(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】多層塗装金属板及び造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20221012BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B32B15/08 G
C23C26/00 E
(21)【出願番号】P 2018209335
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】諸隈 浩志
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-193154(JP,A)
【文献】実開平01-089164(JP,U)
【文献】特開平09-095040(JP,A)
【文献】特開2018-154057(JP,A)
【文献】特開2018-043446(JP,A)
【文献】特開2011-201268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B41M 1/00-9/04
C23C 24/00-30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の一方の面上に設けられ、所定の温度以上で加熱されると膨張するように形成された第1の膨張層と、
前記第1の膨張層上に設けられ、吸収した光を熱に変換して放出する第1の光熱変換層と、
前記第1の光熱変換層上に設けられ、前記第1の膨張層が形成された後に形成された第2の膨張層と、
前記第2の膨張層上に設けられた、第2の光熱変換層と、
を備え、
前記第2の膨張層の厚さは、前記第2の光熱変換層により放出された熱が前記第1の膨張層の膨張開始温度よりも高い温度であった際に、前記放出された熱が前記第1の膨張層に伝わらないような厚さである、
ことを特徴とする多層塗装金属板。
【請求項2】
前記第2の膨張層は、前記第1の膨張層と比較して膨張開始温度が低い、
ことを特徴とする請求項1に記載の多層塗装金属板。
【請求項3】
金属板上に、加熱されることにより膨張する第1の膨張層を形成する工程と、
前記第1の膨張層上に、光を熱に変換する第1の光熱変換層を形成する工程と、
前記第1の光熱変換層に向けて光を照射することにより、前記第1の光熱変換層が形成されている領域に対応する前記第1の膨張層を膨張させて第1の中間体を形成する工程と、
前記第1の中間体を形成した後に、前記第1の光熱変換層上に、加熱されることにより膨張する第2の膨張層を形成する工程と、
前記第2の膨張層上に、光を熱に変換する第2の光熱変換層を形成する工程と、
前記第2の光熱変換層に向けて光を照射することにより、前記第2の光熱変換層が形成されている領域に対応する前記第2の膨張層を膨張させて第2の中間体を形成する工程と、
を有する、ことを特徴とする造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層塗装金属板及び造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収した熱量に応じて発泡し膨張する熱膨張性マイクロカプセルを含む塗料を金属板に塗装して、加熱することにより、質感に優れた凹凸模様を金属板に与える方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、凹凸が形成された金属板の品質を長期間維持させることが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、金属板上に凹凸を容易に形成しつつも、この凹凸が形成された金属板の品質を長期間維持させることができる多層塗装金属板及び造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る多層塗装金属板は、金属板の一方の面上に設けられ、所定の温度以上で加熱されると膨張するように形成された第1の膨張層と、前記第1の膨張層上に設けられ、吸収した光を熱に変換して放出する第1の光熱変換層と、前記第1の光熱変換層上に設けられ、前記第1の膨張層が形成された後に形成された第2の膨張層と、前記第2の膨張層上に設けられた、第2の光熱変換層と、を備え、前記第2の膨張層の厚さは、前記第2の光熱変換層により放出された熱が前記第1の膨張層の膨張開始温度よりも高い温度であった際に、前記放出された熱が前記第1の膨張層に伝わらないような厚さである、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る造形物の製造方法は、金属板上に、加熱されることにより膨張する第1の膨張層を形成する工程と、前記第1の膨張層上に、光を熱に変換する第1の光熱変換層を形成する工程と、前記第1の光熱変換層に向けて光を照射することにより、前記第1の光熱変換層が形成されている領域に対応する前記第1の膨張層を膨張させて第1の中間体を形成する工程と、前記第1の中間体を形成した後に、前記第1の光熱変換層上に、加熱されることにより膨張する第2の膨張層を形成する工程と、前記第2の膨張層上に、光を熱に変換する第2の光熱変換層を形成する工程と、前記第2の光熱変換層に向けて光を照射することにより、前記第2の光熱変換層が形成されている領域に対応する前記第2の膨張層を膨張させて第2の中間体を形成する工程と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、金属板上に凹凸を容易に形成しつつも、この凹凸が形成された金属板の品質を長期間維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法のフローチャート。
【
図3】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法の説明図であり、金属板に第1の膨張層を形成した状態の断面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法の説明図であり、第1の膨張層に第1のインク受容層を形成した状態の断面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法の説明図であり、第1のインク受容層に第1の光熱変換層を形成した状態の断面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法の説明図であり、第1の光熱変換層に光を照射し、第1の中間体を形成した状態の断面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法の説明図であり、第1の中間体に第2の膨張層を形成した状態の断面図。
【
図8】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法の説明図であり、第2の膨張層に第2のインク受容層を形成した状態の断面図。
【
図9】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法の説明図であり、第2のインク受容層に第2の光熱変換層を形成した状態の断面図。
【
図10】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法の説明図であり、第2の光熱変換層に光を照射し、第2の中間体を形成した状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係る多層塗装金属板10の構成について、
図1Aと
図1Bを用いて説明する。
図1Aは、本実施形態に係る多層塗装金属板10の外観図で、
図1Bはa-a線における断面図である。
図1Bに示すように、本実施形態に係る多層塗装金属板10は、金属板20、第1の膨張層30、第1のインク受容層40、第1の光熱変換層50、第2の膨張層60、第2のインク受容層70、第2の光熱変換層80、カラー層90を備える。
【0013】
金属板20は、鋼板、非鉄金属の金属板及びこれらに単一金属または合金のめっきを施しためっき金属板等を用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の非鉄金属板、ステンレス鋼板、熱延鋼板、冷延鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)等が挙げられ、特に限定されない。金属板20には、表面の汚れを除去して塗料の密着性を高めるために、予めアルカリ脱脂や酸洗い等の脱脂処理を行うことが好ましい。また、耐食性等を高めるため、脱脂処理した後に、クロメート処理、リン酸塩皮膜処理や黒染め処理などの化成皮膜処理が施されていてもよい。
【0014】
第1の膨張層30は、金属板20の一方の面(
図1Bに示す上面)上に形成される。第1の膨張層30は、吸収した熱の量に応じて発泡膨張する層であって、バインダとして用いる樹脂の溶液あるいはエマルジョン中に複数の熱膨張性マイクロカプセルが分散配置されている。バインダとして用いる樹脂は、熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張したときに、同時に熱軟化するよう、例えば、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂を選択するとよい。また、熱膨張性マイクロカプセルは、例えば、プロパンやブタン、ペンタン等の低沸点の気化性物質を、熱可塑性樹脂からなる外殻内に封入したものである。外殻は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、あるいは、それらの共重合体等から選択される熱可塑性樹脂から形成される。
【0015】
第1のインク受容層40は、第1の膨張層30上に形成される、インクを吸収して受容する層である。第1のインク受容層40は、インクジェット方式のプリンタに用いられ印刷用のインクやレーザー方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペンや万年筆のインク、鉛筆の黒鉛などを受容し、少なくともその表面に定着させるために好適な材料からなる。一例として、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂によって形成され、形成皮膜が透明で光沢がある膨潤タイプを用いることができる。あるいは、多孔質シリカやアルミナ等の無機顔料によって形成され、形成皮膜が白くなるマットタイプであってもよい。例えば、形成被膜の透明性や光沢性を必要とする場合は膨潤タイプを選択するとよい。また、印字面の高耐水性やインク速乾性、隠蔽性を必要とする場合はマットタイプを選択するとよく、特に多孔質シリカを用いた場合、多孔質シリカは吸湿性に優れており、空気中の水分を吸収するため、例えば、金属板20にめっき処理や化成皮膜処理等が施されていなくても、金属板20の腐食を防止することができる。つまり、吸湿性を利用して金属板20の腐食を防止するための腐食防止層としても用いることが可能となり、製造コストの低減に寄与することができる。
【0016】
第1の光熱変換層50は、第1のインク受容層40上に形成される、特定の波長域の光、例えば近赤外線(波長750nm~1400nm)を吸収して、熱に変換して放出する層である。例えば、カーボンブラックを含有する印刷用の黒色(K)インクからなる。光が照射されたとき、光熱変換層は、濃淡、つまりカーボンブラックの濃度に応じて発熱温度が変化し、この温度に応じて第1の膨張層30を膨張させて、後述するように、第1の中間体11を形成する。なお、カーボンブラックの濃度の高い、黒色インクのより濃い領域ほど所定量の光を照射されたときの発熱温度が高く、その結果、この領域における第1の膨張層30がより大きく膨張して高い凸状が得られる。
【0017】
また、第1の光熱変換層50として、例えば、セシウム酸化タングステンや六ホウ化ランタン(LaB6)等の、特に近赤外領域で高い光の吸収率(吸光率)を有し、可視光領域において光の吸光率が低い、無色透明の無機材料を用いてもよい。光熱変換層の色味を抑えて、カラー画像への影響を低減したい場合、選択するとよい。
【0018】
第2の膨張層60は、第1の中間体11の上に形成される。ここで、第1の中間体11とは、後述するように、金属板20上の第1の膨張層30が膨張することにより形成される凹凸を有する造形物を便宜的に表現したものである。
【0019】
第2の膨張層60は、第1の膨張層30と同様に、吸収した熱の量に応じて膨張する層であって、バインダ中に熱膨張性マイクロカプセルが分散配置されている。第2の膨張層60の厚さは、第2の光熱変換層80によって放出された熱が第1の膨張層30まで伝わらないような厚さであることが好ましい。例えば、第1の膨張層30の膨張開始温度より高い熱が第2の光熱変換層80で発生したとしても、第1の膨張層30までその熱が伝わらなければ、第1の膨張層30の変形を防ぐことが可能となるためである。
【0020】
さらに、第2の膨張層60に用いる熱膨張性マイクロカプセルは、第1の膨張層30に用いる熱膨張性マイクロカプセルと比較して、膨張開始温度が低いことが好ましい。第2の膨張層60を加熱し膨張させる際に、第1の膨張層30が膨張開始する温度より低い温度で加熱することが可能となるため、第1の膨張層30の変形を防いで、第2の膨張層60のみを膨張させることができる。
【0021】
第2のインク受容層70は、第2の膨張層60上に形成される。第2のインク受容層70は、第1のインク受容層40と同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。同じ材料を用いた場合、原料が共通化され、製造コスト低減に寄与することができる。そして、第1のインク受容層40と同様に、第2のインク受容層70の材料として多孔質シリカを選択することにより、腐食防止層としても用いることができる。また、第1のインク受容層40と第2のインク受容層70それぞれに多孔質シリカを用いた場合、吸湿性をさらに高めることができ、金属板20の腐食をさらに防止することが可能となる。
【0022】
第2の光熱変換層80は、第2のインク受容層70上に形成され、第1の光熱変換層50と同様の材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。また、第1の光熱変換層50が形成されている領域の上に、第2の光熱変換層80を形成してもよいし、第1の光熱変換層50が形成されていない領域の上に、第2の光熱変換層80を形成してもよい。
【0023】
カラー層90は、第2の中間体上12に形成される。ここで、第2の中間体12とは、後述するように、第1の中間体11上の第2の膨張層60が膨張することにより形成される凹凸を有する造形物を便宜的に表現したものである。
【0024】
カラー層90は、例えば、印刷用のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色インク等からなる。また、使用する光熱変換層の色味によって、カラー画像がくすむことがあるため、白色インク等で下塗りを行ってから、カラー画像を形成してもよい。
【0025】
次に、本実施形態に係る造形物の製造方法について、
図2に示すフローチャート及び
図3-
図10に示す断面図に基づいて説明する。まず、金属板20と第1の膨張インクとを準備し、
図3に示すように、第1の膨張インクを金属板20の一面に、例えば、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ、フローコータ、ハケ、ブレードコーター、ダイコーター等の方式による公知の塗布装置を用いて塗布することにより第1の膨張層30を形成する(ステップS1)。なお、塗布する際は、必ずしも、金属板20の一面全体に限定するものではなく、金属板20の一部であってもよい。
【0026】
次に、多孔質シリカ、アルミナ及びポリビニルアルコール等から選択される材料を溶媒に混合、分散させたスラリーを、例えば、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ、フローコータ、ハケ、ブレードコーター、ダイコーター等の方式による公知の塗布装置を用いて、第1の膨張層30上に塗布する。そして、
図4に示すように、第1のインク受容層40を形成する(ステップS2)。
【0027】
次に、
図5に示すように、第1のインク受容層40の上面のうち、第1の膨張層30を膨張させて所望の凹凸を形成しようとする領域に、第1の光熱変換層50を形成する(ステップS3)。なお、第1の光熱変換層50は、光熱変換特性を有する光熱変換材料として、例えば、カーボンブラックを含む黒色インクを用いて、例えば、インクジェット方式により印刷することにより形成する。
【0028】
続いて、第1の膨張層30を膨張させるために、例えば、ハロゲンランプ等の光照射装置を用いて、近赤外線を含む光を照射する。なお、黒色インクの濃度によって膨張する高さが異なり、濃度が高いほど高く膨張する。そして、
図6に示すように、第1の光熱変換層50が形成された領域の第1の膨張層30を膨張させ、第1の中間体11を形成する(ステップS4)。
【0029】
次に、
図7に示すように、第2の膨張インクを第1の中間体11上に、例えば、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ、フローコータ、ハケ、ブレードコーター、ダイコーター等の方式による公知の塗布装置を用いて塗布することにより第2の膨張層60を形成する(ステップS5)。なお、塗布する際は、必ずしも、第1の中間体11の一面全体に限定するものではなく、第1の中間体11の一部であってもよい。
【0030】
次に、第1のインク受容層40を形成する場合と同様に、例えば、多孔質シリカ、アルミナ及びポリビニルアルコール等から選択される材料を溶媒に混合、分散させたスラリーを、例えば、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ、フローコータ、ハケ、ブレードコーター、ダイコーター等の方式による公知の塗布装置を用いて、第2の膨張層60上に塗布することにより、
図8に示すように、第2のインク受容層70を形成する(ステップS6)。
【0031】
次に、
図9に示すように、第2のインク受容層70の上面のうち、第2の膨張層60を膨張させ、所望の凹凸を形成しようとする領域に、第2の光熱変換層80を形成する(ステップS7)。なお、第2の光熱変換層80は、光熱変換特性を有する光熱変換材料として、例えば、カーボンブラックを含む黒色インクを用いて、例えば、インクジェット方式により印刷することにより形成する。
【0032】
続いて、第2の膨張層60を膨張させるために、例えば、ハロゲンランプ等の光照射装置を用いて、近赤外線を含む光を照射する(ステップS8)。第2の光熱変換層80から放出される熱が、第2の膨張層60の膨張開始温度より高く、第1の膨張層30の膨張開始温度より低い温度となるように光照射量及び光照射時間等を設定する。そして、
図10に示すように、第2の光熱変換層80が形成された領域の第2の膨張層60を膨張させ、第2の中間体12を形成する。
【0033】
続いて、
図1Bに示すように、所望のカラー画像を第2の中間体12上に印刷することによりカラー層90を形成し(ステップS9)、カラー画像を有する多層塗装金属板10を形成する。
【0034】
本実施形態に係る多層塗装金属板及び造形物の製造方法によれば、金属板上に凹凸を容易に形成しつつも、この凹凸が形成された金属板の品質を長期間維持させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、例えば多孔質シリカ等の優れた吸湿性を有する材料を第1のインク受容層40と第2のインク受容層70それぞれに用いることにより、腐食防止層として金属板20の腐食をさらに防止することができる。
【0036】
さらに、本実施形態においては、金属板20上に形成する膨張層が1層でも2層以上であってもよい。凹凸の表現をさらに豊かにしたい場合は、膨張層を2層以上にするとよい。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。
【0038】
また、上記実施形態では、例えば
図1Bに示されているように、第1の膨張層30の凹凸は、第2の膨張層60の凹凸と比較して高くて大きい構成を挙げているが、これに限られない。所望する凹凸に応じて、各膨張層の凹凸を制御することも可能である。
【0039】
なお、上記実施形態において用いられている図は、上記実施形態を説明するためのものである。従って、各層の厚みが、
図1Bに示されているような比率で形成されると限定して解釈されることを意図するものではない。例えば、
図1Bでは金属板20は第1の膨張層30より厚く図示されているが、金属板20が第1の膨張層30と同じ厚みに形成される構成、又は第1の膨張層30より薄く形成される構成を排除するものではない。他の層についても同様である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0041】
[付記1]
金属板の一方の面上に設けられ、吸湿により前記金属板の腐食を防止するための腐食防止層と、
前記腐食防止層上にインク材料によって設けられ、吸収した光を熱に変換する光熱変換層と、
前記金属板と前記腐食防止層との間に設けられ、前記光熱変換層により光から変換された熱で膨張するように形成された膨張層と、
を備え、
前記腐食防止層は、前記インク材料を吸収して受容するインク受容層として形成されている、
ことを特徴とする多層塗装金属板。
[付記2]
前記膨張層は、前記金属板の一方の面上の少なくとも一部に設けられる、
ことを特徴とする付記1に記載の多層塗装金属板。
[付記3]
前記光熱変換層は、前記インク受容層上の少なくとも一部に設けられる、
ことを特徴とする付記1に記載の多層塗装金属板。
[付記4]
金属板の一方の面上に設けられ、所定の温度以上で加熱されると膨張するように形成された第1の膨張層と、
前記第1の膨張層上に設けられ、吸収した光を熱に変換して放出する第1の光熱変換層と、
前記第1の光熱変換層上に設けられ、前記第1の膨張層が形成された後に形成された第2の膨張層と、
前記第2の膨張層上に設けられた、第2の光熱変換層と、
を備え、
前記第2の膨張層の厚さは、前記第2の光熱変換層により放出された熱が前記第1の膨張層の膨張開始温度よりも高い温度であった際に、前記放出された熱が前記第1の膨張層に伝わらないような厚さである、
ことを特徴とする多層塗装金属板。
[付記5]
前記第2の膨張層は、前記第1の膨張層と比較して膨張開始温度が低い、
ことを特徴とする付記4に記載の多層塗装金属板。
[付記6]
金属板上に、加熱されることにより膨張する第1の膨張層を形成する工程と、
前記第1の膨張層上に、光を熱に変換する第1の光熱変換層を形成する工程と、
前記第1の光熱変換層に向けて光を照射することにより、前記第1の光熱変換層が形成されている領域に対応する前記第1の膨張層を膨張させて第1の中間体を形成する工程と、
前記第1の中間体上に、加熱されることにより膨張する第2の膨張層を形成する工程と、
前記第2の膨張層上に、光を熱に変換する第2の光熱変換層を形成する工程と、
前記第2の光熱変換層に向けて光を照射することにより、前記第2の光熱変換層が形成されている領域に対応する前記第2の膨張層を膨張させて第2の中間体を形成する工程と、
を有する、
ことを特徴とする造形物の製造方法。
【符号の説明】
【0042】
10 カラー画像を有する多層塗装金属板
11 第1の中間体
12 第2の中間体
20 金属板
30 第1の膨張層
40 第1のインク受容層
50 第1の光熱変換層
60 第2の膨張層
70 第2のインク受容層
80 第2の光熱変換層
90 カラー層