(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】フレーム構造及びスクータ型二輪車
(51)【国際特許分類】
B62K 11/04 20060101AFI20221012BHJP
B62J 11/00 20200101ALI20221012BHJP
B62J 43/20 20200101ALI20221012BHJP
B62M 7/02 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B62K11/04 Z
B62J11/00
B62J43/20
B62M7/02 B
(21)【出願番号】P 2018152274
(22)【出願日】2018-08-13
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】大江 統吾
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-091204(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104192249(CN,A)
【文献】中国実用新案第2232884(CN,Y)
【文献】特開2013-209040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 11/00-11/14,
25/10,25/20,
B62M 7/00- 7/14
B62J 11/00-11/26,
43/00-43/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート前方に足置き空間が形成されたスクータ型二輪車のフレーム構造であって、
足置き空間の下側で車両の前後方向に延びる一対のロアフレーム部材と、
足置き空間の後方で前記ロアフレーム部材から立ち上がる一対のリヤフレーム部材と、
前記リヤフレーム部材の後方で前記ロアフレーム部材から立ち上がる一対の支持フレーム部材と、
支軸を介してスイングアームが上下に揺動可能に連結される一対のピボットブラケットと、
前記一対のリヤフレーム部材及び前記一対の支持フレーム部材を一体的に連結した補強フレームと、を備え、
前記ピボットブラケットが前記リヤフレーム部材及び前記支持フレーム部材に架け渡され
、
前記補強フレームの上方はバッテリユニットの載置空間になっており、前記補強フレームの下方は電動パワーユニットの設置空間になっていることを特徴とするフレーム構造。
【請求項2】
シート前方に足置き空間が形成されたスクータ型二輪車のフレーム構造であって、
足置き空間の下側で車両の前後方向に延びる一対のロアフレーム部材と、
足置き空間の後方で前記ロアフレーム部材から立ち上がる一対のリヤフレーム部材と、
前記リヤフレーム部材の後方で前記ロアフレーム部材から立ち上がる一対の支持フレーム部材と、
支軸を介してスイングアームが上下に揺動可能に連結される一対のピボットブラケットと、
前記一対のリヤフレーム部材及び前記一対の支持フレーム部材を一体的に連結した補強フレームと、
前記一対のロアフレーム部材の間を連結するブリッジと、を備え、
前記ピボットブラケットが前記リヤフレーム部材及び前記支持フレーム部材に架け渡され、
前記補強フレームには電動パワーユニットの上部を支持する上部ブラケットが設けられ、前記ブリッジには電動パワーユニットの下部を支持する下部ブラケットが設けられたことを特徴とするフレーム構造。
【請求項3】
前記補強フレームは、車両の前後方向に延びる一対の前後フレーム部と車幅方向に延びる一対の左右フレーム部とで矩形枠状に形成されたことを特徴とする請求項
1又は請求項2に記載のフレーム構造。
【請求項4】
前記補強フレームは、前記一対のリヤフレーム部材及び前記一対の支持フレーム部材に着脱可能に連結されたことを特徴とする請求項
1から請求項
3のいずれかに記載のフレーム構造。
【請求項5】
前記リヤフレーム部材の延在方向の途中箇所に前記支持フレーム部材の上端が接合されており、
前記リヤフレーム部材及び前記支持フレーム部材の連結箇所と前記スイングアームがリヤクッションユニットで接合されることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれかに記載のフレーム構造。
【請求項6】
前記ピボットブラケットが断面視角型U字状の溝形状を有することを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載のフレーム構造。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれかに記載のフレーム構造を備えたことを特徴とするスクータ型二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレーム構造及びスクータ型二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レッグシールドとステップボードによってライダーシートの前方に足載せ空間が形成されたスクータータイプの二輪車が知られている(例えば、特許文献1参照)。このスクータ型二輪車の車体フレームの後部は、ステップボードの後部からライダーシートに向けて立ち上がる左右一対のリヤフレーム部材を有し、各リヤフレーム部材に溶着されたピボットブラケットに支軸を介してスイングアームが上下に揺動可能に連結されている。スイングアームには電動モータが内蔵されており、スイングアームの後側には電動モータで駆動される後輪が支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスクータ型二輪車では、各リヤフレーム部材に対してピボットブラケットの前縁が溶着されており、片持ちのピボットブラケットではスイングアームの支持剛性が低く、良好な操縦安定性を得ることができないという問題があった。
【0005】
本開示はかかる点に鑑みてなされたものであり、全体的にフレームの剛性を高めて操縦安定性を得ることができるフレーム構造及びスクータ型二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のフレーム構造は、シート前方に足置き空間が形成されたスクータ型二輪車のフレーム構造であって、足置き空間の下側で車両の前後方向に延びる一対のロアフレーム部材と、足置き空間の後方で前記ロアフレーム部材から立ち上がる一対のリヤフレーム部材と、前記リヤフレーム部材の後方で前記ロアフレーム部材から立ち上がる一対の支持フレーム部材と、支軸を介してスイングアームが上下に揺動可能に連結される一対のピボットブラケットと、前記一対のリヤフレーム部材及び前記一対の支持フレーム部材を一体的に連結した補強フレームと、を備え、前記ピボットブラケットが前記リヤフレーム部材及び前記支持フレーム部材に架け渡され、前記補強フレームの上方はバッテリユニットの載置空間になっており、前記補強フレームの下方は電動パワーユニットの設置空間になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様のフレーム構造によれば、ピボットブラケットがリヤフレーム部材と支持フレーム部材によって両持ちで支持されるため、ピボットブラケットによるスイングアームの支持剛性が高められて良好な操縦安定性を得ることができる。ピボットブラケットを介してリヤフレーム部材と支持フレーム部材が前後方向で連結されるため、リヤフレーム部材及び支持フレーム部材の剛性が高められている。また、フレーム構造全体の剛性が高められた分だけフレームの断面積を小さくして、フレーム間にスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態の外装部材を外したスクータ型二輪車の斜視図である。
【
図2】本実施の形態のフレーム構造を斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】本実施の形態のフレーム構造を下方から見た斜視図である。
【
図4】本実施の形態のフレーム構造の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の外装部材を外したスクータ型二輪車の斜視図である。以下の図では、車体前方を矢印FR、車体後方を矢印RE、車体左側をL、車体右側をRでそれぞれ示す。
【0010】
図1に示すように、スクータ型二輪車1は、アンダーボーンタイプの車体フレーム10を有しており、車体フレーム10の前端部分にステアリングシャフト41が挿入されるヘッドパイプ11が設けられている。ヘッドパイプ11からフロントフレーム12が下方に向かって延出し、フロントフレーム12の下部から、ロアフレームを構成する一対のロアフレーム部材13が後方に向かって延出している。一対のロアフレーム部材13の途中位置から、リヤフレームを構成する一対のリヤフレーム部材15が斜め後方に立ち上がり、一対のロアフレーム部材13の後端位置から、支持フレームを構成する一対の支持フレーム部材18が斜め後方に立ち上がって、一対のリヤフレーム部材15に一対の支持フレーム部材18の上端が接続されている。
【0011】
車体フレーム10のヘッドパイプ11にはステアリングシャフト41が操舵可能に支持されており、ステアリングシャフト41の上部にハンドル42が設けられ、ステアリングシャフト41の下部に一対のフロントフォーク43を介して前輪44が支持されている。一対のリヤフレーム部材15の上部にはライダーシート46とピリオンシート47が連接されており、ライダーシート46の下方には一対のリヤフレーム部材15と一対の支持フレーム部材18に囲まれた設置空間が形成されている。この設置空間は一対のリヤフレーム部材15と一対の支持フレーム部材18を水平方向で連結する補強フレーム21によって上下に仕切られている。
【0012】
設置空間の上側にはバッテリユニット51が設置され、設置空間の下側には電動パワーユニット52が設置されている。また、電動パワーユニット52の前方には、一対のロアフレーム部材の間にバッテリユニット51の直流電力を交流電力に変換するインバータユニット53が設置されている。ライダーシート46の下方に重量物であるバッテリユニット51と電動パワーユニット52を配置したことで操縦安定性が計られている。また、バッテリユニット51にインバータユニット53が近づけられることで、バッテリユニット51からインバータユニット53までの高電圧線を短くして配線を容易にしている。
【0013】
また、一対のリヤフレーム部材15及び一対の支持フレーム部材18は、それぞれ一対のピボットブラケット31によって前後方向で連結されている。一対のピボットブラケット31にはスイングアーム55が上下方向に揺動可能に連結されており、車体フレーム10とスイングアーム55の間にはリヤクッションユニット56が取り付けられている。スイングアーム55には、リヤスプロケット(不図示)及びチェーン(不図示)が格納されるチェーンカバー57が設けられており、リヤスプロケット及びチェーンを介して電動パワーユニット52の駆動力が後輪58に伝達される。
【0014】
ところで、一般的なスクータ型二輪車では、後輪と共に電動パワーユニットが車体フレームに揺動可能なユニットスイング式が採用されている。ユニットスイング式ではレイアウトの都合上、リヤフレームの後方に支持フレームを設けることが難しい。このため、リヤフレームを構成するリヤフレーム部材(パイプ)の断面積を大きくしてリヤフレームの強度および剛性を確保すると共に、リヤフレームに片持ちで設けたピボットブラケットでスイングアームを支持している。片持ちのピボットブラケットだけではスイングアームの支持剛性が低く、スクータ型二輪車の良好な操縦安定性を得ることができない。
【0015】
そこで、本実施の形態では、ユニットスイング式の代わりに電動パワーユニット52を車体フレーム10側に搭載して、一対のロアフレーム部材13を後方に向かって長めに延出して、一対のリヤフレーム部材15の後方に一対の支持フレーム部材18を設置可能にしている。そして、リヤフレーム部材15と支持フレーム部材18にピボットブラケット31を架け渡して、リヤフレーム部材15と支持フレーム部材18の剛性を高めている。また、この両持ちのピボットブラケット31にスイングアーム55を連結することでスイングアーム55の支持剛性を確保して良好な操縦安定性を得ることが可能になっている。
【0016】
以下、
図2から
図4を参照してスクータ型二輪車のフレーム構造について説明する。
図2は、本実施の形態のフレーム構造を斜め前方から見た斜視図である。
図3は、本実施の形態のフレーム構造を下方から見た斜視図である。
図4は、本実施の形態のフレーム構造の上面図である。なお、
図2から
図4は、説明の便宜上、電動パワーユニット以外の構成を省略している。
【0017】
図2から
図4に示すように、車体フレーム10は、シート前方に運転者の足置き空間が形成されたフレーム構造であり、足置き空間の下側を通るようにフロントフレーム12の下部から後方に一対のロアフレーム部材13が延出している。一対のロアフレーム部材13を複数のブリッジ14によって連結してロアフレームが構成されており、ロアフレームでは、ブリッジ14により一対のロアフレーム部材13の車幅方向に対する剛性が向上されている。なお、足置き空間とは、シート下方のボディカバー(不図示)、レッグシールド(不図示)、ステップボード(不図示)で囲まれて、車体上で運転者の両足が置かれる空間を示している。
【0018】
一対のロアフレーム部材13は車両の前後方向に延びており、足置き空間の後方で一対のロアフレーム部材13から一対のリヤフレーム部材15が立ち上がっている。一対のリヤフレーム部材15は、ロアフレーム部材13から斜め後方に立ち上がり、延在方向の途中で傾斜が緩くなるように部分的に湾曲している。一対のリヤフレーム部材15を複数のブリッジ16によって連結してリヤフレームが構成されており、リヤフレームでは、ブリッジ16により一対のリヤフレーム部材15の車幅方向に対する剛性が向上されている。一対のリヤフレーム部材15の下端には側面視三角状の補強部材17が設けられ、リヤフレーム部材15とロアフレーム部材13の接合面積が増加されている。
【0019】
また、一対のリヤフレーム部材15の後方で一対のロアフレーム部材13から一対の支持フレーム部材18が立ち上がっている。一対の支持フレーム部材18は、一対のロアフレーム部材13の後端位置から斜め後方に立ち上がり、一対のリヤフレーム部材15の湾曲部分の後側に接合されている。一対の支持フレーム部材18の上端が一対のリヤフレーム部材15の下面に下側から接合され、一対のリヤフレーム部材15と共に一対の支持フレーム部材18によってシート荷重が支えられている。リヤフレーム部材15と支持フレーム部材18の接合箇所には、側面視菱形状のリヤクッションブラケット19が設けられ、リヤフレーム部材15と支持フレーム部材18の接合面積が増加されている。
【0020】
リヤクッションブラケット19にはリヤクッションユニット56(
図1)を介してスイングアーム55に連結されている。このとき、リヤクッションブラケット19には、リヤクッションユニット56を介して突き上げ荷重が作用するが、リヤクッションブラケット19に作用した突き上げ荷重はリヤフレーム部材15と支持フレーム部材18に分散される。また、一対のリヤフレーム部材15と一対の支持フレーム部材18には、それぞれ一対のピボットブラケット31が架け渡されている。ピボットブラケット31によってリヤフレーム部材15と支持フレーム部材18が前後方向で連結されて剛性が高められている。
【0021】
ピボットブラケット31は、断面視角型U字状の溝形状32を有しており、溝形状32の延在方向をリヤフレーム部材15と支持フレーム部材18の延在方向に交差させることで剛性が高められている。溝形状32の底面には、支軸を介してスイングアーム55(
図1参照)が上下に揺動可能に連結されるピボット穴33が形成されている。ピボットブラケット31の前端はリヤフレーム部材15の後面に接合され、ピボットブラケット31の後端は支持フレーム部材18の前面に接合されている。この場合、ピボットブラケット31の後端の上側は後方に向かって広がっており、ピボットブラケット31の後端上側に作用する応力集中が緩和されている。
【0022】
このように、リヤフレーム部材15と支持フレーム部材18によってピボットブラケット31が両持ちで支持され、ピボットブラケット31自体も変形し難い形状に形成されているため、スイングアーム55の支持剛性が高められて操縦安定性が向上されている。車体フレーム10の後側は、リヤフレーム部材15と支持フレーム部材18の4本のフレームを支柱とした支持構造になっているが、4本のフレームだけでは捻じれ剛性を確保することが難しい。そこで、本実施の形態では、一対のリヤフレーム部材15と一対の支持フレーム部材18を、補強フレーム21を介して一体的に連結して剛性を高めている。
【0023】
補強フレーム21は、車両の前後方向に延びる一対の前後フレーム部22と、車幅方向に延びる一対の左右フレーム部23とで矩形枠状に形成されている。一対のリヤフレーム部材15及び一対の支持フレーム部材18には、それぞれ同一の高さ位置に支持ブラケット25が設けられており、この支持ブラケット25に補強フレーム21が4箇所で固定されている。矩形枠状の補強フレーム21で一対のリヤフレーム部材15と一対の支持フレーム部材18が一体的に連結されることで、リヤフレーム部材15及び支持フレーム部材18に対する前後方向及び左右方向の剛性が高められると共に捻じれ剛性が高められている。
【0024】
車体フレーム10には、リヤフレーム部材15と支持フレーム部材18に囲まれた設置空間が補強フレーム21によって上下に仕切られている。設置空間の上側はバッテリユニット51(
図1参照)の設置空間になっており、補強フレーム21の矩形枠状の上面にバッテリユニット51が載置される。補強フレーム21の枠寸法はバッテリユニット51の幅寸法及び奥行寸法に対応しており、補強フレーム21によってバッテリユニット51の下面が全周に亘って支持されている。このように、補強フレーム21は、リヤフレーム部材15と支持フレーム部材18の剛性を確保するだけでなく、バッテリユニット51の載置面として機能している。
【0025】
設置空間の下側は電動パワーユニット52の設置空間になっており、補強フレーム21とロアフレームを構成するブリッジ14とに電動パワーユニット52が取り付けられている。補強フレーム21前側の左右フレーム部23には電動パワーユニット52の上部を支持する上部ブラケット27が設けられ、ロアフレームのブリッジ14には電動パワーユニット52の下部を支持する下部ブラケット28が設けられている。電動パワーユニット52が上部ブラケット27及び下部ブラケット28に支持されることで、電動パワーユニット52によって車体フレーム10の全体的な剛性が高められている。
【0026】
補強フレーム21の上面にはバッテリユニット51が載置され、補強フレーム21の下部には電動パワーユニット52が支持されている。このため、重量物であるバッテリユニット51及び電動パワーユニット52が上下に配置されることでマスの集中化によって操縦安定性を得ることが可能になっている。また、補強フレーム21は、一対のリヤフレーム部材15及び一対の支持フレーム部材18の支持ブラケット25に対して着脱可能に連結されている。このため、補強フレーム21の着脱によって車体フレーム10に対して電動パワーユニット52を容易に着脱することが可能になっている。
【0027】
このように、ロアフレーム部材13からリヤフレーム部材15と支持フレーム部材18を立ち上げて、各フレーム部材を補強フレーム21で一体化することで、車体フレーム10の後側の剛性が確保されている。また、リヤフレーム部材15と支持フレーム部材18にピボットブラケット31が架け渡され、ピボットブラケット31がリヤフレーム部材15と支持フレーム部材18の間のブリッジとして機能することでより剛性が高められている。よって、剛性が高められた分だけ各フレーム部材の断面積を小さくして、フレームの内側に各種ユニット等の設置空間を広く確保することが可能になっている。
【0028】
以上のように、本実施の形態によれば、ピボットブラケット31がリヤフレーム部材15と支持フレーム部材18によって両持ちで支持されるため、ピボットブラケット31によるスイングアーム55の支持剛性が高められて良好な操縦安定性を得ることができる。ピボットブラケット31を介してリヤフレーム部材15と支持フレーム部材18が前後方向で連結されるため、リヤフレーム部材15及び支持フレーム部材18の剛性が高められている。また、フレーム構造全体の剛性が高められた分だけフレーム部材の断面積を小さくして、フレーム間にスペースを確保することができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、支持フレームを構成する支持フレーム部材がロアフレームを構成するロアフレーム部材と別体に形成されたが、この構成に限定されない。支持フレーム部材は、ロアフレーム部材の後部を上方に屈曲させてロアフレーム部材と一体に形成されてもよい。
【0030】
また、本実施の形態では、ピボットブラケットの溝形状が車幅方向で内向きに突出する構成にしたが、この構成に限定されない。ピボットブラケットの溝形状が車幅方向で外向きに突出してもよい。また、ピボットブラケットに断面視角型U字状の溝形状が形成されたが、ピボットブラケットの断面形状は特に限定されない。十分な剛性が確保可能であれば、ピボットブラケットに溝形状が形成されていなくてもよい。
【0031】
また、本実施の形態では、補強フレームが矩形枠状に形成される構成にしたが、この構成に限定されない。補強フレームは、一対のリヤフレーム部材と一対の支持フレーム部材を一体的に連結可能な構成であればよい。
【0032】
また、本実施の形態では、一対のロアフレーム部材同士、一対のリヤフレーム部材同士がブリッジで連結されてロアフレームやリヤフレームとなる構成にしたが、一対の支持フレーム部材同士をブリッジで連結して支持フレームを構成してもよい。これにより、さらに車体フレームの剛性を高めることができる。
【0033】
また、本実施の形態では、補強フレームが一対のリヤフレーム部材及び一対の支持フレーム部材に着脱可能に連結されたが、この構成に限定されない。補強フレームは一対のリヤフレーム部材と一対の支持フレーム部材に一体的に接合されていてもよい。
【0034】
また、本実施の形態では、電動パワーユニットとバッテリユニットが上下に配置される構成にしたが、この構成に限定されない。電動パワーユニットとバッテリユニットの位置関係は特に限定されず、例えば、電動パワーユニットの前方にバッテリユニットが設置されてもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、電動自動二輪車を例示したが、この構成に限定されない。本開示のフレーム構造は、スクータ型二輪車に適用可能であり、電動パワーユニット以外の駆動源で駆動する自動二輪車に適用してもよい。
【0036】
なお、本実施の形態を説明したが、他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0037】
また、本開示の技術は上記の実施の形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0038】
下記に、本発明の実施形態における特徴点を整理する。
上記実施形態に記載のフレーム構造は、シート前方に足置き空間が形成されたスクータ型二輪車のフレーム構造であって、足置き空間の下側で車両の前後方向に延びる一対のロアフレーム部材と、足置き空間の後方でロアフレーム部材から立ち上がる一対のリヤフレーム部材と、リヤフレーム部材の後方でロアフレーム部材から立ち上がる一対の支持フレーム部材と、支軸を介してスイングアームが上下に揺動可能に連結される一対のピボットブラケットと、を備え、ピボットブラケットがリヤフレーム部材及び支持フレーム部材に架け渡されたことを特徴とする。この構成によれば、ピボットブラケットがリヤフレーム部材と支持フレーム部材によって両持ちで支持されるため、ピボットブラケットによるスイングアームの支持剛性が高められて良好な操縦安定性を得ることができる。ピボットブラケットを介してリヤフレーム部材と支持フレーム部材が前後方向で連結されるため、リヤフレーム部材及び支持フレーム部材の剛性が高められている。また、フレーム構造全体の剛性が高められた分だけフレーム部材の断面積を小さくして、フレーム間にスペースを確保することができる。
【0039】
上記実施形態に記載のフレーム構造において、一対のリヤフレーム部材及び一対の支持フレーム部材を一体的に連結した補強フレームを備えている。この構成によれば、一対のリヤフレーム部材及び一対の支持フレーム部材を、補強フレームを介して一体化してフレーム構造全体の剛性を高めることができる。
【0040】
上記実施形態に記載のフレーム構造において、補強フレームは、車両の前後方向に延びる一対の前後フレーム部と車幅方向に延びる一対の左右フレーム部とで矩形枠状に形成されている。この構成によれば、矩形枠状の補強フレームによってフレーム構造全体の捻じれ剛性を高めることができる。
【0041】
上記実施形態に記載のフレーム構造において、補強フレームの上方はバッテリユニットの載置空間になっており、補強フレームの下方は電動パワーユニットの設置空間になっている。この構成によれば、重量物であるバッテリユニット及び電動パワーユニットを上下に配置してマスの集中化によって操縦安定性を得ることができる。
【0042】
上記実施形態に記載のフレーム構造において、補強フレームは、一対のリヤフレーム部材及び一対の支持フレーム部材に着脱可能に連結されている。この構成によれば、補強フレームの着脱によって電動パワーユニットの着脱を容易にすることができる。
【0043】
上記実施形態に記載のフレーム構造において、一対のロアフレーム部材の間を連結するブリッジを備え、補強フレームには電動パワーユニットの上部を支持する上部ブラケットが設けられ、ブリッジには電動パワーユニットの下部を支持する下部ブラケットが設けられている。この構成によれば、電動パワーユニットが上部ブラケット及び下部ブラケットに支持されることで、電動パワーユニットによってフレーム構造の全体的な剛性を高めることができる。
【0044】
上記実施形態に記載のフレーム構造において、リヤフレーム部材の延在方向の途中箇所に支持フレーム部材の上端が接合されており、リヤフレーム部材及び支持フレーム部材の連結箇所とスイングアームがリヤクッションユニットで接合されている。この構成によれば、リヤクッションユニットからの突き上げ荷重をリヤフレーム部材と支持フレーム部材に分散することができる。
【0045】
上記実施形態に記載のフレーム構造において、ピボットブラケットが断面視角型U字状の溝形状を有している。この構成によれば、ピボットブラケットの剛性を高めて、より良好な操縦安定性を得ることができる。
【0046】
上記実施形態に記載のスクータ型二輪車は、上記のフレーム構造を備えたことを特徴とする。この構成によれば、フレーム構造の剛性が高まることでスクータ型二輪車の操縦安定性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 :スクータ型二輪車
10:車体フレーム
13:ロアフレーム部材
15:リヤフレーム部材
18:支持フレーム部材
21:補強フレーム
22:前後フレーム部
23:左右フレーム部
27:上部ブラケット
28:下部ブラケット
31:ピボットブラケット
32:溝形状
51:バッテリユニット
52:電動パワーユニット
55:スイングアーム
56:リヤクッションユニット