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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/52 20060101AFI20221012BHJP
   B62D 35/00 20060101ALI20221012BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B60R19/52 L
B62D35/00 B
B60Q1/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018221447
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020083108
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中田 章博
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】新井 大斗
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/072476(WO,A1)
【文献】特開2018-161983(JP,A)
【文献】特開昭56-034542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
B62D 35/00
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部構造であって、
車両前面から車両側面に向かって湾曲するフロントバンパフェースと、
レンズの下縁が上記フロントバンパフェースに隣接され、レンズ面が車両前面から車両側面にわたって配置されるヘッドランプと、
該ヘッドランプと当該ヘッドランプ下部のフロントバンパフェースとの間に設けられ、これら両者よりも車両前方に突出する加飾部材と、を備え、
上記加飾部材は、前面部と側面部とを有し、これら両面部が連続して延びることで車両前面から車両側面にわたって設けられると共に、
上記側面部は、車幅外方側の側端部が略平坦面で形成され、後方が上方に向かって傾斜、または水平に形成されており、上記側面部の後端高さが、フロントホイールハウス上端位置よりも上方に位置し
上記前面部は、上面部と下面部とを有しており、上記上面部と上記下面部とを前方に向けて先細り形状に成した前端先鋭部が形成された
車両の前部構造。
【請求項2】
上記加飾部材は、全体的に上記ヘッドランプの車幅方向内側から車幅方向外方へ向かうに従い上方に向けて傾斜する
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
上記加飾部材は、車両側面視における側面部の傾斜角度が、車両正面視における前面部の傾斜角度に対して大きく形成された
請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
上記加飾部材の前面部の下端位置は、上記フロントホイールハウスの上端位置よりも下方に位置する
請求項1~3の何れか一項に記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両前面から車両側面に向かって湾曲するフロントバンパフェースと、レンズの下縁が上記フロントバンパフェースに隣接され、レンズ面が車両前面から車両側面にわたって配置されるヘッドランプと、該ヘッドランプと当該ヘッドランプ下部のフロントバンパフェースとの間に設けられ、これら両者よりも車両前方に突出する加飾部材と、を備えたような車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両前部において、ヘッドランプ下部のフロントバンパフェースに当たった走行風の一部は、サイド方向に向かい車両側方に沿って流れるが、前輪に巻き込まれる走行風の量が多くなる程、気流が乱れ、空力性能が悪化する。
【0003】
従来、特許文献1に開示されているように、ヘッドランプと、該ヘッドランプ下部のフロントバンパフェースとの間に、車両正面視でヘッドランプの車幅方向内側から車幅方向外側に向かって延びる加飾部材(いわゆるシグニチャ)を備えた車両の前部構造が既に発明されているが、空力性能向上の観点で、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-52363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、ヘッドランプ下方のフロントバンパフェースに当たった後に、サイド方向に向かって車両側方に沿って流れる走行風が前輪に巻き込まれる量を低減し、空力性能の向上を図ることができる車両の前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車両の前部構造は、車両の前部構造であって、車両前面から車両側面に向かって湾曲するフロントバンパフェースと、レンズの下縁が上記フロントバンパフェースに隣接され、レンズ面が車両前面から車両側面にわたって配置されるヘッドランプと、該ヘッドランプと当該ヘッドランプ下部のフロントバンパフェースとの間に設けられ、これら両者よりも車両前方に突出する加飾部材と、を備え、上記加飾部材は、前面部と側面部とを有し、これら両面部が連続して延びることで車両前面から車両側面にわたって設けられると共に、上記側面部は、車幅外方側の側端部が略平坦面で形成され、後方が上方に向かって傾斜、または水平に形成されており、上記側面部の後端高さが、フロントホイールハウス上端位置よりも上方に位置し、上記前面部は、上面部と下面部とを有しており、上記上面部と上記下面部とを前方に向けて先細り形状に成した前端先鋭部が形成されたものである。
【0007】
上記構成によれば、加飾部材における側面部の後端高さが、フロントホイールハウスの上端位置よりも上方に位置しているので、ヘッドランプ下方のフロントバンパフェースに当たった後に、サイド方向に向かって車両側方に沿って流れる風を、上記加飾部材の側面部下縁に沿って車両後方かつ上方に案内し、この風をフロントホイールハウスの上端から上方に離れるようにガイドする。
この結果、フロントバンパフェースに当たった後に、サイド方向に向かって車両側方に沿って流れる走行風が前輪に巻き込まれる量を低減して、空力性能の向上を図ることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記加飾部材は、全体的に上記ヘッドランプの車幅方向内側から車幅方向外方へ向かうに従い上方に向けて傾斜するものである。
上記構成によれば、上述の加飾部材の上記傾斜構造により、走行風が車両前面から車両側面に向かう段階から当該走行風を上方に向けて案内することができ、走行風がフロントホイールハウス内に流れ込むのを抑制することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記加飾部材は、車両側面視における側面部の傾斜角度が、車両正面視における前面部の傾斜角度に対して大きく形成されたものである。
上記構成によれば、走行風が加飾部材から離脱(剥離)する手前で、上記側面部の相対的に大きい傾斜角度により、走行風を効率的に上方に向けて案内することができ、この結果、フロントバンパフェースに当たった後に、サイド方向に向かって車両側方に沿って流れる走行風が前輪に巻き込まれる量をより一層低減して、空力性能の向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記加飾部材の前面部の下端位置は、上記フロントホイールハウスの上端位置よりも下方に位置するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ヘッドランプ下方のフロントバンパフェースに当たった後に、サイド方向に向かって車両側方に沿って流れる走行風が、前輪に巻き込まれる量を低減し、空力性能の向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の車両の前部構造を車両前方かつ車幅方向外方から見た状態で示す斜視図
図2図1の正面図
図3図1の車両左側の側面図
図4図1の平面図
図5】車両の前部構造を車両前方かつ下方から見た状態で示す斜視図
図6図2のA-A線に沿う要部の拡大断面図
図7】車両の前部構造を斜め下方から見た状態で示す部分拡大斜視図
図8】(a)は加飾部材の車両正面視における前面部の傾斜角度を示す要部正面図、(b)は加飾部材の車両側面視における側面部の傾斜角度を示す要部側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
ヘッドランプ下方のフロントバンパフェースに当たった後に、サイド方向に向かって車両側方に沿って流れる走行風が前輪に巻き込まれる量を低減し、空力性能の向上を図るという目的を、車両の前部構造であって、車両前面から車両側面に向かって湾曲するフロントバンパフェースと、レンズの下縁が上記フロントバンパフェースに隣接され、レンズ面が車両前面から車両側面にわたって配置されるヘッドランプと、該ヘッドランプと当該ヘッドランプ下部のフロントバンパフェースとの間に設けられ、これら両者よりも車両前方に突出する加飾部材と、を備え、上記加飾部材は、前面部と側面部とを有し、これら両面部が連続して延びることで車両前面から車両側面にわたって設けられると共に、上記側面部は、車幅外方側の側端部が略平坦面で形成され、後方が上方に向かって傾斜、または水平に形成されており、上記側面部の後端高さが、フロントホイールハウス上端位置よりも上方に位置し、上記前面部は、上面部と下面部とを有しており、上記上面部と上記下面部とを前方に向けて先細り形状に成した前端先鋭部が形成されるという構成にて実現した。
【実施例
【0014】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部構造を示し、図1は当該車両の前部構造を車両前方かつ車幅方向外方から見た状態で示す斜視図、図2図1の正面図、図3図1の車両左側の側面図、図4図1の平面図、図5は車両の前部構造を車両前方かつ下方から見た状態で示す斜視図、図6図2のA-A線に沿う要部の拡大断面図(但し、図6では図示の便宜上、フロントグリルのリブおよびエンブレムを省略している)、図7は車両の前部構造を斜め下方から見た状態で示す部分拡大斜視図である。
【0015】
なお、以下の実施例においては車両左側の前部構造について説明するが、車両右側の前部構造は車両左側のそれと左右対称または、左右略対称に形成されている。
【0016】
図1図2図3に示すように、エンジンルームの前方を覆うフロントバンパ10を設けている。このフロントバンパ10は車両前面から車両側面に向かって湾曲する形状に形成されている。当該フロントバンパ10は合成樹脂により形成することができる。
【0017】
このフロントバンパ10はフロントバンパフェース11と、該フロントバンパフェース11の下部に位置するバンパ部12とを有しており、上記フロントバンパフェース11およびバンパ部12は、何れも車両前面から車両側面に向かって湾曲するよう形成されている。
【0018】
上述のフロントバンパフェース11は車両前面に位置する前面部11aと、車両側面に位置する側面部11bとを有しており、同様に、上述のバンパ部12も車両前面に位置する前面部12aと、車両側面に位置する側面部12bとを有している。
【0019】
図1図4に示すように、エンジンルームの上方を覆うボンネット13を設けている。このボンネット13は、図6に示すように、ボンネットアウタパネル14とボンネットインナパネル15とを、ヘミング加工により一体的に構成したものであり、当該ボンネット13はその後端部のボンネットヒンジ(図示せず)を支点として開閉可能に構成されている。
【0020】
図1図4に示すように、エンジンルームの側方を覆うフロントフェンダパネル16を設けている。このフロントフェンダパネル16はボンネット13の車幅方向端部よりも下方に位置すると共に、フロントバンパフェース11の側面部11bの後端11cよりも後方に位置するパネル部材である。
【0021】
図1図3に示すように、フロントバンパフェース11の側面部11bの下側後端と、フロントフェンダパネル16の下部との両者でフロントホイールアーチ17を形成し、このフロントホイールアーチ17に沿って、前輪18用のホイールハウス19(詳しくは、フロントホイールハウス)を形成すると共に、フロントホイールアーチ17に沿う車体外板にはオーバフェンダ20を設けている。
【0022】
この実施例では、上述のオーバフェンダ20は、フロントバンパフェース11側の前側オーバフェンダ20aと、フロントフェンダパネル16側の後側オーバフェンダ20bとの前後に分割形成されており、これら両オーバフェンダ20a,20bを車体外板に取付けた時、その合わせ面20cが、フロントバンパフェース11の側面部11bにおける後端11cと一致して、上下方向に連続するよう形成されている。なお、上記オーバフェンダ20は前後に分割された構造に代えて、前側オーバフェンダ20aと後側オーバフェンダ20bとを一体に形成した非分割構造のものを採用してもよい。
【0023】
図1図2に示すように、フロントバンパフェース11の前面部11aの車幅方向中央上部には横長形状のフロントグリル21が配置されている。このフロントグリル21は合成樹脂により形成されており、該フロントグリル21は上下間隔を隔てて車幅方向に延びる複数の横リブ22と、左右間隔を隔てて上下方向に延びる複数の縦リブ23とを組合せて格子状部を形成すると共に、横リブ22と縦リブ23との間(つまり、格子状部の空間部)には、上側走行風導入口24(いわゆる外気導入用の開口部)が形成されている。
【0024】
エンジンルーム内にはラジエータ等の熱交換器(図示せず)が配置されており、上記上側走行風導入口24は上記熱交換器(特に、ラジエータ)における車両正面視でその車幅方向全幅と略一致する車幅方向の長さにわたって開口形成されている。
【0025】
フロントグリル21における車両正面視で熱交換器が存在しない部位である車幅方向の側部には、該フロントグリル21と合成樹脂により一体形成された閉塞部材25にて、閉塞部26が形成されている。
【0026】
この閉塞部26により、エンジンルーム内への走行風の流入を抑制して、エンジンの過冷却を防止すると共に、エンジンルーム内における渦流の発生を抑制するよう構成している。また、フロントグリル21の車幅方向中央上部の前面には、エンブレム27が取付けられている。
すなわち、上記フロントグリル21はその中央部に上側走行風導入口24が設けられると共に、当該上側走行風導入口24の側部が閉塞部26にて閉塞されたものである。
【0027】
さらに、図1図2に示すように、フロントバンパフェース11下部のバンパ部12における前面部12aの車幅方向中央上部には、横長環状の枠部28で囲繞された下側走行風導入口29(いわゆる外気導入用の開口部)が形成されている。
【0028】
該下側走行風導入口29の上下の枠部28間に、左右間隔を隔てて上下方向に延びる複数の縦リブ30を設けると共に、この下側走行風導入口29における車両正面視でエンジンルーム内の熱交換器が存在しない部位としての車幅方向側部は、バンパ部12と一体または別体の蓋部31で覆われている。
【0029】
この蓋部31により、エンジンルーム内への走行風の流入を抑制して、エンジンの過冷却を防止すると共に、エンジンルーム内における渦流の発生を抑制するよう構成している。また、下側走行風導入口29の車幅方向中央部の前面には、ナンバプレート32(ライセンスプレートと同意)が取付けられている。
一方、上述のフロントグリル21の車幅方向外側方で、かつ上記フロントバンパフェース11の上部には、前照燈としてのヘッドランプ40が設けられている。
【0030】
図6に示すように、このヘッドランプ40はアウタレンズ41とランプハウジング42とを備えている。
図1図3に示すように、上記ヘッドランプ40のアウタレンズ41はその車幅方向内側が上記フロントグリル21に隣接すると共に、その下端が上記フロントバンパフェース11に隣接し、さらに、その上端が後述するバンパフェースアッパ60に隣接するよう配設されている。
【0031】
詳しくは、上記アウタレンズ41の下縁がフロントバンパフェース11に隣接され、レンズ面としてのアウタレンズ41の外面が図4に示すように、車両前面から車両側面にわたって配置されたものである。
つまり、該アウタレンズ41はその外面が車両前面側に位置する前面部41aと、その外面が車両側面側に位置する側面部41bと、を備えている(図1参照)。
【0032】
図1図2に示すように、上述のフロントバンパフェース11と上述のフロントグリル21との間には、加飾部材としてのシグニチャ50(signature)を設けている。
このシグニチャ50は、フロントグリル21の車幅方向に延びる下縁とフロントバンパフェース11における前面部11aとの間を車幅方向に延びるように形成された下辺部51と、この下辺部51の車幅方向端部からフロントグリル21の車幅方向の側縁とフロントバンパフェース11における前面部11aとの間を、上方かつ車幅方向外方に向かって斜め方向に延びる側辺部52と、フロントグリル21の車幅方向外側端に対応する上記側辺部52の上端からフロントバンパフェース11の上端とヘッドランプ40の下縁との間に向かって車幅方向外側方に延びる側方延長部53と、上記側辺部52の上端からフロントグリル21の車幅方向外側上部とヘッドランプ40の車幅方向内端部との間に向かって上方に延びる上方延長部54と、を備えている。
【0033】
図1図4図5図7に示すように、上記シグニチャ50の側方延長部53は、車両前面から車両側面にわたって設けられており、該側方延長部53は、フロントバンパフェース11の前面部11aとヘッドランプ40の前面部40aとの間に位置する前面部53aと、フロントバンパフェース11の側面部11bとヘッドランプ40の側面部40bとの間に位置する側面部53bと、を有している。
【0034】
図6に断面図で示すように、ヘッドランプ40下縁の加飾部材であるシグニチャ50の側方延長部53の前面部53aは、該ヘッドランプ40のアウタレンズ41のレンズ面(アウタレンズ41の前面側外表面参照)および下方のバンパフェース面(フロントバンパフェース11における前面部11aの前面側外表面参照)よりも車両前方に突出されている。
【0035】
同図に示すように、上記側方延長部53の前面部53aは、上面部53cと下面部53dとを有しており、上面部53cと下面部53dとを前方に向けて先細り形状に形成し、これら両面部の成す角度を79度~83度に設定した前端先鋭部53eを形成している。なお、上記角度の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
【0036】
図6に示すように、車両前面から車両側面にわたる側方延長部53における前面部53aの後端とアウタレンズ41との間(図6参照)、並びに、側面部53bの車幅方向内端とアウタレンズ41との間には、後方延長部55が設けられている。
図1図4に示すように、上述のフロントグリル21の上部枠を形成するバンパフェースアッパ60を設けている。このバンパフェースアッパ60は合成樹脂にて形成することができる。
【0037】
また当該バンパフェースアッパ60は、図2に示すように、フロントグリル21の上縁に沿って車幅方向に延びる前面部60aと、当該前面部60aの車幅方向端部からヘッドランプ40におけるアウタレンズ41上縁に沿って車両側面に廻り込む側面部60bと、を一体形成したものである。
【0038】
また、上記バンパフェースアッパ60は図6に示すように、上面部60cと下面部60dとを一体形成したもので、上面部60cはボンネット13の前低後高状の傾斜形状と連続すべく、その前端から後端にかけて後方かつ上方に傾斜しており、ヘッドランプ40のアウタレンズ41の前面部41aに隣接する下面部60dは略水平状に形成されている。
【0039】
図3に示すように、上記バンパフェースアッパ60の側面部60bの後端60eは、フロントバンパフェース11の側面部11bにおける後端11cと一致して、上下方向に連続するよう形式されている。
つまり、バンパフェースアッパ60の後端60eと、フロントバンパフェース11の後端11cと、各オーバフェンダ20a,20bの合わせ面20cとが、上下方向に連続するよう形成されたものである。
【0040】
図6にヘッドランプ40配設部位の断面図を示すように、当該ヘッドランプ40の配設部位において、上記バンパフェースアッパ60の前端部60fは、上記ヘッドランプ40のアウタレンズ41のレンズ面(アウタレンズ41の前面側外表面参照)よりも車両前方に突出しており、この前端部60fに対して、シグニチャ50の側方延長部53の前端先鋭部53eは、さらに車両前方に突出している。換言すれば、ヘッドランプ40のアウタレンズ41のレンズ面は、バンパフェースアッパ60の前端部60fおよびシグニチャ50における側方延長部53の前端先鋭部53eに対して、車両後方の奥まった位置に配置されている。
【0041】
図7に示すように、ヘッドランプ40下方のフロントバンパフェース11の前面部11aに当った走行風の一部は上方に向けて流れた後に、上記前端先鋭部53eにて剥離され、剥離された走行風e1はバンパフェースアッパ60の上面部60cを経由してボンネット13上に向けて流れ、走行風e1がヘッドランプ40のレンズ面(アウタレンズ41の外表面)に直接当たることによる渦の発生を抑制することができる。なお、この実施例においても、前端先鋭部53eの直下流側には渦流が形成されるが、この渦流は、走行風がヘッドランプ40のレンズ面に直接当たることによる渦流に対して充分小さいものである。
【0042】
一方、図2に示すように、加飾部材であるシグニチャ50の上方延長部54は、車幅方向の内側に位置する内壁54aと、車幅方向の外側に位置する外壁54bとを備えている。また、該上方延長部54は、図6図7に示すように、車両前方への突出量が、上方に向かうに従い小さく設定されている。つまり、当該上方延長部54の車両前方への突出量は、その下部で大きく、上方に向かう程、漸次小さくなるよう形成されている。
【0043】
しかも、上記上方延長部54の前端部には、フロントグリル21の側部における閉塞部26に当たった走行風を、図7に示すボンネット13上に向けて流れる走行風e1の方向に向けて流す剥離部としての稜線部x1が形成されている。この稜線部x1は内壁54aと外壁54bとが車両前方側で交わる部位に形成されると共に、当該稜線部x1は、上方延長部54の長手方向(上下方向)に沿ってその前端部に形成されたものである。
【0044】
これにより、図7に示すように、フロントグリル21の側部で上側走行風導入口24を閉塞部26にて閉塞した部位に当たった風が、シグニチャ50の上方延長部54の上記突出量漸減構造により、当該上方延長部54から車幅方向外側へ流れ(走行風e2参照)、この走行風e2がボンネット13上に向けて流れる走行風e1に合流することで、フロントグリル21側部の閉塞部位(閉塞部26参照)で風圧が高くなることを抑制し、空力性能の向上を図るものである。
【0045】
また、ヘッドランプ40下方のフロントバンパフェース11の前面部11aに当った走行風の一部を前端先鋭部53eにて剥離し、剥離した走行風e1をボンネット13上に向けて流すことで、ヘッドランプ40のレンズ面に直接当たることによる渦流の発生を抑制することに併せて、フロントグリル21側部の閉塞部26で風圧が高くなることを抑制するので、これらの効果により、Cd値(空気抗力係数)が低減し、空力性能の向上を図り、さらに、フロントグリル21の側部の閉塞部位の空力性能悪化を抑制するよう構成したものである。
【0046】
図1図7に示すように、上述のシグニチャ50の上方延長部54の上端は、フロントグリル21の上部枠を形成するバンパフェースアッパ60の下面部60dに連結されている。これにより、フロントグリル21の周囲に途切れがない連続した枠線を形成し、車両正面視におけるデザイン性を確保するよう構成している。
【0047】
上記上方延長部54の稜線部x1は、シグニチャ50の上方延長部54における頂部54cを構成するもので、この頂部54cはフロントグリル21側、すなわち、車幅方向内方側に偏位し、かつ車両前方が狭い先細り形状に形成されている(図1図2図7参照)。
【0048】
これにより、フロントグリル21側部の閉塞部26に当たった風が、上記シグニチャ50の上方延長部の先細り形状の頂部54cにて確実に剥離され、この剥離後の走行風e2を車幅方向外側に流して、ボンネット13上に向けて流れる走行風e1と合流させ、また、上方延長部54の頂部54cがフロントグリル21側に片寄って形成されることで、ヘッドランプ40の配光ラインを車両中央側に向けて配光するよう構成したものである。
【0049】
しかも、加飾部材としてのシグニチャ50において、その側方延長部53は、図1図4に示すように、車両前面から車両側面にわたって設けられており、該側方延長部53の側面部53bは、図3に側面図で示すように、後方が上方に向かって傾斜(前低後高状に傾斜)しており、当該側面部53bの後端53r高さが、ホイールハウス19の上端19a位置よりも距離Lだけ上方に位置している。
【0050】
このように、シグニチャ50の側方延長部53の側面部53bにおける後端53rの高さを、ホイールハウス19の上端19aの位置よりも上方に位置させることで、ヘッドランプ40下方のフロントバンパフェース11に当たった後にサイド方向に向けて車両側方に沿って流れる風(図3に太線矢印で示す走行風e3参照)を、シグニチャ50の側面部53b下縁に沿って車両後方かつ上方に案内し、この走行風e3をホイールハウス19の上端19aから上方へ離れるようにガイドする。この結果、上記走行風e3が前輪18に巻き込まれる量を低減して、空力性能の向上を図るよう構成したものである。
【0051】
さらに、図1図2図3に示すように、加飾部材としてのシグニチャ50の側方延長部53は、全体的に上述のヘッドランプ40の車幅方向内側から車幅方向外方へ向かうに従い上方に向けて傾斜している。つまり、側方延長部53は、ヘッドランプ40のアウタレンズ41における前面部41aの車幅方向内側から側面部41bの車幅方向外側に向かうに従って次第に上方に向けて傾斜しており、この傾斜構造により、走行風が車両前面(フロントバンパフェース11の前面部11a参照)から車両側面(フロントバンパフェース11の側面部11b)に向かう段階から上方に向けて案内され、これにより走行風がホイールハウス19内に流れ込むのを抑制するよう構成したものである。
【0052】
図8の(a)は加飾部材(シグニチャ50)の車両正面視における前面部53aの傾斜角度を示す要部正面図、図8の(b)は加飾部材(シグニチャ50)の車両側面視における側面部53bの傾斜角度を示す要部側面図である。
【0053】
図8の(a)、(b)に示すように、加飾部材であるシグニチャ50の側方延長部53は、車両側面視における側面部53bの傾斜角度θ2(図8の(b)参照)が、車両正面視における前面部53aの傾斜角度θ1に対して大きく形成されている。
【0054】
この実施例では、上記傾斜角度θ1を12度に設定し、上記傾斜角度θ2を19度に設定して、θ1<θ2の関係式が成立するように形成しているが、例示した角度の数値は一例であって、この数値に限定されるものではない。
【0055】
θ1<θ2の関係式が成立するように構成することで、走行風がシグニチャ50から離脱する手前で、上記側面部53bの相対的に大きい傾斜角度θ2により、効率的に上方に向けて案内し、この結果、フロントバンパフェース11に当たった後にサイド方向に向かって車両側方に沿って流れる走行風e3(図3参照)が、前輪18に巻き込まれる量をより一層低減して、空力性能の向上を図るよう構成したものである。
【0056】
なお、図中、34は床下走行風を整流するためのアンダカバー、35は前輪18の前方において車体下面に取付けられたタイヤデフレクタである。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0057】
このように、上記実施例の車両の前部構造は、車両の前部構造であって、車両前面から車両側面に向かって湾曲するフロントバンパフェース11と、レンズ(アウタレンズ41参照)の下縁が上記フロントバンパフェース11に隣接され、レンズ面(アウタレンズ41の外表面参照)が車両前面から車両側面にわたって配置されるヘッドランプ40と該ヘッドランプ40と当該ヘッドランプ40下部のフロントバンパフェース11との間に設けられ、これら両者よりも車両前方に突出する加飾部材(シグニチャ50参照)と、を備え、上記加飾部材(シグニチャ50、特に、その側方延長部53参照)は、車両前面から車両側面にわたって設けられると共に、その側面部53bは、後方が上方に向かって傾斜しており、上記側面部53bの後端53rの高さが、ホイールハウス19の上端19aの位置よりも上方に位置しているものである(図1図4参照)。
【0058】
この構成によれば、加飾部材(シグニチャ50、特に、その側方延長部53参照)における側面部53bの後端53rの高さが、ホイールハウス19の上端19aの位置よりも上方に位置しているので、ヘッドランプ40下方のフロントバンパフェース11に当たった後に、サイド方向に向かって車両側方に沿って流れる風(走行風e3参照)を、上記加飾部材(シグニチャ50の側方延長部53)の側面部53b下縁に沿って車両後方に案内し、この風をホイールハウス19の上端19aから上方に離れるようにガイドする。
この結果、フロントバンパフェース11に当たった後に、サイド方向に向かって車両側方に沿って流れる走行風e3が前輪18に巻き込まれる量を低減して、空力性能の向上を図ることができる。
【0059】
なお、図示実施例においては、側面部53bは、後方が上方に向かって傾斜した構造を例示したが、側面部53bの後端53rの高さが、ホイールハウス19の上端19aの位置よりも上方に位置していれば、側面部53bが上記後傾構造に代えて水平または略水平に形成される構造を採用してもよい。
【0060】
また、この発明の一実施形態においては、上記加飾部材(シグニチャ50、特にその側方延長部53参照)は、全体的に上記ヘッドランプ40の車幅方向内側から車幅方向外方へ向かうに従い上方に向けて傾斜するものである(図1図2参照)。
【0061】
この構成によれば、上述の加飾部材(シグニチャ50の側方延長部53)の上記傾斜構造により、走行風が車両前面から車両側面に向かう段階から当該走行風を上方に向けて案内することができ、走行風e3がホイールハウス19内に流れ込むのを抑制することができる。
【0062】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記加飾部材(シグニチャ50の側方延長部53参照)は、車両側面視における側面部53bの傾斜角度θ2(図8の(b)参照)が、車両正面視における前面部53aの傾斜角度θ1(図8の(a)参照)に対して大きく形成されたものである(図8参照)。
【0063】
この構成によれば、走行風e3が加飾部材(シグニチャ50、特に、その側方延長部53)から離脱(剥離)する手前で、上記側面部53bの相対的に大きい傾斜角度θ2により、走行風を効率的に上方に向けて案内することができ、この結果、フロントバンパフェース11に当たった後に、サイド方向に向かって車両側方に沿って流れる走行風e3が前輪18に巻き込まれる量をより一層低減して、空力性能の向上を図ることができる。
【0064】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のレンズは、実施例のアウタレンズ41に対応し、以下同様に、
レンズ面は、アウタレンズ41の外表面に対応し、
加飾部材は、シグニチャ50(signature)に対応し、
フロントホイールハウスは、ホイールハウス19に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明は、車両前面から車両側面に向かって湾曲するフロントバンパフェースと、レンズの下縁が上記フロントバンパフェースに隣接され、レンズ面が車両前面から車両側面にわたって配置されるヘッドランプと、該ヘッドランプと当該ヘッドランプ下部のフロントバンパフェースとの間に設けられ、これら両者よりも車両前方に突出する加飾部材と、を備えたような車両の前部構造について有用である。
【符号の説明】
【0066】
11…フロントバンパフェース
19…ホイールハウス(フロントホイールハウス)
19a…上端
40…ヘッドランプ
41…アウタレンズ(レンズ)
50…シグニチャ(加飾部材)
53…側方延長部
53a…前面部
53b…側面部
53c…上面部
53d…下面部
53e…前端先鋭部
53r…後端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8