(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 7/18 20060101AFI20221012BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20221012BHJP
【FI】
B60L7/18 ZHV
B60L3/00 N
(21)【出願番号】P 2017245082
(22)【出願日】2017-12-21
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】弓削 勝忠
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143685(JP,A)
【文献】特開2017-103980(JP,A)
【文献】特開2011-147208(JP,A)
【文献】特開2017-028905(JP,A)
【文献】特開2008-049931(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101823438(CN,A)
【文献】国際公開第2014/064730(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0006039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 7/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定される車両の回生ブレーキ強度を、位置を異ならせることで表示可能な表示部と、
前記表示部に重なって操縦者の操作を受け付ける操作部と、
前記操作に応じて前記回生ブレーキ強度の設定値を変更させる処理部と、
増減操作により前記回生ブレーキ強度の段階的設定値を選択可能な増減操作手段と、を有し、
前記表示部には、前記増減操作手段による操作を行う場合の増加及び減少の段階的な位置が
段階ごとに表示されて
複数あり、
前記処理部は、前記増減操作手段の増減操作に応じて、前記回生ブレーキ強度を前記段階的な位置に応じた前記段階的設定値へ変更可能であり、
段階ごとに表示された複数の前記段階的な位置
のうち、
所望の前記段階的な位置を前記操作部における操作によって移動することで、
前記段階的設定値の各デフォルト値のうち、移動された前記段階的な位置に応じた前記段階的設定値
のデフォルト値
を、前記段階的な位置の移動前後の移動幅に応じて変更可能であ
り、前記移動幅は、操縦者の操作により任意に決定可能である
車両回生レベルの制御装置。
【請求項2】
前記段階的な位置は、複数の区切りとして表示され、
前記区切りのうちの一つ又は二つを移動させた際に、
当該区切りと前記表示部における回生ブレーキ強度の限界値に対応する一方の端部との間にある別の区切りを、当該区切りの移動に応じて移動させる
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記段階的な位置は、複数の区切りとして表示され、
前記区切りの位置を、前記操作部におけるスライド操作によって移動可能であり、
前記スライド操作により移動させる前記区切りの選択を、
車両の停止時においては前記操作部への長押しによって行い、
車両の走行時においてはその時点で使用しているレベルをそのまま選択する
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
設定される車両の回生ブレーキ強度を、位置を異ならせることで表示可能な表示部と、
前記表示部に重なって操縦者の操作を受け付ける操作部と、
前記操作に応じて前記回生ブレーキ強度の設定値を変更させる処理部と、
増減操作により前記回生ブレーキ強度の段階的設定値を選択可能な増減操作手段と、を有し、
前記表示部には、前記増減操作手段による操作を行う場合の増加及び減少の段階的な位置が表示されてあり、
前記処理部は、前記増減操作手段の増減操作に応じて、前記回生ブレーキ強度を前記段階的な位置に応じた前記段階的設定値へ変更可能であり、
前記段階的な位置を、前記操作部における操作によって移動することで、
移動された前記段階的な位置に応じた前記段階的設定値をデフォルト値から変更可能であり、
前記段階的な位置は、複数の区切りとして表示され、
前記区切りのうちの一つ又は二つを移動させた際に、
当該区切りと前記表示部における回生ブレーキ強度の限界値に対応する一方の端部との間にある別の区切りを、当該区切りの移動に応じて移動させる
車両回生レベルの制御装置。
【請求項5】
前記区切りの位置を、前記操作部におけるスライド操作によって移動可能であり、
前記スライド操作により移動させる前記区切りの選択を、
車両の停止時においては前記操作部への長押しによって行い、
車両の走行時においてはその時点で使用しているレベルをそのまま選択する
請求項4に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の回生ブレーキ強度を調整する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ではマニュアルトランスミッションの時代から、速度に対して比較的低いギア比のギアを選択することで、エンジンの回転抵抗によるエンジンブレーキを掛けた運転手法が知られている。フットブレーキの使いすぎによってブレーキオイル中に気泡ができるベーパーロック現象を防ぐためにエンジンブレーキを使うべきであることが教本などで知られている。また、上級者の中には運転する際の操作感を味わうため、きめ細かくギアを操作して好み感覚でのエンジンブレーキを効かせることも行われている。
【0003】
従来は段階的なギアの入れ替えによってこのエンジンブレーキの強さを調整していたが、よりきめ細かくエンジンブレーキの強さを調整することができるように、エンジンブレーキに関わるギアの強さを無段階に調整可能にすることが提案されている(例えば特許文献1[0200]、特許文献2[0029]、特許文献3[0032])。
【0004】
オートマチックトランスミッションの車両では、基本的にはギアは自動制御されるが、燃費の向上や加速減速の制御向上のため、適宜運転者が好みに合わせてギアを調整できるようにするパドルシフトが搭載されたものもある。パドルシフトは主にハンドルの左右に搭載される形で、増加(+)又は減少(-)のボタンとして備えられており、このボタンの増減操作によってギア比を強制的に変更する仕組みを備えている。
【0005】
一方、ハイブリッド車や電気自動車においては、駆動系のモータに車軸の回転を伝えて発電機として作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーとして回収して充電池を充電することが車両運用上重要となっている。この際に運動エネルギーが失われるため、電気ブレーキとして作用する。これを回生ブレーキと呼ぶ。回生ブレーキはハイブリッド車や電気自動車においてエンジンブレーキに類似した機構として利用できるため、回生ブレーキの強さを細かく調整できることを希望する運転者もいる。
【0006】
一部のハイブリッド車や電気自動車では、そのような回生ブレーキの強さをパドルシフトの増減操作によって段階的に調整することができるものが存在している(例えば特許文献4[0017])。この回生レベルの設定例を
図6に示す。B0~B5の六段階に回生レベルが設定されており、減速フィーリングとして感じられる回生ブレーキの強さはB5が最大であり、B0まで段階的に減少する。操作するにあたってはパドルシフトの「+」「-」ボタンの入力によって一段階ごとに回生ブレーキの強さが増加又は減少する。基本的にこの減少幅は固定となっている。
【0007】
一方で、近年の自動車においてはカーナビを初めとする多機能化が進み、外付けのタッチパネルを有していたり、車両の基本的な設定や操作までも可能なタッチパネルを実装するケースが増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-168283号公報
【文献】特許第3978918号公報
【文献】特開2000-320652号公報
【文献】特開2017-28905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、運転者によっては好みに合わせてより細かく回生ブレーキの強度を調整したい場合もある。一方で、パドルシフトによるデフォルトの設定値が好みではなく、より自分の好みに合わせた設定に変更したくなる場合もある。また、パドルシフトによる操作を最小限にしつつ、パドルシフトによる個々の段階を好みに合わせて調整したくなる場合もある。
【0010】
そこでこの発明は、回生ブレーキ強度について操作性を向上させ、デフォルト値に拘束されない自由度の高い調整を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記の課題を解決するために、
設定される車両の回生ブレーキ強度を、位置を異ならせることで表示可能な表示部と、
前記表示部に重なってタッチ又はスライドによる操作を受け付ける操作部と、
前記操作に応じて前記回生ブレーキ強度の現在値、設定値、又はその両方を変更させる処理部と、
を有する車両回生レベルの制御装置を採用した。
ここで表示部及びそれに重なる操作部とは、タッチパネルを採用することができる。
【0012】
ここで、前記回生ブレーキ強度の段階的な増減操作を受け付けるパドルシフトを有し、
前記表示部には、複数箇所に区切りが表示されてあり、
前記処理部は、前記パドルシフトの増減操作に応じて、前記区切りの位置に応じた前記回生ブレーキ強度へ設定を変更可能である構成を採用することができる。
【0013】
また、前記区切りの位置を、前記操作部におけるスライド操作によって移動可能であり、
前記パドルシフトにより選択される回生ブレーキ強度の段階的設定値が、前記表示部における移動された後の区切りの位置に対応した回生ブレーキ強度である構成を採用することができる。
【0014】
さらに、前記区切りのうちの一つ又は二つを移動させた際に、
当該区切りと前記表示部における回生ブレーキ強度の限界値に対応する一方の端部との間にある別の区切りを、当該区切りの移動に応じて移動させる構成を採用することができる。
【0015】
さらにまた、前記スライド操作により移動させる前記区切りの選択を、
車両の停止時においては前記操作部への長押しによって行い、
車両の走行時においてはその時点で使用しているレベルをそのまま選択する構成を採用することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、表示部に重なって操作できるタッチパネルによってタッチ又はスライドで回生ブレーキ強度を操作できるようにし、従来よりもユーザの好みに合わせた細かい調整を可能とし、それによるユーザのフィーリングにより適した運転体験を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明にかかる走行制御装置の実施形態例を備えたハイブリッド車の概念図
【
図2】(a)この発明にかかる走行制御装置のタッチパネル部分の無段階式での表示例図、(b)この発明にかかる走行制御装置のタッチパネル部分の多段階式での表示例図
【
図3】(a)タッチパネル部分に可変する区切りを設けた実施形態の表示例図、(b)(a)の区切りの一つをスライドさせた状態の表示例図
【
図4】(a)タッチパネル部分に可変する区切りを設けた実施形態の表示例図、(b)(a)の区切りのうちの二つをピンチアウトさせた実施形態の表示例図、(c)ピンチアウトに伴って他の区切りも動かす実施形態の表示例図
【
図5】(a)タッチパネル部分に可変する区切りを設けた実施形態の表示例図、(b)(a)の区切りのうちの二つをピンチアウトさせた実施形態の表示例図、(c)ピンチアウトに伴って他の区切りも動かす実施形態の表示例図
【
図6】回生レベルと減速フィーリングの例を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明は、電気駆動可能な車両に搭載される装置であって、回生ブレーキ強度の状態を表示するとともに、変更に関する指示を受け付ける制御装置11である。
【0019】
車両10としては、例えばハイブリッド車、電気自動車が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。車両10は、駆動用のモータ21を回生ブレーキとして用いた際に発電される電力を充電可能な充電池23を有すると好ましい。前記車両の構成例図を
図1に示す。
【0020】
この発明にかかる制御装置11は、設定される車両10の回生ブレーキ強度を位置を異ならせることで表示可能な表示部14を有する。表示部14としては液晶、有機エレクトロルミネッセンス、その他の、平面に映像を映し出すことができるものであれば特に限定されない。
【0021】
ここで、表示部14に表示される回生ブレーキ強度は、その時点における回生ブレーキ強度の現在値だけでなく、後述するパドルシフト13の操作によって速やかに設定可能な回生ブレーキ強度の設定値も表示されていると好ましい。
【0022】
上記の表示部14が、位置を異ならせることで回生ブレーキ強度を表示可能であるとは、なんらかのグラフ表示が可能であることを意味する。グラフの形状は帯グラフ、円グラフ、扇形グラフなど特に限定されないが、最小値と最大値との間に操縦者が指でスライド出来る程度の幅があるものが望ましい。表示部14は、その全体が回生ブレーキ強度のグラフ表示であってもよいし、表示部14の一部だけが回生ブレーキ強度のグラフ表示であってもよい。
【0023】
この発明にかかる制御装置11は、表示部14に重なってタッチ又はスライドによる操作を受け付ける操作部15を有する。具体的構成としては、表示部14と操作部15とが一体化したタッチパネル16であると好ましい。タッチパネル16の検知方式は特に限定されないが、操縦者が運転中にペンで操作することは難しいため、指で操作できることが望ましい。例としてはマトリクススイッチ方式、抵抗膜方式、静電容量方式などが挙げられる。特に静電容量方式を採用すると、タッチだけでなくスライド操作にも対応させやすいため好ましい。
【0024】
タッチパネル16は車両10に予め備え付けされていてよい。一方、車両10の制御系に有線接続又は無線接続されたスマートフォン、タブレットなどのタッチパネルを、インストールしたアプリによって制御することでこの発明で用いるタッチパネル16として用いてもよい。
【0025】
この発明にかかる制御装置11は、操作部15への操作を入力として受け付け、この発明における処理を実行させる処理部17を有する。この処理としては少なくとも、回生ブレーキ強度の現在地、設定値、又はその両方を変更させる処理が含まれる。また、その変更に合わせて表示部14の表示も変更させる処理が含まれていることが望ましい。処理部17は一般的な演算装置を用いることができる。この処理部17は車両10における他の機能を実行させる演算装置が役割を兼務していてもよい。
【0026】
この発明にかかる制御装置11により表示され、操作を受け付けるタッチパネル16の第一の実施形態を
図2に示す。
図2(a)は無段階式、
図2(b)は多段階式で回生ブレーキ強度を操作、変更する例である。
【0027】
この発明の
図2(a)に示す実施形態では、縦の帯状部分が回生ブレーキ強度を示しており、下端が回生ブレーキ強度の最低値、上端が回生ブレーキ強度の最高値に対応する。操縦者はその時点で帯状部分に触れて、希望する回生ブレーキ強度に対応した位置まで指をスライドさせる。これに対応して処理部17は、指が触れた位置に回生ブレーキ強度のレベルを示す区切りL1を表示し、スライド操作に応じてこの区切りL1が上下移動するように表示させる。また、区切りL1より下側を上側とは別の色で表示させてもよい。処理部17は、スライドされた指が離されたことを検知した信号を受信したら、その離された位置に対応する回生ブレーキ強度となるようにモータ21に通じるギア22などの回生ブレーキ強度を可変させる機構へ指示する。なお、仮にギア22としているが、モータ21に指示するトルク値を変更するなどその他の回生ブレーキ強度を無段階的に調整できるものであれば構成は特に制限されない。
【0028】
この発明の
図2(b)に示す実施形態では、同じく縦の帯状部分が回生ブレーキ強度を示しており、下端が回生ブレーキ強度の最低値(B0)、上端が回生ブレーキ強度の最高値(B5)に対応する。ただし、回生ブレーキ強度は段階的に表示可能となっており、それぞれの段階ごとに薄いライン(区切り)L2が表示されている。
図2(b)の状態では回生ブレーキ強度はB1に設定されており、B1部分には濃いライン(区切り)L3が表示されている。B1より下側は別の色で表示されていてもよい。現在値を示す濃いラインL3より上側をタップされたことを検知した処理部17は、一段階ずつ回生ブレーキ強度が上がるようにギア22などの回生ブレーキ強度を可変させる機構へ指示する。それと並行して、表示部14で濃く表示されるラインを一段階上に上げる。表示上はそれまで濃いラインL3であったラインより一つ上の薄いラインL2が濃いラインL3へ変わり、それまで濃いラインL3であったラインが薄いラインL2へと変わる。一方、現在値を示す濃いラインL3より下側をタップされたことを検知した処理部17は、一段階ずつ回生ブレーキ強度が下がるようにギア22などの回生ブレーキ強度を可変させる機構へ指示する。それと並行して、表示部14で濃く表示されるラインを一段階下に下げる。表示上はそれまで濃いラインL3であったラインより一つ下の薄いラインL2が濃いラインL3へ変わり、それまで濃いラインL3であったラインが薄いラインL2へと変わる。なお、最小値又は最大値である場合は濃いラインL3が表示されず、下端又は上端が濃いラインL3に対応する部分として処理される。
【0029】
タッチパネル16の操作は上記の基本操作に限定されない。例えば、タッチパネルをダブルタップやトリプルタップしたら、回生ブレーキ強度を段階的にではなく最小値又は最大値へ変更させるように設定してもよい。このとき、タップする位置がどちら側の端部に寄っているかによって、最小値にするか最大値にするかを判断するとよい。また、無段階式と多段階式のどちらであっても、長押ししたタップの位置に回生ブレーキ強度を変更させてもよい。さらに、フリック操作により、指の弾き具合に応じて回生ブレーキ強度を弾いた向きに合わせて増加又は減少させてもよい。
【0030】
この発明にかかる
図2(a)にかかる無段階式の実施形態と
図2(b)にかかる多段階式の実施形態とは、タッチパネル16の長押しや、別途設けられたボタンの押下、二本指によるタップなどによって相互に切り替え可能であってもよい。
【0031】
この発明にかかる制御装置11は、段階的な増減操作を受け付けるパドルシフト13と接続され、パドルシフト13による増加(+)の指示と減少(-)の指示を受け付け可能であってもよい。このパドルシフト13による操作を行う場合、増加及び減少の段階的な位置を示すように、表示部14に複数箇所に区切りが表示されてあると好ましい。この区切りとは例えば
図2(b)に薄いラインL2又は濃いラインL3で示されるような形態が挙げられる。この濃いラインL3の区切りは、選択された際に設定される回生ブレーキ強度に対応する位置に表示される。パドルシフト13による増減の指示を受け付けた処理部17は、選択する区切りを増減に合わせて変更し、選択された区切りの位置に応じた回生ブレーキ強度となるように指示する。現時点における回生ブレーキ強度のレベルや強さはメーターパネルなどに表示して確認しやすいようにするとより好ましい。
【0032】
この発明にかかる制御装置11は、パドルシフト13による増減操作によって選択される回生ブレーキ強度に対応する区切りの位置を、操作部15におけるスライド操作によって移動可能であるようにしてもよい。この移動可能な区切りL4の位置とは、表示部14における表示位置であるとともに、最小値から最大値までの間の値に対応した回生ブレーキ強度の設定値にも対応する。すなわち、スライド操作によって区切りL4の位置が移動した場合、パドルシフト13によって選択される回生ブレーキ強度の段階的設定値は、表示部14において移動された後の位置に対応した回生ブレーキ強度である。
【0033】
このような実施形態を
図3に示す。
図3(a)は左右方向に回生ブレーキ強度の増減を割り当てた帯状部分を有する。左端は回生ブレーキ強度が最小のB0に対応し、右端は回生ブレーキ強度が最大のB5に対応し、その間にB1,B2,B3,B4に対応する4つの区切りL4が設けられている。デフォルトではこれらの間の4つの区切りL4は、B0からB5までの間を五等分する位置に設定されている。それぞれの区切りL4に対応してパドルシフト13によって選択される回生ブレーキ強度も、その最小と最大との間を五等分するように設定してある。ただし、区切りの位置と回生ブレーキ強度とは必ずしも1次関数に示される関係である必要はなく、操縦者の体感により適合するように調整された数式で関係づけられていてもよい。
【0034】
その4つの区切りをスライド操作する状況の例を
図3(b)に示す。B2の区切りが選択され、B0側へと移動される。これにより、パドルシフト13によりB2が選択された際の回生ブレーキ強度は、デフォルト値よりも小さいものとなる。すなわち、パドルシフト13により増減操作したときの回生ブレーキ強度は、B1とB2との間ではより小さな調整ができるようになり、B2からB3に移るときはより大きな変更となる。
【0035】
この移動させる区切りを選択する手法は、特に限定されない。指で区切りに触れたことを検知したらそのままスライドさせるようにしてもよい。これは速やかな操作が可能となる。一方で、誤って触れただけで変更されてしまうような誤操作を防ぐために、車両の停止時においては操作部15への長押しがされたときをもって選択されたと判定してもよい。車両の停止時においては、どの区切りを変更するかはある程度時間に余裕を持って選択できるからである。また、長押しの代わりにダブルタップやトリプルタップを選択の条件としてもよい。
【0036】
一方で、車両の走行時においてはその時点で使用している、すなわちパドルシフト13により選択されているレベルの区切りを自動的に選択してスライド対象としてもよい。走行時において操縦者に長押しを要求するのは運転安全性の点から好ましくない場合がある。また、走行時に調整したいのはまさに今運転している状況での回生ブレーキ強度である可能性が高く、他のレベルを調整しようとするケースは稀であると考えられるからである。
【0037】
また別の形態として、スライド操作は区切りを1つのみ動かすだけでなく、区切りを2つ同時に動かしてもよい。タッチパネル16がマルチタッチ対応の場合、所謂ピンチイン・ピンチアウトとなるスライド操作に従って、区切りを2つ同時に動かしてもよい。
【0038】
前記ピンチアウトにより区切りを操作する例を
図4に示す。デフォルトである
図4(a)の表示状態で、B2の区切りL4とB3の区切りL4との間を2本の指で触れ、ピンチアウトと呼ばれる指間を広げる操作を受け付けた処理部17は、B2とB3との間の幅を広げるようにB2とB3に対応する区切りを2つ同時に移動させ、それぞれに対応する回生ブレーキ強度の設定値を変更させる。このとき、直接に移動されるB2とB3以外の区切りB1,B4は
図4(b)に示すように固定されていてもよい。また別の形態として
図4(c)に示すように、B2とB3を動かしたとき、それぞれの区切りと寄る側の端部との間にある別の区切りB1及びB4も、B2及びB3が端部に向かって寄る動きに連動してそれぞれの端部側に寄るように動かしてもよい。この連動して動く幅は、移動させる区切り(B2,B3)と端部との間を別の区切り(B1,B4)によって等分するように区切ってもよいし、他の係数や数式によって移動幅を調整させてもよい。
【0039】
なお、ここでは区切りB2と区切りB3との間に2本の指を置いてピンチアウトした例を示したが、操作形態としてはこれに限られない。例えば一つの区切りB3を挟んで2本の指を置いてからピンチアウトさせる操作を受け付けたら、B3を固定しつつ、B2とB4とを端部側に寄せるように動かしてもよい。
【0040】
前記ピンチインにより区切りを操作する例を
図5に示す。デフォルトである
図5(a)の表示状態で、B1とB2との間に1本の指を置き、B3とB4との間にもう1本の指を置いて、指間を縮める操作を受け付けた処理部17は、指間に挟まれたB2とB3との間の幅を縮めるように、B2とB3に対応する区切りL4,L4を2つ同時に移動させ、それぞれに対応する回生ブレーキ強度の設定値を変更させる。このとき、直接に移動されるB2とB3以外の区切りB1,B4は
図5(b)に示すように固定されていてもよい。また別の形態として
図5(c)に示すように、B2とB3を動かしたとき、それぞれの区切りと両端部との間にある別の区切りB1及びB4も、B2及びB3が端側から離れる動きに連動してピンチイン中心に寄るように動かしてもよい。この連動して動く幅は、移動させる区切り(B2,B3)と端部との間を別の区切り(B1,B4)によって等分するように区切ってもよいし、他の係数や数式によって移動幅を調整させてもよい。
【0041】
なお、ここでは2本の指間に2つの区切りを挟んでピンチインする例を示したが、操作形態としてはこれに限られない。例えば、一つの区切りL4(仮にB3とする)を挟んで2本の指を置いてからピンチインさせる操作を受け付けたら、B3の区切りを固定しつつ、B2とB4との区切りをB3の区切りに寄せるように動かしてもよい。さらに別の形態として、2本の指の間に区切りが無いようにタッチしてピンチインさせる操作を受け付けたら、ピンチイン中心に向かって隣接する区切り、又は全ての区切りを移動させてもよい。
【0042】
この発明にかかる制御装置11の処理部17は、上記のいずれの実施形態でも区切りの変更があったとき、その区切りの位置を記憶部18に記憶させておくとよい。運転中には当然にその変更した値を保持しておくことになる。また、一旦イグニッションをオフにした後の以降の運転においても、操縦者が自ら調整した回生ブレーキ強度についての値を引き続き使いたい場合もある。この場合、イグニッションをオフにしても区切りの位置を記憶し、パドルシフト13により選択される回生ブレーキ強度の区切りの位置に応じた値を引き続き反映させるとよい。このため、記憶部18は揮発性メモリだけでなく、磁気ディスクや不揮発性メモリなど、電源がオフになっても記録を保持できるものを有するとよい。なお、揮発性メモリだけの場合は、充電池23から電源を供給し続けておくことで記録を保持することができる。
【0043】
この発明にかかる制御装置11を搭載した車両10では、シフトレバーを所定の可変ポジションに入れることで、上記の制御装置11によって制御された回生ブレーキ強度を実行させるようにしてもよい。制御装置11によって調整した回生ブレーキ強度を体感する際の手順例を説明する。坂道を下っているときに、シフトポジションを所定の可変ポジションに入れる。操縦者は体感や好みに応じて、パドルシフト13を操作する。この操作により、シフトレバーは固定したままで、段階的に実際の回生ブレーキ強度をB3,B4、B5……に対応した値に変更することができる。この段階的に変更される回生ブレーキ強度を、制御装置11によってデフォルト値から変更し、段階の数は同じであっても操縦者が期待する最適な回生ブレーキ強度をパドルシフト13の操作のみで体感することができる。
【0044】
また、坂道ではなく平地を移動している時でも同様の体感が可能となる。同様に、シフトポジションを所定の可変ポジションに入れたままで、パドルシフト13を操作する。この操作により、シフトレバーは固定したままで、段階的に実際の回生ブレーキ強度をB1、B2……に対応した値に変更することができる。この段階的に変更される回生ブレーキ強度も、同様に操縦者の期待した通りに調整し、体感させることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 車両
11 制御装置
13 パドルシフト
14 表示部
15 操作部
16 タッチパネル
17 処理部
18 記憶部
21 モータ
22 ギア
23 充電池
L1 区切り
L2 薄いライン
L3 濃いライン
L4 区切り