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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20221012BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221012BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
B60C1/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018142324
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020019835
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寛太
(72)【発明者】
【氏名】松本 典大
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/181776(WO,A1)
【文献】特開2006-137830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部に対して、水素放出率が0.20質量%以上、窒素吸着比表面積が230~280m/gであるカーボンブラックを2~200質量部含むゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックは、圧縮による油吸収量が80~140cm/100gである請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックは、最大頻度ストークス相当径が30~100nmである請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックは、ストークス相当径半値幅が20~80nmである請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量が80~150cm /100g、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が120~185m /gである請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
タイヤ用ゴム組成物である請求項1~のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に対する安全性及び低燃費性への要求にともなって、タイヤ用ゴム材料において、耐摩耗性及び低燃費性の同時改良が望まれている。
【0003】
従来から、このような課題を解決するために、高い補強性と優れた耐摩耗性とを付与することが可能な微粒子カーボンブラックを使用する方法が実施されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、一般的に、微粒子カーボンブラックの使用は、ゴム組成物の粘度上昇による加工性の悪化と、これに伴う充填剤の分散性低下とをもたらす傾向があるという点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/181776号
【文献】国際公開第2014/189102号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、良好な加工性、耐摩耗性、低燃費性及び破断強度を有するゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決する手法について鋭意検討した結果、特定のカーボンブラックを使用することで、良好な加工性、耐摩耗性、低燃費性及び破断強度(特に、耐摩耗性及び破断強度)が得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明は、ゴム成分100質量部に対して、水素放出率が0.20質量%以上、窒素吸着比表面積が230~280m/gであるカーボンブラックを2~200質量部含むゴム組成物に関する。
【0008】
上記カーボンブラックは、圧縮による油吸収量が80~140cm/100gであることが好ましい。
【0009】
上記カーボンブラックは、最大頻度ストークス相当径が30~100nmであることが好ましい。
【0010】
上記カーボンブラックは、ストークス相当径半値幅が20~80nmであることが好ましい。
【0011】
上記ゴム組成物は、タイヤ用ゴム組成物であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定のカーボンブラックを含むゴム組成物であるので、良好な加工性、耐摩耗性、低燃費性及び破断強度を有し、耐摩耗性、低燃費性及び破断強度に優れた空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、水素放出率が0.20質量%以上、窒素吸着比表面積(NSA)が230~280m/gであるカーボンブラックを2~200質量部含む。これにより、良好な加工性、耐摩耗性、低燃費性及び破断強度が得られる。このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
【0015】
本発明者らの検討により、カーボンブラックの水素放出率、NSAについて、以下の傾向があることが判明した。
カーボンブラックを微粒子化し、カーボンブラックのNSA比表面積を増加させると、ポリマーとの相互作用が増加し、補強性が向上する。しかしながら、カーボンブラックの微粒子化は、練りゴムの粘度を上昇させ、練りゴム中でのカーボンブラックの分散を悪化させる傾向がある。水素放出率は、カーボンブラックの表面活性の指標となり、水素放出率が高いほど、表面活性が高い。カーボンブラック表面を高活性化すると、配合ゴム中でのカーボンブラックの分散が向上する。そこで、微粒子カーボンブラックの表面を高活性化することで、配合ゴム中の微粒子カーボンブラックの分散が向上し、微粒子カーボンブラックが有する、耐摩耗性、低燃費性の向上効果をより好適に発揮させられると推測し、検討を行った。その結果、水素放出率を0.20質量%以上としつつ、NSAを230[m/g]以上とすることで、NSAが230[m/g]未満の場合と比較して、良好な低燃費性を保ちつつ、耐摩耗性を著しく向上できることが分かった。NSAを280[m/g]超とすると、カーボンブラックによる加工性悪化が顕著となり、カーボンブラックの分散悪化により、低燃費性と耐摩耗性は悪化する。
本発明では、微粒子カーボンブラックの表面を高活性化することで、配合ゴム中の微粒子カーボンブラックの分散が向上し、微粒子カーボンブラックを配合した効果が充分に得られると共に、「カーボンブラック表面の高活性化による、配合ゴム中のカーボンブラックの分散向上」と、「カーボンブラックの微粒子化による、補強性の向上」により、補強性が相乗的に向上し、良好な加工性、耐摩耗性、低燃費性及び破断強度が得られ、破断強度、耐摩耗性が特に向上する。
【0016】
本発明では、カーボンブラックの水素放出率が0.20質量%以上と、表面を高活性化することにより、NSAを230~280m/gとした微粒子カーボンブラックを配合する効果が充分に発揮されると共に、補強性が相乗的に向上し、良好な加工性、耐摩耗性、低燃費性及び破断強度が得られるものと考えられる。
【0017】
(ゴム組成物)
上記ゴム組成物は、水素放出率が0.20質量%以上、窒素吸着比表面積が230~280m/gであるカーボンブラック(1)を含む。カーボンブラック(1)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
カーボンブラック(1)の水素放出率は、0.20質量%以上、好ましくは0.21質量%以上、より好ましくは0.22質量%以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下である。水素放出率が上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
なお、本明細書において、カーボンブラックの水素放出率は、105℃の恒温乾燥機中で1時間乾燥したカーボンブラックを、デシケータ中で室温まで冷却した後、スズ製のチューブ状のサンプル容器に入れて圧着、密栓し、水素分析装置で、アルゴン気流下、2000℃で15分間加熱した時の水素ガス発生量を測定し、質量分率で表したものである。
【0019】
カーボンブラック(1)の窒素吸着比表面積(NSA)は、230~280m/gであればよいが、好ましくは235m/g以上、より好ましくは240m/g以上、更に好ましくは245m/g以上であり、また、好ましくは275m/g以下、より好ましくは270m/g以下である。NSA比表面積が上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
なお、本明細書において、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217-2:2001によって求められる。
【0020】
カーボンブラック(1)のジブチルフタレート(DBP)吸油量は、好ましくは80cm/100g以上、より好ましくは100cm/100g以上、更に好ましくは120cm/100g以上であり、また、好ましくは150cm/100g以下、より好ましくは140cm/100g以下、更に好ましくは135cm/100g以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、カーボンブラックのDBP給油量は、JIS K6217-4:2001に準拠して測定される値である。
【0021】
カーボンブラック(1)の圧縮による油吸収量(COAN)は、好ましくは80cm/100g以上、より好ましくは90cm/100g以上、更に好ましくは100cm/100g以上であり、また、好ましくは140cm/100g以下、より好ましくは130cm/100g以下、更に好ましくは120cm/100g以下である。COANが上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、カーボンブラックのCOANは、JIS K 6217-4:2001に準拠し、ジブチルフタレートを用いて測定される値である。
【0022】
カーボンブラック(1)のセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)比表面積は、好ましくは120m/g以上、より好ましくは150m/g以上、更に好ましくは165m/g以上であり、また、好ましくは220m/g以下、より好ましくは200m/g以下、更に好ましくは185m/g以下である。CTAB比表面積が上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、カーボンブラックのCTAB比表面積は、JIS K6217-3:2001に準拠して測定される値である。
【0023】
カーボンブラック(1)の最大頻度ストークス相当径(Dmod)は、好ましくは30nm以上、より好ましくは35nm以上、更に好ましくは45nm以上であり、また、好ましくは100nm以下、より好ましくは85nm以下、更に好ましくは65nm以下である。Dmodは、カーボンブラックの凝集体の代表的な大きさであり、Dmodが上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0024】
カーボンブラック(1)のストークス相当径半値幅(D1/2)は、好ましくは20nm以上、より好ましくは25nm以上、更に好ましくは35nm以上であり、また、好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは55nm以下である。D1/2は、カーボンブラックの凝集体径分布の広がりを表す指標であり、D1/2が上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0025】
なお、本明細書において、Dmod、D1/2は、以下の方法で測定される値である。
界面活性剤(SIGMA CHEMICAL社製「NONIDET P-40」)を加えた20%エタノール水溶液に精秤したカーボンブラック試料を加えて、カーボンブラック濃度が0.01質量%の試料液を調製する。この試料液を超音波分散機(超音波工業製「超音波発生装置USV-500V」)を用いて、振動数200kHz、出力100Wとして5分間分散処理することにより、カーボンブラックスラリーを調製する。一方、遠心沈降式の粒度分布測定装置(BROOK HAVEN INSTRUMENTS社製「BI-DCP PARTICLSIZER」)にスピン液(純水)10ミリリットルを注入し、更にバッファー液(20%エタノール水溶液)1ミリリットルを注入した後、前記調製したカーボンブラックスラリー各1ミリリットルを注入し、回転数10000rpmで遠心沈降させることによりストークス相当径を測定し、ストークス相当径に対して相対的な発生頻度のヒストグラムを作成する。ヒストグラムのピーク(A)を通るY軸と平行な直線と、ヒストグラムのX軸との交点をCとする。このCでのストークス直径を最大頻度ストークス相当径(Dmod)とする。また線分ACの中点をFとして、Fを通りX軸に平行な直線Gとヒストグラムの分布曲線との2点の交点(D、E)を求め、このDとEのストークス直径の差の絶対値をストークス相当径半値幅値(D1/2)とする。
【0026】
上記カーボンブラック(1)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2~200質量部であればよいが、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。カーボンブラック(1)の含有量が上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0027】
上記ゴム組成物では、上記カーボンブラック(1)と共に、上記カーボンブラック(1)以外のカーボンブラックを使用してもよい。この場合のカーボンブラックの合計含有量は、上記カーボンブラック(1)を単独で用いる場合と同様の量とすればよい。
【0028】
上記カーボンブラック(1)は、当業者であれば、上記目標特性が定まれば公知の製造方法により製造できる。その製造方式は特に限定されないが、具体的には、燃焼ガス中に原料油を噴霧してカーボンブラックを製造する方法が採用されることが好ましく、例えば、ファーネス法やチャンネル法等の従来から公知の方法が用いられる。なかでも、以下に示すファーネス法が好ましい。
【0029】
ファーネス法(オイルファーネス法)は、例えば特開2004-43598号公報、特開2004-277443号公報などのように、反応炉内に高温燃焼ガス流を発生させる燃焼帯域、高温燃焼ガス流に原料炭化水素を導入して原料炭化水素を熱分解反応によりカーボンブラックに転化させる反応帯域、及び反応ガスを急冷して反応を停止する反応停止帯域を有する装置を用いるプロセスであって、燃焼条件、高温燃焼ガス流速、反応炉内への原料油の導入条件、カーボンブラック転化から該反応停止までの時間等の諸条件を制御することによって種々の特性のカーボンブラックを製造することができる。
【0030】
燃焼帯域では、高温燃焼ガスを形成させるため、酸素含有ガスとして空気、酸素またはそれらの混合物とガス状または液体の燃料炭化水素を混合燃焼させる。燃料炭化水素としては、一酸化炭素、天然ガス、石炭ガス、石油ガス、重油等の石油系液体燃料、クレオソート油等の石炭系液体燃料が使用される。燃焼は、燃焼温度が1400℃~2000℃の範囲となるように制御されるのが好ましい。
【0031】
反応帯域では、燃焼帯域で得られた高温燃焼ガス流に並流又は横方向に設けたバーナーから原料炭化水素を噴霧導入し、原料炭化水素を熱分解させてカーボンブラックに転化させる。好ましくは、ガス流速が100~1000m/sの範囲の高温燃焼ガス流に、原料油を1本以上のバーナーにより導入する。原料油は、2本以上のバーナーにより分割し導入することが好ましい。また、反応効率を向上させる為に反応ゾーンに絞り部を設けることが好ましい。絞り部の絞り部径/絞り部上流域径の比は、0.1~0.8が好ましい。
【0032】
反応停止帯域では、高温反応ガスを1000~800℃以下に冷却する為、水スプレー等が行われる。原料油を導入してからの反応停止までの時間は2~100m秒が好ましい。冷却されたカーボンブラックは、ガスから分離回収された後、造粒、乾燥等の公知のプロセスをとることができる。
【0033】
原料油の具体例としては、例えば、(1)アントラセン等の芳香族炭化水素;クレオソート油等の石炭系炭化水素;EHEオイル(エチレン製造時の複製油)、FCCオイル(流動接触分解残渣油)等の石油系重質油からなる群より選択される少なくとも1種と、(2)脂肪族炭化水素との混合原料油が挙げられる。なお、これらは、改質されていてもよい。なかでも、石炭系炭化水素と脂肪族炭化水素との混合原料油が好ましい。
【0034】
脂肪族炭化水素としては、例えば、プロセスオイルなどに代表される石油系脂肪族炭化水素、及び大豆油、なたね油、パーム油などの脂肪酸に代表される動植物油等を使用することができる。
ここで動植物油とは、魚類肝臓から得られる脂肪油(肝油)やクジラからとれる海獣油のような水産動物油及び牛脂、豚脂などのような陸産動物油のほか、植物の種子、果実、核などから採取される脂肪酸グリセリドを成分とする油脂等を含有する。
【0035】
使用できるゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、SBR、BR、イソプレン系ゴム(特に、イソプレン系ゴム)が好ましく、イソプレン系ゴム、SBR及びBRの併用、又は、イソプレン系ゴム及びBRの併用がより好ましい。
【0036】
SBRは特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、耐摩耗性が良好であるという理由から、BRのシス含量は90質量%以上が好ましい。
【0038】
SBR、BRは、変性されていてもよい。
変性SBR、変性BRとしては、カーボンブラック等の充填剤と相互作用する官能基を有するものであればよく、例えば、ポリマーの少なくとも一方の末端が、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性BR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ゴム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0040】
SBR、BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0041】
SBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは45質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0042】
BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0043】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質天然ゴム、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質天然ゴムとしては、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、天然ゴム(NR)が好ましい。
【0044】
イソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。また、SBRを含有する場合、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0045】
上記ゴム組成物は樹脂を含んでもよい。
本明細書において樹脂とは、高分子化合物、より具体的にはモノマー単位を重合して得られる重合体を意味し、固体状であっても液体状であってもよい。
樹脂としては、タイヤ工業において一般的に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、ポリアルキレン樹脂、クマロンインデン樹脂、αメチルスチレン系樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴムを可塑化し、フィラーの分散を促進でき、効果がより好適に得られるという理由から、ポリアルキレン樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
【0046】
ポリアルキレン樹脂としては、アルキレンに由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂、エチレンプロピレン樹脂、エチレンプロピレンスチレン樹脂、エチレンスチレン樹脂、プロピレンスチレン樹脂などが挙げられる。なかでも、エチレンプロピレン樹脂、エチレンプロピレンスチレン樹脂が好ましい。
【0047】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)などが挙げられる。
【0048】
上記テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。上記テルペン化合物としてはまた、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられる。すなわち、上記テルペン系樹脂には、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とするロジン系樹脂も含まれる。なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
【0049】
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0050】
樹脂の軟化点は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。また、上記軟化点は、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、上記樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0051】
樹脂は、水素添加されたものであってもよく、効果がより好適に得られるという理由から、樹脂は、水素添加された水素添加樹脂であることが好ましい。該水素添加は、公知の方法により行うことができ、例えば、金属触媒による接触水素添加、ヒドラジンを用いる方法などをいずれも好適に使用することができる(特開昭59-161415号公報など)。例えば、金属触媒による接触水素添加は、有機溶媒中、金属触媒の存在下、水素を加圧添加することにより実施することができ、該有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等をいずれも好適に使用することができる。これら有機溶媒は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、金属触媒としては、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケルなどをいずれも好適に使用することができる、これら金属触媒は1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。加圧する際の圧力としては、例えば、1~300kg重/cmであることが好ましい。
【0052】
上記樹脂において、二重結合の水素添加率は、1~100%であり、とりわけ、2%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、8%以上であることが更に好ましい。また、二重結合の水素添加率の上限は、水素添加反応における、加圧加熱条件、触媒等の製造技術の進歩や、生産性の向上などによりその好ましい範囲が変更され得る可能性があり、現時点では正確には確認できていないが、現状では、例えば、80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、40%以下が更に好ましく、30%以下がより更に好ましく、25%以下が特に好ましい。
なお、該水素添加率(水添率)は、H-NMR(プロトンNMR)による二重結合由来ピークの各積分値から、下記式により、算出される値である。本明細書において、水素添加率(水添率)とは、二重結合の水素添加率を意味する。
(水添率〔%〕)={(A-B)/A}×100
A:水素添加前の二重結合のピークの積分値
B:水素添加後の二重結合のピークの積分値
【0053】
樹脂としては、例えば、三井化学(株)、ストラクトール社、ヤスハラケミカル(株)、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、Rutgers Chemicals社、荒川化学工業(株)、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、東ソー(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。
【0054】
樹脂を含有する場合、樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0055】
上記ゴム組成物は、シリカを含んでもよい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、70m/g以上が好ましく、150m/g以上がより好ましい。70m/g以上にすることで、耐摩耗性、破断強度等がより向上する傾向がある。該シリカのNSAは、500m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。500m/g以下にすることで、加工性がより改善される傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0057】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0058】
シリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。20質量部以上であると、低燃費性能がより改善される傾向がある。また、該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。200質量部以下であると、加工性と低燃費性能のバランスがより改善される傾向がある。
【0059】
シリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のカーボンブラックの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよい。これにより、効果がより好適に得られる。
【0060】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、スルフィド系シランカップリング剤が好ましい。
【0061】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0062】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。3質量部以上であると、添加による効果が得られる傾向がある。また、該含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。20質量部以下であると、配合量に見合った効果が得られ、良好な混練時の加工性が得られる傾向がある。
【0063】
上記ゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果が良好に得られるという理由から、プロセスオイルが好ましく、アロマ系プロセスオイルがより好ましい。
【0064】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0065】
オイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0066】
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0067】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0068】
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0069】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
【0070】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0071】
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0072】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0073】
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0074】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0075】
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0076】
上記ゴム組成物は硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0078】
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0079】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0080】
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、三新化学工業(株)製等の製品を使用できる。
【0081】
加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0082】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0083】
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0084】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0085】
上記ゴム組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッドに好適に用いられる。また、上記ゴム組成物は、靴底ゴム、防振ゴム、ベルト、ホース、その他のゴム製工業製品等にも用いることができる。
【0086】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド))の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0087】
なお、上記空気入りタイヤのタイヤ部材(例えば、トレッド)は、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
【0088】
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例
【0089】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0090】
実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol1502
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量:98質量%)
CB1~6:下記表1に示す特性を有するカーボンブラック(試作品)
シリカ:エボニックデグッサ社製のVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(アロマ系プロセスオイル)
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄(5%オイル含有)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0091】
【表1】
【0092】
(実施例及び比較例)
表2、3に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製のバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。
また、未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で10分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて下記に示す評価を行った。
【0093】
(加工性)
各未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300-1の「未加硫ゴム-物理特性-第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じたムーニー粘度の測定方法に従い、130℃の温度条件にて、ムーニー粘度(ML1+4)を測定した。結果は、各表ごとに、比較例1-1、比較例2-1のムーニー粘度を100として指数表示した(加工性指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。95以上の場合に良好であると判断した。
【0094】
(耐摩耗性)
各試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出した。結果は、各表ごとに、比較例1-1、比較例2-1の走行距離を100とした時の指数で表示した(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離が長く、耐摩耗性に優れることを示す。
95以上の場合に良好であると判断した。
【0095】
(低燃費性)
転がり抵抗試験機を用い、上記試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)の条件で走行させたときの転がり抵抗を測定した。そして、各表ごとに、比較例1-1、比較例2-1の転がり抵抗を100とし、指数表示した(低燃費性指数)。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
95以上の場合に良好であると判断した。
【0096】
(破断強度)
JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム引っ張り特性の求め方」に準じて、3号ダンベルを用いて引張り試験を実施し、加硫ゴム組成物の破断強度(TB)を測定した。なお、各表ごとに、比較例1-1、比較例2-1のEBを100とし、各配合のTBをそれぞれ指数表示した(破断強度指数)。指数が大きいほど破断強度に優れることを示す。
95以上の場合に良好であると判断した。
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
表2、3より、特定のカーボンブラックを含む実施例では、良好な加工性、耐摩耗性、低燃費性及び破断強度(特に、耐摩耗性及び破断強度)が得られた。