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特許7155694固液分離装置の使用方法および固液分離装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】固液分離装置の使用方法および固液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/00 20060101AFI20221012BHJP
   B30B 9/14 20060101ALI20221012BHJP
   B01D 29/17 20060101ALI20221012BHJP
   B01D 29/25 20060101ALI20221012BHJP
   B01D 29/37 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B01D33/00 Z
B30B9/14 B
B01D29/30 501
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018134327
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2020011188
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】大村 将洋
(72)【発明者】
【氏名】千賀 達也
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-166186(JP,A)
【文献】特開2015-202447(JP,A)
【文献】特開2007-307526(JP,A)
【文献】特開平05-228695(JP,A)
【文献】実開平07-026088(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0012704(KR,A)
【文献】実開平04-039594(JP,U)
【文献】実開昭58-057393(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04;35/08-37/08
C02F 11/00-11/20
B30B 9/00-9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転に伴い回転し被処理物を送るスクリュと、前記回転軸を回転駆動させるモータと、複数の固定プレートと、隣接する前記固定プレートの間に配置されて前記スクリュの外周に接して前記スクリュの回転に伴い動く可動プレートとを含み、隣接する前記固定プレート間にろ過溝が形成され、前記スクリュを取り囲むように配置された積層ろ体と、を備え、被処理物を液体成分と固体成分とに分離する固液分離装置の使用方法であって、
位置調整部材を挿入して、前記積層ろ体に対する前記スクリュの回転軸線方向に、隣接する前記固定プレート間の距離とは異なる距離だけ前記スクリュの位置を変化させて、運転中における前記スクリュの前記可動プレートの接触位置を変化させる、固液分離装置の使用方法。
【請求項2】
前記回転軸を回転可能に支持する支持部材と前記積層ろ体との接続部分、前記積層ろ体と被処理物の排出部との接続部分、前記回転軸と前記モータに接続された減速機との接続部分、前記回転軸の前記モータ側の部分と前記スクリュ側の部分との接続部分、の少なくとも1つに前記位置調整部材を挿入して、前記積層ろ体に対する前記スクリュの回転軸線方向の位置を変化させる、請求項1に記載の固液分離装置の使用方法。
【請求項3】
前記積層ろ体に対する前記スクリュの回転軸線方向に、隣接する前記固定プレート間の距離よりも小さい距離だけ位置を変化させて、前記スクリュの前記可動プレートの接触位置を変化させる、請求項1または2に記載の固液分離装置の使用方法。
【請求項4】
所定の範囲の運転時間毎に、前記積層ろ体に対する前記スクリュの回転軸線方向の位置を変化させて、前記スクリュの前記可動プレートの接触位置を変化させる、請求項1~のいずれか1項に記載の固液分離装置の使用方法。
【請求項5】
被処理物を液体成分と固体成分とに分離する固液分離装置であって、
回転軸の回転に伴い回転し被処理物を送るスクリュと、
前記回転軸を回転駆動させるモータと、
複数の固定プレートと、隣接する前記固定プレートの間に配置されて前記スクリュの外周に接して前記スクリュの回転に伴い動く可動プレートとを含み、隣接する前記固定プレート間にろ過溝が形成され、前記スクリュを取り囲むように配置された積層ろ体と、
前記積層ろ体に対する前記スクリュの回転軸線方向の位置を隣接する前記固定プレート間の距離とは異なる距離だけ変化させるために挿入する位置調整部材とを備える、固液分離装置。
【請求項6】
前記位置調整部材は、前記積層ろ体および前記スクリュを含む固液分離装置本体に対して着脱可能に構成されている、請求項に記載の固液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固液分離装置の使用方法および固液分離装置に関し、特に、スクリュを備える固液分離装置の使用方法および固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリュを備える固液分離装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、回転軸の回転に伴い回転し被処理物を送るスクリュコンベア(スクリュ)と、回転軸を回転駆動させる駆動手段と、複数の固定リング、および、隣接する固定リングの間に配置されスクリュコンベアの外周に接してスクリュコンベアの回転に伴い動く遊動リングを含む積層ろ体と、を備える固液分離装置が開示されている。積層ろ体は、遊動リングと固定リングとの間に微小ギャップが形成され、スクリュコンベアを取り囲むように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-228695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、遊動リングは、隣接する固定リングの間に配置されているため、スクリュコンベアと遊動リングとが接するスクリュコンベアの位置は、隣接する固定リング間に限られる。つまり、固定リングと対向する位置のスクリュコンベアは、固定リングとも遊動リングとも接することはない。一方、隣接する固定リング間の位置のスクリュコンベアは、常に遊動リングと接する。このため、固定リング間の位置のスクリュコンベアが遊動リングと常にこすれ合い、摩耗するため、スクリュコンベアは、固定リングに対向する位置に比べて、固定リング間の位置(遊動リングが配置された位置)の摩耗が進んでしまうという不都合がある。固定リング間のスクリュコンベアの摩耗が進めば、遊動リングの半径方向の可動幅が小さくなるため、スクリュコンベアを交換する必要がある。その結果、スクリュコンベア(スクリュ)の寿命を延ばすことが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、摩耗に起因するスクリュの寿命を延ばすことが可能な固液分離装置の使用方法および固液分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における固液分離装置の使用方法は、回転軸の回転に伴い回転し被処理物を送るスクリュと、回転軸を回転駆動させるモータと、複数の固定プレートと、隣接する固定プレートの間に配置されてスクリュの外周に接してスクリュの回転に伴い動く可動プレートとを含み、隣接する固定プレート間にろ過溝が形成され、スクリュを取り囲むように配置された積層ろ体と、を備え、被処理物を液体成分と固体成分とに分離する固液分離装置の使用方法であって、位置調整部材を挿入して、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向に、隣接する固定プレート間の距離とは異なる距離だけスクリュの位置を変化させて、運転中におけるスクリュの可動プレートの接触位置を変化させる。
【0008】
この発明の第1の局面における固液分離装置の使用方法では、上記のように構成することによって、可動プレートと接するスクリュの位置を変化させることができるので、スクリュの一部分だけ摩耗が進むのを抑制することができる。つまり、スクリュの摩耗する位置をスクリュ全体に分散させることができるので、スクリュの摩耗が進んで交換が必要となるまでの運転時間を延ばすことができる。その結果、摩耗に起因するスクリュの寿命を延ばすことができる。また、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向に、隣接する固定プレート間の距離とは異なる距離だけ位置を変化させて、スクリュの可動プレートの接触位置を変化させることにより、スクリュと可動プレートとが接触していたスクリュの位置が他の可動プレートの位置に再び移動されるのを抑制することができるので、スクリュの一部分だけ摩耗が進むのを効果的に抑制することができる。また、所定の運転時間経過後に位置調整部材を挿入するだけで、位置調整部材の厚み分だけ正確に積層ろ体に対するスクリュの位置を変化させることができる。これにより、可動プレートと接するスクリュの位置を精度よく変えることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、回転軸を回転可能に支持する支持部材と積層ろ体との接続部分、積層ろ体と被処理物の排出部との接続部分、回転軸とモータに接続された減速機との接続部分、回転軸のモータ側の部分とスクリュ側の部分との接続部分、の少なくとも1つに位置調整部材を挿入して、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向の位置を変化させる。このように構成すれば、回転軸を回転可能に支持する支持部材と積層ろ体との接続部分、積層ろ体と被処理物の排出部との接続部分、回転軸とモータに接続された減速機との接続部分、または、回転軸のモータ側の部分とスクリュ側の部分との接続部分に、位置調整部材を挿入することにより、固液分離装置全体を分解することなく容易に可動プレートと接するスクリュの位置を変えることができる。
【0012】
上記第1の局面における固液分離装置の使用方法において、好ましくは、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向に、隣接する固定プレート間の距離よりも小さい距離だけ位置を変化させて、スクリュの可動プレートの接触位置を変化させる。このように構成すれば、必要最小量だけスクリュの位置を移動させるので、作業負担や位置調整部材の大きさが増大するのを抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面における固液分離装置の使用方法において、好ましくは、所定の範囲の運転時間毎に、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向の位置を変化させて、スクリュの可動プレートの接触位置を変化させる。このように構成すれば、スクリュの可動プレートに接する位置を定期的に変化させることができるので、スクリュの一部分だけ摩耗が進むのを効果的に抑制することができる。
【0014】
この発明の第2の局面における固液分離装置は、被処理物を液体成分と固体成分とに分離する固液分離装置であって、回転軸の回転に伴い回転し被処理物を送るスクリュと、回転軸を回転駆動させるモータと、複数の固定プレートと、隣接する固定プレートの間に配置されてスクリュの外周に接してスクリュの回転に伴い動く可動プレートとを含み、隣接する固定プレート間にろ過溝が形成され、スクリュを取り囲むように配置された積層ろ体と、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向の位置を隣接する固定プレート間の距離とは異なる距離だけ変化させるために挿入する位置調整部材とを備える。
【0015】
この発明の第2の局面における固液分離装置では、上記のように構成することによって、可動プレートと接するスクリュの位置を変化させることができるので、スクリュの一部分だけ摩耗が進むのを抑制することができる。つまり、スクリュの摩耗する位置をスクリュ全体に分散させることができるので、スクリュの摩耗が進んで交換が必要となるまでの運転時間を延ばすことができる。その結果、摩耗に起因するスクリュの寿命を延ばすことが可能な固液分離装置を提供することができる。また、隣接する固定プレート間の距離とは異なる距離だけ位置を変化させることにより、スクリュと可動プレートとが接触していたスクリュの位置が他の可動プレートの位置に再び移動されるのを抑制することができるので、スクリュの一部分だけ摩耗が進むのを効果的に抑制することができる。
【0016】
上記第2の局面における固液分離装置において、好ましくは、位置調整部材は、積層ろ体およびスクリュを含む固液分離装置本体に対して着脱可能に構成されている。このように構成すれば、位置調整部材を挿入した場合と、取り外した場合とで、位置調整部材の厚み分だけ正確に積層ろ体に対するスクリュの位置を変化させることができる。これにより、可動プレートと接するスクリュの位置を精度よく変えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、摩耗に起因するスクリュの寿命を延ばすことが可能な固液分離装置の使用方法および固液分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による固液分離装置を示した概略図である。
図2】本発明の一実施形態による固液分離装置の積層ろ体を示した図である。
図3】本発明の一実施形態による固液分離装置の位置調整部材を示した図である。
図4】本発明の一実施形態による固液分離装置のスクリュと可動プレートとの接触位置の変化を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態による固液分離装置の位置調整部材の挿入を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態の変形例による固液分離装置の位置調整部材の挿入位置を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態の変形例による固液分離装置の位置調整部材の挿入位置を説明するための回転軸の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(固液分離装置の構成)
図1図4を参照して、本発明の一実施形態による固液分離装置100について説明する。
【0021】
本発明の一実施形態による固液分離装置100は、図1に示すように、回転軸1と、スクリュ2と、積層ろ体3と、モータ4と、原液供給口5と、排出口6と、支持フレーム7と、洗浄管8とを備えている。また、固液分離装置100は、位置調整部材9を備えている。固液分離装置100は、図1に示すように、原液供給口5から原液(被処理物)が供給されるように構成されている。また、固液分離装置100は、被処理物(原液)を液体成分(ろ液)と固体成分(脱水ケーキ)とに分離するように構成されている。また、固液分離装置100は、分離した液体成分(ろ液)を下部から排出するように構成されている。また、固液分離装置100は、分離した固体成分(脱水ケーキ)を排出口6から排出するように構成されている。
【0022】
回転軸1は、モータ4の駆動により回転駆動される。また、回転軸1は、順回転および逆回転することが可能に構成されている。回転軸1は、金属材料により形成されている。回転軸1は、X方向に沿って延びるように配置されている。回転軸1は、略水平方向に延びるように配置されている。回転軸1は、原液供給口5から排出口6に向かって徐々に太くなるように形成されている。つまり、回転軸1は、被処理物を送る方向における上流部側から下流部側に向かって(X1方向に)徐々に径が大きくなるように形成されている。これにより、上流部側から下流部側に向けて被処理物の流路が狭くなる。
【0023】
回転軸1は、原液供給口5側(X2方向側)の端部が、軸受11により回転可能に支持されている。なお、回転軸1は、軸受11に対して、回転軸線方向(X方向)の動きは制限されていない。つまり、他の固定を解除すれば、回転軸1は、軸受11に対して、回転軸線方向に移動させることが可能である。また、回転軸1は、排出口6側(X1方向側)の端部が、減速機41に接続されている。減速機41には、モータ4が接続されている。減速機41は、支持部材42により支持されている。
【0024】
スクリュ2は、回転軸1に設けられている。具体的には、スクリュ2は、回転軸1に沿って、らせん状に設けられている。また、スクリュ2は、1つの連続した羽根により形成されている。スクリュ2は、回転軸1の回転に伴い回転する。また、スクリュ2は、回転することにより、被処理物を送るように構成されている。具体的には、スクリュ2は、回転軸1が順回転することにより、被処理物を原液供給口5側から排出口6側に向かって(X1方向に)送るように構成されている。また、スクリュ2は、回転軸1が逆回転することにより、被処理物を排出口6側から原液供給口5側に向かって(X2方向に)送るように構成されている。脱水処理において、スクリュ2は、低速で回転される。たとえば、スクリュ2は、0.5rpm~5rpm程度の回転数で順回転される。また、濃縮処理を行う場合、たとえば、スクリュ2は、10rpm~25rpm程度の回転数で順回転される。
【0025】
スクリュ2は、金属材料により形成されている。スクリュ2のピッチは、積層ろ体3内の被処理物を送る方向における上流部側から下流部側に向かって(X1方向に)徐々に小さくなるように構成されている。つまり、スクリュ2は、X方向の間隔が、原液供給口5から排出口6に向かって徐々に小さくなるように形成されている。スクリュ2は、積層ろ体3の内部に設けられている。
【0026】
スクリュ2の半径方向の外側は、半径方向の内側よりも硬い金属材料により形成されている。スクリュ2の半径方向の内側の部分は、ステンレスにより形成されている。スクリュ2の半径方向の外側の部分は、ステンレスよりも硬い特殊合金により形成されている。これにより、スクリュ2の外側部分の摩耗を抑制することが可能である。
【0027】
積層ろ体3は、図2に示すように、複数の固定プレート31と、複数の可動プレート32とを含んでいる。また、積層ろ体3は、スペーサ33を含んでいる。積層ろ体3は、スクリュ2を取り囲むように配置されている。具体的には、積層ろ体3は、スクリュ2が固定プレート31の貫通穴311および可動プレート32の貫通穴321に挿通されている。また、積層ろ体3は、固定プレート31および可動プレート32とがX方向に交互に積層された多重板構造を有している。
【0028】
複数の固定プレート31は、スクリュ2が挿通される貫通穴311とは別に、それぞれ、スペーサ33が螺合されるネジ穴312を有している。そして、スペーサ33は、ネジ穴312に螺合されることより、互いに隣接する固定プレート31同士のX方向の隙間D1を保持するように構成されている。これにより、隣接する固定プレート31間に、隙間D1のろ過溝Sが形成される。また、複数の固定プレート31は、支持フレーム7に対して固定されている。複数の固定プレート31は、支持フレーム7に対して固定されることにより、可動プレート32との積層状態が維持されるように構成されている。固定プレート31は、金属材料により形成されている。たとえば、固定プレート31は、ステンレスにより形成されている。
【0029】
可動プレート32は、隣接する固定プレート31の間に配置されている。可動プレート32のX方向の厚みD2は、隙間D1よりも小さい。したがって、隣接する固定プレート31間のろ過溝Sの可動プレート32を除く部分には、隙間(D1-D2)のろ水流出溝Gが形成されている。すなわち、ろ水流出溝Gとは、X方向に隣接して配置される2つの可動プレート32と、固定プレート31との間の隙間部分である。このため、可動プレート32は、回転軸1の軸方向(X方向)に揺動可能に構成されている。
【0030】
可動プレート32は、貫通穴321を構成する内周面がスクリュ2の外周部に当接して、スクリュ2の回転に伴い回転軸1の周方向および半径方向に常に動くように構成されている。このように、スクリュ2の回転により、ろ過溝S内で可動プレート32を常にX方向に揺動させながらZ方向に移動させることによって、ろ水流出溝Gが目詰まりするのを抑制することが可能である。すなわち、固液分離装置100は、ろ水流出溝G(ろ過溝S)をセルフクリーニングすることが可能である。可動プレート32は、金属材料により形成されている。たとえば、可動プレート32は、ステンレスにより形成されている。つまり、可動プレート32は、スクリュ2の外側の部分よりも柔らかい材料により形成されている。
【0031】
図1に示すように、モータ4は、回転軸1の軸方向(X方向)の一方端部(X1方向側端部)に設けられている。つまり、モータ4は、回転軸1の排出口6側に設けられている。モータ4は、回転軸1を回転駆動させるように構成されている。具体的には、モータ4は、減速機41を介して、回転軸1を回転させるように構成されている。減速機41は、たとえば、1/720程度の減速比において、モータ4の出力を減速して回転軸1に伝達する。
【0032】
排出口6には、管部61と、背圧板62とが設けられている。管部61は、積層ろ体3に接続されており、排出される被処理物を排出口6に導くように構成されている。管部61は、スクリュ2を取り囲むように配置されている。背圧板62は、被処理物の排出口6側のスクリュ2の一端近傍に配置されている。また、背圧板62は、固液分離装置100により処理される被処理物の固体成分に対して圧力を作用させるように構成されている。これにより、積層ろ体3の下流部側(X1方向側)の圧力を高めることが可能である。
【0033】
支持フレーム7は、複数の固定プレート31を互いに固定するように構成されている。具体的には、支持フレーム7は、複数の固定プレート31の外周端部に接触状態で配置されている。また、支持フレーム7は、回転軸1の軸方向(X方向)に沿って延びている。また、固定プレート31への支持フレーム7の接触部分は、固定プレート31の周方向に複数(たとえば3つ)設けられている。また、支持フレーム7には、複数の補強板71が設けられている。補強板71は、積層ろ体3を補強している。補強板71は、固定プレート31および可動プレート32が積層された積層ろ体3の途中に挿入されている。補強板71は、円環形状を有している。補強板71は、金属材料により形成されている。また、補強板71は、固定プレート31および可動プレート32よりも厚み(X方向の長さ)が大きく形成されている。また、補強板71は、支持フレーム7に固定されている。
【0034】
洗浄管8は、積層ろ体3を洗浄するための水を通すように構成されている。また、洗浄管8は、外部の水源と接続されており、洗浄管8から積層ろ体3に向けて洗浄のための水を噴射するように構成されている。これにより、ろ水流出溝Gを通って積層ろ体3外部へ漏れ出た被処理物の固体成分を積層ろ体3から除去することができる。
【0035】
位置調整部材9は、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向(X方向)の位置を変化させるために挿入される。具体的には、位置調整部材9は、回転軸1を回転可能に支持する支持部材42と積層ろ体3との接続部分に挿入されて、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向の位置を変化させる。また、位置調整部材9は、積層ろ体3およびスクリュ2を含む固液分離装置本体101に対して着脱可能に構成されている。また、図4に示すように、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向に、隣接する固定プレート31間の距離D3〈中心間距離〉とは異なる距離だけ位置を変化させて、スクリュ2の可動プレート32の接触位置を変化させる。たとえば、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向に、隣接する固定プレート31間の距離D3(中心間距離)よりも小さい距離D4だけ位置を変化させて、スクリュ2の可動プレート32の接触位置を変化させる。
【0036】
また、所定の範囲の運転時間毎に、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向の位置を変化させて、スクリュ2の可動プレート32の接触位置を変化させる。たとえば、被処理物として有機汚泥を処理する場合、約2500時間運転させる毎に積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向の位置を変化させる。
【0037】
位置調整部材9は、図9に示すように、積層ろ体3に対して、Y方向の両側に配置されるように構成されている。また、位置調整部材9は、スクリュ2の回転軸線方向(X方向)に所定の厚みを有している。たとえば、位置調整部材9は、約3mmの厚みを有している。つまり、位置調整部材9を挿入すると、挿入していない場合に比べて、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向(X方向)の位置が、約3mm変化する。また、位置調整部材9は、Y方向から挿入して配置するために、締結部材が挿入される孔63を避ける凹部91が設けられている。
【0038】
(位置調整方法)
次に、図5を参照して、積層ろ体3に対するスクリュ2の位置調整方法について説明する。この位置調整方法では、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向(X方向)の位置を変化させて、運転中におけるスクリュ2の可動プレート32の接触位置を変化させる。
【0039】
まず、積層ろ体3に対する回転軸1およびスクリュ2の固定を解除する。具体的には、積層ろ体3に対する支持部材42の固定を解除する。これにより、回転軸1およびスクリュ2を、積層ろ体3に対してX方向に移動させることが可能になる。
【0040】
次に、モータ4を運転時とは逆回転させて、回転軸1およびスクリュ2を逆回転させる。これにより、スクリュ2の螺旋構造により、積層ろ体3に対して回転軸1およびスクリュ2がX1方向に移動される(引き出される)。この際、回転軸1およびスクリュ2は、位置調整部材9の厚み以上移動される。
【0041】
回転軸1およびスクリュ2を引き出した状態で、位置調整部材9が、支持部材42と、積層ろ体3との間に挿入されて配置される。そして、モータ4を正回転させて、回転軸1およびスクリュ2を正回転させる。これにより、積層ろ体3に対して回転軸1およびスクリュ2がX2方向に移動される(引き入れられる)。この際、位置調整部材9が挿入された分だけ、元の状態に比べて、回転軸1およびスクリュ2は、X1方向側に配置される。
【0042】
その後、積層ろ体3に対して回転軸1およびスクリュ2を固定する。具体的には、積層ろ体3に対して支持部材42を固定する。スクリュ2の位置が調整された後は、再び、所定の範囲の時間(たとえば、2500時間)運転させた後、位置調整部材9を外してスクリュ2を正回転させて、元の位置に戻す。さらに、その後、所定の範囲の時間(たとえば、2500時間)運転すれば、再度スクリュ2を逆回転させて移動させる。同様にして、この処理が繰り返される。なお、逆回転方向に移動→正回転方向に移動を交互に繰り返す処理を行う説明を行ったが、モータ4側(排出口6側)のシャフト長さに余裕があれば逆回転方向への移動のみを繰り返してもよい。また、移動させる長さ(距離)は、固定プレート31の距離D3や、スクリュ2のシャフトの長さ等に基づいて、適宜変更してもよい。
【0043】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0044】
本実施形態では、上記のように、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向の位置を変化させて、運転中におけるスクリュ2の可動プレート32の接触位置を変化させる。これにより、可動プレート32と接するスクリュ2の位置を変化させることができるので、スクリュ2の一部分だけ摩耗が進むのを抑制することができる。つまり、スクリュ2の摩耗する位置をスクリュ2全体に分散させることができるので、スクリュ2の摩耗が進んで交換が必要となるまでの運転時間を延ばすことができる。その結果、摩耗に起因するスクリュ2の寿命を延ばすことができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、位置調整部材9を挿入して、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向の位置を変化させる。これにより、所定の運転時間経過後に位置調整部材9を挿入するだけで、位置調整部材9の厚み分だけ正確に積層ろ体3に対するスクリュ2の位置を変化させることができる。その結果、可動プレート32と接するスクリュ2の位置を精度よく変えることができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向に、隣接する固定プレート31間の距離とは異なる距離だけ位置を変化させて、スクリュ2の可動プレート32の接触位置を変化させる。これにより、スクリュ2と可動プレート32とが接触していたスクリュ2の位置が他の可動プレート32の位置に再び移動されるのを抑制することができるので、スクリュ2の一部分だけ摩耗が進むのを効果的に抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向に、隣接する固定プレート31間の距離よりも小さい距離だけ位置を変化させて、スクリュ2の可動プレート32の接触位置を変化させる。これにより、必要最小量だけスクリュ2の位置を移動させるので、作業負担や位置調整部材9の大きさが増大するのを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、所定の範囲の運転時間毎に、積層ろ体3に対するスクリュ2の回転軸線方向の位置を変化させて、スクリュ2の可動プレート32の接触位置を変化させる。これにより、スクリュ2の可動プレート32に接する位置を定期的に変化させることができるので、スクリュ2の一部分だけ摩耗が進むのを効果的に抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、位置調整部材9を、積層ろ体3およびスクリュ2を含む固液分離装置本体101に対して着脱可能に構成する。これにより、位置調整部材9を挿入した場合と、取り外した場合とで、位置調整部材9の厚み分だけ正確に積層ろ体3に対するスクリュ2の位置を変化させることができる。これにより、可動プレート32と接するスクリュ2の位置を精度よく変えることができる。
【0050】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0051】
たとえば、上記実施形態では、位置調整部材9を、支持部材42と積層ろ体3との接続部分に挿入する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、図6に示すように、位置調整部材9を、減速機41と支持部材42との接続部分(1の位置)に挿入してもよい。また、位置調整部材9を、積層ろ体3と被処理物の排出部64との接続部分(2の位置)に挿入してもよい。また、図7に示すように、位置調整部材9を、回転軸1とモータ4に接続された減速機41との接続部分(3の位置)に挿入してもよい。また、位置調整部材9を、回転軸1のモータ側の部分12とスクリュ側の部分13との接続部分(4の部分)に挿入してもよい。モータ側の部分12と、スクリュ側の部分13とは、フランジ121および131の固定により接続されている。
【0052】
また、上記実施形態では、2つの位置調整部材が水平方向(Y方向)に配列されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、位置調整部材は、1つ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。また、厚さの異なる位置調整部材を複数用意していてもよい。また、厚み方向に位置調整部材を重ねて挿入してもよい。これにより、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向の位置を変化量を異ならせることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、2つの位置調整部材が水平方向(Y方向)に配列されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、位置調整部材を垂直方向(Z方向)に配列してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、位置調整部材の着脱により、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向の位置を変化させる構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、位置調整部材の厚みが変化することにより、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向の位置を変化させてもよい。たとえば、位置調整部材を、圧力を加えることにより、経年的に縮む材料により形成してもよい。たとえば、位置調整部材は、経年的に圧縮されて縮んでもよいし、状態変化(固体から気体、または、固体から液体)により溶けて縮んでもよい。これにより、スクリュは、位置調整部材の縮小に伴い、積層ろ体に対する回転軸線方向の位置が変化される。つまり、運転中は、スクリュは正回転されるため、回転軸線方向において、積層ろ体に入り込む方向に力が作用される。そして、位置調整部材の厚みが徐々に小さくなれば、その分だけ、スクリュは移動される。
【0055】
また、位置調整部材を、温度差により伸縮しやすい部材により形成してもよい。つまり、位置調整部材を、積層ろ体やスクリュなどの他の部材に対して、熱膨張係数が大きい材料により形成されていてもよい。これにより、運転により発生する熱の影響や、季節による温度変化により、位置調整部材の厚みが変化するので、積層ろ体に対するスクリュの回転軸線方向の位置が変化される。
【0056】
また、上記実施形態では、回転軸は、原液供給口から排出口に向かって徐々に太くなるように形成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、回転軸を、原液供給口から排出口に向かって略均一の太さで形成してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、モータを回転軸の排出口側に配置した例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、モータを回転軸の原液供給口側に配置してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、回転軸を略水平に配置した例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、回転軸を傾斜させて配置してもよい。その場合、原液供給口側を下に、排出口側を上に向けて傾斜させることが望ましい。また、回転軸を垂直に立てて配置してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、隣接する固定プレート間にスペーサを設けて固定プレート間にろ過溝を形成する構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、スペーサを設けずに固定プレート間にろ過溝を形成してもよい。たとえば、固定プレートに凸部を設けて、隣接する固定プレート間の位置を位置決めしてもよいし、通しボルトに全ての固定プレートを通すことで固定してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 回転軸
2 スクリュ
3 積層ろ体
4 モータ
31 固定プレート
32 可動プレート
41 減速機
42 支持部材
64 排出部
100 固液分離装置
S ろ過溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7