(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】通信システムの同期方法および通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 84/20 20090101AFI20221012BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20221012BHJP
H04L 12/44 20060101ALI20221012BHJP
H04W 76/10 20180101ALI20221012BHJP
【FI】
H04W84/20
H04W84/10 110
H04L12/44 103
H04W76/10
(21)【出願番号】P 2018107623
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 裕一
【審査官】篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心機器と複数の周辺機器とを有し、セントラルとペリフェラルのうちいずれかのロールに基づいて、前記中心機器と複数の前記周辺機器との間で無線通信を行う通信システムに適用される通信システムの同期方法であって、
前記中心機器をペリフェラル、複数の前記周辺機器をセントラルとして立ち上げる第1ステップと、
前記中心機器から複数の前記周辺機器にアドバタイズパケットを送信する第2ステップと、
複数の前記周辺機器のうち前記アドバタイズパケットを受信した周辺機器を、セントラルからペリフェラルに変更する第3ステップと、
前記周辺機器に固有の数値に基づいて、前記アドバタイズパケットを受信した時間から固有時間ずらして、前記周辺機器から前記中心機器にアドバタイズパケットの送信を開始する第4ステップと、
複数の前記周辺機器の全ての前記固有時間よりも長い所定時間が経過した後に、前記中心機器をペリフェラルからセントラルに変更する第5ステップと、を有する通信システムの同期方法。
【請求項2】
前記第5ステップの後に、前記中心機器が複数の前記周辺機器からのアドバタイズパケットを受信する第6ステップと、
前記アドバタイズパケットを送信する前記周辺機器の台数が予め決められた規定台数以上となったか否かを判定する第7ステップと、
前記周辺機器の台数が前記規定台数に到達していない場合には、前記中心機器をセントラルからペリフェラルに変更し、前記第2ステップないし前記第7ステップを繰り返す第8ステップと、を有する請求項1に記載の通信システムの同期方法。
【請求項3】
中心機器と同期機器と複数の周辺機器とを有し、セントラルとペリフェラルのうちいずれかのロールに基づいて、前記中心機器と複数の前記周辺機器との間で無線通信を行う通信システムに適用される通信システムの同期方法であって、
前記中心機器および複数の前記周辺機器をセントラル、前記同期機器をペリフェラルとして立ち上げる第1ステップと、
前記同期機器から複数の前記周辺機器にアドバタイズパケットを送信する第2ステップと、
複数の前記周辺機器のうち前記アドバタイズパケットを受信した周辺機器を、セントラルからペリフェラルに変更する第3ステップと、
前記周辺機器に固有の数値に基づいて、前記アドバタイズパケットを受信した時間から固有時間ずらして、前記周辺機器から前記中心機器にアドバタイズパケットの送信を開始する第4ステップと、を有する通信システムの同期方法。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の通信システムの同期方法を実行する通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心機器と周辺機器との間で無線通信を行う通信システムの同期方法および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近距離での無線通信を行う機器が存在する(例えば、特許文献1)。例えば、Bluetooth(登録商標)規格による通信では、中心機器がセントラル(マスタ)となり周辺機器がペリフェラル(スレーブ)となって1つのネットワークを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたネットワークでは、中心機器と周辺機器とを接続する場合には、ペリフェラルとなった周辺機器から送信したアドバタイズパケットを、セントラルとなった中心機器が受信することによって、中心機器と周辺機器との間で接続を確立する。この場合、例えば多数の周辺機器と中心機器とを接続する場合に、アドバタイズパケットが重複する傾向があり、これらの接続に長時間を要するという問題がある。また、特許文献1には、例えば携帯無線装置の電池の残量が少ない場合に、電力消費の多いマスタから少ないスレーブに転換させる構成が開示されている。しかしながら、特許文献1には、アドバタイズパケットの重複を回避する方法については、開示されていない。
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、中心機器と周辺機器とを短時間で接続することが可能な通信システムの同期方法および通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、中心機器と複数の周辺機器とを有し、セントラルとペリフェラルのうちいずれかのロールに基づいて、前記中心機器と複数の前記周辺機器との間で無線通信を行う通信システムに適用される通信システムの同期方法であって、前記中心機器をペリフェラル、複数の前記周辺機器をセントラルとして立ち上げる第1ステップと、前記中心機器から複数の前記周辺機器にアドバタイズパケットを送信する第2ステップと、複数の前記周辺機器のうち前記アドバタイズパケットを受信した周辺機器を、セントラルからペリフェラルに変更する第3ステップと、前記周辺機器に固有の数値に基づいて、前記アドバタイズパケットを受信した時間から固有時間ずらして、前記周辺機器から前記中心機器にアドバタイズパケットの送信を開始する第4ステップと、複数の前記周辺機器の全ての前記固有時間よりも長い所定時間が経過した後に、前記中心機器をペリフェラルからセントラルに変更する第5ステップと、を有している。
【0007】
また、他の発明は、中心機器と同期機器と複数の周辺機器とを有し、セントラルとペリフェラルのうちいずれかのロールに基づいて、前記中心機器と複数の前記周辺機器との間で無線通信を行う通信システムに適用される通信システムの同期方法であって、前記中心機器および複数の前記周辺機器をセントラル、前記同期機器をペリフェラルとして立ち上げる第1ステップと、前記同期機器から複数の前記周辺機器にアドバタイズパケットを送信する第2ステップと、複数の前記周辺機器のうち前記アドバタイズパケットを受信した周辺機器を、セントラルからペリフェラルに変更する第3ステップと、前記周辺機器に固有の数値に基づいて、前記アドバタイズパケットを受信した時間から固有時間ずらして、前記周辺機器から前記中心機器にアドバタイズパケットの送信を開始する第4ステップと、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アドバタイズパケットの重複を回避して、中心機器と周辺機器とを短時間で接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1,第2の実施の形態による通信システムを示す説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態による通信システムの同期処理を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第1の実施の形態による通信システムが同期を完了するまでの一例を示すタイムチャートである。
【
図4】本発明の第2の実施の形態による通信システムの同期処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2の実施の形態による通信システムが同期を完了するまでの一例を示すタイムチャートである。
【
図6】本発明の第3の実施の形態による通信システムを示す説明図である。
【
図7】本発明の第3の実施の形態による通信システムの同期処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第3の実施の形態による通信システムが同期を完了するまでの一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態による通信システムを、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態の通信システムは、例えば、Bluetooth Low Energy(Bluetooth 4.0以降。以下、「BLE」と略する)規格に基づく通信を行うものとする。BLE規格は、クラシックBluetooth(登録商標)(Ver.1.x-3.x)よりも消費電力が低くなるように設計された通信規格である。BLEでは、クラシックBluetoothと同様に、単一のマスタに対して複数のスレーブが接続可能なスター型のネットワークトポロジーが採用されている。
【0011】
図1に、第1の実施の形態による通信システム1を示す。ここでは、説明を簡略化するために、1台の中心機器2に3台の周辺機器3A~3Cを接続する場合について説明する。周辺機器の台数は、3台に限らず、2台でもよく、4台以上でもよい。
【0012】
通信システム1は、中心機器2と複数の周辺機器3A~3Cとを有し、セントラル(「マスタ」とも言う)とペリフェラル(「スレーブ」とも言う)のうちいずれかのロールに基づいて、中心機器2と複数の周辺機器3A~3Cとの間で無線通信を行う。通信可能な範囲には中心機器2と、周辺機器3A~3Cとが存在し、これらの機器によってネットワークが形成される。BLEでは、通信可能な範囲は、例えば数m以上数百m以下である。
【0013】
中心機器2は、BLEネットワークにおけるセントラルとして機能する。周辺機器3A~3Cは、ペリフェラルとして機能する。中心機器2は、複数の周辺機器3A~3Cと接続を確立することが可能である。通信システム1は、
図2に示す同期処理を実行する。
【0014】
ここで、BLE規格では、2.4GHz帯の電波が用いられる。具体的には、40のチャネルを用いて通信が行われる。40のチャネルのうち、3つのチャネル37~39はアドバタイジングチャネルであり、その他のチャネル0~36は、データチャネルである。アドバタイジングチャネルは、機器の発見や接続のために用いられたり、または、自機の存在を他の機器に知らせるために用いられるチャネルである。データチャネルは、接続状態(接続された状態)において用いられるチャネルであり、接続状態にある2つの機器間でデータの送受信を行うために用いられる。
【0015】
図2は、中心機器2と周辺機器3A~3Cが非接続状態であって、接続状態になる前に、周辺機器3A~3Cを同期させる同期処理のフローチャートを示している。
【0016】
まず、ステップS1(第1ステップ)では、中心機器2をペリフェラル、複数の周辺機器3A~3Cをセントラルとして立ち上げる。
【0017】
ステップS2(第2ステップ)では、中心機器2から複数の周辺機器3A~3CにアドバタイズパケットAPを送信する。このとき、アドバタイズパケットAPは、アドバタイズインターバルとして、例えば0.02秒以上30秒以下の範囲で予め決められた一定の時間間隔T0(周期)で、繰り返し送信される。なお、アドバタイズパケットAPは、チャネル37,38,39の順序で、前回とは異なるチャネルに変更された状態で送信される。
【0018】
ステップS3(第3ステップ)では、周辺機器3A~3CがアドバタイズパケットAPを受信したときに、周辺機器3A~3Cをそれぞれセントラルからペリフェラルに変更する。
【0019】
ステップS4(第4ステップ)では、周辺機器3A~3Cに固有の数値に基づいて、アドバタイズパケットAPを受信した時間から固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcずらして、周辺機器3A~3Cから中心機器2にアドバタイズパケットAPの送信を開始する。固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcは、周辺機器3A~3Cに固有の数値として、例えばBLEデバイスアドレス、固有ID、シリアル番号等のような数値に基づいて、決定されている。このため、固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcは、互いに異なる値になっている。また、固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcは、アドバタイズパケットAPが周期的に送信される時間間隔T0よりも短い時間となっている。
【0020】
ステップS5(第5ステップ)では、固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcよりも長い所定時間T1が経過した後に、中心機器2をペリフェラルからセントラルに変更し、同期処理を終了する。これにより、中心機器2は、全ての周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信することができる。このため、セントラルとなった中心機器2は、周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信する。中心機器2は、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A~3Cに対して接続処理を実行する。
【0021】
図3は、中心機器2と周辺機器3A~3Cが接続されていない状態(非接続状態)で、周辺機器3A~3Cが同期を完了するまでのタイムチャートの一例を示している。
【0022】
時刻t11で、中心機器2はペリフェラル、複数の周辺機器3A~3Cはセントラルとしてそれぞれ立ち上がる。
【0023】
時刻t12で、中心機器2は、複数の周辺機器3A~3Cに向けてアドバタイズパケットAPの送信を開始する。このとき、アドバタイズパケットAPは、一定の時間間隔T0で繰り返し送信される。
【0024】
時刻t12で、周辺機器3A,3BがアドバタイズパケットAPを受信する。これにより、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A,3Bは、セントラルからペリフェラルに切り替わる。一方、時刻t12では、周辺機器3CはアドバタイズパケットAPを受信していない。このため、周辺機器3Cは、セントラルの状態を継続する。
【0025】
ペリフェラルとなった周辺機器2Aは、時刻t12から固有時間ΔTaが経過すると、アドバタイズパケットAPを送信する。ペリフェラルとなった周辺機器2Bは、時刻t13から固有時間ΔTbが経過すると、アドバタイズパケットAPを送信する。
【0026】
時刻t12から時間間隔T0が経過した時刻t13で、中心機器2は、次なるアドバタイズパケットAPを送信する。このとき、周辺機器3Cは、中心機器2からのアドバタイズパケットAPを受信する。これにより、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3Cは、セントラルからペリフェラルに切り替わる。
【0027】
ペリフェラルとなった周辺機器3Cは、時刻t13から固有時間ΔTcが経過すると、アドバタイズパケットAPを送信する。このとき、中心機器2がアドバタイズパケットAPを送信する時間間隔T0は、周辺機器3A~3CがアドバタイズパケットAPを送信する時間間隔T0と一致している。これに対し、固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcは、互いに異なる値になっている。このため、周辺機器3A~3CがアドバタイズパケットAPを送信するタイミングは、互いに異なっている。
【0028】
時刻t14になったときに、時刻t11から所定時間T1が経過する。このとき、所定時間T1は、予め決められた一定の時間であり、例えば固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcよりも長い時間であって、時間間隔T0よりも長い時間に設定されている。時刻t14で、中心機器2は、ペリフェラルからセントラルに切り替わる。セントラルとなった中心機器2は、複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信する。中心機器2は、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A~3Cに対して接続処理を実行する。中心機器2と周辺機器3A~3Cとの間で接続が確立されると、両者の間でデータの授受が可能となる。
【0029】
このとき、複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPは、送信するタイミングが互いにずれている。即ち、これらのアドバタイズパケットAPは、互いに重複することがない。このため、中心機器2は、複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信できる可能性が高くなり、速やかに中心機器2と周辺機器3A~3Cとの接続処理に移行することができる。この結果、中心機器2と周辺機器3A~3Cとの接続を迅速に行うことができる。
【0030】
かくして、本実施の形態による通信システムの同期方法は、中心機器2をペリフェラル、複数の周辺機器3A~3Cをセントラルとして立ち上げる第1ステップ(ステップS1)と、中心機器2から複数の周辺機器3A~3CにアドバタイズパケットAPを送信する第2ステップ(ステップS2)と、複数の周辺機器3A~3CのうちアドバタイズパケットAPを受信した周辺機器を、セントラルからペリフェラルに変更する第3ステップ(ステップS3)と、周辺機器3A~3Cに固有の数値に基づいて、アドバタイズパケットAPを受信した時間から固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcずらして、周辺機器3A~3Cから中心機器2にアドバタイズパケットAPの送信を開始する第4ステップ(ステップS4)と、固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcよりも長い所定時間T1が経過した後に、中心機器2をペリフェラルからセントラルに変更する第5ステップ(ステップS5)と、を有している。
【0031】
これにより、セントラルとなった中心機器2は、複数の周辺機器3A~3Cから互いにタイミングの異なるアドバタイズパケットAPを受信することができる。このため、複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPの重複を回避して、中心機器2と周辺機器3A~3Cとを短時間で接続することができる。
【0032】
次に、
図1、
図4および
図5を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態の特徴は、セントラルとなった中心機器が複数の周辺機器からのアドバタイズパケットを受信し、周辺機器の台数が規定台数に到達していない場合には、中心機器をセントラルからペリフェラルに変更し、再度複数の周辺機器の同期を取ることにある。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図1に示すように、第2の実施の形態による通信システム11は、第1の実施の形態による通信システム1とほぼ同様に構成されている。このため、通信システム11は、中心機器2と複数の周辺機器3A~3Cとを有し、セントラルとペリフェラルのうちいずれかのロールに基づいて、中心機器2と複数の周辺機器3A~3Cとの間で無線通信を行う。但し、通信システム11は、
図4に示す同期処理を実行する。この点で、第1の実施の形態による通信システム1とは異なる。
【0034】
図4は、第2の実施の形態による同期処理のフローチャートを示している。このとき、ステップS1~S5は、第1の実施の形態による同期処理と同様である。
【0035】
ステップS5の後にステップS6が実行される。ステップS6では、セントラルとなった中心機器2は、ペリフェラルとなった周辺機器3A~3CからアドバタイズパケットAPを受信する。
【0036】
ステップS7では、中心機器2は、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A~3Cの台数Nが予め決められた規定台数N0以上か否かを判定する。周辺機器3A~3Cの台数Nが規定台数N0以上である場合(N≧N0)には、ステップS7で「YES」と判定し、同期処理を終了する。規定台数N0を全ての周辺機器3A~3Cの台数(例えば3台)に設定した場合、中心機器2は、全ての周辺機器3A~3Cから、アドバタイズパケットAPを受信することができる。このため、セントラルとなった中心機器2は、複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信する。中心機器2は、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A~3Cに対して接続処理を実行する。
【0037】
一方、周辺機器3A~3Cの台数Nが規定台数N0未満である場合(N<N0)には、ステップS7で「NO」と判定し、ステップS8に移行する。ステップS8では、中心機器2をセントラルからペリフェラルに再度変更する。その後、周辺機器3A~3Cの台数Nが規定台数N0以上になるまで、ステップS2~S7の処理を繰り返す。
【0038】
図5は、中心機器2と周辺機器3A~3Cが接続されていない状態(非接続状態)で、周辺機器3A~3Cの同期が完了するまでのタイムチャートの一例を示している。なお、
図5は、規定台数N0は3台に設定された場合を示している。
【0039】
時刻t21で、中心機器2はペリフェラル、複数の周辺機器3A~3Cはセントラルとしてそれぞれ立ち上がる。
【0040】
時刻t22で、中心機器2は、複数の周辺機器3A~3Cに向けてアドバタイズパケットAPの送信を開始する。このとき、アドバタイズパケットAPは、一定の時間間隔T0で繰り返し送信される。
【0041】
時刻t22で、周辺機器3A,3BがアドバタイズパケットAPを受信する。これにより、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A,3Bは、セントラルからペリフェラルに切り替わる。一方、時刻t22では、周辺機器3CはアドバタイズパケットAPを受信していない。このため、周辺機器3Cは、セントラルの状態を継続する。
【0042】
ペリフェラルとなった周辺機器2Aは、時刻t22から固有時間ΔTaが経過すると、アドバタイズパケットAPを送信する。ペリフェラルとなった周辺機器2Bは、時刻t22から固有時間ΔTbが経過すると、アドバタイズパケットAPを送信する。
【0043】
時刻t22から時間間隔T0が経過した時刻t23で、中心機器2は、次なるアドバタイズパケットAPを送信する。しかしながら、時刻t23でも、周辺機器3CはアドバタイズパケットAPを受信していない。このため、周辺機器3Cは、セントラルの状態を継続する。
【0044】
時刻t24になったときに、時刻t21から所定時間T1が経過する。このため、時刻t24で、中心機器2は、ペリフェラルからセントラルに切り替わる。セントラルとなった中心機器2は、周辺機器3A,3BからのアドバタイズパケットAPを受信する。このとき、中心機器2は、アドバタイズパケットAPを送信する周辺機器の台数Nが規定台数N0以上であるか否かを判定する。時刻t24では、周辺機器3A,3Bはペリフェラルに変更済みであるが、周辺機器3Cはセントラルに維持されている。このため、アドバタイズパケットAPを送信する周辺機器の台数Nは2台であり、規定台数N0である3台未満である。従って、時刻t25で、中心機器2は、セントラルからペリフェラルに再度変更される。
【0045】
時刻t26で、中心機器2は、複数の周辺機器3A~3Cに向けてアドバタイズパケットAPの送信を再開する。このとき、アドバタイズパケットAPは、一定の時間間隔T0で繰り返し送信される。
【0046】
時刻t26で、周辺機器3Cが中心機器2からのアドバタイズパケットAPを受信する。これにより、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3Cは、セントラルからペリフェラルに切り替わる。
【0047】
ペリフェラルとなった周辺機器3Cは、時刻t26から固有時間ΔTcが経過すると、アドバタイズパケットAPを送信する。このとき、固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcは、互いに異なる値になっている。このため、周辺機器3A~3CがアドバタイズパケットAPを送信するタイミングは、互いに異なっている。
【0048】
時刻t27になったときに、時刻t25から所定時間T1が経過する。このため、時刻t27で、中心機器2は、ペリフェラルからセントラルに切り替わる。セントラルとなった中心機器2は、複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信する。
【0049】
このとき、中心機器2は、アドバタイズパケットAPを送信する周辺機器の台数Nが規定台数N0以上であるか否かを判定する。時刻t27では、周辺機器3A~3Cはいずれもペリフェラルに変更済みである。このため、アドバタイズパケットAPを送信する周辺機器の台数Nは3台であり、規定台数N0である3台以上である。
【0050】
そこで、中心機器2は、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A~3Cに対して接続処理を実行する。中心機器2と周辺機器3A~3Cとの間で接続が確立されると、両者の間でデータの授受が可能となる。
【0051】
かくして、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施の形態による通信システムの同期方法は、第5ステップ(ステップS5)の後に、中心機器2が複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信する第6ステップ(ステップS6)と、アドバタイズパケットAPを送信する周辺機器の台数Nが予め決められた規定台数N0以上となったか否かを判定する第7ステップ(ステップS7)と、周辺機器の台数Nが規定台数N0に到達していない場合には、中心機器2をセントラルからペリフェラルに変更し、第2ステップ(ステップS2)ないし第7ステップ(ステップS7)を繰り返す第8ステップ(ステップS8)と、を有している。
【0052】
これにより、アドバタイズパケットAPを送信する周辺機器の台数Nが予め決められた規定台数N0以上となるまで、複数の周辺機器3A~3Cを同期させる処理を継続することができる。このため、セントラルとなった中心機器2は、規定台数N0以上の周辺機器3A~3Cから互いにタイミングの異なるアドバタイズパケットAPを受信することができる。このため、周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPの重複を回避して、中心機器2と周辺機器3A~3Cとを短時間で接続することができる。
【0053】
次に、
図6ないし
図8を用いて、本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態の特徴は、同期機器を用いて複数の周辺機器の同期を取ることにある。なお、第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図6に、第3の実施の形態による通信システム21を示す。ここでは、説明を簡略化するために、1台の中心機器2に3台の周辺機器3A~3Cを接続する場合について説明する。周辺機器の台数は、3台に限らず、2台でもよく、4台以上でもよい。
【0055】
通信システム21は、中心機器2と複数の周辺機器3A~3Cとを有し、セントラルとペリフェラルのうちいずれかのロールに基づいて、中心機器2と複数の周辺機器3A~3Cとの間で無線通信を行う。通信可能な範囲には中心機器2と、周辺機器3A~3Cとが存在し、これらの機器によってネットワークが形成される。また、周辺機器3A~3Cは、同期機器4と通信可能な範囲に配置されている。
【0056】
中心機器2は、BLEネットワークにおけるセントラルとして機能する。周辺機器3A~3Cは、ペリフェラルとして機能する。同期機器4は、周辺機器3A~3Cの同期を取るものであり、ペリフェラルとして機能する。中心機器2は、複数の周辺機器3A~3Cと接続を確立することが可能である。通信システム21は、
図7に示す同期処理を実行する。
【0057】
図7は、中心機器2と周辺機器3A~3Cが非接続状態であって、接続状態になる前に、周辺機器3A~3Cを同期させる同期処理のフローチャートを示している。
【0058】
まず、ステップS11(第1ステップ)では、中心機器2および複数の周辺機器3A~3Cをセントラル、同期機器4をペリフェラルとして立ち上げる。
【0059】
ステップS12(第2ステップ)では、同期機器4から複数の周辺機器3A~3CにアドバタイズパケットAPを送信する。このとき、アドバタイズパケットAPは、予め決められた一定の時間間隔T0で、繰り返し送信される。なお、アドバタイズパケットAPは、チャネル37,38,39の順序で、毎回異なるチャネルに変更された状態で送信される。
【0060】
ステップS13(第3ステップ)では、複数の周辺機器3A~3CがアドバタイズパケットAPを受信したときに、複数の周辺機器3A~3Cをそれぞれセントラルからペリフェラルに変更する。
【0061】
ステップS14(第4ステップ)では、複数の周辺機器3A~3Cに固有の数値に基づいて、アドバタイズパケットAPを受信した時間から固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcずらして、周辺機器3A~3Cから中心機器2にアドバタイズパケットAPの送信を開始する。固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcは、周辺機器3A~3Cに固有の数値として、例えばBLEデバイスアドレス、固有ID、シリアル番号等のような数値に基づいて、決定されている。このため、固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcは、互いに異なる値になっている。また、固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcは、アドバタイズパケットAPが周期的に送信される時間間隔T0よりも短い時間となっている。
【0062】
ステップS14によって、複数の周辺機器3A~3CがアドバタイズパケットAPの送信を開始すると、同期処理を終了する。このとき、中心機器2は、全ての周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信することができる。このため、セントラルとなった中心機器2は、複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信する。中心機器2は、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A~3Cに対して接続処理を実行する。
【0063】
図8は、中心機器2と周辺機器3A~3Cが接続されていない状態(非接続状態)で、周辺機器3A~3Cが同期を完了するまでのタイムチャートの一例を示している。
【0064】
時刻t31で、中心機器2および複数の周辺機器3A~3Cはセントラル、同期機器4はペリフェラルとしてそれぞれ立ち上がる。
【0065】
時刻t32で、同期機器4は、複数の周辺機器3A~3Cに向けてアドバタイズパケットAPの送信を開始する。このとき、アドバタイズパケットAPは、一定の時間間隔T0で繰り返し送信される。
【0066】
時刻t32で、周辺機器3A,3BがアドバタイズパケットAPを受信する。これにより、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A,3Bは、セントラルからペリフェラルに切り替わる。一方、時刻t32では、周辺機器3CはアドバタイズパケットAPを受信していない。このため、周辺機器3Cは、セントラルの状態を継続する。
【0067】
ペリフェラルとなった周辺機器2Aは、時刻t32から固有時間ΔTaが経過すると、アドバタイズパケットAPを送信する。ペリフェラルとなった周辺機器2Bは、時刻t32から固有時間ΔTbが経過すると、アドバタイズパケットAPを送信する。
【0068】
時刻t32から時間間隔T0が経過した時刻t33で、同期機器4は、次なるアドバタイズパケットAPを送信する。このとき、周辺機器3Cは、中心機器2からのアドバタイズパケットAPを受信する。これにより、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3Cは、セントラルからペリフェラルに切り替わる。
【0069】
ペリフェラルとなった周辺機器3Cは、時刻t33から固有時間ΔTcが経過すると、アドバタイズパケットAPを送信する。このとき、同期機器4がアドバタイズパケットAPを送信する時間間隔T0は、周辺機器3A~3CがアドバタイズパケットAPを送信する時間間隔T0と一致している。これに対し、固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcは、互いに異なる値になっている。このため、周辺機器3A~3CがアドバタイズパケットAPを送信するタイミングは、互いに異なっている。
【0070】
セントラルとなった中心機器2は、複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPを受信する。中心機器2は、アドバタイズパケットAPを受信した周辺機器3A~3Cに対して接続処理を実行する。中心機器2と周辺機器3A~3Cとの間で接続が確立されると、両者の間でデータの授受が可能となる。
【0071】
かくして、第3の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第3の実施の形態による通信システムの同期方法は、中心機器2および複数の周辺機器3A~3Cをセントラル、同期機器4をペリフェラルとして立ち上げる第1ステップ(ステップS11)と、同期機器4から複数の周辺機器3A~3CにアドバタイズパケットAPを送信する第2ステップ(ステップS12)と、複数の周辺機器3A~3CのうちアドバタイズパケットAPを受信した周辺機器をセントラルからペリフェラルに変更する第3ステップ(ステップS13)と、同期機器4に固有の数値に基づいて、アドバタイズパケットAPを受信した時間から固有時間ΔTa,ΔTb,ΔTcずらして、周辺機器3A~3Cから中心機器2にアドバタイズパケットAPの送信を開始する第4ステップ(ステップS14)と、を有している。
【0072】
これにより、セントラルとなった中心機器2は、複数の周辺機器3A~3Cから互いにタイミングの異なるアドバタイズパケットAPを受信することができる。このため、複数の周辺機器3A~3CからのアドバタイズパケットAPの重複を回避して、中心機器2と周辺機器3A~3Cとを短時間で接続することができる。
【0073】
また、第1の実施の形態では、中心機器2に全ての周辺機器3A~3Cを接続する場合には、全ての周辺機器3A~3Cがセントラルからペリフェラルに変更されたことを把握した上で、中心機器2をペリフェラルからセントラルに変更する必要がある。これに対し、第3の実施の形態では、同期機器4によって複数の周辺機器3A~3Cの同期を取るため、中心機器2は常にセントラルに保持することができ、全ての周辺機器3A~3Cがセントラルからペリフェラルに変更されたことを把握する必要がなく、同期処理を簡略化することができる。
【0074】
なお、前記各実施の形態で記載した具体的な数値は、一例を示したものであり、例示した値に限らない。これらの数値は、例えば適用対象の仕様に応じて適宜設定される。
【0075】
次に、上記の実施の形態に含まれる発明について記載する。本発明は、中心機器と複数の周辺機器とを有し、セントラルとペリフェラルのうちいずれかのロールに基づいて、前記中心機器と複数の前記周辺機器との間で無線通信を行う通信システムに適用される通信システムの同期方法であって、前記中心機器をペリフェラル、複数の前記周辺機器をセントラルとして立ち上げる第1ステップと、前記中心機器から複数の前記周辺機器にアドバタイズパケットを送信する第2ステップと、複数の前記周辺機器のうち前記アドバタイズパケットを受信した周辺機器を、セントラルからペリフェラルに変更する第3ステップと、前記周辺機器に固有の数値に基づいて、前記アドバタイズパケットを受信した時間から固有時間ずらして、前記周辺機器から前記中心機器にアドバタイズパケットの送信を開始する第4ステップと、前記固有時間よりも長い所定時間が経過した後に、前記中心機器をペリフェラルからセントラルに変更する第5ステップと、を有している。
【0076】
これにより、セントラルとなった中心機器は、複数の周辺機器から互いにタイミングの異なるアドバタイズパケットを受信することができる。このため、複数の周辺機器からのアドバタイズパケットの重複を回避して、中心機器と周辺機器とを短時間で接続することができる。
【0077】
本発明では、前記第5ステップの後に、前記中心機器が複数の前記周辺機器からのアドバタイズパケットを受信する第6ステップと、前記アドバタイズパケットを送信する前記周辺機器の台数が予め決められた規定台数以上となったか否かを判定する第7ステップと、前記周辺機器の台数が前記規定台数に到達していない場合には、前記中心機器をセントラルからペリフェラルに変更し、前記第2ステップないし前記第7ステップを繰り返す第8ステップと、を有している。
【0078】
これにより、アドバタイズパケットを送信する周辺機器の台数が予め決められた規定台数以上となるまで、複数の周辺機器を同期させる処理を継続することができる。このため、セントラルとなった中心機器は、規定台数以上の周辺機器から互いにタイミングの異なるアドバタイズパケットを受信することができる。このため、複数の周辺機器からのアドバタイズパケットの重複を回避して、中心機器と周辺機器とを短時間で接続することができる。
【0079】
また、本発明は、中心機器と同期機器と複数の周辺機器とを有し、セントラルとペリフェラルのうちいずれかのロールに基づいて、前記中心機器と複数の前記周辺機器との間で無線通信を行う通信システムに適用される通信システムの同期方法であって、前記中心機器および複数の前記周辺機器をセントラル、前記同期機器をペリフェラルとして立ち上げる第1ステップと、前記同期機器から複数の前記周辺機器にアドバタイズパケットを送信する第2ステップと、複数の前記周辺機器のうち前記アドバタイズパケットを受信した周辺機器を、セントラルからペリフェラルに変更する第3ステップと、前記周辺機器に固有の数値に基づいて、前記アドバタイズパケットを受信した時間から固有時間ずらして、前記周辺機器から前記中心機器にアドバタイズパケットの送信を開始する第4ステップと、を有している。
【0080】
これにより、セントラルとなった中心機器は、複数の周辺機器から互いにタイミングの異なるアドバタイズパケットを受信することができる。このため、複数の周辺機器からのアドバタイズパケットの重複を回避して、中心機器と周辺機器とを短時間で接続することができる。
【0081】
また、同期機器によって複数の周辺機器の同期を取るため、中心機器は常にセントラルに保持することができる。このため、全ての周辺機器がセントラルからペリフェラルに変更されたことを把握する必要がなく、同期処理を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0082】
1,11,21 通信システム
2 中心機器
3A~3C 周辺機器
4 同期機器