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特許7155914黒色低反射膜形成用組成物、及び黒色低反射部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】黒色低反射膜形成用組成物、及び黒色低反射部材
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20221012BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20221012BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221012BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221012BHJP
【FI】
C09D201/00
C09B67/20 L
C09D7/61
C09D7/63
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018214779
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020083916
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 直宏
(72)【発明者】
【氏名】日水 秋生
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101615(JP,A)
【文献】特開2018-150218(JP,A)
【文献】特許第6274343(JP,B1)
【文献】特開2005-120223(JP,A)
【文献】特開2013-177502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09C 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙率が75%以上の多孔質黒色顔料(A)、
有機色素誘導体(b1)(ただしトリアジン構造を有するものを除く)、及びトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤(B)、
並びに、有機溶剤を含む、黒色低反射膜形成用組成物。
【請求項2】
空隙率が75%以上の多孔質黒色顔料(A)、
酸性官能基を有する有機色素誘導体(b1)(ただしトリアジン構造を有するものを除く)、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤(B)、
並びに、有機溶剤を含む、請求項1に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【請求項3】
前記酸性官能基が、SOM、COM、又はP(O)(OM)であり、
前記Mが、1~3価のカチオンの一当量である、請求項2に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【請求項4】
前記分散剤(B)が、前記酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)を含む、請求項2又は3に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【請求項5】
前記酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)が、水酸基が2個直接結合したトリアジン構造、又は、NH結合を介してベンズイミダゾロン基が結合したトリアジン構造、のいずれかを有する、請求項2~4いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【請求項6】
前記分散剤(B)の含有量が、前記多孔質黒色顔料(A)及び前記分散剤(B)の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下である、請求項1~5いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【請求項7】
さらにバインダー成分(C)を含む、請求項1~6いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【請求項8】
前記多孔質黒色顔料(A)及び前記バインダー成分(C)の質量比((A):(C))が、60:40~95:5である、請求項1~7いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【請求項9】
前記多孔質黒色顔料(A)のBET比表面積が、600m/g以上である、請求項1~8いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【請求項10】
請求項1~9いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物を用いた黒色低反射膜が基材上に形成された黒色低反射部材であって、
該黒色低反射膜が、光波長域400nm~700nmにおける正反射率の最大値が0.4%以下、且つ散乱反射率の最大値が2%以下である、黒色低反射部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色低反射膜形成用組成物及び黒色低反射部材に関する。
【背景技術】
【0002】
低反射膜を得るためには、有機微粒子や無機微粒子を用いて膜の表面に凹凸を形成し、マットにする技術が知られている。しかし、この手法では正反射率を小さくすることは可能であるが、凹凸による散乱が強く、散乱反射率が大きくなる。
別の手法として、低屈折率の塗膜を別途最表面に配置する手法がある。例えば、特許文献1には、特定の高導電性カーボンブラックを分散させた着色低抵抗膜形成用塗布液から形成される着色低抵抗膜上に、前記着色低抵抗膜より低屈折率の膜が形成されてなる多層膜が開示されている(請求項1、6~8)。そして、低屈折率膜を構成する物質としては、Si化合物が屈折率、膜強度の点から好ましい旨、開示される。しかし、有機物や無機物の屈折率は1.3台のレベルが限界なので、空気の屈折率1.0とは乖離が大きく、反射率の低減レベルは不十分である。
また、特許文献1の発明は、良好な塗膜状態を得るために分散剤としてポリアクリレート等の樹脂成分を含むが、樹脂成分は可視光領域における吸収がほとんどなく可視光線を良く反射するため、低反射膜を形成するには阻害要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-054502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち本発明は、空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料(A)と、有機色素誘導体及びトリアジン誘導体からなる群から選ばれる特定の分散剤(B)を含むことで、低い正反射率と低い散乱反射率とを有し、優れた低反射性を達成する黒色低反射膜形成用組成物、及び該組成物から得られる優れた低反射性を示す黒色低反射部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明に関する。
【0006】
〔1〕 空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料(A)、有機色素誘導体(b1)(ただしトリアジン構造を有するものを除く)、及びトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤(B)、並びに、有機溶剤を含む、黒色低反射膜形成用組成物。
【0007】
〔2〕 空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料(A)、酸性官能基を有する有機色素誘導体(b1)(ただしトリアジン構造を有するものを除く)、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤(B)、並びに、有機溶剤を含む、〔1〕に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【0008】
〔3〕 前記酸性官能基が、SOM、COM、又はP(O)(OM)であり、前記Mが、1~3価のカチオンの一当量である、〔2〕に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【0009】
〔4〕 前記分散剤(B)が、前記酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)を含む、〔2〕又は〔3〕に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【0010】
〔5〕 前記酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)が、水酸基が2個直接結合したトリアジン構造、又は、NH結合を介してベンズイミダゾロン基が結合したトリアジン構造、のいずれかを有する、〔2〕~〔4〕いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【0011】
〔6〕 前記分散剤(B)の含有量が、前記多孔質黒色顔料(A)及び前記分散剤(B)の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下である、〔1〕~〔5〕いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【0012】
〔7〕 さらにバインダー成分(C)を含む、〔1〕~〔6〕いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【0013】
〔8〕 前記多孔質黒色顔料(A)及び前記バインダー成分(C)の質量比((A):(C))が、60:40~95:5である、〔1〕~〔7〕いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【0014】
〔9〕 前記多孔質黒色顔料(A)のBET比表面積が、600m/g以上である、〔1〕~〔8〕いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
【0015】
〔10〕 〔1〕~〔9〕いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物を用いた黒色低反射膜が基材上に形成された黒色低反射部材であって、該黒色低反射膜が、光波長域400nm~700nmにおける正反射率の最大値が0.4%以下、且つ散乱反射率の最大値が2%以下である、黒色低反射部材。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、低い正反射率と低い散乱反射率とを有し、優れた低反射性を達成する黒色低反射膜形成用組成物、及び該組成物から得られる優れた低反射性を示す黒色低反射部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<黒色低反射膜形成用組成物>
本発明の黒色低反射膜形成用組成物は、空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料(A)、及び特定の分散剤(B)を含むことを特徴とする。
多孔質材料の屈折率は、空隙率が高いほど空気の屈折率に近づく。即ち、空隙率の高い多孔質材料で形成された塗膜の屈折率は空気の屈折率である1に近づく。通常、空気層から塗膜に入射する光は、空気層と塗膜との屈折率差により反射されるが、前述のとおり、空隙率の高い多孔質材料を含むことで塗膜の屈折率を空気層に近くすることで、光の反射界面が極小化され、反射率は小さくなる。また、多孔質の黒色顔料を使用することで、入射した光は、塗膜中の多孔質黒色顔料が光を効果的に吸収し、入射された光が外部に出ない構造をつくることが可能となる。また、特定の分散剤(B)を含むことで分散性を向上させるだけでなく、可視光領域の入射光を吸収して反射率を更に低下させ、優れた低反射性を発揮する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
<空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料(A)>
本発明の多孔質黒色顔料(A)は、空隙率が50%以上であれば特に制限はないが、カーボンブラック、黒鉛、酸化物系黒色顔料などや、カーボンブラック、黒鉛、酸化物系黒色顔料を骨格としたエアロゲルのような形態を持つ多孔質体を使用でき、これらは単独でも混合して用いても良いが、特に多孔質カーボンブラックを単独で使用することが好ましい。また、空隙率が高くなるほど、屈折率は空気層に近づくため、前述した低反射性発現の原理により、空隙率は50%以上であることが必要であり、好ましくは75%以上である。多孔質ではない黒色顔料を併用することも可能ではあるが、低反射性の発現の観点からは多孔質黒色顔料100質量部に対し、50質量部以下が好ましい。使用できる多孔質ではない黒色顔料は、カーボンブラック、黒鉛、酸化物系黒色顔料等が挙げられるが、黒色であれば特に制限はない。
【0019】
空隙率は既知の方法から算出することができ、例えば、物理ガス吸着法、tプロット、BJH法などによって算出することができる。また、多孔質黒色顔料の比表面積は、600m/g以上であることが好ましく、より好ましくは1200m/g以上である。比表面積が高いほど多孔質黒色顔料の表面側に、微細な凹凸が形成されており、さらにそこには多くの空気層が含むため、低反射性の観点から望ましい。
【0020】
<分散剤(B)>
本発明の分散剤(B)は、有機色素誘導体(b1)、及びトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、制限なく従来公知の有機色素誘導体を用いることができ、2種以上を併用してもよい。なお、有機色素誘導体であって、さらにトリアジン構造を有するものについては、トリアジン誘導体とする。
【0021】
有機色素誘導体(b1)の有機色素としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チアジンインジゴ系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ベンゾイソインドール等のインドール系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ナフトール系色素、スレン系色素、金属錯体系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、等が挙げられる。
【0022】
有機色素誘導体(b1)、及びトリアジン誘導体(b2)は、各々独立して、酸性官能基、及び塩基性官能基からなる群から選ばれる少なくも1種の官能基を有し、中でも、酸性官能基を有していることが好ましい。
酸性官能基としては、後述に示すとおり、SOM、COM、又はP(O)(OM)であることが好ましく、より好ましくは、SOM、又はCOMであり、特に好ましくはCOMである。Mは、1~3価のカチオンの一当量を表し、中でも金属カチオン又は4級アンモニウムカチオンであることが好ましい。
以下に、酸性官基、及び塩基性官能基からなる群から選ばれる少なくも1種の官能基を有する有機色素誘導体(b1)、及びトリアジン誘導体(b2)について、詳細を述べる。
【0023】
[酸性官能基を有する有機色素誘導体(b1)]
酸性官能基を有する有機色素誘導体の中でも好ましくは、一般式(1)で表される誘導体である。
一般式(1)
【化1】
【0024】
[一般式(1)中、
は、直接結合、又はXYを表し、
は、NH、O、CONH、NHCO、SONH、NHSO2、CHNH又はCHNHCOCHNHを表し、
Yは、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルケニレン基又は置換基を有してもよい炭素数1~20のアリ-レン基を表し、
Zは、SOM、COM又はP(O)(OM)を表し、
Mは、1~3価のカチオンの一当量を表し、
は、有機色素残基を表し、nは1~4の整数を表す。]
【0025】
一般式(1)のRで表される有機色素残基としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等が挙げられる。
とりわけ、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素の使用が、分散性と光吸収性に優れるため好ましい。
【0026】
一般式(1)中のMで表される1~3価のカチオンとしては、水素原子(プロトン)、金属カチオン、4級アンモニウムカチオンが挙げられる。また、構造中にMを2つ以上有する場合、Mは、水素原子(プロトン)、金属カチオン、4級アンモニウムカチオンのいずれかひとつのみでも良いし、これらの組み合わせでも良い。
金属カチオンの金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト等が挙げられる。また、4級アンモニウムカチオンとしては、一般式(2)で表される構造を有する単一化合物又は、混合物が挙げられる。
【0027】
一般式(2)
【化2】
【0028】
[一般式(2)中、
~Rは、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリ-ル基を表す。]
【0029】
一般式(2)のR~Rは、各々同一でもよいし、異なっていてもよい。また、R~Rにおける炭素数は、1~40、好ましくは1~30、更に好ましくは1~20である。
【0030】
4級アンモニウムの具体例としては、例えば、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルアンモニウム、2-エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、ステアリルアンモニウム、オクチルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
また、1~3価のカチオンが金属カチオン又は4級アンモニウムカチオンである場合、塩交換でカチオンを導入することができる。塩交換は分散剤の製造時に行ってもよいし、黒色低反射膜形成用組成物の製造時に行ってもよい。
【0032】
上記分散剤の合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特公昭39-28884号公報、特公昭45-11026号公報、特公昭45-29755号公報、特公昭64-5070号公報、特開2004-217842号公報等に記載されている方法で合成することができる。
【0033】
一般式(1)で表される酸性官能基を有する有機色素誘導体の一例を以下に示す。なお、例示化合物における酸性官能基(SOH、COH又はP(O)(OH))は、金属カチオン又は4級アンモニウムカチオンと造塩物を形成していてもよい。
【0034】
【化3】
【0035】
[酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)]
酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)は、特に限定されるものではないが、好ましくは、下記一般式(3)で示されるトリアジン誘導体、又は下記一般式(4)で示されるトリアジン誘導体である。
【0036】
(一般式(3)で示されるトリアジン誘導体)
一般式(3)
【化4】
【0037】
[一般式(3)中、
は、NH、O、CONH、SONH、CHNH、CHNHCOCHNH又はXYXを表し、
及びXは、各々独立して、NH又はOを表し、
は、CONH、SONH、CHNH、NHCO又はNHSOを表し、
Yは、炭素数1~20で構成された、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルケニレン基又は置換基を有してもよい炭素数1~20のアリ-レン基を表し、
Zは、SOM、COM又はP(O)(OM)を表し、
Mは、1~3価のカチオンの一当量を表し、
は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基又は下記一般式(5)で表される基を表し、
Qは、OR、NHR、ハロゲン原子、X又はXYZを表し、
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアルケニル基を表す。]
【0038】
一般式(5)
【化5】
【0039】
[一般式(5)中、
は、NH又はOを表し、
及びXは、各々独立して、NH、O、CONH、SONH、CHNH又はCHNHCOCHNHを表し、
及びRは、各々独立して、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基又はYZを表し、
Yは、炭素数1~20で構成された、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルケニレン基又は置換基を有してもよい炭素数1~20のアリ-レン基を表し、
Zは、SOM、COM又はP(O)(OM)を表す。]
【0040】
一般式(3)のR及び一般式(5)のR、Rで表される有機色素残基としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等が挙げられる。
とりわけ、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素の使用が分散性や光吸収性に優れるため好ましい。
【0041】
一般式(3)のR及び一般式(5)のR、Rで表される複素環残基及び芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾ-ル、ピロール、イミダゾ-ル、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾ-ル、ベンズトリアゾ-ル、インド-ル、キノリン、カルバゾ-ル、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン等が挙げられる。とりわけ、少なくともS、N、Oのヘテロ原子のいずれかを含む複素環残基の使用が分散性に優れるため好ましい。
【0042】
一般式(3)及び一般式(5)のYとしては、好ましくは、置換されていてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基又は置換基を有していてもよい炭素数が10以下のアルキレン基が挙げられる。
【0043】
一般式(3)のRにおけるアルキル基及びアルケニル基は、好ましくは炭素数20以下であり、更に好ましくは置換基を有していてもよい炭素数が10以下のアルキル基が挙げられる。
【0044】
有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、水酸基、メルカプト基等が挙げられる。
【0045】
一般式(3)中のMで表される1~3価のカチオンとしては、前述の一般式(1)中のMで表される1~3価のカチオンと同義であり、より好ましくは、金属カチオン又は4級アンモニウムカチオンであり、特に好ましくは4級アンモニウムカチオンである。
【0046】
一般式(3)で表される誘導体の一例を以下に示す。なお、例示化合物における酸性官能基(SOH、COH又はP(O)(OH))は、金属カチオン又は4級アンモニウムカチオンと造塩物を形成していてもよい。
【化6】
【0047】
【化7】
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
【化10】
【0051】
【化11】
【0052】
【化12】
【0053】
【化13】
【0054】
一般式(3)で表されるトリアジン誘導体は、より好ましくは、X1がNH、且つRがベンズイミダゾロン残基であるX構造を含み、且つMが金属カチオン又は4級アンモニウムカチオンであるものであり、上述の例示誘導体(b2-5)、(b2-7)、(b2-9)、(b2-12)~(b2-15)、(b2-18~b2-26)が該当する。
【0055】
(一般式(4)で示されるトリアジン誘導体)
一般式(4)
【化14】
【0056】
[一般式(4)中、
は、Xで表される基を表し、
は、置換基を有してもよいアリーレン基を表し、
は、SOM、COM又はP(O)(OM)を表し、
Mは、1~3価のカチオンの一当量を表す。]
【0057】
一般式(4)のXにおけるアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、より好ましくはフェニレン基である。
上記アリーレン基が有してもよい置換基は、同一でも異なっても良く、その具体例としては、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、複数であっても良い。
【0058】
一般式(4)のYとしては、SOM又はCOMがより好ましく、特に好ましくはCOMである。また、一般式(4)中のMで表される1~3価のカチオンとしては、前述の一般式(1)中のMで表される1~3価のカチオンと同義であり、より好ましくは、金属カチオン又は4級アンモニウムカチオンである。
【0059】
金属カチオンを導入する方法としては、一般式(4)で表され、且つMが水素原子であるトリアジン誘導体に対し、無機塩基を添加することで導入することができ、無機塩基としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ土類金属のリン酸塩等を用いることができる。
【0060】
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等;アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等;アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等;アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等;アルカリ金属のリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム等;アルカリ土類金属のリン酸塩としては、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸ストロンチウム、リン酸バリウム等;が挙げられ、適宜最適なものを選択すればよい。無機塩基の添加量は、特に限定されるものではないが、トリアジン誘導体1モルに対して、0.1モル以上5モル以下が好ましく、0.3モル以上2モル以下がより好ましい。
【0061】
一般式(4)で表される誘導体の一例を以下に示す。下記例示化合物における酸性官能基におけるMはいずれも水素原子で表されているが、水素原子に限定されるものではなく、金属カチオンや4級アンモニウム塩であってもよい。
【0062】
【化15】
【0063】
【化16】
【0064】
[塩基性官能基を有する有機色素誘導体(b1)]
塩基性官能基を有する有機色素誘導体は、特に限定されるものではないが、好ましくは、下記一般式(17)で示されるものである。
【0065】
一般式(17)
【化17】
【0066】
一般式(17)のRは、有機色素残基を表し、有機色素残基としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素等が挙げられる。とりわけ、アゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素の使用が好ましい。
また、分散剤として2つ以上の有機色素誘導体を使用する場合、Rは互いに異なっていてもよい。
【0067】
一般式(17)のbは、1~4の整数を表し、一般式(17)のZは、下記一般式(18)又は一般式(19)のいずれかで表される。また、一般式(17)のbが2~4のとき一般式(17)のZは互いに異なっていても良い。
【0068】
一般式(18)
【化18】
【0069】
一般式(18)のdは、1~10の整数を表し、一般式(18)のXは、直接結合、-SO-、-CO-、-CHNHCOCH-、-CHNHCONHCH-、-CH-又は、-X-Y-X-を表す。Xは、-NH-又は、-O-を表し、Xは、直接結合、-SO-、-CO-、-CHNHCOCH-、-CHNHCONHCH-又は、-CH-を表す。ただし、Yは置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基又は置換基を有してもよいアリーレン基を表す。
また、一般式(18)のR及び一般式(18)のRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表す。
【0070】
一般式(19)
【化19】
【0071】
一般式(19)のX、R、及びRは、それぞれ、一般式(18)で定義されたものと同義である。
【0072】
また、塩基性基を有するアントラキノン誘導体及び、塩基性基を有するアクリドン誘導体は下記一般式(20)又は下記一般式(22)で表される。
【0073】
一般式(20)
【化20】
【0074】
一般式(20)のZは、C=O、又はNHを表す。一般式(20)のXは、-CO-又は-SO-を表す。一般式(20)のRは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
一般式(20)のXは、-SONH-R-NR1011、及び-CONH-R12-NR1314、で表される基のいずれかを表す。ただし、R、R12、R15~R18は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、及び置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを表す。また、R10、R11、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。
【0075】
一般式(22)
【化21】
【0076】
一般式(22)のZは、C=O、又はNHを表す。一般式(22)のXは、隣接する原子同士を結ぶ直接結合、-CONH-R24-、及び-SONH-R25-のいずれかを表す。ただし、R24及びR25は、それぞれ独立に、直接結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、及び置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを表す。
一般式(22)のX10は、-NR2627で表される基を表す。また、R26及びR27はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。
【0077】
塩基性基を有する有機色素誘導体の一例を以下に示す。
【化22】
【0078】
[塩基性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)]
塩基性官能基を有するトリアジン誘導体は、特に限定されるものではないが、好ましくは、下記一般式(23)で示されるものである。
【0079】
一般式(23)
【化23】
【0080】
一般式(23)のR31は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基を表し、一般式(23)のX16は-NH-、-O-、-CONH-、-SONH-、-CHNH-、-CHNHCOCHNH-又は-X17-Y-X18-を表し、X17は、-NH-、-O-、-CONH-、-SONH-、-CHNH-、-NHCO-又は-NHSO-を表し、X18はそれぞれ独立に-NH-又は、-O-を表し、Yは置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基又は、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。一般式(23)のZは-O-R32、-NH-R32、一般式(18)又は一般式(19)のいずれかで示される置換基を表す。一般式(23)のR32は置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基を表す。一般式(23)のZは一般式(18)又は一般式(19)のいずれかで示される置換基を表す。
【0081】
一般式(18)、(20)及び(22)における置換基を有してもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル、シクロペンチル基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0082】
一般式(18)、(20)及び(22)における置換基を有してもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、1-オクテニル基、1-オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3-ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基、トリフルオロエテニル基、1-クロロエテニル基、2,2-ジブロモエテニル基、4-ヒドロキシ-1-ブテニル基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0083】
一般式(18)、(20)及び(22)における置換基を有してもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、トリル基、キシリル基、p-シクロヘキシルフェニル基、p-クメニル基、m-カルボキシフェニル基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0084】
一般式(18)、(20)~(22)及び(23)における置換基を有してもよいアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルメチレン基、クロロメチレン基、ジメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0085】
一般式、(18)、(20)、(22)及び(23)における置換基を有してもよいアルケニレン基の具体例としては、ビニレン基、1-メチルビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、1-ペンテニレン基、2-ペンテニレン基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0086】
一般式(18)、(20)、(22)及び(23)における置換基を有してもよいアリーレン基の具体例としては、アリーレン基としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4-メチル-1,2-フェニレン基、4-クロロ-1,2-フェニレン基、4-ヒドロキシ-1,2-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、p,p’-ビフェニリレン基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0087】
一般式(23)における有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。特に、アゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素のものが好ましい。
【0088】
一般式及び(23)における置換基を有していてもよい複素環残基及び置換基を有していてもよい芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0089】
塩基性基を有するトリアジン誘導体の一例を以下に示す。
【化24】
【0090】
上記塩基性基を有する分散剤の合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特公昭39-28884号公報、特公昭45-11026号公報、特公昭45-29755号公報、特開昭54-62227号公報、特開昭56-118462号公報、特開昭56-166266号公報、特開昭60-88185号公報、特開昭63-305173号公報、特公昭64-5070号公報、特開平3-2676号公報、特開平11-199796号公報、特開2004-217842号公報等に記載されている方法で合成することができる。
【0091】
分散剤(B)としては、酸性官能基を有する有機色素誘導体(b1)(ただしトリアジン構造を有するものを除く)、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)がより好ましい。特に好ましくは、上述の一般式(3)及び一般式(4)で表されるトリアジン誘導体である。また、酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)は、水酸基が2個、直接結合したトリアジン構造、又は、NH結合を介してベンズイミダゾロン基が結合したトリアジン構造、のいずれかを有することが好ましい。
【0092】
分散剤(B)の含有量は、多孔質黒色顔料(A)及び分散剤(B)の合計量に対して、好ましくは10質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上60質量%以下である。上記範囲であることで、分散性に優れ、塗膜表面の粗さを適切な水準とし散乱反射を低下させ、黒色度が高い塗膜が得られるだけでなく、特定の分散剤(誘導体)が可視光領域に吸収を有するため、反射率の向上が抑制され、優れた低反射性を発揮する。
【0093】
<有機溶剤>
本発明の黒色低反射膜形成用組成物は、多孔質黒色顔料を分散するための有機溶剤を含む。使用する有機溶剤としては、25℃で液状の媒体が好ましい。具体的には、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、n-オクタン等の炭化水素系溶剤等の公知の有機溶剤を、単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0094】
<バインダー成分(C)>
本発明の黒色低反射膜形成用組成物は、必要に応じてバインダー成分(C)を含むことができ、単独でも2種以上を併用して用いても良い。
バインダー成分(C)は、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、アルキッド樹脂、ブチラ-ル樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、及び塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0095】
バインダー成分(C)は、必要に応じて、硬化剤を併用してもよい。使用できる硬化剤に制限はないが、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0096】
また、バインダー成分(C)として、オリゴマー及び/又はモノマーからなる、電子線又は紫外線で硬化可能な成分を用いても良い。
単官能モノマーとしては、特に制限はないが、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、インデシルアクリレート、イソクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、エトキシ化ノニフェノールアクリレート、プロポキシ化ノニルフェノールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレンアクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェニルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、エチレンオキサイド2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート等やこれらのメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0097】
二官能モノマーとしては、1 ,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、(水素化)ビスフェノ-ルA ジアクリレート、(水素化)エチレンオキサイド変性ビスフェノールA ジアクリレート、(水素化)プロピレングリコール変性ビスフェノールAジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、2-エチル,2-ブチル-プロパンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート等やこれらのメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0098】
多官能モノマーとしては、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート、トリス( アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタアクリレートエステル、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等やこれらのメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0099】
バインダー成分(C)として、オリゴマー及び/又はモノマーからなる、電子線又は紫外線で硬化可能な成分を用いる場合、必要に応じて光重合開始剤や重合促進剤を併用してもよい。光重合開始剤としては、特に制限はないが、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、芳香族ジアゾニウム塩、メタロセン等が挙げられる。また、重合促進剤として、アミン類、ホスフィン類が挙げられる。電子線により架橋させる場合にはこれらを配合しなくても良い。
また、カチオン反応性の成分を紫外線により架橋させる場合には、必要に応じてカチオン系開始剤を併用してもよく、カチオン系開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨ-ドニウム塩、ルイス 酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボレート系開始剤、及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。電子線により架橋させる場合にはこれらを配合しなくても良い。
【0100】
多孔質黒色顔料(A)とバインダー成分(C)の含有比率は、好ましくは、(A):(C)が50:50~97:3であり、より好ましくは60:40~95:5であり、特に好ましくは70:30~90:10である。多孔質黒色顔料(A)が、60質量%以上含まれることで、塗膜の屈折率をより低下させ、低反射性が向上する。さらに70質量%以上含まれることで、更なる低屈折率を達成でき、反射率を大きく低下させることが可能となる。
【0101】
<その他成分>
黒色低反射膜形成用組成物は、さらに、分散剤(B)以外の顔料分散剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤、及びその他各種添加剤を含むことができる。
難燃剤としては例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びリン酸化合物等が挙げられる。また、添加剤として例えば、基材密着性を高めるためのカップリング剤、吸湿時・高温時の信頼性を高めるためのイオン捕捉剤・酸化防止剤、及びレベリング剤等が挙げられる。
【0102】
<黒色低反射膜形成用組成物の製造>
本発明の黒色低反射膜形成用組成物は、様々な方法で得ることができ、例えば、多孔質黒色顔料と酸性基を有する分散剤とを有機溶剤に分散したり、多孔質黒色顔料と酸性基を有する分散剤とを有機溶剤に分散した後、得られた分散体とバインダー成分とを混合したり、バインダー成分を有機溶剤に溶解したバインダー溶液に多孔質黒色顔料を分散したりして製造することができる。
【0103】
黒色低反射膜形成用組成物を得る際、使用できる分散機としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、アトライター、ボールミル、ガラスビーズやジルコニアビーズなどを使用したサンドミル、スキャンデックス、アイガーミル、ペイントコンディショナー、ペイントシェイカ-等のメディア分散機、コロイドミル等の従来公知の分散機から適宜選択することができる。
【0104】
<黒色低反射部材>
本発明の黒色低反射部材は、基材上に、前述の黒色低反射膜形成用組成物を用いた黒色低反射膜が形成された黒色低反射部材であって、前記黒色低反射膜が、光波長域400nm~700nmにおける正反射率の最大値が0.4%以下、散乱反射率の最大値が2%以下、光透過率の最大値が5%以下であることが好ましい。
【0105】
[黒色低反射膜]
黒色低反射膜の400~700nmにおける正反射率の最大値は0.4%以下が好ましく、より好ましくは0.2%以下、特に好ましくは0.1%以下である。正反射率が0.4%以下であると、低反射性が向上し、外観上も例えば蛍光灯等の映り込みが目立たないため好ましい。また、400~700nmにおける、散乱反射率の最大値は2%以下が好ましく、より好ましくは1.3%以下、特に好ましくは0.9%以下である。散乱反射率が2%以下であると、低反射性が向上し、また漆黒性の高い塗膜となるため好ましい。
【0106】
本発明の黒色低反射膜の正反射成分及び散乱反射成分は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)によって測定される。正反射成分とは、入射光に対する正反射光の割合であり、正反射光は、全反射光から散乱反射光を除外した反射光である。散乱反射成分とは、入射光に対する拡散光の割合であり、拡散光とは、全反射光から正反射光を除外した反射光である。
【0107】
さらに、反射膜の400~700nmにおける透過率の最大値は5%以下が好ましく、より好ましくは2%以下である。透過率が5%以下であると、より透明性の低い黒色塗膜となるため好ましい。透過率は、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジ-ズ製 U-4100)を用いて測定される。
【0108】
黒色低反射膜の膜厚は0.3μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。膜厚が0.3μm以上であることで、低反射性、及び漆黒性が向上する。
【0109】
黒色低反射膜は、Rtが0.15~5μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~3μmであり、特に好ましくは0.8~2μmである。Rtが0.15μm以上であることで、塗膜表面の凸部が十分な大きさを有し、正反射を低減させることができる。Rtが5μm以下であることで、散乱反射を低下させることができ、かつ外観にも平滑感がある塗膜が得られる。
Raは0.01~0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.03~0.3μmであり、特に好ましくは0.06~0.2μmである。Raが0.01μm以上であることで、塗膜表面の凸部が十分な大きさを有し、正反射を低減させることができる。Raが0.5μm以下であることで、散乱反射を低下させることができ、かつ外観にも平滑感がある塗膜が得られる。また、Raが0.2μm以下であることで、正反射と散乱反射とを低減することができる。
本来正反射と散乱反射はトレードフの関係にあるものが、適切なRt、Raとすることでトレードフの関係を解消することができる。
【0110】
黒色低反射膜の粗さ曲線はRt、Raは、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を用いる。Rtは粗さ曲線の最大断面高さを表し、評価長さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値との和であり、以下の数式1によって求められる値である。Raは算術平均粗さを表し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にZ 軸を取り、粗さ曲線をZ=f(x)で表したときに、以下の数式2によって求められる値である。
【0111】
【数1】
【0112】
【数2】
【0113】
黒色低反射膜のL*値は、好ましくは20以下であり、より好ましくは12以下であり、特に10以下が好ましい。L*値が20以下であることで、漆黒性が向上し、より鮮やかな黒色塗膜を得ることができる。L、a、b表色系におけるLは、分光測色計(例えば、コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)によって測定することができる。
【0114】
[基材]
基材としては、特に限定されるものではないが、ガラス基材、プラスチック基材(有機高分子基材)のほか、金属基材、紙基材、木基材(木製基材)、石基材、布基材、皮革基材等を挙げることができる。また、その形状としては、平板、フィルム状、シ-ト状、立体形状等が挙げられ、用途や使用条件に基づいて適宜選択することができる。中でも好ましくは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン等の合成樹脂のフィルム又はこれらフィルムの複合体、及びガラス基材である。
【0115】
<黒色低反射膜を有する黒色低反射部材の製造方法>
黒色低反射膜を有する黒色低反射部材は種々の方法で得ることができる。
例えば、空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料、特定の誘導体、有機溶剤、及び必要に応じてバインダー成分を含有した本発明の黒色低反射膜形成用組成物を、基材上に塗工した後、乾燥することによって得ることができる。あるいは、基材上に、多孔質黒色顔料を含有しない樹脂層を設けた後、前記樹脂層上に多孔質黒色顔料と分散媒とを含有する塗料を塗工し、分散媒を除去(乾燥)することにより、形成することもできる。
【0116】
黒色低反射膜形成用組成物は、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、コーター塗工、スプレー塗工、スピンコーター等の既知の方式で塗工することができる。
より具体的には例えば、本発明の黒色低反射膜は、前記の組成物を、基材の一主面上に、ロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、スリットコート法、スリット&スピンコート法、フローコート法、ダイコート法等の各種塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜から樹脂溶媒等の溶剤を揮発等により除去して塗膜を形成し、該塗膜を必要により硬化処理することにより、容易に得ることができる。
【0117】
黒色低反射部材における基材と黒色低反射膜との間には、基材と黒色低反射膜との接着性を高めるため、さらに樹脂層が設けられていても良い。樹脂層は、特に限定されるものではないが、用いられる樹脂の例としては、
アクリル樹脂、ニトロセルロース樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラ-ル、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。これら樹脂層は、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、コーター塗工、スピンコーター等の既知の方式で塗工することができる。
【0118】
黒色低反射膜を有する黒色低反射部材は、以下に示す工程1~4により製造されても良い。
工程1:剥離性シ-トに、空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料、特定の誘導体、有機溶剤、必要に応じてバインダー成分を含有する黒色低反射膜形成用組成物を、塗工した後、乾燥し、黒色膜を形成する。
工程2:基材に接着剤層(樹脂層)を設ける。
工程3:前記接着剤層に前記黒色膜を重ね合わせる。
工程4:前記剥離性シ-トを剥がし、前記黒色膜を前記接着剤層に転移させ、L*値が20以下、400nm~700nmにおける、正反射率の最大値が0.4%以下、散乱反射率の最大値が2%以下、光透過率の最大値が5%以下である黒色低反射膜を形成する。
【0119】
剥離性シ-トを剥がすことにより、黒色低反射膜の表面状態を上記のようにすることができる。剥離性シ-トとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリイミドフィルム等の樹脂フィルムに離型処理したものが挙げられる。
【0120】
接着剤層に前記黒色膜を重ね合わせる工程において、ロ-ラ-などによる加圧、ラミネーターによる加熱加圧などを行うことができる。ラミネーターの条件は、特に制限されるものはないが、温度条件としては接着剤層のTgより20℃程度高い温度、加圧条件としては0.1MPa以上10MPa以下が好ましい。
【実施例
【0121】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。
【0122】
<水酸基価(OHV)、酸価(AV)>
JIS K0070に従って求めた。
【0123】
<質量平均分子量(Mw)>
質量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソ-株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソ-株式会社製ガードカラムHXL-H
東ソ-株式会社製TSKgelG5000HXL
東ソ-株式会社製TSKgelG4000HXL
東ソ-株式会社製TSKgelG3000HXL
東ソ-株式会社製TSKgelG2000HXL
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0124】
<バインダー成分(C)の製造>
(アクリル樹脂(C-1)溶液)
撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、及び窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル20.0部、メタクリル酸0.6部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル3.0部、メタクリル酸n-ブチル76.4部、及びプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を加え、2時間重合反応を行った。次いで、転化率が98%以上となるまで1時間毎にアゾビスイソブチロニトリルを0.5部加えて重合反応を行った。転化率が98%以上になったことを確認した後、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート50部を加えて希釈した。以上のようにして、固形分濃度40%、Mw=30,000のアクリル樹脂である(C-1)溶液を得た。
【0125】
(ポリエステル樹脂(C-2)溶液)
バイロン(登録商標)300(東洋紡社製、Mn=23,000、Tg=7℃、OHV=5mgKOH/g、AV=2mgKOH/g未満)を使用した。プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートで希釈して固形分濃度40%のポリエステル樹脂である(C-2)溶液を得た。
【0126】
(ポリウレタン樹脂(C-3)溶液)
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、ポリエステルジオール24.0部、イソホロンジイソシアネート5.2部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート7.5部を仕込み、窒素気流下に120℃で4時間反応させ、酢酸エチル7.5部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液44.2部を得た。次いで、イソホロンジアミン2.2部、ジ-n-ブチルアミン0.1部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート18部及びメチルエチルケトン7部からなる混合溶液に、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液44.2部を添加して50℃1時間反応させた後、メチルエチルケトン7部を添加して、固形分濃度40%、Mn18,000のポリウレタン樹脂である(C-3)溶液を得た。
【0127】
<接着剤成分の製造>
(接着剤1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、及び窒素導入管を備えた反応容器にn-ブチルアクリレート60部、メチルアクリレート30部、2-エチルへキシルアクリレート5部、アクリル酸5部、酢酸エチル70部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.10部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、還流温度で7時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、固形分濃度30%、Mw=98万のアクリル樹脂溶液1を得た。
次に、反応容器にトルエン100部を仕込み、滴下装置にメタアクリル酸n-エチル96部、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート4部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.08部を仕込み、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、1時間で滴下した後に、この反応溶液を還流温度で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、固形分濃度30%、Mw=3万のアクリル樹脂溶液2を得た。
得られたアクリル樹脂溶液1を65部、アクリル樹脂溶液2を35部、及び酢酸エチル50部を容器に入れ、撹拌混合して、粘着剤1を得た。
【0128】
<黒色低反射膜形成用組成物の製造>
[実施例1]
(黒色組成物1)
多孔質黒色顔料(カーボンECP600JD:空隙率80%、比表面積1400m/g)を1部、分散剤(b1-1)0.352部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート50部、直径3mmガラスビーズ25部を容器に入れ、撹拌混合し、ペイントシェーカーで120分間分散し、黒色組成物中間体1を得た。
黒色組成物中間体1を40部に対し、アクリル樹脂(C-1)溶液を0.486部加え、黒色組成物1を得た。
【0129】
[実施例2~82、89~92、比較例1~6]
(黒色組成物2~82、89~92、101~106)
黒色顔料及び分散剤の種類、質量比及び分散時間を、表1及び表2に示す内容に変更した以外は、黒色組成物1と同様にして、黒色組成物2~82、89~92、101~106を得た。
【0130】
[実施例83~87]
(黒色組成物83~87)
バインダー成分の種類、及び(A)/(C)質量比を表1及び表2に示す内容に変更した以外は、黒色組成物11と同様にして、黒色組成物83~87を得た。
【0131】
[実施例88]
(黒色組成物88)
多孔質黒色顔料(カーボンECP600JD:空隙率80%、比表面積1400m/g)を1部、分散剤(b2-5)0.352部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート50部、直径3mmガラスビーズ25部を容器に入れ、撹拌混合し、ペイントシェーカーで120分間分散し、バインダー成分を含まない黒色組成物88を得た。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
表1及び表2中の略称を以下に示す。
ECP600JD:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製カーボン『製品名ECP600JD』、空隙率80%、比表面積1400m/g
ECP:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製カーボン『製品名ECP』、空隙率60%、比表面積800m/g
MA110:三菱ケミカル株式会社製カーボン『製品名MA110』、空隙率0%、比表面積110m/g
【0135】
なお、表1及び表2中の分散剤(B)において、/オクチルアンモニウム塩、又は/Na塩 となっているものは、所定の番号の分散剤の酸性基が、オクチルアンモニウムカチオン、又はNaカチオンであることを表す。
【0136】
<黒色低反射膜の製造>
[実施例101]
(黒色低反射膜1)
基材であるポリエステルフィルム(東洋紡株式会社、E5101、厚み188μm)に、黒色組成物1をブレ-ドコーターを用いて塗工し、100℃2分間乾燥して、膜厚4.8μmの黒色低反射膜1を得た。
【0137】
[実施例102~188、197~200]、[比較例101~106]
(黒色低反射膜2~88、97~106)
黒色組成物1の代わりに、表2に示される黒色組成物を用い、ブレ-ドコーターの番手で膜厚を調整した以外は、黒色低反射膜1と同様にして、黒色低反射膜2~88、97~106を得た。
【0138】
[実施例189]
(黒色低反射膜89)
剥離性シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)の剥離性表面に、黒色組成物11を塗工、乾燥して、膜厚5.1μmの黒色膜を形成した。
別途、他のポリエステルフィルム(東洋紡株式会社、E5101、厚み188μm)に、接着剤1を塗工、乾燥して、膜厚5.0μmの接着剤層を形成した。
黒色膜と接着剤層とを重ね合わせた状態で、ラミネーター(VA-700:大成ラミネーター株式会社)を用いて80℃、0.4MPa、0.5m/sで加熱加圧した後に、剥離性シートを剥離して、黒色低反射膜89を得た。
【0139】
[実施例190~194]
(黒色低反射膜90~94)
黒色組成物11の代わりに、表3に示す黒色組成物を用いた以外は、黒色低反射膜89と同様にして、黒色低反射膜90~94を得た。
【0140】
[実施例195]
(黒色低反射膜95)
基材である厚さ2mmの鋼板に、黒色組成物11をスプレー塗装によって塗布し、100℃2分間乾燥して、膜厚5.1μmの黒色低反射膜95を得た。
【0141】
[実施例196]
(黒色低反射膜96)
ポリエステル製の立体状基材に、黒色組成物11をスプレー塗装によって塗布し、100℃2分間乾燥して、膜厚4.8μmの黒色低反射膜96を得た。
【0142】
【表3】
【0143】
<黒色低反射膜の評価>
得られた黒色膜について、低反射性、及びその他評価(表面粗さ、漆黒性、耐擦傷性)を実施した。結果を表4及び表5に示す。
【0144】
[低反射性(反射率)]
白色校正板の上に各黒色膜を乗せ、正反射成分と散乱反射成分とを、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)によって、視野角10°、光源D65で、400~700nmの範囲を測定し、400nm~700nmにおける正反射率の最大値と散乱反射率の最大値とを求めた。正反射率の最大値と散乱反射率の最大値は、低い値であるほど良好である。
【0145】
[表面粗さ(Rt、Ra)]
Taylar Hоbsоn社製のファームタリサーフシリーズi60を用いて5回測定した値の平均値を用いた。測定条件は下記のとおりである。
針の種類;先端2μmダイヤモンドスタイラス
カットオフ周波数λc;0.08mm
測定長;10mm
速度;20mm/min.
【0146】
[漆黒性(L*値)]
白色校正板の上に各黒色膜を乗せ、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)によって、視野角10°、光源D65で測定した。
【0147】
[耐擦傷性]
黒色膜に当てる綿棒の角度を45度に維持して、黒色膜の表面を綿棒で1往復擦り、膜の状態を観察した。
A:膜の剥がれが無い。
B:膜中、擦った面積中の30%未満が剥がれて下地(フィルム)が見える。
C:膜中、擦った面積中の30%以上が剥がれて下地(フィルム)が見える。
【0148】
【表4】
【0149】
【表5】
【0150】
表4及び表5より、空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料(A)、有機色素誘導体(b1)(ただしトリアジン構造を有するものを除く)、及びトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤(B)、並びに、有機溶剤を含む、本願発明の黒色低反射膜形成用組成物を用いた実施例101~200は、正反射率及び散乱反射率が共に低く、優れた低反射性を示した。
特に、空隙率が80%のカーボンを用いた実施例111は、空隙率が60%のカーボンを用いた実施例181に比べて、優れた低反射性を示した。
また、酸性官能基を有し、NH結合を介してベンズイミダゾロン基が結合したトリアジン構造を有する分散剤を用いた実施例111、113、115、118~132は、ベンズイミダゾロン基を有しない実施例133~156に比べて、分散性に優れ、その塗膜は反射率を低下させるに適した良好な表面粗さを有し、より優れた低反射性が発現した。
さらに、酸性官能基を有し、水酸基が2個直接結合したトリアジン構造を有する分散剤を用いた実施例157~177も、同様の理由から優れた低反射性を発現した。
一方、低空隙率のカーボンを使用した比較例101~105は、本願特定の分散剤を組み合わせても低反射性は発現しなかった。また、高空隙率カーボンを用いているが本願特定の分散剤を使用していない比較例106は、良好な分散状態が得られず、さらに本願特定分散剤による可視光吸収効果が得られず、低反射性が発現しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の黒色低反射膜は、レンズ保持部材、カメラ、顕微鏡、双眼鏡、望遠鏡、内視鏡等の撮像光学部材、プロジェクタ等の投影光学部材、レーザー装置、分光光度計、放射温度計、センサー部材、照明装置等の光学部材、治具などに用いることで迷光防止効果が期待できる。加えて、家電や家具の外装、自動車内外装、建材、衣類、壁紙、看板などに用いることで、低反射性かつ平滑性を併せ持つ、意匠性部材としても利用でき、また、その低反射性を活用した防眩部材にも用いることができる。さらに、複数の画素と、前記複数の画素の間に配置される遮光部とを有する表示装置における前記遮光部として用いることができる。黒色度が高く低反射の遮光部を画素間に設けることにより、コントラストの向上が期待できる。その他にも、低反射性からもたらされる光吸収性を利用した、太陽光発電用パネルの部材、太陽熱集熱パネル、光熱変換部材にも用いることができる。