PPG)を使用することによって行うことができる。例えば、R. W. C. G. R. Wijshoffらによる「Detection of a spontaneous pulse in photoplethysmograms during automated cardiopulmonary resuscitation in a porcine model」(Resuscitation, vol. 84, no. 11, pp. 1625-32, Nov. 2013)(これはその全体が参照により本明細書に組み込まれたものとする)は、自動CPRを受けているブタにおいて同時に記録されたPPG及び動脈血圧信号を遡及的に分析することによって、CPR中の自発性心臓心拍の存在及び速度を検出するPPG信号の可能性の調査を開示している。
【0007】
CPR中のROSCの検出をサポートするためのPPG信号の使用は、例えば、国際特許出願公開WO2015121114A1「Method and apparatus for minimizing detrimental interruptions in the chest compression sequence during cardiopulmonary resuscitation」(その全体が参照により本明細書に組み込まれたものとする)、及び国際特許出願公開WO2017211814「System and methods for photoplethysmography-based pulse detection support during interruptions in chest compressions」(その全体が基準により本明細書に組み込まれたものとする)に記載されている。
【0008】
ROSCを検出するためのPPG信号に基づくアルゴリズムは、例えば、R.W.C.G.R. Wijshoffらによる「Photoplethysmography-Based Algorithm for Detection of Cardiogenic Output During Cardiopulmonary Resuscitation」(IEEE Trans. Biomed. Eng., vol. 62, no. 3, pp. 909-921, 2015)に見出すことができ、(参照によりその全体が本明細書に組み込まれたものとする)、無圧迫PPG信号を、検出された潅流リズム及び血液量の再分配に基づくインジケータと組み合わせることによって、ROSC検出をサポートするPPGベースのアルゴリズムを記載している。ROSCの検出をサポートするためにPPG信号内容を分析するために使用されるアルゴリズムの更なる例は、米国特許出願公開US2016/0157739又は国際特許出願公開WO2017/072055に見出すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、酸素飽和度測定は、胸部圧迫がない場合、及び自発的心拍が戻った場合にアクティブ化される。脈拍数(PR)とSpO2測定用のPPG信号は同じパルスオキシメトリハードウェアで収集でき、パルスオキシメトリハードウェアの最適な設定はPRのみの測定と、PR及びSpO2の測定とで異なるため、パルスオキシメトリハードウェアの設定はPRのみの測定とPR及びSpO2の測定とに自動的に調整され、各シナリオで最適なパフォーマンスを提供する。SpO2アルゴリズムは、手動モードでSpO2測定をオンにするか、自動モードでSpO2測定をオンにすることができる。更に、心拍検出アルゴリズムには、手動及び自動の胸部圧迫に最適な設定がある。心拍検出アルゴリズムの最適な設定は、例えば、インピーダンス信号又は別の圧迫基準信号の分析によって、モニタ-除細動器装置によって自動的に決定される。パルスオキシメトリハードウェアは、圧迫中にこのタイプの分析を実行することができ、それによって、胸部圧迫シーケンスへの中断を最小限に抑え、圧迫が停止し、自発的な心拍が戻ったときに、SpO2測定を用いて分析を拡張する。
【0010】
ここに記載される本発明の1つの利点は、通常は臨床的に行われる以外の特定のユーザ介入なしに、SpO2測定値の便利な自動起動、及びパルスオキシメトリハードウェア及び心拍検出アルゴリズムの便利な自動最適構成を提供することである。
【0011】
本発明の概要は、開示された主題の範囲又は意味を限定することを意図していない。
更に、発明の概要は、開示された主題の重要な特徴又は本質的な特徴を識別することを意図するものではなく、開示された主題の範囲を決定する際の補助として使用されることを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】SpO2アルゴリズムをアクティブ化する手動モードを含むシステムの第1の実施例の模式的な図である。
【
図3】第1の実施例によるシステムの動作を示すフロー図である。
【
図4】SpO2アルゴリズムをアクティブ化するための自動モードを持つ本発明によるシステムの第2の実施例の模式的な図である。
【
図5】第2の実施例によるシステムの動作を示すフロー図である。
【
図6】本発明の第3の実施例によるパルスオキシメトリハードウェア及びセンサの模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示される主題は、図面と併せて以下の詳細な説明を検討することにより、より良く理解されるであろう。詳細な説明及び図面は、ここに記載される本発明の例示的な実施例を提供する。当業者は、開示された例が、ここに記載された本発明の範囲から逸脱することなく、変更され、修正され、変更され得ることを理解するであろう。
【0014】
以下の詳細な説明を通して、CPR手順中の心拍検出及びSpO2測定値のアクティブ化及び構成を制御するための装置、システム、及び方法の様々な例が提供される。実施例における関連する特徴は、異なる実施例において、同一であっても、類似していても、又は異なるものであっても良い。各例では、関連する機能を冗長に説明しない。代わりに、関連する特徴名を使用すると、関連する特徴名を持つ特徴が、前に説明した例の関連する特徴と類似している可能性があることを読者に示す。特定の実施例に特有の特徴を、その特定の実施例で説明する。読者は、所与の特徴が、関連する特徴又は例の特定の描写と同一又は類似である必要はないことを理解すべきである。また、図面は、必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに、概して、本発明の主題の原理を示すことに重点が置かれている。
【0015】
本開示は、CPR手順のワークフローの態様、特に、手順の中断を最小限に抑えながら、CPR関連装置における心拍検出及びSpO2アルゴリズムをどのように便利にアクティブ化するかに焦点を当てる。そのため、本発明の主題は、SpO2測定が必要とされ、信頼できるときに、SpO2測定のアクティブ化を可能にし、即ち、SpO2測定アルゴリズムが、圧迫が存在するときに非アクティブ化され、SpO2測定アルゴリズムが、自発心拍が検出され、圧迫が所定の期間中に検出されないときにアクティブ化される。更に、本発明の主題は、PRのみ、又はPR及びSpO2のいずれを測定する必要があるかに応じて、パルスオキシメトリハードウェア設定の自動最適化、及び最適な性能のための心拍検出アルゴリズムの自動構成を可能にする。幾つかの実施例では、ユーザの介入は、装置モードを変更する等の臨床診療において標準的なものとすることができる。他の実施例では、ユーザの介入は全くない。
【0016】
図1は、第1の実施例を示しており、ここで、システム100及び装置10は、SpO2アルゴリズムをアクティブ化するための手動モードを含んでいる。装置10、例えばモニタ-除細動器又は高度自動体外除細動器(AED)は、圧迫検出モジュール12及びパルスオキシメトリモジュール14を含む。圧迫検出モジュール12は、圧迫センサ16から圧迫信号を受け取り、圧迫存在データ及び圧迫速度データを提供する。パルスオキシメトリモジュール14は、SpO2/PPGセンサ18から1つ又は複数のPPG信号を受け取り、PPGデータを提供する。CPR手順の間、装置10は、PPGベースの心拍検出アルゴリズムを実行し、SpO2測定のアクティブ化は、ユーザ入力スイッチ44のモード選択にリンクされる。
【0017】
装置10は、1つ又は複数の所定のアルゴリズムにアクセスするか、又はそれを含む信号処理ユニット20を含む。信号処理ユニット20は、装置10の適切な入力ポートを介してPPG信号及び圧迫信号を受信する。この実施例では、信号処理ユニット20は、心拍が存在するか否かを判定するために、検索された圧迫存在及びレートデータと共に心拍検出アルゴリズムを実行するようになっている。例えば、圧迫検出モジュール12は、信号入力データから「圧迫」、「圧迫なし」、又は「アーチファクト」の圧迫条件、ならびに圧迫が実行されているときの圧迫速度を決定するように構成される。また、信号処理ユニット20は、心拍検出及びSpO2測定を提供するために、PPGベースの心拍検出アルゴリズム及び受信したPPGデータに基づくSpO2測定アルゴリズムを実行するようになっている。ここで、PPGベースの心拍検出アルゴリズムは、例えば、PPG信号中の圧迫関連成分と自発的心拍関連成分とを区別するために、圧迫検出によって提供される情報を利用することができる。幾つかの実施例では、システム100は、ここで説明されるものに加えて、他の生理学的センサを含み、関連するアルゴリズムを実行することができる。
【0018】
ここで使用される用語「信号処理ユニット」は、医療装置、システム、及び方法の動作に関連する様々な装置を示す。処理ユニットは、本明細書で説明される様々な機能を実行するために様々な方法で実装され得る。例えば、信号処理ユニットは、幾つかの機能を実行するための専用ハードウェアと、ここで説明される様々な機能を実行するためにソフトウェアを使用してプログラムされ得る1つ又は複数のマイクロプロセッサなどのプロセッサとの組合せを含むことができる。「信号」、「入力」、及び「出力」は、処理結果の特定の検出を表す電気エネルギーインパルス又は光エネルギーインパルスであると理解され得る。様々な実装例において、処理ユニットは、1つ以上のコンピュータ記憶媒体、例えば、揮発性及び不揮発性コンピュータメモリと関連付けられても良く、プロセッサ又はコントローラ内に固定されていても良く、あるいは、移送可能であっても良い。
【0019】
信号処理ユニット20は、胸部圧迫信号を分析して、圧迫中の休止と進行中の圧迫とを区別するように構成される。圧迫信号が、所定の閾値未満の圧迫速度を示すと判定された場合、又は圧迫関連特性を含まないと判定された場合、信号処理ユニット20は、患者に実行されている胸部圧迫がない、即ち、圧迫に一時停止があると評価する。圧迫信号に基づいて圧迫の中断を識別することは、PPG信号における自発的な心臓成分及び自発的な脈拍数の存在又は不在の代替的な検出を得るために使用され得る。圧迫信号が、圧迫速度の指定された範囲内の圧迫速度を示すと判定された場合、信号処理ユニット20は、患者に実行されている胸部圧迫があると評価する。この場合、圧迫速度はまた、圧迫検出12によって心拍検出に提供されることができ、この情報は、圧迫成分と自発的心拍成分とを識別し、自発的心拍成分と自発的脈拍数とを識別するために、心拍検出によって考慮されることができる。信号処理ユニット20は、例えば国際特許出願公開WO2017/211814に記載されているように、CPR圧迫に関連するコンピュータプログラム命令及びアルゴリズム機能を実行し、SpO2信号及びPPG信号を処理する。
【0020】
図2は、システム100の例示的な実施を示す。CPRの主な目標は、患者の心臓が拍動を再開した状況であるROSCを達成することである。ROSCが達成されたかどうかを決定するために、心拍検出は、典型的には、CPR手順全体にわたって実行される。例えば、装置10は、
図1に示すようなパルスオキシメトリモジュール14を含むことができ、PPGベースの心拍検出及びSpO2測定に使用することができる。心拍検出は、例えば指カフに配置されたSpO2/PPGセンサ18から得られるPPG信号を分析することによって得ることができる。他の実施例では、PPG測定値は、額、鼻中隔、翼、耳たぶ、耳甲介、又は患者上の任意の他の適切な位置に適用されるPPGセンサを使用して取得され得る。
【0021】
患者の心臓が拍動を再開したら、臨床的には患者のSpO2レベルを知ることが望ましい。PPG信号は、規格SpO2センサ及びハードウェアを使用して、CPR中に測定することができる。例えば、SpO2は、規格SpO2センサで測定されるように、赤色及び赤外線PPG信号から決定することができる。斯くして、単一のSpO2プローブを心拍検出及びSpO2測定値の両方に使用することができる。しかしながら、心停止中のSpO2測定は実行不可能であり、胸骨圧迫中のSpO2測定は信頼できない。基本的な血行力学的特徴は、心停止で消失することがあり、その場合、サンプリングされた信号はノイズラインのように見えることがある。それ故、心拍が存在し、圧迫が存在しない場合にのみ、SpO2アルゴリズムが起動されるべきである。
【0022】
信号処理ユニット20の出力は、1つ又は複数のディスプレイ、ボタン、タッチスクリーン、キーボード、又は他のヒューマンマシンインタフェース手段を持つユーザインタフェース22上に表示することができる。図示の例では、第1のユーザインタフェース24及び第2のユーザインタフェース26は、患者モニタとして機能する。第1及び第2のユーザインタフェースは、単一のユニットとして形成された別個のユニット、例えば、ユーザ情報を取得し、ROSC情報を提供するように構成された単一のユーザインタフェースから構成されても良い。
【0023】
圧迫検出モジュール12は、CPR処置中の胸部圧迫のタイミングの信号を検出する。信号は、圧迫センサ16、例えば、変位センサ、速度センサ、加速度センサ、力センサ、若しくは圧力センサ、又は患者の胸部に取り付けられ、圧迫を受ける他の適切な圧迫信号センサから得ることができる。圧迫検出モジュール12は、パッドのインピーダンス、圧迫深度、圧迫速度、圧迫加速度又は圧迫力に基づくことができる。幾つかの実施例では、加速度計は、CPR圧迫周波数、位相、及び加速度、速度及び深さ、並びに圧迫休止に関する情報を提供することができる。PPG信号は、圧迫中の休止中に測定することができ、胸部圧迫中の休止は、胸部圧迫センサ16から装置10に胸部圧迫ケーブル32を介して送達される圧迫信号を用いて検出することができる。胸部圧迫は、例えば、臨床医28によって手動で、又は自動化された機械的装置30を用いて、のいずれかで実行され得る。
【0024】
システム100は、膨張式アームカフ内に配置され、ケーブル46を介して装置10に結合された血圧センサ34、及び患者の胸部に取り付けられ、両方ともケーブル42を介して装置10に結合されたECGセンサ38、40などの他の生理学的センサを含むことができる。該装置は、1組の除細動器パッドに接続することもできる。これにより、アルゴリズムは、ショックがいつ与えられるかを知ることができ、例えば経胸腔インピーダンス測定を用いて、胸部圧迫に関する情報を得ることができる。
【0025】
PPG信号は、PPGケーブル36を介して、指カフのSpO2/PPGセンサ18から装置10に送ることができ、自発心拍の存在について装置10の信号処理ユニットによって分析される。斯かる分析を支援するために、ECGセンサ38、40によって測定され、ECGケーブル42を介して装置10に提供されるECG信号が使用されても良い。更に、システム100はまた、進行中の圧迫中の心拍の存在についてPPG信号を測定し、分析することができる。血圧測定は、自動的に、又はユーザインタフェース24を介したユーザからの確認の後に、圧迫中の一時停止中に実行することができる。例えば、CPRで通常行われているように、2分間のサイクルで圧迫を行う場合は、2分間のサイクルの圧迫の直後に、短い休止時間で血圧測定を行うことができる。代替としては、該システムは、自発的な心拍が検出されたことを臨床医28に促し、第1のユーザインタフェース24のボタンを押した直後に血圧測定を開始することを示唆することができる。後者の場合、臨床医28は、プロトコルにおける次の休止を待たずに、患者に治療を個別化するための標準プロトコルから逸脱する選択肢を持つ。
【0026】
当該第1の実施例では、SpO2測定アルゴリズムのアクティブ化は、装置10のモード選択にリンクされる。ここで、装置10は、モニタモード、ペーサモード、手動細動除細動(defib)モード、及びAEDモードの4つの動作モードを持つ。基本的な仮定は、ペーサ/手動除細動モード/AEDモードがCPR中に使用され、ROSCが達成されると装置がモニタモードに切り換えられることである。
【0027】
装置10がペーサ/手動除細動/AEDモードにある場合、PPGベースのCPR心拍検出アルゴリズムのみが起動される。心拍検出アルゴリズムは、心拍の存在のみを示すか、又はPRを付加的に提供することができる。
【0028】
装置10がモニタモードの場合、心拍検出アルゴリズムとSpO2アルゴリズムは両方とも起動される。SpO2測定は、例えば、モニタモードでのみ作動させることができ、ペーサ/手動の除細動/AEDモードでは作動させないことができる。モニタモードでは、脈拍検出アルゴリズムは、ペーサ/手動除細動/AEDモードとは異なっても良く、これは、胸部圧迫がもはや実行されないと仮定しても良く、それ故、アルゴリズムは、胸部圧迫を扱うように特別に設計される必要がないからである。即ち、モニタモードでは、「標準的な動きロバストな」PR及びSpO2アルゴリズムを使用することができる。
【0029】
一実施例では、装置10は、装置10の選択されたモード設定を示すために、ノブのようなユーザ入力スイッチ44を持つ。ユーザインタフェース24は、ノブの位置を示すことができ、さもなければ、監視除細動器の動作モードを示すことができる。他の実施例では、ユーザ入力スイッチ44は、インタフェース22上などのタッチスクリーンユーザインタフェース上のソフトウェアベースのボタンとすることができる。
【0030】
パルスオキシメトリモジュール14は、SpO2/PPGセンサ18から患者の1つ以上のPPG信号を受信し、心拍が存在するかどうかを決定するためにPPG波形を生成する。心拍が検出されるが、関連する脈拍数が所定の閾値を下回る場合、信号処理ユニットは、心拍が存在せず、ROSCが存在しないと仮定する。PPGベースの心拍検出は、臨床診療において一般的に使用されるパルスオキシメトリハードウェア及びセンサを使用して実施することができる。心拍検出とSpO2測定用のPPG信号は、同じパルスオキシメトリモジュールとセンサで収集されても良い。しかしながら、パルスオキシメトリハードウェアの最適な設定は、PR及びSpO2測定よりも、PRのみの測定について異なる。パルスオキシメータモジュールは、スタンドアロン装置であっても良いし、マルチパラメータ患者監視システムのモジュール又は内蔵部分として組み込まれていても良い。典型的には、パルスオキシメータは、患者の酸素飽和度の数値情報、脈拍数の数値情報、各心拍で生成される可聴インジケータ又は「ビープ音」、及びフィルタリングされたPPG信号波形を提供する。
【0031】
図3は、第1の実施例に従って実行されるシステム100の動作方法を示す簡略化されたフロー図である。アルゴリズムの動作は、ユーザ入力スイッチ44のモード選択に依存する。ユーザ入力スイッチ44が「ペーサ/手動除細動/AEDモード」(302)を示す場合、PPGベースの心拍検出のみが実行される。CPR手順が開始された後、圧迫検出モジュール14は、圧迫センサ16から受信した信号に基づいて、胸部圧迫が存在するか否かを判定する(304)。胸部圧迫が存在する場合、PPGベースの心拍検出アルゴリズムは、胸部圧迫速度を考慮に入れたモードでアクティブ化される(306)。胸部圧迫が存在しない場合、PPGベースの心拍検出アルゴリズムは、胸部圧迫速度を考慮しないモードでアクティブ化される(308)。このプロセスは、必要に応じて繰り返すことができる。ユーザ入力スイッチ44が「モニタモード」を示す場合、ユーザが装置をこのモードに設定したときに胸部圧迫が行われていないと仮定される(310)。このモードでは、PPG ベースの心拍検出とSpO2 測定が同時に実行される(312)。システム100の動作は、他の生理学的センサの入力によって影響され得る。
【0032】
第2の実施例を
図4及び
図5を参照して説明する。この実施例では、心拍検出アルゴリズムの出力及び圧迫検出アルゴリズムの出力を使用することにより、装置の任意の動作モードでSpO2測定を自動的に起動及び停止させることができる。システム200は、装置210と、パルスオキシメトリモジュール214にPPG信号を供給するSpO2/PPGセンサ218と、圧迫検出モジュール212に圧迫信号を供給する圧迫センサ216と、を含む。装置210は、更に、心拍検出アルゴリズムが自発心拍の存在を検出し、圧迫検出アルゴリズムが圧迫の不存在を検出すると、SpO2測定が自動的に起動されることを可能にする状態決定ユニット222を含む。
【0033】
CPR手順が開始し、装置210がスイッチオンされると、信号処理ユニット220は、PPGベースのCPR心拍検出アルゴリズム及びSpO2アルゴリズムの両方を起動する。これは、装置210の選択されたモードとは無関係である。患者の胸部圧迫が開始されると、圧迫信号の分析から検出されるように、SpO2アルゴリズムが非アクティブ化される。胸部圧迫中、SpO2測定は、胸部圧迫アーチファクトのために信頼できなくなるが、心拍検出アルゴリズムはアクティブのままである。圧迫のない期間中に心拍検出アルゴリズムによって自発心拍の損失が検出された場合、SpO2を測定するために心臓心拍が必要とされるので、SpO2アルゴリズムは非アクティブ化される。例えば10秒のような所定の時間の間、圧迫が起こらず、心拍が検出された場合、SpO2アルゴリズムがアクティブ化される。このとき、SpO2を測定するために必要とされる心臓心拍が存在し、SpO2測定を損なう可能性のある圧迫アーチファクトは存在しない。
【0034】
更に、心拍が戻ったとき、患者の状態を更に監視し、治療を調整するために、患者の酸素飽和レベルを知ることが臨床的に望ましい場合がある。この時点で、心臓心拍を示し、圧迫を示さない赤色及び赤外線PPGデータのバッファが利用可能である。SpO2測定のアクティブ化時に、アルゴリズムは、SpO2値を直接提供するためにデータのバッファを分析する。これには、赤色発光ダイオードと赤外発光ダイオードの両方が、心拍検出のみのモードの間オンのままであることが必要である。
【0035】
従って、SpO2アルゴリズムのアクティブ化は、心拍検出アルゴリズムの出力と圧迫検出アルゴリズムの出力から自動的に決定される。PPGベースの心拍検出アルゴリズムは、心拍の存在を検出し、心臓がPRを報告するのに十分に安定して拍動している場合にPRを報告するように調整される。
【0036】
図5は、システム200の動作を示す。装置がオンになると、PPG ベースの心拍検出アルゴリズムとSpO2アルゴリズムの両方がアクティブになる(502)。胸部圧迫の存在が決定される(504)。胸部圧迫が存在する場合、SpO2アルゴリズムは非アクティブ化され、PPGベースの心拍検出アルゴリズムはアクティブのままである(506)。胸部圧迫が存在しない場合、PPGベースの心拍検出アルゴリズム及びSpO2アルゴリズムの両方がアクティブのままである(508)。心拍の存在が検証される(510)。心拍が検出されない場合、SpO2アルゴリズムは非アクティブ化される(506)。心拍が存在し、胸部圧迫が存在する場合、PPGベースの心拍検出アルゴリズムが起動され、SpO2アルゴリズムが停止される(506)。このプロセスは、ROSCが達成されるまで繰り返すことができる。
【0037】
第3の実施例によれば、システムは、パルスオキシメトリハードウェアの自動構成を可能にする。PR及びSpO2測定用のPPG信号は、同じパルスオキシメトリモジュール及びセンサによって収集されるため、PRのみ又はPR及びSpO2測定のどちらを行う必要があるかに応じて、パルスオキシメトリハードウェアの最適な構成を調整することができる。この実施例は、上述した第1又は第2の実施例、及び/又は以下に説明する第4の実施例と組み合わせることができる。
【0038】
図6は、心拍酸素濃度測定モジュール614が、PRのみを検出し、PR検出とSpO2測定の両方を提供するための異なる最適設定を持つ、第3の実施例によるシステム及び装置の簡略化された要素600を示す。PPG信号の測定が脈拍数検出のみに使用される場合、SpO2/PPGセンサ618は、1つの波長で測定を提供することができる。PPG信号の測定が、脈拍数検出及びSpO2測定のために使用される場合、SpO2/PPGセンサ618は、2つの波長で測定を提供することができる。例えば、1つの発光ダイオードを、PR検出専用モード中にオフに切り替えることができ、又は、PR検出専用モード中に光強度を増加させることができる。更に、飽和を防止するアルゴリズムは、PRのみのモードに対して異なり得る。
【0039】
PRのみを検出する場合、例えば赤外線のみを使用する等、1つの波長のみが関連する場合がある。ハードウェア設定を最適化して、赤外線PPG信号に最大の信号対雑音比(SNR)を持たせることができる。例えば、アナログ-ディジタル変換器(ADC)の赤外線信号レベルをこの設定で最大化することができる。他のPPG信号、例えば赤色は、一旦これが必要とされると、SpO2測定の追加の遅延を犠牲にして、この設定において完全に非アクティブ化されても良い。代替的に、他のPPG信号は、一旦これが必要とされると、利用可能な迅速なSpO2測定を持つように、この設定においてオンに維持されても良い。
【0040】
更に、この状況では、ADCの飽和を防止するアルゴリズムは、より積極的な設定を持つことができる。CPR中、動きアーチファクトは非常に大きくなり、プローブ-皮膚運動が発生する可能性が高くなり、これはADC上の信号レベルに重大な影響を及ぼす可能性があり、即ち、ADC入力の飽和が発生する可能性が高くなる。飽和の検出は、ローパスフィルタリングされた信号を使用して達成することができる。CPR中、このフィルタの帯域幅は、非CPR中よりも広く設定することができる。代替的に、ADCの最大入力に対するローパスフィルタリングされた信号の許容マージンは、飽和を防止するために、非CPRの間よりもCPRの間により大きく設定され得る。
【0041】
PRとSpO2の両方を測定する必要がある場合、2つのPPG信号、例えば赤色と赤外線が測定される。ハードウェア設定は、両方のPPG信号で良好なSNRを持ち、信号のバランスが取れている、つまりADC上で同程度の平均レベルを持つように最適化されている。
【0042】
第4の実施例によれば、本システムは、最適な心拍検出を提供するために、装置及び関連するハードウェアの自動構成を可能にする。心拍検出アルゴリズムの最適な構成は、胸部圧迫が手動で送達されているか、又は自動化された装置によって送達されているかに依存する。胸部圧迫信号の分析は、胸部圧迫が手動で送達されているか、又は自動化された装置によって送達されているかを示し、心拍検出アルゴリズムパラメータは、最適な性能を保証するように、それに応じて調節される。PPGベースの心拍検出アルゴリズムには、手動及び自動の胸骨圧迫照射用の最適なパラメータ設定がある。心拍検出アルゴリズムのパラメータ設定は、測定した圧迫信号と圧迫基準信号の解析に基づいて調節できる。代替として、心拍検出アルゴリズムのパラメータ設定は、システム100と自動胸部圧迫実行システムとの間、又はシステム200と自動胸部圧迫実行システムとの間の通信に基づいて調節することができる。システム100と自動胸部圧迫実行システムとの間、又はシステム200と自動胸部圧迫実行システムとの間の通信は、有線又は無線手段を介して行うことができる。
【0043】
心拍検出アルゴリズムの最適な設定は、例えば、インピーダンス信号又は別の圧迫基準信号の分析によって、モニタ-除細動器装置によって自動的に決定される。圧迫基準信号は、パッドのインピーダンス、圧迫深度、圧迫速度、圧迫加速度又は圧迫力のいずれであっても良い。圧迫信号の分析は、例えば、圧迫速度の標準偏差によって決定することができ、この標準偏差は、手動圧迫よりも自動圧迫の方が小さいと予想される。圧迫方法に依存するアルゴリズムパラメータは、例えば、圧迫速度の周りの事前定義された帯域幅と、脈拍数を見つけるために除外されるその高調波である。この帯域幅は、例えば、自動圧迫の場合は[-5BPM,+5BPM]、手動圧迫の場合は[-10BPM,+10BPM]とすることができる。この実施例では、最適な心拍検出は、ユーザの介入なしに自動的に構成することができる。この実施例は、上述の実施例のいずれかと組み合わせることができる。
【0044】
本発明の主題は、CPR手順におけるSpO2測定値のアクティブ化を制御する方法を更に企図する。圧迫センサから圧迫有無データと圧迫速度データを取得でき、パルスオキシメトリセンサからPPGデータを取得する。圧迫存在データ及び圧迫速度データは、胸部圧迫が存在するかどうかを判定するために、圧迫検出アルゴリズムで処理される。PPGベースの心拍検出アルゴリズムは、圧迫が存在する場合にのみ実行される。PPGベースの心拍検出アルゴリズム及びSpO2測定アルゴリズムの両方は、自発的な心拍が検出され、圧迫が所定の期間中に検出されないときに実行される。PPGベースの心拍検出のための異なるタイプのアルゴリズムは、圧迫の不在中及び圧迫の存在中に実行することができる。
【0045】
ここで定義され用いられる全ての定義は、辞書的定義、引用により援用された書類中の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0046】
明細書及び特許請求の範囲において用いられる不定冠詞「1つの(a及びan)」は、明瞭に反対のことが示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0047】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素、即ち、幾つかの場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」で列挙された複数の要素は、同じ様式で、即ち、そのように結合された要素の「1つ又は複数」で解釈されるべきである。他の要素は、特に識別されたそれらの要素に関連するか、又は関連しないかにかかわらず、「及び/又は」節によって具体的に識別された要素以外に任意に存在しても良い。
【0048】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される「又は」は、上記で定義される「及び/又は」と同一の意味を持つと理解されるべきである。例えば、「又は」又は「及び/又は」は、リスト中の項目を分離する場合、包含的であると解釈される。即ち、複数の要素又はリストの少なくとも1つを含むが、複数の要素のリスト、及び任意に追加の非上場項目を含むものと解釈される。「1つのみ」又は「ちょうど1つ」のように、又は請求の範囲で使用される場合「から成る(consisting of)」のように、反義的に明確に示される用語は、複数の要素又はリストの正確に1つの要素を包含することを意味する。一般的に、ここで用いられる「又は」なる語は、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」又は「のちょうど1つ」といった、排他的な語に先行される場合のみ、排他的な代替(即ち「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すものとして解釈され得る。
【0049】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される、1つ又は複数の要素のリストを参照する「少なくとも1つの」という語句は、要素のリスト内の任意の1つ又は複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に列挙された各要素及びすべての要素のうちの少なくとも1つを含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組合せを排除するものではない。この定義は、要素が、特に識別された要素に関連するか又は関連しないかにかかわらず、語句「少なくとも1つの」が言及する要素のリスト内で具体的に識別された要素以外に任意に存在することも可能にする。
【0050】
また、明瞭に反対のことが示されているのでなければ、1を超える工程又は行為を含む本明細書中において特許請求されたいずれの方法においても、該方法の工程又は行為の順番は、該方法の工程又は行為が引用される順番に必ずしも限定されないのも理解されるべきである。
【0051】
特許請求の範囲、ならびに前記明細書中において「有する(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「持つ(having)」、「含む(containing)」、「包含する(involving)」、「保持する(holding)」、「から構成される(composed of)」等のような全ての遷移語句は、制約するものではないこと、即ち、限定されるものではないが含めることを意味すると理解されるべきである。
【0052】
幾つかの本発明の実施例を記載し、ここに説明してきたが、当業者であれば、機能を実施し、及び/又は結果及び/又はここで記載された利点の1以上を得るために、種々の他の手段及び/又は構造を容易に考え付き、そのような変形及び/又は変更の各々は、ここで記載された本発明の実施例の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者であれば、ここで記載された全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成は、例示的であることを意図し、及び現実のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、具体的な適用、又は発明の教示が用いられる適用に依存するであろうことは容易に認識するであろう。当業者であれば、ルーチン的実験を超えないものを用いて、ここで記載された具体的な発明的実施例に対する多くの同等物を認識し、又はそれを確認することができよう。それ故、これまでの実施例は例のみによって提示され、添付の特許請求の範囲及びその同等物内で、発明的実施例は、具体的に記載され、及び特許請求されるものとは異なるように実施することができると理解されるべきである。本開示における本発明の実施例は、ここで記載された各個々の特徴、システム、製品、材料、キット及び/又は方法に向けられる。加えて、2以上の斯かる特徴、システム、製品、材料、キット、及び/又は方法のいずれの組合せも、もし斯かる特徴、システム、製品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しないならば、本開示の発明的範囲内に含まれる。
【0053】
出願人は、新規であり、自明でないと考えられる開示された発明の組み合わせ及び副組み合わせに向けられた請求項を提出する権利を留保する。特徴、機能、素子、及び/又は特性の他の組合せ及び副次的組合せで具体化された発明は、本出願又は関連出願におけるそれらの特許請求の範囲の修正又は新規な特許請求の範囲の提示を通して特許請求することができる。斯かる補正された請求項又は新しい請求項は、それらが同じ発明又は異なる発明に向けられているかどうか、及びそれらが元の請求項とは異なる、より広い、より狭い、又は等しい範囲であるかどうかにかかわらず、ここに記載された発明の主題内にあると考えられるべきである。