(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
H02K 29/00 20060101AFI20221012BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H02K29/00
H02K3/46 C
(21)【出願番号】P 2018183771
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勇樹
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-162985(JP,A)
【文献】特開平9-121520(JP,A)
【文献】特開2015-12782(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150030(WO,A1)
【文献】特開2015-120208(JP,A)
【文献】特開2016-208562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 29/00
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、前記電動モータを支持するハウジングとを有し、前記電動モータは、電線に電流が印加されるステータと、軸線を中心として回転するロータと、を有する、電動作業機であって、
前記ステータを前記ハウジングに対して前記軸線に沿った方向に位置決めする
2つの支持機構と、
前記ステータに設けられ、かつ、前記軸線を中心とする前記ロータの回転方向に間隔をおいて配置された複数の巻き付け部と、
が設けられ、
前記電線は、
前記複数の巻き付け部にそれぞれ巻かれる複数の巻き領域と、
前記複数の巻
き領域同士を接続する接続領域と、
を有し、
前記接続領域は、
前記ロータの回転方向における位置が、前記複数の巻き領域と重なる、複数の重なり領域と、
前記ロータの回転方向における位置が、前記複数の巻き領域の間に位置する、複数の渡り領域と、
を有し、
前記複数の渡り領域は、
前記軸線を中心とする径方向における位置が、第1の範囲に配置される外側渡り領域と、
前記軸線を中心とする径方向における位置が、前記第1の範囲よりも前記軸線に近い位置を含む第2の範囲に配置される内側渡り領域と、
を有
し、
前記2つの支持機構は、前記軸線に対して垂直な平面内における前記ロータの回転方向で前記内側渡り領域と同じ位置であり、かつ、前記軸線を挟んで対向する位置に配置されるとともに、前記軸線を中心とする径方向で前記内側渡り領域の前記電線よりも外側に配置され、
前記ステータは、
磁性材料製のステータコアと、
前記ステータコアを支持する絶縁材料製の保持器と、
を有し、
前記保持器は、前記内側渡り領域の前記電線に接触するガイド部を有し、
前記ステータコアは、前記2つの支持機構と係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記軸線を中心とする最外径が、前記保持器の最外径よりも小さくなるように配置されている、電動作業機。
【請求項2】
前記ステータは、前記軸線に対して垂直な平面内において、前記軸線を囲む環状に形成され、
前記ロータは、前記軸線を中心とする径方向で前記ステータよりも内側に配置されている、請求項1記載の電動作業機。
【請求項3】
前記保持器は、
前記軸線に対して垂直な平面内における外面形状が曲線である第1外面と、
前記軸線に対して垂直な平面内における外面形状が直線である第2外面と、
を有し、
前記第2外面は、前記ロータの回転方向で前記
2つの支持機構と同じ位置に配置されている、請求項
1または2記載の電動作業機。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記渡り領域に接触する湾曲面を有する、請求項
1乃至3の何れか1項記載の電動作業機。
【請求項5】
前記
2つの支持機構は、前記軸線と平行に配置された中心軸を中心として回転されて前記ハウジングに固定され、かつ、前記ステータに接触して前記ステータを位置決めするねじ部材である、請求項1乃至
4の何れか1項記載の電動作業機。
【請求項6】
前記ハウジング内に設けられ、かつ、前記ロータの回転力で回転して空気の流れを形成するファンと、
前記ファンを前記ハウジングに対して位置決めするファンガイドと、
が設けられ、
前記
2つの支持機構は、前記ファンガイド
から延びる脚部であり、
前記ファンガイドは、前記ステータに接触して前記ステータを位置決めする、請求項1乃至
4の何れか1項記載の電動作業機。
【請求項7】
前記電動モータの回転力で中心線に沿った方向に作動する作動部材が設けられ、
前記軸線は、前記中心線に対して交差して配置され、
前記ハウジングは、
前記電動モータを収容するモータケースと、
前記軸線に沿った方向に延びるとともに、前記軸線に沿った方向の一端が前記モータケースに接続され、かつ、作業者が手で握るハンドルと、
を有し、
前記ハンドルは、前記軸線を中心とする径方向で前記モータケースの外に配置され
、
前記2つの支持機構は、前記ロータの回転方向で前記ハンドルと異なる位置に配置されている、請求項1乃至
6の何れか1項記載の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと、電動モータを支持するハウジングとを備えた電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータと、電動モータを支持するハウジングとを備えた電動作業機が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された電動作業機は、ハウジングを有する。ハウジングは、モータケース及びハンドルを有する。電動モータがモータケース内に設けられ、電動モータは、ステータ及びロータを有し、丸鋸刃がロータに取り付けられている。電池パックがハウジングに取り付けられている。スイッチがハンドルに設けられている。作業者がスイッチを操作すると、電池パックの電流がステータに印加され、ロータが軸線を中心として回転する。
【0003】
ステータは、コア及び3相、つまり、U相、V相、W相に対応する電線を有する。コアは、複数の突部を有し、電線は突部にそれぞれ巻かれている。また、ハウジング内にインシュレータ及びスイッチング基板が設けられている。インシュレータは、コアを支持している。電線のうち、突部に巻かれたコイルとコイルとの間の接続領域は、インシュレータによって配線されている。電線の端部は、スイッチング基板に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハウジング内に、ステータをハウジングに対して位置決めする機構を設けると、ハウジングが、軸線を中心とする径方向に大型化する可能性があることを、本願発明者は認識した。
【0006】
本発明の目的は、ハウジングが軸線を中心とする径方向に大型化することを抑制可能な、電動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の電動作業機は、電動モータと、前記電動モータを支持するハウジングとを有し、前記電動モータは、電線に電流が印加されるステータと、軸線を中心として回転するロータと、を有する、電動作業機であって、前記ステータを前記ハウジングに対して前記軸線に沿った方向に位置決めする2つの支持機構と、前記ステータに設けられ、かつ、前記軸線を中心とする前記ロータの回転方向に間隔をおいて配置された複数の巻き付け部と、が設けられ、前記電線は、前記複数の巻き付け部にそれぞれ巻かれる複数の巻き領域と、前記複数の巻き領域同士を接続する接続領域と、を有し、前記接続領域は、前記ロータの回転方向における位置が、前記複数の巻き領域と重なる、複数の重なり領域と、前記ロータの回転方向における位置が、前記複数の巻き領域の間に位置する、複数の渡り領域と、を有し、前記複数の渡り領域は、前記軸線を中心とする径方向における位置が、第1の範囲に配置される外側渡り領域と、前記軸線を中心とする径方向における位置が、前記第1の範囲よりも前記軸線に近い位置を含む第2の範囲に配置される内側渡り領域と、を有し、前記2つの支持機構は、前記軸線に対して垂直な平面内における前記ロータの回転方向で前記内側渡り領域と同じ位置であり、かつ、前記軸線を挟んで対向する位置に配置されるとともに、前記軸線を中心とする径方向で前記内側渡り領域の前記電線よりも外側に配置され、前記ステータは、磁性材料製のステータコアと、前記ステータコアを支持する絶縁材料製の保持器と、を有し、前記保持器は、前記内側渡り領域の前記電線に接触するガイド部を有し、前記ステータコアは、前記2つの支持機構と係合する係合部を有し、前記係合部は、前記軸線を中心とする最外径が、前記保持器の最外径よりも小さくなるように配置されている。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態の電動作業機は、ハウジングが軸線を中心とする径方向に大型化することを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態である電動作業機の全体を示す正面断面図である。
【
図2】
図1の電動作業機の一部を切り欠いた右側面図である。
【
図4】電動作業機の制御系を示すブロック図である。
【
図5】(A)は、電動作業機が有するモータケース及びステータの平面図、(B)は、ステータの正面図である。
【
図6】(A)は、ステータの平面図、(B)は、ステータが有するインシュレータの平面図である。
【
図7】(A)は、モータケース内に設ける第1基板の平面図、(B)は、モータケース内に設ける第2基板の平面図である。
【
図8】ステータが有する第1電線、第2電線及び第3電線のレイアウトを示す概念図、第1電線、第2電線及び第3電線とリブとの関係を示す概念図である。
【
図9】第1電線、第2電線及び第3電線と、リブ及びティースとの関係を示す概念図である。
【
図10】インシュレータの要部を示す拡大平面図である。
【
図11】ステータの他の位置決め例を示す平面図である。
【
図12】ステータの他の位置決め例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態である電動作業機を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1に示す電動作業機10は、ハウジング11、電動モータ12、運動変換機構13、打撃部14及び工具支持部15を有する。ハウジング11は、モータケース16、打撃ケース17及びハンドル18を有する。打撃ケース17は筒部19を有し、筒形状のクランクケース20が、打撃ケース17の内部21に設けられている。クランクケース20は、打撃ケース17に固定されている。筒形状のシリンダ22が、クランクケース20内に設けられている。シリンダ22は中心線A1を中心として配置されている。
【0012】
図2に示すヘッドカバー23が、打撃ケース17に対してねじ部材24により固定されている。ヘッドカバー23は筒形状である。工具支持部15は、クランクケース20内及びヘッドカバー23内に亘って配置されている。環状のホルダ25がクランクケース20内に設けられ、環状のホルダ26がヘッドカバー23内に設けられている。工具支持部15は、ホルダ25,26により保持されており、中心線A1方向に移動可能である。工具支持部15の外周面に環状のストッパ27が設けられている。ストッパ27がホルダ25,26に接触すると、ホルダ25,26は、工具支持部15が中心線A1方向に移動する範囲を規制する。作業者は、先端工具を工具支持部15に取り付け及び取り外すことが可能である。
【0013】
筒部19の外周に、ホルダ28を介してグリップ29が取り付けられている。作業者はグリップ29を握ることが可能である。
【0014】
図1に示すように、打撃部14はシリンダ22内に設けられている。打撃部14は、中心線A1方向に往復動可能である。また、ピストン30がシリンダ22内に配置されており、ピストン30は中心線A1方向に作動可能である。シリンダ22内であって、打撃部14とピストン30との間に空気室31が設けられている。シリンダ22を径方向に貫通する通気孔32が設けられており、通気孔32は空気室31に繋がっている。
【0015】
ハンドル18の第1端部は、支持軸33を介してモータケース16に接続され、ハンドル18の第2端部は、ブーツ34を介して打撃ケース17に接続されている。ハンドル18は支持軸33を中心とし、所定角度の範囲内でモータケース16及び打撃ケース17に対して作動可能である。トリガ35及び給電ケーブル36が、ハンドル18設けられている。給電ケーブル36は、交流電源に接続される。
【0016】
モータケース16は合成樹脂製である。モータケース16は、雌ねじ孔112を有し、ねじ部材を雌ねじ孔112に挿入してねじ部材を締め付けて、モータケース16が打撃ケース17に固定されている。モータケース16の内部37と打撃ケース17の内部21とを隔てるギヤカバー38が設けられている。ギヤカバー38は打撃ケース17に固定されている。
図3に示すように、モータケース16は筒形状であり、モータケース16において、打撃ケース17に固定されている箇所とは反対の箇所に、壁部39が設けられている。壁部39は、通気孔を有する。モータカバー40が、ねじ部材41によりモータケース16に固定されている。モータカバー40は、壁部39を覆うように設けられており、モータカバー40は通気孔を有する。モータケース16の外部は、通気孔を介してモータケース16の内部37につながっている。
【0017】
電動モータ12は、モータケース16の内部37に収容されている。電動モータ12はブラシレスモータである。電動モータ12は、筒形状のステータ42と、ステータ42の内側に配置されたロータ43と、を有する。ステータ42は、インシュレータ44、ステータコア45、第1電線46、第2電線47、第3電線48を有する。また、第1基板49及び第2基板50がインシュレータ44に取り付けられている。
【0018】
ロータ43は、ロータコア68と、ロータコア68が固定された出力軸51と、を有する。永久磁石がロータコア68に取り付けられている。出力軸51の外周面に永久磁石が取り付けられている。第1電線46、第2電線47、第3電線48にそれぞれ電流が流れると、ステータ42は磁界を形成する。ステータ42が磁界を形成すると、ロータ43が回転する。
【0019】
軸受52がギヤカバー38に取り付けられ、軸受53が壁部39に取り付けられている。2個の軸受52,53は、出力軸51を軸線A2を中心として回転可能に支持する。電動モータ12は、軸線A2方向で軸受52と軸受53との間に配置されている。出力軸51のうち、軸線A2方向の一部は、クランクケース20内に配置されている。出力軸51のうち、クランクケース20内に配置された箇所に駆動ギヤ54が設けられている。
【0020】
ファン55がモータケース16の内部37に配置されている。ファン55は、軸線A2方向で電動モータ12と軸受52との間に配置されている。ファン55は、出力軸51に固定されており、ファン55は出力軸51と共に回転して空気の流れを形成する。
【0021】
図1のように、運動変換機構13は、打撃ケース17の内部21に設けられている。運動変換機構13は、出力軸51の回転力を、ピストン30の往復移動力に変換する。運動変換機構13は、クランク軸56、従動ギヤ57及びコネクティングロッド58を有する。クランク軸56は、軸受59により軸線A3を中心として回転可能に支持されている。軸線A3と軸線A2とは平行に配置され、2つの軸線A2,A3は、中心線A1に対して交差して配置されている。クランク軸56は、出力軸51と平行に配置されている。従動ギヤ57はクランク軸56に固定され、従動ギヤ57は駆動ギヤ54に噛み合っている。
【0022】
クランク軸56は、回転中心である軸線A3から偏心して配置されたクランクピン60を有する。コネクティングロッド58の第1端部は、クランクピン60に回転自在に連結され、コネクティングロッド58の第2端部は、ピストン30に連結されている。
【0023】
図4は、電動作業機10の制御系統を示すブロック図である。コントローラ61、インバータ回路62及び位相検出センサ63が、モータケース16内に設けられている。コントローラ61及び位相検出センサ63は、
図3に示す第1基板49に設けられている。コントローラ61は、入力インタフェース、出力インタフェース、演算処理装置及び記憶装置等を有するマイクロコンピュータである。位相検出センサ63は、出力軸51に取り付けられた永久磁石の磁界を検出して信号を出力する磁気センサである。位相検出センサ63は、一例としてホールICを用いることが可能である。
【0024】
図4に示すインバータ回路62は、
図3に示す第2基板50に設けられている。インバータ回路62は、交流電源67と電動モータ12との間の電気回路を形成する。インバータ回路62は、複数の半導体素子、一例として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:insulated gate bipolar transistor)を有する。複数の半導体素子は、それぞれオン及びオフが可能である。
【0025】
図1に示すように、トリガスイッチ64がハンドル18の内部に設けられている。作業者がハンドル18を手で握ってトリガ35に操作力を付加すると、トリガスイッチ64がオンし、トリガ35に対する操作力を解除すると、トリガスイッチ64がオフする。
【0026】
第1電子ユニット65がハンドル18内に設けられ、第2電子ユニット66がモータケース16内に設けられている。第1電子ユニット65及び第2電子ユニット66は、
図4に示す交流電源67とインバータ回路62との間に設けられている。第1電子ユニット65は、例えば、整流回路を構成する。第1電子ユニット65は、チョークコイル、フィルムコンデンサ等を有する。第2電子ユニット66は、例えば、平滑回路を構成する。第2電子ユニット66は、ダイオードブリッジ回路、電解コンデンサ等を有する。
【0027】
コントローラ61は、トリガスイッチ64の信号、位相検出センサ63の信号に基づいてインバータ回路62を制御し、電動モータ12のステータ42に電力を供給または停止する。第1電線46、第2電線47及び第3電線48に電流が印加されるとステータ42が磁界を形成し、ロータ43が回転する。
【0028】
出力軸51の回転力は、クランク軸56を介してピストン30に伝達され、ピストン30が中心線A1方向に往復動する。ピストン30が中心線A1方向でクランク軸56に接近するように作動すると、シリンダ22外の空気が通気孔32を経由して空気室31に吸入され、かつ、打撃部14が工具支持部15から離間する。
【0029】
そして、ピストン30がクランク軸56に最も近づいた位置、つまり、上死点に到達した後、ピストン30がクランク軸56から離間する方向に作動する。すると、空気室31内の圧力が上昇し、打撃部14が工具支持部15を打撃する。以後、電動モータ12の出力軸51が回転している間、ピストン30が往復作動し、打撃部14が工具支持部15を間欠的に打撃する。
【0030】
一方、ファン55は出力軸51と共に回転し、モータケース16の外部の空気が、通気孔を経由してモータケース16の内部37に吸い込まれる。電動モータ12の熱が空気に伝達されて、電動モータ12が冷却される。ファン55の回転によりモータケース16の内部37に吸入された空気は、打撃ケース17に設けられた排気孔から、打撃ケース17の外部に排出される。
【0031】
電動モータ12の構造を、
図3を参照して具体的に説明する。ステータコア45は、磁性材料製である。ステータコア45は、例えば鋼板を軸線A2方向に複数重ねたものである。ステータコア45は、軸孔69を有する。ロータ43は軸孔69に配置されている。ステータコア45を軸線A2方向に貫通する位置決め孔が設けられている。
【0032】
図5(B)のように、インシュレータ44は、本体70及びエンド部71を有し、本体70及びエンド部71は、絶縁材料製である。本体70及びエンド部71は、一例として合成樹脂により成形された別部材である。
図6(A)、
図6(B)のように、インシュレータ44の本体70は環状であり、本体70から内側に向けて突出した複数、具体的には6個のティース72,73,74,75,76,77が設けられている。6個のティース72,73,74,75,76,77は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向で等間隔、つまり、60度間隔で配置されている。
【0033】
ティース72,75はV相に対応し、ティース73,76はU相に対応し、ティース74,77はW相に対応する。ティース72,75は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向に180度間隔で配置されている。ティース73,76は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向に180度間隔で配置されている。ティース74,77は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向に180度間隔で配置されている。
【0034】
本体70の外周に第1ボス部78及び第2ボス部79が設けられている。第1ボス部78は4個設けられ、第1ボス部78は、ねじ孔80をそれぞれ有する。第2ボス部79は4個設けられ、第2ボス部79は、ねじ孔81をそれぞれ有する。
【0035】
本体70は、複数個、一例として2個のリブ82,83を有する。リブ82,83は、本体70の周方向で、第1ボス部78と第1ボス部78との間に、それぞれ配置されている。リブ82,83は、本体70から軸線A2方向に突出している。
【0036】
さらに、
図5(B)のように、本体70の外周に、第1外面70A及び第2外面70Bが設けられている。第1外面70Aは、軸線A2に対して垂直な平面内で、軸線A2を中心として円弧状、曲線状に湾曲している。第2外面70Bは、軸線A2に対して垂直な平面内で直線状である。第2外面70Bは、軸線A2を隔てて2つ設けられている。2つの第2外面70Bは、互いに平行である。第1外面70Aは2つ設けられており、第1外面70Aは、第2外面70B同士を接続している。
【0037】
本体70から軸線A2方向に突出したピンが設けられ、ピンは全てのステータコア45の位置決め孔に挿入されている。ピンに雄ねじ部が形成され、雄ねじ部にナットを取り付けて、ナットを締め付けることにより、本体70、エンド部71、ステータコア45が互いに固定されている。
【0038】
図2のように、モータケース16の内面に位置決め部84が設けられている。位置決め部84は、軸線A2に対して垂直な端面である。また、モータケース16に雌ねじ孔85が設けられている。ステータコア45の軸線A2方向の端部が位置決め部84に接触している。ねじ部材86の軸部87を雌ねじ孔85に挿入して、ねじ部材86が中心軸C1を中心として回転して締め付けられている。中心軸C1は、軸線A2と平行な仮想線である。ねじ部材86の頭部88がステータコア45の軸線A2方向の端部に押し付けられている。ステータコア45は、頭部88及び位置決め部84により挟まれている。ステータ42は、ねじ部材86の頭部88、及びモータケース16の位置決め部84により、軸線A2方向に位置決めされ、かつ、固定されている。
【0039】
図2、
図5(B)、
図6(A)のように、ステータコア45は、軸線A2を中心とする径方向で外側に向けて突出した係合部89,90を有する。本実施形態において、係合部89,90は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向で異なる2箇所に設けられている。ステータコア45の周方向における係合部89の配置範囲と、リブ82の配置範囲とが、少なくとも一部で重なっている。ステータコア45の周方向における係合部90の配置範囲と、リブ83の配置範囲とが、少なくとも一部で重なっている。係合部89,90は、軸線A2方向に沿った凹部91をそれぞれ有し、ねじ部材86の軸部87の一部は、凹部91に配置されている。ねじ部材86と係合部89,90がそれぞれ係合して、ステータ42は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向に位置決めされ、かつ、固定されている。
【0040】
図7(A)のように、第1基板49は、軸孔92及び取り付け孔93を有する。軸孔92内に出力軸51が配置される。取り付け孔93は、複数、具体的には4個備えている。軸孔92及び取り付け孔93は、第1基板49を厚さ方向に貫通している。ねじ部材が取り付け孔93に挿入され、かつ、第1ボス部78のねじ孔80に挿入して締め付けられている。このようにして、第1基板49は、インシュレータ44に対して軸線A2方向及び、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向に位置決め及び固定されている。
【0041】
図7(B)のように、第2基板50は、軸孔94及び取り付け孔95を有する。取り付け孔95は、複数、具体的には4個設けられている。軸孔94及び取り付け孔95は、第2基板50を厚さ方向に貫通している。ねじ部材が取り付け孔95に挿入され、かつ、第2ボス部79のねじ孔81に挿入されて締め付けられている。このようにして、第2基板50は、インシュレータ44に対して軸線A2方向及び、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向に位置決め及び固定されている。第2基板50は、軸線A2方向で第1基板49とインシュレータ44との間に配置されている。
【0042】
図8(A)、
図8(B)は、第1電線46、第2電線47及び第3電線48のレイアウトを示す。第1電線46は、W相に対応し、第2電線47は、V相に対応し、第3電線48は、U相に対応している。第1電線46は、2個のティース74,77にそれぞれ巻かれ、第1電線46の両端は、第2基板50にそれぞれ電気的に接続されている。第1電線46は、巻き領域96及び接続領域97を有する。巻き領域96は、第1電線46のうち、ティース74,77に巻かれている部位である。接続領域97は、第1電線46のうち、巻き領域96同士を接続する部位である。第1電線46の接続領域97の一部は、本体70に接触している。
【0043】
第2電線47は、2個のティース72,75にそれぞれ巻かれ、第2電線47の両端は、第2基板50にそれぞれ電気的に接続されている。第2電線47は、巻き領域98及び接続領域99を有する。巻き領域98は、第2電線47のうちティース72,75に巻かれている部位である。接続領域99は、第2電線47のうち巻き領域98同士を接続する部位である。第2電線47の接続領域99の一部は、本体70に接触している。
【0044】
第3電線48は、2個のティース73,76にそれぞれ巻かれ、第3電線48の両端は、第2基板50にそれぞれ電気的に接続されている。第3電線48は、巻き領域100及び接続領域101を有する。巻き領域100は、第3電線48のうちティース73,76に巻かれている部位である。接続領域101は、第3電線48のうち巻き領域100同士を接続した部位である。第3電線48の接続領域101の一部は、本体70に接触している。
【0045】
図9は、第2電線47の配置レイアウトを示す概念図である。第2電線47は、ティース72,75にそれぞれ巻かれた複数の巻き領域98と、巻き領域98同士を接続した接続領域99と、を有する。複数の巻き領域98及び接続領域99は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向で異なる位置に配置されている。
【0046】
また、接続領域99は、複数の重なり領域102及び複数の渡り領域103,104を有する。渡り領域103は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向で、ティース75の外面とティース76の外面とを結ぶように配置されている。渡り領域104は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向で、ティース72の外面とティース77の外面とを結ぶように配置されている。
【0047】
渡り領域104は、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向で、ティース76の外面とティース77の外面とを結ぶように配置され、かつ、渡り領域104では、第2電線47の一部が、軸線A2を中心とする径方向でリブ82の内側に配置されている。つまり、第2電線47の一部が、軸線A2を中心とする径方向で内側に突出するように折り曲げられた折り曲げ部47Aを形成している。
【0048】
軸線A2を中心とするロータ43の回転方向において、1つの重なり領域102の位置は、巻き領域100の位置と重なっている。軸線A2を中心とするロータ43の回転方向において、1つの重なり領域102の位置は、巻き領域96の位置と重なっている。
【0049】
さらに、渡り領域103と渡り領域104とは、軸線A2を中心とする径方向における配置範囲が異なる。渡り領域103は、仮想円B1と仮想円B2との間に配置されている。仮想円B1は、渡り領域103の外接円であり、仮想円B2は、渡り領域103の内接円である。仮想円B2の直径は、仮想円B1の直径よりも小さい。
【0050】
渡り領域104は、軸線A2を中心とする径方向で、仮想円B1と仮想円B3との間に配置されている。仮想円B3は、渡り領域104の内接円である。仮想円B3の直径は、仮想円B2の直径よりも小さい。つまり、軸線A2を中心とする径方向で、渡り領域104の配置範囲は、渡り領域103の配置範囲よりも軸線A2に近い配置範囲を含む。
【0051】
本実施形態では、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向で、リブ82の配置範囲と、ねじ部材86の配置範囲とが、少なくとも一部で重なっている。また、軸線A2を中心とする径方向で、第2電線47の一部がリブ82の内側に配置されている。軸線A2を中心とする径方向で、ねじ部材86は、渡り領域104よりも外側に配置されている。このため、軸線A2を中心とする径方向において、ねじ部材86をなるべく内側に配置することが可能である。したがって、モータケース16が軸線A2を中心とする径方向に大型化することを抑制できる。
【0052】
また、軸線A2を中心とするロータ43の回転方向で、第2外面70Bの配置範囲と、ねじ部材86の配置範囲とが、少なくとも一部で重なっている。したがって、モータケース16が軸線A2を中心とする径方向に大型化することを抑制できる。
【0053】
また、ハンドル18は、軸線A2を中心とする径方向でモータケース16の外側に配置されている。そして、モータケース16が軸線A2を中心とする径方向に大型化することを抑制できるため、中心線A1方向でハンドル18とモータケース16との間の空間を広く確保できる。
【0054】
また、作業者が工具を使用してねじ部材86の回転させ、ねじ部材86の締め付けたり緩めたりする際に、ねじ部材86や工具が第2電線47に接触することを回避できる。
【0055】
また、第1電線46の接続領域97は、重なり領域102、渡り領域103,104を備えている。そして、第1電線46は、渡り領域104に相当する箇所に折り曲げ部46Aを有する。折り曲げ部46Aの一部は、軸線A2を中心とする径方向でリブ83の内側に配置されている。したがって、モータケース16が軸線A2を中心とする径方向に大型化することを抑制できる。
【0056】
さらに、第3電線48の接続領域101は、重なり領域102、渡り領域103,104を備えている。そして、第3電線48は、渡り領域104に相当する箇所に折り曲げ部48Aを有する。折り曲げ部48Aの一部は、軸線A2を中心とする径方向でリブ83の内側に配置されている。したがって、モータケース16が軸線A2を中心とする径方向に大型化することを抑制できる。
【0057】
さらに、
図10のように、リブ83は、曲線状の湾曲面105を有する。湾曲面105は、第2電線47の折り曲げ部47Aの一部が接触する。したがって、第2電線47に曲げ応力が集中することを抑制可能である。また、リブ82は、湾曲面105を有する。湾曲面105は、第1電線46の折り曲げ部46Aの一部、第3電線48の折り曲げ部48Aの一部、が接触する。したがって、第1電線46及び第3電線48に曲げ応力が集中することを抑制可能である。
【0058】
ステータ42を位置決め固定する機構の他の例を、
図3、
図11及び
図12を参照して説明する。打撃ケース17の内部21にファンガイド106が設けられている。ファンガイド106は、ファン55をモータケース16に対して軸線A2方向に位置決めする。
【0059】
ファンガイド106は、軸線A2方向に延ばされた脚部107を有し、脚部107はギヤカバー38に接触している。モータケース16内に位置決め部108が設けられている。位置決め部108は軸線A2に対して垂直な端面である。ステータコア45の端部は位置決め部108に接触している。ファンガイド106は、軸線A2方向に延ばされた脚部109を有する。脚部109はステータコア45の端部に接触している。このようにして、ステータ42はモータケース16に対して軸線A2方向で位置決めされている。
【0060】
また、ステータコア45の外面に凹部110が設けられている。凹部110は、軸線A2方向に沿って配置されている。モータケース16の内面に係合部111が設けられている。係合部111は軸線A2方向に沿って配置されている。係合部111の先端は凹部110に配置されている。係合部111とステータコア45とが係合して、ステータ42が軸線A2を中心とするロータ43の回転方向に位置決めされている。
【0061】
軸線A2を中心とする径方向で、リブ82,83は、脚部109よりも内側に配置されている。軸線A2を中心とするロータ43の回転方向で、リブ82,83の配置範囲の少なくとも一部は、脚部109の配置範囲の少なくとも一部と重なっている。
【0062】
図11及び
図12に示す他の構成は、
図2、
図5(A)に示す構成と同じである。
図11及び
図12に示すステータ42の位置決め構造は、脚部109を、軸線A2を中心とする径方向でなるべく内側に配置することが可能である。したがって、モータケース16が軸線A2を中心とする径方向に大型化することを抑制できる。
【0063】
また、
図11及び
図12に示す他の構成において、
図2、
図5(A)に示す構成と同じ個所は、
図2及び
図5(A)に示す構成と同じ効果を得ることができる。
【0064】
本実施形態で開示した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。電動モータ12は、電動モータの一例である。ハウジング11は、ハウジングの一例である。ステータ42は、ステータの一例である。ロータ43は、ロータの一例である。軸線A2は、軸線の一例である。第1電線46、第2電線47及び第3電線48は、電線の一例である。電動作業機10は、電動作業機の一例である。ねじ部材86、脚部109の一部は、支持機構の一例である。ティース72,73,74,75,76,77は、巻き付け部の一例である。巻き領域96,98,100は、巻き領域の一例である。接続領域97,99,101は、接続領域の一例である。重なり領域102は、重なり領域の一例である。渡り領域103は、渡り領域及び外側渡り領域の一例である。渡り領域104は、渡り領域及び内側渡り領域の一例である。
【0065】
軸線A2を中心とする径方向で、仮想円B1と仮想円B2との間の範囲が、第1の範囲の一例である。軸線A2を中心とする径方向で、仮想円B2よりも内側から仮想円B3に至る範囲が、第2の範囲の一例である。ステータコア45は、ステータコアの一例である。インシュレータ44は、保持器の一例である。リブ82,83は、ガイド部の一例である。
【0066】
第1外面70Aは、第1外面の一例である。第2外面70Bは、第2外面の一例である。湾曲面105は、湾曲面の一例である。ねじ部材86は、ねじ部材の一例である。ファン55は、ファンの一例である。ファンガイド106は、支持機構及びファンガイドの一例である。工具支持部15は、作動部材の一例である。中心線A1は、中心線の一例である。
【0067】
モータケース16は、モータケースの一例である。ハンドル18は、ハンドルの一例である。折り曲げ部46A,47A,48Aは、折り曲げ部の一例である。
【0068】
軸線A2を中心とするロータ43の回転方向は、軸線A2を中心とする円の周方向、または、環状のステータ42の円周方向と定義可能である。
【0069】
電動作業機は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、電動作業機は、商用電源、つまり、交流電源から電動モータに電力が供給される。これに対して、電動作業機は、直流電源としての電池パックがハウジングに取り付けられ、その電池パックの電力を電動モータに供給する電動作業機を含む。電動作業機は、モータの動力で工具支持部を作動させるものであればよい。
【0070】
電動作業機は、工具支持部に回転力または軸線方向の打撃力の少なくとも一方を加えるハンマドリル及びハンマドライバを含む。電動作業機は、工具支持部に回転力及び回転方向の打撃力を加えるインパクトドライバ、インパクトドリルを含む。工具支持部に回転力のみを加えるドライバ、ドリル、グラインダ、サンダを含む。電動作業機は、工具支持部に軸線方向の打撃力のみを加えるハンマ、釘打ち機を含む。電動作業機は、工具支持部を往復運動させるジグソー、セーバソーを含む。
【0071】
支持機構は、ステータに接触または係合して、ステータを軸線方向に位置決めする。支持機構は、ねじ部材、ファンガイドの他、ストッパ、突起部等を含む。
【符号の説明】
【0072】
10…電動作業機、11…ハウジング、12…電動モータ、15…工具支持部、16…モータケース、18…ハンドル、42…ステータ、43…ロータ、44…インシュレータ、45…ステータコア、46…第1電線、46A,47A,48A…折り曲げ部、47…第2電線、48…第3電線、55…ファン、70A…第1外面、70B…第2外面、72,73,74,75,76,77…ティース、82,83…リブ、86…ねじ部材、96,98,100…巻き領域、97,99,101…接続領域、102…重なり領域、103,104…渡り領域、105…湾曲面、106…ファンガイド、A1…中心線、A2…軸線