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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】演算装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20221012BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20221012BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20221012BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20221012BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D6/00
B62D101:00
B62D119:00
B62D113:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018095440
(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公開番号】P2019199197
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小池 進
(72)【発明者】
【氏名】足立 丈英
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-231588(JP,A)
【文献】特開2016-222018(JP,A)
【文献】特開平11-314573(JP,A)
【文献】特開2016-191702(JP,A)
【文献】特開2016-005918(JP,A)
【文献】特開2015-179070(JP,A)
【文献】特開2015-113742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 - 6/10
B62D 5/00 - 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転舵輪の転舵角に換算可能な回転軸に連結されるモータの回転角を相対角で検出する回転角センサからの検出信号に基づいて、前記回転軸の回転状態を示す回転情報を演算する主回路と、
前記主回路の異常を検出する異常検出回路と、
前記異常検出回路を診断するBIST回路とを備え
前記主回路は、車両の始動スイッチのオフ時には、前記回転角センサから前記検出信号を間欠的に取得して前記回転情報を演算し、
前記異常検出回路は、前記始動スイッチのオフ時には、前記主回路の演算時に該主回路の異常を検出するものであり、
前記BIST回路は、前記始動スイッチのオフ時には、前記主回路が前記回転情報を演算していないときに、前記異常検出回路を診断する演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記BIST回路は、前記始動スイッチをオンした後、前記主回路から出力される前記回転情報に基づいて絶対角で示される前記回転軸の回転角を演算する舵角演算装置に供給される制御電圧が安定するまでのイニシャル期間に、前記異常検出回路を診断する演算装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の演算装置であって、
前記主回路は、電源電圧に基づいて他の回路に供給する制御電圧を生成する電源回路を含み、
前記異常検出回路は、前記制御電圧が予め設定された所定電圧範囲内にあるか否かに基づいて異常を検出する電圧異常検出回路を含み、
前記BIST回路は、前記所定電圧範囲を規定する上下限値を変更した場合に前記電圧異常検出回路により異常が検出されるか否かに基づいて、該電圧異常検出回路を診断する電源BIST回路を含む演算装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の演算装置であって、
前記主回路は、
前記回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記モータの回転範囲を複数分割した象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出する回転方向検出回路と、
前記回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出する演算冗長回路とを含み、
前記異常検出回路は、前記回転方向検出回路により検出された回転方向と前記演算冗長回路により検出された回転方向との比較に基づいて異常を検出する演算回転方向比較回路を含み、
前記BIST回路は、前記演算回転方向比較回路に対して回転方向を示すテスト信号を送信した場合に、前記演算回転方向比較回路により異常が検出されるか否かに基づいて、該演算回転方向比較回路を診断する演算BIST回路を含む演算装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の演算装置であって、
前記主回路は、
前記回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記モータの回転範囲を複数分割した象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出する回転方向検出回路と、
前記回転角センサとは別に設けられた前記モータの回転角を相対角で検出する冗長回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出するセンサ冗長回路とを含み、
前記異常検出回路は、前記回転方向検出回路により検出された回転方向と前記センサ冗長回路により検出された回転方向との比較に基づいて異常を検出するセンサ回転方向比較回路を含み、
前記BIST回路は、前記センサ回転方向比較回路に対して回転方向を示すテスト信号を送信した場合に、前記センサ回転方向比較回路により異常が検出されるか否かに基づいて、該センサ回転方向比較回路を診断するセンサBIST回路を含む演算装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の演算装置であって、
前記主回路は、
前記回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記モータの回転範囲を複数分割した象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出する回転方向検出回路と、
前記モータの回転方向に基づいて該モータの回転数を示す前記回転情報としてのカウント値を計数するカウンタと、
前記カウンタから出力されたカウント値の前回値を出力する前回値出力回路とを含み、
前記異常検出回路は、前記回転方向を考慮した前記カウント値と前記前回値との比較に基づいて異常を検出するカウンタ比較回路を含み、
前記BIST回路は、前記カウンタ比較回路に対して前記回転方向及び前記カウント値を示すテスト信号を送信した場合に、前記カウンタ比較回路により異常が検出されるか否かに基づいて、該カウンタ比較回路を診断するカウンタBIST回路を含む演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角を検出するための回転情報を演算する演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを駆動源として操舵を補助するためのアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)等の操舵装置には、ステアリングホイールの操舵角を360°を超える範囲を含む絶対角で検出する回転角検出装置を備えたものがある。こうした回転角検出装置としては、360°の範囲内の相対角で検出されるモータの回転角と、例えばステアリング中立位置からの該モータの回転数とに基づいて操舵角を検出するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の回転角検出装置では、モータの回転角を検出する回転角センサからの検出信号に基づいて、モータの回転角がその回転範囲を4分割した象限(第1~第4象限)のいずれに位置するかを検出し、該回転角の象限の遷移に基づいてモータの回転方向を検出するとともにモータの回転数を示すカウント値を計数する演算装置を備えている。そして、舵角演算装置(マイコン)は、演算装置から出力されるモータの回転角及びカウント値に基づいて絶対角で示される操舵角を検出する。
【0004】
また、同文献の回転角検出装置では、例えば最新の演算周期でのカウント値とその前回値との差が回転方向に応じた値となっているか否か等に基づいて、演算装置を構成する各回路に異常が発生しているか否かを検出する異常検出回路を備えている。これにより、異常が発生した状態で誤って演算された回転情報に基づいて操舵角を検出することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-5918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、回転角検出装置においては、より一層の高い信頼性が要求されるようになっている。しかし、上記従来の構成では、異常検出回路に何らかの異常が発生した場合には、演算装置の演算する回転情報が異常であってもそのことを検出できず、正確な操舵角を検出できないおそれがあった。
【0007】
なお、このような問題は、操舵角を検出する場合に限らず、例えばステアバイワイヤ式の操舵装置において、転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータの駆動源となるモータの回転角に基づいて転舵輪の転舵角に換算可能な回転軸の回転角を絶対角で検出する場合にも同様に生じ得る。
【0008】
本発明の目的は、信頼性の高い演算装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する演算装置は、転舵輪の転舵角に換算可能な回転軸に連結されるモータの回転角を相対角で検出する回転角センサからの検出信号に基づいて、前記回転軸の回転状態を示す回転情報を演算する主回路と、前記主回路の異常を検出する異常検出回路と、前記異常検出回路を診断するBIST回路とを備えた。
【0010】
上記構成によれば、BIST回路によって異常検出回路に異常が生じたことを検出できる。そのため、主回路の演算する回転情報が異常である場合に、そのことが異常検出回路によって検出されずに出力されることを抑制できる。これにより、主回路から出力される回転情報の信頼性を向上させることができる。
【0011】
上記演算装置において、前記BIST回路は、車両の始動スイッチをオンした後、前記主回路から出力される前記回転情報に基づいて絶対角で示される前記回転軸の回転角を演算する舵角演算装置に供給される制御電圧が安定するまでのイニシャル期間に、前記異常検出回路を診断することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、舵角演算装置に安定して制御電圧が供給される前、すなわち舵角演算装置が演算処理を開始する前に、BIST回路によって異常検出回路の診断が行われるため、BIST回路による診断が舵角演算装置の演算処理に影響を与えることを抑制できる。
【0013】
上記演算装置において、前記主回路は、車両の始動スイッチのオフ時には、前記回転角センサから前記検出信号を間欠的に取得して前記回転情報を演算し、前記異常検出回路は、前記始動スイッチのオフ時には、前記主回路の演算時に該主回路の異常を検出するものであって、前記BIST回路は、前記始動スイッチのオフ時には、前記主回路が前記回転情報を演算していないときに、前記異常検出回路を診断することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、主回路及び異常検出回路が回転角センサにより検出される検出信号に基づいて回転情報を演算する処理をしていないときに、BIST回路によって異常検出回路の診断が行われるため、BIST回路による診断が回転情報の演算に影響を与えることを抑制できる。
【0015】
上記演算装置において、前記主回路は、電源電圧に基づいて他の回路に供給する制御電圧を生成する電源回路を含み、前記異常検出回路は、前記制御電圧が予め設定された所定電圧範囲内にあるか否かに基づいて異常を検出する電圧異常検出回路を含み、前記BIST回路は、前記所定電圧範囲を規定する上下限値を変更した場合に前記電圧異常検出回路により異常が検出されるか否かに基づいて、該電圧異常検出回路を診断する電源BIST回路を含むことが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、電源回路の異常を検出する電圧異常検出回路が電源BIST回路により診断されるため、正常な制御電圧が供給されていない状態で主回路が演算した回転情報が出力されることを抑制できる。
【0017】
上記演算装置において、前記主回路は、前記回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記モータの回転範囲を複数分割した象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出する回転方向検出回路と、前記回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出する演算冗長回路とを含み、前記異常検出回路は、前記回転方向検出回路により検出された回転方向と前記演算冗長回路により検出された回転方向との比較に基づいて異常を検出する演算回転方向比較回路を含み、前記BIST回路は、前記演算回転方向比較回路に対して回転方向を示すテスト信号を送信した場合に、前記演算回転方向比較回路により異常が検出されるか否かに基づいて、該演算回転方向比較回路を診断する演算BIST回路を含むことが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、回転方向検出回路及び演算冗長回路が回転角センサからの検出信号に基づいてそれぞれ回転方向を検出し、演算回転方向比較回路がこれら回転方向を比較することで回転方向検出回路の異常検出を行う。そして、この演算回転方向比較回路が演算BIST回路により診断されるため、異常な演算によって検出された回転方向が出力されることを抑制できる。
【0019】
上記演算装置において、前記主回路は、前記回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記モータの回転範囲を複数分割した象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出する回転方向検出回路と、前記回転角センサとは別に設けられた前記モータの回転角を相対角で検出する冗長回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出するセンサ冗長回路とを含み、前記異常検出回路は、前記回転方向検出回路により検出された回転方向と前記センサ冗長回路により検出された回転方向との比較に基づいて異常を検出するセンサ回転方向比較回路を含み、前記BIST回路は、前記センサ回転方向比較回路に対して回転方向を示すテスト信号を送信した場合に、前記センサ回転方向比較回路により異常が検出されるか否かに基づいて、該センサ回転方向比較回路を診断するセンサBIST回路を含むことが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、回転方向検出回路及びセンサ冗長回路が異なる回転角センサからの検出信号に基づいて回転方向をそれぞれ検出し、センサ回転方向比較回路がこれら回転方向を比較することで検出信号の異常検出を行う。そして、このセンサ回転方向比較回路がセンサBIST回路により診断されるため、異常な検出信号に基づいて検出された回転方向が出力されることを抑制できる。
【0021】
上記演算装置において、前記主回路は、前記回転角センサからの検出信号に基づいて前記回転角が前記モータの回転範囲を複数分割した象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の前記象限の遷移に基づいて前記モータの回転方向を検出する回転方向検出回路と、前記モータの回転方向に基づいて該モータの回転数を示す前記回転情報としてのカウント値を計数するカウンタと、前記カウンタから出力されたカウント値の前回値を出力する前回値出力回路とを含み、前記異常検出回路は、前記回転方向を考慮した前記カウント値と前記前回値との比較に基づいて異常を検出するカウンタ比較回路を含み、前記BIST回路は、前記カウンタ比較回路に対して前記回転方向及び前記カウント値を示すテスト信号を送信した場合に、前記カウンタ比較回路により異常が検出されるか否かに基づいて、該カウンタ比較回路を診断するカウンタBIST回路を含むことが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、回転方向を考慮しつつカウント値とその前回値との比較に基づいてカウンタの異常を検出するカウンタ比較回路が、カウンタBIST回路により診断される。そのため、異常なカウント値(回転情報)が出力されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、演算装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】電動パワーステアリング装置の概略構成図。
図2】操舵制御装置のブロック図。
図3】始動スイッチのオンオフ状態と、マイコンの制御電圧と、主回路の作動タイミングとの関係を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、演算装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、操舵装置としての電動パワーステアリング装置(EPS)1は、運転者によるステアリングホイール2の操作に基づいて転舵輪3を転舵させる操舵機構4を備えている。また、EPS1は、操舵機構4にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ5と、EPSアクチュエータ5の作動を制御する回転角検出装置としての操舵制御装置6とを備えている。
【0026】
操舵機構4は、ステアリングホイール2が固定されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転に応じて軸方向に往復動するラック軸12と、ラック軸12が往復動可能に挿通される略円筒状のラックハウジング13とを備えている。なお、ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール2側から順にコラム軸14、中間軸15、及びピニオン軸16を連結することにより構成されている。
【0027】
ラック軸12とピニオン軸16とは、ラックハウジング13内に所定の交差角をもって配置されており、ラック軸12に形成されたラック歯12aとピニオン軸16に形成されたピニオン歯16aとが噛合されることでラックアンドピニオン機構17が構成されている。また、ラック軸12の両端には、タイロッド18を介して転舵輪3が組付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、EPS1では、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転がラックアンドピニオン機構17によりラック軸12の軸方向移動に変換され、この軸方向移動がタイロッド18を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪3の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0028】
EPSアクチュエータ5は、駆動源であるモータ21と、モータ21の回転を伝達する伝達機構22と、伝達機構22を介して伝達された回転をラック軸12の往復動に変換する変換機構23とを備えている。そして、EPSアクチュエータ5は、モータ21の回転を伝達機構22を介して変換機構23に伝達し、変換機構23にてラック軸12の往復動に変換することで操舵機構4にアシスト力を付与する。なお、本実施形態のモータ21には、例えば三相のブラシレスモータが採用され、伝達機構22には、例えばベルト機構が採用され、変換機構23には、例えばボールネジ機構が採用されている。
【0029】
操舵制御装置6には、車両の車速SPDを検出する車速センサ31、及び運転者の操舵によりステアリングシャフト11に付与された操舵トルクTを検出するトルクセンサ32が接続されている。また、操舵制御装置6には、モータ21の回転角を360°の範囲内の相対角で検出する回転角センサとしての第1回転角センサ33と、同モータ21の回転角を相対角で検出する冗長回転角センサとしての第2回転角センサ34が接続されている。第1及び第2回転角センサ33,34からは、それぞれsin信号及びcos信号からなる検出信号Sd1,Sd2が出力される。なお、上記のようにモータ21は、伝達機構22及び変換機構23を介してラック軸12に機械的に連結されており、モータ21の回転軸21aの回転角は、転舵輪3の転舵角に換算可能な回転軸であるステアリングシャフト11の操舵角に関連した値となる。また、操舵制御装置6には、車両の駆動源を始動させるための始動スイッチ35(例えばイングニッションキーの操作位置やスタートスイッチ)が接続されており、そのオンオフ状態を示す始動信号Sigが入力される。
【0030】
そして、操舵制御装置6は、これら各センサにより検出される各種状態量に基づいてモータ21に駆動電力を供給することにより、EPSアクチュエータ5の作動を制御する。つまり、操舵制御装置6は、EPSアクチュエータ5の制御を通じてアシスト力を操舵機構4に付与するアシスト制御を実行する。
【0031】
図2に示すように、操舵制御装置6は、演算装置としてのインターフェース群41と、モータ制御信号を出力する舵角演算装置としてのマイコン42と、モータ制御信号に基づいてモータ21に駆動電力を供給する駆動回路43とを備えている。
【0032】
インターフェース群41は、複数の電子回路が単一のチップに集積されることにより構成されている。インターフェース群41は、第1接続線51を介して車両に搭載された車載電源52に常時接続されるとともに、途中に電源リレー53が設けられた第2接続線54を介して車載電源52に接続されている。電源リレー53は、機械式リレーやFET(電界効果型トランジスタ)等からなり、始動信号Sigのオンオフに応じて開閉する。インターフェース群41は、第1接続線51を介して車載電源52に常時接続されるため、インターフェース群41には、始動スイッチ35のオフ時においても電力が供給され、作動可能になっている。また、インターフェース群41には、検出信号Sd1,Sd2が入力される。そして、インターフェース群41は、検出信号Sd1,Sd2に基づいて、後述するようにモータ21(回転軸21a)の回転数を示す回転情報としてのカウント値Nnをマイコン42に出力する。
【0033】
駆動回路43は、電源線55を介して車載電源52に接続されており、電源線55の途中には、機械式リレーやFET(電界効果型トランジスタ)等からなる駆動リレー56が設けられている。したがって、駆動回路43は、駆動リレー56がオン状態となって電源線55が導通することにより、車載電源52の電源電圧に基づく駆動電力の供給が可能となる。
【0034】
マイコン42は、インターフェース群41を介して車載電源52に接続されており、始動信号Sigがオン状態である場合に、インターフェース群41から予め設定された所定電圧範囲内の制御電圧Vcoが供給されることで作動する。マイコン42は、インターフェース群41から制御電圧Vcoが供給され、その作動を開始すると、駆動リレー56にリレー信号Srlを出力し、電源線55を導通させる。したがって、運転者により始動スイッチ35がオン状態となるように操作されると、インターフェース群41から制御電圧Vcoが供給されてマイコン42が作動し、駆動リレー56がオン状態となることで、モータ21に駆動電力が供給可能な状態となる。
【0035】
マイコン42には、検出信号Sd1及びカウント値Nnが入力される。マイコン42は、逆正接関数を用いて検出信号Sd1からモータ21の回転角を相対角で演算する。マイコン42には、モータ21の回転角及びカウント値Nnと操舵角との関係がラックアンドピニオン機構17のギア比、変換機構23のリード及び伝達機構22の減速比によって定まる換算係数に基づいて予め設定されており、演算したモータ21の回転角及びカウント値Nnに基づいて操舵角を360°を超える範囲を含む絶対角で演算する。また、マイコン42には、車速SPD及び操舵トルクTが入力される。そして、マイコン42は、操舵角、車速SPD及び操舵トルクTに基づくモータ制御信号を生成し、駆動回路43に出力する。これにより、各センサにより検出される状態量に応じた駆動電力がモータ21に供給され、その作動が制御される。
【0036】
次に、インターフェース群41の構成について説明する。
インターフェース群41は、検出信号Sd1,Sd2に基づいて、モータ21の回転状態を示す回転情報としてのカウント値Nnを演算する主回路60を備えている。主回路60は、車載電源52の電源電圧を所定電圧範囲内の制御電圧Vcoに降圧する電源回路61を備えている。電源回路61の入力側には、第1及び第2接続線51,54が接続されている。電源回路61の出力側は、マイコン接続線62を介してマイコン42に接続されるとともに、インターフェース群41を構成する各回路に接続されている。なお、図2では、説明の便宜上、電源回路61とインターフェース群41を構成する各回路とを接続する接続線を省略している。そして、電源回路61は、始動スイッチ35のオン時にのみ制御電圧Vcoをマイコン42に供給する一方、始動スイッチ35のオンオフに関係なく制御電圧Vcoをインターフェース群41を構成する各回路に常時供給する。これにより、インターフェース群41を構成する各回路は、始動スイッチ35のオン時だけでなく、オフ時においても作動する。また、本実施形態の主回路60は、始動スイッチ35のオフ時には、所定の間欠周期で間欠的に検出信号Sd1,Sd2を取得してカウント値Nnを演算し、始動スイッチ35のオン時には、検出信号Sd1,Sd2を常時取得して予め設定された所定の演算周期でカウント値Nnを演算する。なお、所定の間欠周期は、モータ21(回転軸21a)の回転角がその回転範囲を4分割した第1~第4象限のいずれに位置するかを検出する場合において、各種の要因により操舵角が変化したとしても、同回転角の象限間の遷移が隣接する象限を飛び越えたものとならない周期に設定されている。
【0037】
また、主回路60は、検出信号Sd1をA/D変換するA/D変換器63と、検出信号Sd2をA/D変換するA/D変換器64とを備えている。また、主回路60は、A/D変換後の検出信号Sd1’に基づいて、モータ21(回転軸21a)の回転角が第1~第4象限のいずれに位置するかを検出し、該回転角の象限の遷移に基づいてモータ21の回転方向を検出する回転方向検出回路65を備えている。また、主回路60は、検出信号Sd1’に基づいてモータ21の回転方向を検出する演算冗長回路66と、検出信号Sd2’に基づいてモータ21の回転方向を検出するセンサ冗長回路67とを備えている。また、主回路60は、モータ21の回転方向に基づいてモータ21の回転数を示すカウント値Nnを計数するカウンタ68と、カウンタ68から出力されたカウント値Nnの前回値Nn-1を出力する前回値出力回路69とを備えている。
【0038】
詳しくは、回転方向検出回路65は、入力される検出信号Sd1’(sin信号及びcos信号)をその信号レベルに応じてHiレベルとLoレベルとに二値化し、sin信号の信号レベルとcos信号の信号レベルとの組み合わせ(全4組)に応じて、モータ21の回転角が第1~第4象限のいずれに位置するかを検出する。そして、最新の演算周期においてモータ21の回転角が位置する象限が、前回の演算周期においてモータ21の回転角が位置した象限から変化した場合、その変化に応じてモータ21が右回転又は左回転していると判定し、モータ21の回転角が位置する象限が変化しない場合は、モータ21が回転してないと判定する。つまり、回転方向検出回路65は、モータ21の回転角の象限の遷移に基づいてその回転方向を検出する。このように検出されたモータ21の回転方向を示す回転方向信号Srdは、カウンタ68に加え、後述する演算回転方向比較回路72、センサ回転方向比較回路73及びカウンタ比較回路74に出力される。
【0039】
演算冗長回路66は、入力される検出信号Sd1’に基づいて、回転方向検出回路65と同様の演算処理を実行することにより、モータ21の回転方向を検出する。このように検出されたモータ21の回転方向を示す演算冗長信号Scpは、演算回転方向比較回路72に出力される。
【0040】
センサ冗長回路67は、入力される検出信号Sd2’に基づいて、回転方向検出回路65と同様の演算処理を実行することにより、モータ21の回転方向を検出する。このように検出されたモータ21の回転方向を示すセンサ冗長信号Sspは、センサ回転方向比較回路73に出力される。
【0041】
カウンタ68は、回転方向信号Srdに基づいて、モータ21の回転数を示すカウント値Nnを演算する。本実施形態のカウンタ68は、車両が直進するステアリング中立位置での回転数をゼロとし、同位置から右方向にモータ21が回転した場合を正、同位置からモータ21が左方向に回転した場合を負としている。なお、モータ21の回転方向とカウント値Nnの符号との関係は逆であってもよい。そして、カウンタ68は、入力される回転方向信号Srdに示されるモータ21の回転方向が右方向である場合には、カウント値Nnをインクリメント(Nn=Nn-1+1)し、モータ21の回転方向が左方向である場合には、カウント値Nnをデクリメント(Nn=Nn-1-1)する。また、カウンタ68は、モータ21が回転していない場合には、カウント値Nnを保持する。このように演算されたカウント値Nnは、前回値出力回路69、カウンタ比較回路74及びマイコン42に出力される。
【0042】
前回値出力回路69は、入力されるカウント値Nnを少なくとも2回の演算周期分だけ保持する。そして、前回値出力回路69は、カウント値Nnが入力される毎にその前回値Nn-1をカウンタ比較回路74に出力する。
【0043】
また、インターフェース群41は、主回路60の異常を検出する異常検出回路70を備えている。異常検出回路70は、電源回路61の異常を検出する電圧異常検出回路71と、回転方向検出回路65の異常を検出する演算回転方向比較回路72と、検出信号Sd1’,Sd2’の異常を検出するセンサ回転方向比較回路73と、カウンタ68の異常を検出するカウンタ比較回路74とを備えている。
【0044】
詳しくは、電圧異常検出回路71は、電源回路61から出力される制御電圧Vcoが所定電圧範囲内にあるか否かに基づいて電源回路61の異常を検出する。具体的には、電圧異常検出回路71は、電源回路61から出力される制御電圧Vcoを検出し、該制御電圧Vcoが所定電圧範囲の上限値Vupよりも大きい、又は所定電圧範囲の下限値Vloよりも小さい場合には、電源回路61に異常が発生した旨の電圧異常フラグ(図示略)をセットする。一方、電圧異常検出回路71は、制御電圧Vcoが上限値Vup以下、かつ下限値Vlo以下である場合には、電圧異常フラグをセットしない。
【0045】
演算回転方向比較回路72は、回転方向信号Srd及び演算冗長信号Scpに基づいて回転方向検出回路65の異常を検出する。具体的には、演算回転方向比較回路72は、回転方向信号Srdに示されるモータ21の回転方向と演算冗長信号Scpに示されるモータ21の回転方向とが異なる場合には、回転方向検出回路65に異常が発生した旨の演算異常フラグ(図示略)をセットする。一方、演算回転方向比較回路72は、回転方向信号Srdに示されるモータ21の回転方向と演算冗長信号Scpに示されるモータ21の回転方向とが一致する場合には、演算異常フラグをセットしない。
【0046】
センサ回転方向比較回路73は、回転方向信号Srd及びセンサ冗長信号Sspに基づいて検出信号Sd1’,Sd2’の異常を検出する。具体的には、センサ回転方向比較回路73は、回転方向信号Srdに示されるモータ21の回転方向とセンサ冗長信号Sspに示されるモータ21の回転方向とが異なる場合には、検出信号Sd1’,Sd2’に異常が発生した旨のセンサ異常フラグ(図示略)をセットする。一方、センサ回転方向比較回路73は、回転方向信号Srdに示されるモータ21の回転方向とセンサ冗長信号Sspに示されるモータ21の回転方向とが一致する場合には、センサ異常フラグをセットしない。
【0047】
カウンタ比較回路74は、回転方向信号Srd、カウント値Nn及び前回値Nn-1に基づいてカウンタ68の異常を検出する。具体的には、カウンタ比較回路74は、カウント値Nnと前回値Nn-1との差が回転方向信号Srdに示されるモータ21の回転方向に即していない場合、例えばモータ21が回転してないのにも関わらずカウント値Nnと前回値Nn-1との差がある場合には、カウンタ68に異常が発生した旨のカウンタ異常フラグ(図示略)をセットする。一方、カウンタ比較回路74は、カウント値Nnと前回値Nn-1との差が回転方向信号Srdに示されるモータ21の回転方向に即している場合には、カウンタ異常フラグをセットしない。
【0048】
なお、上記各異常フラグの少なくとも1つがセットされた場合、マイコン42は、図示しない警告灯等を通じてその旨を報知するとともに、操舵角の演算を停止する。
ここで、上記異常検出回路に異常が発生した場合、主回路60の演算するカウント値Nnが異常であってもそのことを検出できないおそれがある。この点を踏まえ、本実施形態のインターフェース群41は、異常検出回路70を診断するBIST(Built-in Self-test)回路80を備えている。BIST回路80は、電圧異常検出回路71を診断する電源BIST回路81と、演算回転方向比較回路72を診断する演算BIST回路82と、センサ回転方向比較回路73を診断するセンサBIST回路83と、カウンタ比較回路74を診断するカウンタBIST回路84とを備えている。
【0049】
詳しくは、電源BIST回路81は、電圧異常検出回路71の診断時において、上限値Vup及び下限値Vloの少なくとも一方を変更した場合に、電圧異常検出回路71が電圧異常フラグをセットするか否かに基づいて該電圧異常検出回路71の診断を行う。具体的には、電源BIST回路81は、例えば制御電圧Vcoが所定電圧範囲外の値となるようにしたにもかかわらず、電圧異常検出回路71が電圧異常フラグをセットしない場合、電圧異常検出回路71に異常が発生した旨の電源BIST異常フラグ(図示略)をセットする。一方、電源BIST回路81は、例えば制御電圧Vcoが所定電圧範囲外の値となるようにすることで、電圧異常検出回路71が電圧異常フラグをセットした場合には、電源BIST異常フラグをセットしない。
【0050】
演算BIST回路82は、演算回転方向比較回路72の診断時において、モータ21の回転方向を示すテスト信号Scbを送信した場合に、演算回転方向比較回路72が演算異常フラグをセットするか否かに基づいて該演算回転方向比較回路72の診断を行う。具体的には、演算BIST回路82は、例えば回転方向の異なるテスト信号Scbを送信したにもかかわらず、演算回転方向比較回路72が演算異常フラグをセットしない場合、演算回転方向比較回路72に異常が発生した旨の演算BIST異常フラグ(図示略)をセットする。一方、演算BIST回路82は、例えば回転方向の異なるテスト信号Scbを送信した場合に、演算回転方向比較回路72が演算異常フラグをセットした場合には、演算BIST異常フラグをセットしない。
【0051】
センサBIST回路83は、センサ回転方向比較回路73の診断時において、モータ21の回転方向を示すテスト信号Ssbを送信した場合に、センサ回転方向比較回路73がセンサ異常フラグをセットするか否かに基づいて該センサ回転方向比較回路73の診断を行う。具体的には、センサBIST回路83は、例えば回転方向の異なるテスト信号Ssbを送信したにもかかわらず、センサ回転方向比較回路73がセンサ異常フラグをセットしない場合、センサ回転方向比較回路73に異常が発生した旨のセンサBIST異常フラグ(図示略)をセットする。一方、センサBIST回路83は、例えば回転方向の異なるテスト信号Ssbを送信した場合に、センサ回転方向比較回路73がセンサ異常フラグをセットした場合には、センサBIST異常フラグをセットしない。
【0052】
カウンタBIST回路84は、カウンタ比較回路74の診断時において、モータ21の回転方向及びカウント値Nnを示すテスト信号Snbを送信した場合に、カウンタ比較回路74がカウンタ異常フラグをセットするか否かに基づいて該カウンタ比較回路74の診断を行う。具体的には、カウンタBIST回路84は、テスト信号Snbに示されるカウント値Nnと前回値Nn-1との差がモータ21の回転方向に即していないものを送信したにもかかわらず、カウンタ比較回路74がカウンタ異常フラグをセットしない場合、カウンタ比較回路74に異常が発生した旨のカウンタBIST異常フラグ(図示略)をセットする。一方、カウンタBIST回路84は、テスト信号Snbに示されるカウント値Nnと前回値Nn-1との差がモータ21の回転方向に即していないものを送信した場合に、カウンタ比較回路74がカウンタ異常フラグをセットした場合には、カウンタBIST異常フラグをセットしない。
【0053】
なお、上記各BIST異常フラグの少なくとも1つがセットされた場合、マイコン42は、図示しない警告灯等を通じてその旨を報知するとともに、操舵角の演算を停止する。
次に、操舵制御装置6の動作について説明する。
【0054】
図3に示すように、始動スイッチ35のオフ時には、インターフェース群41(電源回路61)からマイコン42に制御電圧Vcoが供給されないことからマイコン42は停止している。このとき、主回路60は所定の間欠周期で間欠的に検出信号Sd1,Sd2を取得してモータ21の回転方向及びカウント値Nnを検出するとともに、異常検出回路70は主回路60の異常検出を行う。これにより、始動スイッチ35のオフ時であっても、例えばステアリングホイール2が操舵されると、インターフェース群41の演算処理によってカウント値Nnが増減する。
【0055】
ここで、時刻t1において始動スイッチ35がオン状態になると、マイコン42へ供給される制御電圧Vcoが上昇し、時刻t2で所定電圧範囲になって安定し、マイコン42での演算処理が開始される。このとき、マイコン42は、インターフェース群41により始動スイッチ35のオフ時にも継続的に増減されたカウント値Nnに基づいて操舵角を検出する。これにより、マイコン42により演算される操舵角には、始動スイッチ35のオフ時に生じた角度変化も含まれたものとなる。
【0056】
主回路60及び異常検出回路70は、マイコン42に供給される制御電圧Vcoが安定するまでのイニシャル期間、すなわち時刻t1から時刻t2までの期間においては、始動スイッチ35のオフ時と同様に間欠的に作動する。また、主回路60は時刻t2以降においては、連続的に検出信号Sd1,Sd2を取得して回転方向及びカウント値Nnを検出するとともに、異常検出回路70は主回路60の異常検出を行う。そして、インターフェース群41では、イニシャル期間であって、主回路60及び異常検出回路70が間欠的な作動を行う直前又は作動を行った直後に、電源BIST回路81、演算BIST回路82、センサBIST回路83、及びカウンタBIST回路84による診断が行われる。
【0057】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)インターフェース群41は、異常検出回路70を診断するBIST回路80を備えたため、BIST回路80によって異常検出回路70に異常が生じたことを検出できる。そのため、主回路60の演算するカウント値Nnが異常である場合に、そのことが異常検出回路70によって検出されずに出力されることを抑制できる。これにより、インターフェース群41(主回路60)から出力されるカウント値Nnの信頼性を向上させることができる。
【0058】
(2)BIST回路80は、始動スイッチ35をオンした後、制御電圧Vcoが安定するまでのイニシャル期間、すなわちマイコン42が操舵角等の演算処理を開始する前に、BIST回路80によって異常検出回路70の診断が行われるため、BIST回路80による診断がマイコン42の演算処理に影響を与えることを抑制できる。
【0059】
(3)BIST回路80は、主回路60及び異常検出回路70が第1及び第2回転角センサ33,34により検出される検出信号Sd1,Sd2に基づいてカウント値Nnを演算する処理をしていないときに、異常検出回路70の診断を行うため、BIST回路80による診断がカウント値Nnの演算や異常検出に影響を与えることを抑制できる。
【0060】
(4)電源回路61の異常を検出する電圧異常検出回路71が、電源BIST回路81により診断されるため、正常な制御電圧が供給されていない状態で演算されたカウント値Nnが出力されることを抑制できる。
【0061】
(5)回転方向信号Srd及び演算冗長信号Scpに基づいて回転方向検出回路65の異常検出を行う演算回転方向比較回路72が演算BIST回路82により診断されるため、異常な演算によって検出された回転方向がカウンタ68に出力されることを抑制できる。
【0062】
(6)回転方向信号Srd及びセンサ冗長信号Sspに基づいて検出信号Sd1’,Sd2’の異常を検出するセンサ回転方向比較回路73が、センサBIST回路83により診断されるため、異常な検出信号Sd1’に基づいて検出された回転方向がカウンタ68に出力されることを抑制できる。
【0063】
(7)回転方向を考慮しつつカウント値Nnとその前回値Nn-1との比較に基づいてカウンタ68の異常を検出するカウンタ比較回路74が、カウンタBIST回路84により診断されるため、異常なカウント値Nnがマイコン42に出力されることを抑制できる。
【0064】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、インターフェース群41がマイコン42による演算処理の開始後に停止するようにしてもよい。なお、この場合、マイコン42は、演算処理の開始時に取得したカウント値Nnに基づく操舵角を、検出信号Sd1に基づいて得られるモータ21の回転角に応じて増減することにより、継続して操舵角を演算することができる。
【0065】
・上記実施形態では、マイコン42に検出信号Sd1が入力されたが、これに限らず、例えばA/D変換後の検出信号Sd1’が入力されるようにしてもよい。つまり、インターフェース群41が、回転情報としてカウント値Nn及び検出信号Sd1’をマイコン42に出力するようにしてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、回転方向検出回路65は、二値化した検出信号Sd1’に基づいてモータ21の回転角が第1~第4象限のいずれに位置するかを検出したが、これに限らず、例えば逆正接関数を用いて検出信号Sd1’からモータ21の回転角を演算し、演算された回転角に基づいて第1~第4象限のいずれに位置するかを検出してもよい。また、この場合に、演算された回転角の変化量(微分値)に基づいてモータ21の回転方向を検出してもよい。なお、演算冗長回路66及びセンサ冗長回路67が同様に他の方法でモータ21の回転方向を検出してもよい。
【0067】
・上記実施形態において、主回路60が少なくとも電源回路61、A/D変換器63、回転方向検出回路65及びカウンタ68を備えていれば、例えば演算冗長回路66等を備えない構成としてもよく、主回路60の構成は適宜変更可能である。
【0068】
・上記実施形態では、異常検出回路70が電圧異常検出回路71、演算回転方向比較回路72、センサ回転方向比較回路73及びカウンタ比較回路74を備えたが、これに限らず、これらの少なくとも1つを備えていれば、他の回路を廃してもよく、異常検出回路70の構成は適宜変更可能である。
【0069】
・上記実施形態では、電源BIST回路81は、上限値Vup及び下限値Vloの少なくとも一方を変更した場合に、電圧異常検出回路71が電圧異常フラグをセットするか否かに基づいて該電圧異常検出回路71の診断を行った。しかし、これに限らず、例えば電圧異常検出回路71に電圧を示すテスト信号を送信した場合に、電圧異常検出回路71が電圧異常フラグをセットするか否かに基づいてその診断を行ってもよい。また、演算BIST回路82、センサBIST回路83、及びカウンタBIST回路84による診断方法は、適宜変更可能である。
【0070】
・上記実施形態では、BIST回路80が電源BIST回路81、演算BIST回路82、センサBIST回路83、及びカウンタBIST回路84を備えたが、これに限らず、これらの少なくとも1つを備えていれば、他の回路を廃してもよく、BIST回路80の構成は適宜変更可能である。
【0071】
・上記実施形態において、インターフェース群41により演算装置を構成したが、これに限らず、例えば専用のハードウェアからなるASIC(Application Specific Integrated Circuit)やプログラムにより同様の処理を行うマイコン等により演算装置を構成してもよい。
【0072】
・上記実施形態では、操舵制御装置6の制御対象となる操舵装置としてEPS1を採用し、マイコン42はステアリングホイール2(ステアリングシャフト11)の操舵角を演算した。しかし、これに限らず、例えばステアバイワイヤ(SBW)方式の操舵装置を採用し、マイコン42が転舵輪3の転舵角に換算可能な回転軸としてのピニオン軸等の回転角を絶対角で演算してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、6…操舵制御装置(回転角検出装置)、21…モータ、21a…回転軸、33…第1回転角センサ(回転角センサ)、34…第2回転角センサ(冗長回転角センサ)、35…始動スイッチ、41…インターフェース群(演算装置)、42…マイコン(舵角演算装置)、60…主回路、61…電源回路、63,64…A/D変換器、65…回転方向検出回路、66…演算冗長回路、67…センサ冗長回路、68…カウンタ、69…前回値出力回路、70…異常検出回路、71…電圧異常検出回路、72…演算回転方向比較回路、73…センサ回転方向比較回路、74…カウンタ比較回路、80…BIST回路、81…電源BIST回路、82…演算BIST回路、83…センサBIST回路、84…カウンタBIST回路、Nn…カウント値、Nn-1…前回値、Scp…演算冗長信号、Scb,Snb,Ssb…テスト信号、Sd1,Sd2…検出信号、Sig…始動信号、Srd…回転方向信号、Ssp…センサ冗長信号、Vco…制御電圧、Vlo…下限値、Vup…上限値。
図1
図2
図3