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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
F04B49/10 331K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017241063
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2019108826
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 春明
(72)【発明者】
【氏名】大久保 真一
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-052660(JP,A)
【文献】特開2009-174416(JP,A)
【文献】特開2010-007537(JP,A)
【文献】特開2006-288053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続されて使用され、同電源に接続された他の電気機器の駆動に応じた電源電圧の変動に応じて運転を変化させる電気機器であって、
前記電源から供給される電気で駆動される駆動手段と、
前記電源の電源電圧を検出する電圧検出手段と、
前記駆動手段を駆動することで流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記駆動手段の非駆動時に前記電圧検出手段で検出した待機電圧から前記駆動手段の駆動時に前記電圧検出手段で検出した駆動電圧を差し引いた値を前記駆動手段の駆動時に前記電流検出手段で検出した駆動電流で除算して求めた電源抵抗と、前記電源を遮断する遮断器が非作動となる許容電流との乗算に基づいて前記遮断器が非作動となる許容降下電圧を求め、前記待機電圧から前記電源に接続される自機及び前記他の電気機器の少なくとも一つの駆動時における駆動中電圧を差し引いた降下電圧が前記許容降下電圧以上であると、前記駆動手段を停止又は前記駆動手段の出力を低下させる制御手段と
を備えた電気機器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記降下電圧が前記許容降下電圧のn倍以上である閾値以上であると、前記駆動手段を一時停止させ、前記降下電圧が前記許容降下電圧以上前記閾値未満であると、前記駆動手段の出力を一時低下させる
請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記閾値に対する前記降下電圧の大小に応じて前記駆動手段の運転を変化させると共に、報知を行う
請求項2に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源から電気が供給されて駆動される電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場では、商用電源、発電機等の電源に接続される複数の電気機器が使用される。このような建築現場で使用される電気機器として、エアコンプレッサがある。エアコンプレッサは、くぎ打ち機等の圧縮空気で作動する工具への圧縮空気の供給手段として作業現場で広く使用されている。
【0003】
さて、複数の電気機器が同時に使用されると、消費電力が増加し、過電流が流れることで電源の遮断器が作動する可能性がある。遮断器が作動すると、作業を中断し、遮断器を復帰させる操作が必要であり、作業効率が低下する。
【0004】
エアコンプレッサの場合、作業者はくぎ打ち機等を持ってエアコンプレッサから離れた場所で作業している場合が多く、遮断器が作動してエアコンプレッサが停止していることにすぐには気が付かない場合がある。このような場合、貯蔵した圧縮空気が不足し、打ち込み不良等が発生する場合があり、作業効率が一層低下する。
【0005】
そこで、電源から供給される電圧を検出し、検出電圧が予め設定された基準電圧に対して低下すると、消費電力を抑制できるようにした電気機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-288053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
建築現場では、エアコンプレッサ等の電気機器が、コードリール等の延長コードを使用して電源に接続されることが多い。延長コードを使用すると、電圧降下が生じ、かつ、電圧降下量は延長コードの長さにより変動する。このため、検出電圧と予め設定された基準電圧を比較して運転を切り替える方法では、延長コードの使用による電圧降下を、複数の電気機器の使用による電圧降下と誤検知する可能性がある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、電源電圧に基づいて、遮断器が作動する可能性の有無を判断するための閾値を、電気機器の駆動による電圧変動以外の要因を排除して設定できるようにした電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、電源に接続されて使用され、同電源に接続された他の電気機器の駆動に応じた電源電圧の変動に応じて運転を変化させる電気機器であって、前記電源から供給される電気で駆動される駆動手段と、前記電源の電源電圧を検出する電圧検出手段と、前記駆動手段を駆動することで流れる電流を検出する電流検出手段と、前記駆動手段の非駆動時に前記電圧検出手段で検出した待機電圧から前記駆動手段の駆動時に前記電圧検出手段で検出した駆動電圧を差し引いた値を前記駆動手段の駆動時に前記電流検出手段で検出した駆動電流で除算して求めた電源抵抗と、前記電源を遮断する遮断器が非作動となる許容電流との乗算に基づいて前記遮断器が非作動となる許容降下電圧を求め、前記待機電圧から前記電源に接続される自機及び前記他の電気機器の少なくとも一つの駆動時における駆動中電圧を差し引いた降下電圧が前記許容降下電圧以上であると、前記駆動手段を停止又は前記駆動手段の出力を低下させる制御手段とを備えた電気機器である。
【0010】
本発明では、自機及び他の電気機器が駆動されることで電源電圧が変動すると、電源電圧の変動量と閾値を比較して、電源電圧の変動量が閾値を超えないように、駆動手段が制御される。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、遮断器が作動しない閾値を、駆動手段を駆動したことで流れる電流から取得することで、実測値に基づき閾値を設定することが可能である。これにより、電源自体及び電源と電気機器との間の配線の抵抗等の外部要因による電圧変動を排除して、電源電圧から遮断器が作動し得る過電流が流れるか否かを判断できる。
【0012】
従って、電源電圧から遮断器が作動し得る過電流が流れるか否かを判断でき、遮断器の作動を抑制しつつ、かつ、電気機器の出力を必要以上に低下させることなく運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態のエアコンプレッサの制御系の一例を示す機能ブロック図である。
図2】本実施の形態のエアコンプレッサの一例を示す一部破断斜視図である。
図3】操作部の一例を示す説明図である。
図4】本実施の形態のエアコンプレッサの使用形態の一例を示すブロック図である。
図5】エアコンプレッサ非駆動時の電源の待機電圧の取得処理の一例を示すフローチャートである。
図6】駆動電圧の取得処理の一例を示すフローチャートである。
図7】駆動電流の取得処理の一例を示すフローチャートである。
図8】許容電圧の取得処理の一例を示すフローチャートである。
図9】電源電圧の変動に応じてエアコンプレッサを制御する動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の電気機器の一例として、エアコンプレッサの実施の形態について説明する。
【0015】
<本実施の形態のエアコンプレッサの構成例>
図1は、本実施の形態のエアコンプレッサの制御系の一例を示す機能ブロック図、図2は、本実施の形態のエアコンプレッサの一例を示す一部破断斜視図である。
【0016】
本実施の形態のエアコンプレッサ1Aは、図2に示すように、気体の一例である空気を圧縮する圧縮部2と、圧縮部2を駆動するモータ3と、圧縮部2で圧縮される空気を貯蔵する少なくとも1つのタンク4を備える。エアコンプレッサ1Aは、圧縮部2、モータ3及びタンク4を備えて本体部5が構成される。
【0017】
圧縮部2は圧縮手段の一例で、本例では図示しないピストンの往復運動によりシリンダ容積を変化させることで空気を圧縮するレシプロ圧縮機と称される構成である。圧縮部2は、図示しない吸気口とタンク4とを接続し、吸気口から空気を吸い込み、吸い込んだ空気をタンク4に圧送して、タンク4内に圧縮された空気を貯蔵する。
【0018】
モータ3は駆動手段の一例で、電気の供給を受けて駆動される。圧縮部2は、モータ3の駆動及び停止、回転数の制御により、タンク4内の圧力を制御する。
【0019】
タンク4は貯蔵手段の一例で、空気取出口40が減圧弁40aを介して接続される。空気取出口40は、圧縮空気で作動する工具に接続されたホースが着脱可能に接続される。エアコンプレッサ1Aは、空気取出口40にホースが接続されていない状態では、図示しないバルブが閉じている。これに対し、空気取出口40にホースが接続されることで、図示しないバルブが開き、タンク4に貯蔵された圧縮空気が工具に供給される。
【0020】
エアコンプレッサ1Aの本体部5は、金属等で構成される支持体50に本例では2本のタンク4が取り付けられ、支持体50を介してタンク4の上側に圧縮部2及びモータ3が取り付けられる。
【0021】
エアコンプレッサ1Aは、圧縮部2及びモータ3を覆う形状で、本体部5の上部を覆うカバー51を備える。カバー51は例えば樹脂で構成され、タンク4に設けられた受け部41にネジ42により取り付けられる。
【0022】
エアコンプレッサ1Aは、電源のON、OFF、動作モードの選択等の各種操作、タンク4内の圧力値の表示等、各種情報の出力が行われる操作部6を備える。操作部6は操作手段の一例で、カバー51の上面に設けられる。
【0023】
図3は、操作部の一例を示す説明図である。操作部6は、電源のON、OFFを選択する電源ボタン60aと、動作モードとして運転モードを選択する運転モード選択ボタン60bを備える。
【0024】
また、操作部6は、電源のON、OFFの状態を示す電源ランプ61aと、選択された運転モードを示す運転モード選択ランプ61bと、タンク4内の圧力値等を表示する表示部61dを備える。
【0025】
図4は、本実施の形態のエアコンプレッサの使用形態の一例を示すブロック図であり、次に、本実施の形態のエアコンプレッサ1Aの使用形態について説明する。エアコンプレッサ1Aは、図4に示すように、商用電源、発電機等の電源10のコンセント10aに、電源プラグ11a及びコード11bを介して接続され、電気の供給を受ける。電源10には、他の電気機器12が電源プラグ11a及びコード11bを介して接続される。電源10は、遮断器10bが設けられ、予め設定されている許容電流を超える過電流が流れる場合に、遮断器10bで電気の供給を遮断する。
【0026】
次に、本実施の形態のエアコンプレッサ1Aの制御機能について説明する。エアコンプレッサ1Aは、自機が接続されている電源10の電圧の変動に応じて、自機の消費電力を抑制する運転を実行する制御部7と、消費電力を抑制した運転に従い、モータ3を駆動する駆動制御部75を備える。制御部7は制御手段の一例で、マイクロプロセッサ等で構成される。駆動制御部75は駆動制御手段の一例で、マイクロプロセッサ、メモリ等で構成される。
【0027】
エアコンプレッサ1Aは、電圧検出部70と電流検出部71を備える。電圧検出部70は電圧検出手段の一例で、電源10の電圧を検出する。電圧検出部70は、電源10から供給される電圧の波形を監視し、異常の有無を報知することが可能である。電流検出部71は電流検出手段の一例で、駆動制御部75でモータ3を駆動することで流れる電流を検出する。
【0028】
エアコンプレッサ1Aは、電圧検出部70で検出した電源10の電圧の値、電流検出部71で検出した電流の値等を記憶する記憶部72を備える。記憶部72は記憶手段の一例で、ROM、RAM等の半導体メモリで構成される。
【0029】
エアコンプレッサ1Aは、音を出力する報知部8を備える。報知部8は報知手段の一例で、例えばビープ音を出力するブザーで構成される。
【0030】
<本実施の形態のエアコンプレッサの動作例>
図5は、待機電圧の取得処理の一例を示すフローチャート、図6は、駆動電圧の取得処理の一例を示すフローチャート、図7は、駆動電流の取得処理の一例を示すフローチャート、図8は、許容電圧の取得処理の一例を示すフローチャートであり、次に、本実施の形態のエアコンプレッサ1Aの動作例について、各図を参照して説明する。
【0031】
図4に示すように、エアコンプレッサ1Aが、電源10のコンセント10aに、電源プラグ11a及びコード11bを介して接続され、図3に示す操作部6の電源ボタン60aの操作で電源がONにされると、制御部7は、電源10の電圧を監視し、電源10の待機電圧を取得する処理を行う。待機電圧とは、エアコンプレッサ1Aのモータ3が非駆動、かつ、同一の電源10に他の電気機器12が接続されている場合、他の電気機器12が非駆動の状態における電源10の電圧である。このため、電源10の待機電圧を取得する処理は、同一の電源10に接続された他の電気機器12が非駆動の状態で行う。
【0032】
すなわち、制御部7は、図5のステップSA1で、エアコンプレッサ1Aのモータ3が非駆動の状態であるか判断する。モータ3が非駆動の状態であると、制御部7は、ステップSA2で、電圧検出部70により電源10の電圧値を待機電圧Vrefとして取得し、記憶部72に記憶する。そして、制御部7は、ステップSA3で所定の時間、例えば2(s)経過したか判断し、モータ3が非駆動の状態であると、所定の時間毎に待機電圧Vrefを取得する。
【0033】
また、図3に示す操作部6の運転モード選択ボタン60bの操作で運転モードが選択されると、制御部7は、設定された運転モードに従いモータ3を制御して、タンク4に圧縮空気を貯蔵すると共に、駆動中の電源10の電圧を監視する。
【0034】
すなわち、制御部7は、図6のステップSB1で、設定された運転モードに従い駆動制御部75により所定の出力でモータ3を駆動し、ステップSB2で、電圧検出部70により電源10の電圧値を駆動電圧Vdとして取得し、記憶部72に記憶する。駆動電圧Vdは、エアコンプレッサ1Aのモータ3のみを駆動した場合の電源10の電圧であり、同一の電源10に他の電気機器12が接続されている場合、他の電気機器12は非駆動の状態での電源電圧である。そして、制御部7は、ステップSB3で所定の時間、例えば2(s)経過したか判断し、モータ3が駆動されていると、所定の時間毎に駆動電圧Vdを取得する。
【0035】
更に、制御部7は、設定された運転モードに従いモータ3を制御して、タンク4に圧縮空気を貯蔵すると共に、駆動中に自機で流れる電流を監視する。
【0036】
すなわち、制御部7は、図7のステップSC1で、設定された運転モードに従い駆動制御部75により所定の出力でモータ3を駆動し、ステップSC2で、電流検出部71により電流値をモータ3の駆動電流Adとして取得し、記憶部72に記憶する。そして、制御部7は、ステップSC3で所定の時間、例えば40(ms)経過したか判断し、所定の時間毎に駆動電流Adを取得する。
【0037】
制御部7は、待機電圧Vref、駆動電圧Vd及び駆動電流Adを取得すると、エアコンプレッサ1Aが駆動されている状態における電源抵抗を取得する。また、電源抵抗を取得することで、遮断器10bが作動しない閾値として許容電圧を取得する。
【0038】
すなわち、制御部7は、設定された運転モードに従い駆動制御部75により所定の出力でモータ3の駆動を開始後、図8のステップSD1で所定の時間、例えば10(s)経過したか判断し、ステップSD2で、所定の時間経過後に、エアコンプレッサ1Aが接続される電源10において、エアコンプレッサ1Aが作動することで電流が流れる際の抵抗である電源抵抗Rを、以下の(1)式から求めて、記憶部72に記憶する。
【0039】
電源抵抗R=(待機電圧Vref-駆動電圧Vd)/駆動電流Ad・・・(1)
【0040】
電源10は、遮断器10bに流れる電流が予め定められた許容電流Acを超えると、遮断器10bが作動する。(1)式から、エアコンプレッサ1Aが接続される電源10における電源抵抗Rが求められることで、電源10に許容電流Acが流れる際に降下する電圧が求められ、電源10に許容電流Acが流れる際の電圧の降下分が、遮断器10bが作動しない許容電圧となる。すなわち、許容電圧ΔVが、遮断器10bが作動しない電圧の閾値となる。
【0041】
そこで、制御部7は、ステップSD3で、エアコンプレッサ1Aが接続される電源10における電源抵抗Rと、遮断器10bが作動しない許容電流Acから、遮断器10bが作動しない許容電圧ΔVを以下の(2)式から求めて、記憶部72に記憶する。
【0042】
許容電圧ΔV=電源抵抗R×許容電流Ac・・・(2)
【0043】
以上の処理により、制御部7は、待機電圧Vref、駆動電圧Vd及び駆動電流Adを取得して記憶部72に記憶し、かつ、所定のタイミングで待機電圧Vref、駆動電圧Vd及び駆動電流Adを更新する。待機電圧Vref、駆動電圧Vd及び駆動電流Adは、それぞれ所定時間毎に取得した複数の値の平均を算出して、これを使用しても良い。また、最大値を使用しても良い。更に、制御部7は、所定のタイミングで電源抵抗R及び許容電圧ΔVを求めて記憶部72に記憶する。
【0044】
ここで、遮断器10bの許容電流Acは、電源10毎に異なることから、エアコンプレッサ1Aでは、操作部6で許容電流Acが設定され、記憶部72に記憶される。これにより、許容電流Acに応じて許容電圧ΔVの設定が可能である。
【0045】
図9は、電源電圧の変動に応じてエアコンプレッサを制御する動作の一例を示すフローチャートであり、以下に、同一の電源10に接続されたエアコンプレッサ1A及び他の電気機器12が駆動される際に、電源電圧の変動に応じてエアコンプレッサ1Aを制御して、遮断器10bの作動を抑制する動作について説明する。
【0046】
制御部7は、図9のステップSE1で、設定された運転モードに従い駆動制御部75により所定の出力でモータ3を駆動し、ステップSE2で、所定の時間毎、例えば120(ms)毎に電圧検出部70により電源10の電圧値を駆動中電圧Vdrとして取得し、記憶部72に記憶する。駆動中電圧Vdrは、同一の電源10にエアコンプレッサ1Aと他の電気機器12が接続されている場合に、エアコンプレッサ1Aのモータ3を駆動した場合のみならず、他の電気機器12も駆動されている場合の電源電圧である。
【0047】
エアコンプレッサ1Aが駆動されると、電源電圧が低下する。また、エアコンプレッサ1Aが接続された電源10に他の電気機器12が接続されている場合、他の電気機器12が駆動されると、更に電源電圧が降下する。制御部7は、ステップSE3で、エアコンプレッサ1A、更に他の電気機器12が駆動されることによる降下電圧ΔVrを、以下の(3)式により算出する。
【0048】
降下電圧ΔVr=待機電圧Vref-駆動中電圧Vdr・・・(3)
【0049】
制御部7は、降下電圧ΔVrと許容電圧ΔVを比較し、許容電圧ΔVに対する降下電圧ΔVrの第1の閾値として、ステップSE4で降下電圧ΔVrが許容電圧ΔVのn倍以上、例えば2倍程度(第1の閾値以上)であると、遮断器10bが作動する過電流が流れる可能性があると判断し、ステップSE5で、モータ3の駆動をm1秒間停止する。モータ3の停止時間m1は、例えば数秒程度である。
【0050】
制御部7は、降下電圧ΔVrと許容電圧ΔVを比較し、許容電圧ΔVに対する降下電圧ΔVrの第2の閾値として、ステップSE6で降下電圧ΔVrが許容電圧ΔV以上許容電圧ΔVのn倍未満(第2の閾値以上第1の閾値未満)であると、遮断器10bが作動する過電流が流れる可能性があると判断し、ステップSE7で、モータ3の出力をm2秒間低下させる。モータ3の出力を低下させる時間m2は、例えば数秒程度である。遮断器10bが作動する過電流が流れる可能性に応じてモータ3の駆動を停止する時間m1と、モータ3の出力を低下させる時間m2は、異なる値であっても良いし、同じ値であっても負い。なお、モータ3を再駆動するための許容電圧ΔVに対する降下電圧ΔVrの閾値は、複数あっても良く、段階的に出力が変えられるようにしても良い。これにより、他の電気機器12の使用を継続しつつ、消費電力を抑制しながらエアコンプレッサ1Aを使用することができる。
【0051】
また、降下電圧ΔVrと許容電圧ΔVを比較し、遮断器10bが作動する過電流が流れる可能性があると判断すると、操作部6の表示部61dで表示による報知、報知部8で音による報知を行う。これにより、エアコンプレッサ1Aの使用者、他の電気機器12の使用者に、遮断器10bが作動する可能性があることを報知し、機器の使用の抑制を促すことができる。
【0052】
ここで、モータ3の駆動を停止後、所定の時間毎に降下電圧ΔVrを取得し、降下電圧ΔVrが許容電圧ΔV未満(第2の閾値未満)となると、モータ3を再駆動しても良い。また、モータ3の駆動を停止後、所定の時間毎に降下電圧ΔVrを取得し、降下電圧ΔVrが許容電圧ΔV以上許容電圧ΔVのn倍未満(第2の閾値以上第1の閾値未満)であると、モータ3の出力を低下させて再駆動しても良い。更に、モータ3の出力を低下後、所定の時間毎に降下電圧ΔVrを取得し、降下電圧ΔVrが許容電圧ΔV未満(第2の閾値未満)であると、モータ3の出力を、設定された運転モードに従う所定の出力に戻しても良い。
【0053】
また、モータ3の駆動開始時には、負荷が大きく瞬間的に大きな電流が流れることから、モータ3の駆動開始時に流れる電流を開始時電流Asとして記憶しておき、開始時電流Asに基づきΔ許容電圧Vを算出する。制御部7は、上述したモータ3の再駆動時に、降下電圧ΔVrと、開始時電流Asに基づく許容電圧ΔVを比較して、降下電圧ΔVrが、遮断器10bが作動する過電流が流れないような値となると、モータ3を再駆動する。
【0054】
更に、エアコンプレッサ1Aの場合、モータ3の負荷が圧縮部2の温度、タンク4内の圧力、モータ3の駆動を停止している時間に応じたタンク4内の圧力低下等によって変化するので、負荷の変動に基づき許容電圧ΔVを算出しても良い。これにより、再駆動時に過電流が流れ、遮断器10bが作動することが抑制される。
【0055】
<本実施の形態のエアコンプレッサの作用効果>
電源10に接続されたエアコンプレッサ1A及び他の電気機器12が非駆動の状態で、電源10に接続されたエアコンプレッサ1Aにより電源電圧を待機電圧Vrefとして取得することで、延長コードの使用等で電圧降下が生じている場合、これに応じた待機電圧Vrefが取得される。
【0056】
エアコンプレッサ1Aにおいて、モータ3の駆動時の電源電圧を駆動電圧Vdとして取得すると共に、自機に流れる電流を駆動電流Adとして取得することで、待機電圧Vref、駆動電圧Vd及び駆動電流Adから、モータ3が駆動された場合における電源抵抗Rを取得可能である。
【0057】
モータ3の駆動による電圧降下分に基づき電源抵抗Rを取得することで、電源電圧の変動に応じて、電流がどの程度流れているか推定可能となる。例えば、電源抵抗Rが1(Ω)であると、モータ3の駆動による電圧降下分が20(V)であった場合、20(A)の電流が流れていることになる。同じ電源10に接続された他の電気機器12が駆動された場合も、電圧降下分から電流が推定可能である。
【0058】
従って、例えば、遮断器10bが作動しない許容電流Acが20(A)である場合、電源抵抗Rが1(Ω)であると、許容電圧ΔVは20(V)となる。この例では、エアコンプレッサ1Aは、自機及び他の電気機器12が使用されることで、電源10の電圧が低下した場合に、実測した降下電圧ΔVrが20(V)以上になると、遮断器10bが作動する可能性があると判断し、モータ3の制御を切り替える。
【0059】
このように、遮断器10bが作動しない許容電圧ΔVを設定するための電源抵抗Rを、モータ3を駆動したことで流れる駆動電流Adから取得することで、実測値に基づき許容電圧ΔVを設定することが可能である。これにより、電源10自体及び電源10とエアコンプレッサ1Aとの間の配線の抵抗等の外部要因による電圧変動を排除して、許容電圧ΔVを設定することができ、この許容電圧ΔVと、電源電圧の降下分である降下電圧ΔVrから、遮断器10bが作動し得る過電流が流れるか否かを判断できる。
【0060】
従って、瞬間的な停電や、整流の乱れ等、電源10自体の要因による電圧変動、及び、電源10とエアコンプレッサ1Aとの間の配線の抵抗の大小等の要因による電圧変動による誤検知が排除され、電源電圧から遮断器10bが作動し得る過電流が流れるか否かを判断できる。これにより、同一の電源10に他の電気機器12が接続され、エアコンプレッサ1Aを含む複数の電気機器が同時に使用される場合、遮断器10bが作動し得る過電流が流れる前に、エアコンプレッサ1Aのモータ3を一時的に停止させる、あるいは、モータ3の出力を一時的に低下させることができる。よって、エアコンプレッサ1Aでの消費電力のみならず、他の電気機器12での消費電力の大小に応じて、遮断器10bが作動しないように、エアコンプレッサ1Aのモータ3を制御することができる。また、エアコンプレッサ1Aの能力を必要以上に低下させないモータ3の運転が可能である。従って、遮断器10bの作動を抑制しつつ、かつ、エアコンプレッサ1Aの能力を必要以上に低下させることなく運転が可能である。
【0061】
また、同一の電源10に接続された他の電気機器12に流れる電流を取得することなく、電源電圧から遮断器10bが作動し得る過電流が流れるか否かを判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、圧縮空気で作動する工具に圧縮空気を供給するエアコンプレッサに適用される。
【符号の説明】
【0063】
1A・・・エアコンプレッサ、2・・・圧縮部、3・・・モータ(駆動手段)、4・・・タンク、6・・・操作部、7・・・制御部(制御手段)、70・・・電圧検出部(電圧検出手段)、71・・・電流検出部(電流検出手段)、10・・・電源、10b・・・遮断器、12・・・電気機器
図1
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図9