(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20221012BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20221012BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20221012BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20221012BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G03G21/16 180
G03G21/16 171
G03G21/16 185
G03G21/16 195
G03G21/16 133
G03G15/16
G03G15/20 535
G03G21/14
G03G15/00 455
(21)【出願番号】P 2018183828
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅文
(72)【発明者】
【氏名】太田 修司
(72)【発明者】
【氏名】波多野 周平
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-032825(JP,A)
【文献】特開2014-106403(JP,A)
【文献】特開2004-151384(JP,A)
【文献】特開2010-048942(JP,A)
【文献】特開2008-170614(JP,A)
【文献】特開2011-180214(JP,A)
【文献】特開2000-310897(JP,A)
【文献】特開2008-241930(JP,A)
【文献】特開2006-195016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 15/16
G03G 15/20
G03G 21/14
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
感光体ドラムと、
前記装置本体に着脱可能なベルトユニットであって、前記感光体ドラム上のトナー像をシートに転写させるとともに、シートを搬送する転写ベルトと、予め測定された値に基づく前記転写ベルトのシート搬送速度である第1シート搬送速度を記憶するベルトメモリと、を有するベルトユニットと、
前記ベルトユニットが前記装置本体に装着された状態において、前記転写ベルトによって搬送されたシート上のトナー像をシートに定着させる定着ユニットと、
前記転写ベルトを駆動するベルトモータと、
前記定着ユニットを駆動する定着モータと、
予め測定された値に基づく前記定着ユニットのシート搬送速度である第2シート搬送速度を記憶する本体メモリであって、前記転写ベルトのシート搬送速度と前記定着ユニットのシート搬送速度の速度差の基準値である第1基準値を記憶する本体メモリと、
制御部と、を備え、
前記本体メモリは、前記転写ベルトのシート搬送速度の基準値である基準シート搬送速度を記憶し、
前記制御部は、
前記ベルトメモリから前記第1シート搬送速度を読み出すとともに、前記本体メモリから前記第2シート搬送速度を読み出す読出処理と、
前記読出処理において読み出された前記第1シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記第2シート搬送速度の速度差である第1速度差と、前記第1基準値から前記ベルトモータの回転速度または前記定着モータの回転速度を設定し、前記転写ベルトのシート搬送速度と前記定着ユニットのシート搬送速度の速度差を前記第1基準値に近づけるモータ制御処理と、を実行
し、
前記読出処理において、前記ベルトメモリから前記第1シート搬送速度を読み出せなかった場合、前記本体メモリから前記基準シート搬送速度を読み出し、
前記モータ制御処理において、前記読出処理において読み出された前記基準シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記第2シート搬送速度の速度差を前記第1速度差とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
装置本体と、
感光体ドラムと、
前記装置本体に着脱可能なベルトユニットであって、前記感光体ドラム上のトナー像をシートに転写させるとともに、シートを搬送する転写ベルトと、予め測定された値に基づく前記転写ベルトのシート搬送速度である第1シート搬送速度を記憶するベルトメモリと、を有するベルトユニットと、
前記ベルトユニットが前記装置本体に装着された状態において、前記転写ベルトによって搬送されたシート上のトナー像をシートに定着させる定着ユニットと、
前記転写ベルトを駆動するベルトモータと、
前記定着ユニットを駆動する定着モータと、
予め測定された値に基づく前記定着ユニットのシート搬送速度である第2シート搬送速度を記憶する本体メモリであって、前記転写ベルトのシート搬送速度と前記定着ユニットのシート搬送速度の速度差の基準値である第1基準値を記憶する本体メモリと、
制御部と、を備え、
前記本体メモリは、前記転写ベルトのシート搬送速度の基準値である基準シート搬送速度を記憶し、
前記制御部は、
前記ベルトメモリから前記第1シート搬送速度を読み出すとともに、前記本体メモリから前記第2シート搬送速度を読み出す読出処理と、
前記読出処理において読み出された前記第1シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記第2シート搬送速度の速度差である第1速度差と、前記第1基準値から前記ベルトモータの回転速度または前記定着モータの回転速度を設定し、前記転写ベルトのシート搬送速度と前記定着ユニットのシート搬送速度の速度差を前記第1基準値に近づけるモータ制御処理と、を実行
し、
前記読出処理において、前記本体メモリから前記基準シート搬送速度を読み出し、
前記モータ制御処理において、前記読出処理において読み出された前記第1シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記基準シート搬送速度の速度差が判定閾値の範囲外である場合、前記読出処理において読み出された前記基準シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記第2シート搬送速度の速度差を前記第1速度差とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記ベルトモータは、前記感光体ドラムを駆動することを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記モータ制御処理において、
前記第1速度差と、前記第1基準値から前記定着モータの回転速度を設定することを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記モータ制御処理において、
前記第1速度差が前記第1基準値よりも大きい場合、前記定着モータの回転速度を下げ、
前記第1速度差が前記第1基準値よりも小さい場合、前記定着モータの回転速度を上げることを特徴とする請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写ベルトは、前記感光体ドラムとの間で、シートを搬送することを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記転写ベルトは、無端状のベルトであることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1シート搬送速度は、予め測定された前記転写ベルトのシート搬送速度の実測値であることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ベルトユニットは、前記転写ベルトを駆動するベルト駆動ローラであって、前記転写ベルトの内周面に接触するベルト駆動ローラと、前記転写ベルトに従動して回転するベルト従動ローラであって、前記ベルト駆動ローラと間隔をあけて配置され、前記転写ベルトの内周面に接触するベルト従動ローラと、を有し、
前記第1シート搬送速度は、予め測定された前記転写ベルトの厚みおよび前記ベルト駆動ローラの外径の値に基づいて算出された算出値であることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ベルトメモリに記憶された前記第1シート搬送速度は、前記本体メモリに記憶された前記第2シート搬送速度よりも速いことを特徴とする請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第2シート搬送速度は、予め測定された前記定着ユニットのシート搬送速度の実測値であることを特徴とする請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記定着ユニットは、シートを加熱する定着ローラを有し、
前記第2シート搬送速度は、予め測定された前記定着ローラの外径の値に基づいて算出された算出値であることを特徴とする請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記装置本体が有する開閉可能なカバーであって、前記ベルトユニットを着脱する場合に開かれるカバーと、
前記カバーの開閉を検知する第1センサと、
前記ベルトユニットが前記装置本体に装着されているか否かを検知する第2センサと、を備え、
前記制御部は、前記第1センサが前記カバーが閉じられたことを検知し、かつ、前記第2センサが前記ベルトユニットが前記装置本体に装着されていることを検知した場合に、前記読出処理を開始することを特徴とする請求項1から請求項
12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
装置本体と、
感光体ドラムと、
前記装置本体に着脱可能なベルトユニットであって、前記感光体ドラム上のトナー像をシートに転写させるとともに、シートを搬送する転写ベルトと、予め測定された値に基づく前記転写ベルトのシート搬送速度である第1シート搬送速度を記憶するベルトメモリと、を有するベルトユニットと、
前記ベルトユニットが前記装置本体に装着された状態において、シートを前記転写ベルトに向けて搬送する搬送ローラと、
前記転写ベルトを駆動するベルトモータと、
前記搬送ローラを駆動する搬送モータと、
予め測定された値に基づく前記搬送ローラのシート搬送速度である第3シート搬送速度を記憶する本体メモリであって、前記転写ベルトのシート搬送速度と前記搬送ローラのシート搬送速度の速度差の基準値である第2基準値を記憶する本体メモリと、
制御部と、を備え、
前記本体メモリは、前記転写ベルトのシート搬送速度の基準値である基準シート搬送速度を記憶し、
前記制御部は、
前記ベルトメモリから前記第1シート搬送速度を読み出すとともに、前記本体メモリから前記第3シート搬送速度を読み出す読出処理と、
前記読出処理において読み出された前記第1シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記第3シート搬送速度の速度差である第2速度差と、前記第2基準値から前記ベルトモータの回転速度または前記搬送モータの回転速度を設定し、前記転写ベルトのシート搬送速度と前記搬送ローラのシート搬送速度の速度差を前記第2基準値に近づけるモータ制御処理と、を実行
し、
前記読出処理において、前記ベルトメモリから前記第1シート搬送速度を読み出せなかった場合、前記本体メモリから前記基準シート搬送速度を読み出し、
前記モータ制御処理において、前記読出処理において読み出された前記基準シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記第3シート搬送速度の速度差を前記第2速度差とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
装置本体と、
感光体ドラムと、
前記装置本体に着脱可能なベルトユニットであって、前記感光体ドラム上のトナー像をシートに転写させるとともに、シートを搬送する転写ベルトと、予め測定された値に基づく前記転写ベルトのシート搬送速度である第1シート搬送速度を記憶するベルトメモリと、を有するベルトユニットと、
前記ベルトユニットが前記装置本体に装着された状態において、シートを前記転写ベルトに向けて搬送する搬送ローラと、
前記転写ベルトを駆動するベルトモータと、
前記搬送ローラを駆動する搬送モータと、
予め測定された値に基づく前記搬送ローラのシート搬送速度である第3シート搬送速度を記憶する本体メモリであって、前記転写ベルトのシート搬送速度と前記搬送ローラのシート搬送速度の速度差の基準値である第2基準値を記憶する本体メモリと、
制御部と、を備え、
前記本体メモリは、前記転写ベルトのシート搬送速度の基準値である基準シート搬送速度を記憶し、
前記制御部は、
前記ベルトメモリから前記第1シート搬送速度を読み出すとともに、前記本体メモリから前記第3シート搬送速度を読み出す読出処理と、
前記読出処理において読み出された前記第1シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記第3シート搬送速度の速度差である第2速度差と、前記第2基準値から前記ベルトモータの回転速度または前記搬送モータの回転速度を設定し、前記転写ベルトのシート搬送速度と前記搬送ローラのシート搬送速度の速度差を前記第2基準値に近づけるモータ制御処理と、を実行
し、
前記読出処理において、前記本体メモリから前記基準シート搬送速度を読み出し、
前記モータ制御処理において、前記読出処理において読み出された前記第1シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記基準シート搬送速度の速度差が判定閾値の範囲外である場合、前記読出処理において読み出された前記基準シート搬送速度と前記読出処理において読み出された前記第3シート搬送速度の速度差を前記第2速度差とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記モータ制御処理において、
前記第2速度差と、前記第2基準値から前記搬送モータの回転速度を設定することを特徴とする
請求項14または請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記モータ制御処理において、
前記第2速度差が前記第2基準値よりも大きい場合、前記搬送モータの回転速度を下げ、
前記第2速度差が前記第2基準値よりも小さい場合、前記搬送モータの回転速度を上げることを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記ベルトメモリに記憶された前記第1シート搬送速度は、前記本体メモリに記憶された前記第3シート搬送速度よりも遅いことを特徴とする請求項
14から請求項17のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記第3シート搬送速度は、予め測定された前記搬送ローラのシート搬送速度の実測値であることを特徴とする請求項
14から請求項18のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記搬送ローラは、前記搬送モータから駆動力が入力される搬送駆動ローラと、前記搬送駆動ローラに従動して回転する搬送従動ローラとを有し、
前記第3シート搬送速度は、予め測定された前記搬送駆動ローラの外径の値に基づいて算出された算出値であることを特徴とする請求項
14から請求項18のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体と、装置本体に着脱可能なベルトユニットとを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置本体と、感光体ドラムと、装置本体に着脱可能なベルトユニットと、ベルトユニットの後方に配置された定着ユニットと、用紙などのシートをベルトユニットに向けて搬送する搬送ローラとを備える画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。この技術では、ベルトユニットは、搬送ベルトを備え、搬送ベルトと感光体ドラムとの間でシートを搬送するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搬送ベルトのシート搬送速度と定着ユニットのシート搬送速度との速度差が大きくなると、搬送ベルトと定着ユニットとの間でシートが撓みすぎる可能性がある。また、搬送ローラのシート搬送速度と搬送ベルトのシート搬送速度との速度差が大きくなると、搬送ローラと搬送ベルトとの間でシートが撓みすぎる可能性がある。
【0005】
一方、搬送ベルトのシート搬送速度と定着ユニットのシート搬送速度との速度差が小さくなると、ベルトユニットまたは定着ユニットでシートがスリップする可能性がある。また、搬送ローラのシート搬送速度と搬送ベルトのシート搬送速度との速度差が小さくなると、搬送ローラまたはベルトユニットでシートがスリップする可能性がある。
【0006】
シートが撓みすぎたり、シートがスリップしたりすると、例えば、印刷面が擦れることで、画質が低下する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、シートが撓みすぎること、および、シートがスリップすることを抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、装置本体と、感光体ドラムと、装置本体に着脱可能なベルトユニットであって、感光体ドラム上のトナー像をシートに転写させるとともに、シートを搬送する転写ベルトと、予め測定された値に基づく転写ベルトのシート搬送速度である第1シート搬送速度を記憶するベルトメモリと、を有するベルトユニットと、ベルトユニットが装置本体に装着された状態において、転写ベルトによって搬送されたシート上のトナー像をシートに定着させる定着ユニットと、転写ベルトを駆動するベルトモータと、定着ユニットを駆動する定着モータと、予め測定された値に基づく定着ユニットのシート搬送速度である第2シート搬送速度を記憶する本体メモリであって、転写ベルトのシート搬送速度と定着ユニットのシート搬送速度の速度差の基準値である第1基準値を記憶する本体メモリと、制御部と、を備える。
制御部は、ベルトメモリから第1シート搬送速度を読み出すとともに、本体メモリから第2シート搬送速度を読み出す読出処理と、読出処理において読み出された第1シート搬送速度と読出処理において読み出された第2シート搬送速度の速度差である第1速度差と、第1基準値からベルトモータの回転速度または定着モータの回転速度を設定し、転写ベルトのシート搬送速度と定着ユニットのシート搬送速度の速度差を第1基準値に近づけるモータ制御処理と、を実行する。
【0009】
この構成によれば、交換可能なベルトユニットのベルトメモリに記憶された第1シート搬送速度からモータの回転速度を設定してモータを制御することができるので、転写ベルトのシート搬送速度と定着ユニットのシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。これにより、転写ベルトと定着ユニットとの間でシートが撓みすぎること、および、ベルトユニットまたは定着ユニットでシートがスリップすることを抑制することができる。
【0010】
また、ベルトモータは、感光体ドラムを駆動する構成とすることができる。
【0011】
これによれば、モータの数を抑えることができる。
【0012】
また、制御部は、モータ制御処理において、第1速度差と、第1基準値から定着モータの回転速度を設定する構成とすることができる。
【0013】
また、制御部は、モータ制御処理において、第1速度差が第1基準値よりも大きい場合、定着モータの回転速度を下げ、第1速度差が第1基準値よりも小さい場合、定着モータの回転速度を上げる構成とすることができる。
【0014】
また、転写ベルトは、感光体ドラムとの間で、シートを搬送する構成とすることができる。
【0015】
また、転写ベルトは、無端状のベルトである構成とすることができる。
【0016】
また、ベルトメモリに記憶された第1シート搬送速度は、予め測定された転写ベルトのシート搬送速度の実測値である構成とすることができる。
【0017】
また、ベルトユニットは、転写ベルトを駆動するベルト駆動ローラであって、転写ベルトの内周面に接触するベルト駆動ローラと、転写ベルトに従動して回転するベルト従動ローラであって、ベルト駆動ローラと間隔をあけて配置され、転写ベルトの内周面に接触するベルト従動ローラと、を有し、ベルトメモリに記憶された第1シート搬送速度は、予め測定された転写ベルトの厚みおよびベルト駆動ローラの外径の値に基づいて算出された算出値である構成とすることができる。
【0018】
また、ベルトメモリに記憶された第1シート搬送速度は、本体メモリに記憶された第2シート搬送速度よりも速い構成とすることができる。
【0019】
また、本体メモリに記憶された第2シート搬送速度は、予め測定された定着ユニットのシート搬送速度の実測値である構成とすることができる。
【0020】
また、定着ユニットは、シートを加熱する定着ローラを有し、本体メモリに記憶された第2シート搬送速度は、予め測定された定着ローラの外径の値に基づいて算出された算出値である構成とすることができる。
【0021】
また、画像形成装置は、装置本体が有する開閉可能なカバーであって、ベルトユニットを着脱する場合に開かれるカバーと、カバーの開閉を検知する第1センサと、ベルトユニットが装置本体に装着されているか否かを検知する第2センサと、を備え、制御部は、第1センサがカバーが閉じられたことを検知し、かつ、第2センサがベルトユニットが装置本体に装着されていることを検知した場合に、読出処理を開始する構成とすることができる。
【0022】
これによれば、ベルトユニットが交換されて、転写ベルトのシート搬送速度と定着ユニットのシート搬送速度の速度差が変わる可能性が高い場合にモータの回転速度を設定することができる。これにより、シートが撓みすぎること、および、シートがスリップすることをより確実に抑制することができる。
【0023】
また、本体メモリは、転写ベルトのシート搬送速度の基準値である基準シート搬送速度を記憶し、制御部は、読出処理において、ベルトメモリから第1シート搬送速度を読み出せなかった場合、本体メモリから基準シート搬送速度を読み出し、モータ制御処理において、読出処理において読み出された基準シート搬送速度と読出処理において読み出された第2シート搬送速度の速度差を第1速度差とする構成とすることができる。
【0024】
これによれば、ベルトメモリから第1シート搬送速度を読み出せなかった場合でも、転写ベルトのシート搬送速度と定着ユニットのシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。
【0025】
また、本体メモリは、転写ベルトのシート搬送速度の基準値である基準シート搬送速度を記憶し、制御部は、読出処理において、本体メモリから基準シート搬送速度を読み出し、モータ制御処理において、読出処理において読み出された第1シート搬送速度と読出処理において読み出された基準シート搬送速度の速度差が判定閾値の範囲外である場合、読出処理において読み出された基準シート搬送速度と読出処理において読み出された第2シート搬送速度の速度差を第1速度差とする構成とすることができる。
【0026】
これによれば、読出処理において読み出された第1シート搬送速度の値が異常な値である場合でも、転写ベルトのシート搬送速度と定着ユニットのシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。
【0027】
また、前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、装置本体と、感光体ドラムと、装置本体に着脱可能なベルトユニットであって、感光体ドラム上のトナー像をシートに転写させるとともに、シートを搬送する転写ベルトと、予め測定された値に基づく転写ベルトのシート搬送速度である第1シート搬送速度を記憶するベルトメモリと、を有するベルトユニットと、ベルトユニットが装置本体に装着された状態において、シートを転写ベルトに向けて搬送する搬送ローラと、転写ベルトを駆動するベルトモータと、搬送ローラを駆動する搬送モータと、予め測定された値に基づく搬送ローラのシート搬送速度である第3シート搬送速度を記憶する本体メモリであって、転写ベルトのシート搬送速度と搬送ローラのシート搬送速度の速度差の基準値である第2基準値を記憶する本体メモリと、制御部と、を備える。
制御部は、ベルトメモリから第1シート搬送速度を読み出すとともに、本体メモリから第3シート搬送速度を読み出す読出処理と、読出処理において読み出された第1シート搬送速度と読出処理において読み出された第3シート搬送速度の速度差である第2速度差と、第2基準値からベルトモータの回転速度または搬送モータの回転速度を設定し、転写ベルトのシート搬送速度と搬送ローラのシート搬送速度の速度差を第2基準値に近づけるモータ制御処理と、を実行する。
【0028】
この構成によれば、交換可能なベルトユニットのベルトメモリに記憶された第1シート搬送速度からモータの回転速度を設定してモータを制御することができるので、転写ベルトのシート搬送速度と搬送ローラのシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。これにより、搬送ローラと転写ベルトとの間でシートが撓みすぎること、および、搬送ローラまたはベルトユニットでシートがスリップすることを抑制することができる。
【0029】
また、制御部は、モータ制御処理において、第2速度差と、第2基準値から搬送モータの回転速度を設定する構成とすることができる。
【0030】
また、制御部は、モータ制御処理において、第2速度差が第2基準値よりも大きい場合、搬送モータの回転速度を下げ、第2速度差が第2基準値よりも小さい場合、搬送モータの回転速度を上げる構成とすることができる。
【0031】
また、ベルトメモリに記憶された第1シート搬送速度は、本体メモリに記憶された第3シート搬送速度よりも遅い構成とすることができる。
【0032】
また、本体メモリに記憶された第3シート搬送速度は、予め測定された搬送ローラのシート搬送速度の実測値である構成とすることができる。
【0033】
また、搬送ローラは、搬送モータから駆動力が入力される搬送駆動ローラと、搬送駆動ローラに従動して回転する搬送従動ローラとを有し、本体メモリに記憶された第3シート搬送速度は、予め測定された搬送駆動ローラの外径の値に基づいて算出された算出値である構成とすることができる。
【0034】
また、本体メモリは、転写ベルトのシート搬送速度の基準値である基準シート搬送速度を記憶し、制御部は、読出処理において、ベルトメモリから第1シート搬送速度を読み出せなかった場合、本体メモリから基準シート搬送速度を読み出し、モータ制御処理において、読出処理において読み出された基準シート搬送速度と読出処理において読み出された第3シート搬送速度の速度差を第2速度差とする構成とすることができる。
【0035】
これによれば、ベルトメモリから第1シート搬送速度を読み出せなかった場合でも、転写ベルトのシート搬送速度と搬送ローラのシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。
【0036】
また、本体メモリは、転写ベルトのシート搬送速度の基準値である基準シート搬送速度を記憶し、制御部は、読出処理において、本体メモリから基準シート搬送速度を読み出し、モータ制御処理において、読出処理において読み出された第1シート搬送速度と読出処理において読み出された基準シート搬送速度の速度差が判定閾値の範囲外である場合、読出処理において読み出された基準シート搬送速度と読出処理において読み出された第3シート搬送速度の速度差を第2速度差とする構成とすることができる。
【0037】
これによれば、読出処理において読み出された第1シート搬送速度の値が異常な値である場合でも、転写ベルトのシート搬送速度と搬送ローラのシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、シートが撓みすぎること、および、シートがスリップすることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の断面図である。
【
図2】画像形成装置の制御に関連する構成を示す図である。
【
図3】ベルトユニットと画像形成装置の電気接点の拡大図である。
【
図5】定着モータの回転速度を設定する処理を示すフローチャートである。
【
図6】搬送モータの回転速度を設定する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、感光体ドラム41の軸方向を第1方向とする。また、複数の感光体ドラム41が並ぶ方向を第2方向とする。第2方向は、第1方向と交差する。好ましくは、第2方向は、第1方向と直交する。また、排出トレイ12、画像形成部3およびシートトレイ21が並ぶ方向を第3方向とする。第3方向は、第1方向および第2方向と交差する。好ましくは、第3方向は、第1方向および第2方向と直交する。
【0041】
図1に示すように、画像形成装置1は、装置本体10と、シート供給部2と、画像形成部3と、シート排出部4と、第1センサ5と、第2センサ6とを備える。
【0042】
装置本体10は、第2方向における一端側に開閉可能なカバー11を有する。カバー11は、後述するプロセスユニット40やベルトユニット50を着脱する場合に開かれる。また、装置本体10は、排出トレイ12を有する。
【0043】
第1センサ5は、カバー11の開閉を検知するセンサである。第1センサ5は、例えば、レバーを有するインターロックスイッチである。第1センサ5は、カバー11が閉じられてカバー11の一部でレバーが押圧されることにより、カバー11が閉じていることを検知する。また、第1センサ5は、カバー11が開かれてレバーの押圧が解除されることにより、カバー11が開いていることを検知する。
【0044】
シート供給部2は、シートトレイ21と、ピックアップローラ22と、分離ローラ23と、分離パッド24と、紙粉取りローラ25と、搬送ローラの一例としてのレジストレーションローラ26とを有する。シートトレイ21は、紙などのシートSを収容する。
【0045】
ピックアップローラ22は、シートトレイ21内のシートSを分離ローラ23に向けて送り出す。分離ローラ23と分離パッド24は、シートSを1枚ずつ分離して画像形成部3に向けて搬送する。紙粉取りローラ25は、シートSを画像形成部3に向けて搬送する。レジストレーションローラ26は、シートSの先端位置を規制した上で、シートSを画像形成部3に供給する。
【0046】
画像形成部3は、露光ユニット30と、プロセスユニット40と、ベルトユニット50と、定着ユニット70とを備える。
【0047】
露光ユニット30は、装置本体10内の第3方向における一端側に位置する。露光ユニット30は、光ビーム(一点鎖線参照)を出射して感光体ドラム41の表面を露光する。
【0048】
プロセスユニット40は、第2方向に並ぶ複数の感光体ドラム41と、各感光体ドラム41に対応する複数の帯電器42および現像カートリッジ43と、感光体ドラム41などを支持するプロセスフレーム44とを備える。プロセスユニット40は、カバー11を開くことで、装置本体10に対して着脱可能である。プロセスユニット40は、装置本体10に装着された状態において、シートトレイ21と露光ユニット30との間に位置する。
【0049】
現像カートリッジ43は、プロセスフレーム44に対して個別に着脱可能である。現像カートリッジ43は、プロセスユニット40に装着された状態でプロセスユニット40とともに装置本体10に着脱可能である。現像カートリッジ43は、現像剤を収容する現像筐体45と、現像ローラ46とを備える。
【0050】
ベルトユニット50は、ベルト駆動ローラ51と、ベルト従動ローラ52と、転写ベルト53と、複数の転写ローラ54とを有する。
【0051】
ベルト駆動ローラ51は、転写ベルト53を駆動するローラである。ベルト従動ローラ52は、転写ベルト53に従動して回転する。ベルト従動ローラ52は、第2方向においてベルト駆動ローラ51と間隔をあけて配置されている。ベルト駆動ローラ51とベルト従動ローラ52は、転写ベルト53の内周面に接触する。
【0052】
転写ベルト53は、無端状のベルトである。転写ベルト53は、転写ローラ54へのバイアスの印加により感光体ドラム41上のトナー像をシートSに転写させる。また、これとともに、転写ベルト53は、シートSを搬送する。詳しくは、転写ベルト53の内側には、転写ローラ54が配置されている。転写ローラ54は、感光体ドラム41との間で転写ベルト53を挟む。そして、感光体ドラム41、転写ベルト53および転写ローラ54が回転すると、転写ベルト53は、感光体ドラム41との間で、シートSを定着ユニット70に向けて搬送する。
【0053】
ベルトユニット50は、カバー11を開いて、プロセスユニット40を取り外すことで、装置本体10に対して着脱可能である。ベルトユニット50は、装置本体10に装着された状態において、シートトレイ21と露光ユニット30との間に位置する。さらに、プロセスユニット40が装置本体10に装着されることで、ベルトユニット50は、シートトレイ21とプロセスユニット40との間に位置する。
【0054】
第2センサ6は、ベルトユニット50が装置本体10に装着されているか否かを検知するセンサである。第2センサ6は、例えば、転写ベルト53に流れる電流を検出するセンサである。第2センサ6は、転写ベルト53に流れる電流を検出した場合、ベルトユニット50が装置本体10に装着されていることを検知する。また、第2センサ6は、転写ベルト53に流れる電流を検出できない場合、ベルトユニット50が装置本体10に装着されていないことを検知する。
【0055】
定着ユニット70は、装置本体10内に位置する。定着ユニット70は、ベルトユニット50が装置本体10に装着された状態において、転写ベルト53によって搬送されたシートS上のトナー像をシートSに定着させる。定着ユニット70は、シートSを加熱する定着ローラ71と、定着ローラ71を押圧する加圧ローラ72とを有する。定着ローラ71は、金属からなる円筒状の部材である。加圧ローラ72は、金属製の芯金の周囲に弾性層を有する部材である。
【0056】
画像形成部3は、帯電器42により感光体ドラム41の表面を帯電する。次に、画像形成部3は、露光ユニット30により感光体ドラム41の表面を露光する。これにより、画像形成部3は、感光体ドラム41上に静電潜像を形成する。次に、画像形成部3は、現像ローラ46から感光体ドラム41に現像剤を供給する。これにより、画像形成部3は、静電潜像を可視像化し、感光体ドラム41上に現像剤像を形成する。
【0057】
次に、画像形成部3は、シート供給部2から供給されたシートSを感光体ドラム41と転写ベルト53との間で搬送する。これにより、画像形成部3は、感光体ドラム41上の現像剤像をシートSに転写する。そして、画像形成部3は、現像剤像が転写されたシートSを定着ローラ71と加圧ローラ72との間で搬送する。これにより、画像形成部3は、現像剤像をシートSに熱定着してシートSに画像を形成する。
【0058】
シート排出部4は、排出経路81と、複数の排出ローラ82とを有する。排出ローラ82は、画像が形成されたシートSを、排出経路81を通して装置本体10の排出トレイ12上に排出する。
【0059】
図2に示すように、画像形成装置1は、制御部100と、本体メモリ200と、搬送モータM1と、ベルトモータM2と、定着モータM3とを備える。また、ベルトユニット50は、ベルトメモリ300を有する。
【0060】
搬送モータM1は、レジストレーションローラ26を駆動する。具体的には、レジストレーションローラ26は、搬送駆動ローラ26Aと、搬送従動ローラ26Bとを有する。そして、搬送駆動ローラ26Aに搬送モータM1から図示しない複数のギヤなどを介して駆動力が入力されることで、搬送駆動ローラ26Aが回転する。また、搬送従動ローラ26Bは、搬送駆動ローラ26Aに従動して回転する。プロセスユニット40およびベルトユニット50が装置本体10に装着された状態において、レジストレーションローラ26が駆動すると、シートSを感光体ドラム41と転写ベルト53との間に向けて搬送する。
【0061】
ベルトモータM2は、転写ベルト53を駆動する。具体的には、ベルトモータM2は、図示しない複数のギヤなどを介してベルト駆動ローラ51を駆動し、これに伴って、転写ベルト53が駆動する。また、ベルトモータM2は、図示しない複数のギヤなどを介して感光体ドラム41を駆動する。感光体ドラム41および転写ベルト53が駆動すると、シートSを定着ユニット70に向けて搬送する。
【0062】
定着モータM3は、定着ユニット70を駆動する。具体的には、加圧ローラ72に定着モータM3から図示しない複数のギヤなどを介して駆動力が入力されることで、加圧ローラ72が回転する。また、定着ローラ71は、加圧ローラ72に従動して回転する。定着ローラ71および加圧ローラ72が回転すると、シートSを排出経路81(
図1参照)に搬出する。
【0063】
図3に示すように、ベルトメモリ300は、ベルトユニット50のベルトフレーム55に支持されている。ベルトフレーム55は、ベルト駆動ローラ51、ベルト従動ローラ52および転写ローラ54を回転可能に支持する部材である。ベルトメモリ300は、記憶素子310と、電気的接触面320とを有する。電気的接触面320は、記憶素子310と電気的に接続されている。
【0064】
画像形成装置1は、電気接点15を備える。電気接点15は、ベルトユニット50が装置本体10に装着された状態において、ベルトユニット50の電気的接触面320と電気的に接触可能である。電気接点15は、装置本体10内のコンタクトホルダ16に保持されている。ベルトメモリ300の記憶素子310は、ベルトユニット50が装置本体10に装着された状態において、電気的接触面320および電気接点15を介して制御部100に電気的に接続可能である。
【0065】
ベルトメモリ300(記憶素子310)は、ベルトユニット50に関する情報を記憶する。ベルトメモリ300へのベルトユニット50に関する情報の記憶は、製造工場におけるベルトユニット50の製造工程で行う。ベルトメモリ300は、ベルトユニット50に関する情報の1つとして、第1シート搬送速度VBsを記憶する。
【0066】
第1シート搬送速度VBsは、予め測定された値に基づく転写ベルト53のシート搬送速度である。ベルトメモリ300に記憶される第1シート搬送速度VBsは、一例として、予め測定された転写ベルト53のシート搬送速度の実測値である。第1シート搬送速度VBsは、ベルトユニット50が組み上がった後に、ベルト駆動ローラ51に駆動力を与えて転写ベルト53を回転させ、このときに測定した転写ベルト53の移動速度である。
【0067】
また、ベルトメモリ300に記憶される第1シート搬送速度VBsは、予め測定された転写ベルト53の厚みおよびベルト駆動ローラ51の外径の値に基づいて算出された算出値であってもよい。第1シート搬送速度VBs[mm/s]は、転写ベルト53の厚みT53[mm]およびベルト駆動ローラ51の外径D51[mm]の測定値と、ベルト駆動ローラ51の回転速度N51[rpm]から下記の式により算出することができる。
VBs=(D51+T53×2)×π×N51/60
【0068】
第1シート搬送速度VBsは、ベルトユニット50について固有の値である。そのため、第1シート搬送速度VBsは、ベルトユニット50を新品に交換することにより、通常は異なる値となる。
【0069】
図2に戻って、本体メモリ200は、制御部100に電気的に接続される。なお、添付の図面では、本体メモリ200と制御部100を別に図示しているが、制御部100が本体メモリ200を含む構成であってもよい。
【0070】
本体メモリ200は、画像形成装置1に関する情報を記憶する。本体メモリ200への画像形成装置1に関する情報の記憶は、製造工場における画像形成装置1の製造工程で行う。
【0071】
本体メモリ200は、画像形成装置1に関する情報として、第2シート搬送速度VFsを記憶する。第2シート搬送速度VFsは、予め測定された値に基づく定着ユニット70のシート搬送速度である。
【0072】
本体メモリ200に記憶される第2シート搬送速度VFsは、一例として、予め測定された定着ユニット70のシート搬送速度の実測値である。第2シート搬送速度VFsは、定着ユニット70または画像形成装置1が組み上がった後に、加圧ローラ72に駆動力を与えて定着ローラ71を回転させ、このときに測定した定着ローラ71の周速度である。
【0073】
また、本体メモリ200に記憶される第2シート搬送速度VFsは、予め測定された定着ローラ71の外径の値に基づいて算出された算出値であってもよい。第2シート搬送速度VFs[mm/s]は、定着ローラ71の外径D71[mm]の測定値と、定着ローラ71の回転速度N71[rpm]から下記の式により算出することができる。
VFs=D71×π×N71/60
【0074】
ここで、ベルトメモリ300に記憶された転写ベルト53の第1シート搬送速度VBsは、本体メモリ200に記憶された定着ユニット70の第2シート搬送速度VFsよりも速い速度に設定されている。
【0075】
また、本体メモリ200は、画像形成装置1に関する情報として、第3シート搬送速度VCsを記憶する。第3シート搬送速度VCsは、予め測定された値に基づくレジストレーションローラ26のシート搬送速度である。
【0076】
本体メモリ200に記憶される第3シート搬送速度VCsは、一例として、予め測定されたレジストレーションローラ26のシート搬送速度の実測値である。第3シート搬送速度VCsは、画像形成装置1が組み上がった後に、搬送駆動ローラ26Aに駆動力を与えて回転させ、このときに測定した搬送駆動ローラ26Aの周速度である。
【0077】
また、本体メモリ200に記憶される第3シート搬送速度VCsは、予め測定された搬送駆動ローラ26Aの外径の値に基づいて算出された算出値であってもよい。第3シート搬送速度VCs[mm/s]は、搬送駆動ローラ26Aの外径D26[mm]の測定値と、搬送駆動ローラ26Aの回転速度N26[rpm]から下記の式により算出することができる。
VCs=D26×π×N26/60
【0078】
ここで、ベルトメモリ300に記憶された第1シート搬送速度VBsは、本体メモリ200に記憶されたレジストレーションローラ26の第3シート搬送速度VCsよりも遅い速度に設定されている。
【0079】
また、本体メモリ200は、基準シート搬送速度VBrを記憶する。基準シート搬送速度VBrは、例えば、実験やシミュレーションの結果などに基づいて予め設定された転写ベルト53のシート搬送速度の基準値である。
【0080】
また、本体メモリ200は、第1基準値VA1を記憶する。第1基準値VA1は、転写ベルト53のシート搬送速度と定着ユニット70のシート搬送速度の速度差の基準値である。第1基準値VA1は、基準シート搬送速度VBrと、予め設定された定着ユニット70のシート搬送速度の基準値VFrの速度差である。制御部100は、転写ベルト53の実際のシート搬送速度と定着ユニット70の実際のシート搬送速度との速度差が、第1基準値VA1に近づくように制御する。
【0081】
ここで、「速度差」は、例えば、定着ユニット70のシート搬送速度の値から転写ベルト53のシート搬送速度の値を引いた値であってもよいが、本実施形態では、速度比とする。第1基準値VA1は、下記の式により表される。
VA1=VFr/VBr
【0082】
また、本体メモリ200は、第2基準値VA2を記憶する。第2基準値VA2は、転写ベルト53のシート搬送速度とレジストレーションローラ26のシート搬送速度の速度差の基準値である。第2基準値VA2は、基準シート搬送速度VBrと、予め設定されたレジストレーションローラ26のシート搬送速度の基準値VCrの速度差である。制御部100は、転写ベルト53の実際のシート搬送速度とレジストレーションローラ26の実際のシート搬送速度との速度差が、第2基準値VA2に近づくように制御する。第2基準値VA2は、下記の式により表される。
VA2=VCr/VBr
【0083】
なお、本体メモリ200は、記憶する情報を書き換え可能である。例えば、定着ユニット70の第2シート搬送速度VFsは、定着ユニット70について固有の値であるため、サービスマンにより定着ユニット70が交換された場合には、サービスマンにより第2シート搬送速度VFsが交換後の定着ユニット70に固有の値に書き換えられる。
【0084】
また、例えば、レジストレーションローラ26の第3シート搬送速度VCsは、レジストレーションローラ26について固有の値であるため、サービスマンによりレジストレーションローラ26が交換された場合には、サービスマンにより第3シート搬送速度VCsが交換後のレジストレーションローラ26に固有の値に書き換えられる。
【0085】
図4に示すように、制御部100は、予め設定されたプログラムなどに従って、例えば、モータM1~M3などを制御する。制御部100は、第1センサ5および第2センサ6と電気的に接続される。制御部100は、図示しないCPU、RAM、ROM、入出力回路などを備える。制御部100は、読出部110と、算出部120と、モータ制御部130と、記憶部190とを有する。
【0086】
読出部110は、読出処理を実行する。読出部110は、第1センサ5がカバー11が閉じられたことを検知し、かつ、第2センサ6がベルトユニット50が装置本体10に装着されていることを検知した場合に、読出処理を開始する。
【0087】
読出部110は、読出処理において、ベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出すとともに、本体メモリ200から第2シート搬送速度VFs、第3シート搬送速度VCsを読み出す。また、読出部110は、本体メモリ200から基準シート搬送速度VBr、第1基準値VA1、第2基準値VA2を読み出す。
【0088】
読出部110は、ベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出せなかった場合でも、本体メモリ200から第2シート搬送速度VFs、第3シート搬送速度VCs、基準シート搬送速度VBr、第1基準値VA1、第2基準値VA2を読み出す。ベルトユニット50が装置本体10に装着されているにも関わらず、ベルトメモリ300から情報を読み出せない場合とは、例えば、ベルトメモリ300の電気的接触面320や画像形成装置1の電気接点15に異物が付着して接触不良を起こしているような場合である。
【0089】
読出部110は、読み出した情報を算出部120およびモータ制御部130に出力する。
【0090】
算出部120は、算出処理を実行する。算出部120は、算出処理において、第1速度差VD1を算出する。第1速度差VD1は、読出処理において読み出された転写ベルト53の第1シート搬送速度VBsと、読出処理において読み出された定着ユニット70の第2シート搬送速度VFsの速度差である。算出部120は、第1速度差VD1を下記の式により算出する。
VD1=VFs/VBs
【0091】
また、算出部120は、第2速度差VD2を算出する。第2速度差VD2は、第1シート搬送速度VBsと、読出処理において読み出されたレジストレーションローラ26の第3シート搬送速度VCsの速度差である。算出部120は、第2速度差VD2を下記の式により算出する。
VD2=VCs/VBs
【0092】
また、算出部120は、第3速度差VD3を算出する。第3速度差VD3は、読出処理において読み出された転写ベルト53の基準シート搬送速度VBrと、第2シート搬送速度VFsの速度差である。算出部120は、第3速度差VD3を下記の式により算出する。
VD3=VFs/VBr
【0093】
また、算出部120は、第4速度差VD4を算出する。第4速度差VD4は、基準シート搬送速度VBrと、第3シート搬送速度VCsの速度差である。算出部120は、第4速度差VD4を下記の式により算出する。
VD4=VCs/VBr
【0094】
また、算出部120は、第5速度差VBDを算出する。第5速度差VBDは、第1シート搬送速度VBsと基準シート搬送速度VBrの速度差である。算出部120は、第5速度差VBDを下記の式により算出する。
VBD=VBs/VBr
【0095】
算出部120は、算出した各速度差の情報をモータ制御部130に出力する。なお、算出部120は、読出処理においてベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出せなかった場合には、第3速度差VD3と第4速度差VD4の情報をモータ制御部130に出力する。
【0096】
モータ制御部130は、モータ制御処理を実行する。モータ制御部130は、モータ制御処理において、第1速度差VD1と、第1基準値VA1から定着モータM3の回転速度N3を設定する。また、モータ制御部130は、第2速度差VD2と、第2基準値VA2から搬送モータM1の回転速度N1を設定する。
【0097】
そして、モータ制御部130は、モータM1~M3を駆動する指示を受けた場合に、搬送モータM1を設定した回転速度N1で駆動し、ベルトモータM2を回転速度N2で駆動し、定着モータM3を設定した回転速度N3で駆動する。本実施形態において、ベルトモータM2の回転速度N2は、予め設定された既定値であり、第1速度差VD1および第2速度差VD2によっては変更しない。
【0098】
これにより、モータ制御部130は、画像形成装置1が動作したときの、転写ベルト53の実際のシート搬送速度と定着ユニット70の実際のシート搬送速度の速度差を、第1基準値VA1に近づけるように定着モータM3の回転速度を制御する。また、モータ制御部130は、画像形成装置1が動作したときの、転写ベルト53の実際のシート搬送速度とレジストレーションローラ26の実際のシート搬送速度の速度差を、第2基準値VA2に近づけるように搬送モータM1の回転速度を制御する。
【0099】
モータ制御部130は、第1速度差VD1が第1基準値VA1よりも大きい場合、定着モータM3の回転速度N3を下げる。また、モータ制御部130は、第1速度差VD1が第1基準値VA1よりも小さい場合、定着モータM3の回転速度N3を上げる。一例として、モータ制御部130は、定着モータM3の回転速度N3を下記の式により算出することができる。ここで、N3dは、予め設定された定着モータM3の回転速度の既定値である。
N3=N3d×VA1/VD1
【0100】
また、モータ制御部130は、第2速度差VD2が第2基準値VA2よりも大きい場合、搬送モータM1の回転速度N1を下げる。また、モータ制御部130は、第2速度差VD2が第2基準値VA2よりも小さい場合、搬送モータM1の回転速度N1を上げる。一例として、モータ制御部130は、搬送モータM1の回転速度N1を下記の式により算出することができる。ここで、N1dは、予め設定された搬送モータM1の回転速度の既定値である。
N1=N1d×VA2/VD2
【0101】
モータ制御部130は、定着モータM3の回転速度N3(今回値N3n)を新たに設定した場合、定着モータM3の回転速度N3の前回値(N3n-1)と置き換えて記憶部190に記憶する。そして、定着モータM3の回転速度N3(次回値N3n+1)が新たに設定されるまで、定着モータM3の駆動に回転速度N3nを用いる。
【0102】
同様に、モータ制御部130は、搬送モータM1の回転速度N1(今回値N1n)を新たに設定した場合、搬送モータM1の回転速度N1の前回値(N1n-1)と置き換えて記憶部190に記憶する。そして、搬送モータM1の回転速度N1(次回値N1n+1)が新たに設定されるまで、搬送モータM1の駆動に回転速度N1nを用いる。
【0103】
本実施形態では、第5速度差VBDが予め設定された判定閾値の範囲外である場合、具体的には、第5速度差VBDが判定閾値の最小値VBD1未満かつ判定閾値の最大値VBD2より大きい場合、読出処理でベルトメモリ300から読み出された第1シート搬送速度VBsの値が異常な値であるとみなす。
【0104】
そのため、モータ制御部130は、第5速度差VBDが判定閾値の範囲外である場合、算出部120で算出された第1速度差VD1を使わず、第3速度差VD3を第1速度差VD1とする。また、モータ制御部130は、第5速度差VBDが判定閾値の範囲外である場合、算出部120で算出された第2速度差VD2を使わず、第4速度差VD4を第2速度差VD2とする。
【0105】
また、モータ制御部130は、読出処理でベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出せなかった場合にも、第3速度差VD3を第1速度差VD1とする。同様に、モータ制御部130は、読出処理でベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出せなかった場合、第4速度差VD4を第2速度差VD2とする。
【0106】
次に、制御部100による定着モータM3の回転速度N3を設定する処理について説明する。制御部100は、カバー11が開いた状態から閉じられた場合に、定着モータM3の回転速度N3を設定する処理を開始する。
【0107】
図5に示すように、カバー11が閉じられると(START)、制御部100は、ベルトユニット50が装置本体10に装着されているか否かを判定する(S101)。ベルトユニット50が装置本体10に装着されていない場合(S101,No)、制御部100は、回転速度設定の処理を終了する。
【0108】
一方、ベルトユニット50が装置本体10に装着されている場合(S101,Yes)、制御部100は、本体メモリ200から定着ユニット70の第2シート搬送速度VFsと転写ベルト53の基準シート搬送速度VBrを読み出す(S102)(読出処理)。また、制御部100は、ベルトメモリ300から転写ベルト53の第1シート搬送速度VBsを読み出す(S103)(読出処理)。
【0109】
そして、ベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出せた場合(S104,Yes)、制御部100は、第1シート搬送速度VBsと基準シート搬送速度VBrから第5速度差VBDを算出する(S105)。そして、制御部100は、第5速度差VBDが判定閾値の範囲内であるか否かを判定する(S106)。
【0110】
第5速度差VBDが判定閾値の範囲内である場合(S106,Yes)、制御部100は、第1シート搬送速度VBsと第2シート搬送速度VFsから第1速度差VD1を算出し(S107)、ステップS110へ進む。
【0111】
ステップS104においてベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出せなかった場合(S104,No)およびステップS106において第5速度差VBDが判定閾値の範囲内でない場合(S106,No)、制御部100は、基準シート搬送速度VBrと第2シート搬送速度VFsから第3速度差VD3を算出する(S108)。そして、制御部100は、第3速度差VD3を第1速度差VD1とする(S109)。
【0112】
ステップS110において、制御部100は、第1速度差VD1と第1基準値VA1から定着モータM3の回転速度N3を設定する(S110)(モータ制御処理)。そして、制御部100は、設定した回転速度N3を定着モータM3の回転速度として記憶し(S111)、定着モータM3の回転速度設定の処理を終了する。
【0113】
次に、制御部100による搬送モータM1の回転速度N1を設定する処理について説明する。なお、定着モータM3の回転速度N3を設定する処理と同様の処理については、同一符号を付して適宜説明を省略する。
【0114】
図6に示すように、ベルトユニット50が装置本体10に装着されている場合(S101,Yes)、制御部100は、本体メモリ200からレジストレーションローラ26の第3シート搬送速度VCsと転写ベルト53の基準シート搬送速度VBrを読み出す(S202)(読出処理)。
【0115】
そして、ステップS106において第5速度差VBDが判定閾値の範囲内である場合(S106,Yes)、制御部100は、第1シート搬送速度VBsと第3シート搬送速度VCsから第2速度差VD2を算出し(S207)、ステップS210へ進む。
【0116】
また、ステップS104において第1シート搬送速度VBsを読み出せなかった場合(S104,No)およびステップS106において第5速度差VBDが判定閾値の範囲内でない場合(S106,No)、制御部100は、基準シート搬送速度VBrと第3シート搬送速度VCsから第4速度差VD4を算出する(S208)。そして、制御部100は、第4速度差VD4を第2速度差VD2とする(S209)。
【0117】
ステップS210において、制御部100は、第2速度差VD2と第2基準値VA2から搬送モータM1の回転速度N1を設定する(S210)(モータ制御処理)。そして、制御部100は、設定した回転速度N1を搬送モータM1の回転速度として記憶し(S211)、搬送モータM1の回転速度設定の処理を終了する。
【0118】
以上説明した本実施形態によれば、交換可能なベルトユニット50のベルトメモリ300に記憶された第1シート搬送速度VBsから定着モータM3の回転速度N3を設定して定着モータM3を制御することができるので、転写ベルト53の実際のシート搬送速度と定着ユニット70の実際のシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。これにより、転写ベルト53と定着ユニット70との間でシートSが撓みすぎること、および、ベルトユニット50または定着ユニット70でシートSがスリップすることを抑制することができる。
【0119】
また、ベルトモータM2が、転写ベルト53だけでなく、感光体ドラム41も駆動するので、画像形成装置1に備えられるモータの数を抑えることができる。
【0120】
また、カバー11が閉じられて、かつ、ベルトユニット50が装着されている場合に、読出処理を開始するので、ベルトユニット50が新しいものに交換されて、転写ベルト53の実際のシート搬送速度と定着ユニット70の実際のシート搬送速度の速度差が変わる可能性が高い場合に定着モータM3の回転速度N3および搬送モータM1の回転速度N1を設定することができる。これにより、シートSが撓みすぎること、および、シートSがスリップすることをより確実に抑制することができる。
【0121】
また、ベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出せなかった場合や、読出処理において読み出された第1シート搬送速度VBsの値が異常な値である場合には、第3速度差VD3を第1速度差VD1として制御を行うので、これらの場合でも、転写ベルト53の実際のシート搬送速度と定着ユニット70の実際のシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。
【0122】
また、本実施形態によれば、第1シート搬送速度VBsから搬送モータM1の回転速度N1を設定して搬送モータM1を制御することができるので、転写ベルト53の実際のシート搬送速度とレジストレーションローラ26の実際のシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。これにより、レジストレーションローラ26と転写ベルト53との間でシートSが撓みすぎること、および、レジストレーションローラ26またはベルトユニット50でシートSがスリップすることを抑制することができる。
【0123】
また、ベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出せなかった場合や、読出処理において読み出された第1シート搬送速度VBsの値が異常な値である場合には、第4速度差VD4を第2速度差VD2として制御を行うので、これらの場合でも、転写ベルト53の実際のシート搬送速度とレジストレーションローラ26の実際のシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。
【0124】
以上に発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、適宜変形して実施することが可能である。
【0125】
例えば、制御部100または本体メモリ200は、第1摩耗予測値と、第2摩耗予測値とを記憶する。第1摩耗予測値は、シートSの搬送により定着ユニット70の加圧ローラ72などが摩耗した場合に予測される定着ユニット70のシート搬送速度の減速値である。第2摩耗予測値は、シートSの搬送によりレジストレーションローラ26が摩耗した場合に予測されるレジストレーションローラ26のシート搬送速度の減速値である。
【0126】
そして、第2センサ6などが、ベルトユニット50が新品に交換されたことを検知した場合に、制御部100は、サービスマンにより定着ユニット70が交換されてからのシートSの印刷枚数が所定枚数以上であるか否かを判定する。制御部100が、定着ユニット70が交換されてからのシートSの印刷枚数が所定枚数以上であると判定した場合、制御部100は、第2シート搬送速度VFsから第1摩耗予測値を引く。その後、制御部100は、転写ベルト53の実際のシート搬送速度と定着ユニット70の実際のシート搬送速度との速度差が、第1基準値VA1に近づくように制御する。
【0127】
その結果、シートSの搬送により定着ユニット70が摩耗し、定着ユニット70のシート搬送速度が遅くなった場合でも、転写ベルト53の実際のシート搬送速度と定着ユニット70の実際のシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。
【0128】
また、第2センサ6などが、ベルトユニット50が新品に交換されたことを検知した場合に、制御部100は、サービスマンによりレジストレーションローラ26が交換されてからのシートSの印刷枚数が所定枚数以上であるか否かを判定する。制御部100が、レジストレーションローラ26が交換されてからのシートSの印刷枚数が所定枚数以上であると判定した場合、制御部100は、第3シート搬送速度VCsから第2摩耗予測値を引く。その後、制御部100は、転写ベルト53の実際のシート搬送速度とレジストレーションローラ26の実際のシート搬送速度との速度差が、第2基準値VA2に近づくように制御する。
【0129】
その結果、シートSの搬送によりレジストレーションローラ26が摩耗し、レジストレーションローラ26のシート搬送速度が遅くなった場合でも、転写ベルト53の実際のシート搬送速度とレジストレーションローラ26の実際のシート搬送速度の速度差を一定の範囲に収めることができる。
【0130】
また、上述の実施形態では、ベルトモータM2が転写ベルト53とともに感光体ドラム41を駆動する構成であったが、感光体ドラムは、ベルトモータ以外のモータにより駆動する構成であってもよい。
【0131】
また、上述の実施形態では、制御部100が、カバー11が閉じられて、かつ、ベルトユニット50が装着されている場合に読出処理を開始する構成であったが、これに限定されない。例えば、制御部は、モータを駆動する指示を受けていない状態で、所定の制御サイクルごとに読出処理を開始して、モータの搬送速度を設定する構成であってもよい。すなわち、読出処理を開始してモータの搬送速度を設定するタイミングは、任意である。
【0132】
また、上述の実施形態では、制御部100が、ベルトメモリ300から第1シート搬送速度VBsを読み出せなかった場合や、読出処理において読み出された第1シート搬送速度VBsの値が異常な値である場合に、第3速度差VD3を第1速度差VD1として、定着モータM3の回転速度N3を設定する構成であったが、これに限定されない。例えば、制御部は、上記の場合には、定着モータの回転速度を既定値に設定する構成であってもよい。また、制御部は、上記のような場合には、定着モータの回転速度を設定せず、エラーメッセージなどを出力する構成であってもよい。搬送モータの回転速度の設定についても同様である。
【0133】
また、上述の実施形態では、モータ制御処理において、第1速度差VD1と、第1基準値VA1から定着モータM3の回転速度N3を設定したが、これに限定されず、ベルトモータM2の回転速度N2を設定してもよい。また、ベルトモータM2の回転速度N2および定着モータM3の回転速度N3の両方を設定してもよい。また、第1基準値は、一の値でなく、ある範囲を持った値であってもよい。
【0134】
また、上述の実施形態では、モータ制御処理において、第2速度差VD2と、第2基準値VA2から搬送モータM1の回転速度N1を設定したが、これに限定されず、ベルトモータM2の回転速度N2を設定してもよい。また、ベルトモータM2の回転速度N2および搬送モータM1の回転速度N1の両方を設定してもよい。また、第2基準値は、一の値でなく、ある範囲を持った値であってもよい。
【0135】
また、上述の実施形態では、定着ユニットとして、金属からなる円筒状の定着ローラ71を有する定着ユニット70を例示したが、これに限定されない。例えば、定着ユニットは、可撓性がある無端状の定着ベルトを有するベルト定着方式の定着ユニットであってもよい。また、本体メモリに記憶させる第2シート搬送速度は、予め測定された加圧ローラの外径の値に基づいて算出された算出値であってもよい。
【0136】
また、上述の実施形態では、搬送ローラとしてレジストレーションローラ26を例示したが、これに限定されない。例えば、上述の実施形態のピックアップローラ22、分離ローラ23、紙粉取りローラ25などをレジストレーションローラ26と同様に制御してもよい。
【0137】
また、上述の実施形態では、転写ベルトとして、感光体ドラム41との間でシートSを搬送する転写ベルト53(搬送ベルト)を例示したが、これに限定されない。例えば、転写ベルトは、感光体ドラムからトナー像が転写され、転写されたトナー像をシートに転写する中間転写ベルトなどであってもよい。
【0138】
また、上述の実施形態では、本発明を、転写ベルト53のシート搬送速度と定着ユニット70のシート搬送速度の速度差の制御と、転写ベルト53のシート搬送速度とレジストレーションローラ26のシート搬送速度の速度差の制御の両方に適用したが、これに限定されない。例えば、本発明を、転写ベルトのシート搬送速度と定着ユニットのシート搬送速度の速度差の制御のみに適用してもよい。また、本発明を、転写ベルトのシート搬送速度とレジストレーションローラのシート搬送速度の速度差の制御のみに適用してもよい。
【0139】
また、上述の実施形態では、画像形成装置として、複数の感光体ドラム41を備えるカラー印刷用の画像形成装置1を例示したが、これに限定されない。例えば、画像形成装置は、感光体ドラムを1つだけ有するモノクロ印刷用の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置は、プリンタであってもよいし、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複合機や複写機などであってもよい。
【0140】
また、上述の実施形態では、ベルトメモリや本体メモリに、予め測定された値に基づくシート搬送速度を記憶させたが、これに限定されない。例えば、ベルトメモリに、転写ベルトの厚みおよびベルト駆動ローラの外径の値などを記憶させ、画像形成装置の制御部において、転写ベルトのシート搬送速度を算出する構成としてもよい。本体メモリに記憶させる情報についても同様である。
【0141】
また、上述の実施形態および変形例で説明した各要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0142】
1 画像形成装置
5 第1センサ
6 第2センサ
10 装置本体
11 カバー
26 レジストレーションローラ
26A 搬送駆動ローラ
26B 搬送従動ローラ
41 感光体ドラム
50 ベルトユニット
51 ベルト駆動ローラ
52 ベルト従動ローラ
53 転写ベルト
70 定着ユニット
71 定着ローラ
100 制御部
200 本体メモリ
300 ベルトメモリ
M1 搬送モータ
M2 ベルトモータ
M3 定着モータ
S シート