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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】やり投てき用人工芝生敷設構造
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20221012BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20221012BHJP
   B32B 5/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
E01C13/08
B32B3/12 Z
B32B5/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018232737
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020094398
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】595015177
【氏名又は名称】MCCスポーツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390019998
【氏名又は名称】東亜道路工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】関谷 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】中西 保彦
(72)【発明者】
【氏名】坂井 剛士
(72)【発明者】
【氏名】多田 悟士
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06221445(US,B1)
【文献】米国特許第09194086(US,B1)
【文献】特開2011-084930(JP,A)
【文献】特開平04-128408(JP,A)
【文献】特表2016-511346(JP,A)
【文献】特開平02-101210(JP,A)
【文献】特開2009-052200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 13/08
B32B 3/12
B32B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎と、
該基礎上に設けられた、粒状物を含む下層と、
該下層の上に設けられた、粒状物を含む人工芝生と
を有する人工芝生敷設構造において、
該下層は、上面が開放し、底面が閉鎖された穴よりなるポケット穴を有したハニカム構造体を備え、
該ハニカム構造体は、ハニカム状格子壁体と、該ハニカム状格子壁体と一体形成された底面とを備えており、
該ポケット穴に前記粒状物がハニカム構造体の上面と面一状に充填されていることを特徴とするやり投てき用人工芝生敷設構造。
【請求項2】
前記ポケット穴に充填された前記粒状物中の弾性粒状物の割合が50体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載のやり投てき用人工芝生敷設構造。
【請求項3】
前記ポケット穴に充填された前記粒状物は、硬質粒状物よりなるか、又は硬質粒状物を主体とするものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のやり投てき用人工芝生敷設構造。
【請求項4】
前記ポケット穴に充填された粒状物の充填層は、山中式土壌硬度計による平均表面硬さが0.5kg/cm以上30kg/cm以下、かつ10回計測したときの該表面硬さ測定値の標準偏差が10kg/cm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のやり投てき用人工芝生敷設構造。
【請求項5】
前記ポケット穴に充填された粒状物の粒径が5mm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のやり投てき用人工芝生敷設構造。
【請求項6】
前記ハニカム構造体の前記ポケット穴の開口面積が2,000~10,000mmであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のやり投てき用人工芝生敷設構造。
【請求項7】
前記ハニカム構造体は合成樹脂繊維の織布又は不織布よりなることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のやり投てき用人工芝生敷設構造。
【請求項8】
前記下層の粒状物の厚さHと、前記人工芝生の前記粒状物の厚さHとの合計H+Hが60~160mmであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のやり投てき用人工芝生敷設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投てき競技場に適用される人工芝生敷設構造に係り、特にやり(槍)投げに好適な人工芝生敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
投てき競技場のフィールドに適用される人工芝生敷設構造が特許文献1,2に記載されている。
【0003】
特許文献1の人工芝生敷設構造は、基礎層上に人工芝生を敷設し、砂等を芝葉間に充填したものである。特許文献1の人工芝生敷設構造は、ハンマー、円盤又は砲丸の落下痕跡を確実に形成するためのものであり、やりが刺さり易くなるようにするためのものではない。
【0004】
特許文献2の人工芝生敷設構造は、人工芝生を2層に敷設し、下層の人工芝生の芝葉には芝葉の上端に至るまで珪砂を充填し、上層の人工芝生には芝葉の途中まで珪砂を充填したものである。特許文献2の人工芝生敷設構造は、やりが上層を貫通しても下層で止まるようにし、やりの損傷を防止することを企図したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-108247号公報
【文献】特開2015-148146公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の人工芝生敷設構造では、下層が人工芝生と、該人工芝生の芝葉間に、芝葉の上端に至るまで充填された珪砂とで構成されている。一般に、人工芝生の芝葉の上端高さは、芝葉毎にバラツキがある。そのため、芝葉上端まで珪砂を充填した下層にあっては、その上面に不陸が生じ易い。不陸を抑制するためには芝葉の長さを均一に揃えるようにすることが必要であるが、そのような人工芝生を製造することは容易ではない。
【0007】
また、人工芝生を2層に敷設するところから、資材コストが高い。
【0008】
本発明は、やりが刺さり易く、しかも施工が容易で低コストである人工芝生敷設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造は、基礎と、該基礎上に設けられた、粒状物を含む下層と、該下層の上に設けられた、粒状物を含む人工芝生とを有する人工芝生敷設構造において、該下層は、上面が開放し、底面が閉鎖された穴よりなるポケット穴を有したハニカム構造体を備え、該ポケット穴に前記粒状物がハニカム構造体の上面と面一状に充填されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造の一態様では、前記ポケット穴に充填された前記粒状物中の弾性粒状物の割合が50体積%以下である。
【0011】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造の一態様では、前記ポケット穴に充填された前記粒状物は、硬質粒状物よりなるか、又は硬質粒状物を主体とする。
【0012】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造の一態様では、前記ポケット穴に充填された粒状物の充填層は、山中式土壌硬度計による平均表面硬さが0.5kg/cm以上30kg/cm以下、かつ10回計測したときの該表面硬さ測定値の標準偏差が10kg/cm以下である。
【0013】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造の一態様では、前記ポケット穴に充填された粒状物の粒径が5mm以下である。
【0014】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造の一態様では、前記ハニカム構造体の前記ポケット穴の開口面積が2,000~10,000mmである。
【0015】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造の一態様では、前記ハニカム構造体は、ハニカム状格子壁体と、該格子壁体と該格子壁体の底面に固着された底部シートを有する、又は該ハニカム状格子壁体と一体形成された底面を有する。
【0016】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造の一態様では、ハニカム構造体は合成樹脂繊維の織布又は不織布よりなる。
【0017】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造の一態様では、前記下層の粒状物の厚さHと、前記人工芝生の前記粒状物の厚さHとの合計H+Hが60~160mmである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のやり投てき用人工芝生敷設構造は、やりが刺さり易く、また下層の施工が容易であり、その資材コストも安価である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係る人工芝生敷設構造の断面図である。
図2】ハニカム構造体の一部の平面図である。
図3】ハニカム構造体の一部の斜視図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】別のハニカム構造体の一部の斜視図である。
図6図5のIV-IV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は、実施の形態に係る人工芝生敷設構造の縦断面図である。
【0021】
基礎1の上に下層2が設けられ、該下層2の上に上層3(人工芝生層)が設けられている。基礎1は、地盤(図示略)上に設けられたのであり、砕石、砂利及び砂等の1又は2以上を所定厚さ100mm以上に敷き詰めることにより形成される。
【0022】
下層2は、図2~6に示すハニカム構造体20のポケット穴25に粒状物Sを充填したものである。ハニカム構造体20は、ハニカム状格子壁体21と、該格子壁体21の底面に接着剤等で固着された底部シート22とを有する、又はハニカム状格子壁体21と一体形成された底面を有する。
【0023】
格子壁体21は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂繊維の織布又は不織布よりなる多数の波板状ストリップが長手方向を平行として引き揃えられ、隣接する波板状ストリップの波の頂点部同士を接着剤等で接合したハニカム構造を有する。隣接する波板状ストリップ同士の間にポケット穴25が形成される。ポケット穴25は、上方に向って開放し、底部は一体形成又は底部シート22によって閉鎖されている。波板状ストリップの厚さtは0.1~0.7mm特に0.2~0.5mm程度が好ましい。
【0024】
底部シート22も、波板状ストリップと同様の織布又は不織布よりなる。底部シート22の厚さは0.1~0.7mm特に0.2~0.5mm程度が好ましい。
【0025】
ポケット穴25の平面視形状は略方形(この実施の形態では略菱形)である。1個のポケット穴25の開口面積は2,000~10,000mm特に3,000~6,000mm程度が好ましい。
【0026】
ポケット穴25の深さ、すなわち格子壁体21の高さHは40~70mm特に45~60mm程度が好適である。
【0027】
このようなハニカム構造体20としては、TenCate社から販売されているAccorder(登録商標)等を用いることができる。このハニカム構造体は、人工芝生に比べて安価である。
【0028】
なお、ハニカム構造体20のポケット穴25の平面視形状は、略方形に限定されるものではなく、略三角形、略六角形、略八角形や、略円形、略楕円形、略半円形、略半楕円形等であってもよい。
【0029】
上層3は、人工芝生30と、人工芝生30の芝葉32の間に充填された粒状物S’とで構成されている。人工芝生30は、シート状基材31と、該シート状基材31から植え立てられたように起立する芝葉32とを有する。
【0030】
シート状基材31は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂繊維の織物シート等が用いられ、通常、その厚さは0.1~0.7mm特に0.2~0.5mm程度である。
【0031】
芝葉32としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどからなる、緑色、白色、黄色又は青色等着色されたモノフィラメントヤーン、マルチフィラメントヤーン及びスリットヤーンなどが好適である。
【0032】
シート状基材31の上面からの芝葉32の高さHは40~120mm特に50~120mm程度が好ましい。
【0033】
このような人工芝生としては、市販のものを用いることができる。
【0034】
次に、下層2及び上層3に用いられる粒状物S,S’について説明する。なお、粒状物の粒径はJIS篩による値である。
【0035】
下層2の粒状物Sは、砂等の硬質粒状物、又はゴムチップあるいはプラスチック等の弾性粒状物を有している。下層2の粒状物Sは、弾性粒状物を50体積%以下含有してもよく、好ましくは40体積%以下、より好ましくは20体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下であり、特に好ましくは硬質粒状物よりなる。粒状物Sの硬質粒状物としては、粒径が5mm以下、特に3mm以下の珪砂、その他の砂が好適である。このような砂の充填層は、やりが刺さり易く、また充填層の硬度のバラツキが小さい。
【0036】
ポケット穴25には、粒状物Sがハニカム構造体20の格子壁体21の上端と面一状となるように充填される。格子壁体21の上端面が見える程度であれば、若干量の粒状物が格子壁体21の上端面に存在してもよい。
【0037】
なお、ハニカム構造体20を用いることなく基礎1上に砂を直接に敷いて砂層を形成した場合、厚みが均一になるように砂層を形成することが容易ではない。また、施工後に踏んだ場合、砂が横方向に逃げて踏み跡(凹所)が生じ易くなるおそれがある。
【0038】
これに対し、基礎1上にハニカム構造体20を配置してからポケット穴25に砂を面一状に充填すると、均一厚みの砂層が容易に形成される。また、砂層が踏まれても、砂が横方向に逃げることがハニカム構造体20によって防止され、踏み跡(凹所)が生じることが防止される。
【0039】
本発明では、ポケット穴25に砂等を充填して形成した充填層の山中式土壌硬度計による平均表面硬さが0.5~30kg/cmであり、かつ10回以上計測したときの表面硬さ測定値の標準偏差が10kg/cm以下であることが好ましい。より好ましくは、充填層の山中式土壌硬度計による平均表面硬さが1~20kg/cm、かつ10回以上計測したときの表面硬さ測定値の標準偏差が8kg/cm以下であり、特に好ましくは充填層の山中式土壌硬度計による平均表面硬さが3~10kg/cm、かつ10回以上計測したときの表面硬さ測定値の標準偏差が6kg/cm以下である。上述の表面硬さ特性であると、やりが刺さり易く、またやりの先端が基礎1に達することなく下層2の途中で停止し易い。
【0040】
上層3の粒状物S’は、粒径が3m以下、好ましくは2.36mm以下程度の砂等の硬質粒状物よりなることが好ましいが、ゴム等よりなる弾性粒状物を40体積%以下程度含んでもよい。上層3においては、硬質粒状物と弾性粒状物が混合されていてもよく、硬質粒状物と弾性粒状物とが積層構造を有していてもよい。
【0041】
粒状物S’は、その充填層厚さHが芝葉32の高さHの35~95%特に50~90%程度となるように芝葉32間に充填されることが好ましい。
【0042】
粒状物Sの層厚さ(H)と粒状物S’の層厚さ(H)との合計H+Hは60mm以上、例えば60~160mm特に90~120mm程度であることが好ましい。この合計厚さとすることにより、突き刺さったやりの先端が基礎1にまで達することが十分に防止される。
【実施例
【0043】
[参考例1~3]
下層2を形成するためのハニカム構造体20として、図2~4に示すTenCate社製Accorder(登録商標)を用いた。ポケット穴の開口面積は4,000~4,500mm、深さは50~60mmである。
【0044】
このAccorderのポケット穴に、表1に示す粒状物を充填し、ローラーコンパクターを用いて締固め荷重900kgfで締め固めて下層2を形成した。この下層2の充填層の土壌硬度(kg/cm)を山中式土壌硬度計(木屋製作所社製、型番D244)で測定した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
[実施例1]
砕石よりなる基礎1の上に、参考例1の下層2を設け、その上に人工芝生(株式会社アストロ製、スポーツ用ロングパイル人工芝、パイル長さ40mm)を設けた。粒状物S,S’として参考例1の砂を用いて、人工芝生敷設構造を形成した。上層3の砂層の厚さHは15mmとした。
【0047】
この人工芝生敷設構造に対して、鉛直上方450cmの高さ(やり下端高さ)から、長さ263cmの投てき競技用やりを鉛直下方に自由落下させ、やりの刺さり状況を観察した。結果を表2に示す。
【0048】
[実施例2]
実施例1において、粒状物Sとして参考例2で用いたものを充填した。その他は実施例1と同一条件とした。結果を表2に示す。
【0049】
[比較例1]
下層2を、Trocellen社製XCFormよりなるアンダーパット(厚さ10mm)で構成した。その他は実施例1と同一条件とした。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
<考察>
実施例1のように、ポケット穴に2.36mm以下の粒径を持つ割合が90%以上である砂を充填した場合には、土壌硬度計が安定した硬度を示すとともに、適度な硬度を持つことから、やりが安定して刺さる。
【0052】
実施例2(ポケット穴に、2.36mm以下の粒径を持つ割合が90%以上である砂80%と弾性粒状物、20%混合充填)の場合には、該混合物に含まれる弾性粒状物の弾性特性の影響を受けて、やりが弾かれる傾向にある。
【0053】
比較例1のように、クッション性の高い材料よりなるシートで下層を形成した場合は、その弾性特性の影響を受けて、やりが弾かれる傾向が顕著になる。
【0054】
なお、やりを手で投げて上記の各人工芝生敷設構造に斜め(約45°)に刺さるようにして試験した結果も、同様の傾向となることが認められた。
【符号の説明】
【0055】
1 基礎
2 下層
3 上層
20 ハニカム構造体
21 格子壁体
22 底部シート
25 ポケット穴
30 人工芝生
31 シート状基材
31 芝葉
図1
図2
図3
図4
図5
図6