(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】電気駆動車両構造
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20221012BHJP
B60K 6/28 20071001ALI20221012BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20221012BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20221012BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20221012BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
B60K6/28
B60K6/24
B60K6/26
B60K1/04 Z
B60K11/04 H
(21)【出願番号】P 2018031960
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】清見原 辰典
(72)【発明者】
【氏名】平田 宏喜
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 知宏
(72)【発明者】
【氏名】豊原 利憲
(72)【発明者】
【氏名】岩田 一男
(72)【発明者】
【氏名】城 邦洋
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-104019(JP,U)
【文献】特開平07-253020(JP,A)
【文献】特開2013-112182(JP,A)
【文献】特開2009-274615(JP,A)
【文献】特開2017-052500(JP,A)
【文献】特開2011-006051(JP,A)
【文献】特開2015-081089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 1/00 - 1/04
B60K 11/00 - 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室後方にレンジエクステンダユニットが配置され、
車室下部に矩形体のバッテリブロックを配列収容したバッテリケースが配置され、
車室前方のモータルーム内に駆動用モータと上記レンジエクステンダユニット用の熱交換器とが配置された電気駆動車両構造であって、
上記バッテリケース内で上記バッテリブロックは車幅方向中央部にて車幅方向の左右に離間して配置され、
上記車幅方向中央部と合致して上記バッテリケース上面部に、車両前後方向に延びる凹部が形成され、
上記熱交換器と上記レンジエクステンダユニットとを連結する冷却水配管が、上記凹部に収容され
、
上記バッテリケース上面部には、上記凹部に対して車幅方向に隣接して隆起部が形成され、
上記バッテリブロックを制御するバッテリコントローラは、上記バッテリブロックと上記バッテリケース上面部の隆起部との間のバッテリケース内に配置され、
上記冷却水配管と上記バッテリコントローラは車幅方向に並んで配置されることを特徴とする
電気駆動車両構造。
【請求項2】
上記バッテリブロックを制御するバッテリコントローラが上記バッテリケース内であって上記バッテリブロック上に設けられ、
該バッテリコントローラは、上記車幅方向中央部から車幅方向にオフセットした位置に配置されたことを特徴とする
請求項1に記載の電気駆動車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気駆動車両構造に関し、詳しくは、車室後方にレンジエクステンダユニットが配置され、車室下部に矩形体のバッテリブロックを配列収容したバッテリケースが配置され、車室前方のモータルーム内に駆動用モータと上記レンジエクステンダユニット用の熱交換器とが配置された電気駆動車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気駆動車両としては、レンジエクステンダユニットを搭載した車両が知られている。
【0003】
レンジエクステンダとは、前輪などの駆動輪を駆動するモータ(駆動用モータ)と、該モータに電力を供給するバッテリと、該バッテリに発電電力を充電する発電機と、この発電機を駆動するエンジンとを備え、バッテリの電気容量が所定値以下に低下した時、エンジンにより発電機を駆動し、その発電電力をバッテリに供給して充電するものである。
【0004】
上述のレンジエクステンダユニットを車室後方に配置した場合、レンジエクステンダユニットを構成するエンジンおよび発電機と、車両前方に位置するラジエータ等の熱交換器とを冷却水配管で接続する必要があるが、そのレイアウトが課題となっている。
【0005】
ところで、特許文献1には、バッテリトレイと、該バッテリトレイの上側を覆うカバーとからなるバッテリ収納容器を設け、このバッテリ収納容器内にバッテリを上下複数段に収納すると共に、該バッテリ収納容器をフロアパネル下部に配置したバッテリ搭載構造が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、上下のカバー部材間にバッテリモジュールを収納し、上記カバー部材をフレーム部およびブラケット等の固定部を介してフロアフレームやリヤクロスメンバに締結固定し、上側カバー部材(バッテリケース)は、バッテリモジュール収納以外の他の機能を備えない電動車両のバッテリ搭載構造が開示されている。
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1,2には、冷却水配管のレイアウトについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4940966号公報
【文献】特許第5477256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、冷却水配管を、バッテリケースを迂回することなく車両前後方向に配索して、その配管長さの最小化を図ることができる電気駆動車両構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による電気駆動車両構造は、車室後方にレンジエクステンダユニットが配置され、車室下部に矩形体のバッテリブロックを配列収容したバッテリケースが配置され、車室前方のモータルーム内に駆動用モータと上記レンジエクステンダユニット用の熱交換器とが配置された電気駆動車両構造であって、上記バッテリケース内で上記バッテリブロックは車幅方向中央部にて車幅方向の左右に離間して配置され、上記車幅方向中央部と合致して上記バッテリケース上面部に、車両前後方向に延びる凹部が形成され、上記熱交換器と上記レンジエクステンダユニットとを連結する冷却水配管が、上記凹部に収容され、上記バッテリケース上面部には、上記凹部に対して車幅方向に隣接して隆起部が形成され、上記バッテリブロックを制御するバッテリコントローラは、上記バッテリブロックと上記バッテリケース上面部の隆起部との間のバッテリケース内に配置され、上記冷却水配管と上記バッテリコントローラは車幅方向に並んで配置されるものである。
【0011】
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、複数のバッテリセルを集合させた矩形体のバッテリブロックを複数搭載する際には、これらバッテリブロックをそれぞれ直列に接続するバスバーが必要となり、当該バスバーはバッテリブロック上部に配索される。上述の複数のバッテリブロックを車両左側に位置する左バンクと、車両右側に位置する右バンクとに分けて搭載した場合、左バンクと右バンクとの間には、バッテリブロック同士を接続するバスバーが配索されないので、左右バンク間においては、バッテリケースを比較的低くして、凹部を形成することができる。
【0012】
そこで、冷却水配管を上記凹部に収容することで、当該冷却水配管をバッテリケース直上において車両前後方向に通すことができ、冷却水配管がバッテリケースの周囲を迂回しないので、その配管長さの最小化を達成することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記バッテリブロックを制御するバッテリコントローラが上記バッテリケース内であって上記バッテリブロック上に設けられ、該バッテリコントローラは、上記車幅方向中央部から車幅方向にオフセットした位置に配置されたものである。
【0014】
上記構成によれば、特別な保護部材を設けることなく、路面からの水や小石等の飛散物に対する冷却水配管の保護を、上記バッテリケースにて代用することができ、バッテリコントローラの配置と、冷却水配管の保護との両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、冷却水配管を、バッテリケースを迂回することなく車両前後方向に配索して、その配管長さの最小化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の電気駆動車両構造を示す車両右側の側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
冷却水配管を、バッテリケースを迂回することなく車両前後方向に配索して、その配管長さの最小化を図るという目的を、車室後方にレンジエクステンダユニットが配置され、車室下部に矩形体のバッテリブロックを配列収容したバッテリケースが配置され、車室前方のモータルーム内に駆動用モータと上記レンジエクステンダユニット用の熱交換器とが配置された電気駆動車両構造であって、上記バッテリケース内で上記バッテリブロックは車幅方向中央部にて車幅方向の左右に離間して配置され、上記車幅方向中央部と合致して上記バッテリケース上面部に、車両前後方向に延びる凹部が形成され、上記熱交換器と上記レンジエクステンダユニットとを連結する冷却水配管が、上記凹部に収容され、上記バッテリケース上面部には、上記凹部に対して車幅方向に隣接して隆起部が形成され、上記バッテリブロックを制御するバッテリコントローラは、上記バッテリブロックと上記バッテリケース上面部の隆起部との間のバッテリケース内に配置され、上記冷却水配管と上記バッテリコントローラは車幅方向に並んで配置されるという構成にて実現した。
【実施例】
【0018】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
【0019】
図面は電気駆動車両構造を示し、
図1は当該電気駆動車両構造を示す車両右側の側面図、
図2は
図1の要部の斜視図、
図3はバッテリブロックの配列構造を示す平面図、
図4は冷却水配管の配索構造を示す平面図、
図5は
図4のA-A線矢視断面図、
図6は
図4のB-B線矢視断面図、
図7は
図1の要部拡大側面図、
図8は
図7の斜視図である。
【0020】
図1に示すように、この電気駆動車両構造は、モータルーム10内に配置されたパワーユニットU1と、パワーユニットU1の車両前方に配置された冷却ユニットU2と、車室11下部に配置されたバッテリユニットU3と、車室11後方に配置されたレンジエクステンダユニットU4と、を備えている。
【0021】
車室11の底面はフロアパネル1により形成されており、このフロアパネル1は、
図1に示すように、フロントフロアパネル2と、このフロントフロアパネル2の車幅方向中央に形成され車室11側へ突出して車両前後方向に延びるトンネル部3(
図5、
図6参照)と、フロントフロアパネル2の後端から上方に立上がるキックアップ部4と、キックアップ部4上端から車両後方に延びるリヤシートパン5と、このリヤシートパン5よりもさらに後方に延びるリヤフロアパネル6とを備えている。
【0022】
図1に示すように、フロントウインドガラスの下端部を支持するカウルパネル12の下部には、車両前方のモータルーム10と車室11とを車両前後方向に仕切るダッシュパネル13が設けられていて、ダッシュパネル13の車両前方に上述のモータルーム10が形成される一方、ダッシュパネル13の車両後方に上述の車室11が形成されている。
【0023】
上述のモータルーム10の左右両サイドを車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム7が設けられていて、これら左右一対のフロントサイドフレーム7,7間には、車幅方向に延びるパワーユニットU1用のクロスメンバ14が横架されている。
【0024】
上述のパワーユニットU1は、クロスメンバ14に懸架された駆動用モータ15(詳しくは、三相交流モータ)と、この駆動用モータ15の車幅方向左側に連結されたギヤボックス(図示せず)と、クロスメンバ14の上部に搭載された充電器16、DC-DCコンバータ17、充電器16の車幅方向左側に位置するインバータ(図示せず)、当該インバータの上部に設けられたジャンクションボックス18、該ジャンクションボックス18に保護カバー19を介して取付けられたデガスタンク20とを備えている。
【0025】
ここで、充電器16の車幅方向左側に位置するインバータ(図示せず)は、フロアパネル1下部に配設されたバッテリ(後述するバッテリブロックB1~B13参照)からの高電圧の直流電力を三相交流に変換して駆動用モータ15に供給するDC-AC変換器であって、インバータ回路を有している。
また、上述のジャンクションボックス18は、電線同士を結合、分岐、中継する際に用いる端子や端末を保護するための所謂接続箱であって、リレー回路を有している。
【0026】
さらに、上述の充電器16は、外部電源から電力を入力してバッテリを充電するもので、該充電器16とバッテリとは電力ケーブルによって接続されており、また、該充電器16は充電回路を備えた普通充電器である。
加えて、上述のDC-DCコンバータ17は高電圧を車載機器駆動用の低電圧に変換する変換器である。
【0027】
さらにまた、上述のデガスタンク20は、発熱要素である駆動用モータ15、インバータ、充電器16、DC-DCコンバータ17のぞれぞれのウォータジャケット内部にエアが溜まらないよう、これら各要素を冷却する冷却水系の中途部最上方位置に設けられ、エア抜きを行なうためのタンクである。
【0028】
図1、
図4に示すように、モータルーム10の前方に配置された冷却ユニットU2は、冷媒としての冷却水を走行風等にて冷却する冷却装置であって、該冷却ユニットU2は、最前部に位置する発電機用のラジエータ21と、前後方向中間部に位置するエアコン用のラジエータ22と、最後部に位置するエンジン用のラジエータ23と、当該エンジン用のラジエータ23の直後部に位置し、クーリングファンを有するファンカウリング24と、を備えている。
【0029】
これらの各ラジエータ21,22,23は熱交換器であって、走行風またはクーリングファンによる起風を用いて、冷媒(冷却水)と熱交換し、当該冷媒(冷却水)を空冷するための放熱器である。また、上述の冷却ユニットU2は、リザーバタンク25を備えている。
このリザーバタンク25は、冷媒であるエンジン冷却水の体積膨張分を吸収する気相空間をタンク内に備えている。
【0030】
ここで、上述の発電機用のラジエータ21とエンジン用のラジエータ23とは、レンジエクステンダユニットU4用の熱交換器であって、これら各ラジエータ21,23および上述の駆動用モータ15は車室11前方のモータルーム10内に配置されたものである。
【0031】
図1、
図4に示すように、車室11後方に配置されたレンジエクステンダユニットU4は、発電機26と、エンジン27(この実施例では、ワンロータタイプのロータリエンジン)と、AC-DCコンバータ28(但し、
図1では図示の便宜上、AC-DCコンバータ28の図示を省略している)と、を備えている。
【0032】
発電機26とエンジン27の位置関係は、エンジン27を後方に配置し、エンジン27直前方に発電機26を配置している。また、上述のAC-DCコンバータ28は発電機26の車幅方向右側にレイアウトされている。
【0033】
上述のレンジエクステンダユニットU4は、バッテリ(後述するバッテリブロックB1~B13参照)の電気容量が所定値以下に低下した時、エンジン27により発電機26を駆動し、発電機26で発電した交流電力をAC-DCコンバータ28で直流に変換して、バッテリに供給して充電するよう構成している。
【0034】
なお、上述のエンジン27の車幅方向左側には、
図4に示すように、電動スロットルバルブ29を有する吸気通路30と、吸気マニホルド31とが設けられている。
【0035】
また、上述のレンジエクステンダユニットU4(特に、エンジン27)は、
図1に示すように、サブフレーム32により後突荷重から保護するよう構成している。このサブフレーム32は、エンジン27の側方において車両後部からエンジン27前部対応位置まで前方に延びる上側のサブフレームサイドメンバ33と、レンジエクステンダユニットU4の側方において車両後部から発電機26のさらに前方位置まで前方に延びる下側のサブフレームサイドメンバ34と、これら上下のサイドメンバ33,34を後部において車幅方向に連結するサブフレームクロスメンバ35と、を備えている。
【0036】
図3、
図5、
図6に示すように、上述のバッテリユニットU3は車室11下部に矩形体の複数のバッテリブロックB1~B13を配列収容している。
図3に示すように複数のバッテリブロックB1~B13は車両左側に位置する左バンクXと、車両右側に位置する右バンクYとに分けて搭載されている。
【0037】
この実施例では、
図3に示すように左バンクXはバッテリブロックB8~B13で構成されており、右バンクYはバッテリブロックB1~B7で構成されていて、両バンクX,Y間には間隔が形成されている。つまり、バッテリブロックB1~B13は車幅方向中央部にて車幅方向の左右に離間して配置されている。
【0038】
図6に示すように、上述の各バッテリブロックB1~B13はそれぞれ複数のバッテリセルBCを集合させて構成すると共に、各バッテリブロックB1~B13は、
図3に示すように、複数のバスバー40を用いて直列に接続されている。車両後部に位置するバッテリブロックB6,B13間を接続するバスバー40を除いて、左バンクXと右バンクYとの間には、バッテリブロック同士を接続するバスバー40が配索されていない。
【0039】
図5、
図6に示すように、上述のバッテリブロックB1~B13は剛性部材である枠状フレーム41にアルミ合金製の底板45を介して支持されている。
上述の枠状フレーム41は、
図2、
図5、
図6、
図7に示すように、車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム41S,41Sと、左右一対のサイドフレーム41S,41Sの前端部相互間を車幅方向に連結するフロントフレーム41Fと、左右一対のサイドフレーム41S,41Sの後端部相互間を車幅方向に連結するリヤフレーム41Rと、を平面視で枠状に組合せた剛性部材であり、
図2に示すように、リヤフレーム41Rには、バッテリユニットU3を車体に取付け支持するためのブラケット46,46が連結固定されている。また、左右のサイドフレーム41S,41Sの後部にも、バッテリユニットU3を車体に取付け支持するためのブラケット47,47が連結固定されている。
【0040】
図5、
図6に示すように、上述のサイドフレーム41Sは、アッパフレーム42とロアフレーム43とを接合固定して、これら両フレーム42,43間に閉断面44を形成したもので、当該サイドフレーム41Sの上側接合フランジ部は、マウント部材48を介して、フロントフロアパネル2下面のフロアフレーム8に締結固定される。
【0041】
図5、
図6、
図7に示すように、上述のマウント部材48の前後位置と対応して、上側接合フランジ部下面と、ロアフレーム43外面との間には、前後一対のガセット48Gが設けられている。
【0042】
上述のフロアフレーム8は、フロントフロアパネル2の下面に接合固定された断面逆ハット形状の車体強度部材であって、左右一対のフロアフレーム8,8前部の車幅方向間隔に対して、左右一対のフロアフレーム8,8後部の車幅方向間隔が広くなるよう、これら左右一対のフロアフレーム8,8は平面視で八の字状に配置されている。
【0043】
図5、
図6に示すように、フロアパネル1の左右両端部には、車両前後方向に延びる強度部材としてのサイドシルインナ9が接合固定されている。このサイドシルインナ9は図示しないサイドシルアウタと接合固定されて、車両前後方向に延びるサイドシル閉断面を形成するものである。
そして、上述のフロアフレーム8とサイドシルインナ9との間には、これら両者8,9を車幅方向に連結する補強部材49が設けられている。
【0044】
図5、
図6に示すように、各バッテリブロックB1~B13の下部と底板45との間(但し、
図5、
図6においては、バッテリブロックB1,B2,B3,B8,B9,B10のみを示す)には、熱伝導シート50が設けられており、これらバッテリブロックの熱を、熱伝導シート50およびアルミ合金製の底板45を介して車外に放熱させるよう構成している。
【0045】
図2、
図4、
図5、
図6に示すように、上述の各バッテリブロックB1~B13は合成樹脂製のバッテリケース51で覆われると共に、当該バッテリケース51内に配列収容されている。
【0046】
このバッテリケース51は車室11下部におけるフロントフロアパネル2下部に位置するバッテリケース前部51Fと、車室11下部におけるリヤシートパン5下部に位置するバッテリケース後部51Rとを一体形成したものである(
図4参照)。
【0047】
図2、
図4、
図5、
図6に示すように、このバッテリケース51はそのバッテリケース前部51Fが左バンクXを覆うバッテリケース左部51Xと、右バンクYを覆うバッテリケース右部51Yとを有しており、車幅方向中央部と合致して上述のバッテリケース前部51Fの上面部には、車両前後方向に延びる凹部52(前後方向凹部)が形成されている。つまり、バッテリケース左部51Xとバッテリケース右部51Yとの間に該凹部52が形成されたものである。
【0048】
また、
図2、
図4に示すように、バッテリケース前部51Fとバッテリケース後部51Rとの境界部には、上述の凹部52と連続して車幅方向に延びる凹部53(車幅方向凹部)が形成されている。
【0049】
図3、
図5に示すように、上述のバッテリケース51内であってバッテリブロックB8,B9,B10の上部には、支持台54を介してバッテリコントローラ55が設けられている。このバッテリコントローラ55はバッテリブロックB1~B13の電圧等を制御するもので、当該バッテリコントローラ55は、車幅方向中央部から車幅方向の左側にオフセットした位置に配置されている。
このバッテリコントローラ55の配置位置と対応して、上述のバッテリケース51には隆起部51aが形成されている。
【0050】
また、上述のバッテリケース51における凹部52の前部には、
図2、
図7に示すように、車両側面視で略台形状の突出部51bが一体形成されている。この突出部51bの上面部は水平に、前面部は垂直に形成されている。
【0051】
図2に示すように、上述のバッテリケース51はその周囲に上面部から下方に延びるスカート部51cと、該スカート部51cの下端から外方に延びるフランジ部51dとを有しており、
図5、
図6に示すように、車両前後方向に延びるフランジ部51dは、アルミ合金製の底板45の上端折曲げ部と枠状フレーム41のアッパフレーム42上片部とで3枚合わせ構造となるよう複数のボルト、ナットを用いて共締め固定されている。
【0052】
ところで、
図3に示すように、バッテリブロックB12の後方で、かつバッテリブロックB13の車幅方向左側のスペースには、
図4に示すように、エンジン27に供給される燃料を貯留する燃料タンク56が搭載されている。
【0053】
図4に示すように、燃料タンク56と、燃料供給口としてのフィラキャップ57との間は、フィラパイプ58で連通接続されており、上述のフィラキャップ57は車両左側のリヤフェンダパネルに設けられたフィラリッド内のフィラボックスに設けられている。
【0054】
図2、
図4に示すように、熱交換器としてのエンジン用のラジエータ23および発電機用のラジエータ21と、レンジエクステンダユニットU4とを連結する冷却水配管Wが、上述のバッテリケース51上面部に形成された凹部52に収容されている。
【0055】
図2、
図4に示すように、上述の冷却水配管Wはエンジン27を冷却する冷媒としての冷却水を供給するエンジン冷却用配管としての第1配管W1と、発電機26を冷却する冷媒としての冷却水を供給する発電機冷却用配管としての第2配管W2と、を備えている。
【0056】
同図に示すように、第1配管W1は、インレット配管61とアウトレット配管62とを備えており、同様に、第2配管W2も、インレット配管63とアウトレット配管64とを備えている。ここで、第1配管W1の冷媒温度は約90℃~110℃に設定されており、一方で第2配管W2の冷媒温度は最大で約65℃に設定されている。
【0057】
図2、
図4に示すように、第2配管W2は第1配管W1よりも上述の燃料タンク56に近接させて配置されている。仮に、燃料タンク56に冷媒温度が約90℃~110℃の第1配管W1を近接配置した場合には、燃料タンク56が第1配管W1から熱を受ける受熱により蒸発燃料が多く発生したり、燃料タンク56の内圧が高くなる問題点がある。このため、燃料タンク56には、冷媒温度が約65℃以下の第2配管W2を近接配置し、燃料タンク56の受熱影響、つまり蒸発燃料の発生やタンク内圧の上昇を抑制すべく構成したものである。
【0058】
また、第1配管W1の冷却水にてエンジン27を冷却することで、エンジン27の過度な冷却を抑制する一方、第2配管W2の冷却水にて発電機26を冷却することで、発電機26を冷温に保ちつつ、周辺部品である燃料タンク56の温度条件を満たして、エンジン27および発電機26を適切に冷却するよう構成したものである。
【0059】
既述したように、車両後方には、エンジン27と、燃料タンク56と、発電機26とが搭載されている。
上述の第1配管W1は、各ラジエータ21,22,23のうちの最後部に位置するラジエータ23とエンジン27とを接続するよう車両前方から車両後方に向かって延設されている。すなわち、ラジエータ23のアウトレットポートに接続したアウトレット配管62を、凹部52に収容して車両前後方向に配索した後に、該凹部52(前後方向凹部)の後端から車幅方向に延びる凹部53(車幅方向凹部)に収容し、該凹部53の外端からさらに後方に延ばして、その後端を、エンジン27のウォータジャケット入口に接続し、ウォータジャケット出口に接続したインレット配管61を上記アウトレット配管62に沿設して車両後方から車両前方に配索して、その前端をラジエータ23のインレットポートに接続したものである。
【0060】
また、上述の第2配管W2は、各ラジエータ21,22,23のうちの最前部に位置するラジエータ21と発電機26とを接続するよう車両前方から車両後方に向かって延設されると共に、その途中において燃料タンク56と近接されて配置されている。
【0061】
すなわち、ラジエータ21のアウトレットポートに接続したアウトレット配管64を、凹部52(前後方向凹部)に収容して車両前後方向に配索した後に、該凹部52の後端からさらに後方に延ばして、発電機26およびコンバータ28の下部に位置するウォータジャケット入口に接続し、発電機26およびコンバータ28の上部に位置するウォータジャケット出口に接続したインレット配管63を上記アウトレット配管64に略沿設して車両後方から車両前方に配索して、その前端をラジエータ21のインレットポートに接続したものである。
なお、
図2、
図4において、冷却水の流れを矢印で示している。
【0062】
冷却水をウォータジャケットの下部から流入し、ウォータジャケットの上部から流出させることで、冷却水の泡立ちによる泡を抜くことができる。
図4のA-A線矢視断面を
図5に、B-B線矢視断面図を
図6にそれぞれ示すように、ラジエータ21,23とレンジエクステンダユニットU4とを連結する冷却水配管W(第1配管W1、第2配管W2参照)を、バッテリケース51上面部に形成された凹部52に収容したものである。
【0063】
これにより、当該冷却水配管W(第1配管W1、第2配管W2)をバッテリケース51直上において車両前後方向に通し、冷却水配管Wがバッテリケース51の周囲を迂回することなく、その配管長さの最小化を達成すべく構成したものである。
【0064】
図2に示すように、上述の冷却水配管Wは、バッテリケース51における隆起部51aの車幅方向右側において、合計4本の配管61,62,63,64を束ね、固定部材65を用いてバッテリケース51に固定されている。
【0065】
また、
図2に示すように、上述の冷却水配管Wにおけるバッテリケース後部51Rと対応する第1配管W1は、当該バッテリケース後部51Rの右側部において、合計2本の配管61,62を束ね、固定部材66を用いてバッテリケース後部51Rに固定されている。
【0066】
図1、
図7、
図8に示すように、上述の冷却水配管Wは、バッテリケース51上面に支持された後半部Wrと、モータルーム10内に位置する前半部Wfとに分割されている。
【0067】
図1、
図7、
図8に示すように、車室11とモータルーム10とを車両前後方向に仕切るダッシュパネル13の位置に、上述の冷却水配管Wの前半部Wfと後半部Wrとの接続部70が設けられている。
【0068】
図7、
図8に示すように、上述の接続部70は、バッテリケース51の突出部51bにおける水平な上面部に固定されたブラケット71と、このブラケット71に支持された配管相当数の管部72とを備えている。
【0069】
上述のブラケット71は、バッテリケース51の突出部51b上面部から車両前方へ突出する下片71aと、この下片71aの前端から上方に延びる前片71bと、この前片71bの上端から後方に延びる上片71cと、この上片71cの後端から上方に延びる後片71dとを、金属板の折曲げ加工により一体形成したもので、該ブラケット71は、
図1に示すように、バッテリケース51上面のダッシュパネル13近傍位置に立設されたものである。
【0070】
配管相当数の管部72のうち、第1配管W1用の管部72は、
図7、
図8に示すように、ブラケット71の後片71dに支持されている。また、配管相当数の管部72のうち第2配管W2用の管部72は、同図に示すように、ブラケット71の前片71bに支持されている。
【0071】
そして、上述の各管部72は、その後側に冷却水配管Wの後半部Wrの前端部が嵌められ、その前側に冷却水配管Wの前半部Wfの後端部が嵌められるもので、これらの各管部72は、金属製のパイプ部材にて形成することができる。
【0072】
また、
図7、
図8に示すように、ブラケット71における前片71bおよび後片71dの背面側には、上述の管部72の抜け止めを奏する抜け止め部材73が設けられており、当該抜け止め部
材73は、ボルト、ナットなどの取付け部材74を用いて、上記前片71b、後片71dに取付けられている。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0073】
このように、上記実施例の電気駆動車両構造は、車室11後方にレンジエクステンダユニットU4が配置され、車室11下部に矩形体のバッテリブロックB1~B13を配列収容したバッテリケース51が配置され、車室11前方のモータルーム10内に駆動用モータ15と上記レンジエクステンダユニットU4用の熱交換器(ラジエータ21,23参照)とが配置された電気駆動車両構造であって、上記バッテリケース51内で上記バッテリブロックB1~B13は車幅方向中央部にて車幅方向の左右に離間して配置され、上記車幅方向中央部と合致して上記バッテリケース51上面部に、車両前後方向に延びる凹部52が形成され、上記熱交換器(ラジエータ21,23)と上記レンジエクステンダユニットU4とを連結する冷却水配管Wが、上記凹部52に収容されたものである(
図1~
図6参照)。
【0074】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、複数のバッテリセルBCを集合させた矩形体のバッテリブロックB1~B13を複数搭載する際には、これらバッテリブロックB1~B13をそれぞれ直列に接続するバスバー40が必要となり、当該バスバー40はバッテリブロックB1~B13上部に配索される。上述の複数のバッテリブロックB1~B13を車両左側に位置する左バンクXと、車両右側に位置する右バンクYとに分けて搭載した場合、左バンクXと右バンクYとの間には、バッテリブロック同士を接続するバスバー40が配索されないので、左右バンクXY間においては、バッテリケース51を比較的低くして、凹部52を形成することができる。
【0075】
そこで、冷却水配管Wを凹部52に収容することで、当該冷却水配管Wをバッテリケース51直上において車両前後方向に通すことができ、冷却水配管Wがバッテリケース51の周囲を迂回しないので、その配管長さの最小化を達成することができる。
【0076】
また、この発明の一実施形態においては、上記バッテリブロックB1~B13を制御するバッテリコントローラ55が上記バッテリケース51内であって上記バッテリブロックB8,B9,B10上に設けられ、該バッテリコントローラ55は、上記車幅方向中央部から車幅方向にオフセットした位置に配置されたものである(
図3、
図5参照)。
【0077】
この構成によれば、特別な保護部材を設けることなく、路面からの水や小石等の飛散物に対する冷却水配管Wの保護を、上記バッテリケース51にて代用することができ、バッテリコントローラ55の配置と、冷却水配管Wの保護との両立を図ることができる。
【0078】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のレンジエクステンダユニット用の熱交換器は、実施例のラジエータ21,23に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明は、車室後方にレンジエクステンダユニットが配置され、車室下部に矩形体のバッテリブロックを配列収容したバッテリケースが配置され、車室前方のモータルーム内に駆動用モータと上記レンジエクステンダユニット用の熱交換器とが配置された電気駆動車両構造について有効である。
【符号の説明】
【0080】
10…モータルーム
11…車室
15…駆動用モータ
21,23…ラジエータ(レンジエクステンダユニット用の熱交換器)
51…バッテリケース
51a…隆起部
52…凹部
55…バッテリコントローラ
B1~B13…バッテリブロック
U4…レンジエクステンダユニット
W…冷却水配管