(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20221012BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20221012BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G03G21/16 171
G03G21/16 176
G03G15/08 235
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2018063385
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】佐野 利幸
(72)【発明者】
【氏名】板橋 奈緒
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-249801(JP,A)
【文献】特開2010-085797(JP,A)
【文献】中国実用新案第205750283(CN,U)
【文献】特開2005-208146(JP,A)
【文献】特開2005-189777(JP,A)
【文献】特開2001-235985(JP,A)
【文献】特開2010-091981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 15/08
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像ローラと、
前記現像ローラと電気的に接続される現像電極と、
を有するトナーカートリッジと、
前記トナーカートリッジが装着されるドラムカートリッジであって、
感光体ドラムと、
前記トナーカートリッジが装着されると、前記トナーカートリッジを前記感光体ドラムに向けて押圧して、前記現像ローラの表面と、前記感光体ドラムの表面とを接触させる押圧部材と、
ドラムメモリであって、前記押圧部材が前記トナーカートリッジを押圧する押圧力の値である押圧力値を記憶するドラムメモリと、
を有するドラムカートリッジと、
前記トナーカートリッジが装着された状態において前記ドラムカートリッジが装着される筐体と、
前記筐体にドラムカートリッジが装着された状態において、前記トナーカートリッジの前記現像電極と電気的に接続する本体電極と、
前記筐体にドラムカートリッジが装着された状態において、前記ドラムメモリと電気的に接続し、前記ドラムメモリに記憶された情報を読み取る第1読取部と、
印刷制御する制御部であって、
前記第1読取部に前記ドラムメモリから、前記押圧力値を読み取らせる読取処理と、
前記読取処理により読み取った前記押圧力値に基づいて、前記本体電極に電圧を印加する電圧印加処理と、
を実行する制御部と、
を備える、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記ドラムメモリは、
前記押圧力値に対応付けて、現像バイアス値を記憶し、
前記読取処理は、
前記押圧力値とともに、前記押圧力値に対応付けられた前記現像バイアス値を読み取り、
前記電圧印加処理は、
前記現像バイアス値に従って、前記本体電極に電圧を印加する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記トナーカートリッジは、
前記トナーカートリッジに関するトナー情報を記憶するトナーメモリ、
を有し、
前記画像形成装置は、さらに、
前記筐体に前記ドラムカートリッジが装着された状態において、前記トナーメモリと電気的に接続し、前記トナーメモリに記憶された情報を読み取る第2読取部、
を備え、
前記読取処理は、
前記トナーメモリから、前記トナー情報を読み取る、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記トナーカートリッジは、
トナーを収容する収容部、
を有し、
前記トナー情報は、前記トナーカートリッジを識別する識別情報を含み、
前記電圧印加処理は、
前記読取処理にて読み取った前記識別情報に基づいて、前記本体電極に電圧を印加する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置であって、
前記ドラムメモリは、
前記押圧力値および前記識別情報に対応付けて、現像バイアス値を記憶し、
前記読取処理は、
前記押圧力値および前記識別情報とともに、前記押圧力値および前記識別情報に対応付けられた前記現像バイアス値を読み取り、
前記電圧印加処理は、
前記現像バイアス値に従って、前記本体電極に電圧を印加する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の画像形成装置であって、
前記トナー情報は、前記トナーカートリッジの寿命値を含み、
前記制御部は、
前記第1読取部が読み取った前記押圧力値に基づいて、前記寿命値を補正する補正処理
をさらに実行する、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置であって、
前記寿命値は、前記収容部に収容されたトナーで印刷可能なドットカウント値であり、
前記補正処理は、前記ドットカウント値を補正する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置であって、
前記補正処理は、
前記押圧力値が予め設定された基準値である場合、画像形成に使用された分のドットを通常カウントし、
前記押圧力値が予め設定された基準値より小さい場合、前記通常カウントよりも加算値を小さくしてドットをカウントする、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の画像形成装置であって、
前記補正処理は、
前記押圧力値が予め設定された基準値である場合、画像形成に使用された分のドットを通常カウントし、
前記押圧力値が予め設定された基準値より大きい場合、前記通常カウントよりも加算値を大きくしてドットをカウントする、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザプリンタ、LEDプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置には、トナーカートリッジをドラムカートリッジに装着したプロセスカートリッジを、画像形成装置に装着するものが知られている。この種の画像形成装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の画像形成装置のように、トナーカートリッジと、ドラムカートリッジとがそれぞれ分離できる場合において、トナーカートリッジおよびドラムカートリッジは、別々に製造されて工場から出荷される。このため、トナーカートリッジおよびドラムカートリッジそれぞれの特性にばらつきが生じることがあり、その結果、印刷時の調整が難しくなる場合がある。具体的には、特に、トナーカートリッジが現像ローラを有し、かつ、ドラムカートリッジが感光体ドラムと押圧部材とを有する場合に、トナーカートリッジがドラムカートリッジに装着された状態において、押圧部材が現像ローラを感光体ドラムへ押圧する場合に、押圧力のばらつきが生じるかもしれない。
【0005】
本開示は、押圧部材による押圧力のばらつきが生じた場合でも、現像ローラに対して適切な電圧を印加して、印刷調整を行うことができる、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の開示の画像形成装置は、現像ローラと、前記現像ローラと電気的に接続される現像電極と、を有するトナーカートリッジと、前記トナーカートリッジが装着されるドラムカートリッジであって、感光体ドラムと、前記トナーカートリッジが装着されると、前記トナーカートリッジを前記感光体ドラムに向けて押圧して、前記現像ローラの表面と、前記感光体ドラムの表面とを接触させる押圧部材と、ドラムメモリであって、前記押圧部材が前記トナーカートリッジを押圧する押圧力の値を記憶するドラムメモリと、を有するドラムカートリッジと、前記トナーカートリッジが装着された状態において前記ドラムカートリッジが装着される筐体と、前記筐体にドラムカートリッジが装着された状態において、前記トナーカートリッジの前記現像電極と電気的に接続する本体電極と、前記筐体にドラムカートリッジが装着された状態において、前記ドラムメモリと電気的に接続し、前記ドラムメモリに記憶された情報を読み取る第1読取部と、印刷制御する制御部であって、前記第1読取部に前記ドラムメモリから、前記押圧力値を読み取らせる読取処理と、前記読取処理により読み取った前記押圧力値に基づいて、前記本体電極に電圧を印加する電圧印加処理と、を実行する制御部と、を備える。
【0007】
第2の開示は、第1の開示の画像形成装置であって、前記ドラムメモリは、前記押圧力値に対応付けて、現像バイアス値を記憶し、前記読取処理は、前記押圧力値とともに、前記押圧力値に対応付けられた前記現像バイアス値を読み取り、前記電圧印加処理は、前記現像バイアス値に従って、前記本体電極に電圧を印加する。
【0008】
第3の開示は、第1の開示の画像形成装置であって、前記トナーカートリッジは、前記トナーカートリッジに関するトナー情報を記憶するトナーメモリ、を有し、前記画像形成装置は、さらに、前記筐体に前記ドラムカートリッジが装着された状態において、前記トナーメモリと電気的に接続し、前記トナーメモリに記憶された情報を読み取る第2読取部、を備え、前記読取処理は、前記トナーメモリから、前記トナー情報を読み取る。
【0009】
第4の開示は、第3の開示の画像形成装置であって、前記トナーカートリッジは、トナーを収容する収容部、を有し、前記トナー情報は、前記トナーカートリッジを識別する識別情報を含み、前記電圧印加処理は、前記読取処理にて読み取った前記識別情報に基づいて、前記本体電極に電圧を印加する。
【0010】
第5の開示は、第4の開示の画像形成装置であって、前記ドラムメモリは、前記押圧力値および前記トナーの識別情報に対応付けて、前記現像バイアス値を記憶し、前記読取処理は、前記押圧力値および前記トナーの識別情報とともに、前記押圧力値および前記トナーの識別情報に対応付けられた前記現像バイアス値を読み取り、前記電圧印加処理は、前記現像バイアス値に従って、前記本体電極に電圧を印加する。
【0011】
第6の開示は、第3の開示から第5の開示のいずれか1つの画像形成装置であって、前記トナー情報は、前記トナーカートリッジの寿命値を含み、前記制御部は、前記読取部が読み取った前記押圧力値に基づいて、前記寿命値を補正する補正処理を、をさらに実行する。
【0012】
第7の開示は、第6の開示の画像形成装置であって、前記寿命値は、前記収容部に収容されたトナーで印刷可能なドットカウント値であり、前記補正処理は、前記ドットカウント値を補正する。
【0013】
第8の開示は、第7の開示の画像形成装置であって、前記補正処理は、前記押圧力値が予め設定された基準値である場合、画像形成に使用された分のドットを通常カウントし、前記押圧力値が予め設定された基準値より小さい場合、前記通常カウントよりも加算値を大きくしてドットをカウントする。
【0014】
第9の開示は、第7の開示または第8の開示の画像形成装置であって、前記補正処理は、前記押圧力値が予め設定された基準値である場合、画像形成に使用された分のドットを通常カウントし、前記押圧力値が予め設定された基準値より大きい場合、前記通常カウントよりも加算値を小さくしてドットをカウントする。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、装着されたドラムカートリッジのドラムメモリから、記憶された情報を読み取ることで、装着されたドラムカートリッジの押圧部材の押圧力を把握できる。このため、ドラムカートリッジが交換された場合において、交換前後のドラムカートリッジの押圧部材の押圧力にばらつきがあっても、押圧力に応じた電圧を、現像ローラに対して印加できる。その結果、現像ローラに対して適切な電圧を印加して、印刷調整を行うことができる。
【0016】
第4の開示によれば、トナーの識別情報から、例えば、トナーの種類を取得できる。そして、取得したトナーの種類に適した電圧を、本体電極に印加することができる。
【0017】
第8の開示および第9の開示によれば、装着したドラムカートリッジに応じて、トナーカートリッジの寿命を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】画像形成装置における電気的接続を示す図である。
【
図3】ドラムメモリに記憶される押圧力値と、それに対応する現像バイアスを説明するための図である。
【
図4】開けられたカバーが閉じられた際の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】現像バイアス変更処理のフローチャートである。
【
図7】押圧力値に応じて、トナーカートリッジの寿命補正を行う処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<1.装置の構成>
図1は、画像形成装置100の概念図である。
図2は、画像形成装置100における電気的接続を示す図である。
【0020】
画像形成装置100は、電子写真方式のプリンタである。画像形成装置100の例としては、レーザプリンタまたはLEDプリンタが挙げられる。
図1に示すように、画像形成装置100は、本体ケーシング101、本体基板3、ドラムカートリッジ1、およびトナーカートリッジ2を有する。
【0021】
本体ケーシング101は、本体基板3、ドラムカートリッジ1および複数のトナーカートリッジ2を収容する筐体である。複数のトナーカートリッジ2は、ドラムカートリッジ1に装着され、その状態で本体ケーシング101内に装着される。本体ケーシング101は、開閉可能なカバー101Aを有する。本体ケーシング101は、カバー101Aを開けることで、ドラムカートリッジ1および複数のトナーカートリッジ2が、本体ケーシング101に装着可能となる。
【0022】
ドラムカートリッジ1は、4つのスロット1Aを有する。4つのスロット1Aそれぞれには、トナーカートリッジ2が挿入される。また、ドラムカートリッジ1は、4つのスロット1Aそれぞれに設けられた押圧部材1Bと、4つのスロット1Aそれぞれに設けられた感光体ドラム12とを有する。スロット1Aにトナーカートリッジ2が挿入されると、トナーカートリッジ2が有する現像ローラ22の表面が、感光体ドラム12の表面と向かい合う。押圧部材1Bは、例えばバネを有する。そして、押圧部材1Bは、スロット1Aに挿入されたトナーカートリッジ2を、バネの弾性力で押圧する。押圧部材1Bがトナーカートリッジ2を押圧することで、現像ローラ22の表面と、感光体ドラム12の表面とが接触する。
【0023】
感光体ドラム12は、紙に対し、トナーを転写する。感光体ドラム12には、ドラム電極121が電気的に接続されている。ドラム電極121は、例えば、感光体ドラム12の軸受に設けられる。ドラムカートリッジ1が本体ケーシング101に装着されると、ドラム電極121は、本体ケーシング101内に設けられた本体電極102と電気的に接続される。その本体電極102に電圧(以下、供給バイアスと称す)が印加されることで、感光体ドラム12に供給バイアスが印加される。
【0024】
また、ドラムカートリッジ1は、ドラム基板11を有する。ドラム基板11は、
図2に示すように、ドラムメモリ111を有する。ドラムメモリ111は、情報の読み出しおよび書き込みが可能な記憶媒体である。ドラムメモリ111は、フラッシュROM、EEPROMなど、データの読み出し、書き込みおよびデータの消去などが可能なメモリであればよい。ドラムメモリ111に記憶されるドラム情報は、少なくとも、後述する押圧部材1Bの押圧力値を含む。また、ドラム情報は、押圧力値に対応付けられた、少なくとも一つのバイアス電圧も含む。このバイアス電圧は、現像ローラ22に印加するバイアス電圧(以下、現像バイアスと称す)である。押圧力値と現像バイアスとについては、後述する。
【0025】
なお、ドラムメモリ111に記憶されるドラム情報は、ドラムカートリッジ1の識別情報、ドラムカートリッジ1の仕様、感光体ドラム12の寿命、感光体ドラム12の帯電特性、感光体ドラム12の回転数、感光体ドラム12の帯電時間、印刷枚数、エラー履歴などを含んでいてもよい。
【0026】
本体ケーシング101にドラムカートリッジ1が装着されると、ドラム基板11は、本体ケーシング101内に設けられた端子103と電気的に接続する。ドラム基板11は、端子103を介して、本体基板3と電気的に接続し、ドラム基板11と本体基板3とが通信可能となる。そして、ドラムメモリ111に記憶されるドラム情報が、本体基板3により読み込まれる。端子103は、本発明の「第1読取部」の一例である。
【0027】
複数のトナーカートリッジ2はそれぞれ、トナーメモリ21と、現像ローラ22と、収容部23とを有する。
【0028】
収容部23は、トナー(現像剤)を収容する。複数のトナーカートリッジ2の収容部23には、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のトナーが収容される。なお、複数のトナーカートリッジ2の収容部23は、同じ色のトナーを収容してもよい。画像形成装置100は、複数のトナーカートリッジ2から供給されるトナーにより、印刷用紙の記録面に画像を形成する。本実施形態のドラムカートリッジ1に装着されるトナーカートリッジ2の数は、4つである。ただし、ドラムカートリッジ1に装着されるトナーカートリッジ2の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0029】
トナーメモリ21は、情報の読み出しおよび書き込みが可能な記憶媒体である。トナーメモリ21は、フラッシュROM、EEPROMなど、データの読み出し、書き込みおよびデータの消去などが可能なメモリであればよい。トナーメモリ21に記憶されるトナー情報は、少なくとも、トナーカートリッジ2を識別する識別情報(以下、トナーIDと称す)を含む。なお、トナーメモリ21に記憶されるトナー情報は、例えば、トナーの色情報、現像ローラ22の寿命、現像ローラ22の回転数、トナーの使用量、トナーカートリッジ2に関するエラー履歴などを含んでいてもよい。
【0030】
ドラムカートリッジ1にトナーカートリッジ2が装着されると、トナーメモリ21は、ドラム基板11と電気的に接続される。また、本体ケーシング101にドラムカートリッジ1が装着されると、ドラム基板11は、上述のように、端子103を介して、本体基板3と電気的に接続される。したがって、トナーメモリ21は、ドラム基板11を介して、本体基板3と電気的に接続される。これにより、トナーメモリ21と、本体基板3とが通信可能となる。トナーメモリ21に記憶されるトナー情報は、ドラム基板11を介して、本体基板3により読み取られる。本体基板3によりトナーIDが読み取られると、本体基板3において、トナーカートリッジ2の収容部23に収容されるトナーの種類が特定される。トナーの種類には、例えば、重合トナーまたは粉砕トナーがある。端子103は、本発明の「第2読取部」の一例である。なお、トナーメモリ21は、ドラム基板11を介することなく本体基板3に接続されていてもよい。
【0031】
現像ローラ22は、感光体ドラム12の表面に、収容部23内のトナーを供給する。トナーカートリッジ2がドラムカートリッジ1に装着されると、現像ローラ22の表面と、感光体ドラム12の表面とが接触する。現像ローラ22には、現像電極221が電気的に接続されている。現像電極221は、例えば、現像ローラ22の軸受である。トナーカートリッジ2が装着された状態のドラムカートリッジ1が、本体ケーシング101に装着されると、現像電極221は、本体ケーシング101内に設けられた本体電極104と電気的に接続される。本体基板3のプロセッサ31の制御により、その本体電極104に現像バイアスが印加されることで、現像ローラ22に現像バイアスが印加される。上述のように、感光体ドラム12にも供給バイアスが印加されている。そして、供給バイアスと、現像バイアスとの電位差によって、現像ローラ22から感光体ドラム12へのトナーの供給が行われる。
【0032】
本体基板3は、例えば、回路基板と、CPU等のプロセッサ31と、記憶媒体である本体メモリ32とを有する。本体メモリ32は、フラッシュROM、EEPROM,EPROMなど、データの読み出し、書き込みおよびデータの消去などが可能なメモリであればよい。
【0033】
プロセッサ31は、本体メモリ32に記憶されるプログラムに従って動作することにより、画像形成装置100における諸処理を実行する制御部である。例えば、プロセッサ31は、読取処理、電圧印加処理、および補正処理を実行する。読取処理は、ドラムメモリ111およびトナーメモリ21それぞれから、ドラム情報およびトナー情報を読み取る処理である。電圧印加処理は、本体電極104を介して、現像電極221、つまり、現像ローラ22に現像バイアスを印加する処理である。また、電圧印加処理は、本体電極102を介して、ドラム電極121、つまり、感光体ドラム12に供給バイアスを印加する処理でもある。補正処理は、トナーカートリッジ2の寿命を補正する処理である。各処理については、後に詳述する。
【0034】
<2.ドラムメモリに記憶される押圧力値について>
以下に、ドラムメモリ111に記憶される押圧力値、および、それに対応する現像バイアスについて説明する。
【0035】
図3は、ドラムメモリ111に記憶される押圧力値と、それに対応する現像バイアスを説明するための図である。
【0036】
ドラムメモリ111には、押圧部材1Bの押圧力値Nと、その押圧力値Nに対応付けられた現像バイアスV1、V2とが記憶される。現像バイアスV1は、トナーの種類が「重合トナー」である場合に、押圧力値Nに対応付けられた現像バイアスである。現像バイアスV2は、トナーの種類が「粉砕トナー」である場合に、押圧力値Nに対応付けられた現像バイアスである。つまり、ドラムメモリ111は、現像バイアスを、トナーの種類毎に記憶する。
【0037】
ドラムカートリッジ1のスロット1Aにトナーカートリッジ2が装着されると、トナーカートリッジ2は押圧部材1Bにより押圧される。この押圧部材1Bによる押圧力によって、現像ローラ22は感光体ドラム12に押圧される。つまり、押圧部材1Bの押圧力によって、現像ローラ22と感光体ドラム12との接触圧は変化する。接触圧が変化すると、現像バイアスと、供給バイアスとの電位差を調整して、現像ローラ22から感光体ドラム12へトナーを供給する必要がある。そこで、
図3に示すように、ドラムメモリ111には、押圧部材1Bの押圧力値に対応付けた現像バイアスが記憶されている。
【0038】
また、トナーの種類によっても、現像バイアスと供給バイアスとの電位差を変える必要がある。粉砕トナーは、重合トナーと比べて、粒子の大きさまたは形状が不均一である。このため、粉砕トナーを、現像ローラ22から感光体ドラム12に転写する際、電気特性にばらつきが出やすい。このため、トナーが粉砕トナーの場合、現像バイアスと供給バイアスとの電位差は、重合トナーの場合よりも大きくする必要がある。そこで、
図3に示すように、ドラムメモリ111には、押圧部材1Bの押圧力値に対応する現像バイアスを、トナーの種類ごとに記憶している。
【0039】
プロセッサ31は、トナーメモリ21からトナーIDを読み出し、トナーの種類を特定する。また、プロセッサ31は、ドラムメモリ111から、
図3に示す情報を読み取る。そして、プロセッサ31は、ドラムカートリッジ1に装着されているトナーカートリッジ2のトナーの種類と、ドラムカートリッジ1の押圧部材1Bによる押圧力値とに応じた現像バイアスを取得する。取得された現像バイアスは、印刷処理時において、現像ローラ22に印加される。
【0040】
<3.ドラムカートリッジ装着後の処理について>
続いて、画像形成装置100の本体ケーシング101にドラムカートリッジ1が装着された後に、プロセッサ31が行う処理について、説明する。
図4は、開けられたカバー101Aが閉じられた際の処理の流れを示すフローチャートである。
【0041】
画像形成装置100の本体ケーシング101にドラムカートリッジ1が装着されて、本体ケーシング101のカバー101Aが閉じられると、プロセッサ31は、まず、第1判定処理を行う(ステップS1)。第1判定処理は、プロセッサ31が、ドラムメモリ111と通信可能であるか否かを判定するとともに、ドラムメモリ111の認証を行う処理である。
【0042】
プロセッサ31が、ドラムメモリ111と通信可能であり、かつ、ドラムメモリ111の認証が成功すると、次に、プロセッサ31は、ドラムメモリ111に記憶されたドラム情報を読み取る、読取処理を実行する(ステップS2)。ここで読み取られるドラム情報は、少なくとも、
図3で説明した押圧力値、および、それに対応する現像バイアスを含む。その他、読み取られるドラム情報には、ドラムカートリッジ1の製造シリアル番号、純正品であることを示す識別情報、ドラムカートリッジ1の適合機種、ドラムカートリッジ1の仕様、感光体ドラム12の寿命、感光体ドラム12の帯電特性、新品であるかどうかを示す情報、感光体ドラム12の回転数、感光体ドラム12の帯電時間、印刷枚数、エラー履歴、の少なくとも1つが含まれる。
【0043】
その後、プロセッサ31は、ドラムメモリ111から読み取ったドラム情報が、正常か否かを判定する(ステップS3)。具体的には、ドラムメモリ111から読み取ったドラム情報が、所定の条件に合致しているか否かを判定する。
【0044】
ドラムメモリ111から読み取ったドラム情報が所定の条件に合致しない場合、プロセッサ31は、ドラム情報が正常でないと判定する(ステップS4:NO)。その場合、プロセッサ31は、エラーを出力する(ステップS5)。例えば、プロセッサ31は、本体メモリ32に記憶されたドラムエラーメッセージ情報を、読み出す。その後、プロセッサ31は、読み出したドラムエラーメッセージ情報を、不図示のディスプレイに表示する。
【0045】
一方、ドラムメモリ111から読み取ったドラム情報が所定の条件に合致する場合、プロセッサ31は、ドラム情報が正常であると判定する(ステップS4:YES)。その場合、プロセッサ31は、第2判定処理を行う(ステップS6)。第2判定処理は、プロセッサ31が、トナーメモリ21と通信可能であるか否かを判定するとともに、トナーメモリ21の認証を行う処理である。
【0046】
プロセッサ31が、トナーメモリ21と通信可能であり、かつ、トナーメモリ21の認証が成功すると、次に、プロセッサ31は、トナーメモリ21に記憶されたトナー情報を読み取る、読取処理を実行する(ステップS7)。ここで読み取られるトナー情報は、例えば、少なくとも、上述したトナーIDを含む。その他、読み取られるトナー情報には、トナーカートリッジ2の製造シリアル番号、純正品であることを示す識別情報、トナーカートリッジ2の適合機種、トナーカートリッジ2の仕様、トナーの容量、トナーカートリッジ2の寿命、新品であるかどうかを示す情報、現像ローラ22の回転数、印刷枚数、エラー履歴、の少なくとも1つが含まれる。
【0047】
その後、プロセッサ31は、トナーメモリ21から読み取ったトナー情報が、正常か否かを判定する(ステップS8)。具体的には、トナーメモリ21から読み取ったトナー情報が、所定の条件に合致しているか否かを判定する。
【0048】
トナーメモリ21から読み取ったトナー情報が所定の条件に合致しない場合、プロセッサ31は、トナー情報が正常でないと判定する(ステップS9:NO)。その場合、プロセッサ31は、エラーを出力する(ステップS10)。具体的には、例えば、プロセッサ31は、本体メモリ32に記憶されたトナーエラーメッセージ情報を、読み取る。その後、プロセッサ31は、読み取ったトナーエラーメッセージ情報を、不図示のディスプレイに表示する。
【0049】
一方、トナーメモリ21から読み取ったトナー情報が所定の条件に合致する場合、プロセッサ31は、トナー情報が正常であると判定する(ステップS9:YES)。その場合、プロセッサ31は、印刷指示の入力を待つ待機状態となる。
【0050】
なお、ステップS6~S10の処理は、複数のトナーカートリッジ2のトナーメモリ21のそれぞれについて、実行される。
【0051】
図4の処理が終了すると、プロセッサ31は、印刷処理を実行する。
図5は、印刷処理を示すフローチャートである。
【0052】
プロセッサ31は、まず、現像バイアス変更処理を実行する(ステップS11)。現像バイアス変更処理は、押圧部材1Bがトナーカートリッジ2を押圧する押圧力値に応じて、現像電極221に印加する現像バイアスを変更する処理である。
図6は、現像バイアス変更処理のフローチャートである。
【0053】
プロセッサ31は、ステップS7でトナーメモリ21から読み取ったトナー情報に含まれる、トナーIDを取得する(ステップS21)。プロセッサ31は、例えば、トナーIDから、トナーカートリッジ2の収容部23に収容されるトナーの種類、例えば、重合トナーまたは粉砕トナーを特定できる。次に、プロセッサ31は、ステップS2でドラムメモリ111から読み取ったドラム情報に含まれる押圧力値を取得する(ステップS22)。次に、プロセッサ31は、取得した押圧力値と、トナーIDとから、押圧力値およびトナーIDに対応する現像バイアスを取得する(ステップS23)。
【0054】
プロセッサ31が現像バイアスの変更処理を終了すると、プロセッサ31は、印刷命令を受けたかを判定する(ステップS12)。プロセッサ31が印刷命令を受けていないと判定した場合(ステップS12:NO)、プロセッサ31は、ステップS12の処理を繰り返す。プロセッサ31が印刷命令を受けたと判定した場合(ステップS12:YES)、プロセッサ31は、印刷命令に従い、印刷処理を実行する(ステップS13)。このとき、ステップS11において取得した現像バイアスを、現像ローラ22に印加する電圧印加処理を実行して、印刷処理が実行される。
【0055】
次に、プロセッサ31は、各種情報を更新する(ステップS14)。更新する情報は、例えば、現像ローラ22の回転数、印刷枚数、エラー履歴、感光体ドラム12の帯電特性、感光体ドラム12の回転数、感光体ドラム12の帯電時間、印刷枚数、エラー履歴などである。なお、更新する情報は、これらの情報に限定されず、適宜変更可能である。
【0056】
プロセッサ31は、更新した情報を、トナーメモリ21、および、ドラムメモリ111に対して、書き込む(ステップS15)。そして、プロセッサ31は、本処理を終了するかを判定する(ステップS16)。終了する場合とは、例えば、カバー101Aが開けられた場合、または、画像形成装置100の電源がオフにされた場合などである。プロセッサ31が本処理を終了しないと判定した場合(ステップS16:NO)、プロセッサ31は、ステップS12の処理を再度実行する。プロセッサ31が本処理を終了すると判定した場合(ステップS16:YES)、プロセッサ31は本処理を終了する。
【0057】
以上のように、画像形成装置100は、装着されたドラムカートリッジ1が有する押圧部材1Bの押圧力値に対応する現像バイアスを取得することができる。これにより、画像形成装置100は、ドラムカートリッジが交換されて、押圧部材による押圧力が変わっても、そのドラムカートリッジに装着されたトナーカートリッジ2の現像ローラ22に対して、適切な現像バイアスを印加することができる。
【0058】
また、ドラムメモリ111には、トナーの種類に応じた現像バイアスを記憶しているため、画像形成装置100は、トナーカートリッジ2が交換されても、適切な現像バイアスを印加することができる。
【0059】
<4.トナーカートリッジの寿命補正について>
また、画像形成装置100は、押圧部材1Bの押圧力値によって、トナーカートリッジ2の寿命を補正する処理を行う。
【0060】
図7は、押圧力値に応じて、トナーカートリッジ2の寿命を補正しつつ、ドットカウント値の更新を行う処理のフローチャートである。プロセッサ31は、1回の印刷処理を行う毎に、
図7の処理を実行する。
【0061】
印刷処理が行われると、まず、プロセッサ31は、ステップS2でドラムメモリ111から読み取ったドラム情報に含まれる押圧力値を取得する(ステップS31)。次に、プロセッサ31は、押圧力値が基準値であるかを判定する(ステップS32)。基準値は、予め設定された値である。なお、ステップS32では、押圧力値が基準値と完全一致でなく、誤差を含む範囲内であれば、押圧力値が基準値であると判定してもよい。
【0062】
プロセッサ31が、押圧力値が基準値であると判定した場合(ステップS32:YES)、プロセッサ31は、トナーカートリッジ2に収容されたトナーによる印刷量を示すドットカウント値を、通常更新する(ステップS33)。ドットカウント値は、印刷処理で形成される画像のドット数である。ドットカウント値は、画像が形成される毎に累積カウントされる。ドットカウントがある閾値を超えると、トナー残量が低下したと判断される。つまり、ドットカウント値は、トナーカートリッジ2の寿命を示す寿命値の一例である。ステップS33における通常更新では、画像形成に使用された分のドットをカウントする。
【0063】
プロセッサ31が、押圧力値が基準値でないと判定した場合(ステップS32:NO)、プロセッサ31は、ドットカウント値を不規則更新する(ステップS34)。ステップS32において、押圧力値が基準値でない場合には、押圧力値が基準値を超える場合、または、押圧力値が基準値を下回る場合を含む。
【0064】
不規則更新とは、押圧力値に応じて、トナーカートリッジ2の寿命を補正する処理である。具体的には、押圧力値が基準値を超える場合、感光体ドラム12と現像ローラ22との接触圧は強い。この場合、現像ローラ22の寿命は短くなる可能性がある。このため、プロセッサ31は、通常更新の場合よりも加算値を大きくして、ドットカウント値を増やす。つまり、ドットカウント値が閾値を超えるタイミングが早くなり、トナーカートリッジ2の寿命を短くする方向へ補正する。
【0065】
また、押圧力値が基準値を下回る場合、感光体ドラム12と現像ローラ22との接触圧は弱い。この場合、現像ローラ22の寿命は長くなる可能性がある。このため、プロセッサ31は、通常更新の場合よりも加算値を小さくして、ドットカウント値を増やす。つまり、ドットカウント値が閾値を超えるタイミングが遅くなり、トナーカートリッジ2の寿命を長くする方向へ補正する。
【0066】
次に、プロセッサ31は、更新したドットカウント値をトナーメモリ21へ書き込む(ステップS35)。続いて、プロセッサ31は、ドットカウント値が基準値を超えたかを判定する(ステップS36)。プロセッサ31が、ドットカウント値が基準値を超えたと判定した場合(ステップS36:YES)、プロセッサ31は、寿命を報知する(ステップS37)。報知する内容は、適宜変更可能である。例えば、プロセッサ31は、トナーカートリッジ2の残りの寿命を報知してもよい。また、プロセッサ31は、トナーカートリッジ2が寿命に到達したことを報知してもよい。そして、プロセッサ31は本処理を終了する。ドットカウント値が基準値を超えていない場合(ステップS36:NO)、プロセッサ31は、本処理を終了する。このように、押圧部材1Bの押圧力値に応じて、トナーカートリッジ2の寿命を補正することができる。
【0067】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0068】
上記の実施形態では、現像バイアスと供給バイアスとの電位差を調整するために、現像バイアスのみを変更しているが、供給バイアスも変更するようにしてもよい。
【0069】
また、上記の実施形態では、ドラムメモリ111に、押圧力値に対応する現像バイアスを記憶しているが、押圧力値のみを記憶するようにしてもよい。例えば、本体メモリ32に、基準値となる押圧力値と、それに対応する現像バイアスとを記憶する。プロセッサ31は、ドラムメモリ111から押圧力値を取得すると、取得した押圧力値と、基準値となる押圧力値との比率を算出する。そして、プロセッサ31は、基準となる現像バイアスに、算出した比率をかけた現像バイアスを、現像ローラ22に印加するようにしてもよい。
【0070】
その他、上記の実施形態または変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 :ドラムカートリッジ
1A :スロット
1B :押圧部材
2 :トナーカートリッジ
3 :本体基板
11 :ドラム基板
12 :感光体ドラム
21 :トナーメモリ
22 :現像ローラ
23 :収容部
31 :プロセッサ
32 :本体メモリ
100 :画像形成装置
101 :本体ケーシング
101A :カバー
102 :本体電極
103 :端子
104 :本体電極
111 :ドラムメモリ
121 :ドラム電極
221 :現像電極