(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】チタン酸バリウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/00 20060101AFI20221012BHJP
C04B 35/468 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
C01G23/00 B
C04B35/468
(21)【出願番号】P 2018215958
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】末田 学
(72)【発明者】
【氏名】緒方 宏宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 高志
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119630(JP,A)
【文献】特開昭59-195576(JP,A)
【文献】特開平01-294527(JP,A)
【文献】特開2004-300027(JP,A)
【文献】特表2008-513324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00-23/08
C04B 35/42-35/447
C04B 35/46ー35/515
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸バリウムを製造する方法であって、
該製造方法は、バリウム化合物と酒石酸とを反応させて酒石酸バリウムを得る工程Aと、
該酒石酸バリウムと、酸化チタン、含水酸化チタン及び水酸化チタンから選ばれる少なくとも1種のチタン化合物とを含む混合物を得る工程Bと、
該混合物を焼成する工程Cとを含み、
該工程Aは、工程Aにおける少なくとも1時点において、バリウム化合物と酒石酸との混合溶液のpHが、12以上となることを特徴とするチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項2】
前記製造方法は、工程Bで得られた混合物を粉砕する工程Dを含むことを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項3】
前記工程Cは、焼成温度が500℃以上、700℃未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項4】
前記酒石酸バリウムの比表面積が0.5m
2/g以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項5】
前記チタン化合物は、比表面積が50m
2/g以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項6】
得られるチタン酸バリウムの比表面積換算径が140nm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のチタン酸バリウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸バリウムの製造方法に関する。より詳しくは、積層セラミックスコンデンサ等の材料として好適に使用することができるチタン酸バリウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウムは、積層セラミックスコンデンサ等の誘電体の材料として広く使用されている化合物である。チタン酸バリウムの調製方法については、従来より様々な検討が試みられてきたが、各々に課題が残されている。例えば、アルコキシド法は、バリウムやチタンのアルコキシド原料が高価で副生アルコールの回収が必要であり、水溶性バリウム塩とチタン化合物の加水分解生成物を強アルカリ下に加熱する共沈法は、アルカリ除去が困難である。また、四塩化チタンと塩化バリウムと蓚酸を水中で熱分解する蓚酸法は、蓚酸バリウムチタニル凝集体の骨格が残り粗大粒子を生成し易く、水熱合成法によって得られるチタン酸バリウムは、格子中に水酸基を含み加熱すると脱水し粒子内にnmサイズの空孔が形成され、焼結体とする際にクラックや層間剥離を引き起こす。そして酸化チタンと炭酸バリウムを湿式混合して焼成する、いわゆる固相法のチタン酸バリウムの製造方法においては、酸化チタンと炭酸バリウムを反応させるためにおよそ900℃以上の高温焼成が必要となり、粒成長が回避できないという問題があった。
【0003】
特に固相法における焼成時の粒成長抑制に関しては、これまで様々な検討がなされてきた。
例えば特許文献1には、チタン酸バリウムも含まれるチタン系ペロブスカイト型セラミック粉体として、微細でかつ粒度のバラツキが少ないものを製造することを目的とした製造方法として、酸化チタン又は含水酸化チタンから選ばれるチタン化合物とバリウム等の特定の元素の可溶性金属塩を粒状媒体中で接触させて沈殿物を得、この沈殿物を焼成してペロブスカイト型セラミックスを得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり固相法における焼成時の粒成長抑制に関して種々検討されているものの、焼成温度を下げる技術に関しては充分に検討されているとはいえない。例えば特許文献1には、焼成温度が700℃未満であると、チタン化合物及び難溶性金属化合物の熱分解及びペロブスカイト型結晶構造への転換が不充分となることが開示されている。このように従来の方法は高い焼成温度を必要とするものであるため、従来よりも低温で焼成可能なチタン酸バリウム粒子の製造方法を開発する工夫の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、従来の方法よりも低温で焼成可能なチタン酸バリウム粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、チタン酸バリウム粒子を製造する方法について種々検討したところ、バリウム化合物とチタン化合物との混合物を焼成してチタン酸バリウムを得る製造方法において、バリウム化合物として酒石酸バリウムを用いることにより、従来の方法より低温で焼成を行うことができることを見いだした。本発明者は更に、酒石酸バリウムを調製する際にバリウム化合物と酒石酸との混合溶液のpHを制御することにより、酒石酸バリウムとチタン化合物との混合物をより低温で焼成することができることを見いだした。具体的には、バリウム化合物と酒石酸との混合工程における少なくとも1時点において、バリウム化合物と酒石酸との混合溶液のpHを12以上とすることにより、得られた酒石酸バリウムとチタン化合物との混合物をより低温で焼成することができることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、チタン酸バリウムを製造する方法であって、上記製造方法は、バリウム化合物と酒石酸とを反応させて酒石酸バリウムを得る工程Aと、上記酒石酸バリウムと、酸化チタン、含水酸化チタン及び水酸化チタンから選ばれる少なくとも1種のチタン化合物とを含む混合物を得る工程Bと、上記混合物を焼成する工程Cとを含み、上記工程Aは、工程Aにおける少なくとも1時点において、バリウム化合物と酒石酸との混合溶液のpHが、12以上となるチタン酸バリウムの製造方法である。
【0009】
上記製造方法は、工程Bで得られた混合物を粉砕する工程Dを含むことが好ましい。
【0010】
上記工程Cは、焼成温度が500℃以上、700℃未満であることが好ましい。
【0011】
上記酒石酸バリウムの比表面積が0.5m2/g以上であることが好ましい。
【0012】
上記チタン化合物は、比表面積が50m2/g以上であることが好ましい。
【0013】
上記製造方法は、得られるチタン酸バリウムの比表面積換算径が140nm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のチタン酸バリウムの製造方法は、上述の構成よりなり、低温で焼成可能であることにより微細なチタン酸バリウムを得ることができるため、積層セラミックスコンデンサ等の共材や誘電体の材料として使用されるチタン酸バリウムの製造方法として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】チタン酸バリウムのFT-IR測定において、格子内部水酸基のピークが検出される場合(上図)と検出されない場合(下図)とを示した参考図である。
【
図2】実施例1で得られた混合物と、比較例1で得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0017】
<チタン酸バリウムの製造方法>
1.工程A
本発明のチタン酸バリウムの製造方法の工程Aは、バリウム化合物と酒石酸とを反応させて酒石酸バリウムを得る工程であり、バリウム化合物と酒石酸との反応の少なくとも1時点において、バリウム化合物と酒石酸との混合溶液のpHが、12以上となることを特徴とする。後述する工程Bにおけるバリウム化合物として酒石酸バリウムを用いることにより、従来の方法より低温で焼成を行うことができるが、工程Aにおける上記pHを制御することによりバリウム化合物と酒石酸との反応の際に、形成された微細な立方体状あるいは直方体状の酒石酸バリウム粒子が幾重にも積層するように成長すると考えられ、このような酒石酸バリウムを用いることが、焼成温度をより低温にすることができると考えられる。
【0018】
上記工程Aは、バリウム化合物と酒石酸とを接触させた時点から、得られた酒石酸バリウムを回収する、又は、得られた酒石酸バリウムを酸化チタン、含水酸化チタン及び水酸化チタンから選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と混合するまでの工程を意味するものとする。
上記工程Aは、バリウム化合物及び酒石酸の添加工程、溶液の攪拌工程を含むことが好ましい。添加工程と攪拌工程とは同時に行ってもよく、添加工程後に攪拌工程を行ってもよい。
また、上記工程Aでは添加工程後に熟成工程を行ってもよい。
【0019】
上記工程Aでは、少なくとも1時点において混合溶液のpHが12以上であればよいが、pHが12以上である時間が0.5分間以上であることが好ましい。より好ましくは1分間以上であり、更に好ましくは3分間以上であり、一層好ましくは5分間以上であり、特に好ましく7分間以上である。
上記工程Aにおける少なくとも1時点における溶液のpHの下限として、好ましくは12.3である。上記pHの上限は特に限定されないが、好ましくは13.5であり、更に好ましくは13.3である。
【0020】
上記工程Aにおいてバリウム化合物と酒石酸とを反応させる方法は特に制限されないが、バリウム化合物、酒石酸のそれぞれ水溶液を調製し、これらを混合することが好ましい。
上記混合溶液は、工程Aにおける少なくとも1時点において、12以上となればよく、上記反応においてバリウム化合物と酒石酸との添加の順序等は特に制限されず、例えば、所定量のバリウム化合物、酒石酸の水溶液を同時に混合しても、一方の水溶液に、もう一方の水溶液を逐次添加して混合してもよい。
また、上記混合溶液のpHを12以上に調整する塩基性物質として、バリウム化合物以外の物質を用いてもよい。バリウム化合物以外の塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化ジルコニウム等の遷移金属の水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、アンモニア、アミン、尿素、グアニジン等が挙げられる。
【0021】
上記工程Aの温度は特に制限されないが、10~100℃であることが好ましい。より好ましくは10~75℃であり、更に好ましくは10~55℃である。
【0022】
工程Aにおける酒石酸の量は、バリウム化合物が含むバリウム原子1モルに対して、0.8~1.2モルとなる量であることが好ましい。より好ましくは0.85~1.15モルであり、更に好ましくは0.9~1.1モルであり、特に好ましくは0.95~1.05モルとなる量である。
【0023】
上記バリウム化合物としては、特に制限されないが、水酸化バリウム、蓚酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、塩化バリウム、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、臭化バリウム、臭素酸バリウム、ヨウ化バリウム、りん酸水素バリウム、窒化バリウム、酸化バリウム、過酸化バリウム、硫化バリウム、アジ化バリウム、フッ化バリウム、ギ酸バリウム、乳酸バリウム、メタりん酸バリウム、メタクリル酸バリウム、ロジゾン酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム、トリフルオロメタンスルホン酸バリウム、ビス(アセチルアセトナト)ジアクアバリウム(II)、安息香酸バリウム、2‐エチルヘキサン酸バリウム、オクタン酸バリウム、オレイン酸バリウム、くえん酸バリウム、水素化バリウム、チオシアン酸バリウム、メタチタン酸バリウム、アルミン酸バリウム、クロム酸バリウム、鉄酸バリウム、ナフテン酸バリウム、プロピオン酸バリウム、ジプロピオン酸バリウム、六ほう酸バリウム、ラウリン酸バリウム、マロン酸バリウム、チオ硫酸バリウム、トリフルオロ酢酸バリウム、トリメチル酢酸バリウム、リンゴ酸バリウム、コハク酸バリウム、吉草酸バリウム、カンファー酸バリウム、ピクリン酸バリウム、カプロン酸バリウム、グルコン酸バリウム、ベンゼンスルホン酸バリウム、サリチル酸バリウム、マンデル酸バリウム、ケイ皮酸バリウム、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸バリウム、ミリスチン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、スルファミン酸バリウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも水酸化バリウム、酸化バリウム、硫化バリウム等の水溶液が塩基性となる化合物が好ましい。より好ましくは水酸化バリウム、酸化バリウムであり、更に好ましくは水酸化バリウムである。
【0024】
上記工程Aでは、バリウム化合物及び酒石酸の添加工程の後に熟成工程を行ってもよい。熟成工程における溶液の温度は特に制限されないが、上記工程Aの温度と同様の範囲であることが好ましい。また熟成温度は一定温度(好ましくは上記バリウム化合物及び酒石酸の添加が終了した時点での温度)で保持してもよいし、熟成中に経時的に温度を変化させてもよい。
熟成時間としては特に制限されないが、1~60分間であることが好ましい。より好ましくは1~10分間である。
【0025】
上記工程Aで得られる酒石酸バリウムは、比表面積が0.5m2/g以上であることが好ましい。このような比表面積であると、工程Dを行う場合、酒石酸バリウム粒子を効率的に粉砕し、微細化することができる。酒石酸バリウムの比表面積は、より好ましくは0.6m2/g以上であり、更に好ましくは0.7m2/g以上である。また、酒石酸バリウムの比表面積は、通常100m2/g以下である。上記比表面積は、全自動BET比表面積測定装置Macsorb Model HM-1200(Mountech製)により測定することができる。
【0026】
2.工程B
工程Bは、工程Aで得られた酒石酸バリウムと、酸化チタン、含水酸化チタン及び水酸化チタンから選ばれる少なくとも1種のチタン化合物とを含む混合物を得る工程である。
上記混合物に含まれる酒石酸バリウムの割合は、チタン化合物に含まれるチタン1モルに対して、0.9~1.15モルとなる量であることが好ましい。このような割合であることで、酒石酸バリウムが単独で熱分解して中間体として炭酸バリウムが生じることを充分に抑制することができるため、後述する工程Cでの焼成温度をより低温にしても酒石酸バリウムが炭酸バリウムを一度も経由することなく分解され、チタン酸バリウムを得ることができるようになる。より好ましくは、チタン化合物に含まれるチタン1モルに対して、酒石酸バリウムが0.9~1.1モルであることであり、更に好ましくは0.95~1.05モルである。
【0027】
上記工程Bでは、酒石酸バリウムと、酸化チタン、含水酸化チタン及び水酸化チタンから選ばれる少なくとも1種のチタン化合物とを混合する限り、特に制限されないが、溶媒を添加することが好ましい。より好ましくは、工程Bにおいて溶媒を用い、上記混合物をスラリーとすること、すなわち、混合スラリーを得ることである。
【0028】
上記溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ターシャリーブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンのいずれかが好ましく、より好ましくは水である。
上記工程Bにおいて溶媒を使用する場合の添加量は、特に制限されないが、酒石酸バリウムとチタン化合物との混合物のスラリー濃度として、1~1000g/Lとなるように溶媒を添加することが好ましい。より好ましくは5~600g/Lであり、更に好ましくは10~400g/Lである。
【0029】
上記工程Bを行う温度は、特に制限されないが、5~100℃であることが好ましい。より好ましくは10~60℃である。
また工程Bは、攪拌して行うことが好ましい。攪拌する時間は、1~60分であることが好ましい。より好ましくは5~20分である。
【0030】
上記チタン化合物は、酸化チタン、含水酸化チタン及び水酸化チタンから選ばれる少なくとも1種であり、酸化チタンとしては、例えば、アナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型の二酸化チタン等が挙げられる。より好ましくは含水酸化チタン、水酸化チタンであり、更に好ましくは水酸化チタンである。
【0031】
上記チタン化合物は、比表面積が50m2/g以上であることが好ましい。このような比表面積であると、酒石酸バリウム粒子との接触面積を増やせると共に、より均一に混合することができ、続く工程Cにおいてより低温域の焼成温度でもチタン酸バリウムを得ることができる。チタン化合物の比表面積は、より好ましくは100m2/g以上であり、更に好ましくは200m2/g以上である。また、チタン化合物の比表面積は、通常500m2/g以下である。上記比表面積は、全自動BET比表面積測定装置Macsorb Model HM-1200(Mountech製)により測定することができる。
【0032】
上記工程Bでは、酒石酸バリウム、チタン化合物の他に、カルシウム成分、ジルコニウム成分を添加することもできる。
【0033】
3.工程C
工程Cは、工程Bで得られた混合物を焼成する工程である。
本発明において用いる酒石酸バリウムは、チタン酸バリウムの製造に一般に使用される炭酸バリウムに比べて低温で分解するため、従来の製造方法に比べて低い焼成温度にしてもチタン酸バリウムを生成させることができる。このように焼成温度を低くすることで、焼成時のチタン酸バリウム粒子の成長を抑制し、粒径の小さいチタン酸バリウム粒子を製造することが可能となる。
焼成温度は特に制限されないが、500℃以上、700℃未満が好ましい。より好ましくは520℃以上、695℃以下であり、更に好ましくは540℃以上、690℃以下であり、特に好ましくは550℃以上、685℃以下である。
【0034】
上記混合物を焼成する時間は、チタン酸バリウムを充分に生成させることと製造の効率とを考慮すると、最高温度に到達してから30~600分であることが好ましい。より好ましくは60~300分であり、更に好ましくは90~180分である。
【0035】
上記混合物を焼成する雰囲気は、酸素を含む雰囲気であればよく、大気雰囲気でもよい。雰囲気中の酸素濃度が大気よりも高い高濃度酸素雰囲気が好ましい。
【0036】
4.工程D
本発明のチタン酸バリウムの製造方法は、工程Bで得られた混合物を粉砕する工程Dを含むことが好ましい。
上記混合物を粉砕すると、メカノケミカル効果により、混合物に含まれる粒子がチタン酸バリウムに変化する温度をより低下させることができ、これにより、工程Cの焼成温度をより充分に下げることができる。また、得られるチタン酸バリウムの粒子をより微細化することができる。
【0037】
混合物を粉砕する方法は特に制限されないが、遊星ミル、ビーズミル、振動ミル、メディアレス粉砕機等を用いることができる。この中でも、ビーズミルを用いる方法が好ましい。
【0038】
ビーズミルに使用するビーズとしては、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、窒化珪素ビーズ等のいずれのものを用いてもよい。
【0039】
ビーズミルを用いる場合、使用するビーズの大きさは、直径0.01~0.5mmのものを用いることが好ましい。このような大きさのものを用いることで、メカノケミカル効果により上記混合物に含まれる粒子をチタン酸バリウムに変化する温度を低下させる効果をより充分に得ることができる。使用するビーズの大きさは、より好ましくは直径0.01~0.4mmであり、更に好ましくは直径0.01~0.3mmである。
【0040】
上記混合物を粉砕する時間は、製造の効率とメカノケミカル効果をより充分に得ることとを考えると、30~600分であることが好ましい。より好ましくは60~360分である。
工程Dを行う温度は、特に制限されないが、5~90℃の温度で行うことができる。
【0041】
5.その他の工程
本発明のチタン酸バリウムの製造方法は、上記工程A~D以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、ろ過、水洗、乾燥等の工程が挙げられる。ろ過、水洗、乾燥等の工程は、工程AとBの間、工程BとCの間、工程DとCの間等のいずれにおいて行ってもよい。
工程Cで焼成する混合物は、溶媒を含んでいてもよく、溶媒が除かれた固形分のみであってもよいが、固形分のみであることが好ましい。より好ましくは、混合物をろ過、水洗、乾燥した後の固形分であることである。
したがって、工程B及び/又は工程Dの終了後に、混合物をろ過する工程や、混合物をろ過、水洗、乾燥する工程を含むことは本発明のチタン酸バリウムの製造方法の好適な実施形態の1つである。より好ましくは工程B及びDの終了後にそれぞれ混合物をろ過、水洗、乾燥する工程を含むことである。
【0042】
混合物から溶媒を除いた固形分を工程Cに供する前に乾燥する場合、乾燥温度は、95~115℃とすることが好ましい。より好ましくは、100~110℃である。また乾燥する時間は、30~600分とすることが好ましい。より好ましくは60~300分である。
【0043】
<チタン酸バリウム>
本発明のチタン酸バリウムの製造方法で得られるチタン酸バリウムは、比表面積換算径が140nm以下であることが好ましい。このような比表面積換算径であると、積層セラミックスコンデンサ等の共材や誘電体の材料として好適なものとなる。チタン酸バリウムの比表面積換算径は、より好ましくは120nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。また、本発明のチタン酸バリウムの製造方法で得られるチタン酸バリウムの比表面積換算径は、通常、1nm以上である。
上記チタン酸バリウムの比表面積換算粒子径は、BET法によって求められる比表面積と同一の表面積を有する球の直径に相当する。すなわち、比表面積換算粒子径は、全自動BET比表面積測定装置Macsorb Model HM-1200(Mountech社製)により測定して求めた比表面積:Sgと、チタン酸バリウムの真比重:ρから、下記計算式により求めた値である。
チタン酸バリウムの比表面積換算粒子径(μm)=[6/(Sg×ρ)]
(Sg(m2/g):比表面積、ρ(g/cm3):粒子の真比重)
なお、粒子の真比重:ρは、チタン酸バリウムの真比重の値である6.08を上記計算に用いる。
【0044】
本発明のチタン酸バリウムの製造方法で得られるチタン酸バリウムは、正方晶性の指標である結晶格子のc軸長とa軸長の比(c/a比)が1.003以上であり、FT-IR測定において3500cm
-1近傍に検出される格子内部水酸基のピークが検出されないことが好ましい。
チタン酸バリウムが、FT-IR測定において3500cm
-1近傍に検出される格子内部水酸基のピークが検出されないことは、例えば水熱法により得られるチタン酸バリウムの様に粒子内に水酸基が取り込まれて正方晶性が低下することがなく、正方晶性の高いチタン酸バリウム粒子であることを意味する。なお、
図1の参考図に示すように、チタン酸バリウムのFT-IR測定では、格子内部水酸基のピーク位置には表面水酸基の幅広いピークが存在する。FT-IR測定において3500cm
-1近傍に検出される格子内部水酸基のピークが検出されるとは、
図1の上図のように、表面水酸基の幅広いピークの中に格子内部水酸基のピークの存在が目視で確認できることを意味し、格子内部水酸基のピークが検出されないとは、
図1の下図のように格子内部水酸基のピークの存在が目視で確認できないことを意味する。
チタン酸バリウムのc/a比は、より好ましくは、1.004以上であり、更に好ましくは、1.0045以上である。
【0045】
本発明のチタン酸バリウムの製造方法で得られるチタン酸バリウムは、粒径の小さい微細な粒子であり、また高純度であることから、近年小型化が進んでいる積層セラミックスコンデンサ等の共材や誘電体の材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0047】
各種測定は以下のようにして行った。
<水酸化チタンのTiO2含有率(%)>
水分を含む水酸化チタン(A(g))をるつぼに秤り取り、1000℃で2時間焼成した後、試料入りるつぼの重量(B(g))を計測し、下記式よりTiO2含有率を算出した。
100-(A-B)/A×100(%)
<比表面積測定>
全自動BET比表面積測定装置Macsorb Model HM-1200(Mountech社製)により測定した。
<酒石酸バリウムの粒度分布D50測定>
本明細書において、得られた酒石酸バリウムの粒度分布D50は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3300 EXII(日機装社製)によって測定した値である。測定時の溶媒として水を用いて測定を行った。
<炭酸バリウム由来の800℃吸熱ピークの有無の確認>
示差熱天秤Thermoplus EVOII TG-DTA(リガク社製)を使用して大気雰囲気下で10℃/分の昇温速度で1200℃まで昇温し、得られたDTA曲線上の800℃近傍に炭酸バリウム由来の吸熱ピークが検出されるかどうかを確認した。
<チタン酸バリウムに変化する温度>
示差熱天秤Thermoplus EVOII TG-DTA(リガク社製)を使用して大気雰囲気下で10℃/分の昇温速度で1200℃まで昇温し、得られたTG曲線の最も高温側における重量減少が完了する温度をチタン酸バリウムに変化する温度とした。
<比表面積換算径>
チタン酸バリウムの比表面積換算粒子径は、BET法によって求められる比表面積と同一の表面積を有する球の直径に相当する。すなわち、比表面積換算粒子径は、全自動BET比表面積測定装置Macsorb Model HM-1200(Mountech社製)により測定して求めた比表面積:Sgと、チタン酸バリウムの真比重:ρから、下記計算式により求めた値である。
チタン酸バリウムの比表面積換算粒子径(μm)=[6/(Sg×ρ)]
(Sg(m2/g):比表面積、ρ(g/cm3):粒子の真比重)
なお、粒子の真比重:ρは、チタン酸バリウムの真比重の値である6.08を上記計算に用いた。
<格子内部水酸基ピークの有無の確認>
フーリエ変換赤外分光装置Nicolet iS10 FT-IR(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により、3500cm-1近傍に検出される格子内部水酸基のピークの有無を確認した。
<チタン酸バリウム粒子のc/a比>
粉末X線回折装置RINT-TTR III(リガク製、線源CuKα)を用いて、粉末X線回折を行い、WPPF法を用いてc/a比を算出した。
【0048】
<実施例1>
水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは13.3(32℃)であった。続いて、L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し250mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは1.8(31℃)であった。続いて、上記水酸化バリウム水溶液1Lを120rpmで攪拌し、そこへ上記酒石酸水溶液250mLを25mL/分の一定の流量で10分間で添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の1分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの1分毎のpH挙動を確認した。酒石酸水溶液の添加開始からの攪拌終了までの20分間の1分毎の混合溶液のpH挙動及び温度を表1に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは3.5(34℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.6%、BET比表面積2.94m
2/g、粒度分布D50が15.20μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.19gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m
2/g、TiO
2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1002℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示唆熱分析結果を
図2に示した。チタン酸バリウムに変化する温度は679℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し323℃低下した。
次に、得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、680℃で2時間焼成することにより比表面積19.8m
2/g、比表面積換算径50nmのチタン酸バリウム粒子を得た。得られたチタン酸バリウム粒子の結晶化度を測定したところ、c/a比が1.005であり、FT-IR測定により格子内部水酸基のピークは検出されなかった。
【0049】
【0050】
<実施例2>
水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは13.3(40℃)であった。続いて、L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し250mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは1.9(40℃)であった。続いて、上記水酸化バリウム水溶液1Lを120rpmで攪拌し、そこへ上記酒石酸水溶液250mLを25mL/分の一定の流量で10分間で添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の1分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの2分毎のpH挙動を確認した。酒石酸水溶液の添加開始からの攪拌終了までの20分間の混合溶液のpH挙動及び温度を表2に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは2.7(38℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.7%、BET比表面積0.71m2/g、粒度分布D50が15.56μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.17gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m2/g、TiO2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1029℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は670℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し359℃低下した。
次に、得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、670℃で2時間焼成することにより比表面積21.3m2/g、比表面積換算径46nmのチタン酸バリウム粒子を得た。得られたチタン酸バリウム粒子の結晶化度を測定したところ、c/a比が1.005であり、FT-IR測定により格子内部水酸基のピークは検出されなかった。
【0051】
【0052】
<実施例3>
水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは13.1(20℃)であった。続いて、L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し250mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは1.9(14℃)であった。続いて、上記水酸化バリウム水溶液1Lを120rpmで攪拌し、そこへ上記酒石酸水溶液250mLを25mL/分の一定の流量で10分間で添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の1分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの2分毎のpH挙動を確認した。酒石酸水溶液の添加開始からの攪拌終了までの20分間の混合溶液のpH挙動及び温度を表3に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは3.3(26℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.4%、BET比表面積1.01m2/g、粒度分布D50が12.41μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.23gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m2/g、TiO2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1000℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は667℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し333℃低下した。
次に、得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、670℃で2時間焼成することにより比表面積21.5m2/g、比表面積換算径46nmのチタン酸バリウム粒子を得た。得られたチタン酸バリウム粒子の結晶化度を測定したところ、c/a比が1.005であり、FT-IR測定により格子内部水酸基のピークは検出されなかった。
【0053】
【0054】
<実施例4>
水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは12.2(30℃)であった。続いて、L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し500mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは1.9(26℃)であった。続いて、純水500mLを120rpmで攪拌し、上記水酸化バリウム水溶液を少量加えてpHを12.0(27℃)に調整した後、そこへ可能な限りpHを12に維持するように上記水酸化バリウムと上記酒石酸水溶液とを20分間かけて同時に添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の2分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの2分毎のpH挙動を確認した。酒石酸水溶液の添加開始からの攪拌終了までの30分間の混合溶液のpH挙動及び温度を表4に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは12.4(30℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.7%、BET比表面積0.55m2/g、粒度分布D50が11.64μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.17gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m2/g、TiO2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1033℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は692℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し341℃低下した。
次に、得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、695℃で2時間焼成することにより比表面積18.8m2/g、比表面積換算径52nmのチタン酸バリウム粒子を得た。得られたチタン酸バリウム粒子の結晶化度を測定したところ、c/a比が1.005であり、FT-IR測定により格子内部水酸基のピークは検出されなかった。
【0055】
【0056】
<実施例5>
L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し250mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは2.2(24℃)であった。続いて、水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは12.5(30℃)であった。続いて、上記酒石酸水溶液250mLを120rpmで攪拌し、そこへ上記水酸化バリウム水溶液1Lを100mL/分の一定の流量で10分間で添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の1分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの2分毎のpH挙動を確認した。水酸化バリウム水溶液の添加開始からの攪拌終了までの20分間の混合溶液のpH挙動及び温度を表5に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは12.1(30℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.8%、BET比表面積1.44m2/g、粒度分布D50が23.35μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.15gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m2/g、TiO2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1047℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は665℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し382℃低下した。次に、得られた混合物の熱重量・示唆熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、665℃で2時間焼成することにより比表面積21.7m2/g、比表面積換算径46nmのチタン酸バリウム粒子を得た。得られたチタン酸バリウム粒子の結晶化度を測定したところ、c/a比が1.005であり、FT-IR測定により格子内部水酸基のピークは検出されなかった。
【0057】
【0058】
<比較例1>
L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し250mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは1.9(32℃)であった。続いて、水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは12.3(33℃)であった。続いて、上記酒石酸水溶液250mLを120rpmで攪拌し、そこへ上記水酸化バリウム水溶液1Lを100mL/分の一定の流量で10分間で添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の1分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの1分毎のpH挙動を確認した。水酸化バリウム水溶液の添加開始からの攪拌終了までの20分間の1分毎の混合溶液のpH挙動及び温度を表2に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは4.3(35℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.7%、BET比表面積0.41m
2/g、粒度分布D50が72.53μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.17gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m
2/g、TiO
2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1078℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示唆熱分析結果を
図2に示した。チタン酸バリウムに変化する温度は946℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し132℃低下した。次に、得られた混合物の熱重量・示唆熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、950℃で2時間焼成することにより比表面積3.5m
2/g、比表面積換算径282nmのチタン酸バリウム粒子を得た。
【0059】
【0060】
<比較例2>
水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは12.6(32℃)であった。続いて、L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し500mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは1.9(28℃)であった。続いて、純水500mLを120rpmで攪拌し、上記酒石酸水溶液を少量加えてpHを4.2(25℃)に調整した後、そこへ可能な限りpHを4に維持するように上記水酸化バリウムと上記酒石酸水溶液とを20分間かけて同時に添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の2分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの2分毎のpH挙動を確認した。酒石酸水溶液の添加開始からの攪拌終了までの30分間の混合溶液のpH挙動及び温度を表7に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは4.0(29℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.8%、BET比表面積0.12m2/g、粒度分布D50が73.38μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.16gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m2/g、TiO2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1085℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は909℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し176℃低下した。
次に、得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、910℃で2時間焼成することにより比表面積4.3m2/g、比表面積換算径229nmのチタン酸バリウム粒子を得た。
【0061】
【0062】
<比較例3>
水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは12.4(34℃)であった。続いて、L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し500mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは1.8(25℃)であった。続いて、純水500mLを120rpmで攪拌し、上記酒石酸水溶液を少量加えてpHを6.1(24℃)に調整した後、そこへ可能な限りpHを6に維持するように上記水酸化バリウムと上記酒石酸水溶液とを20分間かけて同時に添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の2分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの2分毎のpH挙動を確認した。酒石酸水溶液の添加開始からの攪拌終了までの30分間の混合溶液のpH挙動及び温度を表8に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは5.6(29℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.8%、BET比表面積0.38m2/g、粒度分布D50が72.30μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.15gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m2/g、TiO2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1078℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は794℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し284℃低下した。
次に、得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、800℃で2時間焼成することにより比表面積6.9m2/g、比表面積換算径143nmのチタン酸バリウム粒子を得た。
【0063】
【0064】
<比較例4>
水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは12.2(32℃)であった。続いて、L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し500mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは1.9(25℃)であった。続いて、純水500mLを120rpmで攪拌し、上記水酸化バリウム水溶液を少量加えてpHを8.0(25℃)に調整した後、そこへ可能な限りpHを8に維持するように上記水酸化バリウムと上記酒石酸水溶液とを20分間かけて同時に添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の2分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの2分毎のpH挙動を確認した。酒石酸水溶液の添加開始からの攪拌終了までの30分間の混合溶液のpH挙動及び温度を表9に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは6.2(29℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.8%、BET比表面積0.19m2/g、粒度分布D50が86.19μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.15gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m2/g、TiO2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1073℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は826℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し247℃低下した。
次に、得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、830℃で2時間焼成することにより比表面積6.2m2/g、比表面積換算径159nmのチタン酸バリウム粒子を得た。
【0065】
【0066】
<比較例5>
水酸化バリウム8水塩76.5gを加熱した純水中に加えて完全に溶解し1Lの水溶液に調整した。得られた水酸化バリウム水溶液のpHは12.8(31℃)であった。続いて、L(+)-酒石酸34.93gを純水中に加えて完全に溶解し500mLの水溶液に調整した。得られた酒石酸水溶液のpHは1.8(25℃)であった。続いて、純水500mLを120rpmで攪拌し、上記水酸化バリウム水溶液を少量加えてpHを10.1(25℃)に調整した後、そこへ可能な限りpHを10に維持するように上記水酸化バリウムと上記酒石酸水溶液とを20分間かけて同時に添加し、添加過程における混合溶液(反応スラリー)の2分毎のpHの値の挙動を確認した。添加完了後、10分間攪拌を継続し、攪拌継続時の反応スラリーの2分毎のpH挙動を確認した。酒石酸水溶液の添加開始からの攪拌終了までの30分間の混合溶液のpH挙動及び温度を表10に示した。最終的に得られた反応スラリーのpHは8.8(30℃)であった。続いて反応スラリーをろ過、水洗し、120℃で一晩乾燥することにより、純度99.8%、BET比表面積0.18m2/g、粒度分布D50が52.63μmの酒石酸バリウムを得た。
上記酒石酸バリウム17.17gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。水酸化チタン(水分を含む、比表面積:299.7m2/g、TiO2含有率19.4%)24.71gを純水にリパルプし、750mLのスラリーを調製した。上記酒石酸バリウムのスラリー750mLを1500rpmで撹拌し、そこへ上記水酸化チタンのスラリー750mLを250mL/分の添加速度で3分間で添加した。添加終了後10分間撹拌を継続することにより、TiとBaのモル比が1:1となる水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合スラリーを調製した。混合スラリー調整時の温度は、28~32℃であった。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥し、混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は1066℃であることが分かった。得られた混合物12gを容積140mLのマヨネーズ瓶に入れ、直径0.1mmのジルコニアビーズ100g、純水77.3gを入れて蓋をして良く撹拌した後、ペイントコンディショナーにて90分間振とうし、粉砕された水酸化チタンと酒石酸バリウムの混合物スラリーを得た。得られた混合スラリーを、濾過、水洗、乾燥して混合物を得た。得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果から、チタン酸バリウムに変化する温度は868℃であり、粉砕によるメカノケミカル効果によりチタン酸バリウムに変化する温度は粉砕前に対し198℃低下した。
次に、得られた混合物の熱重量・示差熱分析結果を基に、混合物を大気雰囲気下、870℃で2時間焼成することにより比表面積5.2m2/g、比表面積換算径190nmのチタン酸バリウム粒子を得た。
【0067】
【0068】
【0069】
実施例1~5の結果から、バリウム化合物と酒石酸との反応における少なくとも1時点において、バリウム化合物と酒石酸との混合溶液のpHを12以上とすることにより、バリウム化合物と酒石酸との添加順序に関わらず得られた酒石酸バリウムとチタン化合物との混合物を700℃未満で焼成してチタン酸バリウムにすることができることが明らかである。
一方、比較例1~5の結果から、バリウム化合物と酒石酸との反応において、バリウム化合物と酒石酸との混合溶液のpHを12以上としなかった場合には、酒石酸バリウムを700℃未満で焼成してチタン酸バリウムにすることができなかった。なお、比較例1は、原料の仕込み量や操作が実施例5と同じであるが、混合溶液のpHが12以上とならなかった原因として、例えばアルカリ成分である水酸化バリウムが一部炭酸化して水に対して不溶性となり、アルカリとして作用しなかったことが考えられる。このことからも原料の仕込み量や操作に関わらず、混合溶液のpHを12以上とすることにより、本発明の効果が発揮されることがわかる。
以上の結果から、本発明のチタン酸バリウムの製造方法の技術的意義が確認された。