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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】コーンパウダーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20221012BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20221012BHJP
   A23L 3/48 20060101ALI20221012BHJP
   A23L 23/10 20160101ALI20221012BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L29/219
A23L3/48
A23L23/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018093071
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019198243
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】本多 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】和賀 彩文
(72)【発明者】
【氏名】丁野 杏奈
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-019783(JP,A)
【文献】特開2002-153224(JP,A)
【文献】特開2011-103807(JP,A)
【文献】香川芳子,七訂食品成分表2016資料編,初版第1刷,女子栄養大学出版部,2016年,pp.339,341
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B,A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-アミラーゼ処理されたコーンペーストと、ハイアミロース澱粉とを配合後、ドラムドライヤ乾燥に供することを含む、コーンパウダーの製造方法であって、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストの固形分1重量部あたり、アミロース量が0.09~1.06重量部となり、且つ、アミロペクチン量が0~0.21重量部となるように、ハイアミロース澱粉を配合することを特徴とする、製造方法
【請求項2】
ハイアミロース澱粉が、ハイアミロースコーンスターチおよびプルラナーゼ処理澱粉のいずれかまたは両方である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
α-アミラーゼ処理されたコーンペーストおよびハイアミロース澱粉を含む、ドラムドライヤ乾燥食品組成物であって、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストの固形分1重量部あたり、アミロース量が0.09~1.06重量部となり、且つ、アミロペクチン量が0~0.21重量部となるように、ハイアミロース澱粉が配合されることを特徴とする、ドラムドライヤ乾燥食品組成物
【請求項4】
ハイアミロース澱粉が、ハイアミロースコーンスターチおよびプルラナーゼ処理澱粉のいずれかまたは両方である、請求項記載のドラムドライヤ乾燥食品組成物。
【請求項5】
コーンパウダーである、請求項3又は4記載のドラムドライヤ乾燥食品組成物。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項記載のドラムドライヤ乾燥食品組成物を含む、飲食品。
【請求項7】
アミロース含量が80%以上のハイアミロース澱粉を含む、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストのドラムドライヤ乾燥適性および水分散性のいずれかまたは両方を改善するための食品添加剤であって、該添加剤が、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストの固形分1重量部あたり、アミロース量が0.09~1.06重量部となり、且つ、アミロペクチン量が0~0.21重量部となるように、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストに添加されることを特徴とする、食品添加剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーンパウダーの製造方法に関し、詳細には、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストに、ハイアミロース澱粉を賦形剤として配合し、これをドラムドライヤ乾燥に供することを含む、コーンパウダーの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末スープ類などに代表される飲食品の粉末化は、長期間の保存が可能となり、また輸送が容易となる等の利点があることから、今日、様々な食品に適用されている。
【0003】
飲食品の乾燥方法としては、スプレードライ法、減圧乾燥法、凍結乾燥法、ドラムドライヤ法などが一般的に用いられている。とりわけ、ドラムドライヤ法は、風味の劣化を抑制しつつ食材の乾燥が可能であり、加えて、比較的低コストで実施できる点において、好ましい乾燥方法の一つであることが知られている。
【0004】
しかし、ドラムドライヤ法を用いて乾燥できる食材には制限がある。例えば、比較的低分子量の糖を豊富に含有する食材は、加熱により該糖分がドラム上に焦げつき良好なシート形成を妨げるため、生産性が大きく低下するか、または、乾燥そのものが困難となり得る。また、水分含有量が高い食材もドラムを非常に低速で回転させる必要が生じ、生産性が大きく低下するか、または、乾燥そのものが困難となるため、このような特性を有する食材のドラムドライヤ法の適用は、工業的には現実的ではない。かかる状況を改善するため、食材のドラムドライヤ法による乾燥適性(以下、本明細書において「ドラムドライヤ乾燥適性」または「DD適性」などと称することがある)を改善する方法等も検討されている(特許文献1)。
【0005】
また、粉末スープ類は、喫食時に粉末スープを熱水に分散させる必要があるため、良好な水分散性を有していることが重要であり、該課題を解決するための方法としては、コーンペーストをα-アミラーゼで処理することを特徴とする方法が報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-111965号公報
【文献】特許第5909885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した通り、ドラムドライヤ乾燥適性や水分散性に関する課題の解決手段についてはこれまでにも報告があるものの、これらの課題をより高いレベルで一挙に解決できる手段の開発が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストに、高いアミロース含量を有する澱粉(本明細書において、「ハイアミロース澱粉」とも称することがある)を賦形剤として配合することにより、非常に高いドラムドライヤ乾燥適性を該コーンペーストに付与することができ、さらに、これを原料として調製されたコーンパウダーが、非常に良好な水分散性を有することを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]α-アミラーゼ処理されたコーンペーストと、ハイアミロース澱粉とを配合後、ドラムドライヤ乾燥に供することを含む、コーンパウダーの製造方法。
[2]α-アミラーゼ処理されたコーンペーストの固形分1重量部あたり、アミロース量が0.09~1.06重量部となり、且つ、アミロペクチン量が0~0.21重量部となるように、ハイアミロース澱粉を配合することを特徴とする、[1]記載の製造方法。
[3]ハイアミロース澱粉が、ハイアミロースコーンスターチおよびプルラナーゼ処理澱粉のいずれかまたは両方である、[1]または[2]記載の製造方法。
[4]α-アミラーゼ処理されたコーンペーストおよびハイアミロース澱粉を含む、食品組成物。
[5]α-アミラーゼ処理されたコーンペーストの固形分1重量部あたり、アミロース量が0.09~1.06重量部となり、且つ、アミロペクチン量が0~0.21重量部となるように、ハイアミロース澱粉が配合されることを特徴とする、[4]記載の食品組成物。
[6]ハイアミロース澱粉が、ハイアミロースコーンスターチおよびプルラナーゼ処理澱粉のいずれかまたは両方である、[4]または[5]記載の食品組成物。
[7]ドラムドライヤ乾燥食品である、[4]~[6]のいずれかの食品組成物。
[8]コーンパウダーである、[7]記載の食品組成物。
[9][4]~[8]のいずれかの食品組成物を含む、飲食品。
[10]アミロース含量が80%以上のハイアミロース澱粉を含む、食品原料のドラムドライヤ乾燥適性および水分散性のいずれかまたは両方を改善するための食品添加剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ドラムドライヤ法を用いて、非常に良好な水分散性を有するコーンパウダーを調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、各製造条件において得られたコーンパウダーの水分散性およびドラムドライヤ乾燥時に調製されるシートの形状を示す図である。
図2図2は、各製造条件において得られたコーンパウダーの水分散性およびドラムドライヤ乾燥時に調製されるシートの形状を示す図である。
図3図3は、各製造条件において得られたコーンパウダーの水分散性およびドラムドライヤ乾燥時に調製されるシートの形状を示す図である。
図4図4は、各製造条件において得られたコーンパウダーの水分散性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、特に明示しない場合、本明細書において「%」は「重量%」を意味する。
【0013】
1.コーンパウダーの製造方法
本発明は、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストと、ハイアミロース澱粉を配合後、ドラムドライヤ乾燥に供することを含む、コーンパウダーの製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称することがある)を提供する。
【0014】
本発明の製造方法に用いられるコーンペーストは、トウモロコシを脱粒処理に供して得たホールコーンに、必要に応じて、水分(例えば、水または牛乳など)を適宜添加し、公知の粉砕機(例えば、石臼式摩砕機、剪断式粉砕機、または微粉砕機など)を用いて粉砕処理することで調製できる。得られたコーンペーストは、必要に応じて、裏濾し等の処理を加えてもよい。
【0015】
本発明のコーンペーストの製造方法に用いられるトウモロコシの品種には制限はなく、スイートコーン、ワキシーコーン、ソフトコーンなどのいずれの品種であってもよいが、スイートコーンが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法において用いられるα-アミラーゼは、澱粉やグリコーゲンなどのα-1,4グルコシド結合を切断する酵素である。α-アミラーゼは自体公知の方法により調製することが可能であるほか、市販されているものを用いることもできる。
【0017】
本明細書において、α-アミラーゼの活性は、至適条件下で毎分1マイクロモル(μmol)の基質量を変化させる量を1ユニット(1U)と定義する。α-アミラーゼの酵素活性は、自体公知の方法により測定することができる。例えば、α-AMYLASE ASSAY KIT(MEGAZYME社)などの市販のアッセイキットを用いることにより、これを簡便に測定可能である。
【0018】
α-アミラーゼによるコーンペーストの処理条件としては、コーンペーストのα-アミラーゼ処理物の固形分1重量部あたりのアミロペクチン量が、0~0.21重量部とし得る条件であれば、いかなる処理条件であってもよい。一例としては、コーンペースト1gあたり、α-アミラーゼを10~30ユニット配合し、撹拌しながら、55~75℃(好ましくは60~70℃、より好ましくは62~67℃)で、30~120分間(好ましくは45~90分間、より好ましくは50~70分間)加熱保持する条件が挙げられるがこれらに限定されない。アミラーゼ処理が終了した後に、α-アミラーゼで酵素処理されたコーンペーストを一例として90℃以上まで加熱してα-アミラーゼを失活させる工程を加えることで、ハイアミロース澱粉の有効な添加が可能となる。なお、α-アミラーゼにより処理したコーンペースト中のアミロース量およびアミロペクチン量は、「アミロース/アミロペクチン測定キット(日本バイオコン株式会社)」などの市販のアッセイキットを用いることにより、容易に測定することができる。
【0019】
上記のようにして得られたα-アミラーゼ処理されたコーンペーストと、賦形剤として、ハイアミロース澱粉とを配合する。
【0020】
本発明の製造方法において用いられるハイアミロース澱粉としては、市販されているハイアミロースコーンスターチ(アミロース:アミロペクチン=80%:20%)を用いることができる。また、品種改良等によって、さらに高いアミロース含量を有するハイアミロースコーンスターチなどが製造された場合には、当然にこれらを使用することもでき、従って本明細書におけるハイアミロースコーンスターチにはこれらの品種改良品も含まれる。或いは、アミロース含量が比較的低い澱粉をプルラナーゼ等の公知の澱粉枝切り酵素により処理することで、アミロース含量を高めたものをハイアミロース澱粉として使用してもよい。かかるアミロース含量が比較的低い澱粉としては、例えば、うるち米澱粉(アミロース:アミロペクチン=15~25%:75~85%)、もち米澱粉(アミロース:アミロペクチン=0%:100%)、小麦澱粉(アミロース:アミロペクチン=21~27%:73~89%)、馬鈴薯澱粉(アミロース:アミロペクチン=20~22%:78~80%)、トウモロコシ澱粉(アミロース:アミロペクチン=21%:79%)、甘藷澱粉(アミロース:アミロペクチン=15~25%:75~85%)、タピオカ澱粉(アミロース:アミロペクチン=15%:85%)などが挙げられるがこれらに限定されない。一態様において、ハイアミロースコーンスターチを澱粉枝切り酵素による処理に供して、さらにアミロース含量を高めたものを用いることもできる。
【0021】
本発明の製造方法に用いられるハイアミロースコーンスターチをはじめとするハイアミロース澱粉は、DD適性の面からは湿熱処理および/または架橋処理されていないものが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法に用いられるハイアミロース澱粉のアミロース含量としては、通常50%以上で有れば所望の効果を充分に得られるが、好ましくは、60%以上、70%以上、または80%以上であり、更に好ましくは、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%であってもよい。
【0023】
本発明の製造方法において用いられるハイアミロース澱粉の配合量は、所望の効果が得られる限り特に限定されないが、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストの固形分1重量部に対して、通常、アミロース量が0.09~1.06重量部、且つアミロペクチン量が、0~0.21重量部となるように配合され、好ましくは、アミロース量が0.09~1.06重量部、且つアミロペクチン量が、0~0.18重量部となるように配合され、より好ましくは、アミロース量が0.09~1.06重量部、且つアミロペクチン量が、0~0.14重量部となるように配合され、さらに好ましくは、アミロース量が0.09~1.06重量部、且つアミロペクチン量が、0~0.11重量部となるように配合され、なお好ましくは、アミロース量が0.09~1.06重量部、且つアミロペクチン量が、0~0.07重量部となるように配合され、なおさらに好ましくは、アミロース量が0.09~0.85重量部、且つアミロペクチン量が、0~0.07重量部となるように配合され、特に好ましくは、アミロース量が0.09~0.07重量部、且つアミロペクチン量が、0~0.06重量部となるように配合される。なお、アミラーゼ処理後のコーンペースト中にアミロースおよび/またはアミロペクチンが一部残存する場合は、当該残存するアミロースおよび/またはアミロペクチン量と、賦形剤として添加するハイアミロース澱粉中のアミロースおよび/またはアミロペクチン量の総和が上記したアミロース量およびアミロペクチン量の範囲に含まれるように、ハイアミロース澱粉の配合量を調節すればよい。
【0024】
なお、所望の効果が得られる限り、ハイアミロース澱粉の配合に加えて、呈味の調整や加工適性等の観点から他の成分を添加/配合してもよい。かかる成分としては例えばグルタミン酸、ロイシンなどのアミノ酸、グルコース、マルトース等の糖類、および相性が良く好ましい風味を付与させるバター類、もしくはコーン特有の香気を補強する香味油類などの油脂や香料、さらには食感としての好ましい粘性付与や製造時の加工適性付与等のためのデキストリン等の賦形剤類などが挙げられるが、これらに限定されない。α-アミラーゼ処理されたコーンペーストならびにハイアミロース澱粉および/またはその他の添加物を良く混合し、ドラムドライヤ乾燥に供する。
【0025】
本発明の製造方法において用いられるドラムドライヤの種類は、所望の効果を得られる限り、特に限定されない。例えば、常圧式または真空式のいずれの方式のドラムドライヤも本発明の製造方法において使用することができる。また、ドラムの本数についても制限はなく、例えば、シングルドラム型、ダブルドラム型のいずれでもよい。
【0026】
本発明の製造方法において、ドラム表面の温度は、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、通常、100~180℃、好ましくは120~160℃、より好ましくは130~150℃、特に好ましくは135~145℃である。また、ドラムドライヤによる乾燥時間は、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、通常、2~240秒、好ましくは3~120秒、より好ましくは4~60秒、特に好ましくは5~30秒である。なお、このような乾燥時間は、例えば、ドラムサイズが直径1m、ペースト塗布範囲が円周の75%である場合、それぞれ、22.5~0.2rpm、15.0~0.4rpm、11.3~0.8rpm、9.0~1.5rpmと設定することで達成し得る。
【0027】
ドラムドライヤ処理に供されたコーンペースト処理物は、シート状の乾燥物となる。このシートをカッターミルやピンミル等の公知の粉砕機を用いて粉砕し、次いで篩に通すことによりコーンパウダーを得ることができる。
【0028】
2.食品組成物
本発明はまた、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストおよびハイアミロース澱粉を含む、食品組成物(以下、「本発明の食品組成物」と称することがある)を提供する。
【0029】
本発明の食品組成物に用いられるα-アミラーゼ処理されたコーンペースト、ハイアミロース澱粉、それらの配合比率、およびその他含まれ得る成分等は、「1.コーンパウダーの製造方法」で説明したものと同様である。
【0030】
一態様において、本発明の食品組成物は、ドラムドライヤ乾燥を経た乾燥食品であってよい。換言すれば、本発明の食品組成物には、本発明の製造方法において製造されるコーンパウダーのドラムドライヤ乾燥前の中間体組成物、ならびに、ドラムドライヤ乾燥後のシート、およびシート粉砕後のコーンパウダーを含み得る。
【0031】
3.飲食品
本発明はまた、本発明の食品組成物を含む、飲食品(以下、「本発明の飲食品」と称することがある)を提供する。
【0032】
本発明の飲食品は、既存の飲食品に、本発明の食品組成物を配合することにより調製することができる。本発明の食品組成物の配合量は、消費者の嗜好等を考慮して適宜設定すればよい。配合する本発明の食品組成物としては、ドラムドライヤ乾燥後のシートを粉砕したコーンパウダーが好ましい。本発明の飲食品の一例として、例えば、既存の粉末コーンスープのコーンパウダーの一部を、本発明のコーンパウダーに置き換えることにより、既存の粉末コーンスープの水分散性を高めた粉末コーンスープ等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0033】
4.食品添加剤
これまでは本発明の一側面としてコーンパウダーの製造を強調して説明してきたが、その作用メカニズムに基づけば、アミロース含量が非常に高い澱粉は、食品原料のドラムドライヤ乾燥適性および/または水分散性の維持/向上の用途にも応用可能であると考えられる。従って、一態様において、本発明は、アミロース含量が80%以上のハイアミロース澱粉を含む、食品原料のドラムドライヤ乾燥適性および水分散性のいずれかまたは両方を改善するための食品添加剤(以下、「本発明の剤」と称することがある)も提供する。
【0034】
本発明の剤に含まれるアミロース含量が80%以上のハイアミロース澱粉は、「1.コーンパウダーの製造方法」において説明した方法により調製することができる。本発明の剤に含まれるハイアミロース澱粉のアミロース含量は、80%以上で有ればよく、例えば、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%であってよい。また、ハイアミロース澱粉は、湿熱処理および/または架橋処理されていないものがより好ましい。
【0035】
本発明の剤に含まれるアミロース含量が80%以上のハイアミロース澱粉の配合量は、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、通常、剤全体の重量に対して50~100重量%、好ましくは60~100重量%、より好ましくは70~100重量%、さらに好ましくは80~100重量%、特に好ましくは90~100重量%である。
【0036】
本発明の剤は、ハイアミロース澱粉以外の成分を含んでもよい。かかる成分としては、例えば、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、甘味料、香料、調味料、および栄養強化成分等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の剤を、ドラムドライヤ乾燥適性の低い食品原料(中間加工物(例えば、α-アミラーゼ処理されたコーンペースト等)を含む)に配合することで、当該食品原料のドラムドライヤ乾燥適性を改善することができる。さらに、本発明の剤を配合してドラムドライヤ乾燥された乾燥食品は、水または熱水に対する分散性が維持または改善される。本発明の剤が適用され得る食品原料としては、食品原料中の低分子量の糖類が豊富に含まれているために、または、食品原料中の水分量が多い(すなわち、固形分が少ない)ために、ドラムドライヤ乾燥適性が低い食品原料が含まれる。かかる食品原料としては、例えば、果実類、野菜類、またはこれらの加工品(例えば、α-アミラーゼ処理されたコーンペースト等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の剤のドラムドライヤ乾燥適性の低い食品原料への配合量は、本発明の所望の効果が得られる限り特に制限されず、食品原料中の低分子量の糖の含有量や水分量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0039】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例
【0040】
[実施例1]ドラムドライヤ乾燥適性および水分散性の検討
1.コーンペーストの調製
カッターで脱粒したコーンの粒を摩砕機にてペースト化させた後、熱交換器によって90℃まで加熱し、コーンペーストを得た。
【0041】
2.α-アミラーゼ処理
上述のようにして得られたコーンペーストに対して、コーンペースト100gあたり1935ユニットのアミラーゼを添加し、70℃で60分間酵素処理を行い、ヨウ素澱粉反応を呈さなくなったコーンペーストを調製した。酵素処理後にコーンペーストを加熱し、α-アミラーゼは失活させた。
【0042】
3.賦形剤の添加およびドラムドライヤ乾燥処理
上述した処理により得られたα-アミラーゼ処理されたコーンペーストに対して、様々な添加量において、(1)ハイアミロースコーンスターチ(アミロース含量80%、アミロペクチン含量20%、(株)J-オイルミルズ)(試験区3~試験区11)、または(2)ハイアミロースコーンスターチをプルラナーゼ処理して得られた100%アミロース(試験区12~試験区20)を添加して、ドラムドライヤ乾燥に供した。コントロールとして、α-アミラーゼ処理されていないコーンペースト(賦形剤は無添加)(試験区1)、α-アミラーゼ処理されたコーンペースト(賦形剤は無添加)(試験区2)を設定した。なお、使用したドラムドライヤの条件は次の通りである。ドラム型:0.5mダブルドラム型。ドラム表面温度:140℃。ドラムクリアランス:0.35mm。ドラム回転数:2.4rpm。ドラムドライヤ乾燥処理により得られたシートを、ミルサーIFM800(岩谷産業(株))を用いて粉末化し、コーンパウダーを得た。
【0043】
4.ドラムドライヤ乾燥適性の評価
ドラムドライヤ乾燥適性は、ドラムドライヤ乾燥を経て調製されるシートの形状を目視で確認することにより行った。評価基準は、以下の通りとした。
[評価基準]
◎:非常に良質なシートが形成され、ドラムドライヤ乾燥適性が非常に高い
○:良質なシート形成がされ、ドラムドライヤ乾燥適性が高い
△:シートの形成は可能であり、ドラムドライヤ乾燥適性がある
×:シートが形成されず、ドラムドライヤ乾燥適性は低い
【0044】
5.水分散性の評価
水分散性は、次の方法により評価した。測定する粉末180gを良く混合させ、この粉末18gを1回分の評価量とする。この1回分に対し85℃の熱水を150ml注ぎ10秒間静置後、5秒間スプーンで撹拌した後、1.7mmメッシュアップを通過させ、メッシュアップ上にある溶け残り量を測定する。同様の施行を10回行い(n=10)、その平均値を算出する。水分散性の評価基準は、平均溶け残り量(g)を用いて、以下の基準で評価した。
[水分散性の評価基準]
◎:平均溶け残り量が0g~1.0g未満であり、水分散性が非常に良好
○:平均溶け残り量が1.0g~2.0g未満であり、水分散性が良好
△:平均溶け残り量が2.0g~4.0g未満であり、水分散性がやや悪い
×:平均溶け残り量が4.0g以上であり、水分散性が非常に悪い
【0045】
6.結果
結果を以下の表1~3、および図1~4に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表1~3、および図1~4に示される通り、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストに対して賦形剤を添加しない場合(試験区2)、α-アミラーゼ処理の効果により水分散性は良好ではあるものの、ドラムドライヤ乾燥適性が悪かった。一方で、α-アミラーゼ処理されたコーンペーストに対して、ハイアミロースコーンスターチ(試験区3~11)または100%アミロース(試験区12~20)を添加した場合、ドラムドライヤ乾燥適性が顕著に改善されるとともに、得られたコーンパウダーは良好な水分散性を有していた。
【0050】
[比較例1]
実施例の結果から、水分散性の低下が賦形剤中のアミロペクチンに起因することが示唆された。これを検証する目的で、ワキシーコーンスターチ(アミロース:アミロペクチン=0%:100%)を賦形剤として用いて、上記実施例と同様の試験を行い、その効果を確認した。結果を以下の表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
表4に示される通り、ワキシーコーンスターチを賦形剤とした場合は、ワキシーコーンスターチの添加量が比較的少ない条件(2%)においても水分散性の低下が確認され、添加量を増やした条件(5%)では、水分散性の顕著な低下が確認された。従って、コーンパウダーの水分散性低下の原因は、アミロペクチンであることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、非常に良好な水分散性を有するコーンパウダーをはじめとする乾燥食品を、ドラムドライヤ法を用いて効率よく生産することができるため、食品製造分野において極めて有用である。
図1
図2
図3
図4