(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】熱電併給システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20221012BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/0637 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221012BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20221012BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/043
H01M8/02
H01M8/12 101
H01M8/00 Z
H01M8/0432
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/04701
H01M8/04014
H01M8/0637
H01M8/249
H01M8/04664
(21)【出願番号】P 2018244166
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】若杉 知寿
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190651(JP,A)
【文献】特開2016-072251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた熱電併給システム。
(1)前記熱電併給システムは、
少なくとも2個の内部改質型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)と、
前記SOFCのアノード流路に燃料を供給するための燃料供給装置と、
前記SOFCのカソード流路に空気を供給するための空気供給装置と、
前記SOFCのアノードオフガスからCO
2の全部又は一部を分離するためのCO
2分離器と、
前記アノードオフガスからH
2Oの一部を分離するための第1H
2O分離器と、
前記CO
2及び前記H
2Oが分離された後の前記アノードオフガスの全部又は一部を循環ガスとして前記アノード流路に戻すためのエジェクタと、
前記エジェクタに吸引されなかった前記アノードオフガス(非循環ガス)から、H
2Oの全部又は一部を分離するための第2H
2O分離器と、
助燃空気として前記SOFCのカソードオフガスを用い、燃焼燃料として前記非循環ガスを用いて、前記燃焼燃料を燃焼させ、温熱量Q
hを得る燃焼器と、
前記燃焼器の前記燃焼燃料の流入温度T
c,c,inを検出するための第1温度検出装置と、
前記燃焼器の前記助燃空気の流入温度T
c,air,inを検出するための第2温度検出装置と、
前記燃焼器の出口温度T
c,outを検出するための第3温度検出装置と、
前記SOFCの作動温度T
sを検出するための第4温度検出装置と、
前記SOFCの発電出力Wを検出するための出力検出装置と、
前記SOFCの電流Iを検出するための電流検出装置と、
前記熱電併給システムの動作を制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記制御装置は、出力制御手段を備え、
前記出力制御手段は、要求発電出力W
t及び要求温熱量Q
h,t、並びに、検出された前記T
c,c,in、前記T
c,air,in、前記T
c,out、前記T
s、前記W、及び前記Iを用いて、燃料流量V
f、循環率R、助燃空気流量V
c,air、及びカソード空気流量V
cath,inを制御することにより、発電中の前記SOFCの前記発電出力W及び前記燃焼器の前記温熱量Q
hを、それぞれ、前記W
t及び前記Q
h,tに維持するためのものからなる。
【請求項2】
前記カソード流路に供給される前記空気と前記カソードオフガスとの間で熱交換を行うための熱交換器をさらに備えている請求項1に記載の熱電併給システム。
【請求項3】
前記CO
2分離器は、前記アノードオフガスに含まれる前記CO
2の95mol%以上を分離するものであり、
前記第2H
2O分離器は、前記非循環ガスに含まれる前記H
2Oの95mol%以上を分離するものである
請求項1又は2に記載の熱電併給システム。
【請求項4】
前記出力制御手段は、以下の手順を実行するための手段を備えている請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱電併給システム。
(A)前記T
s及び前記Wを検出し、これらをメモリに記憶させる手順A。
(B)前記メモリに記憶されているデータベースに基づいて、現在の作動条件に対応する前記SOFCの発電効率η、及び前記非循環ガス中のH
2/CO比を算出し、これらを前記メモリに記憶させる手順B。
(C)前記T
c,c,in、前記T
c,air,in、及び前記T
c,outを検出し、これらを前記メモリに記憶させる手順C。
(D)現在の作動条件に対応する燃焼熱量Q
c及び前記Q
hを算出し、これらを前記メモリに記憶させる手順D。
(E)前記手順Dで算出された前記Q
cに対応する前記V
f、前記R、前記V
c,air、及び前記V
cath,inを算出し、これらを前記メモリに記憶させると同時に、作動条件をこれらに設定して前記熱電併給システムを作動させる手順E。
(F)前記Q
h及び前記Q
h,tから温熱偏差ε
h(=Q
h-Q
h,t)を算出し、これを前記メモリに記憶させる手順F。
(G)前記ε
hの絶対値が第1しきい値以上である時には、前記Q
cから前記ε
hを減算することにより前記Q
cを補正し、補正後の前記Q
cを新たな前記Q
cとして前記メモリに記憶させる手順G。
(H)補正後の前記Q
cに対応する前記V
f、前記R、前記V
c,air、及び前記V
cath,inを算出し、これらを前記メモリに記憶させると同時に、前記作動条件をこれらに設定して前記熱電併給システムを作動させる手順H。
(I)前記ε
hの絶対値が前記第1しきい値未満となるまで、前記手順A~前記手順Hを繰り返す手順I。
(J)前記ε
hの絶対値が前記第1しきい値未満となった時は、前記W及び前記W
tから発電出力偏差ε
e(=W-W
t)を算出し、これを前記メモリに記憶させる手順J。
(K)前記ε
eの絶対値が第2しきい値以上である時には、前記V
fから燃料偏差ΔV
f(=ε
e/(η×ΔH
f))(但し、ΔH
fは前記燃料の低位発熱量)を減算することにより前記V
fを補正し、補正後の前記V
fを新たな前記V
fとして前記メモリに記憶させる手順K。
(L)前記ε
eの絶対値が前記第2しきい値未満となるまで、前記手順A~手順Kを繰り返す手順L。
(M)前記ε
eの絶対値が前記第2しきい値未満となったときは、前記メモリに記憶されている前記V
f、前記R、前記V
c,air、及び前記V
cath,inに基づいて前記熱電併給システムを作動させる手順M。
【請求項5】
以下の構成をさらに備えた請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱電併給システム。
(3)前記熱電併給システムは、
前記非循環ガスの供給経路を、前記燃焼器に直接供給する第1経路と、休止中の前記SOFCの前記アノード流路を経由して前記燃焼器に供給する第2経路のいずれかに切り換える第1切替装置と、
前記SOFCのアノードに含まれるNiの酸化量を検出する第1酸化量検出装置と
をさらに備えている。
(4)前記制御装置は、第1燃焼熱量補正手段をさらに備え、
前記第1燃焼燃料補正手段は、前記第1切替装置により前記供給経路を前記第2経路に切り替える際に、前記非循環ガスを供給しようとする前記SOFCについて、前記第1酸化量検出装置を用いて検出された前記Niの酸化量を取得し、取得された前記Niの酸化量を用いて前記Q
cを補正するものからなる。
【請求項6】
前記第1燃焼熱量補正手段は、以下の手順を実行するための手段を備えている請求項5に記載の熱電併給システム。
(N)第1スタック切換信号(稼働中のi番目(1≦i≦n、nは前記SOFCの総数)の前記SOFCに対してアノードの還元処理を実行するよう指示する信号)が検出されたか否かを判断する手順N。
(O)前記第1スタック切替信号が検出された時には、前記第1酸化量検出装置を用いて検出されたi番目の前記SOFCの前記Niの酸化量を取得し、これを前記メモリに記憶させる手順O。
(P)前記Niの酸化量から第1初期補正熱量ε
h1,iniを算出し、前記Q
cに前記ε
h1,iniを加算することにより前記Q
cを補正し、補正後の前記Q
cを新たな前記Q
cとしてメモリに記憶させる手順P。
(Q)補正後の前記Q
cを用いて、前記V
f、前記R、前記V
c,air、及び前記V
chath,inを算出し、これらを前記メモリに記憶させると同時に、前記作動条件をこれらに設定して前記熱電併給システムを作動させる手順Q。
(R)i番目の前記SOFCを休止させ、前記Niの酸化量が第3しきい値未満となるまで、前記供給経路を前記第2経路に切り替える手順R。
(S)前記Niの酸化量が前記第3しきい値未満となった時は、前記供給経路を前記第1経路に切り換えた後、手順Aに戻る手順S。
【請求項7】
以下の構成をさらに備えた請求項1から6までのいずれか1項に記載の熱電併給システム。
(5)前記熱電併給システムは、
前記SOFCの前記アノード流路及び/又は前記カソード流路に隣接して設けられた、レドックス材が充填されたレドックス流路と、
前記非循環ガスの供給経路を、前記燃焼器に直接供給する第1経路と、休止中の前記SOFCの前記レドックス流路を経由して前記燃焼器に供給する第3経路のいずれかに切り換える第2切替装置と、
前記レドックス材の酸化量を検出する第2酸化量検出装置と
をさらに備えている。
(6)前記制御装置は、第2燃焼燃料補正手段をさらに備え、
前記第2燃焼燃料補正手段は、前記第2切替装置により前記供給経路を前記第3経路に切り替える際に、前記非循環ガスを供給しようとする前記SOFCについて、前記第2酸化量検出装置を用いて検出された前記レドックス材の酸化量を取得し、取得された前記レドックス材の酸化量を用いて前記Q
cを補正するものからなる。
【請求項8】
前記第2燃焼熱量補正手段は、以下の手順を実行するための手段を備えている請求項7に記載の熱電併給システム。
(N’)第2スタック切換信号(稼働中のi番目(1≦i≦n、nは前記SOFCの総数)の前記SOFCに対して前記レドックス材の還元処理を実行するよう指示する信号)が検出されたか否かを判断する手順N’。
(O’)前記第2スタック切替信号が検出された時には、前記第2酸化量検出装置を用いて検出されたi番目の前記SOFCの前記レドックス材の酸化量を取得し、これを前記メモリに記憶させる手順O’。
(P’)前記レドックス材の酸化量から第2初期補正熱量ε
h2,iniを算出し、前記Q
cに前記ε
h2,iniを加算することにより前記Q
cを補正し、補正後の前記Q
cを新たな前記Q
cとしてメモリに記憶させる手順P’。
(Q’)補正後の前記Q
cを用いて、前記V
f、前記R、前記V
c,air、及び前記V
chath,inを算出し、これらを前記メモリに記憶させると同時に、前記作動条件をこれらに設定して前記熱電併給システムを作動させる手順Q’。
(R’)i番目の前記SOFCを休止させ、前記レドックス材の酸化量が第4しきい値未満となるまで、前記供給経路を前記第3経路に切り替える手順R’。
(S’)前記レドックス材の酸化量が前記第4しきい値未満となった時は、前記供給経路を前記第1経路に切り換えた後、手順Aに戻る手順S’。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電併給システムに関し、さらに詳しくは、固体酸化物形燃料電池で発電を行うことにより電力を供給すると同時に、固体酸化物形燃料電池のアノードオフガスに含まれる未反応燃料を燃焼器で燃焼させることにより温熱を供給することが可能な熱電併給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、電解質として酸化物イオン伝導体を用いた燃料電池である。SOFCのアノードに、H2、CO、CH4などの燃料ガスを供給し、カソードにO2を供給すると、電極反応が進行し、電力を取り出すことができる。電極反応により生成したCO2やH2Oは、通常、SOFC外に排出される。
【0003】
SOFCは、作動温度が高いため、H2だけでなく、COや炭化水素も燃料として使用することができる。しかし、SOFCに炭化水素を供給して発電を行うと、電極表面への炭素の析出及びこれによる電極性能の低下が起きやすい。そのため、SOFCにおいて炭化水素を燃料として用いる時には、通常、燃料の水蒸気改質が行われる。
燃料の水蒸気改質を行うためには、改質器(又は、直接内部改質形SOFCの場合には、アノードに含まれる改質触媒)に水を供給する必要がある。また、改質反応は吸熱反応であるため、改質反応を継続させるためには外部から改質器に熱を供給する必要がある。
【0004】
一方、SOFCのアノードオフガスには、電極反応により生成した水蒸気が含まれている。さらに、アノードオフガスには、通常、未反応の燃料が含まれる。この水蒸気を改質反応に再利用し、かつ、未反応の燃料を発電に再利用すれば、システム全体のエネルギー効率を向上させることができる。
そのため、炭化水素を燃料とするSOFCシステムにおいては、アノードオフガスの全部又は一部をアノード流路に戻す方法(すなわち、アノードオフガス循環方式)が採用される場合がある。しかしながら、単にアノードオフガスを循環させるだけでは、次第に循環ガス中に含まれるCO2やH2Oの濃度が増大し、かえってエネルギー効率が低下する。
【0005】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、燃料電池本体で発電後の燃料排ガスの一部を、再生熱交換器、凝縮器を経由して、燃料電池アノード入口へ再循環させる固体電解質型燃料電池発電システムが開示されている。
同文献には、
(a)燃料排ガスは、再生熱交換器において凝縮器通過後の低温のリサイクルガスとの熱交換により冷却され、さらに凝縮器内で冷却されるので、燃料排ガスから余分な水蒸気を凝縮分離することができる点、及び、
(b)これによって、リサイクルガス(燃料排ガスから余分な水蒸気を分離した後に残るガス)中の水蒸気分圧を低く保つことができる点
が記載されている。
【0006】
SOFCのアノードオフガスには、通常、未反応の燃料が含まれている。この未反応の燃料を燃焼器において燃焼させ、燃焼器と熱交換媒体(例えば、水)との間で熱交換させると、発電に利用されなかったエネルギーの一部を温熱(例えば、蒸気や温水)として利用することが可能となる。SOFCは、作動温度が高いため、得られる温熱の温度も高い。そのため、SOFCは、熱電併給システムに用られる発電装置として好適である。
しかし、このような熱電併給システムにおいて、要求発電出力及び要求温熱量は常に一定とは限らない。そのため、いずれか一方の要求に合わせてシステムを制御すると、他方に過不足が生じるという問題がある。
【0007】
また、SOFCのアノードには、一般に、Niサーメットが用いられている。SOFCを継続して作動させると、Niサーメットが徐々に酸化し、発電性能が低下する。そのため、Niサーメットの酸化がある程度進行した時には、Niサーメットの還元処理を行う必要がある。
【0008】
この場合、アノードオフガスを用いてNiサーメットを還元することも考えられる。しかしながら、アノードオフガス循環を行う熱電併給システムにおいてアノードオフガスを用いてNiサーメットを還元すると、燃焼器に供給されるガス(非循環ガス)中の還元ガスの量が減少する。その結果、実際の発電出力及び/又は温熱量が要求発電出力及び/又は要求温熱量から乖離しやすいという問題がある。さらに、SOFCを備えた熱電併給システムにおいて、要求発電出力及び要求温熱量に影響を与えることなく、酸化劣化したアノードを再生させるための方法が提案された例は、従来にはない。
【0009】
同様に、SOFCは、定常運転時には、発電時の自己発熱によって適正な作動温度に維持することができる。しかし、始動時には、外部熱源を用いてSOFCを適正な作動温度まで昇温させる必要がある。この問題を解決するために、可逆的に酸化・還元反応を行うことが可能な材料(レドックス材)をSOFCのアノード流路及び/又はカソード流路に隣接して設置し、レドックス材の酸化反応熱を用いてSOFCを昇温させる方法が知られている。このようなシステムにおいて、レドックス材を始動時におけるSOFCの加熱に繰り返し使用するためには、酸化したレドックス材の還元処理を行う必要がある。
【0010】
この場合、アノードオフガスを用いてレドックス材を還元することも考えられる。しかしながら、アノードオフガス循環を行う熱電併給システムにおいてアノードオフガスを用いてレドックス材を還元すると、非循環ガス中の還元ガスの量が減少する。その結果、実際の発電出力及び/又は温熱量が要求発電出力及び/又は要求温熱量から乖離しやすいという問題がある。さらに、SOFC及びレドックス材を備えた熱電併給システムにおいて、要求発電出力及び要求温熱量に影響を与えることなく、酸化したレドックス材を再生させるための方法が提案された例は、従来にはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、要求発電出力及び/又は要求温熱量が変動した場合、あるいは、外乱が発生した場合であっても、エネルギー効率を低下させることなく、実際の発電出力及び温熱量を、それぞれ、要求発電出力及び要求温熱量に維持することが可能な熱電併給システムを提供することにある。
【0013】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、実際の発電出力及び温熱量を、それぞれ、要求発電出力及び要求温熱量に維持したまま、非循環ガスを用いて酸化したアノードを再生することが可能な熱電併給システムを提供することにある。
【0014】
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、始動時にSOFCを加熱するためのレドックス材を備えた熱電併給システムにおいて、実際の発電出力及び温熱量を、それぞれ、要求発電出力及び要求温熱量に維持に維持したまま、非循環ガスを用いて酸化したレドックス材を再生することが可能な熱電併給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明に係る熱電併給システムは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記熱電併給システムは、
少なくとも2個の内部改質型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)と、
前記SOFCのアノード流路に燃料を供給するための燃料供給装置と、
前記SOFCのカソード流路に空気を供給するための空気供給装置と、
前記SOFCのアノードオフガスからCO2の全部又は一部を分離するためのCO2分離器と、
前記アノードオフガスからH2Oの一部を分離するための第1H2O分離器と、
前記CO2及び前記H2Oが分離された後の前記アノードオフガスの全部又は一部を循環ガスとして前記アノード流路に戻すためのエジェクタと、
前記エジェクタに吸引されなかった前記アノードオフガス(非循環ガス)から、H2Oの全部又は一部を分離するための第2H2O分離器と、
助燃空気として前記SOFCのカソードオフガスを用い、燃焼燃料として前記非循環ガスを用いて、前記燃焼燃料を燃焼させ、温熱量Qhを得る燃焼器と、
前記燃焼器の前記燃焼燃料の流入温度Tc,c,inを検出するための第1温度検出装置と、
前記燃焼器の前記助燃空気の流入温度Tc,air,inを検出するための第2温度検出装置と、
前記燃焼器の出口温度Tc,outを検出するための第3温度検出装置と、
前記SOFCの作動温度Tsを検出するための第4温度検出装置と、
前記SOFCの発電出力Wを検出するための出力検出装置と、
前記SOFCの電流Iを検出するための電流検出装置と、
前記熱電併給システムの動作を制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記制御装置は、出力制御手段を備え、
前記出力制御手段は、要求発電出力Wt及び要求温熱量Qh,t、並びに、検出された前記Tc,c,in、前記Tc,air,in、前記Tc,out、前記Ts、前記W、及び前記Iを用いて、燃料流量Vf、循環率R、助燃空気流量Vc,air、及びカソード空気流量Vcath,inを制御することにより、発電中の前記SOFCの前記発電出力W及び前記燃焼器の前記温熱量Qhを、それぞれ、前記Wt及び前記Qh,tに維持するためのものからなる。
【0016】
熱電併給システムは、以下の構成をさらに備えているものが好ましい。
(3)前記熱電併給システムは、
前記非循環ガスの供給経路を、前記燃焼器に直接供給する第1経路と、休止中の前記SOFCの前記アノード流路を経由して前記燃焼器に供給する第2経路のいずれかに切り換える第1切替装置と、
前記SOFCのアノードに含まれるNiの酸化量を検出する第1酸化量検出装置と
をさらに備えている。
(4)前記制御装置は、第1燃焼熱量補正手段をさらに備え、
前記第1燃焼燃料補正手段は、前記第1切替装置により前記供給経路を前記第2経路に切り替える際に、前記非循環ガスを供給しようとする前記SOFCについて、前記第1酸化量検出装置を用いて検出された前記Niの酸化量を取得し、取得された前記Niの酸化量を用いて前記Qcを補正するものからなる。
【0017】
さらに、熱電併給システムは、以下の構成をさらに備えているものが好ましい。
(5)前記熱電併給システムは、
前記SOFCの前記アノード流路及び/又は前記カソード流路に隣接して設けられた、レドックス材が充填されたレドックス流路と、
前記非循環ガスの供給経路を、前記燃焼器に直接供給する第1経路と、休止中の前記SOFCの前記レドックス流路を経由して前記燃焼器に供給する第3経路のいずれかに切り換える第2切替装置と、
前記レドックス材の酸化量を検出する第2酸化量検出装置と
をさらに備えている。
(6)前記制御装置は、第2燃焼燃料補正手段をさらに備え、
前記第2燃焼燃料補正手段は、前記第2切替装置により前記供給経路を前記第3経路に切り替える際に、前記非循環ガスを供給しようとする前記SOFCについて、前記第2酸化量検出装置を用いて検出された前記レドックス材の酸化量を取得し、取得された前記レドックス材の酸化量を用いて前記Qcを補正するものからなる。
【発明の効果】
【0018】
所定の循環率Rでアノードオフガス循環を行い、発電に再利用されなかったアノードオフガス(非循環ガス)を燃焼器で燃焼させる場合において、燃焼器の燃焼燃料の流入温度Tc,c,in、燃焼器の助燃空気の流入温度Tc,air,in、及び燃焼器の出口温度Tc,outが分かると、燃焼器内での燃焼熱量Qcを推定することができる。
また、SOFCの作動温度Tsが分かると、SOFCの構造及びTsで決まる各種のパラメータであって、燃焼熱量Qc及び温熱量Qhの算出に必要なもの(例えば、SOFCの発電効率η、非循環ガス中のH2/CO比など)を推定することができる。
そのため、これらの4つの温度を検出し、所定の演算を行うと、要求発電出力Wt及び要求温熱量Qh,tを賄うために必要な燃料流量Vf、循環率R、助燃空気流量Vc,air、及び、カソード空気流量Vcath,inを求めることができる。
【0019】
また、非循環ガスを用いてアノードの再生を行う場合において、SOFCの構造とアノードに含まれるNiの酸化量が分かると、酸化したアノードの還元に消費される還元ガスの量を推定することができる。また、非循環ガス中の還元ガスの減少量が分かると、燃焼器における燃焼熱量Qcの減少量を推定することができる。
そのため、必要なQcが確保されるように、Vf、R、Vc,air、及びVchath,inを補正すると、非循環ガスを用いてアノードの再生処理を行う場合であっても、W及びQhを、それぞれ、Wt及びQh,tに維持することができる。
【0020】
同様に、非循環ガスを用いてレドックス材の再生を行う場合において、SOFCの構造とレドックス材の酸化量が分かると、酸化したレドックス材の還元に消費される還元ガスの量を推定することができる。また、非循環ガス中の還元ガスの減少量が分かると、燃焼器における燃焼熱量Qcの減少量を推定することができる。
そのため、必要なQcが確保されるように、Vf、R、Vc,air、及びVchath,inを補正すると、非循環ガスを用いてレドックス材の還元処理を行う場合であっても、W及びQhを、それぞれ、Wt及びQh,tに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱電併給システムの模式図である。
【
図2】熱電併給システムのエネルギー収支の模式図である。
【
図3】循環率RとH
2/CO比との関係の一例を示す図である。
【
図4】燃料利用率U
fとH
2/CO比との関係の一例を示す図である。
【
図5】作動温度T
sとH
2/CO比との関係の一例を示す図である。
【0022】
【
図6】燃焼器の温度差(T
c,out-T
c,in)と燃焼熱量Q
cとの関係の一例を示す図である。
【
図7】循環率Rと発電効率ηとの関係の一例を示す図である。
【
図8】燃料利用率U
fと発電効率ηとの関係の一例を示す図である。
【
図9】循環率Rと分離器1からの放熱量Q
ex1との関係の一例を示す図である。
【
図10】燃料利用率U
fと分離器1からの放熱量Q
ex1との関係の一例を示す図である。
【0023】
【
図11】循環率Rと分離器2からの放熱量Q
ex2との関係の一例を示す図である。
【
図12】燃料利用率U
fと分離器2からの放熱量Q
ex2との関係の一例を示す図である。
【
図13】出力制御手段を備えた制御プログラムのフロー図である。
【
図15】可動ノズルを備えたエジェクタの断面模式図である。
【0024】
【
図16】可動ニードルを備えたエジェクタの断面模式図である。
【
図17】CO
2分離型アノードオフガス循環(AGR)システムのエネルギー循環の模式図である。
【
図20】本発明の第2の実施の形態に係る熱電併給システムの模式図である。
【0025】
【
図21】
図21(A)は、第1酸化量測定装置を備えた熱電併給システムの模式図である。
図21(B)は、SOFCのアノード側エンドプレート近傍の分解斜視図である。
【
図22】放射率とNi酸化率及び第1初期補正熱量ε
h1,iniとの関係の一例を示す図である。
【
図23】第1燃焼燃料補正手段及び出力制御手段を備えた制御プログラムのフロー図である。
【0026】
【
図25】本発明の第3の実施の形態に係る熱電併給システムの模式図である。
【
図26】熱流束計の両端の検出温度差ΔTと第2初期補正熱量ε
h2,ini及びレドックス材の推定酸化反応率との関係を示す図である。
【
図27】本発明の第4の実施の形態に係る熱電併給システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 熱電併給システム(1)]
[1.1. 構成]
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る熱電併給システムの模式図を示す。
図1において、熱電併給システム10aは、
少なくとも2個の内部改質型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)20a、20bと、
SOFC20a、20bのアノード流路22a、22bに燃料を供給するための燃料供給装置32と、
SOFC20a、20bのカソード流路24a、24bに空気を供給するための空気供給装置(図示せず)と、
SOFC20a、20bのアノードオフガスからCO
2の全部又は一部を分離するためのCO
2分離器34と、
アノードオフガスからH
2Oの一部を分離するための第1H
2O分離器36と、
CO
2及びH
2Oが分離された後のアノードオフガスの全部又は一部を循環ガスとしてアノード流路22a、22bに戻すためのエジェクタ38と、
エジェクタ38に吸引されなかったアノードオフガス(非循環ガス)から、H
2Oの全部又は一部を分離するための第2H
2O分離器40と、
助燃空気としてSOFC20a、20bのカソードオフガスを用い、燃焼燃料として非循環ガスを用いて、燃焼燃料を燃焼させ、温熱量Q
hを得る燃焼器42と、
燃焼器42の燃焼燃料の流入温度T
c,c,inを検出するための第1温度検出装置46と、
燃焼器42の助燃空気の流入温度T
c,air,inを検出するための第2温度検出装置48と、
燃焼器42の出口温度T
c,outを検出するための第3温度検出装置50と、
SOFC20a、20bの作動温度T
sを検出するための第4温度検出装置(図示せず)と、
SOFC20a、20bの発電出力Wを検出するための出力検出装置(図示せず)と、
SOFC20a、20bの電流Iを検出するための電流検出装置(図示せず)と、
熱電併給システム10aの動作を制御する制御装置52と
を備えている。
熱電併給システム10aは、カソード流路24a、24bに供給される空気とカソードオフガスとの間で熱交換を行うための熱交換器44をさらに備えていても良い。
【0028】
[1.1.1. SOFC]
SOFC20a、20bは、内部改質型の固体酸化物形燃料電池からなる。SOFC20a、20bは、改質器が内蔵された間接内部改質型SOFCであっても良く、あるいは、アノードに用いられるNiを触媒として改質を行う直接内部改質型SOFCであっても良い。
なお、
図1に示す例において、合計2個のSOFC20a、20bが記載されているが、これは単なる例示であり、SOFCの個数(n)は3個以上であっても良い。SOFCが十分な定格出力を持つ場合、作動用のSOFCと休止用のSOFCの少なくとも2個のSOFCがあれば、後述する制御を行うことができる。
また、SOFCが3個以上である場合であっても、作動させるスタックを順番に変更することにより、後述する制御を行うこともできる。さらに、SOFCが3個以上ある場合において、後述する還元処理を行う時には、各スタック毎に作動→還元→休止の各モードを周期的に変更することもできる。
【0029】
SOFC20a、20bのアノード流路22a、22bの入口は、それぞれ、第1三方弁V1を介して、エジェクタ38の出口に接続されている。第1三方弁V1は、エジェクタ38から排出される燃料ガス及び循環ガスの混合ガスを稼働中のSOFC20a、20bのアノード流路22a、22bに供給するためのものである。ここで、「循環ガス」とは、アノードオフガスの内、SOFC20a、20bに戻されるガスをいう。
また、アノード流路22a、22bの出口は、それぞれ、第2三方弁V2を介して、CO2分離器34のフィード流路の入口に接続されている。第2三方弁V2は、稼働中のSOFC20a、20bのアノード流路22a、22bから排出されるアノードオフガスをCO2分離器34のフィード流路に供給するためのものである。
【0030】
V1とは別に、SOFC20a、20bのアノード流路22a、22bの入口は、それぞれ、第3三方弁V3を介して、第2H2O分離器40のフィード流路の出口に接続されている。第3三方弁V3は、第2H2O分離器40から排出される非循環ガスを休止中のSOFC20a、20bのアノード流路22a、22bに供給するためのものである。ここで、「非循環ガス」とは、アノードオフガスの内、SOFC20a、20bに戻されないガス(換言すれば、燃焼器42に供給されるガス)をいう。
また、V2とは別に、アノード流路22a、22bの出口は、それぞれ、第4三方弁V4を介して、燃焼器42の入口に接続されている。第4三方弁V4は、休止中のSOFC20a、20bのアノード流路22a、22bを通過した非循環ガスを燃焼器42に供給するためのものである。
【0031】
SOFC20a、20bのカソード流路24a、24bの入口は、それぞれ、第5三方弁V5を介して熱交換器44の空気側流路の出口に接続されている。第5三方弁V5は、空気を稼働中のSOFC20a、20bのカソード流路24a、24bに供給するためのものである。
また、カソード流路24a、24aの出口は、それぞれ、熱交換器44のカソードオフガス側流路の入口に接続されている。さらに、熱交換器44のカソードオフガス側流路の出口は、流量制御弁V7を介して燃焼器42の入口に接続されている。流量制御弁V7は、非循環ガスの燃焼に必要、かつ、十分な量のカソードオフガスを燃焼器42に供給するためのものである。
【0032】
なお、
図1においては、非循環ガスを休止中のSOFC20a、20bを経由して燃焼器42に供給しているが、これは単なる例示であり、非循環ガスを直接、燃焼器42に供給しても良い。但し、非循環ガスを休止中のSOFC20a、20bのアノード流路22a、22bに供給すると、酸化したアノード(Niサーメット)を還元することができる。また、SOFC20a、20bがレドックス流路を備えている場合において、非循環ガスをレドックス流路に供給すると、酸化したレドックス材を還元することができる。これらの点については、後述する。
【0033】
[1.1.2. 燃料供給装置]
燃料供給装置32は、SOFC20a、20bのアノード流路22a、22bに、燃料(炭化水素)を供給するためのものである。燃料供給装置32の出口は、エジェクタ38の駆動側の入口に接続されている。SOFC20a、20bに供給された燃料は、改質器内又はアノードの改質触媒上において水蒸気改質される。
燃料供給装置32の構造は、SOFC20a、20bに対し、所定の燃料流量Vfで燃料を供給可能なものである限りにおいて、特に限定されない。本発明において、燃料流量Vfは、要求発電出力Wt及び要求温熱量Qh,tが過不足なく得られるように制御される。この点については、後述する。
【0034】
[1.1.3. 空気供給装置]
空気供給装置(図示せず)は、SOFC20a、20bのカソード流路24a、24bに、空気を供給するためのものである。空気供給装置の出口は、熱交換器44の空気側流路の入口に接続されている。
空気供給装置の構造は、SOFC20a、20bに対し、所定のカソード空気流量Vcath,inで空気を供給可能なものである限りにおいて、特に限定されない。本発明において、カソード空気流量Vcath,inは、要求発電出力Wt及び要求温熱量Qh,tが過不足なく得られるように制御される。この点については、後述する。
【0035】
[1.1.4. CO2分離器]
CO2分離器34は、SOFC20a、20bのアノードオフガスからCO2の全部又は一部を分離するためのものである。
CO2分離器34のフィード流路の入口は、第2三方弁V2を介して、SOFC20a、20bのアノード流路22a、22bの出口に接続されている。また、CO2分離器34のフィード流路の出口は、第1H2O分離器36のフィード流路の入口に接続されている。CO2分離器34のパージ流路の入口は、第1H2O分離器36のパージ流路の出口に接続されている。さらに、CO2分離器34のパージ流路の出口は、大気に開放されている。
【0036】
CO2分離器34の構造は、アノードオフガスからCO2の全部又は一部を分離可能なものである限りにおいて、特に限定されない。アノードオフガスに含まれるCO2は再利用されることがないので、CO2分離器34は、アノードオフガスに含まれるCO2の95mol%以上を分離することが可能なものが好ましい。なお、パージ流路から排出されるCO2は、レドックス材を酸化させるための酸化剤として利用される場合がある。この点は、後述する。
【0037】
[1.1.5. 第1H2O分離器]
第1H2O分離器36は、SOFC20a、20bのアノードオフガスからH2Oの一部を分離するためのものである。第1H2O分離器36のフィード流路の入口は、CO2分離器34のフィード流路の出口に接続されている。第1H2O分離器36のフィード流路の出口は、エジェクタ38の吸引側の入口に接続されている。さらに、第1H2O分離器36のパージ流路の出口は、CO2分離器34のパージ流路の入口に接続されている。
【0038】
第1H2O分離器36の構造は、アノードオフガスからH2Oの一部を分離可能なものである限りにおいて、特に限定されない。本発明において、アノードオフガスに含まれるH2Oは、水蒸気改質用の原料として再利用される。そのため、第1H2O分離器36では、アノードオフガスに含まれるH2Oの一部が分離される。第1H2O分離器36でのH2Oの分離量は、燃料供給装置32から新たに供給される燃料中のカーボン量に対する循環ガスに含まれる水蒸気の比(Steam/Carbon比)が所定の値(例えば、S/C比=2)となるように設定される。また、第1H2O分離器36のパージ流路から排出されたH2Oは、CO2分離器34において、CO2のパージガスとして用いられる。なお、パージ流路から排出されるH2Oは、レドックス材を酸化させるための酸化剤として利用される場合がある。この点は、後述する。
【0039】
[1.1.6. エジェクタ]
エジェクタ38は、所定量のCO2及びH2Oが分離された後のアノードオフガスの全部又は一部を循環ガスとしてアノード流路22a、22bに戻すためのものである。エジェクタ38の駆動側の入口は、燃料供給装置32の出口に接続されている。駆動側の出口は、第1三方弁V1を介してアノード流路22a、22bの入口に接続されている。また、エジェクタ38の吸引側の入口は、第1H2O分離器36のフィード流路の出口に接続されている。
【0040】
さらに、エジェクタ38は、循環率Rを調節するための手段を備えている。ここで、「循環率R」とは、アノードオフガスの総流量に対する循環ガスの流量の比をいう。本発明において、循環率Rは、要求発電出力Wt及び要求温熱量Qh,tが過不足なく得られるように制御される。この点については、後述する。
循環率Rを調節するための手段としては、例えば、
(a)可変ノズルを用いる方法、
(b)可変ニードルを用いる方法、
などがある。循環率調整手段の詳細については、後述する。
【0041】
[1.1.7. 第2H2O分離器]
第2H2O分離器40は、エジェクタ38に吸引されなかったアノードオフガス(非循環ガス)から、H2Oの全部又は一部を分離するためのものである。第2H2O分離器40のフィード流路の入口は、図示が簡略化されているが、エジェクタ38の吸引側の入口と第1H2O分離器36のフィード流路の出口とを繋ぐガス管に接続されている。第2H2O分離器40のフィード流路の出口は、第3三方弁V3を介してアノード流路22a、22bの入口に接続されている。
【0042】
H2O分離器40の構造は、非循環ガスからH2Oの全部又は一部を分離可能なものである限りにおいて、特に限定されない。非循環ガスに含まれるH2Oは、再利用されることがない。むしろ、H2Oは酸化剤でもあるので、非循環ガスにH2Oが残存していると、アノードやレドックス材の再生効率が低下する。従って、H2O分離器40は、非循環ガスに含まれるH2Oの95mol%以上を分離することが可能なものが好ましい。
【0043】
[1.1.8. 燃焼器]
燃焼器42は、助燃空気としてSOFC20a、20bのカソードオフガスを用い、燃焼燃料として非循環ガスを用いて、燃焼燃料を燃焼させ、温熱量Qhを得るためのものである。燃焼器42で得られた温熱量Qhは、給湯、暖房などに利用される。
燃焼器42の燃焼燃料流路の入口は、第4三方弁V4を介してアノード流路22a、22bの出口に接続されている。燃焼器42の助燃空気流路の入口は、流量制御弁V7及び熱交換器44を介してカソード流路24a、24bの出口に接続されている。
【0044】
燃焼器42の構造は、助燃空気を用いて燃焼燃料を燃焼させることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。燃焼器42に供給される燃焼燃料流量は、エジェクタ38の循環率制御手段により制御される。
また、燃焼器42に供給される助燃空気流量Vc,airは、流量制御弁V7により制御される。本発明において、助燃空気流量Vc,airは、要求発電出力Wt及び要求温熱量Qh,tが過不足なく得られるように制御される。この点については、後述する。
【0045】
[1.1.9. 熱交換器]
熱交換器44は、カソード流路24a、24bに供給される空気とカソードオフガスとの間で熱交換を行うためのものである。熱交換器44は、必ずしも必要ではないが、カソードオフガスを用いて空気を加熱すると、熱交換器44を用いない場合に比べて、エネルギー効率を向上させることができる。
【0046】
熱交換器44の空気側流路の入口は、空気供給装置(図示せず)の出口に接続されている。熱交換器44の空気側流路の出口は、第5三方弁V5を介してカソード流路24a、24bの入口に接続されている。
熱交換器44のカソードオフ側流路の入口は、カソード流路24a、24bの出口に接続されている。さらに、熱交換器44のカソードオフガス側流路の出口は、流量制御弁V7を介して燃焼器42の助燃空気流路の入口に接続されている。
【0047】
熱交換器44の構造は、カソード流路24a、24bに供給される空気と、カソードオフガスとの間で熱交換が可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
熱交換器44は、カソード流路24a、24bに供給されるすべての空気とカソードオフガスとを熱交換するものでも良く、あるいは、カソード流路24a、24bに供給される一部の空気とカソードオフガスとを熱交換するものでも良い。後者の場合、熱交換器44の空気側流路にバイパス流路を設けるのが好ましい。
【0048】
[1.1.10. 第1~第4温度検出装置、出力検出装置、及び電流検出装置]
第1温度検出装置46は、燃焼器42の燃焼燃料の流入温度Tc,c,inを検出するためのものである。第2温度検出装置48は、燃焼器42の助燃空気の流入温度Tc,air,inを検出するためのものである。第3温度検出装置50は、燃焼器42の出口温度Tc,outを検出するためのものである。第4温度検出装置(図示せず)は、SOFC20a、20bの作動温度Tsを検出するためのものである。
【0049】
出力検出装置(図示せず)は、SOFC20a、20bの発電出力Wを検出するためのものである。さらに、電流検出装置(図示せず)は、SOFC20a、20bの電流Iを検出するためのものである。
これらの検出装置の構造は、温度T、発電出力W、又は電流Iを検出可能なものである限りにおいて、特に限定されない。検出されたこれらの数値は、発電出力W及び温熱量Qhを制御するために用いられる。この点については、後述する。
【0050】
[1.1.11. 制御装置]
制御装置52は、熱電併給システム10aの動作を制御するためのものである。制御装置52は、熱電併給システム10aの通常の動作を制御するための手段に加えて、出力制御手段をさらに備えている。
ここで、「出力制御手段」とは、要求発電出力Wt及び要求温熱量Qh,t、並びに、検出されたTc,c,in、Tc,air,in、Tc,out、Ts、W、及びIを用いて、燃料流量Vf、循環率R、助燃空気流量Vc,air、及びカソード空気流量Vcath,inを制御することにより、発電中のSOFC20a、20bの発電出力W及び燃焼器42の温熱量Qhを、それぞれ、Wt及びQh,tに維持するための手段をいう。
【0051】
出力制御手段は、具体的には、以下の手順を実行するための手段を備えているものが好ましい。
(A)前記Ts及び前記Wを検出し、これらをメモリに記憶させる手順A。
(B)前記メモリに記憶されているデータベースに基づいて、現在の作動条件に対応する前記SOFCの発電効率η、及び前記非循環ガス中のH2/CO比を算出し、これらを前記メモリに記憶させる手順B。
(C)前記Tc,c,in、前記Tc,air,in、及び前記Tc,outを検出し、これらを前記メモリに記憶させる手順C。
【0052】
(D)現在の作動条件に対応する燃焼熱量Qc及び前記Qhを算出し、これらを前記メモリに記憶させる手順D。
(E)前記手順Dで算出された前記Qcに対応する前記Vf、前記R、前記Vc,air、及び前記Vcath,inを算出し、これらを前記メモリに記憶させると同時に、作動条件をこれらに設定して前記熱電併給システムを作動させる手順E。
(F)前記Qh及び前記Qh,tから温熱偏差εh(=Qh-Qh,t)を算出し、これを前記メモリに記憶させる手順F。
(G)前記εhの絶対値が第1しきい値以上である時には、前記Qcから前記εhを減算することにより前記Qcを補正し、補正後の前記Qcを新たな前記Qcとして前記メモリに記憶させる手順G。
【0053】
(H)補正後の前記Qcに対応する前記Vf、前記R、前記Vc,air、及び前記Vcath,inを算出し、これらを前記メモリに記憶させると同時に、前記作動条件をこれらに設定して前記熱電併給システムを作動させる手順H。
(I)前記εhの絶対値が前記第1しきい値未満となるまで、前記手順A~前記手順Hを繰り返す手順I。
(J)前記εhの絶対値が前記第1しきい値未満となった時は、前記W及び前記Wtから発電出力偏差εe(=W-Wt)を算出し、これを前記メモリに記憶させる手順J。
【0054】
(K)前記εeの絶対値が第2しきい値以上である時には、前記Vfから燃料偏差ΔVf(=εe/(η×ΔHf))(但し、ΔHfは前記燃料の低位発熱量)を減算することにより前記Vfを補正し、補正後の前記Vfを新たな前記Vfとして前記メモリに記憶させる手順K。
(L)前記εeの絶対値が前記第2しきい値未満となるまで、前記手順A~手順Kを繰り返す手順L。
(M)前記εeの絶対値が前記第2しきい値未満となったときは、前記メモリに記憶されている前記Vf、前記R、前記Vc,air、及び前記Vcath,inに基づいて前記熱電併給システムを作動させる手順M。
出力制御手段の詳細については、後述する。
【0055】
[1.2. 燃料流量V
f、循環率R、助燃空気流量V
c,air、及びカソード空気流量V
cath,inの算出方法]
図2に、熱電併給システムのエネルギー収支の模式図を示す。
図2は、
図1を簡略化して表示したものである。
図2中、SOFC20a、20bは、内部改質型SOFCであり、その内部に改質器28を備えている。
【0056】
Er2は、エジェクタ38から改質器28に供給されるガスのエネルギー(改質入口ガスエネルギー)を表す。Qrは、SOFC20a、20bから改質器28に供給される改質反応熱を表す。Wは、SOFC20a、20bの発電出力を表す。
Vfは、エジェクタ38に新たに供給される燃料流量を表す。Efは、エジェクタ38に供給される燃料が持つエネルギー(投入燃料エネルギー)を表す。
【0057】
「分離器1」は、CO2分離器34と第1H2O分離器36を合わせたものを表す。Qex1は、分離器1から外界に廃棄される熱量を表す。Er1は、分離器1で処理された後のアノードオフガスが持つエネルギー(アノードオフガスエネルギー)を表す。
「分離器2」は、第2CO2分離器40を表す。Qex2は、分離器2から外界に廃棄されるエネルギーを表す。
Qcは、分離器2から排出されるガスが持つ熱量、すなわち、燃焼器42内で燃焼燃料が燃焼することにより発生する燃焼熱量を表す。Qhは、燃焼器42から外部に取り出される温熱量を表す。
【0058】
本発明においては、4つの温度、すなわち、
(a)燃焼器42の燃焼燃料の流入温度Tc,c,in[℃]、
(b)燃焼器42の助燃空気の流入温度Tc,air,in[℃]、
(c)燃焼器42の出口温度Tc,out[℃]、及び、
(d)SOFC20a、20bの作動温度Ts[℃]
を測定し、これらを用いて、燃料流量Vf、循環率R、助燃空気流量Vc,air、及びカソード空気流量Vcath,inを算出する。以下に、これらの算出方法について説明する。
【0059】
なお、以下の説明においては、CO2分離器34はアノードオフガスからCO2の全部を分離し、第2H2O分離器40は非循環ガスからH2Oの全部を分離するものとする。CO2及び/又はH2Oが相対的に多量に残存している場合には、以下の方法と同様の算出方法を用いて、残存しているCO2及び/又はH2Oの量を考慮して、燃焼器42の流入ガス及びオフガスの組成及び流量を補正すればよい。一方、残存量が5mol%未満である時には、残存量をゼロと見なして計算しても差し支えない。
【0060】
[A. 必要燃焼熱量Qc,tの算出]
必要燃焼熱量Qc,tは、要求温熱量Qh,tを得るために必要な燃焼熱量の理論値であって、要求温熱量Qh,t[kW]及び利用下限温熱温度Tuse[℃]から算出される。また、算出されたQc,tは、メモリに記憶され、流入ガスの流量Vc,jの算出に用いられる。次の式(1)に、Qc,tの算出式を示す。次の式(2.1)~式(2.4)に、Vc,jの算出式を示す。さらに、次の式(3)に、Vcath,inの算出式を示す。
【0061】
【0062】
但し、
Tc,in=(Tc,c,in・Vc+Tc,air,in・Vc,air)/(Vc+Vc,air)、
Vc=Vc,H2+Vc,CO、
Vc,jは、燃焼器42の流入ガスに含まれるガス組成jの流入流量[mol/s]、
j=H2、CO、O2、又はN2、
Cp,jは、前記ガス組成jの比熱[kJ/(mol・s)]
rは、非循環ガスのH2/CO比(=g2(R,Uf,Ts))、
ΔHH2は、H2の低位発熱量[kJ/mol]、
ΔHCOは、COの低位発熱量[kJ/mol]、
Iは、電流[A]、
Fは、ファラデー定数[C/mol]、
Uaは、空気利用率。
【0063】
Tuseは、燃焼器42の構造が決まれば一義的に定まる。Cp,j、ΔHH2、ΔHCO、及びFは、それぞれ、既知の定数である。
Tc,inは、燃焼燃料及び助燃空気の混合平均温度であり、流入ガスの温度(Tc,c,in、Tc,air,in)、並びに、流入ガスの流量(Vc,H2、Vc,CO、Vc,air)が分かれば算出することができる。流入ガスの温度は、Tc,inを算出する時点で検出された値を用いる。一方、Tc,inを算出するために必要な流入ガスの流量は、メモリに記憶されている数値(すなわち、演算により作動条件が変更される前の数値)を用いる。
【0064】
r(H
2/CO比)は、循環率R、燃料利用率U
f、及び作動温度T
sの関数であり、熱電併給システム10aの構造及び作動条件が決まれば一義的に定まる。CO
2分離器34でCO
2をほぼ完全に除去し、第2CO
2分離器40でH
2Oをほぼ完全に除去すると、rを用いて非循環ガスの熱量計算が可能になる。
図3に、循環率RとH
2/CO比との関係の一例を示す。
図4に、燃料利用率U
fとH
2/CO比との関係の一例を示す。
図5に、作動温度T
sとH
2/CO比との関係の一例を示す。アノードオフガスの組成は、改質器28への流入ガスの組成(循環ガス+燃料ガス)により変化する。そのため、改質器28への流入ガスの組成毎に、このようなデータベースを予めメモリに記憶させておくと、現在の作動条件(すなわち、メモリに記憶されているR、U
f、及びT
s)に対応するrを算出することができる。
【0065】
Vcath,inも同様であり、熱電併給システム10aの構造及び作動条件(R、Uf、Ua、Ts、Vf)が決まれば一義的に定まる。そのため、Vcath,inと作動条件との関係を予めメモリに記憶させておくと、現在の作動条件に対応するVcath,inを算出することができる。Uaは、発電に用いられる理論空気(O2)量と供給する空気量との比であり、発電に伴う発熱を除熱する効果があることから、作動温度を狙いの温度にするために必要な空気量から算出される。
さらに、式(2.3)及び式(2.4)の計算に用いられるVc,airは、メモリに記憶された数値(すなわち、演算により作動条件が変更される前の数値)を用いる。
【0066】
新たに算出されたQc,t、新たに検出された電流I、並びに、メモリ記憶されている数値(すなわち、r、Vchath,in、及びVc,air)を式(2.1)~式(2.4)に代入すると、現在の作動条件に対応するVc,jを算出することができる。
【0067】
[B. 助燃空気流量Vc,airの算出]
助燃空気流量Vc,airは、予め設定された空気過剰率Ktから算出される。次の式(4)に、Vc,airの算出式を示す。式(4)の右辺に含まれる変数の内、Iは、Vc,airを算出する時点で検出された値を用いる。一方、I以外の時々刻々と変化する変数については、メモリに記憶された数値(すなわち、演算により作動条件が変更される前の数値)を用いる。算出されたVc,airは、流量制御弁V7の制御に用いられると同時に、メモリに記憶され、他の変数の算出にも用いられる。
【0068】
【0069】
[C. 断熱火炎(完全燃焼)モデルによる燃焼熱量の予測]
燃焼熱量Qcは、燃焼器42内で燃焼燃料を燃焼させることによって実際に発生する熱量の推定値であって、断熱火炎(完全燃焼)モデルから算出される。次の式(5)に、Qcの算出式を示す。また、次の式(6.1)~式(6.3)に、Vcout,jとVc,iの関係式を示す。
【0070】
【0071】
但し、
Vcout,iは、燃焼器42のオフガスに含まれるガス組成iの出口流量[mol/s]、
i=CO2、N2、又はH2O、
Cp,iは、前記ガス組成iの比熱[kJ/(mol・K)]。
【0072】
Vcout,iとVc,jとの間には、式(6.1)~式(6.3)の関係が成り立つ。そのため、新たに検出されたTc,out及びTc,in、並びに、メモリに記憶されているVc,jを式(5)に代入すると、Qcを算出することができる。非循環ガスからCO2及びH2Oを完全に除去すると、非循環ガスは還元ガスのみとなる。還元ガスを用いると、断熱火炎モデルがシンプルになるので、Qcの予測精度が向上する。
【0073】
図6に、燃焼器の温度差(T
c,out-T
c,in)と燃焼熱量Q
cとの関係の一例を示す。
図6に示すように、燃焼入口組成(燃焼器42の流入ガスの組成)が分かると、T
c,out及びT
c,inを検出することにより、Q
cを求めることができる。
【0074】
[D. SOFC内部熱収支モデル]
SOFC20a、20bの発電効率η、及び改質反応熱Qrは、いずれも、作動条件の関数である。次の式(7)に、ηの算出式を示す。次の式(8)に、Qrの算出式を示す。算出されたη及びQrは、いずれも、メモリに記憶され、他の変数の算出に用いられる。
η=g1(R、Uf、Ts) …(7)
Qr=g2(R、Uf、Ts、Vf) …(8)
【0075】
ηは、熱電併給システム10aの構造及び作動条件(R、U
f、T
s)が決まれば一義的に定まる。
図7に、循環率Rと発電効率ηとの関係の一例を示す。
図8に、燃料利用率U
fと発電効率ηとの関係の一例を示す。このようなデータを予めメモリに記憶させておくと、現在の作動条件(すなわち、メモリに記憶されているR、U
f、及びT
s)に対応するηを算出することができる。
Q
rも同様であり、熱電併給システム10aの構造及び作動条件(R、U
f、T
s、V
f)が決まれば一義的に定まる。そのため、Q
rと作動条件との関係を予めメモリに記憶させておくと、現在の作動条件に対応するQ
rを算出することができる。
【0076】
[E. 初期の循環率R、燃料流量Vf、及び助燃空気流量Vc,airの設定]
[E.1. 初期の循環率R]
循環率Rは、後述する式(12)から算出される。循環率Rを算出するためには、Qcを知る必要がある。しかし、暖機運転が終了し、定常運転に移行する時点では、メモリにQcは記憶されていない。そのため、Qc=Qh,tと見なして、初期の循環率Rを算出し、これをメモリに記憶させる。以下、作動条件の変更に伴い、循環率Rは逐次計算され、新たに算出された循環率Rがメモリに記憶される。
【0077】
[E.2. 初期の燃料流量Vf]
初期の燃料流量Vfは、後述する式(11)からEfを算出し、算出されたEfを式(17)に代入することにより算出することができる。
【0078】
[E.3. 初期の助燃空気流量Vc,air]
初期の助燃空気流量Vc,airは、上述した式(4)から算出することができる。
【0079】
[F. サイクル熱収支モデル]
[F.1. 循環率R]
次の式(9)~式(12)に、それぞれ、Er2、Er1、Ef、及びRの算出式を示す。また、式(13)及び式(14)に、それぞれ、Qex1、及びQex2の算出式を示す。
【0080】
【0081】
SOFCの熱収支から、W=η×Uf×(Er2+Qr)が成り立つ。これを変形すると、式(9)が得られる。
アノードオフガス循環の熱収支から、Er1=(1-Uf)×(Er2+Qr)-Qex1が成り立つ。これを変形すると、式(10)が得られる。
また、エジェクター38の熱収支から、Er2=Er1×R+Efが成り立つ。これを変形すると、式(11)が得られる。
さらに、非循環ガスの熱収支から、Qc=(1-R)×Er1-Qex2が成り立つ。これを変形すると、式(12)が得られる。
【0082】
図9に、循環率Rと分離器1からの放熱量Q
ex1との関係の一例を示す。
図10に、燃料利用率U
fと分離器1からの放熱量Q
ex1との関係の一例を示す。
図11に、循環率Rと分離器2からの放熱量Q
ex2との関係の一例を示す。
図12に、燃料利用率U
fと分離器2からの放熱量Q
ex2との関係の一例を示す。
図9~
図12に示すように、Q
ex1及びQ
ex2は、それぞれ、熱電併給システム10aの構造及び作動条件(W、U
f、T
s、R)が決まれば一義的に定まる。
そのため、Q
ex1と作動条件との関係、及びQ
ex2と作動条件との関係を予めメモリに記憶させておくと、それぞれ、現在の作動条件に対応するQ
ex1及びQ
ex2を算出することができる。また、算出されたQ
ex1及びQ
ex2を式(12)に代入すれば、現在の作動条件に対応する循環率Rを算出することができる。
【0083】
[F.2. 温熱量Qh]
温熱量Qhは、燃焼器42から実際に温熱として取り出された熱量である。次の式(15)に、Qhの算出式を示す。次の式(16.1)~式(16.4)に、Vc,jの算出式を示す。
【0084】
【0085】
式(15)において、Qcには、断熱火炎モデルを用いた計算値、すなわち、式(5)を用いて算出された値を用いる。また、式(15)中のTc,inを算出するのに必要なVc,jは、式(16.1)~式(16.4)を用いて算出される。式(16.1)~式(16.4)は、「Qc,t」に代えて、式(15)から算出された「Qc」を用いる以外は、式(2.1)~式(2.4)と同様である。
【0086】
[F.3. 燃料流量Vf]
次の式(17)に、燃料流量Vfの算出式を示す。
Ef=Vf・{ΔHf-Cp,f・(Tr-T0)} …(17)
但し、
ΔHfは、SOFCに供給される燃料の低位発熱量、
Cp,fは、SOFCに供給される燃料の比熱、
Trは、改質温度(=SOFC20a、20bの作動温度Ts)、
T0は、室温。
【0087】
式(17)中、左辺のEfには、式(11)から算出された値を用いる。内部改質型SOFCでは、改質温度Trは、作動温度Tsにほぼ等しい。そのため、Tsを測定すれば、式(17)より、Vfを算出することができる。
【0088】
[1.3. 制御フロー]
図13に、出力制御手段を備えた制御プログラムのフロー図を示す。
図14に、
図13に示すフロー図の続きを示す。なお、以下の説明では、スタックの個数が2個であるケースについて説明するが、3個以上のスタックを備えている場合であっても、同様にして制御を行うことができる。
まず、ステップ1(以下、単に「S1」という)において、SOFCの要求発電出力W
t、及び燃料利用率U
fを設定する。この時点において、W
tは、起動時における要求電力となるように設定される。
【0089】
アノードオフガス循環を行わない場合、Ufが大きくなるほど、SOFC外に排出される未反応燃料の量は少なくなるが、電極反応により生成したCO2及び/又はH2Oの濃度が増加するために濃度分極によるエネルギーロスが増大する。一方、アノードオフガス循環を行う場合、Ufを小さくしても、SOFC外に排出される未反応燃料を少なくすることができ、かつ濃度分極も小さくなる。その結果、システム全体のエネルギーロスを小さくすることができる。Ufは、上述の点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
設定されたWt及びUfは、それぞれ、メモリに記憶される。
【0090】
次に、S2において、各SOFCスタックの暖機を行う。この時の循環率Rは、1に設定される。これは、始動直後においては、温熱供給よりもSOFCの昇温を優先させるためである。これと同時に、各SOFCスタックのスタック稼働カウンタ作動時間tcount(i)のカウントを開始する。「スタック稼働カンター作動時間tcout(i)」とは、スタックが稼働している累積時間をいう。スタックの暖機後、発電の開始から作動時間がカウンタ蓄積され、作動スタックの累積作動時間がメモリに記録される。
【0091】
次に、S3において、暖機運転時の燃料流量Vf、及びカソード空気流量Vcath,inを算出する。算出されたVf、及びVcath,inは、それぞれ、メモリに記憶されると同時に、作動条件をこれらに設定して熱電併給システムの暖機運転を行う。
【0092】
次に、S4において、要求温熱量Qh,t及び空気過剰率Ktを設定する。Qh,tは、温熱利用先の熱量に基づいて設定される。Ktは、温熱利用先の温度に基づいて設定される。設定されたQh,t及びKtは、それぞれ、メモリに記憶される。
【0093】
次に、S5において、作動温度Ts及び発電出力Wを検出する。検出されたTs及びWは、それぞれ、メモリに記憶される。暖機運転は、Tsが予め設定された温度になるまで行われる。
【0094】
次に、S6において、初期の循環率Rと、助燃空気流量Vc,airを算出し、作動条件をこれらに設定して熱電併給システムを作動させる。Rの算出には、上述した式(12)を用いる。また、Vc,airの算出には、上述した式(4)を用いる。また、式(12)及び式(4)の右辺の変数には、メモリに記憶されている数値を用いる。
さらに、S7において、再度、Wt及びUfの設定を行う。また、S8において、再度、Qh,t及びKtの設定を行う。
【0095】
次に、S9に進む。S9では、tcount(i)がtANODE以上か否かが判断される。稼働スタックは、連続作動によりアノードNiが酸化する。「tANODE」とは、代表的なスタック作動温度、ガス組成において、アノードNiの酸化率が所定の値(例えば、0.6)になるまでに要する時間(Ni酸化時間)をいう。tANODEは、スタックの仕様が分かると、一義的に定まる。tcount(i)≧tANODEでない場合(S9:NO)、そのままS11に進む。
一方、tcount(i)≧tANODEである場合(S9:YES)、S10に進む。S10では、tcout(i)=0とし、i番目のスタックを休止させ、アノードに還元ガスが流れるように、第1~第4三方弁V1~V4を切り換える。一方、休止していたスタックには、アノード及びカソードに、それぞれ、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されるように、第1~第4三方弁V1~V4を切り換える。その後、S11に進む。
【0096】
次に、S11において、再度、作動温度Ts及び発電出力Wを検出し、これらをメモリに記憶させる(手順A)。
次に、S12において、メモリに記憶されているデータベースに基づいて、現在の作動条件に対応するSOFCの発電効率η、及び前記非循環ガス中のH2/CO比を算出し、これらをメモリに記憶させる(手順B)。
次に、S13において、燃焼器の燃焼燃料の流入温度Tc,c,in、燃焼器の助燃空気の流入温度Tc,air,in、及び、燃焼器の出口温度Tc,outを検出し、これらをメモリに記憶させる(手順C)。
【0097】
次に、S14において、現在の作動条件に対応する燃焼熱量Qc及び温熱量Qhを算出し、これらをメモリに記憶させる(手順D)。Qcの算出には、上述した式(5)が用いられる。また、Qhの算出には、上述した式(15)が用いられる。
次に、S15において、手順Dで算出されたQcに対応する燃料流量Vf、循環率R、助燃空気流量Vc,air、及びカソード空気流量Vcath,inを算出し、これらをメモリに記憶させると同時に、作動条件をこれらに設定して熱電併給システムを作動させる(手順E)。Vfの算出には、上述した式(17)を用いる。Rの算出には、上述した式(12)を用いる。Vc,airの算出には、上述した式(4)を用いる。さらに、Vcath,inは、メモリに記憶されているデータベースに基づいて、現在の作動条件に対応する値を算出する。
【0098】
次に、S16において、温熱量Q
h及び要求温熱量Q
h,tから温熱偏差ε
h(=Q
h-Q
h,t)を算出し、これをメモリに記憶させる(手順F)。
次に、S17に進む。S17では、ε
hの絶対値が第1しきい値未満であるか否かが判断される。
図13及び
図14に示す例では、第1しきい値をQ
h,tの5%と設定しているが、これは単なる例示である。第1しきい値は、目的に応じて最適な値を選択することができる。ε
hの絶対値が第1しきい値以上である時(S17:NO)には、実際の温熱量Q
hに過不足があることを表す。このような場合には、S18に進む。
【0099】
S18では、Qcからεhを減算することによりQcを補正し、補正後のQcを新たなQcとしてメモリに記憶させる(手順G)。具体的には、εhが負である場合、実際の温熱量Qhが要求温熱量Qh,tより少ないことを表す。この場合、燃焼器においてより多くの熱量が発生するように、Qcに|εh|が加算される。一方、εhが正である場合、実際の温熱量が過剰であることを表す。この場合、Qcから|εh|が減算される。
次に、S19において、補正後のQcに対応するVf、R、Vc,air、及びVcath,inを算出し、これらをメモリに記憶させると同時に、作動条件をこれらに設定して熱電併給システムを作動させる(手順H)。
その後、S7に戻る。そして、εhの絶対値が第1しきい値未満となるまで、上述したS7~S19の各ステップ(すなわち、手順A~手順H)を繰り返す(手順I)。
【0100】
一方、ε
hの絶対値が第1しきい値未満となった時(S17:YES)には、S20に進む。S20では、発電出力W及び要求発電出力W
tから発電出力偏差ε
e(=W-W
t)を算出し、これをメモリに記憶させる(手順J)。
次に、S21に進む。S21では、発電出力偏差ε
eの絶対値が第2しきい値未満であるか否かが判断される。
図13及び
図14に示す例では、第2しきい値をW
tの5%と設定しているが、これは単なる例示である。第2しきい値は、目的に応じて最適な値を選択することができる。ε
eの絶対値が第2しきい値以上である時(S21:NO)には、実際の発電出力Wに過不足があることを表す。このような場合には、S22に進む。
【0101】
S22では、Vfから燃料偏差ΔVf(=εe/(η×ΔHf))(但し、ΔHfは前記燃料の低位発熱量)を減算することによりVfを補正し、補正後のVfを新たなVfとしてメモリに記憶させる(手順K)。具体的には、εeが負である場合、実際の発電出力Wが要求発電出力Wtより少ないことを表す。この場合、SOFCにより多くの燃料が供給されるように、Vfに|ΔVf|が加算される。一方、εeが正である場合、実際の発電出力Wが過剰であることを表す。この場合、Vfから|ΔVf|が減算される。
その後、S7に戻る。そして、εeの絶対値が第2しきい値未満となる(S21:YES)まで、上述したS7~S22(すなわち、手順A~手順K)を繰り返す(手順L)。
【0102】
一方、εeの絶対値が第2しきい値未満となったとき(S21:YES)は、S23に進む。S23では、システムを停止させるか否かが判断される。停止させない場合(S23:NO)には、S7に戻り、上述したS7~S23の各ステップを繰り返す。すなわち、作動停止の指示(S23:YES)があるまで、メモリに記憶されているVf、R、Vc,air、及びVcath,inに基づいて熱電併給システムを作動させる(手順M)。また、外乱によりWやQhが一時的に変動した場合であっても、上述した手順A~手順Mを繰り返すことにより、W及びQhを、それぞれ、Wt及びQh,tに維持することができる。
【0103】
[1.4. 循環率Rの制御方法]
[1.4.1. 可動ノズル式エジェクタ]
図15に、可動ノズルを備えたエジェクタの断面模式図を示す。
図15において、可動ノズル式エジェクタ38aは、本体62と、可動ノズル64とを備えている。
本体62は、円筒状の大径部62aと、大径部62aの先端に設けられたディフューザー部62bとを備えている。ディフューザー部62bは、逆テーパ状の縮径部62cと、円筒状の小径部62dと、テーパ状の拡径部62eとを備えている。大径部62aの基端側の側面には、循環ガスを導入するための導入口62fが設けられている。
【0104】
可動ノズル64は、円筒状の大径部64aと、大径部64aの先端に設けられた逆テーパ状の縮径部64bとを備えている。大径部64aの基端側の端面には、燃料ガスを導入するための導入口64cが設けられている。可動ノズル64は、軸方向に沿って移動可能となるように、本体62の大径部62aの基端側から内部に向かって挿入されている。可動ノズル64と本体62との間の摺動面には、シール材(図示せず)が挿入されている。
【0105】
可動ノズル64の導入口64cに燃料ガスを導入すると、可動ノズル64の縮径部64bの先端から本体62の小径部62d内に向かって、所定の流速で燃料ガスが噴射される。その際に発生する圧力差により、本体62の導入口62fから小径部62dに向かって、循環ガスが所定の流速で吸引される。
この時、可動ノズル64を軸方向に移動させると、循環ガスの流路断面積AC(すなわち、本体62の縮径部62cの先端における本体62の内面と可動ノズル64の外面との間の隙間の面積)が変化する。一方、燃料ガスの流路断面積AF(すなわち、可動ノズル64の縮径部64bの先端に設けられた貫通孔の面積)は常に一定である。そのため、可動ノズル64を軸方向に移動させると、循環率Rを任意に制御することができる。
【0106】
具体的には、可動ノズル64を大径部62a側に向かって移動させると、A
Cが大きくなる(
図15の上図参照)。その結果、導入口62fからの循環ガスの吸引量が増加する。逆に、可動ノズル64を拡径部62e側に向かって移動させると、A
Cが小さくなる(
図15の下図参照)。その結果、導入口62fからの循環ガスの吸引量が減少する。
【0107】
[1.4.2. 可動ニードル式エジェクタ]
図16に、可動ニードルを備えたエジェクタの断面模式図を示す。
図16において、可動ニードル式エジェクタ38bは、本体62と、固定ノズル64’と、可動ニードル66とを備えている。
本体62は、円筒状の大径部62aと、大径部62aの先端に設けられたディフューザー部62bとを備えている。ディフューザー部62bは、逆テーパ状の縮径部62cと、円筒状の小径部62dと、テーパ状の拡径部62eとを備えている。大径部62aの基端側の側面には、循環ガスを導入するための導入口62fが設けられている。
【0108】
固定ノズル64’は、円筒状の大径部64a’と、大径部64a’の先端に設けられた逆テーパ状の縮径部64b’とを備えている。大径部64a’の基端側の側面には、燃料ガスを導入するための導入口64c’が設けられている。 固定ノズル64’は、本体62の大径部62aの基端側から内部に向かって挿入されているが、軸方向に沿って移動させることはできない。
可動ニードル66は、柱状の平行部66aと、平行部66aの先端に設けられた逆テーパ状の縮径部66bとを備えている。可動ノードル66は、軸方向に沿って移動可能となるように、固定ノズル64’の大径部64a’の基端側から内部に向かって挿入されている。可変ニードル66と固定ノズル64’との間の摺動面には、シール材(図示せず)が挿入されている。
【0109】
固定ノズル64’の導入口64c’に燃料ガスを導入すると、固定ノズル64’の縮径部64b’の先端から本体62の小径部62d内に向かって、所定の流速で燃料ガスが噴射される。また、その際に発生する圧力差により、本体62の導入口62fから小径部62dに向かって、循環ガスが所定の流速で吸引される。
この時、可動ニードル66を軸方向に移動させると、燃料ガスの流路断面積AFが変化する。一方、循環ガスの流路断面積ACは常に一定である。そのため、可動ニードル66を軸方向に移動させると、循環率Rを任意に制御することができる。
【0110】
具体的には、可動ニードル66を大径部64a’側に向かって移動させると、A
Fが大きくなる(
図16の上図参照)。その結果、導入口62fからの循環ガスの吸引量が減少する。逆に、可動ニードル66を縮径部64b’側に向かって移動させると、A
Fが小さくなる(
図16の下図参照)。その結果、導入口62fからの循環ガスの吸引量が増加する。
【0111】
[1.5. 作用]
[1.5.1. CO
2分離型AGRシステム]
図17に、CO
2分離型アノードオフガス循環(AGR)システムのエネルギー循環の模式図を示す。CO
2分離型AGRシステムでは、循環ガスと燃料(HC)とがエジェクタにおいて混合される。得られた混合ガスは、改質器に送られ、燃料(HC)が水蒸気改質される。得られた改質ガスは、SOFCのアノードに供給される。これと同時に、SOFCのカソードに空気を供給すると、SOFCから電力が得られる。発電の際に発生した熱は、改質器に伝達され、改質熱として再利用される。
【0112】
SOFCから排出されたアノードオフガスは、未反応の燃料を含んでいる。そのため、アノードオフガスは、不要なガスの分離を行った後、その一部が循環ガスとして発電に再利用される。一方、アノードオフガスの内、発電に再利用されなかったもの(非循環ガス)は、燃焼器に送られる。また、カソードオフガスは、未反応の酸素を含むと同時に、顕熱を持っている。そのため、カソードオフガスは、助燃空気として燃焼器に送られる。燃焼器では、非循環ガスをカソードオフガスで燃焼させることにより、温熱を発生させる。その結果、発生した温熱を給湯や暖房に利用することができる。
【0113】
このようなCO
2分離型AGRシステムにおいて、アノードオフガスの循環率Rは、出力や効率に影響を及ぼす。
図18に、循環率Rと出力との関係を示す。
図19に、循環率Rと効率との関係を示す。
図18及び
図19より、熱需要が高い時には循環率Rを小さくし、電力需要が高い時には循環率を大きくすれば良いことが分かる。
【0114】
[1.5.2. ガス分離型アノードオフガス循環の利点]
エジェクタでは、高圧ガス(燃料ガス供給用)/低圧ガス(循環ガス供給用)をノズル部に吹き出し、低圧混合部にて流速を増大させた後、ディフューザー部で圧力回復させる。そのため、駆動ポンプを用いることなく、高圧側駆動ガスの圧力エネルギーにより低圧ガスを吸引することができる。ここで、アノードオフガス循環にエジェクタを用いることで、発電用のCH4等の燃料ガス(高圧)の圧力エネルギーによりアノードオフガス(低圧)を昇圧・循環させることができる。
【0115】
ガス分離型アノードオフガス循環では、通常、SOFCの発電反応により生成するCO2の全部と、H2Oの一部が除去される。これにより、発電に必要な燃料成分(CO、H2)と水蒸気改質反応に必要なH2O(Steam/Carbon比=2)のみを循環させ、エジェクタにより発電用燃料と混合する。
ガス分離のないアノードオフガス循環では、発電反応及びガス循環に伴いH2O及びCO2の濃度が上昇し、循環ガス流量が増大する。これを回避するために、循環配管途中で非循環ガス流と循環ガスを分岐させて、循環ガス流量を制御することが行われる。この方法では、循環ガス中のH2、CO濃度は低下し、可燃成分(H2、CO)の一部を常に系外に放出するため、最大発電効率は低下する。
【0116】
一方、ガス分離型アノードオフガス循環では、発電に不要なH2O、CO2を循環ガス中から除去し続けることができる。そのため、循環ガス流量の増加を抑制し、熱・化学エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0117】
[1.5.3. 需要に応じた熱電併給]
熱電併給が可能な発電システム(μCHP:Combined Heat and Power)では、地域、季節、時間帯によって熱(給湯、床暖房、空調)/電気の使用形態が異なる。特に、一般家庭では、寒冷地、冬場、夜間においては熱需要が高まる。一方、商用(オフィスビル、美容室等)では、昼間において熱需要が高い。そこで、低圧ガスの吸い込み量を調整可能な可変ノズル/可変ニードルを搭載したエジェクタを用いて、循環率と燃料流量を調整することで、需要に応じた熱電併給が可能となる。
【0118】
第2H2O分離器により非循環ガスからH2Oを除去することで、濃度の高い可燃性分(CO、H2)が得られる。高濃度の可燃成分は、高い燃焼温度が得られるだけでなく、還元ガスとしての利用が可能となる。ここでは、発電部を2以上のスタックで構成した複数スタック構成とし、要求電力に応じて作動スタック/休止スタックに分割して運転することで出力の過渡応答性を向上させる。
【0119】
後述するように、休止スタックには、アノード流路/レドックス流路へ還元ガスを流した後、カソードオフガスと混合し、燃焼器にて燃焼させることができる。アノード流路に還元ガスを流すことにより、作動中に酸化劣化したアノードNi触媒を還元し、発電性能を回復させることができる。また、レドックス材の酸化反応によりスタックを昇温させるシステムにおいては、レドックス流路に還元ガスを流すことにより、酸化したレドックス材を還元することができる。さらに、還元処理後のオフガスに残存している還元ガスは、カソードオフガスと混合・燃焼させることで温熱として利用可能である。
【0120】
[1.5.4. Vc,air、Vf、及びRの算出]
還元ガスとカソードオフガスを燃焼器にて混合・燃焼させることで、高温の熱出力を得ることができる。燃焼温度は入口温度と空気過剰率(助燃空気の酸素量/可燃性ガスの理論酸素量)により決まるため、流量制御弁V7を用いて助燃空気流量を調整することで空気過剰率を設定することができる。そこで、要求温熱量Qh,tと利用下限温度Tuseより、必要燃焼熱量Qc,tを算出し、設定された空気過剰率Ktを用いて燃焼器に供給するカソードオフガスの量(助燃空気流量Vc,air)を算出する。Qc,t及びVc,airより、燃料流量Vf、循環率Rを算出・設定することで、温熱生成が開始する。
【0121】
燃焼器では、入口・出口温度を測定し、断熱火炎モデルにより燃焼熱量Qc、生成温熱量Qhが算出される。要求温熱量Qh,tと発生温熱量Qhとの偏差εh=Qh-Qh,tから修正燃焼熱量Qc=Qc-εhを求め、燃料流量Vf及び循環率Rを算出・設定する。
ここで、電力及び温熱量は、目標値との偏差が所定のしきい値(例えば、要求量の5%以内)となるように制御される。これにより、休止中のスタックの還元処理により燃焼ガス中の可燃成分が消費されても、燃焼温度差により燃焼熱量を算出することができる。また、目標温熱量との偏差により循環率R、投入燃料量Vfを制御することで、安定した電力/熱供給が可能となる。
【0122】
一定空気過剰率燃焼においては、燃焼器の燃焼温度を一定に維持することで、安定した燃焼(高温によるNOx生成量の抑制、低温による未燃成分の排出の抑制)だけでなく、温熱の温度レベルを一定に制御することができる。また、燃焼器の温度変化(熱マスによる温度応答遅れ)に起因した燃焼熱量の検出誤差を抑制し、高精度で熱量検出が可能となる。
【0123】
水蒸気改質反応熱:-Qr[kW]は、スタック内部熱収支から算出する。すなわち、発電出力をW[kW]、SOFC発電効率をη[-]=g1(Uf、R、Ts)、循環率をR[-]、燃料利用率をUf[-]、スタック温度測定値をTs[℃]とすると、Qr=W(1/η-1)より算出することができる。
循環率R[-]、及び燃料流量Vf[mol/s]は、サイクル熱収支から、Qr、Uf、W、η、Qex1、Qex2、及びQcより求めることができる。但し、分離器1からの放熱量をQex1=f1(W、Uf、R、Ts)、分離器2からの放熱量をQex2=f2(W、Uf、R、Ts)とする。
【0124】
燃料流量Vf[mol/s]は、投入ネルギーEf[kW]、改質温度Tr[℃](=Ts)、投入燃料の低位発熱量ΔHf、低圧比熱Cp,f[kJ/mol]から求めることができる。Qcは、検出温度(Tc,in、Tc,out)を用いて断熱火炎計算により算出される。
循環ガスのr(H2/CO比)[-]、及び発電効率η[-]は、循環率R、燃料利用率Uf、スタック温度Tsをパラメータとしたマップデータより算出される。
【0125】
[2. 熱電併給システム(2)]
[2.1. 構成]
図20に、本発明の第2の実施の形態に係る熱電併給システムの模式図を示す。なお、
図20中、
図1と同一の構成要素には、
図1と同一の参照符号を用いた。
【0126】
図20において、熱電併給システム10bは、
図1と同様の構成に加えて、
非循環ガスの供給経路を、燃焼器42に直接供給する第1経路54aと、休止中のSOFC20a、20bのアノード流路22a、22bを経由して燃焼器42に供給する第2経路54bのいずれかに切り換える第1切替装置(第6三方弁V6)と、
SOFC20a、20bのアノードに含まれるNiの酸化量を検出する第1酸化量検出装置(図示せず)と
をさらに備えている。
【0127】
また、制御装置52は、第1燃焼燃料補正手段をさらに備えている。
この点が、第1の実施の形態とは異なる。その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0128】
[2.1.1. 第1切替装置]
第1切替装置は、非循環ガスを第1経路54a又は第2経路54bのいずれか一方に切り替えるためのものである。
図20に示す例において、第1切替装置には、第6三方弁V6が用いられている。第1経路54aは、第2CO
2分離器40から排出された非循環ガスを、SOFC20a、20bを経由することなく、直接、燃焼器42に供給するためのものである。一方、第2経路54bは、第1の実施の形態と同様に、非循環ガスを、休止中のSOFC20a、20bのアノード流路22a、22bを経由して燃焼器42に供給するためのものである。第1切替装置による供給経路の切り替えは、制御装置52からの切換信号を検出した時に行われる。
【0129】
[2.1.2. 第1酸化量検出装置]
[A. 定義]
第1酸化量検出装置(図示せず)は、SOFC20a、20bのアノードに含まれるNiの酸化量を検出するためのものである。検出されたNiの酸化量は、第1初期補正熱量εh1,iniを算出するために用いられる。ここで、「第1初期補正熱量εh1,ini」とは、非循環ガスを用いてアノードに含まれるNiを還元した場合において、Niの還元に消費される還元ガス量を熱量に換算した値をいう。非循環ガスには、通常、複数の還元ガス種が含まれている。この場合、εh1,iniは、次の式(21)で表される。
εh1,ini=ΣiΔQc1,i …(21)
但し、ΔQc1,iは、非循環ガスに含まれるi番目の還元ガス種を用いてNiを還元した場合において、Niの還元に消費される還元ガス量を熱量に換算した値。
【0130】
第1酸化量検出装置は、Niの酸化量を定量的に検出することが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。第1酸化量検出装置としては、例えば、
(a)アノード22a、22bの色度を検出する色度検出装置、
(b)アノード22a、22bの放射率を検出する放射率検出装置
などがある。
【0131】
SOFC20a、20bのアノードには、触媒としてのNiと固体酸化物形電解質との複合体(Niサーメット)が用いられる。Niが還元状態にある場合、アノードは灰色を呈する。一方、Niが酸化状態にある場合、アノードは緑色を呈する。また、Niの酸化が進行するほど、アノードは緑色が強くなる。そのため、アノードの色度を検出すれば、Niが酸化状態にあるか否か、及び、Niの酸化の程度を知ることができる。
【0132】
また、物体から放出される赤外線の量(放射率)は、物体の材質や表面状態などに依存する。また、放射率は、色度と異なり、温度にも依存する。そのため、アノードの放射率、及び放射率測定時のアノードの温度を検出すれば、Niが酸化状態にあるか否か、及び、Niの酸化の程度を知ることができる。
【0133】
[B. 配置]
図21(A)に、第1酸化量測定装置を備えた熱電併給システムの模式図を示す。
図21(A)において、熱電併給システム10bは、観察窓86aを備えたSOFC20と、第1酸化量測定装置90とを備えている。第1酸化量測定装置90は、観察窓86aの近傍に設置されている。
図21(A)において、アノードガスは紙面の左から右に向かって流れ、カソードガスは紙面の下から上に向かって流れる。そのため、観察窓86a及び第1酸化量測定装置90は、それぞれ、アノード流路の出口側に設置されている。これは、アノード流路の出口側に行くほど、電極反応により生成したCO
2及び/又はH
2Oの濃度が高くなるために、アノード中のNiが酸化されやすくなるためである。
【0134】
図21(B)に、SOFCのアノード側エンドプレート近傍の分解斜視図を示す。SOFC20は、膜電極接合体(MEA)70を備えている。MEA70は、固体酸化物形電解質からなる電解質膜72と、電解質膜72の一方の面に接合されたアノード74と、電解質膜72の他方の面に接合されたカソード76とを備えている。SOFC20は、通常、このようなMEA70の両端に集電体(図示せず)が配置された単セルが複数個積層されたスタック構造を備えている。
【0135】
SOFC20の端部に位置する単セルのアノード74側には、アノード側エンドプレート80が配置される。アノード側エンドプレート80は、
(a)アノード74側に配置された、電流を取り出すためのアノード集電板82と、
(b)アノード集電板82の外側に配置された、短絡を防止するための絶縁板84と、
(c)絶縁板84の外側に配置された、金属板86と
の積層体からなる。
【0136】
金属板86には、観察窓86aが設けられ、観察窓86a内には、透光性材料88が嵌め込まれている。透光性材料88は、SOFC20の作動温度において赤外線を透過させることが可能な材料であれば良い。透光性材料88としては、例えば、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア(Al2O3)などがある。
観察窓86aは、第1酸化量測定装置90を用いてアノード74の酸化/還元状態を検出するためのものである。そのため、アノード集電板82及び絶縁板84には、観察窓86aに対応する位置に、それぞれ、貫通穴82a及び貫通穴84aが形成されている。
【0137】
[C. Ni酸化率と第1初期補正熱量εh1,iniとの関係]
Niサーメットの色度及び放射率は、いずれもNi酸化率と相関がある。そのため、Niサーメットの色度及び/又は放射率を検出すれば、Ni酸化率を定量的に求めることができる。また、SOFC20の構造が既知である場合において、Ni酸化率が検出された時には、Ni酸化率から、Niを還元するために必要な還元ガス量の理論値、及びその還元ガス量を熱量に換算した第1初期補正熱量εh1,iniを算出することができる。
【0138】
図22に、放射率とNi酸化率及び第1初期補正熱量ε
h1,iniとの関係の一例を示す。なお、
図22では、Ni活性層:100μm、セル発電有効面積:401.8cm
2、1スタック出力:5kW、全還元時間:10min、アノード空隙率:0.3、Ni:YSZ(モル比)=1:1とした。この場合において、還元処理で消費される燃料ガス流量を算出した。また、放射率とNi酸化率との関係から、休止中のSOFC20a、20bに必要な還元ガス量ΔQ
c1,iの関係式を得た。
【0139】
図22より、
(a)Niの酸化率が大きくなるほど、放射率が低下すること、及び、
(b)Ni酸化率とε
h1,iniとの間に、密接な相関があること、
が分かる。
そのため、
図22に示すようなデータベースを予めメモリに記憶させておくと、放射率を検出することにより、Ni酸化率を知ることができる。また、Ni酸化率が分かると、ε
h1,iniを知ることができる。さらに、ε
h1,iniを用いてQ
cを補正すると、非循環ガスを用いてNiサーメットを還元処理した時に生じる温熱量Q
h及び/又は発電出力Wの変動を抑制することができる。
【0140】
非循環ガスを用いてNiサーメットの還元処理を行うタイミングは、目的に応じて最適なタイミングを選択することができる。
図22に示す例では、検出された放射率が「Ni酸化率≧0.6以上」に相当する値を示した時には、スタック切換信号を出し、Ni酸化が進行しているSOFCを休止させ、Niの還元処理を行う。具体的には、第6三方弁V6を用いて、非循環ガスの供給経路を第2経路54bに切り替える。これと同時に、検出された放射率に相当するε
hi,iniを算出し、Q
cを補正する。
一方、検出された放射率が「Ni酸化利率≦0.1」に相当する値を示した時は、バルブ切換信号(休止スタックへの非循環ガスの供給を停止させる信号)を出す。この場合、非循環ガスの供給経路を第1経路54aに切り替えても良く、あるいは、Ni酸化が進行している別のSOFCに非循環ガスが供給されるように、供給経路を切り替えても良い。
【0141】
[2.1.3. 第1燃焼熱量補正手段]
制御装置52は、上述した出力制御手段に加えて、さらに第1燃焼熱量補正手段を備えている。ここで、「第1燃焼燃料補正手段」とは、第1切替装置により供給経路を第2経路54bに切り替える際に、非循環ガスを供給しようとするSOFC20a、20bについて、第1酸化量検出装置を用いて検出されたNiの酸化量を取得し、取得されたNiの酸化量を用いてQcを補正する手段をいう。
【0142】
第1燃焼燃料補正手段は、具体的には、以下の手順を実行するための手段を含むものが好ましい。
(N)第1スタック切換信号(稼働中のi番目(1≦i≦n)の前記SOFCに対してアノードの還元処理を実行するよう指示する信号)が検出されたか否かを判断する手順N。
(O)前記第1スタック切替信号が検出された時には、前記第1酸化量検出装置を用いて検出されたi番目の前記SOFCの前記Niの酸化量を取得し、これを前記メモリに記憶させる手順O。
(P)前記Niの酸化量から第1初期補正熱量εh1,iniを算出し、前記Qcに前記εh1,iniを加算することにより前記Qcを補正し、補正後の前記Qcを新たな前記Qcとしてメモリに記憶させる手順P。
(Q)補正後の前記Qcを用いて、前記Vf、前記R、前記Vc,air、及び前記Vchath,inを算出し、これらを前記メモリに記憶させると同時に、前記作動条件をこれらに設定して前記熱電併給システムを作動させる手順Q。
(R)i番目の前記SOFCを休止させ、前記Niの酸化量が第3しきい値未満となるまで、前記供給経路を前記第2経路に切り替える手順R。
(S)前記Niの酸化量が前記第3しきい値未満となった時は、前記供給経路を前記第1経路に切り換えた後、手順Aに戻る手順S。
第1燃焼熱量補正手段の詳細については、後述する。
【0143】
[2.2. 制御フロー]
図23に、第1燃焼燃料補正手段及び出力制御手段を備えた制御プログラムのフロー図を示す。
図24に、
図23に示すフロー図の続きを示す。なお、以下の説明では、スタックの個数が2個であるケースについて説明するが、3個以上のスタックを備えている場合であっても、同様にして制御を行うことができる。
まず、ステップ31(以下、単に「S31」という)において、SOFCの要求発電出力W
t、及び燃料利用率U
fを設定し、これらをメモリに記憶させる。S31の詳細については、上述したS1と同様であるので、説明を省略する。
【0144】
次に、S32において、循環率R=1の条件下で、各SOFCスタックの暖機運転を行う。次に、S33において、暖機運転時の燃料流量Vf、及びカソード空気流量Vcath,inを算出する。算出されたVf、及びVcath,inは、メモリに記憶されると同時に、作動条件をこれらに設定して熱電併給システムの暖機運転を行う。次に、S34において、要求温熱量Qh,t及び空気過剰率Ktを設定し、これらをメモリに記憶させる。次に、S35において、作動温度Ts及び発電出力Wを検出する。検出されたTs及びWは、それぞれ、メモリに記憶される。暖機運転は、Tsが予め設定された温度になるまで行われる。次に、S36において、初期の循環率Rと、助燃空気流量Vc,airを算出し、これらをメモリに記憶させると同時に、作動条件をこれらに設定して熱電併給システムを作動させる。次に、S37において、再度、Wt及びUfの設定を行う。また、S38において、再度、Qh,t及びKtの設定を行う。S32~S38の詳細については、S2~S8と同様であるので、説明を省略する。
【0145】
次に、S39に進む。S39では、作動温度Ts及び発電出力Wを検出し、これらをメモリに記憶させる(手順A)。
次に、S40において、メモリに記憶されているデータベースに基づいて、現在の作動条件に対応するSOFCの発電効率η、及び非循環ガス中のH2/CO比を算出し、これらをメモリに記憶させる(手順B)。
次に、S41において、燃焼器の燃焼燃料の流入温度Tc,c,in、燃焼器の助燃空気の流入温度Tc,air,in、及び、燃焼器の出口温度Tc,outを検出し、これらをメモリに記憶させる(手順C)。
【0146】
次に、S42において、現在の作動条件に対応する燃焼熱量Qc及び温熱量Qhを算出し、これらをメモリに記憶させる(手順D)。
次に、S43において、手順Dで算出されたQcに対応する燃料流量Vf、循環率R、助燃空気流量Vc,air、及びカソード空気流量Vcath,inを算出し、これらをメモリに記憶させると同時に、作動条件をこれらに設定して熱電併給システムを作動させる(手順E)。
【0147】
次に、S44において、温熱量Qh及び要求温熱量Qh,tから温熱偏差εh(=Qh-Qh,t)を算出し、これをメモリに記憶させる(手順F)。
次に、S45に進む。S45では、εhの絶対値が第1しきい値未満であるか否かが判断される。第1しきい値は、目的に応じて最適な値を選択することができる。εhの絶対値が第1しきい値以上である時(S45:NO)には、実際の温熱量Qhに過不足があることを表す。このような場合には、S46に進む。
【0148】
S46では、Qcからεhを減算することによりQcを補正し、補正後のQcを新たなQcとしてメモリに記憶させる(手順G)。
次に、S47において、補正後のQcに対応するVf、R、Vc,air、及びVcath,inを算出し、これらをメモリに記憶させると同時に、作動条件をこれらに設定して熱電併給システムを作動させる(手順H)。
【0149】
次に、S61に進む。S61では、第1スタック切換信号が検出されたか否かを判断する(手順N)。ここで、「第1スタック切換信号」とは、稼働中のi番目(i=1、2)のSOFC20a、20bに対してアノードの還元処理を実行するよう指示する信号をいう。第1スタック切換信号が検出されない場合(S61:NO)、S62に進む。
【0150】
S62では、第1バルブ切換信号が検出されたか否かが判断される。ここで、「第1バルブ切換信号」とは、i番目のSOFC20a、20bが休止した場合において、Niの酸化量が第3しきい値未満となった時に、非循環ガスの供給経路を第1経路54a側(燃焼器42側)に切り替えるよう指示する信号をいう。現時点では、未だi番目のSOFC20a、20bは稼働中であるため(S62:NO)、S37に戻る。
そして、第1スタック切換信号が検出されず、かつ、第1バルブ切換信号が検出されない場合においては、εhの絶対値が第1しきい値未満となるまで、上述したS37~S47、S61、S62の各ステップ(すなわち、手順A~手順H)を繰り返す(手順I)。
【0151】
一方、εhの絶対値が第1しきい値未満となった時(S45:YES)には、S48に進む。S48では、発電出力W及び要求発電出力Wtから発電出力偏差εe(=W-Wt)を算出し、これをメモリに記憶させる(手順J)。
次に、S49に進む。S49では、εeの絶対値が第2しきい値未満であるか否かが判断される。第2しきい値は、目的に応じて最適な値を選択することができる。εeの絶対値が第2しきい値以上である時(S49:NO)には、実際の発電出力Wに過不足があることを表す。このような場合には、S50に進む。
【0152】
S50では、Vfから燃料偏差ΔVf(=εe/(η×ΔHf))(但し、ΔHfは前記燃料の低位発熱量)を減算することによりVfを補正し、補正後のVfを新たなVfとしてメモリに記憶させる(手順K)。
その後、S61に戻る。そして、第1スタック切換信号が検出されず、かつ、第1バルブ切換信号が検出されない場合においては、εeの絶対値が第2しきい値未満となる(S49:YES)まで、上述したS37~S50(すなわち、手順A~手順K)、S61、S62の各ステップを繰り返す(手順L)。
【0153】
一方、εeの絶対値が第2しきい値未満となったとき(S49:YES)は、S51に進む。S51では、システムを停止させるか否かが判断される。停止させない場合(S51:NO)には、S61に戻り、上述したS37~S51、S61、S62の各ステップを繰り返す。すなわち、作動停止の指示(S51:YES)があるまで、メモリに記憶されているVf、R、Vc,air、及びVcath,inに基づいて熱電併給システムを作動させる(手順M)。
【0154】
S61において、第1スタック切換信号を検出した場合(S61:YES)、S64に進む。S64では、第1酸化量検出装置を用いて検出されたi番目のSOFC20a、20bのNiの酸化量を取得し、これをメモリに記憶させる(手順O)。
次に、S65において、Niの酸化量から第1初期補正熱量εh1,iniを算出し、Qcにεh1,iniを加算することによりQcを補正し、補正後のQcを新たなQcとしてメモリに記憶させる(手順P)。
次に、S66において、補正後のQcを用いて、Vf、R、Vc,air、及びVchath,inを算出し、これらを前記メモリに記憶させると同時に、作動条件をこれらに設定して熱電併給システムを作動させる(手順Q)。
【0155】
次に、S67において、第1スタック切換信号に基づいて、第1三方弁V1~第4三方弁V4を切り替えることにより、稼働させるSOFC20a、20bと休止させるSOFC20a、20bの切換を行う。
次に、S68において、第6三方弁V6を第3三方弁V3側に切り替え、休止させたSOFC20a、20bのアノード流路22a、22bに非循環ガスを供給する。
【0156】
次に、S51に進む。S51では、システムを停止させるか否かが判断される。停止させない場合(S51:NO)には、S61に戻る。
S61では、再度、第1スタック切換信号を検出したか否かが判断される。この時点では、第1スタック切換信号は検出されていないので、S62に進む。S62では、第1バルブ切換信号が検出されたか否かが判断される。この時点では、未だNiの酸化量が第3しきい値未満になっていない(S62:NO)ので、S37に戻る。
そして、Niの酸化量が第3しきい値未満となるまで、供給経路を第2経路に切り替えた状態のまま、アノードの還元処理を行う(手順R)。
【0157】
一方、S62において、第1バルブ切換信号が検出された時、すなわち、アノードの還元処理が完了し、Niの酸化量が第3しきい値未満となった時(S62:YES)には、S63に進む。
S63では、非循環ガスの供給経路を第1経路54b側(すなわち、燃焼器42側)に切り替える。その後、S37に戻る(手順S)。
そして、作動停止の指示(S51:YES)があるまで、メモリに記憶されているVf、R、Vc,air、及びVcath,inに基づいて熱電併給システムを作動させる(手順M)。また、外乱によりWやQhが一時的に変動した場合であっても、上述した手順A~手順Sを繰り返すことにより、W及びQhを、それぞれ、Wt及びQh,tに維持することができる。
【0158】
[2.3. 作用]
Ni電極触媒は、酸化/還元状態により表面の色が緑/灰色と異なる。Niが酸化すると、灰色からグラデーションを持ちながら徐々に緑色へと変化してゆく。これは、赤外線カメラを用いた放射温度測定により、放射率の変化として認識することができる。
【0159】
放射温度計では、計測対象の材料表面の放射率を測定し、温度を色の変化で認識・計測する。しかし、ガス雰囲気によりベースライン(材料表面の色)が変化する場合、材料表面の放射率が変化するため、温度計測が困難となる。そこで、測定対象表面に熱電対等の温度計測手段を設置し、赤外線画像と温度を同時に測定することにより、ガス雰囲気によるNi電極触媒の色の変化を放射率の変化として検出することが可能となる。
【0160】
ここで、Ni電極触媒の表面温度の検出手段(熱電対等)を設置したSOFCスタックにおいて、事前にSOFC作動温度におけるNi酸化/還元状態の色の変化を放射温度計により放射率の変化として計測し、放射率とNi酸化率との関係をデータベースとして保存しておく。実際にスタックを作動させた時には、アノード電極触媒の酸化/還元状態を、観察窓を介して放射率として検出する。検出された放射率とデータベースとを照合すれば、その時点でのNi酸化率を算出することができる。
さらに、SOFCスタックの構造が決まると、放射率と第1初期補正熱量εh1,iniとの関係を算出することができる。そのため、このようなデータベースを予めメモリに記憶させておくと、計測された放射率からεh1,iniを算出することができる。
【0161】
SOFC20a、20bが作動状態から休止状態に移行する際、制御装置52から第1三方弁V1~第4三方弁V4に第1スタック切換信号J(i)(i=休止スタック番号)を送る。切り替え時に、εh1,ini(=ΣiΔQc1,i)を算出し、燃焼熱量Qcにεh1,iniを加算してQcを補正する。さらに、補正後のQcを用いて、循環率R及び燃料流量Vfを補正する。これにより、スタック切り替え直後におけるアノードNi触媒還元による燃焼燃料の減少に起因した燃焼器の温度変化が抑制され、より安定した温熱生成が可能となる。
【0162】
[3. 熱電併給システム(3)]
[3.1. 構成]
図25に、本発明の第3の実施の形態に係る熱電併給システムの模式図を示す。なお、
図25中、
図1と同一の構成要素には、
図1と同一の参照符号を用いた。
【0163】
図25において、熱電併給システム10cは、
図1と同様の構成に加えて、
SOFC20a、20bのアノード流路22a、22b及び/又はカソード流路24a、24bに隣接して設けられた、レドックス材が充填されたレドックス流路26a、26bと、
非循環ガスの供給経路を、燃焼器42に直接供給する第1経路54aと、休止中のSOFC20a、20bのレドックス流路26a、26bを経由して燃焼器42に供給する第3経路54cのいずれかに切り換える第2切替装置(第6三方弁V6)と、
レドックス材の酸化量を検出する第2酸化量検出装置(図示せず)と
をさらに備えている。
【0164】
また、制御装置52は、第2燃焼燃料補正手段をさらに備えている。
この点が、第1及び第2の実施の形態とは異なる。その他の点については、第1及び第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0165】
[3.1.1. レドックス流路]
レドックス流路26a、26bは、SOFC20a、20bのアノード流路22a、22b及び/又はカソード流路24a、24bに隣接して設けられる。また、レドックス流路26a、26b内には、レドックス材が充填されている。レドックス材は、酸化・還元を可逆的に行うことが可能な材料である限りにおいて、特に限定されない。
【0166】
還元状態にあるレドックス材を酸化させると、反応熱を放出する。そのため、SOFC20a、20bの始動時にレドックス材を酸化させると、SOFC20a、20bの温度を適正な作動温度まで速やかに上昇させることができる。一方、酸化したレドックス材を還元すると、再度、SOFC20a、20bの昇温に利用することができる。本実施の形態において、レドックス材の酸化には、CO2分離器34のパージ流路から排出されるCO2とH2Oの混合ガスが用いられる。また、レドックス材の還元には、第2H2O分離器40のフィード流路から排出される非循環ガスが用いられる。
【0167】
[3.1.2. 第2切替装置]
第2切替装置は、非循環ガスの供給経路を第1経路54a又は第3経路54cのいずれか一方に切り替えるためのものである。
図25に示す例において、第2切替装置には、第6三方弁V6が用いられている。第1経路54aは、第2H
2O分離器40から排出された非循環ガスを、SOFC20a、20bを経由することなく、直接、燃焼器42に供給するためのものである。一方、第3経路54cは、非循環ガスを、休止中のSOFC20a、20bのレドックス流路26a、26bを経由して燃焼器42に供給するためのものである。第2切替装置による供給経路の切り替えは、制御装置52からの切換信号を検出した時に行われる。
【0168】
第3経路54cは、第6三方弁V6の1つの出口から、第10三方弁V10及び第3三方弁V3を経由して、レドックス流路26a、26bの入口に至るまでの経路である。また、CO2分離器34のパージ流路の出口には、第11三方弁V11が設けられている。第11三方弁11の出入口の1つは、第10三方弁V10の出入口の1つに接続されている。
レドックス材を還元処理する時には、第2H2O分離器40から、第6三方弁V6、第10三方弁V10及び第3三方弁V3を経由して、還元ガスがレドックス流路26a、26bに供給される。一方、レドックス材を酸化させる時には、CO2分離器34から、第11三方弁V11、第10三方弁V11及び第3三方弁V3を経由して、酸化剤ガスがレドックス流路26a、26bに供給される。
【0169】
[3.1.3. 第2酸化量検出装置]
[A. 定義]
第2酸化量検出装置(図示せず)は、レドックス材の酸化量を検出するためのものである。検出されたレドックス材の酸化量は、第2初期補正熱量εh2,iniを算出するために用いられる。ここで、「第2初期補正熱量εh2,ini」とは、非循環ガスを用いてレドックス材を還元した場合において、レドックス材の還元に消費される還元ガス量を熱量に換算した値をいう。非循環ガスには、通常、複数の還元ガス種が含まれている。この場合、εh2,iniは、次の式(22)で表される。
εh2,ini=ΣiΔQc2,i …(22)
但し、ΔQc2,iは、非循環ガスに含まれるi番目の還元ガス種を用いてレドックス材を還元した場合において、レドックス材の還元に消費される還元ガス量を熱量に換算した値。
【0170】
第2酸化量検出装置は、レドックス材の酸化量を定量的に検出することが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。第2酸化量検出装置としては、例えば、熱流束計プレートなどがある。熱流束計プレートは、レドックス流路26a、26bと、アノード流路22a、22b又はカソード流路24a、24bとの間に設置される。
【0171】
[B. レドックス材の酸化率と第2初期補正熱量εh2,iniとの関係]
レドックス流路26a、26bと、アノード流路22a、22b又はカソード流路24a、24bとの間に熱流束計プレート(材質:SUS、厚み:Δx)を設け、両面に温度計測手段(熱電対)を設置すると、温度差ΔTから熱流束を算出することができる。また、算出された熱流束から、レドックス材の酸化率を推定することができる。
さらに、SOFC20の構造が既知である場合において、レドックス材の酸化率が推定された時には、レドックス材の酸化率からεh2,iniを算出することができる。
【0172】
図26に、熱流束計の両端の検出温度差と第2初期補正熱量ε
h2,ini及びレドックス材の推定酸化反応率との関係を示す。なお、
図26では、レドックス層:14mm、レドックス層表面積:401.8cm
2、セル発電有効面積:401.8cm
2、1スタック出力:5kW、全還元時間:2hr、レドックス材充填率:0.8(Fe酸化/還元反応)とした。この場合において、反応速度(熱流束)と反応率との関係から、熱流束部の温度差ΔTと還元ガス消費量との関係を算出した。また、ΔTと還元ガス消費量との関係から、還元に必要な還元性ガス発熱量ΔQ
c2,iの関係式を得た。
【0173】
図26より、
(a)レドックス材の酸化率が大きくなるほど、温度差ΔTが低下すること、及び、
(b)レドックス材の酸化率とε
h2,iniとの間には、密接な相関があること、
が分かる。
そのため、
図26に示すようなデータベースを予めメモリに記憶させておくと、熱流束計の両端の温度差ΔTを検出することにより、レドックス材の酸化率を知ることができる。また、レドックス材の酸化率が分かると、ε
h2,iniを知ることができる。さらに、ε
h2,iniを用いてQ
cを補正すると、非循環ガスを用いてレドックス材を還元処理した時に生じる温熱量Q
h及び/又は発電出力Wの変動を抑制することができる。
【0174】
非循環ガスを用いてレドックス材の還元処理を行うタイミングは、目的に応じて最適なタイミングを選択することができる。
図26に示す例では、検出された酸化反応率が「酸化反応率≧0.5以上」に相当する値を示した時には、第2スタック切換信号を出し、レドックス材が酸化しているSOFCを休止させ、レドックス材の還元処理を行う。具体的には、第6三方弁V6を用いて、非循環ガスの供給経路を第3経路54cに切り替える。これと同時に、検出された温度差に相当するε
h2,iniを算出し、Q
cを補正する。
一方、検出された酸化反応率が「酸化反応率≦0.1」に相当する値を示した時は、第2バルブ切換信号(休止スタックへの非循環ガスの供給を停止させる信号)を出す。この場合、非循環ガスの供給経路を第1経路54aに切り替えても良く、あるいは、レドックス材が酸化している別のSOFCに非循環ガスが供給されるように、供給経路を切り替えても良い。
【0175】
[3.1.4. 第2燃焼熱量補正手段]
制御装置52は、上述した出力制御手段に加えて、さらに第2燃焼熱量補正手段を備えている。ここで、「第2燃焼熱量補正手段」とは、第2切替装置により供給経路を第3経路54cに切り替える際に、非循環ガスを供給しようとするSOFC20a、20bについて、第2酸化量検出装置を用いて検出されたレドックス材の酸化量を取得し、取得されたレドックス材の酸化量を用いてQcを補正する手段をいう。
【0176】
第2燃焼燃料補正手段は、具体的には、以下の手順を実行するための手段を含むものが好ましい。
(N’)第2スタック切換信号(稼働中のi番目(1≦i≦n)の前記SOFCに対して前記レドックス材の還元処理を実行するよう指示する信号)が検出されたか否かを判断する手順N’。
(O’)前記第2スタック切替信号が検出された時には、前記第2酸化量検出装置を用いて検出されたi番目の前記SOFCの前記レドックス材の酸化量を取得し、これを前記メモリに記憶させる手順O’。
(P’)前記レドックス材の酸化量から第2初期補正熱量εh2,iniを算出し、前記Qcに前記εh2,iniを加算することにより前記Qcを補正し、補正後の前記Qcを新たな前記Qcとしてメモリに記憶させる手順P’。
(Q’)補正後の前記Qcを用いて、前記Vf、前記R、前記Vc,air、及び前記Vchath,inを算出し、これらを前記メモリに記憶させると同時に、前記作動条件をこれらに設定して前記熱電併給システムを作動させる手順Q’。
(R’)i番目の前記SOFCを休止させ、前記レドックス材の酸化量が第4しきい値未満となるまで、前記供給経路を前記第3経路に切り替える手順R’。
(S’)前記レドックス材の酸化量が前記第4しきい値未満となった時は、前記供給経路を前記第1経路に切り換えた後、手順Aに戻る手順S’。
【0177】
第2燃焼燃料補正手段は、
(a)Niの酸化量を取得することに代えて、レドックス材の酸化量を取得し、
(b)第1初期補正熱量εh1,iniに代えて第2初期補正熱量εh2,iniを算出する。
この点が、第1燃焼燃料補正手段とは異なる。その他の点については、第1燃焼燃料補正手段と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0178】
[3.2. 作用]
休止スタックを発電温度まで昇温するためには、外部/内部からの熱供給が必要となる。ここでは、アノード流路・触媒/電解質/カソード流路・触媒で構成される1セルの両側にレドックス流路を配置する。そして、レドックス材の酸化反応による発熱/還元反応による再生により、SOFCに昇温エネルギーを供給する。
レドックス流路とアノード流路又はカソード流路の間に熱流束計プレート(材質:SUS、厚み:Δx)を設け、両面に温度計測手段(熱電対)を設置する。温度計測手段を用いて温度差ΔTを測定すると、熱流束の検出が可能となる。
【0179】
SOFC20a、20bが作動状態から休止状態に移行する際、制御装置52から第2切替装置に第2スタック切換信号J(i)(i=休止スタック番号)を送る。切り替え時に、εh2,ini(=ΣiQc2,i)を算出し、燃焼熱量Qcにεh2,iniを加算してQcを補正する。さらに、補正後のQcを用いて、循環率R及び燃料流量Vfを補正する。これにより、スタック切り替え直後におけるレドックス材還元による燃焼燃料の減少に起因した燃焼器の温度変化が抑制され、より安定した温熱生成が可能となる。
【0180】
[4. 熱電併給システム(4)]
図27に、本発明の第4の実施の形態に係る熱電併給システムの模式図を示す。なお、
図27中、
図1と同一の構成要素には、
図1と同一の参照符号を用いた。
【0181】
図27において、熱電併給システム10dは、
図1と同様の構成に加えて、
SOFC20a、20bのアノード流路22a、22b及び/又はカソード流路24a、24bに隣接して設けられた、レドックス材が充填されたレドックス流路26a、26bと、
非循環ガスの供給経路を、燃焼器42に直接供給する第1経路54aと、休止中のSOFC20a、20bのアノード流路22a、22bを経由して燃焼器42に供給する第2経路54bのいずれかに切り換える第1切替装置(第61開平弁V61、第63開閉弁V63)と、
非循環ガスの供給経路を、燃焼器42に直接供給する第1経路54aと、休止中のSOFC20a、20bのレドックス流路26a、26bを経由して燃焼器42に供給する第3経路54cのいずれかに切り換える第2切替装置(第62開平弁V62、第63開平弁V63)と、
SOFC20a、20bのアノードに含まれるNiの酸化量を検出する第1酸化量検出装置(図示せず)と
レドックス材の酸化量を検出する第2酸化量検出装置(図示せず)と
をさらに備えている。
【0182】
第2経路54bは、第61開閉弁V61から第8三方弁V8を経由して、アノード流路22a、22bの入口に至るまでの経路である。
第3経路54cは、第62開平弁62から第10三方弁V10及び第3三方弁を経由して、レドックス流路26a、26bの入口に至るまでの経路である。
また、CO2分離器34のパージ流路の出口には、第11三方弁V11が設けられている。第11三方弁11の出入口の1つは、第10三方弁V10に接続されている。
【0183】
アノードを還元処理する時には、第2H2O分離器40から、第61開平弁V61及び第8三方弁V8を経由して、非循環ガスがアノード流路22a、22bに供給される。
レドックス材を還元処理する時には、第2H2O分離器40から、第62開平弁V62、第10三方弁V10及び第3三方弁V3を経由して、非循環ガスがレドックス流路26a、26bに供給される。一方、レドックス材を酸化させる時には、CO2分離器34から、第11三方弁V11、第10三方弁V11及び第3三方弁V3を経由して、酸化剤ガスがレドックス流路26a、26bに供給される。
【0184】
すなわち、
図27に示す熱電併給システム10dは、非循環ガスを用いてアノードを還元処理するための手段と、非循環ガスを用いてレドックス材を還元処理するための手段の双方を備えている。この点が、第1~第3の実施の形態とは異なる。その他の点については、第1~第3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0185】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明に係る熱電併給システムは、一般家庭、オフィスビル、美容室などで用いられる分散形電源、給湯装置、暖房装置、空調装置などに用いることができる。
【符号の説明】
【0187】
10a~10d 熱電併給システム
20a、20b SOFC
22a、22b アノード流路
24a、24b カソード流路
26a、26b レドックス流路
32 燃料供給装置
34 CO2分離器
36 第1H2O分離器
38 エジェクタ
40 第2H2O分離器
42 燃焼器
44 熱交換器
52 制御装置