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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】車両用冷却装置のシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
B60K11/04 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019216103
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084568
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】三原 直人
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-160532(JP,A)
【文献】特開2002-286392(JP,A)
【文献】特開2006-96281(JP,A)
【文献】特表2010-515621(JP,A)
【文献】特開2008-132960(JP,A)
【文献】特開2013-119365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04,
B60R 19/12,19/16,19/48,21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置と、
前記冷却装置に取り付けられるシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記冷却装置の車幅方向の両側に取り付けられる一対の第1側部材と、前記車幅方向に延びる車体前方部材を車両前方から挟み込んだ状態で前記一対の第1側部材に取り付けられる一対の第2側部材と、車両上方から前記一対の第1側部材および前記一対の第2側部材の双方に取り付けられる頂部材と、を含み、
前記一対の 第2側部材の各々は、その上端から前記車両上方に向けて突出する支持ピンを有し、
前記頂部材は、前記一対の第1側部材に個別に取り付けられるとともに、前記一対の第2側部材にも個別に取り付けられる一対の支持体を有し、
前記一対の支持体の各々は、車両下方を向く下面と、前記下面の前縁につながり、かつ前記前縁から前記車両前方にかけて前記車両上方に向けて傾斜する傾斜面と、前記一対の支持体のいずれかを車両上下方向に貫通し、かつ車両前後方向に延びるとともに、前記支持ピンが係合するスリットと、前記一対の支持体のいずれかの前記車幅方向の端部から前記車幅方向の外方に向けて突出した支持部と、を有し、
前記スリットは、前記下面および前記傾斜面の双方を貫通しており、
前記支持部は、前記車両前方から前記一対の第1側部材のいずれかに係合する 、車両用冷却装置のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームよりも車両前方に位置する車両用冷却装置に関し、当該冷却装置に取り付けられるシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用冷却装置に取り付けられるシール構造の一例が開示されている。当該シール構造のシール部材は、当該冷却装置に含まれるコンデンサに取り付けられている。シール部材は、コンデンサの車幅方向の両側に取り付けられる一対の側面板と、車両上方から一対の側面板に取り付けられる上面板とを含む。一対の側面板の各々は、前側面板部材および後側面板部材を備える。前側面板部材は、車両前方からクロスビームを挟んだ状態で後側面板部材に取り付けられる。クロスビームは、車両衝突の際、車体に伝達される衝撃力を低減するとともに、当該冷却装置を保護する。当該シール構造によれば、一対の側面板がクロスビームよりも車両前方に向けて突出した構成となるため、コンデンサに接触する風の風量が増加する。したがって、当該冷却装置による冷却効率の向上を図ることができる。
【0003】
しかし、当該シール構造のシール部材においては、最初に上面板を当該冷却装置に取り付けた後、一対の側面板の各々は、後側面板部材、前側面板部材の順に上面板および当該冷却装置の双方に取り付ける必要がある。このように、シール部材の取り付け順序が一意的であると、車体形式によってはシール部材の取り付けに支障を来すことが懸念される。したがって、シール部材の取り付け順序の自由度を増加させる方策が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-160532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、冷却装置に対するシール部材の取り付け順序の自由度を増加させることが可能な車両用冷却装置のシール構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される車両用冷却装置のシール構造は、冷却装置と、前記冷却装置に取り付けられるシール部材と、を備え、前記シール部材は、車幅方向において少なくとも前記冷却装置の片側に取り付けられる第1側部材と、前記車幅方向に延びる車体前方部材を車両前方から挟み込んだ状態で前記第1側部材に取り付けられる第2側部材と、車両上方から前記第1側部材および前記第2側部材の双方に取り付けられる頂部材と、を含み、前記第2側部材は、当該第2側部材の上端から前記車両上方に向けて突出する支持ピンを有し、前記頂部材は、前記第1側部材および前記第2側部材の双方に取り付けられる支持体を有し、前記支持体は、車両下方を向く下面と、前記下面の前縁につながり、かつ当該前縁から前記車両前方にかけて前記車両上方に向けて傾斜する傾斜面と、前記支持体を車両上下方向に貫通し、かつ車両前後方向に延びるとともに、前記支持ピンが係合するスリットと、を有し、前記スリットは、前記下面および前記傾斜面の双方を貫通していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる車両用冷却装置のシール構造によれば、当該冷却装置に対するシール部材の取り付け順序の自由度を増加させることが可能となる。
【0008】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態にかかる車両用冷却装置のシール構造の斜視図である。
図2図1に示すシール構造の一部をなす頂部材の部分拡大平面図である。
図3図2に示す頂部材の正面図である。
図4図2に示す頂部材の右側面図である。
図5図1に示すシール構造の一部をなす第2側部材の部分拡大右側面図である。
図6図5に示す第2側部材の平面図である。
図7図1に示すシール構造の部分拡大斜視図であり、斜め上方から視た図である。
図8図1に示すシール構造の作用効果を説明する部分拡大図右側面図である。
図9図1に示すシール構造の作用効果を説明する部分拡大図右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1図9に基づき、本発明の一実施形態にかかる車両用冷却装置のシール構造(以下「シール構造A」という。)について説明する。シール構造Aは、冷却装置10およびシール部材20を備える。なお、図8および図9は、理解の便宜上、後述するシール部材20の一対の第1側部材21の図示を省略している。
【0012】
ここで、説明の便宜上、これらの図において示されるuprを車両上方向、dwnを車両下方向、frを車両前方向、rrを車両後方向、rhを車両右方向、lhを車両左方向とする。なお、以下の説明で、特記なく上下を用いる場合は、車両上下方向の上下を指すものとし、特記なく左右を用いる場合は、車両左右方向(車幅方向)の左右を指すものとする。特記なく前後を用いる場合は、車両前後方向の前後を指す。
【0013】
冷却装置10は、車両のエンジンルーム(図示略)よりも車両前方に位置する。冷却装置10は、当該エンジンルームに収容されたエンジン、または電動車両用モータなどの発熱部品を冷却する。さらに、冷却装置10は、空調装置内の空気を冷やすために用いられる冷媒を凝縮させる。図1に示すように、冷却装置10は、ラジエータ11およびコンデンサ12を含む。これら以外に、冷却装置10は、インタークーラ(図示略)を含む。ラジエータ11は、エンジンの冷却に用いられる冷却水を冷やす。ラジエータ11は、ラジエータサポート(図示略)を介して車体に支持されている。コンデンサ12は、空調装置のエバポレータ(図示略)に送られる冷媒を凝縮させる。シール構造Aにおいては、コンデンサ12は、ラジエータ11よりも車両前方に位置し、かつラジエータ11に支持されている。これ以外に、ラジエータ11およびコンデンサ12の配置形態は、車幅方向に並んだものでもよい。ラジエータ11およびコンデンサ12には、車両のフロントバンパグリル(図示略)を通過する風が接触する。当該風がラジエータ11およびコンデンサ12に接触すると、ラジエータ11においては、その内部を循環する冷却水が冷却されるとともに、コンデンサ12においては、空調装置において気化した冷媒が凝縮される。
【0014】
シール部材20は、図1に示すように、冷却装置10に取り付けられる。シール構造Aにおいては、シール部材20は、コンデンサ12に取り付けられる。シール部材20は、エンジンルームからの熱気がコンデンサ12に流れることを抑制するとともに、コンデンサ12に接触する風の風量を増加させる。シール構造Aにおいては、シール部材20は、一対の第1側部材21、一対の第2側部材22、および頂部材30を含む。これらはいずれも、合成樹脂を含む材料からなる。
【0015】
図1に示すように、一対の第1側部材21は、車幅方向においてコンデンサ12の両側に取り付けられる。一対の第2側部材22は、車体前方部材40を車両前方から挟み込んだ状態で一対の第1側部材21に対して個別に取り付けられる。このため、一対の第2側部材22は、一対の第1側部材21よりも車両前方に位置する。ここで、車体前方部材40は、車幅方向に延びている。シール構造Aにおいては、車体前方部材40は、バンパビームである。車両衝突の際、車体前方部材40は、車体に伝達される衝撃力を低減するともに、冷却装置10を保護する。車体前方部材40の車幅方向の両端は、車体の一部を構成する一対のサイドメンバ(図示略)に接合されている。頂部材30は、車両上方から一対の第1側部材21、および一対の第2側部材22の双方に取り付けられている。
【0016】
図1に示すように、頂部材30は、一対の支持体31を有する。一対の支持体31は、頂部材30の車幅方向の両側に設けられている。一対の支持体31の各々は、一対の第1側部材21のいずれかと、当該第1側部材21に取り付けられる一対の第2側部材22のいずれかとの双方に取り付けられる。図2図4に示すように、一対の支持体31の各々は、下面311、傾斜面312、スリット313、第1支持ピン321および第2支持ピン322を有する。
【0017】
図3および図4に示すように、下面311は、車両下方を向く。傾斜面312は、下面311の前縁につながり、かつ当該前縁から車両前方にかけて車両上方に向けて傾斜している。これにより、図4に示す下面311を基準とした傾斜面312の高さhは、当該前縁から車両前方に向けて徐々に大となっている。傾斜面312は、平面および曲面のどちらでもよい。
【0018】
図3図5に示すように、スリット313は、一対の支持体31のいずれかを車両上下方向に貫通し、かつ車両前後方向に延びている。スリット313は、一対の支持体31のいずれかの下面311および傾斜面312の双方を貫通している。スリット313は、基部313A、第1拡大部313Bおよび第2拡大部313Cを有する。基部313Aは、スリット313の本体をなしている。第1拡大部313Bは、基部313Aの前端に設けられている。第2拡大部313Cは、基部313Aの後端に設けられている。第1拡大部313Bおよび第2拡大部313Cの各々の最大幅は、基部313Aの幅よりも大である。第1拡大部313Bの形状は、第2拡大部313Cの形状と同一である。なお、第1拡大部313Bおよび第2拡大部313Cの各々の形状は、後述する一対の第2側部材22の各々の支持ピン222が挿通可能であれば、様々な形状とすることができる。
【0019】
図3に示すように、第1支持ピン321は、一対の支持体31のいずれかの本体の車幅方向の端部に設けられている。第1支持ピン321は、当該端部から車幅方向の外方向けて突出している。第2支持ピン322は、一対の支持体31のいずれかの本体の後端に設けられている。第2支持ピン322は、当該後端から車両後方に向けて突出している。第1支持ピン321および第2支持ピン322は、頂部材30を一対の第1側部材21のいずれかに取り付けるために利用される。
【0020】
図5および図6に示すように、一対の第2側部材22の各々は、頂板221および支持ピン222を有する。頂板221は、一対の第2側部材22の各々の上端に設けられている。支持ピン222は、一対の第2側部材22の各々の頂板221から車両上方に向けて突出している。頂部材30の一対の支持体31の各々のスリット313において、第1拡大部313Bおよび第2拡大部313Cに挿通可能であれば、支持ピン222の形状は、様々な形状とすることができる。
【0021】
図7に示すように、シール構造Aにおいて、頂部材30が一対の第2側部材22に取り付けられた際、一対の第2側部材22の各々の支持ピン222は、頂部材30の一対の支持体31のいずれかのスリット313の基部313Aに係合している。
【0022】
次に、シール構造Aの作用効果について説明する。
【0023】
シール構造Aは、冷却装置10と、冷却装置10に取り付けられるシール部材20とを備える。シール部材20は、第1側部材21、第2側部材22および頂部材30を含む。第2側部材22は、当該第2側部材22の上端から車両上方に向けて突出する支持ピン222を有する。頂部材30は、第1側部材21および第2側部材22の双方に取り付けられる支持体31を有する。支持体31は、下面311、傾斜面312およびスリット313を有する。傾斜面312は、下面311の前縁につながり、かつ当該前縁から車両前方にかけて車両上方に向けて傾斜している。スリット313は、支持体31を車両上下方向に貫通し、かつ車両前後方向に延びるとともに、支持ピン222が係合する。スリット313は、下面311および傾斜面312の双方を貫通している。
【0024】
図8は、最初に第1側部材21をコンデンサ12(ともに図示略)に取り付け、次に頂部材30を第1側部材21に取り付けた後、最後に第2側部材22を第1側部材21および頂部材30の双方に取り付ける場合を示している。この場合においては、第2側部材22の支持ピン222を図7に示す支持体31(頂部材30)のスリット313の第1拡大部313Bに車両下方から挿通させた後、頂部材30に対して第2側部材22を車両後方にスライドさせる。この際、第2側部材22は、支持体31の傾斜面312に沿って動く。支持ピン222をスリット313の基部313Aに係合させつつ、第2側部材22を第1側部材21に係合させることにより、第2側部材22が第1側部材21および頂部材30の双方に取り付けられる。支持ピン222をスリット313の基部313Aに係合させた後、第2側部材22を第1側部材21に係合させる過程においては、第2側部材22が支持体31に支持された状態となるとともに、第2側部材22の下端と、第1側部材21との間には隙間が生じる。これにより、作業員が第2側部材22を保持しなくても、第2側部材22の下端にハーネスなどを取り付けることが可能となる。
【0025】
図9は、最初に第1側部材21をコンデンサ12(ともに図示略)に取り付け、次に第2側部材22を第1側部材21に取り付けた後、最後に頂部材30を第1側部材21および第2側部材22の双方に取り付ける場合を示している。この場合においては、第2側部材22の支持ピン222を図7に示す支持体31(頂部材30)のスリット313の第2拡大部313Cに車両下方から挿通させた後、第2側部材22に対して頂部材30を車両後方にスライドさせる。支持ピン222をスリット313の基部313Aに係合させつつ、頂部材30を第1側部材21に係合(図2に示す第1支持ピン321および第2支持ピン322を第1側部材21に係合)させることにより、頂部材30が第1側部材21および第2側部材22の双方に取り付けられる。このように、シール構造Aにおいては、第2側部材22および頂部材30の取り付け順序は問わない構成となる。したがって、シール構造Aによれば、冷却装置10(シール構造Aにおいてはコンデンサ12)に対するシール部材20の取り付け順序の自由度を増加させることが可能となる。
【0026】
本発明は、先述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、冷却装置10に含まれるインタークーラにシール部材20を取り付ける場合にも適用可能である。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0027】
A:シール構造
10:冷却装置
11:ラジエータ
12:コンデンサ
20:シール部材
21:第1側部材
22:第2側部材
221:頂板
222:支持ピン
30:頂部材
31:支持体
311:下面
312:傾斜面
313:スリット
313A:基部
313B:第1拡大部
313C:第2拡大部
321:第1支持ピン
322:第2支持ピン
40:車体前方部材(バンパビーム)
h:高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9