(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/173 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
H02K5/173 A
(21)【出願番号】P 2018155573
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 心路
(72)【発明者】
【氏名】古川 敬三
(72)【発明者】
【氏名】廣川 剛士
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-201306(JP,A)
【文献】特開2016-226178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部と、
上下に延びる中心軸を中心として回転するシャフトを有する回転部と、
前記静止部に対して前記シャフトを回転可能に支持する軸受部と、
を備え、
前記静止部は、
前記軸受部を保持する筒状の軸受ハウジング部と、
前記軸受ハウジング部の径方向外方に配置されるステータと、
前記ステータの下方に配置される回路基板と、
前記ステータと前記軸受ハウジング部との間に配置される環状のスペーサと、
を備え、
前記ステータは、
環状のコアバックと、前記コアバックから径方向外方に延びて周方向に複数配置されるティースと、を有するステータコアと、
前記ティースの表面を覆い、前記ティースの下面から径方向内方に延びて前記コアバックの下面外縁部を覆う絶縁被膜と、
前記ティースに形成されるコイルと、
を備え、
前記スペーサは、
前記ステータコアの径方向内面及び前記軸受ハウジング部の径方向外面に接触する複数の側壁部と、
前記側壁部よりも径方向外方に突出し、前記絶縁被膜を避けて前記コアバックの下面内縁部と接触するフランジ部と、
を有する、モータ。
【請求項2】
前記フランジ部は、径方向外方に突出するフランジ突起部を有し、
前記フランジ突起部の上面と前記ステータの下面との間には間隙が形成される、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記フランジ突起部の下面と前記回路基板の上面とが接触する、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記回路基板は前記軸受ハウジング部が貫通する貫通孔を有し、
前記スペーサは、下方に突出して前記貫通孔の周囲と係合する係合爪を有する、請求項1~請求項3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記係合爪は、下方に延びる立設部と、前記立設部の下端部から径方向外方に突出する係合突起部と、を有し、
前記係合突起部と前記貫通孔とが係合する、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記静止部は、前記軸受ハウジング部の下部から径方向に拡がるベース部を有し、
前記回路基板は、前記ベース部の上面から突出するベース凸部と前記フランジ部とで挟まれ、前記スペーサの下端と前記ベース部の上面とは、軸方向に間隙を介して対向する、請求項1~請求項5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記ステータコアは、径方向内面から前記側壁部間に突出するステータ突出部を有し、
前記ステータ突出部は、前記軸受ハウジング部の径方向外面に接触する、請求項1~請求項6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記軸受ハウジング部が、前記ステータ突出部に圧入される、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ステータ突出部が、周方向に複数等間隔で配置される、請求項7又は請求項8に記載のモータ。
【請求項10】
前記側壁部及び前記フランジ部が、周方向に交互に隣接して配置される、請求項1~請求項9のいずれかに記載のモータ。
【請求項11】
前記フランジ部の上面が、前記ステータ突出部の下面に接触している、請求項7~請求項9のいずれかに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータは、特許文献1に開示されている。このモータは、ステータコアを有するステータと、回転軸を有するロータと、軸受ホルダー(軸受ハウジング部)と、を備える。ステータコアは、軸受ホルダーに固定される。
【0003】
ステータコアの径方向外方には、磁極が、設けられ、磁極は、絶縁部材を介して導線が巻回されてコイルが形成される。絶縁部材は、磁極の表面に形成されるとともにステータコアの下面外縁部にも形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたモータにおいては、絶縁部材を用いてコイルを形成しているため、ステータの軸方向長さが長くなってしまう。一方、ステータの軸方向長さを短くするために絶縁部材を絶縁被膜に変更した場合においては、絶縁被膜が塗布によって形成されるため、絶縁被膜の膜厚にバラつきがある。このため、ステータコアと軸受ホルダーとを固定する際に、ステータコアと軸受ホルダーとが絶縁被膜を介して軸方向に接触することがある。この場合に、ステータコアと軸受ホルダーとを強固に固定できない課題があった。
【0006】
本発明は、ステータコアと軸受ハウジング部とを強固に固定できるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的なモータは、静止部と、上下に延びる中心軸を中心として回転するシャフトを有する回転部と、前記静止部に対して前記シャフトを回転可能に支持する軸受部と、を備え、前記静止部は、前記軸受部を保持する筒状の軸受ハウジング部と、前記軸受ハウジング部の径方向外方に配置されるステータと、前記ステータの下方に配置される回路基板と、前記ステータと前記軸受ハウジング部との間に配置される環状のスペーサと、を備え、前記ステータは、環状のコアバックと、前記コアバックから径方向外方に延びて周方向に複数配置されるティースと、を有するステータコアと、前記ティースの表面を覆い、前記ティースの下面から径方向内方に延びて前記コアバックの下面外縁部を覆う絶縁被膜と、前記ティースに形成されるコイルと、を備え、前記スペーサは、前記ステータコアの径方向内面及び前記軸受ハウジング部の径方向外面に接触する複数の側壁部と、前記側壁部よりも径方向外方に突出し、前記絶縁被膜を避けて前記コアバックの下面内縁部と接触するフランジ部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
例示的な本発明によれば、ステータコアと軸受ハウジング部とを強固に固定できるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るモータの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るモータの縦断面斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るモータの静止部の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るモータの静止部を下方から視た分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るモータのステータを下方から視た斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るモータのスペーサの斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係るモータのスペーサの平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係るモータを上方から視た横断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係るモータの回路基板の取付構造を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、モータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、モータの中心軸に直交する方向を「径方向」、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向とし、ベース部に対してステータコア側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。なお、上下方向は、単に説明のための用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。
【0011】
また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0012】
(1.モータの構成)
本発明の例示的な一実施形態のモータについて説明する。
図1、
図2は、本発明の実施形態に係るモータ1の斜視図及び縦断面斜視図である。また、
図3は、モータ1の静止部40の分解斜視図であり、
図4は、モータ1の静止部40を下方から視た分解斜視図である。
【0013】
モータ1は、回転部30、静止部40及び軸受部80を有する。回転部30は、上下に延びる中心軸Cを中心として回転するシャフト32を有する。軸受部80は静止部40に対してシャフト32を回転可能に支持する。
【0014】
静止部40は、ステータ50と、軸受ハウジング部61と、回路基板63と、スペーサ70と、を備える。本実施形態においては、静止部40は、さらにベース部62を備える。
【0015】
ステータ50は、ステータコア51と、絶縁被膜53と、コイル54と、を有する。ステータコア51は、中心軸Cの周りに挿通孔51aを有する環状の積層鋼板から成る。
【0016】
ステータ50は、軸受ハウジング部61の径方向外方に配置される。ステータコア51は、径方向内面から径方向内方に突出するステータ突出部51bを複数有する。本実施形態においては、ステータ突出部51bは、3箇所設けられ、周方向に等間隔で配置される。また、ステータ突出部51bの径方向内面には軸方向に延びる溝部51cが形成される。なお、ステータ突出部51bは、必ずしも周方向に3箇所に設けられる必要はなく、2箇所、または4箇所以上の箇所に設けられても良い。
【0017】
ステータコア51は、環状のコアバック51dと、周方向に複数配置されるティース51eと、を有する。ティース51eは、コアバック51dから径方向外方に延びる。
【0018】
絶縁被膜53は、ティース51eの上面、下面及び周方向側面に塗布されてティース51eの表面を覆う。また、絶縁被膜53は、ティース51eの上面及び下面から径方向内方に延びてコアバック51dの上面外縁部及び下面外縁部を覆う。つまり、絶縁被膜53は、ティース51eの表面を覆い、ティース51eの下面から径方向内方に延びてコアバック51dの下面外縁部を覆う。
【0019】
コイル54は、ティース51eに形成される。より詳細に述べると、コイル54は、絶縁被膜53を介してティース51eに導線(不図示)を巻回して形成される。周方向に配置される複数のコイル54は、渡り線(不図示)を介して直列に接続される。渡り線は、コアバック51dの上面外縁部又は下面外縁部を覆う絶縁被膜53上を通る。また、導線はステータコア51の下面から引出され、回路基板63と電気的に接続される。すなわち、回路基板63は、ステータ50の下方に配置される。
【0020】
回路基板63は、軸受ハウジング部61が貫通する貫通孔63aを有する。貫通孔63aは、ステータコア51の下方に配置される。回路基板63はスペーサ70の係合爪73、74と係合される。このため、軸受ハウジング部61が、ステータコア51に圧入される前の状態において(
図4参照)、回路基板63は、ステータコア51に対して位置決めされる。これにより、回路基板63の接続部(不図示)と導線とを半田付けしたときに、回路基板63が、ステータコア51に対して傾いて固定されることを防止できる。また、接続部(不図示)と導線との位置決めが容易になり、半田付けの作業性が向上する。
【0021】
スペーサ70は、ステータ50と軸受ハウジング部61との間に配置される環状である。より詳細に述べると、スペーサ70は、ステータコア51と軸受ハウジング部61との間に配置される環状である。スペーサ70の構成については、後で詳述する。本実施形態においては、スペーサ70は、樹脂成形品である。スペーサ70がステータコア51の挿通孔51aに挿嵌された状態で、軸受ハウジング部61がステータコア51に圧入される。
【0022】
なお、スペーサ70は、金属材料(例えば、アルミニウム)で形成してもよいが、樹脂成形品の方が、金属成形品よりも安価で弾性変形し易い。このため、ステータコア51及び軸受ハウジング部61に対する固定に好ましくなるため、樹脂成形品の方がより好ましい。
【0023】
軸受ハウジング部61は、上面及び下面が開口する円筒状に形成され、ステータコア51と嵌合する。軸受ハウジング部61は、軸受部80を内部に保持する。つまり、軸受ハウジング部61は、軸受部80を保持する筒状である。軸受部80は、上軸受部81と、上軸受部81よりも下方に配置される下軸受部82とを有する。上軸受部81及び下軸受部82は、軸受ハウジング部61の内周面に内嵌固定される。上軸受部81及び下軸受部82には、例えば、ボールベアリングが使用される。
【0024】
軸受ハウジング部61は、径方向外面から径方向外方に突出するハウジング突出部61aを有する。また、軸受ハウジング部61は、支持部61b及びリブ61cを有する。ハウジング突出部61aは、3箇所設けられ、周方向に等間隔で配置される。ハウジング突出部61aは、スペーサ70の径方向内面と接触する。
【0025】
支持部61bは、隣接するハウジング突出部61a間に配置され、3箇所設けられる。支持部61bは、ハウジング突出部61aよりも径方向外方へ突出している。また、支持部61bの上端は、ハウジング突出部61aの上端よりも下方に配置される。支持部61bの上面は、ステータ突出部51bの下面内縁部と接触する。これにより、ステータコア51が、軸受ハウジング部61に対して軸方向に位置決めされる。
【0026】
リブ61cは、支持部61bの上端から軸方向上方に延びる。リブ61cは、ステータ突出部51bに形成された溝部51cに嵌合する。
【0027】
ベース部62は、軸受ハウジング部61の下部から径方向に拡がる。本実施形態においては、ベース部62は、軸方向に直交する円板状である。軸受ハウジング部61とベース部62とは、鋳造にて一体成形される。なお、軸受ハウジング部61とベース部62とは、一体成形されなくてもよい。例えば、ベース部62にバーリング加工された挿入孔を設けて軸受ハウジング部61を圧入固定してもよい。
【0028】
ベース部62は、上面から上方に突出するベース凸部62a、62bを有する。ベース凸部62aは、ベース部62の外周部に配置され、環状に形成される。ベース凸部62bは、軸受ハウジング部61の径方向外面から径方向に放射状に延びる。すなわち、静止部40は、軸受ハウジング部61の下部から径方向に拡がるベース部62を有する。ベース凸部62a及びベース凸部62bの上端は、同じ高さであり、支持部61bの上端よりも下方に位置する。ベース凸部62a、62bは、回路基板63の下面と接触する。
【0029】
回転部30は、ロータホルダ31、シャフト32及びマグネット33を備える。シャフト32は中心軸Cに沿って延びた回転軸を形成する柱状の金属部材であり、軸受ハウジング部61内に挿通される。
【0030】
シャフト32は、上軸受部81及び下軸受部82によって、中心軸C周りに回転可能に支持される。また、シャフト32の上端部はロータホルダ31に連結される。シャフト32は、軸受ハウジング部61の下端よりも下方に突出する。シャフト32の下端部は、軸受ハウジング部61の下端よりも下方に突出し、駆動対象となる装置に連結される。
【0031】
ロータホルダ31は有蓋筒状であり、内周面にマグネット33が固定される。マグネット33はコイル54の径方向外方に配置され、モータ1の駆動時にステータ50とマグネット33との間でトルクが発生する。
【0032】
(2.スペーサの構造)
図5は、ステータ50を下方から視た斜視図であり、スペーサ70が挿通孔51aに挿嵌される前の状態を示す。
図6、
図7は、スペーサ70の斜視図及び平面図である。スペーサ70は、側壁部71と、フランジ部72と、を有する。本実施形態においては、スペーサ70は、係合爪73、74をさらに有する。側壁部71及びフランジ部72は、周方向に交互に隣接して配置される。
【0033】
側壁部71は、径方向外面がステータコア51の径方向内面に沿って湾曲し、上面視円弧状に形成される。側壁部71の上端はフランジ部72の上端よりも上方に位置する。側壁部71は、隣接するステータ突出部51b間に軸方向に挿入される。換言すると、ステータコア51は、径方向内面から側壁部71間に突出するステータ突出部51bを有する。複数の側壁部71は、ステータコア51の径方向内面に接触する。より詳細に述べると、複数の側壁部71は、ステータコア51の径方向内面及び軸受ハウジング部61(
図4参照)の径方向外面に接触する。
【0034】
フランジ部72は、側壁部71よりも径方向外方に突出する。フランジ部72は、ステータコア51の下面と接触する。より詳細に述べると、フランジ部72の上面は、ステータ突出部51bの下面に接触する。すなわち、フランジ部72は、絶縁被膜53を避けてコアバック51dの下面内縁部と接触する(
図9参照)。これにより、スペーサ70とステータコア51とが軸方向に安定して接触し、スペーサ70のがたつきを低減できる。さらに、スペーサ70とステータコア51とを強固に固定できる。従って、ステータコア51と軸受ハウジング部61とを強固に固定できる。また、フランジ部72がステータコア51の下面と接触することにより、スペーサ70の軸方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0035】
また、軸受ハウジング部61と接触する側壁部71は、フランジ部72よりも変形し易い。しかし、側壁部71及びフランジ部72は、周方向に隣接して配置されており、フランジ部72は、側壁部71の変形の影響を受け難い。従って、側壁部71が変形した場合であっても、フランジ部72と絶縁被膜53との距離を適切に保つことができる。
【0036】
フランジ部72は、径方向外方に突出するフランジ突起部72bを有する。フランジ部72の上面は、フランジ突起部72b上で下方に下がる段差を形成する。このため、フランジ部72の上面が、ステータ突出部51bの下面に接触した状態において、両者には間隙が形成される。より詳細に述べると、フランジ突起部72bの上面とステータ50の下面との間には間隙(不図示)が形成される。
【0037】
フランジ突起部72bは、径方向の突出量を大きく形成することにより、スペーサ70の強度を向上できる。このため、フランジ突起部72bよりも径方向内方において、フランジ部72の厚みを薄く形成できる。これにより、フランジ部72と絶縁被膜53とをより離して配置するにより、フランジ部72と絶縁被膜53とを適切な距離を介して配置することができる。
【0038】
係合爪73、74はスナップフィットタイプであり、回路基板63の貫通孔63aと係合する。より詳細に述べると、スペーサ70は、下方に突出して貫通孔63aの周囲と係合する係合爪73を有する。係合爪73は、2個設けられ、側壁部71の下部に配置される。係合爪74は、2個設けられ、フランジ部72の下部に配置される。
【0039】
係合爪73、74は立設部73a、74aと係合突起部73b、74bとを有する。立設部73a、74aは、下方に延びる。より詳細に述べると、立設部73aは、側壁部71から下方に延びる。立設部74aは、フランジ部72から下方に延びる。係合突起部73b、74bは、立設部73a、74aの下端部から径方向外方に突出する。立設部73a、74aは、径方向に撓み、係合突起部73b、74bは、回路基板63の貫通孔63aの周囲と係合する。つまり、係合突起部73b、74bと貫通孔63aとが係合する。
【0040】
側壁部71には、軸方向に延びて下端が開放された一対のスリット71bが形成される。スリット71bの間には立設部73aの上部が形成される。これにより、立設部73aが、軸方向により長く形成され、径方向に撓み易くなる。従って、係合爪73を貫通孔63aに係合する際の作業性が向上する。
【0041】
スペーサ70は、スペーサ突出部71a、72aを有する。つまり、スペーサ70は、複数の側壁部71と、フランジ部72と、複数のスペーサ突出部71a、72aと、を有する。スペーサ突出部71a、72aは、側壁部71又はフランジ部72の径方向内面から径方向内方に突出して周方向に並設される。本実施形態においては、側壁部71及びフランジ部72の径方向内面には、複数のスペーサ突出部71a、72aが、径方向内方に突出して周方向に並設される。スペーサ突出部71a、72aは、軸方向に線状に延びる。スペーサ突出部71aは、側壁部71の径方向内面に夫々3箇所配置される。スペーサ突出部72aは、2個のフランジ部72の径方向内面に夫々1箇所配置される。なお、本実施形態では、1個のフランジ部72にスペーサ突出部72aが設けられていないが、全てのフランジ部72にスペーサ突出部72aを設けてもよい。
【0042】
(3.軸受ハウジング部とステータコアの圧入構造)
図8は、モータ1を上から視た横断面図であり、軸受ハウジング部61とステータコア51の圧入構造を示す。
【0043】
軸受ハウジング部61が、ステータコア51に圧入された状態において、スペーサ突出部71a、72a(
図8において、スペーサ突出部72aは不図示)が、ハウジング突出部61aの径方向外面と隙間なく接触する。つまり、ハウジング突出部61aとスペーサ突出部72aとが接触する。すなわち、スペーサ突出部71a、72aが、軸受ハウジング部61の径方向外面に接触する。これにより、ステータコア51と軸受ハウジング部61とを強固に固定できる。また、スペーサ70のがたつきや振動を低減できる。また、軸受ハウジング部61にハウジング突出部61aを設けることにより、スペーサ突出部71a、72aを軸受ハウジング部61の径方向外面に確実に接触させることができる。
【0044】
また、溝部51cにリブ61cが嵌合して、軸受ハウジング部61が、ステータ突出部51bに軽圧入される。つまり、軸受ハウジング部61が、ステータ突出部51bに圧入される。このとき、ステータ突出部51bは、軸受ハウジング部61の径方向外面に接触する。これにより、ステータコア51と軸受ハウジング部61とをより強固に固定できる。
【0045】
また、ステータ突出部51bは、周方向に複数等間隔で配置される。これにより、軸受ハウジング部61が各ステータ突出部51bから受ける径方向の応力が略均一になる。よって、軸受ハウジング部61の特定の領域に強い応力が作用することを抑制しつつ、ステータコア51と軸受ハウジング部61とをより強固に固定できる。
【0046】
なお、本実施形態ではスペーサ突出部71a、72aが周方向に等間隔で配置されていない。しかし、スペーサ突出部71a、72aが、周方向に等間隔で配置されてもよい。このとき、軸受ハウジング部61が各スペーサ突出部71a、72aから受ける径方向の応力を略均一にすることができる。これにより、スペーサ70のがたつきや振動をより低減できる。
【0047】
また、スペーサ突出部71a、72aは、軸方向に線状に延びている。よって、軸受ハウジング部61をステータコア51へ軸方向に挿入する際に、スペーサ突出部71a、72aが、変形し易い。このため、ステータコア51に、軸受ハウジング部61を容易に圧入できる。
【0048】
また、スペーサ突出部71a、72aの下端は、下軸受部82の上端よりも上方に配置される。これにより、軸受ハウジング部61が各スペーサ突出部71a、72aから受ける径方向の応力が、下軸受部82に強く作用することが抑制できる。
【0049】
(4.回路基板の取付構造)
図9は、回路基板63の取付構造を示す拡大縦断面図である。ステータコア51は、ステータ突出部51bが支持部61bの上面に接触して軸方向に位置決めされる(
図3参照)。このとき、回路基板63は、ベース凸部62a、62b(
図3参照)の上面とフランジ部72及びフランジ突起部72bの下面とで軸方向に挟まれる。つまり、回路基板63は、ベース部62の上面から上方に突出するベース凸部62a、62bとフランジ部72とで挟まれる。このとき、フランジ部72の上面は、ステータコア51と接触する。また、係合爪73、74の下端(スペーサ70の下端)とベース部62の上面とは、軸方向に間隙Sを介して対向する。つまり、スペーサ70の下端とベース部62の上面とは、軸方向に間隙Sを介して対向する。
【0050】
このため、回路基板63は、フランジ部72及びフランジ突起部72bを介してステータコア51及びベース部62に挟まれて固定される。また、フランジ突起部72bの下面と回路基板63の上面とが接触している。これにより、回路基板63が、より安定して固定される。これにより、回路基板63の振動をより低減できる。
【0051】
(5.その他)
上記実施形態は、本発明の例示にすぎない。実施形態の構成は、本発明の技術的思想を超えない範囲で適宜変更されてもよい。また、実施形態は、可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0052】
上記実施形態では、フランジ部72は、側壁部71と周方向に隣接して配置されているが、これに限ったものでなく、側壁部71の径方向外面から径方向外方に向けて突出するフランジ部を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のモータは、例えば、ロボットに利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 モータ
30 回転部
31 ロータホルダ
32 シャフト
33 マグネット
40 静止部
50 ステータ
51 ステータコア
51a 挿通孔
51b ステータ突出部
51c 溝部
51d コアバック
51e ティース
53 絶縁被膜
54 コイル
61 軸受ハウジング部
61a ハウジング突出部
61b 支持部
61c リブ
62 ベース部
62a、62b ベース凸部
63 回路基板
63a 貫通孔
70 スペーサ
71 側壁部
71a、72a スペーサ突出部
71b スリット
72 フランジ部
72b フランジ突起部
73、74 係合爪
73a、74a 立設部
73b、74b 係合突起部
80 軸受部
81 上軸受部
82 下軸受部
461 軸受ハウジング部
C 中心軸