(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/103 20210101AFI20221012BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20221012BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20221012BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20221012BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20221012BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M50/184 A
H01M10/04 Z
H01G11/84
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2018224804
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】田丸 耕二郎
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101599(JP,A)
【文献】特開2010-129251(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055858(WO,A1)
【文献】特開2018-101586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 10/0585
H01M 10/04
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板と前記電極板の周縁部を囲繞する樹脂枠とが複数積層されている蓄電モジュールの製造方法であって、
前記電極板の前記周縁部に前記樹脂枠を溶着する溶着工程と、
溶着工程で前記電極板の前記周縁部に溶着された前記樹脂枠の外縁部を切断加工する切断加工工程と、
溶着工程で前記電極板の前記周縁部に溶着された前記樹脂枠に折線部を形成する折線部形成工程と、
前記切断加工工程及び前記折線部形成工程の後に、前記折線部に沿って前記樹脂枠の前記外縁部を折り返す折返工程と、を備え
、
前記切断加工工程と前記折線部形成工程とを同時に行う、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
電極板と前記電極板の周縁部を囲繞する樹脂枠とが複数積層されている蓄電モジュールの製造方法であって、
前記電極板の前記周縁部に前記樹脂枠を溶着する溶着工程と、
溶着工程で前記電極板の前記周縁部に溶着された前記樹脂枠の外縁部を切断加工する切断加工工程と、
溶着工程で前記電極板の前記周縁部に溶着された前記樹脂枠に折線部を形成する折線部形成工程と、
前記切断加工工程及び前記折線部形成工程の後に、前記折線部に沿って前記樹脂枠の前記外縁部を折り返す折返工程と、を備え、
前記切断加工工程では、前記電極板の周縁部に溶着された矩形状の前記樹脂枠において、前記電極板から外側に張り出す外側部分の各角部を切断加工し、
前記折返工程では、前記各角部が切断加工された前記樹脂枠の外側部分が前記電極板の前記周縁部に溶着された前記樹脂枠の内側部分に重なり、且つ、前記外側部分の縁が前記内側部分の縁まで至らないように前記樹脂枠の前記外縁部を折り返すことで、前記樹脂枠の前記内側部分と前記外側部分とによってセパレータの周縁部を配置するための段差部を形成する、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記切断加工工程と前記折線部形成工程と
を同時に行
う、請求項
2に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記切断加工工程と前記折線部形成工程と
を異なる時間に行
う、請求項
2に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電モジュールが記載されている。この蓄電モジュールは、積層された複数枚のバイポーラ電極を備える。バイポーラ電極は、電極板と、電極板の片方の面上に設けられた正極活物質層と、電極板の他方の面上に設けられた負極活物質層とを有する。また、この蓄電モジュールは、バイポーラ電極の電極板の周縁部を被覆する樹脂枠を備えている。樹脂枠は、電池内部の電解液等が外部に漏液しないように封止するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなバイポーラ電池の製造方法において、バイポーラ電極のそれぞれに設けられる樹脂枠を形成する際には、例えば、樹脂シートからの切り出しが考えられる。この場合、樹脂シートから切り出された枠状の部分は樹脂枠として使用される一方で、枠状の部分に囲われる中心部分は廃棄される。特に、樹脂枠の厚さが厚くなるにつれて、廃棄部分も厚くなり、廃棄量が増大する。
【0005】
そのため、樹脂シートの廃棄率を低減するために、樹脂シートの外縁部を折り曲げて樹脂シートを折り重ねることにより、樹脂枠の厚さを確保して、樹脂シートの廃棄率を低減することが考えられる。この場合、バイポーラ電極の電極板の周縁部に、外縁部が所定の形状となるように切断加工された樹脂枠がベルトシーラ等により溶着される。樹脂枠に折線部が形成され、折線部に沿って樹脂枠の外縁部が折り返される。
【0006】
しかし、このような製造方法では、ベルトシーラ等により電極板の周縁部に樹脂枠を溶着する際に、ベルトシーラ等を用いた溶着による樹脂枠の伸びが問題となる。このような伸びを許容する場合は、樹脂枠の外縁部を折り返して生じる隙間を大きく設計する必要があり、樹脂成形により形成された二次シールによって当該樹脂枠を封止するときに樹脂が漏れる可能性がある。一方、樹脂枠の伸びを抑えるために、ベルトシーラで溶着する際の加圧力を減少させた場合は、樹脂枠の一部が厚くなり、各種の寸法が変動した際に完成した蓄電モジュールの出来映えが変わり、ロバスト性が低くなる問題がある。
【0007】
そこで本発明は、蓄電モジュールの製造の精度を向上させることができる蓄電モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電極板と電極板の周縁部を囲繞する樹脂枠とが複数積層されている蓄電モジュールの製造方法であって、電極板の周縁部に樹脂枠を溶着する溶着工程と、溶着工程で電極板の周縁部に溶着された樹脂枠の外縁部を切断加工する切断加工工程と、溶着工程で電極板の周縁部に溶着された樹脂枠に折線部を形成する折線部形成工程と、切断加工工程及び折線部形成工程の後に、折線部に沿って樹脂枠の外縁部を折り返す折返工程とを備えた蓄電モジュールの製造方法である。
【0009】
この構成によれば、電極板と電極板の周縁部を囲繞する樹脂枠とが複数積層されている蓄電モジュールの製造方法において、溶着工程により電極板の周縁部に樹脂枠が溶着され、切断加工工程により溶着工程で電極板の周縁部に溶着された樹脂枠の外縁部が切断加工され、折線部形成工程により溶着工程で電極板の周縁部に溶着された樹脂枠に折線部が形成され、折返工程により切断加工工程及び折線部形成工程の後に、折線部に沿って樹脂枠の外縁部が折り返される。つまり、ベルトシーラ等による溶着によって樹脂枠の伸びが生じる可能性がある溶着工程が前工程で先に行われ、溶着工程の後の樹脂枠に対応して後工程で切断加工工程及び折線部形成工程が行われるため、蓄電モジュールの製造の精度を向上させることができる。
【0010】
この場合、切断加工工程と折線部形成工程とは同時に行われてもよい。
【0011】
この構成によれば、切断加工工程と折線部形成工程とが同時に行われるため、蓄電モジュールの製造の効率を向上させることができる。
【0012】
また、切断加工工程と折線部形成工程とは異なる時間に行われてもよい。
【0013】
この構成によれば、切断加工工程と折線部形成工程とは異なる時間に行われるため、切断加工工程及び折線部形成工程のそれぞれ個々の工程の制御が容易となる。
【0014】
この場合、切断加工工程の後に折線部形成工程が行われることが好適である。
【0015】
この構成によれば、屈曲し易い折線部が形成されておらず固定が容易な樹脂枠に対して切断加工工程が行われた後に、屈曲し易い折線部が形成される折線部形成工程が行われるため、切断加工工程がより容易になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蓄電モジュールの製造方法によれば、蓄電モジュールの製造の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法の溶着工程を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法の切断加工工程及び折線部形成工程を示す平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法の折返工程を示す平面図である。
【
図6】第2実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法の切断加工工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態について詳細に説明する。
図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してその積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0019】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5と、を含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0020】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側と、にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0021】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば、積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、
図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0022】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10と、によって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0023】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0024】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12と、を備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して、積層方向Dに沿って積層された複数の電極(複数のバイポーラ電極14、単一の負極終端電極18、及び、単一の正極終端電極19)を含む。本実施形態では、電極積層体11の積層方向Dはモジュール積層体2の積層方向と一致している。電極積層体11は、積層方向Dに延びる側面11aを有している。
【0025】
バイポーラ電極14は、電極板15、電極板15の第1面15aに設けられた正極活物質層16、電極板15の第1面15aの反対の第2面15bに設けられた負極活物質層17を含んでいる。正極活物質層16は、正極活物質を含む正極スラリーが電極板15に塗工されることにより形成されている。負極活物質層17は、負極活物質を含む負極スラリーが電極板15に塗工されることにより形成されている。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極活物質層16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う別のバイポーラ電極14の負極活物質層17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極活物質層17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合うさらに別のバイポーラ電極14の正極活物質層16と対向している。
【0026】
負極終端電極18は、電極板15及び電極板15の第2面15bに設けられた負極活物質層17を含んでいる。負極終端電極18は、その第2面15bが電極積層体11の内側(積層方向Dについての中心側)になるように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の負極活物質層17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極活物質層16と対向している。正極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の第1面15aに設けられた正極活物質層16を含んでいる。正極終端電極19は、その第1面15aが電極積層体11の内側になるように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の正極活物質層16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極活物質層17と対向している。
【0027】
負極終端電極18の電極板15の第1面15aには、導電板5が接触している。また、正極終端電極19の電極板15の第2面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。拘束部材3からの拘束荷重は、導電板5を介して負極終端電極18及び正極終端電極19から電極積層体11に付加される。すなわち、導電板5は、積層方向Dに沿って電極積層体11に拘束荷重を付加する拘束部材でもある。
【0028】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の周縁部(バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び、正極終端電極19の縁部)15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極活物質層16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極活物質層17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の第2面15bにおける負極活物質層17の形成領域は、電極板15の第1面15aにおける正極活物質層16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0029】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。
【0030】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、周縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて周縁部15cを保持している。封止体12は、電極板15の周縁部15cを囲繞する1次シールとしての樹脂枠21と、側面11aに沿って樹脂枠21を外側から包囲するように樹脂枠21に接合された単一の二次シール22とを有している。樹脂枠は、例えば、PP(ポリプロピレン)等の樹脂材料から形成されている。二次シール22は、例えば、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)等の樹脂材料から形成されている。
【0031】
樹脂枠21は、矩形枠状に形成されている。樹脂枠21は、電極板15の周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられている。樹脂枠21は、電極板15の第1面15aに気密(液密)に接合(例えば溶着)されている。樹脂枠21は、例えば超音波又は熱によって溶着されている。樹脂枠21は所定の厚さ(積層方向Dの長さ)を有する樹脂シートから形成されている。蓄電モジュール4では、電極板15と電極板15の周縁部15cを囲繞する樹脂枠21とが複数積層されている。
【0032】
樹脂枠21の積層方向Dに直交する方向から視た内側の一部は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板15の周縁部15c同士の間に位置しており、樹脂枠21の積層方向Dに直交する方向から視た外側の一部は、電極板15から外側に張り出している。樹脂枠21は、当該外側の一部において二次シール22に埋設されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う樹脂枠21同士は、互いに離間している。
【0033】
本実施形態では、複数種類の樹脂枠21である第1樹脂枠23、第2樹脂枠25及び第3樹脂枠26が用いられている。第1樹脂枠23は、バイポーラ電極14及び正極終端電極19の電極板15の周縁部15cにおいて、電極板15の第1面15aに設けられている。第1樹脂枠23は、折線部に沿って第1樹脂枠23の外縁部が内縁部に向って折り返されている。第1樹脂枠23は、第1樹脂枠の外縁部が内縁部に対して間隔を空けるように折り返されることにより形成された段差部23tを有する。セパレータ13の周縁部は、段差部23tに接合(例えば溶着)されている。
【0034】
第2樹脂枠25は、負極終端電極18の電極板15の周縁部15cにおいて、電極板15の第1面15aに設けられている。第2樹脂枠25は、折線部に沿って第2樹脂枠25の外縁部が内縁部に向って折り返されている。第2樹脂枠25は、第2樹脂枠25の外縁部が内縁部と一致するように折り返されている。そのため、第2樹脂枠25は、第1樹脂枠23のような段差部23tを有しない。第3樹脂枠26は、正極終端電極19の電極板15の周縁部15cにおいて、電極板15の第2面15bに設けられている。第3樹脂枠26は、第1樹脂枠23及び第2樹脂枠25のように外縁部が折り返されていない。
【0035】
以下、本発明の第1実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法について説明する。以下の説明では、バイポーラ電極14及び正極終端電極19の電極板15の周縁部15cに設けられた第1樹脂枠23について中心に説明する。
図3に示すように、電極板15の周縁部15cに樹脂枠21である第1樹脂枠23を溶着する溶着工程が行われる。溶着工程における第1樹脂枠23は、矩形枠状の外縁部23pと内縁部23iとを有する。
【0036】
電極板15と第1樹脂枠23との溶着は、例えば、ベルトシーラにより行われる。本実施形態では、ベルトシーラ等を用いた溶着による第1樹脂枠23の伸びは厳密に管理する必要は無い。また、ベルトシーラ等を用いた溶着による第1樹脂枠23の伸びを抑えるために、ベルトシーラで溶着する際の加圧力を減少させる必要も無い。溶着工程では、第1樹脂枠23の外縁部23pは矩形状であり、切断加工はなされていない。また、第1樹脂枠23には、折線部は形成されていない。溶着工程では、第1樹脂枠23の外縁部23pの形状及び寸法を厳密に管理する必要は無い。溶着工程では、電極板15の周縁部15cに対する第1樹脂枠23の内縁部23iの位置が管理されればよい。
【0037】
図4に示すように、溶着工程で電極板15の周縁部15cに溶着された樹脂枠21である第1樹脂枠23の外縁部23pを切断加工する切断加工工程が行われる。本実施形態では、矩形状の第1樹脂枠23の外縁部23pの四つの角部に、同一形状及び同一寸法の小さな矩形状の切欠きが形成される。切断加工工程は、例えば、第1樹脂枠23にトムソン加工をすることにより行われる。
【0038】
また、溶着工程で電極板15の周縁部15cに溶着された樹脂枠21である第1樹脂枠23に折線部23cを形成する折線部形成工程が行われる。折線部23cとは、樹脂枠21である第1樹脂枠23の折線部23c以外の箇所よりも屈曲し易い部位を意味する。折線部23cは、完成後の第1樹脂枠23の外形を規定するように形成される。折線部23cは、例えば、第1樹脂枠23にトムソン加工によるハーフカット加工をすることにより形成される。また、折線部23cは、例えば、第1樹脂枠23にミシン目加工をすることにより形成される。ミシン目加工は、第1樹脂枠23が折線部23cで屈曲し易いように、第1樹脂枠23に連続して小穴を穿設することによって行われる。
【0039】
本実施形態では、切断加工工程と折線部形成工程とは同時に行われる。この場合、例えば、切断加工工程が行われる第1樹脂枠23の部位にはトムソン加工機による切断加工が行われ、折線部形成工程が行われる第1樹脂枠23の部位には同じトムソン加工機によるハーフカット加工が行われるようにしてもよい。
【0040】
図5に示すように、切断加工工程及び折線部形成工程の後に、折線部23cに沿って樹脂枠21である第1樹脂枠23の外縁部23pを折り返す折返工程が行われる。折返工程では、第1樹脂枠23の外縁部23pが内縁部23iに対して間隔を空けるように折り返されることにより、段差部23tが形成される。負極終端電極18の電極板15の周縁部15cに設けられた第2樹脂枠25は、折返工程において第2樹脂枠25の外縁部が内縁部と一致するように折り返され、段差部が形成されない以外は、第1樹脂枠23と同様に製造される。
【0041】
本実施形態によれば、電極板15と電極板15の周縁部15cを囲繞する樹脂枠21である第1樹脂枠23とが複数積層されている蓄電モジュール4の製造方法において、溶着工程により電極板15の周縁部15cに第1樹脂枠23が溶着され、切断加工工程により溶着工程で電極板15の周縁部15cに溶着された第1樹脂枠23の外縁部23pが切断加工され、折線部形成工程により溶着工程で電極板15の周縁部15cに溶着された第1樹脂枠23に折線部23cが形成され、折返工程により、切断加工工程及び折線部形成工程の後に折線部23cに沿って第1樹脂枠23の外縁部23pが折り返される。つまり、ベルトシーラ等による溶着によって第1樹脂枠23の伸びが生じる可能性がある溶着工程が前工程で先に行われ、溶着工程の後の第1樹脂枠23に対応して後工程で切断加工工程及び折線部形成工程が行われるため、蓄電モジュール4の製造の精度を向上させることができる。
【0042】
すなわち、溶着工程でのベルトシーラによる第1樹脂枠23の伸びる箇所及びベルトシーラの入口側での局所的に薄い箇所を後工程の切断加工工程で打ち抜くことで、精度の高い第1樹脂枠23が設けられたバイポーラ電極14を提供することができる。また、本実施形態によれば、第1樹脂枠23の公差の乗り方も小さくなる。
【0043】
また、本実施形態によれば、切断加工工程と折線部形成工程とが同時に行われるため、蓄電モジュール4の製造の効率を向上させることができる。
【0044】
以下、本発明の第2実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法について説明する。本実施形態では、溶着工程が行われた後に、切断加工工程と折線部形成工程とは異なる時間に行われる。
図6に示すように、本実施形態では、切断加工工程の後に折線部形成工程が行われる。それ以外は、上記第1実施形態と同様である。
【0045】
本実施形態では、切断加工工程と折線部形成工程とは異なる時間に行われるため、切断加工工程及び折線部形成工程のそれぞれ個々の工程の制御が容易となる。
【0046】
また、本実施形態では、屈曲し易い折線部23cが形成されておらず固定が容易な樹脂枠21である第1樹脂枠23に対して切断加工工程が行われた後に、屈曲し易い折線部23cが形成される折線部形成工程が行われるため、切断加工工程がより容易になる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態における樹脂枠21である第1樹脂枠23の外縁部23p、内縁部23i及び折線部23cの形状や配置は任意であり、適宜変更可能である。また、上述した実施形態では、
図1のように蓄電モジュール4を積層した蓄電装置1として用いる場合について説明したが、蓄電モジュール4を異なる構造又は形式で用いてもよい。また、上述した実施形態では、蓄電モジュール4をフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いる場合について説明したが、その他の用途に用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…蓄電装置、2…モジュール積層体、3…拘束部材、4…蓄電モジュール、5…導電板、5a…流路、6…正極端子、7…負極端子、8…エンドプレート、8a…挿通孔、9…締結ボルト、10…ナット、11…電極積層体、11a…側面、12…封止体、13…セパレータ、14…バイポーラ電極、15…電極板、15a…第1面、15b…第2面、15c…周縁部、16…正極活物質層、17…負極活物質層、18…負極終端電極、19…正極終端電極、21…樹脂枠、22…二次シール、23…第1樹脂枠、23t…段差部、23p…外縁部、23i…内縁部、23c…折線部、25…第2樹脂枠、26…第3樹脂枠、F…フィルム、D…積層方向。