(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】着色接着芯地
(51)【国際特許分類】
A41D 27/06 20060101AFI20221012BHJP
C09B 1/54 20060101ALI20221012BHJP
C09B 29/085 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A41D27/06
C09B1/54
C09B29/085 A
(21)【出願番号】P 2018170688
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】土肥 政文
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-041461(JP,A)
【文献】特開昭54-042481(JP,A)
【文献】特開平09-176509(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107205502(CN,A)
【文献】特開昭60-126387(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013996(WO,A1)
【文献】特開2006-193574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/06
C09B 1/54
C09B 29/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布と、
前記基布の少なくとも一方の主面上に設けられた接着部と、を備え、
前記基布及び前記接着部が染料混合物によって染色されており、
前記染料混合物が、下記一般式(1-1)又は(1-2)で表される、アントラキノン系青色染料と、下記一般式(2)で表される、アゾ系青色染料とを含み、
前記染料混合物が、下記一般式(3)で表される、アゾ系黄色染料を更に含み、
前記染料混合物が、下記一般式(4)で表される、アゾ系赤色染料を更に含み、
前記アゾ系青色染料の量に対する前記アントラキノン系青色染料の量の質量比が、1.10~1.90であり、
前記アントラキノン系青色染料及び前記アゾ系青色染料の合計量に対する、前記アゾ系黄色染料の量の質量比が、0.05~1.30であり、
前記アントラキノン系青色染料及び前記アゾ系青色染料の合計量に対する、前記アゾ系赤色染料の量の質量比が、0.10~0.70である、
着色接着芯地。
【化1】
[式(1-1)及び(1-2)中、R
1は、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又はオキシ基若しくはエステル基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、前記官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~6である。]
【化2】
[式(2)中、R
2a及びR
2bは、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、前記官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8であり、R
2a又はR
2bのうち少なくとも一方が前記官能基含有基であり、R
2cは、炭素数1~6のアルキル基を示す。]
【化3】
[式(3)中、R
3a及びR
3bは、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、前記官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8である。]
【化4】
[式(4)中、R
4a及びR
4bは、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、前記官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8である。]
【請求項2】
前記アントラキノン系青色染料が、下記一般式(1-1A)で表される、請求項1に記載の着色接着芯地。
【化5】
[式(1-1A)中、R
1aは、水素原子又はメチル基を示す。]
【請求項3】
前記アントラキノン系青色染料が、C.I.Disperse Blue 73、C.I.Disperse Blue 73:1、C.I.Disperse Blue 214、及び、C.I.Disperse Blue 158からなる群より選択される一種以上の染料である、請求項1に記載の着色接着芯地。
【請求項4】
前記アントラキノン系青色染料が、C.I.Disperse Blue 73である、請求項1に記載の着色
接着芯地。
【請求項5】
前記アゾ系青色染料が、C.I.Disperse Blue 79、C.I.Disperse Blue 79:1、及び、C.I.Disperse Blue 281からなる群より選択される一種以上の染料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の着色接着芯地。
【請求項6】
前記アゾ系黄色染料が、C.I.Disperse Yellow 163、及び/又は、C.I.Disperse Orange 30である、請求項1に記載の着色接着芯地。
【請求項7】
前記アゾ系赤色染料が、C.I.Disperse Red 167:1である、請求項1に記載の着色接着芯地。
【請求項8】
基布と、
前記基布の少なくとも一方の主面上に設けられた接着部と、を備え、
前記基布及び前記接着部が染料混合物によって染色されており、
前記染料混合物が、C.I.Disperse Blue 73、C.I.Disperse Blue 73:1、C.I.Disperse Blue 214、及び、C.I.Disperse Blue 158からなる群より選択される一種以上のアントラキノン系青色染料と、
C.I.Disperse Blue 79、C.I.Disperse Blue 79:1、及び、C.I.Disperse Blue 281からなる群より選択される一種以上のアゾ系青色染料とを含み、
前記染料混合物が、C.I.Disperse Yellow 163、及
びC.I.Disperse Orange 30
からなる群より選択される一種以上のアゾ系黄色染料を更に含み、
前記染料混合物が、C.I.Disperse Red 167:1を更に含み、
前記アントラキノン系青色染料及び前記アゾ系青色染料の合計量に対する、前記アゾ系黄色染料の量の質量比が、0.05~1.30であり、
前記アントラキノン系青色染料及び前記アゾ系青色染料の合計量に対する、C.I.Disperse Red 167:1の量の質量比が、0.10~0.70であり、
前記アゾ系青色染料の量に対する前記アントラキノン系青色染料の量の質量比が、1.10~1.90である、
着色接着芯地。
【請求項9】
前記アントラキノン系青色染料が、C.I.Disperse Blue 73である、請求項8に記載の着色接着芯地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色接着芯地に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料等の製造のために、基布と接着部とを同色で染色した着色接着芯地が用いられることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、服飾品にはより高度な意匠性が求められており、着色接着芯地に起因する表地の変色をより確実に抑えることが求められている。さらに、着色接着芯地が接着された表生地を表地側から見た時に、接着部がキラついて見える現象である「キラツキ」をより確実に抑制することが求められている。「キラツキ」は、接着部と基布とで色調に差がある場合に、発生し易くなる。
【0005】
本発明は、昇華堅牢度に優れ、かつ、キラツキを抑制可能な着色接着芯地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、基布と、基布の少なくとも一方の主面上に設けられた接着部と、を備える着色接着芯地に関する。基布及び接着部が染料混合物によって染色されている。染料混合物が、下記一般式(1-1)又は(1-2)で表される、アントラキノン系青色染料と、下記一般式(2)で表される、アゾ系青色染料とを含む。前記アゾ系青色染料の量に対する前記アントラキノン系青色染料の量の質量比が、0.50~3.50である。
【化1】
式(1-1)及び(1-2)中、R
1は、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は、オキシ基若しくはエステル基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、前記官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~6である。
【化2】
式(2)中、R
2a及びR
2bは、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、前記官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8であり、R
2a又はR
2bのうち少なくとも一方が前記官能基含有基であり、R
2cは、炭素数1~6のアルキル基を示す。
【0007】
アントラキノン系青色染料は、下記一般式(1-1A)で表される化合物であってよい。式(1-1A)中、R
1aは、水素原子又はメチル基を示す。
【化3】
【0008】
アントラキノン系青色染料は、C.I.Disperse Blue 73、C.I.Disperse Blue 73:1、C.I.Disperse Blue 214、及び、C.I.Disperse Blue 158からなる群より選択される一種以上の染料であってよい。
【0009】
アゾ系青色染料は、C.I.Disperse Blue 79、C.I.Disperse Blue 79:1、及び、C.I.Disperse Blue 281からなる群より選択される一以上の染料であってよい。
【0010】
染料混合物は、下記一般式(3)で表される、アゾ系黄色染料を更に含んでいてよい。
【化4】
式(3)中、R
3a及びR
3bは、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、前記官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8である。
【0011】
アゾ系黄色染料は、C.I.Disperse Yellow 163、及び/又は、C.I.Disperse Orange 30であってよい。
【0012】
染料混合物は、下記一般式(4)で表される、アゾ系赤色染料を更に含んでいてよい。
【化5】
式(4)中、R
4a及びR
4bは、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、前記官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8である。
【0013】
アゾ系赤色染料は、C.I.Disperse Red 167:1であってよい。
【0014】
アントラキノン系青色染料及びアゾ系青色染料の合計量に対する、アゾ系赤色染料の量の質量比は、0.10~0.70であってよい。
【0015】
染料混合物は、アントラキノン系青色染料、アゾ系青色染料、アゾ系黄色染料、及びアゾ系赤色染料を含んでいてよい。
【0016】
アゾ系青色染料の量に対するアントラキノン系青色染料の量の質量比は、1.10~1.90であってよい。
【0017】
本発明の別の一側面も、基布と、基布の少なくとも一方の主面上に設けられた接着部とを備える着色接着芯地に関する。基布及び接着部が染料混合物によって染色されている。染料混合物は、C.I.Disperse Blue 73、C.I.Disperse Blue 73:1、C.I.Disperse Blue 214、及び、C.I.Disperse Blue 158からなる群より選択される一種以上のアントラキノン系青色染料と、C.I.Disperse Blue 79、C.I.Disperse Blue 79:1、及び、C.I.Disperse Blue 281からなる群より選択される一種以上のアゾ系青色染料とを含む。前記アゾ系青色染料の量に対する前記アントラキノン系青色染料の量の質量比が、0.50~3.50である。
【0018】
染料混合物は、C.I.Disperse Yellow 163、及び/又は、C.I.Disperse Orange 30を含んでいてよい。
【0019】
染料混合物は、C.I.Disperse Red 167:1を含んでいてよい。
【0020】
アントラキノン系青色染料及びアゾ系青色染料の合計量に対する、C.I.Disperse Red 167:1の量の質量比は、0.10~0.70であってよい。
【0021】
染料混合物は、C.I.Disperse Yellow 163、及び/又は、C.I.Disperse Orange 30と、C.I.Disperse Red 167:1と、を含んでいてよい。
【0022】
アゾ系青色染料の量に対する前記アントラキノン系青色染料の量の質量比は、1.10~1.90であってよい。
【0023】
アントラキノン系青色染料は、C.I.Disperse Blue 73であってよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、昇華堅牢度に優れ、かつ、キラツキを抑制可能な着色接着芯地を提供することが可能となる。本発明の着色接着芯地は、昇華堅牢度に優れるために、着色接着芯地による表地の変色が抑制されており、接着部が安定的に染色されることで、基布と接着部との色調が均一に保たれるため、キラツキが抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態に係る着色接着芯地の概略断面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2のIII-III線から見た断面図であり、
図3(b)は、(a)の一部を拡大して示した平面図である。
【
図4】
図3の変形例を示す断面図、及びその一部を拡大して示す平面図である。
【
図5】着色接着芯地を備えた衣料品の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図6】一実施形態に係る着色接着芯地の製造方法を示したフローチャートである。
【
図7】その他の変形例に係る着色接着芯地の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について以下に説明する。
【0027】
以下、図面を参照して一実施形態に係る着色接着芯地について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の着色接着芯地と必ずしも一致していない。
【0028】
図1は、一実施形態に係る着色接着芯地の概略断面図である。
図2は、
図1の着色接着芯地の平面図である。
図1及び
図2に示される着色接着芯地1は、2つの主面3a、3bを有する基布3と、基布3の一方の主面3a上にドット状に配置された接着部6と、を備えている。接着部6は、主面3aに固着した下層樹脂部4と、下層樹脂部4上に配置された接着樹脂部5とを有する。
【0029】
基布3及び接着部6は、染料混合物によって染色されている。すなわち、着色接着芯地1は、基布3又は接着部6を染色している染料混合物を含む。染色された基布3を「染色布」ということがある。本実施形態では、染料混合物によって染色された基布3の主面3a上に接着部6を設けた後、基布3を加熱することにより染料混合物の一部を昇華させ、それを接着部6に付着又は含有させることにより、接着部6が染色されている。接着部6のうち、少なくとも接着樹脂部5が染色されていればよいが、接着樹脂部5及び下層樹脂部4が染色されていてもよい。
【0030】
基布3及び接着部6を染色する染料混合物は、下記一般式(1-1)又は(1-2)で表される、アントラキノン系青色染料と、下記一般式(2)で表される、アゾ系青色染料とを含む。これらは昇華性を有する染料である。
【化6】
【化7】
【0031】
式(1-1)及び(1-2)中、R1は、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は、オキシ基若しくはエステル基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示す。官能基含有基に含まれる1つ以上の炭化水素基の総炭素数が、1~6である。
【0032】
R1における炭素数1~6の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基が挙げられる。炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられる。R1における官能基含有基は、アルコキシアルキル基又はアルコキシカルボニル基であってもよく、その例としては、エトキシエチル基(-CH2-CH2-O-CH2-CH3)、エトキシカルボニル基(-C(=O)O-CH2-CH3)が挙げられる。R1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0033】
アントラキノン系青色染料は、一般式(1-1)で表される化合物であることが好ましく、一般式(1-1)で表され、かつ、R
1が、水素原子又はメチル基である化合物であることがより好ましい。すなわち、アントラキノン系青色染料は、下記一般式(1-1A)で表される化合物であることが好ましい。式(1-1A)中、R
1aは、水素原子又はメチル基を示す。
【化8】
【0034】
式(1-1A)で表される化合物のカラーインデックス(C.I.)名は、Disperse Blue 73であり、式(1-1)で表され、かつ、R1がエトキシエチル基である化合物のカラーインデックス名は、C.I.Disperse Blue 214であり、式(1-1)で表され、かつ、R1がエトキシカルボニル基である化合物のカラーインデックス名は、Disperse Blue 158である。
【0035】
アントラキノン系青色染料は、C.I.Disperse Blue 73、Disperse Blue 73:1、C.I.Disperse Blue 214、及び、C.I.Disperse Blue 158からなる群より選択される一種以上の染料であってよい。
【0036】
着色接着芯地に含まれるアントラキノン系青色染料の量は、基布の全質量基準で、0.5~8.0%owf、1.0~7.5%owf、2.0~7.0%owf、3.0~6.5%owf、又は4.0~5.5%owfであってよい。
【0037】
式(2)中、R2a及びR2bは、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる基を示す。官能基含有基に含まれる1つ以上の炭化水素基の総炭素数が2~8である。R2a又はR2bのうち少なくとも一方は、官能基含有基である。R2cは、炭素数1~6のアルキル基を示す。
【0038】
R2a及びR2bにおける炭素数2~8の炭化水素基としては、例えば、炭素数2~8のアルキル基、アルケニル基が挙げられる。炭素数2~8のアルキル基としては、例えば、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基が挙げられる。炭素数2~8のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられる。R2a又はR2bとしての官能基含有基中の官能基は、炭化水素基に結合していてもよい。官能基含有基としては、例えば、アルキロイルオキシアルキル基、シアノアルキル基が挙げられ、その例としては、アセチルオキシエチル基(-CH2-CH2-O-C(=O)-CH3)、シアノエチル基(-CH2-CH2-CN)がある。
【0039】
R2a又はR2bのうち一方が官能基含有基で、他方が無置換の炭素数2~8の炭化水素基であってもよく、R2a及びR2bの両方が官能基含有基であってもよい。R2a又はR2bのうち少なくとも一方がエステル基又はシアノ基を有する官能基含有基であることが好ましい。R2a及びR2bの両方がエステル基を有する官能基含有基であってもよい。R2a又はR2bのうち、一方がシアノ基を有する官能基含有基で、他方が無置換の炭素数2~8の炭化水素基(例えばエチル基)であってもよい。
【0040】
式(2)で表され、かつ、R2a及びR2bがいずれもアセチルオキシエチル基で、R2cがエチル基である化合物のカラーインデックス名は、Disperse Blue 79である。式(2)で表され、かつ、R2a及びR2bがいずれもアセチルオキシエチル基で、R2cがメチル基である化合物のカラーインデックス名は、Disperse Blue 79:1である。式(2)で表され、かつ、R2a及びR2bのうち一方がエチル基で、他方がシアノエチル基で、R2cがメチル基である化合物のカラーインデックス名は、Disperse Blue 281である。
【0041】
アゾ系青色染料は、C.I.Disperse Blue 79、C.I.Disperse Blue 79:1、及び、C.I.Disperse Blue 281からなる群より選択される一種以上の染料であってよい。
【0042】
着色接着芯地に含まれる着色アゾ系青色染料の量は、基布の全質量基準で、0.3~7.0%owf、0.8~6.0%owf、1.5~5.0%owf、又は2.5~4.0%owfであってよい。
【0043】
アゾ系青色染料の量(%owf)に対する、アントラキノン系青色染料の量(%owf)の質量比(アントラキノン系青色染料の量/アゾ系青色染料の量)は、0.50~3.50である。アゾ系青色染料とアントラキノン系青色染料の質量比がこの範囲内にあると、キラツキ抑制の点で特に顕著な効果が得られる。同様の観点から、この質量比は、0.60~3.10、1.10~1.90、1.20~1.70又は1.30~1.50であってもよい。
【0044】
染料混合物は、下記一般式(3)で表される、アゾ系黄色染料を更に含んでいてよい。
【化9】
【0045】
式(3)中、R3a及びR3bは、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる基を示す。官能基含有基に含まれる1つ以上の炭化水素基の総炭素数が2~8である。
【0046】
R3a及びR3bにおける炭素数2~8の炭化水素基としては、例えば、炭素数2~8のアルキル基、アルケニル基が挙げられる。炭素数2~8のアルキル基としては、例えば、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基が挙げられる。炭素数2~8のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられる。R3a及びR3bにおける官能基含有基の例としては、アルキロイルオキシアルキル基、シアノアルキル基が挙げられ、その例としては、アセチルオキシエチル基(-CH2-CH2-O-C(=O)-CH3)、シアノエチル基(-CH2-CH2-CN)がある。
【0047】
R3a又はR3bのうち一方が官能基含有基で、他方が無置換の炭素数2~8の炭化水素基であってもよく、R3a及びR3bの両方が官能基含有基であってもよい。R3a又はR3bのうち少なくとも一方が、エステル基又はシアノ基を有する官能基含有基であることが好ましい。R3a又はR3bのうち一方がシアノ基を有する官能基含有基で、他方がシアノ基又はエステル基を有する官能基含有基であってもよい。
【0048】
式(3)で表され、かつ、R3a及びR3bがいずれもシアノエチル基である化合物のカラーインデックス名は、Disperse Yellow 163である。式(3)で表され、かつ、R3a及びR3bのうち一方がアセチルオキシエチル基であり、他方がシアノエチル基である化合物のカラーインデックス名は、Disperse Orange 30である。
【0049】
アゾ系黄色染料は、C.I.Disperse Yellow 163、及び/又は、C.I.Disperse Orange 30であってよい。
【0050】
アゾ系黄色染料の量は、基布の全質量基準で、0.3~9.0%owf、1.5~8.5%owf、3.0~8.0%owf、4.0~7.5%owf、又は5.0~6.5%owfであってよい。
【0051】
アントラキノン系青色染料及びアゾ系青色染料の合計量(%owf)に対する、アゾ系黄色染料の量(%owf)の質量比(アゾ系黄色染料の量/(アントラキノン系青色染料量+アゾ系青色染料の量))は、0.05~1.30、0.10~1.00又は0.15~0.80であってよい。
【0052】
染料混合物は、下記一般式(4)で表される、アゾ系赤色染料を更に含んでいてよい。
【化10】
【0053】
式(4)中、R4a及びR4bは、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる基を示す。官能基含有基に含まれる1つ以上の炭化水素基の総炭素数が2~8である。
【0054】
R4a及びR4bにおける炭素数2~8の炭化水素基としては、例えば、炭素数2~8のアルキル基、アルケニル基が挙げられる。炭素数2~8のアルキル基としては、例えば、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基が挙げられる。炭素数2~8のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられる。R4a及びR4bにおける官能基含有基としては、例えば、アルキロイルオキシアルキル基、シアノアルキル基が挙げられ、その例としては、アセチルオキシエチル基(-CH2-CH2-O-C(=O)-CH3)、シアノエチル基(-CH2-CH2-CN)がある。
【0055】
R4a又はR4bのうち一方が官能基含有基で、他方が無置換の炭素数2~8の炭化水素基であってもよく、R4a及びR4bの両方が-R41-Z4で表される官能基含有基であってもよい。R4a又はR4bのうち少なくとも一方がエステル基を有する官能基含有基であることが好ましい。R4a及びR4bの両方がエステル基を有する官能基含有基であってもよい。R4a及びR4bがいずれもアセチルオキシエチル基であることがより好ましい。
【0056】
式(4)で表され、かつ、R4a及びR4bがいずれもアセチルオキシエチル基である化合物のカラーインデックス名は、Disperse Red 167:1である。
【0057】
アゾ系赤色染料の量は、基布の全質量基準で、0.1~7.0%owf、0.3~6.0%owf、0.5~5.0%owf、0.8~4.0%owf、又は1.0~3.0%owfであってよい。
【0058】
アントラキノン系青色染料及びアゾ系青色染料の合計量(%owf)に対する、アゾ系赤色染料の量の質量比(アゾ系赤色染料の量/(アントラキノン系青色染料の量+アゾ系青色染料の量))は、0.05~1.30、0.10~0.70、0.12~0.60又は0.15~0.50であってよい。
【0059】
他の一実施形態に係る染料混合物は、C.I.Disperse Blue 73、C.I.Disperse Blue 73:1、C.I.Disperse Blue 214、及び、C.I.Disperse Blue 158からなる群より選択される一種以上のアントラキノン系青色染料と、C.I.Disperse Blue 79、C.I.Disperse Blue 79:1、及び、C.I.Disperse Blue 281からなる群より選択される一種以上のアゾ系青色染料とを含む。アントラキノン系青色染料は、C.I.Disperse Blue 73であることが好ましい。
【0060】
アゾ系青色染料の量(%owf)に対するアントラキノン系青色染料の量(%owf)の質量比(アントラキノン系青色染料の量/アゾ系青色染料の量)は、通常0.50~3.50であり、0.60~3.10、1.10~1.90、1.20~1.70又は1.30~1.50であってもよい。
【0061】
染料混合物は、C.I.Disperse Yellow 163、及び/又は、C.I.Disperse Orange 30を更に含むことが好ましい。また、染料混合物は、C.I.Disperse Red 167:1を更に含むことが好ましい。染料混合物は、C.I.Disperse Yellow 163、及び/又は、C.I.Disperse Orange 30と、C.I.Disperse Red 167:1と、を含むことが好ましい。
【0062】
アントラキノン系青色染料及びアゾ系青色染料の合計量(%owf)に対する、C.I.Disperse Red 167:1の量(%owf)の質量比(C.I.Disperse Red 167:1の量/(アントラキノン系青色染料及びアゾ系青色染料の量))は、0.05~1.30、0.10~0.70、0.12~0.60又は0.15~0.50であってよい。
【0063】
基布3は、芯地に必要な強度を備えていれば、どのような素材、布組織でもよい。素材の例には、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニル等の合成繊維が含まれる。基布3を構成するフィラメントが、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、又はアクリル繊維であってもよい。基布3は、これら素材から形成された織物、編物、又は不織布等であってもよい。基布3が織物である場合、織組織は特に限定されず、平織、綾織又は朱子織であってもよい。基布3が編物である場合、編組織は特に限定されず、平編、ゴム編、両面編、ハーフ編であってもよい。
【0064】
図3(a)は、
図2のIII-III線から見た断面図であり、
図3(b)はその一部を拡大して示した平面図である。
図3(a)に示されるように、下層樹脂部4は、基布3に固着する面とは反対側に平坦な面4aを有している。
図3(b)に示されるように、下層樹脂部4は、平面視において略円形に形成されている。接着樹脂部5は、半球状に形成されている。
【0065】
図4は、
図3の変形例である。
図4に示されるように、1つの下層樹脂部4上に2つの接着樹脂部5が設けられてもよい。
図3及び
図4のように、1つの下層樹脂部4上に配置される接着樹脂部5の数が1又は2であると、この数が3以上である場合と比べて、着色接着芯地1を生地に接着させたときに、接着樹脂部5と生地との接着面積が少なくなる。その結果、着色接着芯地1の生地への影響が小さくなるので、キラツキをより一層抑制することができる。1枚の基布3上に形成される接着部6のうち、一部又は全部において、1つの下層樹脂部4上に1つ又は2つの接着樹脂部5が設けられてもよい。
【0066】
下層樹脂部4は、基布3に対して接着樹脂部5を良好に固着させるために設けられる。主面3a上に下層樹脂部4は、ドット状に配置されている。下層樹脂部4を主面3aに垂直な方向から見たときの直径(又は最大幅)は、0.1mm~2.0mmであってもよい。
【0067】
下層樹脂部4は、樹脂組成物R1から形成されている。樹脂組成物R1は、ガラス転移点が30℃以下の熱可塑性樹脂、又は、熱及び紫外線で硬化する硬化性樹脂(又は熱架橋性樹脂)を含んでもよい。ここでのガラス転移点は、示差走査熱量測定により測定することができる。樹脂組成物R1に含まれ得る熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂の例は、ポリウレタン、アクリルモノマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、EVA系樹脂及びPVA系樹脂を含む。熱で硬化する硬化性樹脂を含む樹脂組成物は、例えば、アクリルモノマー又はポリウレタンとエポキシ系架橋剤とを含んでもよい。消費段階における洗濯耐久性の観点からN-メチロールアクリルアミドを含む樹脂組成物を用いることができる。樹脂組成物R1は、必要に応じて、重合開始剤、架橋剤、顔料、染料、乾燥抑制剤、及びその他改質剤のうち少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0068】
接着樹脂部5は、着色接着芯地1を表生地2に貼り合わせるために設けられる。接着樹脂部5を主面3aに垂直な方向から平面視したときの直径は、80μm~600μmであってもよい。
【0069】
接着樹脂部5は、樹脂組成物R2から形成されている。樹脂組成物R2は、通常ホットメルト樹脂と呼ばれる、熱により可塑化されて冷却後に接着能力を発揮する熱可塑性樹脂を含む。樹脂組成物R2は、ガラス転移点が40℃以上の熱可塑性樹脂を含むことができる。樹脂組成物R2に含まれる熱可塑性樹脂の例は、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン及び変性エチレン酢酸ビニル共重合体を含む。樹脂組成物R2は、必要に応じて、重合開始剤、架橋剤、顔料、染料、乾燥抑制剤、及びその他改質剤のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0070】
下層樹脂部4を形成する樹脂組成物R1のガラス転移点が、接着樹脂部5を形成する樹脂組成物R2のガラス転移点よりも低くてよい。樹脂組成物R2のガラス転移点が40℃以上であってもよい。樹脂組成物R1のガラス転移点は、30℃以下であてもよい。これらは、接着部6からの染料混合物の移染の抑制に寄与する。
【0071】
図5は、着色接着芯地を備えた衣料品の一実施形態を示す概略断面図である。
図5に示す衣料品10は、表生地2と、表生地2に接着された着色接着芯地1とを備える。着色接着芯地1は、接着部6の接着樹脂部5が表生地2の裏面に固着することによって、表生地2の裏面に接着されている。上述の実施形態に係る着色接着芯地1を用いていることから、主に接着部6が固着している接着部位2aで着色接着芯地1が透けて見えることに起因する、表生地2におけるキラツキが生じ難い。
【0072】
図6は、一実施形態に係る着色接着芯地の製造方法を示したフローチャートである。
図6の実施形態に係る着色接着芯地1の製造方法は、準備ステップS1と、固着ステップS2と、加熱ステップS3とを含む。
【0073】
準備ステップS1では、染色混合物で染色された基布3と、下層樹脂部4を形成する樹脂組成物R1と、下層樹脂部4の面4a上に配置される接着樹脂部5を形成する樹脂組成物R2と、を準備する。
【0074】
ここで、染料混合物によって染色された基布とは、着色接着芯地1の状態で、JIS L 0879 乾熱処理に対する堅牢度において、A法に準拠した処理(160℃、30s)で3級以下である基布のことをいう。
【0075】
基布3は、事前に精練した後、染料混合物により染色される。基布3は、素材、布組織に適した通常の染色方法により染色することができる。染色後、通常の方法によって、基布3の撥水点がJIS-L-1092 撥水度試験 スプレー試験で2級以上となるように調整されていてもよい。これにより、基布3の加熱による染料混合物の昇華によって接着部6を染色する際に、効率的に染料混合物を昇華させることができる。効率的に染料混合物が昇華すると、基布3において過度な加熱による負荷が低減され、その結果、ソフトな風合いの着色接着芯地1を得ることができる。
【0076】
固着ステップS3では、基布3の一方の主面3a上に樹脂組成物R1を固着させることにより下層樹脂部4を形成し、その後、下層樹脂部4の面4a上に樹脂組成物R2を固着して接着樹脂部5を形成する。
【0077】
下層樹脂部4は、例えば、ペースト状の樹脂組成物R1を、所定の回転軸回りに回転する円筒状のスクリーンを用いて、基布3の一方の主面3a上にドット状に付着させる方法によって形成される。この場合、スクリーン内には、樹脂組成物R1を供給するスキージが設けられる。スキージから供給された樹脂組成物R1は、スクリーンの貫通孔を通過して押し出され、主面3a上に付着する。
【0078】
接着樹脂部5は、例えば、下層樹脂部4が形成された主面3a上に樹脂組成物R2の粉末を散布し、下層樹脂部4に付着させる方法によって、形成される。樹脂組成物R2の粉末は、例えばホッパー又はスキャッターを用いて散布される。基布3に散布された余分な樹脂組成物R2の粉末を除去してもよい。そのために、例えば、空気を噴出させるエアーブローにより、基布3上の余分な樹脂組成物R2の粉末を吹き飛ばしてもよい。
【0079】
下層樹脂部4及び接着樹脂部5は、上記の方法に限られず、例えばエンボスロール法又はスプレー法によって形成してもよい。
【0080】
固着ステップS2と同時に、又は固着ステップS2の後に、加熱ステップS3として基布3を加熱することにより、染料混合物を昇華させて接着部6を染色する。接着部6のうち、接着樹脂部5だけが染色されてもよいし、接着樹脂部5とともに下層樹脂部4が染色されてもよい。
【0081】
加熱ステップS3は、接着樹脂部5を第1温度で加熱することにより樹脂組成物R2の水分を蒸発させる第1加熱ステップS31と、その後、基布3を第1温度よりも高い第2温度で加熱することにより、染料混合物を昇華させて接着樹脂部5を染色する第2加熱ステップS32とを含む。
【0082】
第1加熱ステップS31の第1温度は、80℃~160℃、又は120℃~160℃であってもよい。第1加熱ステップS31の加熱時間は、5秒~120秒間、又は10秒~60秒間であってもよい。第1加熱ステップS31により、樹脂組成物R2の粉末がまとまって、一つの下層樹脂部4上に1つ(
図3参照)又は2つ(
図4参照)の接着樹脂部5が形成され得る。
【0083】
第2加熱ステップS32の第2温度は、160℃~230℃、又は170℃~210℃であってもよい。第2加熱ステップS32の加熱時間は、5秒~120秒間、又は10秒~60秒間であってもよい。第2加熱ステップS22により、基布3を染色する染料混合物の一部が昇華して、接着部6(特に接着樹脂部5)の表面に付着する。その結果、接着部6又は接着樹脂部5は、染料混合物によって染色される。第2温度での加熱により、接着樹脂部5の凝集が進んで、その表面積が減少し得る。表面積が減少すると、乱反射が減少することによりキラツキをより一層抑制することができる。
【0084】
以上の実施形態及びその変形例では、1つの下層樹脂部4上に1つ又は2つの接着樹脂部5が配置されている着色接着芯地1の例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図7に示される変形例のように、1つの下層樹脂部4上に3つ以上の接着樹脂部5が配置されてもよい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
[樹脂着色(キラツキ)評価]
「キラツキ」は、接着樹脂部と、基布とで色調に差がある場合に、発生し易くなる。したがって、樹脂着色評価が良好であれば、キラツキを抑制可能となる。樹脂着色評価は以下の方法により行った。
【0087】
表1に示す割合で各染料を混合して、実施例1~11及び比較例1~5の染料混合物を作製した。染料混合物でポリエステル布を染色して、染色布を得た。接着樹脂用のポリアミド樹脂(エムスケミー・ジャパン株式会社製)を2枚の離型紙の間に挟み込み、離型紙上にアイロンを載せ、200℃で3分間、加熱加圧して、ポリアミド樹脂フィルムを得た。
【0088】
次いで、離型紙、綿白布、ポリアミド樹脂フィルム、染色布、及び離型紙をこの順番で積層した。得られた積層物を、160℃又は180℃、3分間の条件で乾熱処理し、染色布から昇華した染料混合物により、ポリアミド樹脂フィルムを染色した。
【0089】
染色したポリアミド樹脂フィルムと、染色布とで着色度合いを目視で対比した。両者で着色度合いに差がなく、かつ、ポリアミド樹脂フィルム中で着色のムラがない場合に「◎」、両者で着色の度合いの差が少なく、かつ、ポリアミド樹脂フィルム中で着色のムラが少ない場合に「○」、両者での着色度合いの差が大きく(ポリアミド樹脂フィルム中での着色濃度が著しく高い、又は、着色の色抜けが生じる)、かつ、ポリアミド樹脂フィルム中で着色のムラが大きい場合に「×」と評価した。評価が「◎」又は「○」である場合、キラツキを抑制可能と判断される。
【0090】
[乾熱汚染(昇華堅牢度)評価]
JIS L 0879の乾熱試験に基づいた以下の方法で乾熱汚染評価を行うことにより、染料混合物の昇華堅牢度を評価した。実施例1~11及び比較例1~5の染料混合物でポリエステル布を染色して得た染色布を、ポリエステル白布で挟み込み、これを160℃又は180℃、30秒間の条件で乾熱処理に供した。乾熱処理後のポリエステル白布の汚染の程度を、JIS L-0805の汚染用グレースケールに基づいて判定した。級の数値が大きいことは、汚染が少ないことを意味する。
【0091】
160℃及び180℃のいずれの温度においても、乾熱汚染評価が3-4級以上であり、かつ、樹脂着色評価が「◎」又は「○」である場合、昇華堅牢度に優れ、かつ、キラツキを抑制可能である。
【0092】
【0093】
[着色接着芯地及び接着布の作製]
ポリエステル仮撚り加工糸を用いて製織された平織の生機を通常の方法により精練して、基布を準備した。精練後の基布を実施例1~6又は比較例1~5の染料混合物を用いて黒色に染色した。得られた染色布を、撥水処理及び防縮処理した。染色布の撥水点は3級であった。
【0094】
染色布の一方の主面上に、ガラス転移点Tgが0℃のアクリル酸エステル共重合体を用いてドット状の下層樹脂部を形成した。下層樹脂部上にガラス転移点Tgが45℃のポリアミド系のホットメルト接着剤を用いて接着樹脂部を形成した。これにより、基布上に下層樹脂部及び接着樹脂部からなるドット状の接着部を形成した。
【0095】
次に、染料混合物を昇華させることにより下層樹脂部及び接着樹脂部を染色して、着色接着芯地を作製した。得られた着色接着芯地を黒色に染められたウール100%の平織織物(表生地)に重ねあわせ、130℃、10秒、0.3MPaで加圧加熱することで表地に着色接着芯地を貼り合わせて、接着布を得た。
【0096】
実施例の染料混合物では、比較例の染料混合物と比べて、着色接着芯地から昇華した染料による表地の変色が抑制されていた。すなわち、実施例の染料混合物を用いた着色接着芯地は、昇華堅牢度に優れていた。また、実施例の染料混合物により染色した場合、比較例の染料混合物により染色した場合と比べて、接着布におけるキラツキが抑制されていた。
【符号の説明】
【0097】
1…着色接着芯地、2…表生地、2a…接着部位、3…基布、4…下層樹脂部、5…接着樹脂部、6…接着部、10…衣料品、R1…樹脂、R2…樹脂、S1…準備ステップ、S2…固着ステップ、S3…加熱ステップ、S31…第1加熱ステップ、S32…第2加熱ステップ。