(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20221012BHJP
A63B 60/48 20150101ALI20221012BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20221012BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B53/04 C
A63B60/48
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2018111314
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【氏名又は名称】住友 教郎
(72)【発明者】
【氏名】大貫 正秀
【審査官】右田 純生
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-525117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0191403(US,A1)
【文献】特開2005-270321(JP,A)
【文献】特開2016-198508(JP,A)
【文献】特開2015-192781(JP,A)
【文献】米国特許第06001030(US,A)
【文献】特表2014-528291(JP,A)
【文献】特開2003-117030(JP,A)
【文献】登録実用新案第3098282(JP,U)
【文献】特開2017-221431(JP,A)
【文献】特開2011-101800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0165252(US,A1)
【文献】米国特許第05718645(US,A)
【文献】英国特許出願公開第2280380(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14
A63B 60/48-60/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体と、
前記ヘッド本体から離れているフェース部と、
前記ヘッド本体と前記フェース部との間に延びる複数の連結部とを有しており、
前記連結部のそれぞれが、フェース垂直方向に対して傾斜して延びる傾斜部を有して
おり、
前記連結部のそれぞれが、前記フェース部に接合されるフェース接合部と、前記ヘッド本体に接合される本体接合部とを有しており、
前記連結部のそれぞれが、前記フェース接合部から前記本体接合部まで連続して延在しており、
前記連結部のそれぞれが、前記フェース垂直方向に平行な単一の直線L1に第1位置及び第2位置を含む2箇所以上で交差し、且つ、
前記連結部のそれぞれが、前記直線L1に沿って、前記第1位置と前記第2位置との間、前記第1位置と前記ヘッド本体との間、及び、前記第2位置と前記フェース部との間に空間が存在するように延在しているゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記傾斜部が、直線に沿って延びる直線傾斜部を有する請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記傾斜部が、円弧に沿って延びる円弧傾斜部を有する請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記傾斜部が、第1傾斜部と、前記第1傾斜部とは逆方向に傾斜する第2傾斜部とを有する請求項1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記連結部のそれぞれが、断面対称性を有している請求項1から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記断面対称性が線対称である請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記断面対称性が点対称である請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記連結部のそれぞれが、前記連結部の重心を通り且つ断面同一性を充足する軸線を有している請求項1から7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記連結部のそれぞれにおいて、前記軸線に沿った前記連結部の長さが、その軸線に沿って測定された前記フェース部の長さの20%以上である請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
反発性能に優れたヘッドとして、フェース部とヘッド本体とを連結する連結部を有するヘッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記連結部の構造により、反発性能の更なる改善が可能であることが判明した。
【0005】
本開示は、反発性能に優れたゴルフクラブヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、ゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体と、前記ヘッド本体から離れているフェース部と、前記ヘッド本体と前記フェース部との間に延びる複数の連結部とを有しており、前記連結部のそれぞれが、フェース垂直方向に対して傾斜して延びる傾斜部を有している。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面として、反発性能に優れたゴルフクラブヘッドが提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態のゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1のヘッドをヒール側から見た側面図である。
【
図8】
図8は、
図1のヘッドの連結部近傍を示す拡大断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態のゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態のゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図16】
図16は、第12のヘッドをヒール側から見た側面図である。
【
図22】
図22は、参考例のゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図24】
図24は、
図22のヘッドからフェース部が除去されたフェース除去ヘッドの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。
【0010】
[用語の定義]
本願では、以下の用語が定義される。
【0011】
[基準状態、基準垂直面]
水平面HPに対して垂直な平面VPが設定される(
図30参照)。シャフト孔の中心軸線z1が上記平面VPに含まれ、且つ規定のライ角及びリアルロフト角で水平面HP上にヘッドが載置された状態が、基準状態と定義される(
図30参照)。上記平面VPは、基準垂直面と定義される。規定のライ角及びリアルロフト角は、例えば、製品のカタログに記載されている。
【0012】
[トウ-ヒール方向]
トウ-ヒール方向とは、上記基準垂直面VPと上記水平面HPとの交線NLの方向である(
図30参照)。
【0013】
[前後方向]
前後方向とは、上記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ上記水平面HPに対して平行な方向である。
【0014】
[上下方向]
上下方向とは、上記水平面HPに対して垂直な方向である。
【0015】
[フェース垂直線]
打撃面(フェース面)の法線が、フェース垂直線である。打撃面が曲面である場合、打撃面上の位置によってフェース垂直線の向きが変化する。
【0016】
[フェース垂直方向]
フェース垂直線の方向が、フェース垂直方向である。打撃面が曲面である場合、フェースセンターにおけるフェース垂直線の方向が、フェース垂直方向と定義される。
【0017】
[フェース投影平面]
フェース投影平面は、フェース垂直方向に対して垂直な平面である。
【0018】
[平面投影像]
上記フェース投影平面への投影像が、平面投影像と定義される。フェース投影平面への投影において、その投影の方向は、上記フェース垂直方向である。
【0019】
[打撃面のx座標及びy座標]
打撃面の平面投影像において、フェースセンターを原点とするxy座標系が定義される。このxy座標系におけるx軸は、フェースセンターを通り、上記フェース投影平面と上記水平面HPとの交線に平行な直線である。このxy座標系におけるy軸は、フェースセンターを通り、前記x軸に垂直な直線である。x座標は、ヒール側がプラスとされ、トウ側がマイナスとされる。y座標は、上側(トップ側)がプラスとされ、下側(ソール側)がマイナスとされる。
【0020】
[フェースセンター]
打撃面の平面投影像の図心が、フェースセンターと定義される。後述の
図6に、フェースセンターfcが示されている。
【0021】
図1は、第1実施形態のゴルフクラブヘッド2の斜視図である。
図2は、ヘッド2を上方から見た平面図である。
図3もヘッド2を上方から見た平面図であるが、
図2とは視点が少し相違する。
図3の視点は、ロフト角がほぼゼロに見えるような視点である。この
図3では、ヘッド本体とフェース部との間がよく見える。
図4は、ヘッド2を下方から見た底面図である。
図5は、ヘッド2をヒール側から見た側面図である。
図6は、ヘッド2を打球面側から見た正面図である。
【0022】
ヘッド2は、ウッド型ヘッドである。ヘッド2は、フェアウェイウッド型のヘッドである。ヘッド2は、ドライバーヘッドであってもよい。ヘッド2は、ユーティリティ型(ハイブリッド型)のヘッドであってもよい。ヘッド2は、アイアン型ヘッドであってもよい。ヘッド2は、パター型ヘッドであってもよい。
【0023】
ヘッド2は、ヘッド本体h1と、フェース部Fp1と、連結部Cn1とを有する。連結部Cn1は、ヘッド本体h1とフェース部Fp1とを連結している。フェース部Fp1は、連結部Cn1のみによって、ヘッド本体h1に連結されている。
【0024】
フェース部Fp1は、板状である。フェース部Fp1の前面は、打撃面f1である。打撃面f1はバルジ及びロールを有する曲面である。フェース部Fp1は、この打撃面f1の形状に沿って曲がっている。
【0025】
なお、打撃面f1には、複数のスコアラインが設けられている。これらスコアラインの図示は省略されている。
【0026】
ヘッド本体h1の内部は、空洞部である。なお、本願において、「空洞部」とは、中空部及び凹み部を含む概念である。空洞部は、閉じられた空間であってもよい。空洞部は、凹み部のような、外部に開放された空間であってもよい。ヘッド2では、ヘッド本体h1の内部は閉じられた空間である。ヘッド本体h1は中空である。
【0027】
ヘッド本体h1は、クラウン4、ソール6及びホーゼル8を有する。ホーゼル8は、ホーゼル孔10を有する。クラウン4の一部は、蓋部材4aによって構成されている。
図2等において、蓋部材4aの輪郭線が、破線で示されている。この蓋部材4aは、ヘッド本体h1に設けられた開口を塞いでいる。蓋部材4aは、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で形成されていてもよい。蓋部材4aの比重は、蓋部材4a以外の部分におけるヘッド本体h1の比重よりも小さくすることができる。なお、ヘッド本体h1及びクラウン4の構造は限定されない。例えば、ヘッド本体h1は、開口を有さなくても良い。クラウン4は、蓋部材4aを有さなくてもよい。クラウン4は、その全体が一体成形されていてもよい。
【0028】
ヘッド本体h1は、前方部Fb1を有する。前方部Fb1は、ヘッド本体h1の前面を構成している。前方部Fb1は、ヘッド本体h1の空洞部の前方に配置されている。前方部Fb1は、この空洞部の前方を閉塞している。前方部Fb1は、フェース部Fp1の後方に位置する。前方部Fb1とフェース部Fp1とは、略平行である。前方部Fb1は、フェース部Fp1から後方に離れている。
【0029】
ヘッド2では、前方部Fb1は、ヘッド本体h1の最も前方に位置している。前方部Fb1は、ヘッド本体h1の最も前方に位置していなくてもよい。例えば、前方部Fb1が、ヘッド本体h1の前縁よりも後方に位置していてもよい。
【0030】
前方部Fb1は、ヘッド本体h1の上部とヘッド本体h1の下部とを繋いでいる。本実施形態において、ヘッド本体h1の上部は、クラウン4である。実施形態において、ヘッド本体h1の下部は、ソール6である。フェース部Fp1は、連結部Cn1のみによって、前方部Fb1に連結されている。
【0031】
連結部Cn1は、フェース部Fp1及び/又は前方部Fb1と一体成形されていてもよい。この一体成形の方法の一例は、ロストワックス鋳造である。連結部Cn1は、フェース部Fp1に接合されていてもよい。連結部Cn1は、前方部Fb1に接合されていてもよい。強度の観点から、好ましい接合方法は、溶接である。
【0032】
フェース部Fp1は、打撃面f1と、フェース裏面f2とを有する。打撃面f1は、打球面である。フェース裏面f2は、前方部Fb1の前面b1に対向している。
【0033】
フェース部Fp1と前方部Fb1との間に、前後方向における距離が存在する。フェース部Fp1と前方部Fb1との間に、隙間g1が設けられている(
図3参照)。
【0034】
打撃面f1は、曲面である。打撃面f1は、外側(前側)に向かって凸の三次元曲面である。一般的なウッド型ヘッドと同様に、打撃面f1は、バルジ及びロールを有する。
【0035】
フェース裏面f2は、凹曲面である。フェース部Fp1の厚みは一定である。フェース裏面f2は、例えば平面であってもよい。
【0036】
連結部Cn1は、フェース裏面f2と前面b1とを連結している。連結部Cn1が存在する部分を除き、フェース裏面f2と前面b1との間は、空間である。
【0037】
【0038】
ヘッド2では、3つの連結部Cn1が設けられている。連結部Cn1の数は、1であってもよいし、2以上であってもよい。フェース部Fp1を安定的に支持する観点から、連結部Cn1の数は2以上が好ましく、3以上がより好ましい。特に、ヘッド本体h1とフェース部Fp1とが連結部Cn1のみで連結されている場合、複数の連結部Cn1は、フェース部Fp1の安定的な支持に寄与する。連結部Cn1の数が過大であると、構造が複雑となり、製造コストが増大する。この観点から、連結部Cn1の数は、10以下が好ましく、8以がより好ましく、6以下がより好ましい。
【0039】
複数(3つ)の連結部Cn1は、等間隔で配置されている。複数(3つ)の連結部Cn1は、異なる間隔で配置されていてもよい。
【0040】
ヘッド2は、最もトウ側に位置する連結部Cn11と、最もヒール側に位置する連結部Cn12とを有する。更に、ヘッド2は、連結部Cn11と連結部Cn12との間に位置する連結部Cn13を有する。互いに隣り合う連結部Cn1同士の間の隙間は、上下方向に貫通している。互いに隣り合う連結部Cn1同士の間の隙間は、クラウン側からソール側まで貫通している。
【0041】
各連結部Cn1の中心線は、打撃面f1に対して略平行である。各連結部Cn1の中心線は、同じ方向に配向している。連結部Cn1の中心線の向きは、限定されない。連結部Cn1の中心線は、連結部Cn1の軸線Z(後述)である。
【0042】
図8は、一つの連結部Cn1及びその近傍の断面図である。連結部Cn1は、筒部20を有する。筒部20は、円筒形状を有する。筒部20の内側は空洞である。筒部20は、上側(クラウン側)に開放されている。筒部20は、下側(ソール側)に開放されている。
【0043】
連結部Cn1は、フェース接合部22を有する。フェース接合部22は、筒部20とフェース裏面f2との間に位置する。フェース接合部22は、筒部20とフェース裏面f2との間の隙間を埋めている。フェース接合部22は、筒部20とフェース裏面f2との間の接合面積を拡張している。フェース接合部22の少なくとも一部は、溶接ビードであってもよい。なお、
図8では、フェース接合部22とフェース部Fp1との境界線が示されているが、溶接接合の場合、この境界線は、存在しないか又は不明確となりうる。また、フェース部Fp1と連結部Cn1とが一体成形されている場合、この境界線は存在しない。
【0044】
連結部Cn1は、本体接合部24を有する。本体接合部24は、筒部20と前面b1との間に位置する。本体接合部24は、筒部20と前面b1との間の隙間を埋めている。本体接合部24は、筒部20と前面b1との間の接合面積を拡張している。本体接合部24の少なくとも一部は、溶接ビードであってもよい。なお、
図8では、本体接合部24とヘッド本体h1との境界線が示されているが、溶接接合の場合、この境界線は、存在しないか又は不明確となりうる。また、ヘッド本体h1と連結部Cn1とが一体成形されている場合、この境界線は存在しない。
【0045】
連結部Cn1は、フェース垂直方向に対して傾斜して延びる傾斜部30を有している。本実施形態では、傾斜部30は、水平面HPに平行な断面において傾斜して延びている。フェース接合部22と本体接合部24との間に、傾斜部30が設けられている。本実施形態では、筒部20が、傾斜部30を有する。
図8において、フェース垂直方向D1が、2点鎖線で示されている。
図8が示すように、筒部20は、第1半円筒部20aと、第2半円筒部20bとを有する。
【0046】
第1半円筒部20aは、傾斜部30として、フェース部Fp1に近づくにつれてトウ側にいくように傾斜する第1傾斜部30aと、フェース部Fp1に近づくにつれてヒール側にいくように傾斜する第2傾斜部30bとを有する。第2傾斜部30bは、第1傾斜部30aとフェース部Fp1との間に位置する。第1傾斜部30aと第2傾斜部30bとは繋がっている。第2傾斜部30bは、第1傾斜部30aに対して、逆方向に傾斜している。互いに逆方向に傾斜する第1傾斜部30a及び第2傾斜部30bにより、打撃時における連結部Cn1の弾性変形が促進されている。
【0047】
第1傾斜部30aは、円弧に沿って延びる円弧傾斜部である。第2傾斜部30bは、円弧に沿って延びる円弧傾斜部である。これらの円弧傾斜部により、打撃時における連結部Cn1の弾性変形が促進されている。
【0048】
第1傾斜部30a及び第2傾斜部30bにおいて、フェース垂直方向D1と傾斜部30(第1傾斜部30a、第2傾斜部30b)の延在方向との成す角度は、徐々に変化している。第1半円筒部20aのうち、フェース垂直方向D1との成す角度が0°及び90°以外である部分が、傾斜部30である。第1半円筒部20aでは、その頂点において上記角度が90°であり、その部分は傾斜部ではない。この傾斜部ではない部分は、第1傾斜部30aと第2傾斜部30bとの境界に位置する。この頂点を除き、第1半円筒部20aの略全体が傾斜部30である。
【0049】
第2半円筒部20bは、傾斜部30として、フェース部Fp1に近づくにつれてヒール側にいくように傾斜する第1傾斜部30cと、フェース部Fp1に近づくにつれてトウ側にいくように傾斜する第2傾斜部30dとを有する。第2傾斜部30dは、第1傾斜部30cとフェース部Fp1との間に位置する。第2傾斜部30dは、第1傾斜部30cに対して、逆方向に傾斜している。互いに逆方向に傾斜する第1傾斜部30c及び第2傾斜部30dにより、打撃時の傾斜部30の弾性変形が促進されている。
【0050】
第1傾斜部30cは、円弧に沿って延びる円弧傾斜部である。第2傾斜部30dは、円弧に沿って延びる円弧傾斜部である。これらの円弧傾斜部により、打撃時における連結部Cn1の弾性変形が促進されている。
【0051】
第1傾斜部30c及び第2傾斜部30dにおいて、フェース垂直方向D1と傾斜部30(第1傾斜部30c、第2傾斜部30d)の延在方向との成す角度は、徐々に変化している。第2半円筒部20bのうち、フェース垂直方向D1との成す角度が0°及び90°以外である部分が、傾斜部30である。第2半円筒部20bでは、その頂点付近において上記角度が90°であり、その部分は傾斜部ではない。この傾斜部ではない部分は、第1傾斜部30cと第2傾斜部30dとの境界に位置する。この限られた部分を除き、第2半円筒部20bの略全体が傾斜部30である。
【0052】
以上から理解される通り、筒部20の略全体が、傾斜部30である。
【0053】
図8は、フェース垂直方向に沿った断面である。この断面において、傾斜部30はフェース垂直方向D1に対して傾斜して延びている。傾斜部30の傾斜の方向は限定されない。傾斜部30は、フェース垂直方向D1に対して、いずれかの方向に傾斜していればよい。換言すれば、ヘッド2は、フェース垂直方向D1に対して傾斜部30の延在方向が傾斜しているような断面を有する。この断面が、特定断面とも称される。この特定断面は、フェース部Fp1の断面、連結部Cn1の断面及びヘッド本体h1の断面を含む。特定断面は任意に選択されうる。この特定断面では、フェース垂直方向D1に対する傾斜部30の傾斜が明確に示される。
図8は、この特定断面の一例である。好ましくは、特定断面は、フェース垂直方向D1に平行な直線を含む。フェース垂直方向D1に平行な直線を含む平面は無数に存在するが、これら無数の平面のいずれかが特定断面とされてもよい。特定断面は、例えば前記水平面HPに平行であってもよい。特定断面は、例えば前記水平面HPに垂直であってもよい。
【0054】
連結部Cn1は曲がって延在している。この曲がりに起因して、連結部Cn1は、フェース垂直方向D1に平行な単一の直線に、2箇所以上で交差している。
図8の実施形態において、連結部Cn1は、フェース垂直方向D1に平行な単一の直線L1に2箇所(第1位置P1及び第2位置P2)で交差している。連結部Cn1は、第1位置P1から第2位置P2まで連続して繋がっている。直線L1の位置は任意に設定されうる。この直線L1に沿って、第1位置P1と第2位置P2との間に空間K1が存在する。この直線L1に沿って、前面b1と連結部Cn1との間の空間K2が存在する。この直線L1に沿って、連結部Cn1とフェース裏面f2との間に空間K3が存在する。これらの空間K1、K2及びK3は、連結部Cn1が変位するための余地を提供している。これらの空間K1、K2及びK3は、連結部Cn1の弾性変形を促進しうる。
【0055】
ヘッド本体h1とフェース部Fp1との間の空間(連結部Cn1の内部空間を含む)の少なくとも一部が、連結部Cn1の変形を阻止しない材料で満たされても良い。この材料は、当該空間への異物の侵入を抑制しうる。この材料は、ヘッド2の外観性を向上させることができ、例えばアドレスにおけるヘッド2の見え方を一般的なヘッドと同様とすることができる。この材料として、樹脂及びゴムが例示される。
【0056】
前述の通り、連結部Cn1は、フェース接合部22と本体接合部24とを有する。フェース接合部22と本体接合部24との間で、連結部Cn1は曲がって延在している。この曲がって延在している部分は、連結部Cn1の弾性変形を促進しうる。フェース接合部22と本体接合部24との間において、連結部Cn1は、フェース垂直方向D1に平行でない部分を有する。このフェース垂直方向D1に平行でない部分は、連結部Cn1の弾性変形を促進しうる。この傾斜部は、連結部Cn1の弾性変形を促進しうる。
【0057】
打撃時にボールから付与される力は、フェース垂直方向D1に略平行である。よって、フェース垂直方向D1に対して傾斜した傾斜部は、この力によって変形されやすい。傾斜部は、連結部Cn1の弾性変形を促進しうる。
【0058】
図9は、第2実施形態のゴルフクラブヘッド102の斜視図である。
図10は、ヘッド102を下方から見た底面図である。
図11は、ヘッド102をヒール側から見た側面図である。
【0059】
ヘッド102は、ウッド型ヘッドである。ヘッド102は、フェアウェイウッド型のヘッドである。ヘッド102は、ヘッド本体h2と、フェース部Fp2と、連結部Cn2とを有する。連結部Cn2は、ヘッド本体h2とフェース部Fp2とを連結している。フェース部Fp2は、連結部Cn2のみによって、ヘッド本体h2に連結されている。連結部Cn2は、フェース部Fp1のフェース裏面f2と、ヘッド本体h2の前面b1とを繋いでいる。
【0060】
ヘッド本体h2の内部は、空洞部である。ヘッド102では、ヘッド本体h2の内部は閉じられた空間である。ヘッド本体h2は中空である。
【0061】
ヘッド本体h2は、クラウン104、ソール106及びホーゼル108を有する。ホーゼル108は、ホーゼル孔110を有する。クラウン104の一部は、蓋部材104aによって構成されている。
図9において、蓋部材104aの輪郭線が、破線で示されている。この蓋部材104aは、ヘッド本体h2に設けられた開口を塞いでいる。
【0062】
ヘッド102と、前述したヘッド2との相違は、連結部の長さにある。ヘッド102の連結部Cn2は、ヘッド2の連結部Cn1に比べて短い。
【0063】
連結部Cn2は、フェース部Fp2(フェース裏面f2)の上部と、ヘッド本体h2(前面b1)の上部とを繋いでいる。フェース部Fp2の下部には、連結部Cn2が設けられていない。
【0064】
連結部Cn2の下端120は、フェース裏面f2に接する下端前方部122を有する。下端前方部122は、フェース裏面f2の下縁124から離れている。
【0065】
このヘッド102では、フェース部Fp2(打撃面f1)の下部領域が連結部Cn2によって支持されていない。よって、打撃の際に、この下部領域は後方に変位しやすい。ヘッド102は、打撃面f1の下部における反発性能に優れる。
【0066】
打撃面f1は、トウ-ヒール方向の全体に亘って連結部Cn2によって支持されていないフェース下部領域を有する。この領域は、非バックアップ下部領域とも称される。この非バックアップ下部領域は、打撃面f1の下端から高さH1までの領域である。この領域が大きいと、打撃面f1の下部における反発性能が高まる。
【0067】
前述の通り、非バックアップ下部領域は、トウ-ヒール方向の全体に亘って連結部Cn2で支持されていない領域である。よって、ヘッド102では、3つの下端前方部122のうち最も下側の下端前方部122より下側の領域が、非バックアップ下部領域である。
【0068】
図11において両矢印H1で示されているのは、非バックアップ下部領域の高さである。高さH1は、上下方向に沿って測定される。高さH1は、フェースセンターfcの位置(トウ-ヒール方向位置)で測定される。
図11及び
図6において両矢印H2で示されるのは、打撃面f1の高さである。高さH2は、フェースセンターfcの位置で測定される。高さH2は、上下方向に沿って測定される。
【0069】
フェアウェイウッド型のヘッド及びユーティリティ型のヘッドでは、芝生に直接置かれたボールを打撃する機会が多い。これらのヘッドでは、打点がフェースの下部となりやすい。フェース部Fp2の下部における反発性能を重視する観点からは、H1/H2は、0.3以上が好ましく、0.35以上がより好ましく、0.4以上がより好ましく、0.45以上がより好ましい。連結部Cn2とフェース部Fp2との間の接合強度を考慮すると、H1/H2は、0.8以下が好ましく、0.75以下がより好ましく、0.7以下がより好ましく、0.65以下がより好ましい。連結部Cn2が複数である場合、全ての連結部Cn2がこれらの規定を満たしているのが好ましい。
【0070】
図12は、第3実施形態のゴルフクラブヘッド202の斜視図である。
図13は、ヘッド202を上方から見た平面図である。
図14もヘッド202を上方から見た平面図であるが、
図13とは視点が少し相違する。
図14の視点は、ロフト角がほぼゼロに見えるような視点である。この
図14では、ヘッド本体とフェース部との間がよく見える。
図15は、ヘッド202を下方から見た底面図である。
図16は、ヘッド202をヒール側から見た側面図である。
図17は、ヘッド202を打球面側から見た正面図である。
【0071】
ヘッド202は、ウッド型ヘッドである。ヘッド202は、フェアウェイウッド型のヘッドである。
【0072】
ヘッド202は、ヘッド本体h3と、フェース部Fp3と、連結部Cn3とを有する。連結部Cn3は、ヘッド本体h3とフェース部Fp3とを連結している。フェース部Fp3は、連結部Cn3のみによって、ヘッド本体h3に連結されている。
【0073】
フェース部Fp3は、板状である。フェース部Fp3の前面は、打撃面f1である。打撃面f1はバルジ及びロールを有する曲面である。フェース部Fp3は、この打撃面f1の形状に沿って曲がっている。
【0074】
なお、打撃面f1には、複数のスコアラインが設けられている。これらスコアラインの図示は省略されている。
【0075】
ヘッド本体h3の内部は、空洞部である。ヘッド本体h3は中空である。
【0076】
ヘッド本体h3は、クラウン204、ソール206及びホーゼル208を有する。ホーゼル208は、ホーゼル孔210を有する。クラウン204の一部は、蓋部材204aによって構成されている。蓋部材204aの輪郭線は、破線で示されている。この蓋部材204aは、ヘッド本体h3に設けられた開口を塞いでいる。
【0077】
ヘッド本体h3は、前方部Fb3を有する。前方部Fb3は、ヘッド本体h3の前面を構成している。前方部Fb3は、ヘッド本体h3の空洞部の前方に配置されている。前方部Fb3は、この空洞部の前方を閉塞している。前方部Fb3は、フェース部Fp3の後方に位置する。前方部Fb3とフェース部Fp3とは、略平行である。前方部Fb3は、フェース部Fp3から後方に離れている。
【0078】
ヘッド202では、前方部Fb3は、ヘッド本体h3の最も前方に位置している。前方部Fb3は、ヘッド本体h3の最も前方に位置していなくてもよい。例えば、前方部Fb3が、ヘッド本体h1の前縁よりも後方に位置していてもよい。
【0079】
前方部Fb3は、ヘッド本体h3の上部とヘッド本体h3の下部とを繋いでいる。本実施形態において、ヘッド本体h3の上部は、クラウン204である。実施形態において、ヘッド本体h3の下部は、ソール206である。フェース部Fp3は、連結部Cn3のみによって、前方部Fb3に連結されている。
【0080】
フェース部Fp3は、打撃面f1と、フェース裏面f2とを有する。打撃面f1は、打球面である。フェース裏面f2は、前方部Fb3の前面b1に対向している。
【0081】
フェース部Fp3と前方部Fb3との間に、前後方向における距離が存在する。フェース部Fp3と前方部Fb3との間に、隙間g3が設けられている(
図14参照)。
【0082】
打撃面f1は、曲面である。打撃面f1は、外側(前側)に向かって凸の三次元曲面である。一般的なウッド型ヘッドと同様に、打撃面f1は、バルジ及びロールを有する。
【0083】
フェース裏面f2は、凹曲面である。フェース部Fp3の厚みは一定である。フェース裏面f2は、例えば平面であってもよい。
【0084】
ヘッド202では、6つの連結部Cn3が設けられている。連結部Cn3は、フェース裏面f2と前面b1とを連結している。連結部Cn1が存在する部分を除き、フェース裏面f2と前面b1との間は、空間である。
【0085】
【0086】
連結部Cn3は、フェース接合部222と、本体接合部224と、主部226とを有している。主部226は、半円筒形状を呈している。フェース接合部222は、主部226とフェース裏面f2との間に位置する。フェース接合部222は、主部226とフェース裏面f2との間の接合面積を拡張している。フェース接合部222の少なくとも一部は、溶接ビードであってもよい。本体接合部224は、ヘッド本体h1の前面b1と主部226と前面b1との間に位置する。本体接合部224は、主部226と前面b1との間の接合面積を拡張している。本体接合部224の少なくとも一部は、溶接ビードであってもよい。
【0087】
連結部Cn3は、フェース垂直方向D1に対して傾斜して延びる傾斜部230を有している。フェース接合部222と本体接合部224との間に、傾斜部230が設けられている。本実施形態では、主部226が、傾斜部230を有する。半円筒形状の主部226は、その頂部を除き、フェース垂直方向D1に対して傾斜している。よって、主部226の大部分が、傾斜部230である。傾斜部230とヘッド本体h3との間には、空間K4が存在している。傾斜部230とフェース部Fp3との間には、空間K5が存在している。
【0088】
複数の連結部Cn3は、トウ側に向かって凸となるように曲がっている第1連結部Cn31と、ヒール側に向かって凸となるように曲がっている第2連結部Cn32とを含む。第1連結部Cn31と第2連結部Cn32とが交互に配置されている(
図13参照)。1つの第1連結部Cn31のヒール側に、一つの第2連結部Cn32が配置されている。この第1連結部Cn31と第2連結部Cn32とのセットが、複数(3つ)設けられている。
【0089】
図19は、第4実施形態のゴルフクラブヘッド302の斜視図である。
図20は、ヘッド302を下方から見た底面図である。
図21は、ヘッド302をヒール側から見た側面図である。
【0090】
ヘッド302は、ウッド型ヘッドである。ヘッド302は、フェアウェイウッド型のヘッドである。ヘッド302は、ヘッド本体h4と、フェース部Fp4と、連結部Cn4とを有する。連結部Cn4は、ヘッド本体h4とフェース部Fp4とを連結している。フェース部Fp4は、連結部Cn4のみによって、ヘッド本体h4に連結されている。連結部Cn4は、フェース部Fp4のフェース裏面f2と、ヘッド本体h4の前面b1とを繋いでいる。
【0091】
ヘッド本体h4の内部は、空洞部である。ヘッド302では、ヘッド本体h4の内部は閉じられた空間である。ヘッド本体h4は中空である。
【0092】
ヘッド本体h4は、クラウン304、ソール306及びホーゼル308を有する。ホーゼル308は、ホーゼル孔310を有する。クラウン304の一部は、蓋部材304aによって構成されている。
図19等において、蓋部材304aの輪郭線が、破線で示されている。この蓋部材304aは、ヘッド本体h4に設けられた開口を塞いでいる。
【0093】
ヘッド302と、前述したヘッド202との相違は、連結部の長さにある。ヘッド302の連結部Cn4は、ヘッド202の連結部Cn3に比べて短い。
【0094】
連結部Cn4は、フェース部Fp4(フェース裏面f2)の上部と、ヘッド本体h4(前面b1)の上部とを繋いでいる。フェース部Fp4の下部には、連結部Cn4が設けられていない。
【0095】
連結部Cn4の下端320は、フェース裏面f2に接する下端前方部322を有する。下端前方部322は、フェース裏面f2の下縁324から離れている。
【0096】
このヘッド302では、フェース部Fp4(打撃面f1)の下部領域が連結部Cn4によって支持されていない。よって、打撃の際に、この下部領域は後方に変位しやすい。ヘッド302は、打点が下側であるときの反発性能に優れる。ヘッド302は、打撃面f1の下部における反発性能に優れる。
【0097】
図22は、参考例のゴルフクラブヘッド502の斜視図である。
図23は、ヘッド502を下方から見た底面図である。
図24は、ヘッド502からフェース部Fp5を除去したフェース除去ヘッド502aの正面図である。
【0098】
ヘッド502は、ウッド型ヘッドである。ヘッド502は、フェアウェイウッド型のヘッドである。ヘッド502は、ヘッド本体h5と、フェース部Fp5と、連結部Cn5とを有する。連結部Cn5は、ヘッド本体h5の前面b1とフェース部Fp5のフェース裏面f2とを連結している。ヘッド本体h5の内部は、空洞部である。
【0099】
ヘッド本体h5は、クラウン504、ソール506及びホーゼル508を有する。ホーゼル508は、ホーゼル孔510を有する。クラウン504の一部は、蓋部材504aによって構成されている。
【0100】
ヘッド502と、前述したヘッド2、102、202及び302との相違は、連結部の形状にある。
【0101】
図24が示すように、連結部Cn5は、フェース部Fp5(フェース裏面f2)の上部と、ヘッド本体h5(前面b1)の上部とを繋いでいる。連結部Cn5は、フェース垂直方向に対して傾斜して延びていない。この連結部Cn5では、打撃の際の変形が限定的である。
【0102】
一方、前述したヘッド2、102、202及び302では、連結部自体が変形しやすい。この変形しやすさは、傾斜部に起因する。打撃の際にボールから受ける力は、フェース垂直方向D1に略沿った方向に作用する。フェース垂直方向D1に対して傾斜して延びる傾斜部を設けることで、ボールから受ける力に対して、連結部が変形やすい。すなわち、ボールから受ける力に対する連結部の剛性は低い。このため、打撃時に連結部が変形しやすい。連結部自体の弾性変形により、反発性能が高められている。
【0103】
参考例の連結部Cn5では、連結部自体の弾性変形が限定的である。特開2015-192781号公報に開示された各実施形態でも、連結部自体の弾性変形は限定的である。一方、上記傾斜部に起因して、本願の上記実施形態では、連結部自体の弾性変形が大きい。この連結部自体の弾性変形により、反発性能がより一層高まる。特に、連結部でバックアップされている領域の反発性能が向上する。
【0104】
図25(a)、
図25(b)及び
図25(c)は、連結部の変形例を示す断面図である。これらは、フェース垂直方向に沿った断面図である。
【0105】
図25(a)の実施形態は、3つの連結部Cn6を有する。連結部Cn6のぞれぞれは、傾斜部600を有する。この傾斜部600は、前方部の前面b1から延びフェース部に近づくにつれてヒール側にいくように傾斜する第1傾斜部602と、この第1傾斜部602の前端からフェース裏面f2に向かって延びフェース部に近づくにつれてトウ側にいくように傾斜する第2傾斜部604とを有する。第1傾斜部602及び第2傾斜部604はフェース垂直方向に対して傾斜している。第2傾斜部604は、第1傾斜部602に対して逆方向に傾斜している。第1傾斜部602は、直線に沿って延びる直線傾斜部を有する。第2傾斜部604は、直線に沿って延びる直線傾斜部を有する。
【0106】
図25(b)の実施形態は、3つの連結部Cn7を有する。連結部Cn7のぞれぞれは、傾斜部700を有する。この傾斜部700は、前方部の前面b1から延びフェース部に近づくにつれてトウ側にいくように傾斜する第1傾斜部702と、この第1傾斜部702の前端からフェース裏面f2に向かって延びフェース部に近づくにつれてヒール側にいくように傾斜する第2傾斜部704と、この第2傾斜部704の前端からフェース裏面f2に向かって延びフェース部に近づくにつれてトウ側にいくように傾斜する第3傾斜部706とを有する。第1傾斜部702及び第2傾斜部704及び第3傾斜部706は、フェース垂直方向に対して傾斜している。第2傾斜部704は、第1傾斜部702に対して逆方向に傾斜している。第3傾斜部706は、第2傾斜部704に対して逆方向に傾斜している。第1傾斜部702は、直線に沿って延びる直線傾斜部を有する。第2傾斜部704は、直線に沿って延びる直線傾斜部を有する。第3傾斜部706は、直線に沿って延びる直線傾斜部を有する。
【0107】
図25(c)の実施形態は、3つの連結部Cn8を有する。連結部Cn8のぞれぞれは、断面形状が円弧形状である円筒部800と、円筒部800の一端とフェース裏面f2とを繋ぐフェース接合部802と、円筒部800の他端と前方部の前面b1とを繋ぐ本体接合部804とを有する。円筒部800は、その頂点を除き、フェース垂直方向に対して傾斜している。すなわち、円筒部800の略全体が、傾斜部である。円筒部800は、互いに逆方向に傾斜する第1傾斜部と第2傾斜部とを含んでいる。
【0108】
図26は、更に他の変形例を示す断面図である。
図26の実施形態は、5つの連結部Cn9を有する。連結部Cn9のそれぞれは、傾斜部900を有する。傾斜部900は、直線に沿って延びる直線傾斜部902を有する。連結部Cn9における傾斜部900は、直線傾斜部902のみによって構成されている。傾斜部900は、フェース部に近づくにつれて上側にいくように傾斜している。直線傾斜部902は、打撃の際にボールから付与される力によって変形しやすい。直線傾斜部902の弾性変形は、反発性能の向上に寄与する。
【0109】
各実施形態における連結部について、以下において更なる説明がなされる。
【0110】
本願では、連結部に関して以下の用語が定義される。
【0111】
[連結部の軸線]
連結部のそれぞれは、重心を有する。この連結部の重心を通る直線は無数に存在する。これらの直線のうち、断面同一性を充足する直線が、その連結部の軸線と定義される。
【0112】
[断面同一性]
連結部の重心を通る任意の直線は、当該直線に対して垂直な多数の平面を有する。これらの平面のそれぞれに沿って、連結部の断面が定まる。すなわち、各直線毎に、多数の断面が定まる。これらの断面の全てが同一であるか、又は、断面重複率がX%以上である場合、その直線は断面同一性を充足すると定義される。このXは70であり、好ましくは80であり、より好ましくは90である。断面の全てが同一である場合、断面重複率は100%である。なお、断面同一性を充足する前記直線が複数存在する場合、前記断面重複率が最大である直線が、前記軸線と定義される。
【0113】
[断面重複率]
前記軸線に垂直な2つの断面同士を重ねた重複図において、2つの断面の重複部分の面積がM1とされ、重ねられた2つの断面により占有される合計面積がM2とされるとき、断面重複率(%)は、下記式により算出されうる。
断面重複率 = (M1/M2)×100
重複図に用いられる2つの断面として、前記多数の断面の中から、断面重複率が最小となる組み合わせが選択される。
【0114】
図27は、前記重複図の一例を示す。この重複図では、
図25(a)で示される連結部Cn6が示されている。連結部Cn6の第1の断面の輪郭線610が実線で示されている。連結部Cn6の第2の断面の輪郭線612が2点鎖線で示されている。輪郭線610で囲まれ且つ輪郭線612で囲まれた領域の面積が、M1である。輪郭線610及び輪郭線612のうち、より外側に位置する輪郭線で囲まれた領域の面積が、M2である。すなわち、M2は、記面積M1を構成する領域R12に加えて、輪郭線610のみで囲まれた領域R1と、輪郭線612のみで囲まれた領域R2とを含む。
図27では、前記軸線が符号Zで示されている。
【0115】
前記重複図において、各断面は、移動も回転もされることなく、重ねられる。各断面は、軸線Zの断面を点として含むが、前記重複図では、第1の断面に含まれる軸線Z(点)と、第2の断面に含まれる軸線Z(点)とが、共通の1点となる(
図27参照)。
【0116】
[軸線に沿って測定されたフェース部の長さ]
図6では、各連結部Cn1の軸線Zが一点鎖線で示されている。フェース部Fp1の長さは、軸線Zに沿って測定されうる。この長さは、各連結部Cn1ごとに測定される。
図6の実施形態では、最もトウ側の連結部Cn11は、軸線Z1を有する。最もヒール側の連結部Cn12は、軸線Z2を有する。連結部Cn11と連結部Cn12との間に位置する連結部Cn13は、軸線Z3を有する。連結部Cn11に関しては、軸線Z1に沿って、フェース部Fp1の長さが測定される。連結部Cn12に関しては、軸線Z2に沿って、フェース部Fp1の長さが測定される。連結部Cn13に関しては、軸線Z3に沿って、フェース部Fp1の長さが測定される。
図6では、連結部Cn11の軸線Z1に沿って測定されたフェース部Fp1の長さLf1が示されている。この測定における測定位置は、上記フェース投影平面への投影像において決定される。この投影像において、軸線Z1とフェース部Fp1とが重なる位置で、軸線Z1に沿ったフェース部Fp1の長さが測定される(
図6参照)。
【0117】
[断面対称性]
連結部の断面が実質的に対称性を有しているとき、その連結部が断面対称性を有すると定義される。この「実質的に」を判断する指標が、後述の対称重複率である。この対称重複率がY%以上であるとき、その断面が実質的に対称性を有すると定義される。Yは70であり、このましくは80であり、より好ましくは90である。対称性が判断される断面は、軸線Zに垂直な断面とされうる。軸線Zに垂直な断面は多数存在するが、それらの断面の全てが断面対称性を有するのが好ましい。
【0118】
[対称重複率]
対称重複率は、原図としての連結部の断面図と、その原図から得られた対称図との近似性を示す指標である。対称重複率を求めるために、原図とその対称図とを重ねた対称重複図が作成される。対称図は、適用される対称性(断面対称性)に基づいて決定される。例えば、断面対称性が線対称である場合、対称図は、対称軸を境として原図を反転された図である。例えば、断面対称性が点対称である場合、対称図は、対称点を中心として原図を180°回転した図である。原図と対称図との重複部分の面積がS1とされ、重ねられた2つの図により占有される合計面積がS2とされるとき、対称重複率(%)は、下記式により算出されうる。
対称重複率 = (S1/S2)×100
対称性が完全である場合、対称重複率は100%である。
【0119】
図28は、前記対称重複図の一例を示す。この対称重複図では、
図25(a)で示される連結部Cn6が示されている。連結部Cn6の断面の原
図620が実線で示され、この原
図620から得られた対称
図622が2点鎖線で示されている。原
図620で囲まれ且つ対称
図622で囲まれた領域の面積が、上記式におけるS1である。原
図620及び対称
図622のうち、より外側に位置する輪郭線で囲まれた領域の面積が、上記式におけるS2である。
図28では、対称軸x1が一点鎖線で示されている。
【0120】
なお、前記対称軸及び前記対称点は、前記対称重複率が最大となるように決定されうる。
【0121】
前述の通り、傾斜部を設けることで、連結部が打撃の際に変形しやすい。連結部の弾性変形は、反発性能の向上に寄与する。好ましくは、傾斜部は、水平面HPに平行な断面、及び/又は、水平面HPに垂直で且つ前後方向に平行な断面において、フェース垂直方向に対して傾斜して延びている。
【0122】
好ましい傾斜部の一例は、直線に沿って延びる直線傾斜部である。
図25(a)に示される連結部Cn6、
図25(b)に示される連結部Cn7、及び、
図26に示される連結部Cn9は、直線傾斜部を有する。この直線傾斜部は、連結部の変形しやすさを向上させうる。
【0123】
好ましい傾斜部の他の例は、円弧に沿って延びる円弧傾斜部である。前述した連結部Cn1、連結部Cn2、連結部Cn3及び連結部Cn4は円弧傾斜部を有している。また、
図25(c)に示される連結部Cn8も、円弧傾斜部を有している。この円弧傾斜部は、連結部の変形しやすさを向上させうる。
【0124】
他の好ましい傾斜部は、第1傾斜部と、この第1傾斜部とは逆方向に傾斜する第2傾斜部とを有する。円弧形状に起因して、前述した連結部Cn1、連結部Cn2、連結部Cn3、連結部Cn4及び連結部Cn8は、第1傾斜部と、この第1傾斜部とは逆方向に傾斜する第2傾斜部とを有する。また、
図25(a)に示される連結部Cn6、及び、
図25(b)に示される連結部Cn7も、第1傾斜部と、この第1傾斜部とは逆方向に傾斜する第2傾斜部とを有する。互いに逆方向に傾斜する2つの傾斜部は、連結部の変形しやすさを向上させうる。
【0125】
連結部は、断面対称性を有していてもよい。断面対称性として、線対称、点対称及び回転対称が挙げられる。連結部は、水平面HPに平行な断面において断面対称性を有していてもよい。連結部は、水平面HPに垂直で且つ前後方向に平行な断面において、断面対称性を有していてもよい。
【0126】
前述した全ての実施形態において、連結部は断面対称性を有している。全ての実施形態において、軸線Zに対して垂直な断面対称性が線対称である実施形態は、連結部Cn1、連結部Cn2、連結部Cn3、連結部Cn4、連結部Cn6及び連結部Cn8である。断面対称性が点対称である実施形態は、連結部Cn1、連結部Cn2、連結部Cn7及び連結部Cn9である。
【0127】
断面対称性は、連結部の変形しやすさを向上させうる。
【0128】
図29(a)及び
図29(b)は、断面対称性の効果を説明するための断面図である。
【0129】
図29(a)の実施形態は、断面対称性を有さない単一の連結部Cn10を有する。連結部Cn10は、打撃によって前後方向に圧縮される。前後方向に圧縮変形されると、連結部Cn10は、フェース部Fp1をヒール側に変位させる。
【0130】
図29(b)の実施形態は、断面対称性を有さない2つの連結部Cn10、Cn11を有する。連結部Cn10は、前後方向に圧縮変形されると、フェース部Fp1をヒール側に変位させようとする。一方、連結部Cn11は、前後方向に圧縮変形されると、フェース部Fp1をトウ側に変位させようとする。この場合、トウ側に変位させようとする力とヒール側に変位させようとする力とが拮抗する。この結果、連結部Cn10及び連結部Cn11の変形が拘束される。断面対称性により、連結部同士での変形拘束が抑制され、連結部が変形しやすくなる。
【0131】
好ましくは、連結部は、当該連結部の重心を通り且つ断面同一性を充足する軸線Zを有する。前述した全ての実施形態で、各連結部は軸線Zを有している。
【0132】
好ましくは、各連結部の軸線Zは、フェース部とヘッド本体との間を通過(貫通)している。つまり、好ましくは、軸線Zは、フェース部に交差しておらず、且つ、ヘッド本体にも交差していない。この場合、軸線Zは、フェース部Fp1と略平行に延びている。よって、断面同一性に起因して、ボールが打撃面f1のどの位置に当たっても、連結部が同じように変形する。結果として、連結部の変形が容易となると共に、打点による連結部の変形のバラツキが抑制される。
【0133】
好ましくは、軸線Zに沿った連結部の長さが、その軸線Zに沿って測定されたフェース部の長さの20%以上である。この長さ比率が大きくされることで、打撃によりボールから付与された力が連結部に伝達されやすくなり、連結部の前後方向の変形が促進される。この観点から、この長さ比率は、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がより好ましい。前述した連結部Cn1及び連結部Cn3のように、この長さ比率は100%であってもよい。この長さ比率を下げることで、連結部によりバックアップされていないフェース領域を選択的に広げることができる。この場合、例えばヘッド102(連結部Cn2)及びヘッド302(連結部Cn4)のように、下方の打点の反発性を高めることができる。選択的に高反発エリアを設ける観点からは、この長さ比率は、70%以下とされてもよく、60%以下とされてもよく、50%以下とされてもよい。
【0134】
主としてティーアップされたボールを打つクラブ(ドライバー等)では、打点はフェースの全体に分布しやすい。一方、主として地面(芝生)に直接置かれたボールを打つクラブ(フェアウエイウッド、ユーティリティ等)では、打点はフェースの下部に集中しやすい。打点がフェースの下部に集中しやすい場合、前記長さ比率を小さくし、連結部によりバックアップされていないフェース領域をフェース下部に設け、下方の打点の反発性を高めるのが好ましい。
【0135】
前述の通り、連結部自体の変形が、反発性能を高める。この観点から、連結部の厚みは、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がより好ましい。強度の観点から、連結部の厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、0.5mm以上がより好ましい。
【0136】
前述の通り、連結部自体の変形が、反発性能を高める。この観点から、水平面HPに平行な断面における連結部の厚みは、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がより好ましい。強度の観点から、水平面HPと平行な断面における連結部の厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、0.5mm以上がより好ましい。
【0137】
反発性能の観点から、フェース部の厚みは、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましい。強度の観点から、フェース部の厚みは、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、1.8mm以上がより好ましく、2mm以上がより好ましい。フェース部の厚みは、均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0138】
ヘッド本体の前方部の変形も、反発性能に寄与しうる。反発性能を高める観点から、ヘッド本体の前方部の厚みは、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下がより好ましく、2.8mm以下がより好ましく、2.6mm以下がより好ましく、2.4mm以下がより好ましく、2.2mm以下がより好ましく、2mm以下がより好ましい。強度の観点から、ヘッド本体の前方部の厚みは、1mm以上が好ましく、1.2mm以上がより好ましく、1.5mm以上がより好ましく、1.7mm以上がより好ましく、1.9mm以上がより好ましい。
【0139】
連結部及びフェース部の変形を許容させる観点から、ヘッド本体の前面とフェース裏面との距離は、0.2mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1.0mm以上がより好ましい。適正なフェースプログレッションの観点から、ヘッド本体の前面とフェース裏面との距離は、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、6mm以下がより好ましい。この距離は、前後方向に沿って測定される。この距離は、均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0140】
連結部の材質は限定されない。連結部の材質として、金属、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等が例示される。上記金属として、軟鉄、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びタングステン-ニッケル合金から選ばれる一種以上が例示される。ステンレス鋼として、SUS630及びSUS304が例示される。チタン合金として、6-4チタン(Ti-6Al-4V)、Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al、Ti-6-22-22S等が例示される。連結部の材質は、フェース部との溶接が可能な材質であるのが好ましい。連結部の材質は、フェース部の材質と同じであってもよい。連結部の材質は、ヘッド本体との溶接が可能な材質であるのが好ましい。連結部の材質は、ヘッド本体(前方部)の材質と同じであってもよい。
【0141】
ヘッド本体の材質は限定されない。ヘッド本体の材質として、金属、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等が例示される。上記金属として、軟鉄、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びタングステン-ニッケル合金から選ばれる一種以上が例示される。ステンレス鋼として、SUS630及びSUS304が例示される。チタン合金として、6-4チタン(Ti-6Al-4V)、Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al、Ti-6-22-22S等が例示される。なお、軟鉄とは、炭素含有率が0.3wt%未満の低炭素鋼を意味する。ヘッド本体の材質は、連結部との溶接が可能であるのが好ましい。ヘッド本体の材質は、連結部の材質と同じであってもよい。
【0142】
フェース部の材質は限定されない。フェース部の材質として、金属、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等が例示される。上記金属として、軟鉄、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びタングステン-ニッケル合金から選ばれる一種以上が例示される。ステンレス鋼として、SUS630及びSUS304が例示される。チタン合金として、6-4チタン(Ti-6Al-4V)、Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al、Ti-6-22-22S等が例示される。フェース部の材質は、連結部との溶接が可能であるのが好ましい。フェース部の材質は、連結部の材質と同じであってもよい。
【0143】
フェース部は、圧延材であってもよい。圧延材は、欠陥が少なく、強度に優れる。フェース部は、鍛造材であってもよい。鍛造材は、欠陥が少なく、強度に優れる。
【0144】
好ましいヘッドの一例は、ドライバー型ヘッドである。ドライバーとは、1番ウッド(W#1)を意味する。ドライバーには、高い飛距離性能が要求される。よって、本発明が好ましく適用される。通常、ドライバー型ヘッドは、以下の構成を有する。
(1a)曲面の打撃面
(1b)空洞部
(1c)300cc以上460cc以下の体積
(1d)7度以上14度以下のリアルロフト
【0145】
好ましいヘッドの他の例は、フェアウェイウッド型ヘッドである。フェアウェイウッドとして、3番ウッド(W#3)、4番ウッド(W#4)、5番ウッド(W#5)、7番ウッド(W#7)、9番ウッド(W#9)、11番ウッド(W#11)及び13番ウッド(W#13)が例示される。通常、フェアウェイウッド型ヘッドは、以下の構成を有する。
(2a)曲面の打撃面
(2b)空洞部
(2c)100cc以上300cc未満の体積
(2d)14度よりも大きく33度以下のリアルロフト
【0146】
より好ましくは、フェアウェイウッド型ヘッドの体積は、100cc以上200cc以下である。
【0147】
フェアウェイウッド型ヘッドは、ドライバー型ヘッドよりも小さい。小さいヘッドでは、打撃面の面積が小さい。従来の構造では、小さな打撃面の反発性能を高めることは、難しい。上述された構造は、小さな打撃面の反発性能を高めるのに効果的である。
【0148】
フェアウェイウッドでは、地面(芝生)に置かれた球を打つ機会が多い。換言すれば、フェアウェイウッドでは、ティーアップされていない球を打つ機会が多い。よって、フェアウェイウッドでは、打点が打撃面の下側となる傾向がある。前述のヘッド102及びヘッド302で示されるように、連結部の配置により、下側の打点における反発性能を高めることができる。
【0149】
好ましいヘッドの更に他の例は、ハイブリッド型ヘッドである。通常、ハイブリッド型型ヘッドは、以下の構成を有する。
(3a)曲面の打撃面
(3b)空洞部
(3c)100cc以上200cc以下の体積
(3d)15度以上33度以下のリアルロフト
【0150】
より好ましくは、ハイブリッド型ヘッドの体積は、100cc以上150cc以下である。
【0151】
ハイブリッド型ヘッドは、ドライバー型ヘッドよりも小さい。従来の構造において、小さな打撃面のたわみ量は、小さい。上述された構造は、小さな打撃面の反発性能を高めるのに効果的である。
【0152】
ハイブリッドクラブでは、地面(芝生)に置かれた球を打つ機会が多い。換言すれば、ハイブリッドクラブでは、ティーアップされていない球を打つ機会が多い。よって、ハイブリッドクラブでは、打点が打撃面の下側となる傾向がある。上述の通り、連結部の配置により、下側の打点における反発性能を高めることができる。
【0153】
通常、フェアウェイウッドでは、ドライバーに比較して、打撃面積が小さい。このため、フェアウェイウッドでは、打撃時におけるフェースの変形が十分に得られないことがある。この点は、ユーティリティ型クラブ、ハイブリッド型クラブ及びアイアン型クラブでも同様である。上記構成では、打撃面積が小さいヘッドにおいても、反発性能が効果的に向上しうる。この観点から、ヘッド体積は、300cc以下が好ましく、300cc未満がより好ましく、280cc以下がより好ましく、260cc以下がより好ましい。反発性能及び飛距離が特に重視されるのは、ウッド型クラブ及びハイブリッド型クラブである。である。この点を考慮すると、ヘッド体積は、100cc以上が好ましい。
【実施例】
【0154】
以下、実施例によって本開示の効果が明らかにされる。この実施例の記載に基づいて本開示が限定的に解釈されるべきではない。
【0155】
[実施例1]
実施例1のヘッドのFEMモデルを作成した。ヘッドの構成は、第1実施形態に係るヘッド2と同じとされた。トウ側の連結部Cn1及びヒール側の連結部Cn1では、筒部20の内径が9mmとされた。中央の連結部Cn1では、筒部20の内径が9.6mmとされた。全ての連結部Cn1において、筒部20の厚みは0.5mmとされた。いずれの連結部Cn1においても、軸線Zの長さは、その軸線Zに沿ったフェース部Fp1の長さと同一とされた。材料特性は、ステンレスを想定して、以下の通りとされた。
・弾性率 :210GPa
・ポアソン比:0.3
・密度 :7.8g/cm3
【0156】
得られたFEMモデルを用いて、ボールを衝突させるシミュレーションを行った。ボールが衝突する位置(打点)を変え、シミュレーションがなされた。このシミュレーションで、各打点における固有振動数及び反発係数(COR)が算出された。この結果が下記の表1で示される。
【0157】
なお、各打点における固有振動数は、当該打点を中心とする半径5mmの領域を固定するという条件で算出した。この固有振動数は、その打点における反発係数との相関が高い。
【0158】
下記の表1では、打撃面における打点の位置が、x座標及びy座標で示されている。前述の通り、x座標が0.0mmであり且つy座標が0.0mmである原点は、フェースセンターである。
【0159】
[実施例2]
ヘッドの構成が第2実施形態に係るヘッド102とされた他は実施例1と同様にして、実施例2のシミュレーションを行った。実施例2と実施例1との差は、連結部の長さと、連結部の厚みのみである。実施例2では、連結部Cn2の軸線Zの長さは、その軸線Zに沿ったフェース部Fp2の長さの50%とされた。実施例2では、連結部の厚みが1.0mmとされた。シミュレーションの結果が、下記の表1に示される。
【0160】
[実施例3]
ヘッドの構成が第3実施形態に係るヘッド202とされた他は実施例1と同様にして、実施例3のシミュレーションを行った。実施例3と実施例1との差は、連結部が軸線Zに沿って2等分され、間隔をおいて配置された点のみである。実施例3では、連結部Cn3の軸線Zの長さは、その軸線Zに沿ったフェース部Fp2の長さと同一とされた。シミュレーションの結果が、下記の表1に示される。
【0161】
[実施例4]
ヘッドの構成が第4実施形態に係るヘッド302とされた他は実施例2と同様にして、実施例4のシミュレーションを行った。実施例4と実施例2との差は、連結部が軸線Zに沿って2等分され、間隔をおいて配置された点のみである。シミュレーションの結果が、下記の表1に示される。
【0162】
[比較例]
ヘッドの構成が参考例に係るヘッド502とされた他は実施例1と同様にして、比較例のシミュレーションを行った。比較例と実施例1との差は、連結部の形状のみであった。シミュレーションの結果が、下記の表1に示される。
【0163】
【0164】
表1が示すように、比較例では、全体的に固有振動数が高く、特にフェース中心における固有振動数が高い。このため、特にフェース中心における反発係数(COR)が低い。これに対して、実施例1から4では、フェース中心における固有振動数が低く、フェース中心における反発係数が高い。この結果は、連結部の変形による反発係数の向上を示している。また、実施例1と実施例2とを比べると、フェース下部の連結部が存在しない実施例2のほうが、下側の打点における固有振動数が低く、下側の打点における反発係数が高い。同様に、実施例3と実施例4とを比べると、フェース下部の連結部が存在しない実施例4のほうが、下側の打点における固有振動数が低く、下側の打点における反発係数が高い。このように、本開示の優位性は明らかである。
【0165】
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
ヘッド本体と、
前記ヘッド本体から離れているフェース部と、
前記ヘッド本体と前記フェース部との間に延びる複数の連結部とを有しており、
前記連結部のそれぞれが、フェース垂直方向に対して傾斜して延びる傾斜部を有しているゴルフクラブヘッド。
[付記2]
前記傾斜部が、直線に沿って延びる直線傾斜部を有する付記1に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記3]
前記傾斜部が、円弧に沿って延びる円弧傾斜部を有する付記1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記4]
前記傾斜部が、第1傾斜部と、前記第1傾斜部とは逆方向に傾斜する第2傾斜部とを有する付記1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記5]
前記連結部のそれぞれが、断面対称性を有している付記1から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記6]
前記断面対称性が線対称である付記5に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記7]
前記断面対称性が点対称である付記5に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記8]
前記連結部のそれぞれが、前記連結部の重心を通り且つ断面同一性を充足する軸線を有している付記1から7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記9]
前記連結部のそれぞれにおいて、前記軸線に沿った前記連結部の長さが、その軸線に沿って測定された前記フェース部の長さの20%以上である付記8に記載のゴルフクラブヘッド。
【符号の説明】
【0166】
2、102、202、302・・・ゴルフクラブヘッド
Fp1、Fp2、Fp3、Fp4・・・フェース部
Cn1、Cn2、Cn3、Cn4、Cn5、Cn6、Cn7、Cn8、Cn9、Cn10、Cn11・・・連結部
f1・・・打撃面
f2・・・フェース裏面
b1・・・前方部の前面
h1、h2、h3、h4・・・ヘッド本体