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  • 特許-紙部材、およびそれを使用した紙容器 図1
  • 特許-紙部材、およびそれを使用した紙容器 図2
  • 特許-紙部材、およびそれを使用した紙容器 図3
  • 特許-紙部材、およびそれを使用した紙容器 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】紙部材、およびそれを使用した紙容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/12 20060101AFI20221012BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20221012BHJP
   B32B 3/16 20060101ALI20221012BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20221012BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B32B15/12
B32B15/20
B32B3/16
B32B29/00
B65D65/42 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018129120
(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公開番号】P2020006566
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大田 剛史
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058286(JP,A)
【文献】特開2013-018532(JP,A)
【文献】特開2016-010905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40-42
B41M 1/18-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側にアルミニウム蒸着層を有する紙部材において、
表側が、部分的に光沢のある光沢部と、光沢を隠蔽した隠蔽部と、からなり、
前記光沢部は、紫外線硬化樹脂からなるハイグロスニスの肉盛り印刷部とし、
前記隠蔽部は、アルミニウム蒸着表面を覆う隠蔽層と、前記隠蔽層上を覆うオーバーコート層を有し、
前記光沢部が、円形形状であり、
前記光沢部に、前記肉盛り印刷部の裏面を表側に向って押し上げた円形形状の浮き上げ部を設けたことを特徴とする紙部材。
【請求項2】
アルミニウム蒸着層を有する紙部材が、アルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを、ロール状の紙にエクストルーダーラミネーションで貼り合せた巻き取り状の紙部材としたことを特徴とする請求項1に記載の紙部材。
【請求項3】
隠蔽層が白色系顔料を含有したインキからなることを特徴とする請求項1、又は2に記載の紙部材。
【請求項4】
白色系顔料が二酸化チタンと炭酸カルシウムを主体とした顔料からなることを特徴とする請求項3に記載の紙部材。
【請求項5】
請求項1~のいずれかの紙部材を使用して製造されたことを特徴とする紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙を基材とし、意匠性を向上させた紙部材と、それを使用した紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物等の表面を、単に印刷柄に頼るだけではなく、もっと他の方法も組み合わせて、より目立つような表面加工を施し、豊かな表現ができれば、印刷物の付加価値を向上させ、もっと多彩な利用に発展させることができる。
【0003】
上記要望に対して、例えば、特許文献1では、基材上に撥液性を有するニス層で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層を設けたことを特徴とする印刷物を提案している。
【0004】
グロスニスによって光沢を部分的に上げると共に、他の部分を低グロス、あるいはマットにして、その光沢の差を生かした意匠で表現するものである。しかしながら、単なるグロスニスによる光沢だけでは、高い意匠性が表現できず、より部分的に高い光沢を有する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-238626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、通常のグロスニスの光沢以上に光沢を得て、よりそれが目立つように強調して表現可能な紙部材を得ることが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紙部材は、
表側にアルミニウム蒸着層を有する紙部材において、
表側が、部分的に光沢のある光沢部と、光沢を隠蔽した隠蔽部と、からなり、
前記光沢部は、紫外線硬化樹脂からなるハイグロスニスの肉盛り印刷部とし、
前記隠蔽部は、アルミニウム蒸着表面を覆う隠蔽層と、前記隠蔽層上を覆うオーバーコー
ト層を有し、
前記光沢部が、円形形状であり、
前記光沢部に、前記肉盛り印刷部の裏面を表側に向って押し上げた円形形状の浮き上げ部を設けたことを特徴とする紙部材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙部材は、部分的なアルミニウム蒸着表面にハイグロスニスが肉盛り印刷され、さらにその表面が裏面から押し上げられた浮き上げ部とすることによって、周囲から際立って高い光沢の印刷部を得て、豊かな加飾表現を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る紙部材の断面図である。
図2】本発明に係る紙部材における浮き上げ前の状態を示す断面図である。
図3】本発明に係る紙部材の浮き上げ工程を示す断面図である。
図4】本発明に係る紙部材で、光が反射する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の紙部材の実施形態について、図で説明する。
図1は、本発明に係る紙部材の断面図である。
本発明の紙部材は、紙基材2の表側にアルミニウム蒸着層3を有している。
アルミニウム蒸着層3のおもて面側には、光沢部4と、光沢を隠蔽した隠蔽部5と、がある。
【0011】
隠蔽部5は、アルミニウム蒸着層3の表面を覆ってアルミニウム蒸着の光沢を打ち消す為、拡散作用のある成分を含む層からなる隠蔽層51と、前記隠蔽層51上を覆って、隠蔽層を保護するオーバーコート層52を有している。
【0012】
光沢部4には、紫外線硬化樹脂からなるハイグロスニスの肉盛り印刷部41があって、中央が高く、凸レンズ状に形成されている。
肉盛り印刷部41は中央が高く、形成されているが、さらに、紙基材の裏面から表側に向って押し上げた浮き上げ部42が形成され、より中央が高く形成されている。
この浮き上げ部42が形成されることによって、アルミニウム蒸着層3も中央が高く形成されている。
【0013】
図2は、本発明に係る紙部材における浮き上げ前の状態を示す断面図である。
紙基材2の紙は、坪量100~500g/m、密度0.6~1.1g/cmの範囲の紙を使用する。できれば、長繊維の紙が好ましい。
紙表面にはアンダーコート剤を塗工し、その上にアルミニウム蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを、Tダイ押出機の溶融ポリエチレンを挟みながら貼り合せることによって、紙基材2にアルミニウム蒸着層3を有するシートを製造することができる。
紙部材には、次工程で、印刷と浮き上げとの位置合わせを正確に行なえるようにする為、位置合わせの基準端を設けたり、位置合わせの孔を開孔しておくことが好ましい。もちろん、位置合わせ孔を開口した場合には、印刷版や浮き上げ型に、位置合わせのピンを少なくとも2箇所設ける必要がある。
【0014】
浮き上げ前は、紙基材2や、アルミニウム蒸着層3は平坦で、光沢部4の肉盛り印刷部41も下端が平らになっている。
肉盛り印刷部41は、ハイグロスであるシリコンの紫外線硬化樹脂を主成分とした透明樹脂を使用する。例えば、DIC株式会社製UVTクリアーEXP110224(TF-7)ニスや、株式会社T&K TOKA製UV グロスOPニス T-100などが使用できる。
これらの透明樹脂は、粘性の高い樹脂系インキで、表面張力によって、中央を高くした、凸レンズ状の状態に、印刷方式で塗工することができる。その塗工した凸状のレンズ状態のままで、紫外線を照射して硬化させる。
この時、紫外線照射による硬化は、短時間で硬化させることが出来るので、あまり樹脂の温度が上昇して粘度が変化しない内に硬化させ、その塗工した形状のままの、凸レンズの形態を保って硬化できるので、凸レンズの効果を得ることができる。
【0015】
肉盛り印刷部41周縁に隠蔽部5を設ける。隠蔽部5は、拡散作用のある成分を含む層からなる隠蔽層51を印刷して設けられる。
先に印刷した肉盛り印刷部41は、シリコンが混入されていることによって、撥水性の高いインキで印刷されている。この為、次工程の隠蔽層51を印刷すると、その肉盛り印刷部では隠蔽層51が撥ねて、塗工されず、肉盛り印刷部41の周縁にのみ、隠蔽部5が生じる。
【0016】
隠蔽部5に使用されるインキは、光を拡散させて隠蔽させる成分からなる。
この、拡散作用のある成分は、二酸化チタンや炭酸カルシウムなどの白色顔料を主成分としたインキ層で、光拡散し易い0.2~0.5μmの粒径とし、かつ、黄変しないように酸化アルミニウムや酸化珪素、ジルコニアなどによって表面処理を行なった顔料とすることが望ましい。
この白色顔料には、着色顔料を混合し、有色化した顔料であってもかまわない。または、白色顔料を主成分としたインキ層の上に、着色インキ層を設けても良い。
【0017】
さらに、隠蔽部5の表面には、マット材を混入したマットニス等でオーバーコート層52を設けることが望ましい。隠蔽部5をマット表面にすることによって、光沢部4のハイグロス表面が、光沢差によって際立つようになる。
【0018】
図3は、本発明に係る紙部材の浮き上げ工程を示す断面図である。
図3-1は浮き上げ前の状態で、図3-2が浮き上げ後の状態を示している。
浮き上げは、円形形状で浮き上げることが基本である。
円形であることによって、紙基材2はもちろんのこと、アルミニウム蒸着層3も破断しにくい。また、凸レンズも、正確なレンズに加工できる。
光沢部4を裏面から押し上げて、光沢部4が浮き上げる型は、木型に光沢部4と同形状で、位置も合わせた版6を埋め込んで製造する。
表側にも、光沢部4の所は抜いた形状の受け板7を当て、浮き上げを助ける。
また、版6の周囲にゴム版61を設けて、紙部材1を押さえて、紙部材の逃げを防ぐと共に、版6から紙部材1を抜いて、取り出しやすくする。
ゴム版61の代わりに、下方にバネを有する撥ね板であってもかまわない。
【0019】
図4は、本発明に係る紙部材で、光が反射する状態を示す断面図である。
平行な光が、紙部材の光沢部4に照射すると、レンズ効果で光が集められると共に、広範囲に広がって反射し、その高いレンズ効果が発揮される。
このような紙部材を使用して、紙容器を製造すると、高級で、目立つ、意匠性の高い紙容器にすることができるので、贈答用などの紙容器として、高付加価値の容器に利用することができる。
【0020】
本発明の紙部材は、以上のようなもので、加飾付与の乏しい紙器グラビア印刷において、従来にはなかった、レンズ状で意匠性に優れた高付加価値を付与することができる加飾を施すことができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・・・・・・・紙部材
2・・・・・・・・紙基材
3・・・・・・・・アルミニウム蒸着層
4・・・・・・・・光沢部
41・・・・・・・肉盛り印刷部
42・・・・・・・浮き上げ部
5・・・・・・・・隠蔽部
51・・・・・・・隠蔽層
52・・・・・・・オーバーコート層
6・・・・・・・・版
61・・・・・・・ゴム版
7・・・・・・・・受け板
図1
図2
図3
図4