特許 7155861 鞍乗型車両の消音器構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-10-11

(45)【発行日】2022-10-19

(54)【発明の名称】鞍乗型車両の消音器構造

(51)【国際特許分類】

   F01N 1/08 20060101AFI20221012BHJP

   F01N 13/08 20100101ALI20221012BHJP

【ＦＩ】

F01N1/08 F

F01N1/08 B

F01N13/08 G

【請求項の数】 5

(21)【出願番号】P 2018197394

(22)【出願日】2018-10-19

(65)【公開番号】P2020063726

(43)【公開日】2020-04-23

【審査請求日】2021-08-19

(73)【特許権者】

【識別番号】000002082

【氏名又は名称】スズキ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100121083

【弁理士】

【氏名又は名称】青木 宏義

(74)【代理人】

【識別番号】100138391

【弁理士】

【氏名又は名称】天田 昌行

(74)【代理人】

【識別番号】100132067

【弁理士】

【氏名又は名称】岡田 喜雅

(72)【発明者】

【氏名】村松 剛吉

(72)【発明者】

【氏名】千野 貴礼

【審査官】増岡 亘

(56)【参考文献】

【文献】特開２００９－１３３２８８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１３－６０９２０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１２－３５７１４（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ０１Ｎ １／０８

Ｆ０１Ｎ １３／０８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

シリンダヘッドの排気ポートから延びる排気管の下流側に配置された鞍乗型車両の消音器構造であって、
消音器本体と、前記排気管に接続され、前記消音器本体内に挿入されるパイプとを有し、
前記消音器本体は、筒状部と、前記筒状部の下流側端部に接合され、下流側に向けて縮径する縮径部と、前記筒状部内の空間と前記縮径部内の空間とを仕切る仕切り部と、を有し、
前記パイプは、前記筒状部を通過するセンターパイプと、前記縮径部内に配置されるテールパイプとを有し、前記センターパイプの下流側端部が前記仕切り部に支持され、
前記テールパイプ周辺における前記仕切り部の下流側の前記縮径部内の空間で膨張室を形成し、
前記テールパイプの上流側端部には、上流側の内径よりも下流側の内径が小さく窄まるテーパ形状部が形成され、
前記センターパイプの下流側開口部は、側面視にて、前記テーパ形状部に収容されていることを特徴とする鞍乗型車両の消音器構造。

【請求項2】

前記テーパ形状部の外周面には、複数の貫通孔が形成されることを特徴とする請求項１に記載の鞍乗型車両の消音器構造。

【請求項3】

前記テーパ形状部の上流側開口部は、前記縮径部内の空間に連通することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の鞍乗型車両の消音器構造。

【請求項4】

前記縮径部は、前記筒状部の外縁部分から下流側に縮径しながら延びることを特徴とする請求項１から請求項３のいずれかに記載の鞍乗型車両の消音器構造。

【請求項5】

前記縮径部は、下流側端部が前記テールパイプの下流側端部近傍に接続されることを特徴とする請求項１から請求項４のいずれかに記載の鞍乗型車両の消音器構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、鞍乗型車両の消音器構造に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、鞍乗型車両の消音器においては、消音器内部をセパレータによって複数の空間に分割し、これらの空間を複数の連通パイプで連通させる構造を有するものが知られている（例えば、特許文献１参照）。この消音器においては、上記構造を採用することにより、消音器後方における車幅方向外側への張り出し量を抑えて取廻しを良くし、スマートなスタイリングを実現している。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１６－０７０２０８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかしながら、特許文献１に記載の消音器においては、消音器内部の構造が複雑になると共に、消音器自体の大きさが大きくなってしまうという問題がある。鞍乗型車両の消音器においては、消音効果を確保しながら、簡単且つコンパクトな構造が要請されている。

【0005】

本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、消音効果を確保しながら、簡単且つコンパクトな構造を実現することができる鞍乗型車両の消音器構造を提供することを目的の一つとする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の鞍乗型車両の消音器構造の一態様は、シリンダヘッドの排気ポートから延びる排気管の下流側に配置された鞍乗型車両の消音器構造であって、消音器本体と、前記排気管に接続され、前記消音器本体内に挿入されるパイプとを有し、前記消音器本体は、筒状部と、前記筒状部の下流側端部に接合され、下流側に向けて縮径する縮径部と、前記筒状部内の空間と前記縮径部内の空間とを仕切る仕切り部と、を有し、前記パイプは、前記筒状部を通過するセンターパイプと、前記縮径部内に配置されるテールパイプとを有し、前記センターパイプの下流側端部が前記仕切り部に支持され、前記テールパイプ周辺における前記仕切り部の下流側の前記縮径部内の空間で膨張室を形成し、前記テールパイプの上流側端部には、上流側の内径よりも下流側の内径が小さく窄まるテーパ形状部が形成され、前記センターパイプの下流側開口部は、側面視にて、前記テーパ形状部に収容されていることを特徴とする。

【発明の効果】

【0007】

本発明によれば、消音効果を確保しながら、簡単且つコンパクトな構造を実現することができる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】自動二輪車の概略構成を示す左側面図である。

【図2】本実施の形態に係る自動二輪車が有するマフラの左側面図及び上面図である。

【図3】図２Ａに示す破線Ａにおける断面図及び図２Ｂに示す破線Ｂにおける断面図である。

【図4】図３Ｂにおけるセンターパイプの上流側端部周辺を拡大した斜視図である。

【図5】図３Ｂにおけるテールパイプ周辺を拡大した断面図及び斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

以下、本発明の各実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る消音器構造を、スポーツタイプの自動二輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明に係る消音器構造を、他のタイプの自動二輪車や、バギータイプの自動三輪車、自動四輪車等の鞍乗型車両に適用してもよい。また、方向について、車両前方を矢印ＦＲ、車両後方を矢印ＲＥ、車両上方を矢印ＵＰ、車両下方を矢印ＬＯでそれぞれ示す。また、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略している。

【0010】

まず、本発明に係る消音器構造が適用される自動二輪車の概略構成について、図１を参照して説明する。図１は、自動二輪車の概略構成を示す左側面図である。以下の説明において、上流側とは、排気ガスの流動方向の上流側を示し、下流側とは、排気ガスの流動方向の下流側を示している。本実施の形態に係る消音器構造において、上流側は、車両の前方側に対応し、下流側は、車両の後方側に対応する。

【0011】

図１に示すように、自動二輪車１は、電装系等の各部を搭載する車体フレーム２にパワーユニットの一部としてのエンジン３を懸架して構成される。エンジン３は、例えば、並列４気筒エンジンで構成される。エンジン３は、クランクシャフト（不図示）等が収容されるエンジンケース３０の上部に、シリンダヘッド及びシリンダヘッドカバー（不図示）を取り付けて構成される。エンジンケース３０の下部には、オイルパン（不図示）が設けられる。

【0012】

車体フレーム２は、鉄又はアルミニウム合金等によって形成されるツインスパータイプのフレームであり、上記のようにエンジン３を懸架することで、車体全体として剛性が得られるように構成される。車体フレーム２は、全体として、前方から後方に向かって延在し、後端側で下方に向かって湾曲した形状を有している。

【0013】

具体的に車体フレーム２は、ヘッドパイプ（不図示）から後方に向かって左右二股に分岐して延びるメインフレーム２０と、メインフレーム２０の後端から下方に延びるボディフレーム２１とを備えている。メインフレーム２０の上部には、燃料タンク１０が配置される。ボディフレーム２１の上下方向の略中央部分には、スイングアーム１１が揺動可能に支持されている。スイングアーム１１は、後方に向かって延びている。

【0014】

ボディフレーム２１の上端には、後上方に向かって延びるシートレール（不図示）及びバックステー２２が設けられている。シートレールには、燃料タンク１０に連接されるライダーシート１２及びピリオンシート１３が設けられる。

【0015】

ヘッドパイプには、ステアリングシャフト（不図示）を介して左右一対のフロントフォーク１４が操舵可能に支持される。フロントフォーク１４の下部には前輪１５が回転可能に支持されており、前輪１５の上方はフロントフェンダ１６によって覆われる。スイングアーム１１の後端には後輪１７が回転可能に支持されている。後輪１７の上方は、リヤフェンダ１８によって覆われる。

【0016】

また、シリンダヘッドの各排気ポートには、排気管を構成するエキゾーストパイプ４が接続される。このエキゾーストパイプ４の後方側には、消音器を構成するマフラ５が接続される。エキゾーストパイプ４は、各排気ポートから下方に向かって複数本（本実施の形態では４本）延び、エンジン３の前下方で後方に屈曲した後、１本に集約され、車両後方に向かって延びている。マフラ５は、１本に集約されたエキゾーストパイプ４の後端に接続されている。

【0017】

ところで、鞍乗型車両の消音器においては、筒状の消音器本体の内部をセパレータによって複数の空間に分割し、これらの空間を複数の連通パイプで連通させる構造が知られている。しかしながら、このような消音器においては、消音器内部の構造が複雑になると共に、消音器自体の大きさが大きくなってしまう事態が発生し得る。自動二輪車に代表される鞍乗型車両の消音器においては、車両重量の軽量化や製造コストの低減などの観点から、消音効果を確保しながら、簡単且つコンパクトな構造を実現することが要請されている。

【0018】

本発明者等は、このような実情に鑑み、筒状の消音器本体の内部をセパレータにより複数の空間に分割し、これらの空間を連通パイプで連通させる構造では、消音器自体の軽量化や製造コストの低減に限界があることに着目した。そして、既存の消音器で活用されていなかった部分を膨張室として有効に活用することが、消音効果を確保しながら、簡単且つコンパクトな構造の実現に寄与することを見出し、本発明に想到した。

【0019】

すなわち、本発明の骨子は、消音器本体に、筒状部と、筒状部の下流側端部に接合される縮径部とを設ける一方、パイプを、筒状部を通過するセンターパイプと、縮径部内に配置されるテールパイプとで構成し、テールパイプ周辺における縮径部内の空間で膨張室を形成することである。

【0020】

本発明によれば、消音器本体を構成する筒状部の下流側端部に縮径部が接合され、この縮径部内のテールパイプ周辺の空間で膨張室が形成される。このため、従来、テールパイプ周辺の外観性能を向上するために配置されているテールカバー内の空間を活用して排気ガスを拡散することができる。これにより、膨張室による消音効果を確保しながら、簡単且つコンパクトな構造を実現することができる。

【0021】

図２Ａ及び図２Ｂは、それぞれ本実施の形態に係る自動二輪車が有するマフラ５の左側面図及び上面図である。図３Ａは、図２Ａに示す破線Ａにおける断面図であり、図３Ｂは、図２Ｂに示す破線Ｂにおける断面図である。図２及び図３においては、説明の便宜上、図１に示すマフラ５の構成を模式的に示すと共に、マフラ５の後端部に取り付けられるテールカバー５ａを省略している（図１参照）。

【0022】

図２及び図３に示すように、マフラ５は、消音器本体を構成するマフラ本体５１と、マフラ本体５１内に挿入されるパイプ５２とを有している。マフラ本体５１は、筒状部５１１と、縮径部の一例を構成するカップ部５１２とを有している。筒状部５１１は、概して筒形状を有し、車両の前後方向に開口部を向けた状態で配置されている。より具体的にいうと、マフラ本体５１は、前方側の開口部５１１ａを僅かに下方側に向ける一方、後方側の開口部５１１ｂを僅かに上方側に向けた状態で配置されている（図３Ｂ参照）。カップ部５１２は、筒状部５１１の下流側端部に接合され、下流側に向けてその内径が縮径する構成を有している。

【0023】

マフラ本体５１において、前方側の開口部５１１ａにはノーズキャップ５１３が取り付けられ、後方側の開口部５１１ｂにはカップ部５１２が取り付けられている（図３参照）。ノーズキャップ５１３及びカップ部５１２は、マフラ本体５１の内壁に溶接等により接合され、マフラ本体５１の一部を構成する。ノーズキャップ５１３は、パイプ５２の一部（後述する膨張室５２４）を支持する、マフラ本体５１の前方側端部（上流側端部）の壁面を構成する。カップ部５１２は、パイプ５２の一部（後述するテールパイプ５２２）を支持する、マフラ本体５１の後方側端部（下流側端部）の壁面を構成する。

【0024】

カップ部５１２は、ドーム形状部（以下、「ドーム部」という）５１２ａ、フランジ部５１２ｂ及び接合面部５１２ｃを有する。ドーム部５１２ａは、上流側に向けて開口し、下流側に向けてその内径（外径）が縮径する構成を有している。なお、ここでは、ドーム部５１２ａの断面が、概して半球形状を有する場合について説明するが、これに限定されない。ドーム部５１２ａの下流側端部には、後述するテールパイプ５２２が挿通される開口部５１２ｄが形成されている。開口部５１２ｄの周囲には、支持部５１２ｅが形成されている。支持部５１２ｅは、後述するテールパイプ５２２の外周面を支持可能な寸法を有している。

【0025】

フランジ部５１２ｂは、ドーム部５１２ａの上流側端部から外周側（筒状部５１１の内周側）に向けて延出する平面形状を有している。フランジ部５１２ｂは、後述するセパレータ５１５の平面部５１５ａの下流側面に対向して配置されている。接合面部５１２ｃは、フランジ部５１２ｂの外周縁部から下流側（後方側）に屈曲する形状を有している。接合面部５１２ｃの外周面は、筒状部５１１の内周面に対応する形状を有している。接合面部５１２ｃは、その外周面で筒状部５１１の後端部近傍の内壁に溶接等により接合される。接合面部５１２ｃの下流側端部は、筒状部５１１の下流側端部と同一の位置に配置されている。

【0026】

マフラ本体５１内には、内筒部５１４が収容されている。内筒部５１４は、前後方向に開口した筒形状を有している。内筒部５１４は、マフラ本体５１内の空間の略全域に亘って配置されている。内筒部５１４は、その前端部の外周面がノーズキャップ５１３の内壁面に圧入等により接合される一方、その後端部がセパレータ５１５（より具体的には、後述する支持部５１５ｄ）により支持されている。

【0027】

セパレータ５１５は、筒状部５１１の延在方向に直交する方向に延びる平面部５１５ａを有している。平面部５１５ａの中心近傍には、後述する管状部５２３が挿通される開口部５１５ｂが形成されている。開口部５１５ｂの周囲には、支持部５１５ｃが形成されている。支持部５１５ｃは、後述する管状部５２３の外周面を支持可能な寸法を有している。平面部５１５ａの外周部には、支持部５１５ｄが設けられている。支持部５１５ｄは、その内周面で内筒部５１４を支持する。セパレータ５１５は、図示しない固定部材により筒状部５１１の内周面に固定されている。このような構成を有し、セパレータ５１５は、筒状部５１１内の空間５１１ｓと、カップ部５１２内の空間５１２ｓとを仕切る仕切り部の一例を構成する。

【0028】

パイプ５２は、センターパイプ５２１と、テールパイプ５２２とを有している（図３参照）。パイプ５２は、これらのセンターパイプ５２１及びテールパイプ５２２を組み合わせて、排気ガスの上流側から下流側に向けてマフラ本体５１を貫通して配置されている。エキゾーストパイプ４を介してマフラ５に送られた排気ガスは、センターパイプ５２１及びテールパイプ５２２を通過してマフラ５の外部に排出される。この際、マフラ本体５１内で排気ガスの排出に伴う音が消音される。

【0029】

センターパイプ５２１は、マフラ本体５１の筒状部５１１を通過するように配置されている。センターパイプ５２１は、円筒状の管状部５２３と、膨張室５２４とを有している。膨張室５２４は、センターパイプ５２１における上流側の位置に配置されている。管状部５２３は、膨張室５２４の下流側の位置に配置されている。膨張室５２４は、上流側端部でエキゾーストパイプ４に接続される一方、下流側端部で管状部５２３に接続されている。管状部５２３の上流側端部は、膨張室５２４（より具体的には、後述する縮径部５２４ｂ）の下流側端部に圧入により接合されている。

【0030】

膨張室５２４は、エキゾーストパイプ４の内径より拡径された内径を有している。膨張室５２４は、拡径部５２４ａ及び縮径部５２４ｂを有している。拡径部５２４ａは、膨張室５２４における上流側の位置に配置され、上流側端部がエキゾーストパイプ４に接続される。拡径部５２４ａは、上流側の内径より下流側の内径が大きく拡がるテーパ形状を有している。縮径部５２４ｂは、膨張室５２４における下流側の位置に配置され、上流側端部が拡径部５２４ａに接続され、下流側端部が管状部５２３に接続される。縮径部５２４ｂは、上流側の内径よりも下流側の内径が小さく窄まるテーパ形状を有している。拡径部５２４ａと縮径部５２４ｂとは、例えば、溶接により接合される。

【0031】

膨張室５２４は、筒状部５１１の開口部５１１ａに取り付けられたノーズキャップ５１３に支持されている。ノーズキャップ５１３は、マフラ本体５１（筒状部５１１）の前方側端部（上流側端部）の内壁の形状に対応する外形形状を有すると共に、その中央に開口部５１３ａが形成されている。開口部５１３ａは、膨張室５２４の外形に対応する形状を有している。膨張室５２４は、この開口部５１３ａに挿入されることで、ノーズキャップ５１３に支持される。

【0032】

より具体的にいうと、膨張室５２４は、拡径部５２４ａと縮径部５２４ｂとの接合部でノーズキャップ５１３に支持されている。言い換えると、膨張室５２４は、その最も外径寸法が大きい部分でノーズキャップ５１３に支持されている。このように支持されることにより、膨張室５２４は、ノーズキャップ５１３を跨ぐように配置されている。この場合、拡径部５２４ａは、ノーズキャップ５１３の上流側の位置に配置され、縮径部５２４ｂは、ノーズキャップ５１３の下流側の位置に配置されている。すなわち、拡径部５２４ａは、マフラ本体５１の外側に配置され、縮径部５２４ｂは、筒状部５１１（より具体的には、空間５１１ｓ）内に配置されている。

【0033】

膨張室５２４を構成する縮径部５２４ｂの外周面には、複数の貫通孔で構成されるパンチング孔５２４ｃが形成されている。パンチング孔５２４ｃは、縮径部５２４ｂの外周面のうち、上流側の一定領域に等間隔で配置されている。パンチング孔５２４ｃは、膨張室５２４内の空間と、筒状部５１１内の空間５１１ｓとを連通させる。言い換えると、膨張室５２４内の空間と、筒状部５１１内の空間５１１ｓとは、パンチング孔５２４ｃを介して連通されている。

【0034】

管状部５２３は、その下流側端部近傍でセパレータ５１５に支持されている。管状部５２３は、その下流側端部近傍がセパレータ５１５の開口部５１５ｂに挿通されることにより、支持部５１５ｃに支持されている。管状部５２３の下流側端部は、セパレータ５１５に支持された状態で支持部５１５ｃの下流側端部と同一位置に配置される。すなわち、管状部５２３の下流側端部は、セパレータ５１５の平面部５１５ａよりも下流側（すなわち、カップ部５１２内の空間５１２ｓ側）に突出している。

【0035】

テールパイプ５２２は、円筒状の管状部５２５と、テーパ形状部（以下、「テーパ部」という）５２６とを有している。テーパ部５２６は、テールパイプ５２２における上流側の位置に配置されている。管状部５２５は、テーパ部５２６の下流側の位置に配置されている。テールパイプ５２２は、管状部５２５がカップ部５１２に支持されている。テールパイプ５２２は、管状部５２５がカップ部５１２の中央に形成された開口部５１２ｄに挿入されることによりカップ部５１２に支持される。

【0036】

テーパ部５２６は、上流側の内径よりも下流側の内径が小さく窄まるテーパ形状を有している。テーパ部５２６の上流側端部は、セパレータ５１５の平面部５１５ａの後面近傍に配置されている。テーパ部５２６の上流側端部には、管状部５２３に臨む開口部５２６ａが形成されている。テーパ部５２６の上流側端部は、管状部５２３の下流側端部の外径よりも大径の寸法を有している。テーパ部５２６の上流側端部は、側面視にて、管状部５２３の下流型端部を収容する位置に配置されている。すなわち、テーパ部５２６（テールパイプ５２２）は、側面視にて、管状部５２３（センターパイプ５２１）にオーバーラップして配置されている。なお、テーパ部５２６の開口部５２６ａは、カップ部５１２内の空間５１２ｓに連通している。

【0037】

テーパ部５２６の外周面には、複数の貫通孔で構成されるパンチング孔５２６ｂが形成されている。パンチング孔５２６ｂは、テーパ部５２６の外周面のうち、上流側の一定領域に等間隔で配置されている。パンチング孔５２６ｂは、テールパイプ５２２内の空間と、カップ部５１２内の空間５１２ｓとを連通させる。言い換えると、テールパイプ５２２内の空間と、カップ部５１２内の空間５１２ｓとは、パンチング孔５２６ｂを介して連通されている。

【0038】

ここで、マフラ本体５１内に形成される空間について説明する。マフラ本体５１内においては、センターパイプ５２１の膨張室５２４がノーズキャップ５１３に支持される一方、管状部５２３の下流側端部近傍がセパレータ５１５に支持されることで、筒状部５１１（内筒部５１４）内の空間５１１ｓは、膨張室５２４のパンチング孔５２４ｃを除き、密閉された状態となっている。一方、カップ部５１２のフランジ部５１２ｂがセパレータ５１５に密着するように筒状部５１１に接合される一方、テールパイプ５２２の管状部５２５がカップ部５１２に支持されることで、カップ部５１２内の空間５１２ｓは、テーパ部５２６の開口部５２６ａ及びパンチング孔５２６ｂを除き、密閉された状態となっている。

【0039】

以上の構成を有し、本実施の形態に係るマフラ５においては、マフラ本体５１及びパイプ５２内に形成される空間で膨張室が構成される。より具体的にいうと、センターパイプ５２１の膨張室５２４により、第１の膨張室が構成される。また、マフラ本体５１を構成する筒状部５１１（内筒部５１４）内の空間５１１ｓにより第２の膨張室が構成される。さらに、マフラ本体５１を構成するカップ部５１２内の空間５１２ｓにより第３の膨張室が構成される。

【0040】

次に、上記構成を有するマフラ５における排気ガスの流れについて、図３～図５を参照して説明する。図４は、図３Ｂにおけるセンターパイプ５２１の上流側端部周辺を拡大した斜視図である。図５は、図３Ｂにおけるテールパイプ５２２周辺を拡大した断面図及び斜視図である。なお、図４及び図５においては、排気ガスの流れを矢印にて示している。

【0041】

エンジン３内での燃焼により発生した排気ガスは、エキゾーストパイプ４を下流側に流れる（図１参照）。そして、エキゾーストパイプ４を下流側に流れた排気ガスは、まず、センターパイプ５２１の膨張室５２４に導入される（図４参照）。上述したように、膨張室５２４は、エキゾーストパイプ４の内径よりも拡径された内径を有している。このため、エキゾーストパイプ４から膨張室５２４に導入される際、排気ガスは、膨張室５２４の拡径部５２４ａに対応する位置で拡散されることで消音される（第１の消音効果）。

【0042】

膨張室５２４（拡径部５２４ａ）の内周面付近を流れる排気ガスは、下流側に向かうに連れて縮径部５２４ｂの内壁面に沿って流れ、センターパイプ５２１の中央付近に誘導される。このとき、排気ガスの一部は、縮径部５２４ｂに形成されたパンチング孔５２４ｃを介して筒状部５１１内の空間５１１ｓに流入する。これにより、排気ガスは、筒状部５１１内で拡散されることで消音される（第２の消音効果）。なお、パンチング孔５２４ｃを介して空間５１１ｓ内に入り込んだ排気ガスは、互いに共鳴し合うことによる消音効果も得ることができる。

【0043】

一方、膨張室５２４の中心付近を流れる排気ガスは、膨張室５２４（拡径部５２４ａ、縮径部５２４ｂ）の影響を受けることなく、膨張室５２４を通過して管状部５２３に流れ込む。すなわち、エキゾーストパイプ４から直接的に管状部５２３に流れ込む。このため、センターパイプ５２１に膨張室５２４を設ける場合であっても、排気ガスの圧力損失が大きくなるのを抑制することができ、エンジン出力の低下を防止することができる。

【0044】

さらに、センターパイプ５２１の管状部５２３を流れる排気ガスは、テールパイプ５２２内に流れ込む（図５参照）。管状部５２３の内周面付近を流れる排気ガスの一部は、テールパイプ５２２のテーパ部５２６に形成されたパンチング孔５２６ｂを介してカップ部５１２内の空間５１２ｓに流入する。これにより、排気ガスは、カップ部５１２内で拡散されることで消音される（第３の消音効果）。なお、パンチング孔５２６ｂを介して空間５１２ｓ内に入り込んだ排気ガスは、互いに共鳴し合うことによる消音効果も得ることができる。

【0045】

一方、テールパイプ５２２の中心付近を流れる排気ガスは、テーパ部５２６の影響を受けることなく、テーパ部５２６を通過してテールパイプ５２２（マフラ５）外に流れ出る。すなわち、センターパイプ５２１から直接的にマフラ５の外部に流れ出る。このため、テールパイプ５２２にテーパ部５２６を設ける場合であっても、排気ガスの圧力損失が大きくなるのを抑制することができ、エンジン出力の低下を防止することができる。

【0046】

また、テールパイプ５２２において、テーパ部５２６の上流側の開口部５２６ａは、カップ部５１２内の空間５１２ｓに連通している。パンチング孔５２６ｂを介して空間５１２ｓ内に流入した排気ガスは、開口部５２６ａを介してテーパ部５２６内に流れ込む。これにより、カップ部５１２内の空間５１２ｓに排出された排気ガスをテールパイプ５２２内に流動させることができるので、空間５１２ｓ内で排気ガスを循環させることができ、排気効率を更に向上することができる。

【0047】

このように本実施の形態に係る消音器構造によれば、マフラ本体５１を構成する筒状部５１１の下流側に配置されるカップ部５１２内のテールパイプ５２２周辺の空間５１２ｓで膨張室が形成されている。これにより、従来、テールパイプ５２２周辺の外観性能を向上するために配置されているテールカバー５ａ内の空間を活用して排気ガスを拡散することができる。この結果、膨張室（空間５１２ｓ）による消音効果を確保しながら、簡単且つコンパクトな構造を実現することができる。

【0048】

特に、本実施の形態に係る消音器構造においては、筒状部５１１内の空間５１１ｓとカップ部５１２内の空間５１２ｓとを仕切るセパレータ５１５の下流側に膨張室（カップ部５１２内の空間５１２ｓ）が形成されている。これにより、テールパイプ５２２周辺の密閉された空間を膨張室として有効に活用することができるので、消音効果を向上することができる。

【0049】

また、テールパイプ５２２の上流側部分にはテーパ部５２６が形成されており、センターパイプ５２１の管状部５２３の下流側端部（開口部）は、側面視にて、テーパ部５２６に収容されている。これにより、センターパイプ５２１を流れる排気ガスをテールパイプ５２２内に効果的に送り込むことができる。この結果、テールパイプ５２２周辺に膨張室を設け、排気ガスを拡散する構成であっても、排気効率が低下するのを抑制することができる。

【0050】

特に、テーパ部５２６の外周面には、複数の貫通孔から構成されるパンチング孔５２６ｂが形成されている。これにより、センターパイプ５２１からテールパイプ５２２に送り込まれた排気ガスの一部を、パンチング孔５２６ｂを介して膨張室（カップ部５１２内の空間５１２ｓ）に流出させることで拡散できるので、さらに消音性能を向上することができる。

【0051】

また、テーパ部５２６の上流側の開口部５２６ａは、カップ部５１２内の空間５１２ｓ（膨張室）に連通している。これにより、カップ部５１２内の空間５１２ｓに排出された排気ガスがテールパイプ５２２内に戻るように流動させることができるので、膨張室内で排気ガスを循環させることができ、排気効率を更に向上することができる。

【0052】

さらに、カップ部５１２は、その下流側端部がテールパイプ５２２の下流側端部近傍に接合されている。このようにカップ部５１２の下流側端部をテールパイプ５２２の下流側端部近傍に接続させることにより、膨張室（カップ部５１２内の空間５１２ｓ）内の容積を大きく確保することができるので、排気ガスの拡散に伴う消音効果を向上することができる。

【0053】

また、本実施の形態に係る消音器構造においては、マフラ本体５１に挿入されるセンターパイプ５２１の一部に膨張室５２４が設けられると共に、マフラ本体５１内に配置された膨張室５２４の外周面にパンチング孔５２４ｃが形成されることから、エキゾーストパイプ４から流入した排気ガスを膨張室５２４で拡散することができ、消音効果を得ることができる。また、膨張室５２４のパンチング孔５２４ｃを介して流出させることで排気ガスをマフラ本体５１（筒状部５１１）内で拡散することができるので、消音効果を得ることができる。

【0054】

特に、膨張室５２４には、上流側の位置に拡径部５２４ａが設けられ、下流側の位置に縮径部５２４ｂが設けられている。そして、パンチング孔５２４ｃは、縮径部５２４ｂの外周面に形成されている。これにより、膨張室５２４に導入された排気ガスは、膨張室５２４の上流側で拡散される一方、下流側でパイプ５２の中心側に誘導され、下流側に流動する。さらに、膨張室５２４の中央付近を流れる排気ガスは、膨張室５２４の影響を受けることなく直接的にパイプ５２に流れ込む。これにより、パイプ５２内の限られた範囲内で、膨張室５２４による消音効果を確保しつつ、圧力損失の拡大を抑制でき、排気効率を向上することができる。

【0055】

また、膨張室５２４は、マフラ本体５１の上流側端部を構成するノーズキャップ５１３を跨ぐように配置されている。そして、膨張室５２４を構成する拡径部５２４ａは、マフラ本体５１の外側に配置されている。このようにパンチング孔５２４ｃが形成されず、マフラ本体５１に連通しない拡径部５２４ａがマフラ本体５１の外側に配置されることから、外観上目立つマフラ本体５１の長さを短縮することができる。また、マフラ本体５１の上流側に拡径部５２４ａが配置されることから、上流側に配置されるエキゾーストパイプ４から大径のマフラ本体５１に至るまでの外観上の段差を小さく抑えることができる。この結果、コンパクトでスマートな外観なマフラ５を実現することができる。

【0056】

なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。

【0057】

例えば、上記実施の形態において、カップ部５１２は、筒状部５１１の外縁部よりも内側の位置（すなわち、筒状部５１１の内周面からフランジ部５１２ｂだけ内側に入り込んだ位置）から下流側（後方側）に縮径しながら延びる場合について説明している。しかしながら、カップ部５１２の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、カップ部５１２は、筒状部５１１の外縁部分から下流側に縮径しながら延びる構成としてもよい。この場合には、カップ部５１２内の空間５１２ｓで構成される膨張室（カップ部５１２内の空間５１２ｓ）内の容積を大きく確保することができるので、排気ガスの拡散に伴う消音効果を向上することができる。

【0058】

また、上記実施の形態においては、マフラ本体５１が、筒状部５１１内の空間５１１ｓとカップ部５１２内の空間５１２ｓとを仕切るセパレータ５１５を有する場合について説明している。しかしながら、マフラ本体５１の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、テールパイプ５２２周辺の空間を利用することを前提として、セパレータ５１５は必ずしも必要ない。このように変更する場合においても、膨張室による消音効果を確保しながら、簡単且つコンパクトな構造を実現することができる。なお、この場合、センターパイプ５２１の管状部５２３は、セパレータ５１５以外の構成により支持される。例えば、テールパイプ５２２がセンターパイプ５２１の下流側端部に接合されるようにしてもよい。

【0059】

さらに、上記実施の形態においては、テールパイプ５２２の上流側端部に、テーパ部５２６が形成される場合について説明している。また、テーパ部５２６の外周面には、パンチング孔５２６ｂが形成される場合について説明している。さらに、テーパ部５２６の上流側の開口部５２６ａが、カップ部５１２内の空間５１２ｓに連通する場合について説明している。しかしながら、テールパイプ５２２の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。センターパイプ５２１からの排気ガスを、カップ部５１２内の空間５１２ｓに流出させることを前提として、テールパイプ５２２は任意の構成を採用することができる。

【0060】

さらに、上記実施の形態においては、カップ部５１２の下流側端部がテールパイプ５２２の下流側端部近傍に接続される場合について説明している。しかしながら、カップ部５１２の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、カップ部５１２は、内部の空間５１２ｓが膨張室として機能し得る容積が確保されることを前提として任意の構成を採用することができる。

【産業上の利用可能性】

【0061】

以上説明したように、本発明は、消音効果を確保しながら、簡単且つコンパクトな構造を実現することができるという効果を有し、特に、自動二輪車に代表される鞍乗型車両の消音器に有用である。

【符号の説明】

【0062】

１ ：自動二輪車
２ ：車体フレーム
３ ：エンジン
４ ：エキゾーストパイプ
５ ：マフラ
５ａ ：テールカバー
５１ ：マフラ本体
５１１ ：筒状部
５１１ａ ：開口部
５１１ｂ ：開口部
５１１ｓ ：空間
５１２ ：カップ部
５１２ａ ：ドーム形状部（ドーム部）
５１２ｂ ：フランジ部
５１２ｃ ：接合面部
５１２ｄ ：開口部
５１２ｅ ：支持部
５１２ｓ ：空間
５１３ ：ノーズキャップ
５１３ａ ：開口部
５１４ ：内筒部
５１５ ：セパレータ
５１５ａ ：平面部
５１５ｂ ：開口部
５１５ｃ ：支持部
５１５ｄ ：支持部
５２ ：パイプ
５２１ ：センターパイプ
５２２ ：テールパイプ
５２３ ：管状部
５２４ ：膨張室
５２４ａ ：拡径部
５２４ｂ ：縮径部
５２４ｃ ：パンチング孔
５２５ ：管状部
５２６ ：テーパ部
５２６ａ ：開口部
５２６ｂ ：パンチング孔

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】