(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20221012BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20221012BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20221012BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H1/32 A
H02K11/215
(21)【出願番号】P 2018166298
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 裕三
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080807(JP,A)
【文献】特開2012-222902(JP,A)
【文献】特開2009-222222(JP,A)
【文献】特開2013-230085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
H02K 11/215
F16H 1/32
F16H 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるモータシャフトを有するモータ部と、
前記モータシャフトの軸方向一方側または軸方向他方側に連結される減速機構と、
前記減速機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトを有する出力部と、
上位装置から入力される出力シャフト回転命令に基づいて前記モータ部を駆動する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記出力シャフト回転命令に基づいて、前記出力シャフトを回転開始位置から回転終了位置まで回転させるために必要な前記モータシャフトの回転角を決定するモータ回転角決定部と、
前記モータ回転角決定部で決定された回転角だけ前記モータシャフトを回転させるモータ駆動部と、を有
し、
前記モータ回転角決定部において決定される前記モータシャフトを回転させる角度は、前記出力シャフトを回転させる角度に前記減速機構の減速比を乗じた角度よりも大きい、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記モータ回転角決定部において決定される前記モータシャフトを回転させる角度は、
前記出力シャフトを回転させる角度θsと、
前記モータ部による前記出力シャフトの位置制御精度と、前記出力シャフトと前記出力シャフトに連結される被駆動シャフトとの連結部のバックラッシュと、前記減速機構のバックラッシュとの合計の角度公差上限値θaの半分の角度θa/2と、
を加算した角度(θs+θa/2)に、前記減速機構の減速比を乗じた角度である、
請求項
1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記出力シャフトに連結される被駆動シャフトの角度位置を検出する出力部センサを有する、
請求項1
または2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記出力シャフトと前記モータシャフトとは、前記モータシャフトの径方向に離れて配置され、
前記出力部センサは、前記出力シャフトに連結される被駆動シャフトの角度位置を検出する、
請求項
3に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記出力部センサは、前記被駆動シャフトに装着されるセンサマグネットの磁界を検出する、
請求項
4に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記モータ回転角決定部は、前記出力シャフトの回転開始位置として、前記出力部センサにより検出される前記被駆動シャフトの角度位置を用いる、
請求項
3から
5のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
軸方向に延びるモータシャフトを有するモータ部と、
前記モータシャフトの軸方向一方側または軸方向他方側に連結される減速機構と、
前記減速機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトを有する出力部と、
上位装置から入力される出力シャフト回転命令に基づいて前記モータ部を駆動する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記出力シャフト回転命令に基づいて、前記出力シャフトを回転開始位置から回転終了位置まで回転させるために必要な前記モータシャフトの回転角を決定するモータ回転角決定部と、
前記モータ回転角決定部で決定された回転角だけ前記モータシャフトを回転させるモータ駆動部と、を有し、
前記減速機構は、
前記モータシャフトに接続され、かつ、前記モータシャフトの中心軸に対して偏心した軸を中心とする外歯ギアと、
前記外歯ギアの径方向外側を囲んで固定され、前記外歯ギアと噛み合う内歯ギアと、
前記外歯ギアに設けられる複数の孔にそれぞれ通される複数のピンを有する出力ギアと、
を有し、
前記外歯ギアは、軸方向に見て、歯先を構成する平坦部と、歯底を構成する第1円弧とが交互に連続する形状の第1歯車部を有し、
前記内歯ギアは、軸方向に見て、歯底を構成する第2円弧と、歯先を構成する第3円弧とが交互に連続する形状の第2歯車部を有し、
前記第1歯車部の前記平坦部は、複数の前記第1円弧の中心を周方向に結ぶ仮想円よりも径方向内側に位置する、電動アクチュエータ。
【請求項8】
前記減速機構は、
前記モータシャフトに接続され、かつ、前記モータシャフトの中心軸に対して偏心した軸を中心とする外歯ギアと、
前記外歯ギアの径方向外側を囲んで固定され、前記外歯ギアと噛み合う内歯ギアと、
前記外歯ギアに設けられる複数の孔にそれぞれ通される複数のピンを有する出力ギアと、
を有し、
前記外歯ギアは、軸方向に見て、歯先を構成する平坦部と、歯底を構成する第1円弧とが交互に連続する形状の第1歯車部を有し、
前記内歯ギアは、軸方向に見て、歯底を構成する第2円弧と、歯先を構成する第3円弧とが交互に連続する形状の第2歯車部を有し、
前記第1歯車部の前記平坦部は、複数の前記第1円弧の中心を周方向に結ぶ仮想円よりも径方向内側に位置する、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機のレンジ切り換えを電動アクチュエータによって行うシフトバイワイヤ方式の変速制御装置が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の変速制御においては、電動アクチュエータのモータを回転させながら、自動変速機側でマニュアルシャフトの角度位置を検出し、マニュアルシャフトの現在位置と目標位置とを一致させるようにモータを回転させるフィードバック制御を行っていた。しかし、フィードバック制御により電動アクチュエータを駆動する場合、制御のための演算処理、およびマニュアルシャフト位置の初期化処理などが必要である。そのため、レンジ切り換えの速度を向上させることが難しかった。
【0005】
本発明の一態様は、出力軸の角度位置を高速に切り換え可能な電動アクチュエータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、軸方向に延びるモータシャフトを有するモータ部と、前記モータシャフトの軸方向一方側または軸方向他方側に連結される減速機構と、前記減速機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトを有する出力部と、上位装置から入力される出力シャフト回転命令に基づいて前記モータ部を駆動する制御部と、を備え、前記制御部は、前記出力シャフト回転命令に基づいて、前記出力シャフトを回転開始位置から回転終了位置まで回転させるために必要な前記モータシャフトの回転角を決定するモータ回転角決定部と、前記モータ回転角決定部で決定された回転角だけ前記モータシャフトを回転させるモータ駆動部と、を有する、電動アクチュエータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、出力軸の角度位置を高速に切り換え可能な電動アクチュエータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態の電動アクチュエータの断面図である。
【
図3】
図3は、外歯ギアの歯車部を示す部分平面図である。
【
図4】
図4は、内歯ギアの歯車部を示す部分平面図である。
【
図5】
図5は、外歯歯車と内歯歯車の噛み合い部分を拡大して示す部分平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の電動アクチュエータの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
各図においてZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向である。各図に適宜示す仮想軸である中心軸J1の軸方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向である。本実施形態の場合、Z軸方向に見て、モータシャフト41の中心軸J1と出力シャフト61の出力中心軸J3とを結ぶ方向をX軸方向とする。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向の両方と直交する方向である。以下の説明においては、中心軸J1の軸方向と平行な方向を単に「軸方向Z」と呼ぶ。また、特に断りのない限り、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0010】
本実施形態において、上側は、軸方向一方側に相当する。なお、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1は本実施形態の電動アクチュエータの断面図である。電動アクチュエータ10は、車両に取り付けられる。電動アクチュエータ10は、車両の運転者のシフト操作に基づいて駆動されるシフト・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載される。電動アクチュエータ10は、モータ部40と、減速機構50と、出力部60と、回路基板70と、モータ部センサ71と、出力部センサ72と、ハウジング11と、バスバーホルダ90と、図示しないバスバーと、を備える。
【0012】
モータ部40は、モータシャフト41と、第1ベアリング44aと、第2ベアリング44bと、第3ベアリング44cと、第4ベアリング44dと、ロータ本体42と、ステータ43と、モータ部用センサマグネット45と、マグネットホルダ46と、を有する。モータシャフト41は、軸方向Zに延びる。
【0013】
第1ベアリング44aと第2ベアリング44bと第3ベアリング44cと第4ベアリング44dとは、モータシャフト41を中心軸J1周りに回転可能に支持する。本実施形態において、第1ベアリング44a、第2ベアリング44b、第3ベアリング44c、および第4ベアリング44dは、例えば、ボールベアリングである。
【0014】
モータシャフト41のうち第3ベアリング44cに支持される部分である偏心軸部41aは、中心軸J1と平行で中心軸J1に対して偏心した偏心軸J2を中心として延びる円柱状である。モータシャフト41のうち偏心軸部41a以外の部分は、中心軸J1を中心として延びる円柱状である。
【0015】
ロータ本体42は、モータシャフト41に固定される。より詳細には、ロータ本体42は、モータシャフト41の下側の部分に固定される。ロータ本体42は、ロータコア42aと、ロータマグネット42bと、を有する。ロータコア42aは、モータシャフト41のうち偏心軸部41aよりも下側の部分の外周面に固定される。ロータマグネット42bは、ロータコア42aの外周面に固定される。
【0016】
ステータ43は、ロータ本体42の径方向外側に隙間を介して配置される。ステータ43は、ロータ本体42の径方向外側を囲む環状である。ステータ43は、ステータコア43aと、インシュレータ43bと、複数のコイル43cと、を有する。コイル43cは、インシュレータ43bを介してステータコア43aに装着される。
【0017】
マグネットホルダ46は、中心軸J1を中心とする円環状である。マグネットホルダ46は、モータシャフト41の上側の端部における外周面に固定される。モータ部用センサマグネット45は、中心軸J1を中心とする円環板状である。モータ部用センサマグネット45の板面は、軸方向Zと直交する。モータ部用センサマグネット45は、マグネットホルダ46の下面のうち径方向外周縁部に固定される。これにより、モータ部用センサマグネット45は、マグネットホルダ46を介してモータシャフト41に取り付けられる。
本実施形態においてモータ部用センサマグネット45は、モータシャフト41のうち回路基板70よりも上側に突出した部分に取り付けられ、回路基板70の上側の面と隙間を介して対向する。
【0018】
減速機構50は、モータシャフト41の上側に連結される。減速機構50は、ロータ本体42およびステータ43の上側に配置される。減速機構50は、外歯ギア51と、内歯ギア52と、出力ギア53と、を有する。
【0019】
図2は、減速機構50を示す斜視図である。
図1および
図2に示すように、外歯ギア51は、偏心軸部41aの偏心軸J2を中心として、偏心軸J2の径方向に拡がる円環板状である。外歯ギア51の径方向外側面には、歯車部が設けられる。外歯ギア51は、モータシャフト41に第3ベアリング44cを介して接続される。これにより、減速機構50は、モータシャフト41に連結される。外歯ギア51は、第3ベアリング44cの外輪に径方向外側から嵌め合わされる。これにより、第3ベアリング44cはモータシャフト41と外歯ギア51とを、偏心軸J2周りに相対的に回転可能に連結する。
【0020】
外歯ギア51は、外歯ギア51を軸方向Zに貫通する複数の孔51aを有する。複数の孔51aは、偏心軸J2を中心とする周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。
図2に示すように、孔51aの軸方向Zに沿って視た形状は、円形状である。
【0021】
内歯ギア52は、外歯ギア51の径方向外側を囲んで回路基板ケース20に固定され、外歯ギア51と噛み合う。内歯ギア52は、ハウジング11の後述する金属部材22に保持される。内歯ギア52は、内歯ギア本体52aと、複数の突起部52bと、を有する。
内歯ギア本体52aは、中心軸J1を中心とする円環状である。内歯ギア本体52aの内周面には、歯車部が設けられる。内歯ギア本体52aの歯車部は、外歯ギア51の歯車部と噛み合う。突起部52bは、内歯ギア本体52aの外周面から径方向外側に突出する。
複数の突起部52bは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。
【0022】
図3は、外歯ギアの歯車部を示す部分平面図である。
図4は、内歯ギアの歯車部を示す部分平面図である。
図5は、外歯歯車と内歯歯車の噛み合い部分を拡大して示す部分平面図である。
【0023】
外歯ギア51は、
図3に示すように、軸方向に見て、歯先を構成する平坦部51cと、歯底を構成する第1円弧C1とが交互に連続する形状の第1歯車部51bを有する。
内歯ギア52は、
図4に示すように、軸方向に見て、歯底を構成する第2円弧C2と、歯先を構成する第3円弧C3とが交互に連続する形状の第2歯車部52cを有する。
【0024】
図5に示す外歯ギア51と内歯ギア52が噛み合う部分では、外歯ギア51の歯元の第1円弧C1と、内歯ギア52の歯先を構成する第3円弧C3とが、互いに接触しながら移動する。外歯ギア51と内歯ギア52の噛み合いを、径の異なる単純円の内接接触による噛み合わせとしたことで、歯面の面圧を小さくできる。これにより、優れた潤滑性が得られ、発熱も少ないことから、高効率の減速機構となる。
【0025】
図3に示すように、外歯ギア51において、第1歯車部51bの平坦部51cは、複数の第1円弧C1の中心を周方向に結ぶ仮想円Cvよりも径方向内側に位置する。外歯ギア51に平坦部51cを設けることで、外歯ギア51の歯が内歯ギア52の歯溝から抜ける際の歯同士の接触を避けることができる。これにより、外歯ギア51における第1円弧C1の半径R1と、内歯ギア52における第3円弧C3の半径R3との差を小さくできる。その結果、バックラッシュを小さくでき、電動アクチュエータ10の位置精度が向上する。
また本実施形態では、外歯ギア51および内歯ギア52の歯形の基本形状を3つの円弧で構成できるため、製造が容易で精度を高めやすい。
【0026】
本実施形態の外歯ギア51において、第1円弧C1と平坦部51cとが接続される角部に、例えばR0.05mm~0.2mmの面取り部を設けてもよい。これにより、外歯ギア51と内歯ギア52との噛み合い時の摩擦を小さくでき、減速機構50の伝達効率を向上できる。一方、上記角部の面取り幅を大きくするほど減速機構50のバックラッシュが増加するため、面取り部はR0.15mm以下とすることが好ましい。
【0027】
本実施形態において、外歯ギア51および内歯ギア52の少なくとも一方の歯面に、潤滑油を保持する凹部を有する構成としてもよい。上記歯面の凹部は、例えばショットブラスト処理またはコイニング処理により設けることができる。この構成によれば、外歯ギア51と内歯ギア52の噛み合い部分に適量の潤滑油を保持できる。これにより、例えば低温時に潤滑油の粘度が上昇して流動しにくくなった場合でも、減速機構50が動きにくくなるのを抑制できる。また、ギアの摩擦が低減されることにより、減速機構50および電動アクチュエータ10の効率向上および長寿命化が図れる。
【0028】
出力ギア53は、出力ギア本体53aと、複数のピン53bと、を有する。出力ギア本体53aは、外歯ギア51および内歯ギア52の下側に配置される。出力ギア本体53aは、中心軸J1を中心として径方向に拡がる円環板状である。出力ギア本体53aの径方向外側面には、歯車部が設けられる。出力ギア本体53aの歯車部は、内歯ギア本体52aよりも径方向外側に突出する。
図1に示すように、出力ギア本体53aは、モータシャフト41に第4ベアリング44dを介して接続される。
【0029】
複数のピン53bは、出力ギア本体53aの上面から上側に突出する円筒状である。
図2に示すように、複数のピン53bは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。ピン53bの外径は、孔51aの内径よりも小さい。複数のピン53bは、複数の孔51aのそれぞれに下側から通される。ピン53bの外周面は、孔51aの内周面と内接する。孔51aの内周面は、ピン53bを介して、外歯ギア51を中心軸J1周りに揺動可能に支持する。
【0030】
出力部60は、電動アクチュエータ10の駆動力を出力する部分である。
図1に示すように、出力部60は、モータ部40の径方向外側に配置される。出力部60は、出力シャフト61と、駆動ギア62と、出力部用センサマグネット63と、マグネットホルダ64と、を有する。
【0031】
図2に示すように、出力シャフト61は、モータシャフト41の軸方向Zに延びる筒状である。このように、出力シャフト61がモータシャフト41と同じ方向に延びるため、モータシャフト41の回転を出力シャフト61に伝達する減速機構50の構造を簡単化できる。本実施形態において出力シャフト61は円筒状である。出力シャフト61は、仮想軸である出力中心軸J3を中心とする。出力中心軸J3は、中心軸J1と平行であり、中心軸J1から径方向に離れて配置される。すなわち、モータシャフト41と出力シャフト61とは、モータシャフト41の径方向に離れて配置される。この構成によれば、モータ部40と出力部60とが、モータシャフト41の径方向に並んで配置されるので、電動アクチュエータ10を軸方向において薄型化可能である。
【0032】
図1に示すように、出力シャフト61は、下側に開口する開口部61dを有する。本実施形態において出力シャフト61は、軸方向両側に開口する。出力シャフト61は、内周面の下部にスプライン溝を有する。出力シャフト61は、円筒状の出力シャフト本体61aと、出力シャフト本体61aから出力中心軸J3の径方向外側に突出するフランジ部61bと、を有する。出力シャフト61は、モータシャフト41の径方向においてロータ本体42と重なる位置に配置される。出力シャフト61の下側の端部、すなわち開口部61dは、モータ部40の下側の端部よりも上側に配置される。本実施形態においてモータ部40の下側の端部とは、モータシャフト41の下側の端部である。
【0033】
出力シャフト61には、下側から開口部61dを介して被駆動シャフトDSが挿入されて連結される。より詳細には、被駆動シャフトDSの外周面に設けられたスプライン部が、出力シャフト61の内周面に設けられたスプライン溝に嵌め合わされることで、出力シャフト61と被駆動シャフトDSとが連結される。被駆動シャフトDSには、出力シャフト61を介して電動アクチュエータ10の駆動力が伝達される。これにより、電動アクチュエータ10は、被駆動シャフトDSを出力中心軸J3周りに回転させる。
【0034】
駆動ギア62は、出力シャフト61に固定され出力ギア53と噛み合う。本実施形態において駆動ギア62は、出力シャフト本体61aの外周面のうちフランジ部61bよりも上側の部分に固定される。駆動ギア62は、フランジ部61bの上面と接触する。
図2に示すように、駆動ギア62は、出力シャフト61から出力ギア53に向かって延び、出力ギア53に近づくに従って幅が大きくなる扇形ギアである。駆動ギア62の出力ギア53側の端部には、歯車部が設けられる。駆動ギア62の歯車部は、出力ギア53の歯車部と噛み合う。
【0035】
図1に示すように、マグネットホルダ64は、出力中心軸J3を中心として軸方向Zに延びる略円筒状の部材である。マグネットホルダ64は、軸方向両側に開口する。マグネットホルダ64は、出力シャフト61の上側、かつ、減速機構50の径方向外側に配置される。マグネットホルダ64は、回路基板70を軸方向Zに貫通する。マグネットホルダ64の内部は、出力シャフト61の内部と繋がる。マグネットホルダ64には、出力シャフト61に挿入された被駆動シャフトDSの上端部が圧入される。これにより、マグネットホルダ64は、被駆動シャフトDSに固定される。
【0036】
出力部用センサマグネット63は、出力中心軸J3を中心とする円環状である。出力部用センサマグネット63は、マグネットホルダ64の上側の端部における外周面に固定される。被駆動シャフトDSにマグネットホルダ64が固定されることで、出力部用センサマグネット63は、マグネットホルダ64を介して被駆動シャフトDSに固定される。出力部用センサマグネット63は、回路基板70の上側の面と隙間を介して対向する。
【0037】
モータシャフト41が中心軸J1周りに回転されると、偏心軸部41aは、中心軸J1を中心として周方向に公転する。偏心軸部41aの公転は第3ベアリング44cを介して外歯ギア51に伝達され、外歯ギア51は、孔51aの内周面とピン53bの外周面との内接する位置が変化しつつ、揺動する。これにより、外歯ギア51の歯車部と内歯ギア52の歯車部との噛み合う位置が、周方向に変化する。したがって、内歯ギア52に、外歯ギア51を介してモータシャフト41の回転力が伝達される。
【0038】
ここで、本実施形態では、内歯ギア52は固定されているため回転しない。そのため、内歯ギア52に伝達される回転力の反力によって、外歯ギア51が偏心軸J2周りに回転する。このとき外歯ギア51の回転する向きは、モータシャフト41の回転する向きと反対向きとなる。外歯ギア51の偏心軸J2周りの回転は、孔51aとピン53bとを介して、出力ギア53に伝達される。これにより、出力ギア53が中心軸J1周りに回転する。出力ギア53には、モータシャフト41の回転が減速されて伝達される。
【0039】
出力ギア53が回転すると、出力ギア53に噛み合う駆動ギア62が出力中心軸J3周りに回転する。これにより、駆動ギア62に固定された出力シャフト61が出力中心軸J3周りに回転する。このようにして、出力シャフト61には、減速機構50を介してモータシャフト41の回転が伝達される。
【0040】
回路基板70は、ロータ本体42よりも上側に配置される。回路基板70は、減速機構50の上側に配置される。回路基板70は、板面が軸方向Zと直交する板状である。回路基板70は、回路基板70を軸方向Zに貫通する貫通孔70aを有する。貫通孔70aには、モータシャフト41が通される。これにより、モータシャフト41は、回路基板70を軸方向Zに貫通する。回路基板70は、図示しないバスバーを介して、ステータ43と電気的に接続される。すなわち、回路基板70は、モータ部40と電気的に接続される。
【0041】
モータ部センサ71は、回路基板70の上面に固定される。より詳細には、モータ部センサ71は、回路基板70の上側の面のうちモータ部用センサマグネット45と隙間を介して軸方向Zに対向する部分に固定される。モータ部センサ71は、モータ部用センサマグネット45の磁界を検出する磁気センサである。モータ部センサ71は、例えば、ホール素子である。図示は省略するが、モータ部センサ71は、例えば、周方向に沿って3つ設けられる。モータ部センサ71は、モータ部用センサマグネット45の磁界を検出することでモータ部用センサマグネット45の回転位置を検出してモータシャフト41の回転を検出する。
【0042】
本実施形態では、減速機構50がモータシャフト41の上側に連結され、回路基板70がロータ本体42よりも上側かつ減速機構50の上側に配置される。そのため、回路基板70とロータ本体42との軸方向Zの間に減速機構50が配置される。これにより、回路基板70に固定されるモータ部センサ71を、ロータ本体42およびステータ43から離して配置することができる。したがって、モータ部センサ71がロータ本体42およびステータ43から生じる磁界の影響を受けにくくでき、モータ部センサ71の検出精度を向上できる。
【0043】
出力部センサ72は、回路基板70の上面に固定される。より詳細には、出力部センサ72は、回路基板70の上側の面のうち出力部用センサマグネット63と隙間を介して軸方向Zに対向する部分に固定される。出力部センサ72は、出力部用センサマグネット63の磁界を検出する磁気センサである。出力部センサ72は、例えば、ホール素子である。図示は省略するが、出力部センサ72は、例えば、出力中心軸J3を中心とする周方向に沿って3つ設けられる。出力部センサ72は、出力部用センサマグネット63の磁界を検出することで出力部用センサマグネット63の回転位置を検出して被駆動シャフトDSの回転を検出する。
【0044】
本実施形態の電動アクチュエータ10は、出力シャフト61に連結される被駆動シャフトDSの角度位置を検出する出力部センサ72を備える。具体的には、出力部センサ72は、被駆動シャフトDSに装着される出力部用センサマグネット63の磁界を検出する。この構成によれば、出力部センサ72は、出力シャフト61と被駆動シャフトDSとの連結部のバックラッシュに影響されることなく、被駆動シャフトDSの角度位置を高精度に検出できる。したがって、電動アクチュエータ10は、被駆動シャフトDSの角度位置を、出力部センサ72の出力に基づいて高精度に制御可能である。
【0045】
ハウジング11は、モータ部40、減速機構50、出力部60、回路基板70、モータ部センサ71、出力部センサ72、バスバーホルダ90および図示しないバスバーを収容する。ハウジング11は、モータケース30と、回路基板ケース20と、を有する。モータケース30は、上側に開口する。
図1に示すように、モータケース30は、モータケース本体31と、ステータ固定部材37と、を有する。すなわち、ハウジング11は、モータケース本体31と、ステータ固定部材37と、を有する。
【0046】
回路基板ケース20は、略直方体の箱状である。回路基板ケース20は、モータケース30の上側に取り付けられる。回路基板ケース20は、モータケース30の開口を塞ぐ。回路基板ケース20は、回路基板70を収容する。回路基板ケース20は、回路基板ケース本体21と、金属部材22と、回路基板ケースカバー26と、を有する。すなわち、ハウジング11は、回路基板ケース本体21と、金属部材22と、回路基板ケースカバー26と、を有する。
【0047】
図1に示すように、回路基板ケース本体21は、上側に開口する箱状である。回路基板ケース本体21は、軸方向Zに沿って視て、モータケース本体31よりも大きく、モータケース本体31の全体と重なる。回路基板ケース本体21は、底壁21aと、側壁21bと、を有する。すなわち、回路基板ケース20は、底壁21aと、側壁21bと、を有する。底壁21aは、軸方向Zと直交する平面に沿って拡がる。底壁21aは、軸方向Zに沿って視て、モータケース本体31よりも径方向外側に拡がる。底壁21aは、モータケース30の上側の開口を塞ぐ。底壁21aは、ステータ43の上側を覆う。
【0048】
底壁21aは、底壁21aの下側の面から上側に窪む凹部21cを有する。底壁21aは、底壁21aを軸方向Zに貫通する中央貫通孔21dを有する。中央貫通孔21dは、凹部21cの底面から底壁21aの上側の面まで底壁21aを貫通する。中央貫通孔21dは、軸方向Zに沿って視て、中心軸J1を中心とする円形状である。中央貫通孔21dには、モータシャフト41が通される。
【0049】
側壁21bは、底壁21aの外縁部から上側に突出する角筒状である。側壁21bの内側には、回路基板70が収容される。すなわち、回路基板ケース20は、底壁21aよりも上側において回路基板70を収容する。側壁21bは、上側に開口する。側壁21bの上側の開口、すなわち回路基板ケース20の上側の開口は、回路基板ケースカバー26によって塞がれる。回路基板ケースカバー26は、例えば、金属製である。
【0050】
金属部材22は、金属製である。
図1に示すように、金属部材22は、回路基板ケース本体21に保持される。すなわち、金属部材22は、ハウジング本体11aに保持される。金属部材22は、凹部21c内に収容されて保持される。本実施形態において金属部材22の一部は、ハウジング本体11aに埋め込まれる。そのため、金型に金属部材22を挿入して樹脂を流し込むインサート成形を用いて、ハウジング本体11aの一部または全体を作ることができる。したがって、ハウジング11の作製が容易である。本実施形態では、ハウジング本体11aのうち回路基板ケース本体21が、金型に金属部材22を挿入して樹脂を流し込むインサート成形によって作られる。
【0051】
金属部材22は、ベアリング保持部23と、腕部25と、出力シャフト支持部24と、を有する。ベアリング保持部23は、円環板部23aと、外側筒部23bと、内側筒部23cと、天板部23dと、を有する。円環板部23aは、中心軸J1を中心とする円環板状である。円環板部23aの板面は、軸方向Zと直交する。
【0052】
外側筒部23bは、円環板部23aの外周縁部から下側に突出する円筒状である。外側筒部23bの径方向内側に、内歯ギア52が固定される。これにより、減速機構50は、金属部材22を介して底壁21aの下側の面に保持される。外側筒部23bは、中央貫通孔21dの径方向内側に埋め込まれることにより、回路基板ケース本体21に保持される。
【0053】
内側筒部23cは、円環板部23aの内周縁部から上側に突出する円筒状である。内側筒部23cの径方向内側には、第1ベアリング44aが保持される。これにより、ベアリング保持部23は、第1ベアリング44aを保持する。内側筒部23cは、底壁21aよりも上側に突出する。内側筒部23cは、側壁21bの径方向内側に配置される。内側筒部23cは、貫通孔70aを介して回路基板70を軸方向Zに貫通し、回路基板70よりも上側に突出する。
【0054】
これにより、内側筒部23cに保持される第1ベアリング44aの少なくとも一部は、貫通孔70aに挿入される。そのため、第1ベアリング44aによって、モータシャフト41のうちモータ部用センサマグネット45が取り付けられる部分に近い位置で、モータシャフト41を支持することができる。これにより、モータシャフト41のうちモータ部用センサマグネット45が取り付けられる部分の軸がぶれることを抑制でき、モータ部用センサマグネット45の位置がぶれることを抑制できる。したがって、モータ部センサ71によるモータシャフト41の回転検出精度が低下することを抑制できる。また、径方向に沿って視て、第1ベアリング44aと回路基板70とを重ねて配置できるため、電動アクチュエータ10を軸方向Zに小型化しやすい。
【0055】
本明細書において「ベアリング保持部が第1ベアリングを保持する」とは、ベアリング保持部が第1ベアリングを径方向に位置決めできればよく、第1ベアリングがベアリング保持部に固定されなくてもよい。本実施形態において第1ベアリング44aは、内側筒部23cに嵌め合わされることで、径方向に位置決めされる。第1ベアリング44aは、内側筒部23cに対して固定されない。
【0056】
天板部23dは、内側筒部23cの上側の端部から径方向内側に突出する。天板部23dは、中心軸J1を中心とする円環状であり、板面が軸方向Zと直交する板状である。天板部23dの内側には、モータシャフト41の上側の端部が通される。天板部23dの内周縁部は、下側に湾曲する。天板部23dは、第1ベアリング44aの上側を覆う。
【0057】
天板部23dと第1ベアリング44aとの軸方向Zの間には、予圧部材47が配置される。すなわち、電動アクチュエータ10は、予圧部材47を備える。予圧部材47は、周方向に沿って延びる円環状のウェーブワッシャである。予圧部材47は、天板部23dの下側の面と第1ベアリング44aの外輪の上側の端部とに接触する。予圧部材47は、第1ベアリング44aの外輪に対して下向きの予圧を加える。
【0058】
腕部25は、ベアリング保持部23からモータシャフト41の径方向外側に延びる。腕部25は、板面が軸方向Zと直交する板状である。腕部25は、ベアリング保持部23と出力シャフト支持部24とを繋ぐ。これにより、金属部材22のうちベアリング保持部23と出力シャフト支持部24と以外の部分の大きさを最小限に抑えやすく、金属部材22を小型化しやすい。したがって、ハウジング11の製造コストを低減しやすく、ハウジング11の重量を小さくしやすい。
【0059】
出力シャフト支持部24は、腕部25の径方向外側の端部に繋がる。出力シャフト支持部24は、出力中心軸J3を中心とする円環状であり、板面が軸方向Zと直交する板状である。このように、本実施形態によれば、出力シャフト支持部24および腕部25が板状であるため、出力シャフト支持部24および腕部25を金属製の板部材を打ち抜く、または折り曲げる等のプレス加工によって容易に作ることができる。本実施形態において金属部材22は、金属製の板部材をプレス加工することによって作られる単一の部材である。
【0060】
出力シャフト支持部24は、出力シャフト支持部24を軸方向Zに貫通する貫通孔24aを有する。貫通孔24aには、出力シャフト本体61aの上側の端部である嵌合部61cが嵌め合わされる。すなわち、出力シャフト61は、貫通孔24aに嵌め合わされる嵌合部61cを有する。これにより、出力シャフト支持部24は、出力シャフト61を支持する。
【0061】
本実施形態によれば、金属製の金属部材22によって第1ベアリング44aを保持でき、かつ、出力シャフト61を支持できる。これにより、第1ベアリング44aに支持されるモータシャフト41と出力シャフト61とを、相対位置精度よく配置できる。また、金属部材22が保持されるハウジング本体11aは、樹脂製であるため、ハウジング11を軽量化できる。また、金属部材22は、金属製であるため、樹脂に比べて強度および耐熱性が高い。そのため、ハウジング11に外力および熱が加えられた場合であっても、金属部材22が大きく変形・損傷することを抑制でき、モータシャフト41と出力シャフト61とがずれることを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、貫通孔24aに嵌合部61cを嵌め合わせることで、出力シャフト61を金属部材22に対して、容易に支持させることができ、かつ、容易に位置決めすることができる。したがって、電動アクチュエータ10の組み立て作業性が向上する。
【0063】
モータケース本体31は、モータ収容部32と、出力部保持部33と、を有する。モータ収容部32は、底部を有し上側に開口する筒状である。モータ収容部32は、中心軸J1を中心とする円筒状である。モータ収容部32は、モータ部40を収容する。すなわち、モータケース本体31は、モータ部40を収容する。
【0064】
なお、本明細書において「モータケース本体がモータ部を収容する」とは、モータケース本体によってモータ部の一部が収容されればよく、モータ部の他の一部がモータケース本体の外部に突出してもよい。本実施形態では、モータケース本体31、すなわちモータ収容部32は、モータシャフト41の下側の部分、ロータ本体42、ステータ43、および第2ベアリング44bを収容する。
【0065】
ステータ固定部材37は、底部を有し上側に開口する筒状である。ステータ固定部材37は、中心軸J1を中心とする円筒状である。ステータ固定部材37は、モータ収容部32の内側に嵌め合わされる。ステータ固定部材37の底部には周方向に沿って配置される複数の貫通孔が設けられる。ステータ固定部材37の貫通孔には、モータ収容部32の底部に設けられた複数の突起がそれぞれ嵌め合わされる。
【0066】
ステータ固定部材37の上側の端部は、モータ収容部32よりも上側に突出する。ステータ固定部材37の底部には、第2ベアリング44bが保持される。ステータ固定部材37の内周面には、ステータ43の外周面が固定される。ステータ固定部材37は、金属製である。モータケース30は、例えば、金型にステータ固定部材37が挿入された状態で樹脂が流し込まれるインサート成形によって作られる。
【0067】
バスバーホルダ90は、ステータ固定部材37の上側の開口に配置される。バスバーホルダ90は、中心軸J1を中心とする円環状であり、板面が軸方向Zと直交する板状である。バスバーホルダ90は、図示しないバスバーを保持する。バスバーホルダ90は、ステータ43の上側を覆う。
【0068】
出力部保持部33は、モータ収容部32の径方向外側に位置する。出力部保持部33は、基部33aと、出力シャフト保持部33bと、を有する。基部33aは、モータ収容部32から径方向外側へ延びる。出力シャフト保持部33bは、モータ収容部32から延びる基部33aの径方向外側の先端部に位置する。出力シャフト保持部33bは、出力中心軸J3を中心とする円筒状である。出力シャフト保持部33bは、基部33aから軸方向両側に突出する。出力シャフト保持部33bは、軸方向両側に開口する。出力シャフト保持部33bの内部は、基部33aを軸方向Zに貫通する。
【0069】
出力シャフト保持部33bの内側には、円筒状のブッシュ65が嵌め合わされる。ブッシュ65の上側の端部には、出力中心軸J3を中心とする径方向の外側に突出するフランジ部が設けられる。ブッシュ65のフランジ部は、出力シャフト保持部33bの上側の端部によって下側から支持される。ブッシュ65の内側には、出力シャフト本体61aのうちフランジ部61bよりも下側の部分が嵌め合わされる。ブッシュ65は、出力シャフト61を出力中心軸J3周りに回転可能に支持する。フランジ部61bは、ブッシュ65のフランジ部を介して出力シャフト保持部33bの上側の端部によって下側から支持される。出力シャフト61の下側の開口部61dは、ブッシュ65よりも下側に配置される。
【0070】
図6は、本実施形態の電動アクチュエータの機能ブロック図である。
本実施形態の電動アクチュエータ10は、電動アクチュエータ10の動作を制御する制御部100を有する。制御部100は、モータ部40および出力部センサ72と電気的に接続される。制御部100は、回路基板70に実装される。制御部100は、電動アクチュエータ10の図示しない外部接続コネクタを介して、上位装置MCと電気的に接続される。なお、制御部100は、ハウジング11の外側に位置する基板に実装されていてもよい。
【0071】
制御部100は、電動アクチュエータ10に接続される上位装置MCからの出力シャフト回転命令Cmdに基づいてモータ部40を駆動する。本実施形態の場合、制御部100は、出力シャフト回転命令Cmdを解釈してモータ部40の回転角を決定するモータ回転角決定部101と、上位装置MCとの通信を実行する外部インターフェース102と、出力部センサ72との通信を実行するセンサインターフェース103と、モータ部40を駆動するモータ駆動部104と、を含む。制御部100は、集積回路として構成されていてもよく、複数の電子回路の組合せにより構成されていてもよい。制御部100は、一部または全部の機能がソフトウェアにより実装される構成としてもよい。
【0072】
モータ回転角決定部101は、出力シャフト回転命令Cmdに基づいて、出力シャフト61を回転開始位置から回転終了位置まで回転させるために必要なモータシャフト41を回転させる角度θmを決定する。
外部インターフェース102は、制御部100と上位装置MCとの間で各種情報の送受信を実行する。
センサインターフェース103は、出力部センサ72から角度位置情報を取得する。
モータ駆動部104は、モータ回転角決定部101で決定された角度θmだけモータシャフト41を回転させる。
【0073】
次に、本実施形態の電動アクチュエータ10を自動変速機のレンジ切換用のアクチュエータ装置に用いた場合の動作について説明する。
上記の場合、上位装置MCは、車両のECU(電子制御ユニット)であり、被駆動シャフトDSは、自動変速機のマニュアルバルブに接続されるマニュアルシャフトである。なお、被駆動シャフトDS自体がマニュアルシャフトである構成に限定されず、ギヤおよびボールねじなどを介して被駆動シャフトDSと自動変速機のマニュアルシャフトとが連結される構成であってもよい。
【0074】
図6に示すように、自動変速機のマニュアルシャフトとして機能する被駆動シャフトDSには、被駆動シャフトDSとともに回転されるディテントレバー201が連結される。ディテントレバー201には、油圧制御装置202のマニュアルバルブ203が連結される。ディテントレバー201の回転動作に伴い、マニュアルバルブ203が油圧制御装置202に対して相対的に進退される。
【0075】
ディテントレバー201は、先端部に凹部と凸部とが連続する位置決め部201aを有する。位置決め部201aの凹部には、油圧制御装置202に一端を固定されたディテントスプリング205の先端に位置するローラ206が挿入される。ローラ206は、ディテントスプリング205のバネ力により位置決め部201aの凹部に押し込まれる。ディテントレバー201は、ディテントスプリング205によりシフトレンジに対応した角度に保持される。
【0076】
上位装置MCは、運転者のシフトレバー操作によりレンジが切り換えられると、電動アクチュエータ10に対して、マニュアルシャフト(被駆動シャフトDS)の角度位置を変更するための出力シャフト回転命令Cmdを出力する。
【0077】
制御部100は、外部インターフェース102を介して出力シャフト回転命令Cmdを受信する。制御部100は、センサインターフェース103を介して出力部センサ72から被駆動シャフトDSの現在の角度位置P0を取得する。
制御部100は、モータ回転角決定部101において、出力シャフト回転命令Cmdに基づいて、出力シャフト61を回転させる角度を算出する。具体的に、出力部センサ72から取得する被駆動シャフトDSの角度位置P0に基づいて、現在のシフトレンジSR0を取得する。また、モータ回転角決定部101は、出力シャフト回転命令Cmdに含まれる移動先のシフトレンジSR1を取得する。
【0078】
モータ回転角決定部101は、複数のシフトレンジをそれぞれ被駆動シャフトDSの角度位置に変換するテーブルを有する。モータ回転角決定部101は、上記テーブルを参照することにより、現在のシフトレンジSR0および移動先のシフトレンジSR1を被駆動シャフトDSの角度位置に変換し、得られた角度位置から出力シャフト61および被駆動シャフトDSを回転させる角度θsを算出する。
【0079】
モータ回転角決定部101は、出力シャフト61の回転開始位置SPとして、出力部センサ72により検出される被駆動シャフトDSの角度位置P0を設定する。モータ回転角決定部101は、出力シャフト61を回転させる角度θsに、減速機構50の減速比(例えば60)を乗じた値を、モータ部40のモータシャフト41を回転させる角度θmとして決定する。
【0080】
制御部100は、モータ駆動部104によりモータ部40を駆動し、モータシャフト41を角度θmだけ回転させる。これにより、減速機構50を介して出力シャフト61および被駆動シャフトDSが、角度θsだけ回転される。被駆動シャフトDSに連結されるディテントレバー201が所定角度回転され、マニュアルバルブ203が移動されることにより、自動変速機のシフトレンジが切り換わる。
【0081】
なお、モータシャフト41を回転させる角度θmとして、出力シャフト61を回転させる角度θsに減速機構50の減速比を乗じた角度よりも大きい角度を設定してもよい。電動アクチュエータ10の駆動開始時の不感帯を予め勘案して角度θmを決定することで、被駆動シャフトDSの回転終了位置における位置精度を高めることができる。
【0082】
モータシャフト41を回転させる角度θmとして、出力シャフト61を回転させる角度θsよりも大きくする度合いは、電動アクチュエータ10に連結された状態における被駆動シャフトDSのガタの大きさに応じて設定してもよい。電動アクチュエータ10に連結された状態における被駆動シャフトDSのガタの大きさは、モータ部40による出力シャフト61の位置制御精度と、出力シャフト61と被駆動シャフトDSとの連結部のバックラッシュと、減速機構50のバックラッシュとの合計の角度公差±θaとして規定可能である。
【0083】
上記の場合に、モータシャフト41を回転させる角度θmは、出力シャフトを回転させる角度θsと、角度公差±θaの上限値θaの半分の角度(θa/2)とを加算した角度(θs+θa/2)に、減速機構50の減速比を乗じた角度とすることができる。この構成によれば、電動アクチュエータ10の機械精度に起因する被駆動シャフトDSのガタの上限値の1/2を、駆動開始時の不感帯として設定し、その分だけ多く被駆動シャフトDSを回転させる。これにより、
図6に示すディテントレバー201において、ガタによる回転不足の幅が小さくなり、被駆動シャフトDSの回転終了位置における角度のずれ幅を小さくできる。
【0084】
制御部100は、モータ駆動部104により被駆動シャフトDSを回転させた後、センサインターフェース103を介して出力部センサ72の出力信号を取得する。制御部100は、出力部センサ72の出力信号に基づいて被駆動シャフトDSの角度位置P1を取得する。制御部100は、取得した角度位置P1と、レンジ切り換え動作により被駆動シャフトDSが配置されるべき角度位置(P0+θs)とを比較する。比較の結果、角度位置P1と角度位置(P0+θs)とが一致しない場合、制御部100は、外部インターフェース102を介して、上位装置MCにエラー情報を出力する。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態の電動アクチュエータ10は、オープンループ制御により被駆動シャフトDSを回転させ、自動変速機のレンジ切換を実行する。本実施形態の電動アクチュエータ10では、減速機構50において外歯ギア51と内歯ギア52の歯形を最適化することによりバックラッシュを低減し、かつ、被駆動シャフトDSの角度位置を出力部センサ72により直接検知することにより位置検出精度を向上させている。これらの構成により、被駆動シャフトDSを高精度に位置制御可能とした結果、被駆動シャフトDSの角度位置のフィードバックを不要とし、オープンループ制御によるレンジ切換が可能となった。
【0086】
より詳細には、本実施形態の電動アクチュエータ10では、位置精度は最大変換角度の1/10以下である。最大変換角度は、本実施形態では、電動アクチュエータ10により被駆動シャフトDSが回転される角度の最大範囲であり、例えば約20°である。
本実施形態の電動アクチュエータ10においては、モータ部40による出力シャフト61の位置制御精度と、出力シャフト61と被駆動シャフトDSとの連結部のバックラッシュと、減速機構50のバックラッシュと、出力部センサ72の位置検出精度との合計が、最大変換角度の1/10以下である。この構成によれば、被駆動シャフトDSが自動変速機のマニュアルシャフトである場合に、ディテントレバー201の角度位置を最大変換角度の1/10以下の精度で制御でき、一般的な車両用の自動変速機において正確なレンジ切り換えが可能である。
【0087】
本実施形態の電動アクチュエータ10によれば、出力部センサ72の検出値をフィードバックしながら被駆動シャフトDSを回転させるクローズドループ制御と比較して、モータ部40を高速に動作させ、被駆動シャフトDSを高速回転させることができる。したがって、本実施形態の電動アクチュエータ10を自動変速機に用いることで、レンジ切換の速度が向上する。
【0088】
また本実施形態の電動アクチュエータ10によれば、自動変速機のレンジ切換速度向上させることができるため、例えば、車両のイグニッション・オン時に、発進可能状態となるまでの時間を短縮できる。
また本実施形態の電動アクチュエータ10によれば、被駆動シャフトDSの角度位置は、回転開始位置SPを設定するための検出にのみ用い、被駆動シャフトDSの回転中には角度位置のフィードバックを行わない。そのため、被駆動シャフトDSの位置制御精度は、外乱による出力部センサ72の検出精度変化の影響を受けにくい。よって本実施形態の電動アクチュエータ10によれば、被駆動シャフトDSの角度制御のロバスト性が向上する。
【0089】
また本実施形態の電動アクチュエータ10によれば、出力部センサ72により出力シャフト61および被駆動シャフトDSの角度位置を直接検知できるため、出力シャフト61の初期位置検出が不要である。仮に、電動アクチュエータ10において、出力部センサ72を用いずに出力シャフト61の初期位置検出を行う場合、被駆動シャフトDSを回転限界位置まで回転させて初期位置を検出する、あるいは、扇状の駆動ギア62を一方向に回転させてハウジング本体11aに接触させるなどの動作が実行される。初期位置検出の実行中はレンジ切換できないため、例えばイグニッション・オン時の発進タイムラグとなる。また、初期位置検出動作時に、被駆動シャフトDSが回転止めに突き当たったり、駆動ギア62とハウジング本体11aとが接触する際に、異音が発生する。本実施形態の電動アクチュエータ10によれば、上記した初期位置検出の副作用が発生せず、優れた運転性および静音性が得られる。
【0090】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。
本実施形態では、電動アクチュエータ10に内蔵される出力部センサ72により被駆動シャフトDSの角度位置を検出する構成としたが、被駆動シャフトDSの角度位置は、電動アクチュエータ10の外部に設けられるセンサにより検出してもよい。例えば、被駆動シャフトDSの角度位置は、被駆動シャフトDSを備える自動変速機において検出可能である。この場合、上位装置MCは、自動変速機において検出される被駆動シャフトDSの角度位置を含む出力シャフト回転命令Cmdを電動アクチュエータ10に対して送信する。
【0091】
本実施形態では、モータ回転角決定部101において、出力シャフト61および被駆動シャフトDSを回転させる角度を算出する構成としたが、上位装置MCから供給される出力シャフト回転命令Cmdに、出力シャフト61および被駆動シャフトDSを回転させる角度が含まれる構成としてもよい。この構成によれば、モータ回転角決定部101での演算が少なくなるので、電動アクチュエータ10をより高速に動作させることができる。また、被駆動シャフトDSの角度位置を自動変速機において検出する構成では、電動アクチュエータにおいて被駆動シャフトDSの現在の角度位置を検出しないため、上位装置MCから、出力シャフト61および被駆動シャフトDSを回転させる角度を含む出力シャフト回転命令Cmdを電動アクチュエータに対して供給することが好ましい。
【0092】
上述した実施形態の電動アクチュエータの用途は、特に限定されず、車両以外に搭載されてもよい。また、上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0093】
10…電動アクチュエータ、40…モータ部、41…モータシャフト、50…減速機構、51…外歯ギア、51a…孔、51b…第1歯車部、51c…平坦部、52…内歯ギア、52c…第2歯車部、53…出力ギア、53b…ピン、60…出力部、61…出力シャフト、72…出力部センサ、100…制御部、101…モータ回転角決定部、104…モータ駆動部、C1…第1円弧、C2…第2円弧、C3…第3円弧、Cmd…出力シャフト回転命令、Cv…仮想円、DS…被駆動シャフト、J1…中心軸、MC…上位装置、P0,P1…角度位置、SP…回転開始位置、Z…軸方向、θ…回転角、θa…角度公差上限値