(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】直流電源装置及び電動工具システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221012BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20221012BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H02M7/48 U
H02M7/12 A
H02M7/12 Q
H02M7/48 Z
B25F5/00 G
(21)【出願番号】P 2018245943
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】吉成 拓家
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-034097(JP,A)
【文献】特開2015-082931(JP,A)
【文献】特開2017-192993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/12
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の交流電源及び電動工具に接続されて、前記交流電源から入力される交流を直流に変換して前記電動工具に出力する直流電源装置であって、
前記電動工具に接続して直流を出力する出力端子と、
前記出力端子と接続されて、前記交流電源から入力された電圧を変圧して前記出力端子に供給する変圧部と、
前記変圧部に対して電気的に並列に前記出力端子と接続される回生抵抗部と、
前記出力端子から前記回生抵抗部へ流れる電流経路を遮断可能な遮断部と、
前記遮断部の導通及び遮断を制御する制御部と、
前記電動工具に接続して、前記電動工具の状態信号が入力される電源側通信端子と、を備え、
前記制御部は、
前記状態信号に応じて、前記遮断部の導通及び遮断を制御する、直流電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電動工具がモータの駆動状態であるときに、前記遮断部を遮断させ、
前記電動工具がモータの制動状態であるときに、前記遮断部を導通させる、請求項
1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記出力端子の正極端子及び負極端子の端子間電圧を検出する電圧検出回路を備え、
前記制御部は、前記端子間電圧に応じて、前記遮断部の導通及び遮断を制御する、請求項1
又は2の何れか一項に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記遮断部が遮断した状態で前記端子間電圧が第1の閾値以上になると、前記遮断部を導通させ、
前記遮断部が導通した状態で前記端子間電圧が第2の閾値以下になると、前記遮断部を遮断させる、請求項
3に記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記変圧部に入力される電圧を遮断可能であり、前記制御部によって導通と遮断が切替えられるスイッチング部を備え、
前記制御部は、前記端子間電圧を基に、前記スイッチング部の導通と遮断を切替える、請求項
3又は4に記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記変圧部及び前記回生抵抗部に対して電気的に並列に前記出力端子と接続されるコンデンサを備える、請求項1乃至
5の何れか一項に記載の直流電源装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れか一項に記載の直流電源装置と、
前記出力端子に接続する入力端子と、前記入力端子に入力される直流によって駆動するモータと、を有する電動工具と、
を備える、電動工具システム。
【請求項8】
請求項
1又は
2に記載の直流電源装置と、
前記出力端子に接続する入力端子と、前記入力端子に入力される直流によって駆動するモータと、前記状態信号を前記電源側通信端子に出力する工具側通信端子と、を有する電動工具と、
を備え、
前記状態信号は、前記モータの駆動状態に関する信号である、電動工具システム。
【請求項9】
前記電動工具は、作業者によって操作されることで、前記モータを駆動させるオン状態及び前記モータを停止させるオフ状態に切り替わる操作部を有し、
前記制御部は、
前記操作部がオン状態であるときに前記遮断部を遮断させ、
前記操作部がオフ状態であるときに前記遮断部を導通させる、請求項
8に記載の電動工具システム。
【請求項10】
前記電動工具は、前記操作部がオフ状態であるときに前記モータに回生制動を行うブレーキ手段を有し、前記ブレーキ手段は、前記操作部がオフ状態であっても前記入力端子の正極端子及び負極端子の端子間電圧がブレーキ動作解除閾値を超えると前記回生制動を停止する、請求項
9に記載の電動工具システム。
【請求項11】
外部の交流電源及び電動工具に接続されて、前記交流電源から入力される交流を直流に変換して前記電動工具に出力する直流電源装置であって、
前記電動工具に接続して直流を出力する出力端子と、
前記出力端子と接続されて、前記交流電源から入力された電圧を変圧して前記出力端子に供給する変圧部と、
前記変圧部に対して電気的に並列に前記出力端子と接続される回生抵抗部と、
前記出力端子から前記回生抵抗部へ流れる電流経路を遮断可能な遮断部と、
前記遮断部の導通及び遮断を制御する制御部と、
前記出力端子の正極端子及び負極端子の端子間電圧を検出する電圧検出回路と、を備える直流電源装置と、
前記出力端子に接続する入力端子と、
前記入力端子に入力される直流によって駆動するモータと、
作業者によって操作されることで、前記モータを駆動させるオン状態及び前記モータを停止させるオフ状態に切り替わる操作部と、を有する電動工具と、を備え、
前記電動工具は、前記操作部がオフ状態であるときに前記モータに回生制動を行うブレーキ手段を有し、前記ブレーキ手段は、前記操作部がオフ状態であっても前記入力端子の正極端子及び負極端子の端子間電圧がブレーキ動作解除閾値を超えると前記回生制動を停止し、
前記制御部は、前記遮断部が遮断した状態で前記端子間電圧が第1の閾値以上になると、前記遮断部を導通させ、
前記第1の閾値は、前記ブレーキ解除閾値よりも小さい、電動工具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換して電動工具に供給する直流電源装置、並びに直流電源装置及び電動工具を備える電動工具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されるような直流電源装置は、商用電源等から入力される100Vの交流電圧を100Vよりも低い所望の電圧値の直流電圧に変換して出力するコンバータユニットと、コードレス電動工具のバッテリパック接続部に接続可能なアダプタと、コンバータユニット及びアダプタを互いに接続するケーブルと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の直流電源装置においては、接続先の電動工具において回生制動(回生ブレーキ)が行われ、直流電源装置に回生電流が流れると、直流電源装置の出力端子における端子間電圧が増加する。端子間電圧が一定以上に増加すると、電動工具側にて過電圧保護機能が働き、回生制動を中止してしまうため、所望の制動力が得られなくなり作業性が悪化してしまう。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、回生制動を行う電動工具に接続した場合における作業性を向上させることの可能な直流電源装置及びそれを備える電動工具システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、直流電源装置である。この直流電源装置は、
外部の交流電源及び電動工具に接続されて、前記交流電源から入力される交流を直流に変換して前記電動工具に出力する直流電源装置であって、
前記電動工具に接続して直流を出力する出力端子と、
前記出力端子と接続されて、前記交流電源から入力された電圧を変圧して前記出力端子に供給する変圧部と、
前記変圧部に対して電気的に並列に前記出力端子と接続される回生抵抗部と、
前記出力端子から前記回生抵抗部へ流れる電流経路を遮断可能な遮断部と、
前記遮断部の導通及び遮断を制御する制御部と、
前記電動工具に接続して、前記電動工具の状態信号が入力される電源側通信端子と、を備え、
前記制御部は、前記状態信号に応じて、前記遮断部の導通及び遮断を制御する。
【0008】
前記制御部は、
前記電動工具がモータの駆動状態であるときに、前記遮断部を遮断させ、
前記電動工具がモータの制動状態であるときに、前記遮断部を導通させてもよい。
【0009】
前記出力端子の正極端子及び負極端子の端子間電圧を検出する電圧検出回路を備え、
前記制御部は、前記端子間電圧に応じて、前記遮断部の導通及び遮断を制御してもよい。
【0010】
前記制御部は、
前記遮断部が遮断した状態で前記端子間電圧が第1の閾値以上になると、前記遮断部を導通させ、
前記遮断部が導通した状態で前記端子間電圧が第2の閾値以下になると、前記遮断部を遮断させてもよい。
【0011】
前記変圧部に入力される電圧を遮断可能であり、前記制御部によって導通と遮断が切替えられるスイッチング部を備え、
前記制御部は、前記端子間電圧を基に、前記スイッチング部の導通と遮断を切替えてもよい。
【0012】
前記変圧部及び前記回生抵抗部に対して電気的に並列に前記出力端子と接続されるコンデンサを備えてもよい。
【0013】
本発明のもう1つの態様は、電動工具システムである。この電動工具システムは、
前記直流電源装置と、
前記出力端子に接続する入力端子と、前記入力端子に入力される直流によって駆動するモータと、を有する電動工具と、
を備える。
【0014】
本発明のもう1つの態様は、電動工具システムである。この電動工具システムは、
前記直流電源装置と、
前記出力端子に接続する入力端子と、前記入力端子に入力される直流によって駆動するモータと、前記状態信号を前記電源側通信端子に出力する工具側通信端子と、を有する電動工具と、
を備え、
前記状態信号は、前記モータの駆動状態に関する信号である。
【0015】
前記電動工具は、作業者によって操作されることで、前記モータを駆動させるオン状態及び前記モータを停止させるオフ状態に切り替わる操作部を有し、
前記制御部は、
前記操作部がオン状態であるときに前記遮断部を遮断させ、
前記操作部がオフ状態であるときに前記遮断部を導通させてもよい。
【0016】
前記電動工具は、前記操作部がオフ状態であるときに前記モータに回生制動を行うブレーキ手段を有し、前記ブレーキ手段は、前記操作部がオフ状態であっても前記入力端子の正極端子及び負極端子の端子間電圧がブレーキ動作解除閾値を超えると前記回生制動を停止してもよい。
本発明のもう1つの態様は、電動工具システムである。この電動工具システムは、
外部の交流電源及び電動工具に接続されて、前記交流電源から入力される交流を直流に変換して前記電動工具に出力する直流電源装置であって、
前記電動工具に接続して直流を出力する出力端子と、
前記出力端子と接続されて、前記交流電源から入力された電圧を変圧して前記出力端子に供給する変圧部と、
前記変圧部に対して電気的に並列に前記出力端子と接続される回生抵抗部と、
前記出力端子から前記回生抵抗部へ流れる電流経路を遮断可能な遮断部と、
前記遮断部の導通及び遮断を制御する制御部と、
前記出力端子の正極端子及び負極端子の端子間電圧を検出する電圧検出回路と、を備える直流電源装置と、
前記出力端子に接続する入力端子と、
前記入力端子に入力される直流によって駆動するモータと、
作業者によって操作されることで、前記モータを駆動させるオン状態及び前記モータを停止させるオフ状態に切り替わる操作部と、を有する電動工具と、を備え、
前記電動工具は、前記操作部がオフ状態であるときに前記モータに回生制動を行うブレーキ手段を有し、前記ブレーキ手段は、前記操作部がオフ状態であっても前記入力端子の正極端子及び負極端子の端子間電圧がブレーキ動作解除閾値を超えると前記回生制動を停止し、
前記制御部は、前記遮断部が遮断した状態で前記端子間電圧が第1の閾値以上になると、前記遮断部を導通させ、
前記第1の閾値は、前記ブレーキ解除閾値よりも小さい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回生制動を行う電動工具に接続した場合における作業性を向上させることの可能な直流電源装置及びそれを備える電動工具システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る直流電源装置1及びその第2変換ユニット30を接続した電動工具70の側面図。
【
図2】バッテリパック80を装着した電動工具70の側面図。
【
図3】直流電源装置1の、第1変換ユニット10及び第2変換ユニット30の上ケースをそれぞれ展開した状態の平面図。
【
図4】第1変換ユニット10の内部構成を示す平面図。
【
図5】第2変換ユニット30の内部構成を示す平面図。
【
図6】直流電源装置1及び電動工具70を互いに接続した電動工具システムの回路ブロック図。
【
図7】実施の形態1の電動工具システムにおける、電動工具70のトリガスイッチ71のオンオフ状態、直流電源装置1の出力端子間電圧、及びモータ74の回転数の時間変化の一例を示すグラフ。
【
図8】直流電源装置1から抵抗R6、R7及びスイッチング素子Qsを無くした比較例の電動工具システムにおける、電動工具70のトリガスイッチ71のオンオフ状態、直流電源装置1の出力端子間電圧、及びモータ74の回転数の時間変化の一例を示すグラフ。
【
図9】本発明の実施の形態2に係る電動工具システムの回路ブロック図。
【
図10】実施の形態2の電動工具システムにおける、電動工具70Aのトリガスイッチ71のオンオフ状態、直流電源装置1Aの出力端子間電圧、及びモータ74の回転数の時間変化の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態は、直流電源装置1、並びに直流電源装置1に電動工具70を接続した電動工具システムに関する。
図3により、直流電源装置1における前後方向を定義する。直流電源装置1は、第1変換ユニット10と、第2変換ユニット30と、ケーブル5と、を備える。第1変換ユニット10は、電源コード11により、外部の交流電源に接続される。第2変換ユニット30は、電動工具70のバッテリパック接続部75に着脱可能に接続される。電動工具70のバッテリパック接続部75には、
図2に示すようにバッテリパック80を着脱可能に接続することもできる。作業者が電動工具70のトリガスイッチ71をオンにすることで、直流電源装置1又はバッテリパック80から電動工具70に駆動電力が供給される。電動工具70は、図示の例ではハンマドリルであるが、バッテリパック80を着脱可能に接続する電動工具であれば種類は限定されない。ケーブル5は、第1変換ユニット10と、第2変換ユニット30と、を互いに接続する。ケーブル5は、電源コード11よりも長いことが望ましい。ケーブル5を十分に長くすることで、電動工具70による作業時に、第1変換ユニット10を床面等から浮かせる必要がなく、作業者は第1変換ユニット10の重さを支える必要がなく、作業性が良好となる。
【0022】
図3に示すように、第1変換ユニット10内の後端部には、第1冷却ファン17が設けられる。第2変換ユニット30内の後端部には、第2冷却ファン37が設けられる。第1冷却ファン17及び第2冷却ファン37の発生する冷却風の流れを、
図3に矢印で示している。第1冷却ファン17の発生する冷却風は、第1変換ユニット10のハウジングの前部に設けられた吸気口26から吸い込まれ、第1変換ユニット10を構成する各部品を冷却しながら前方に流れ、前記ハウジングの後部に設けられた排気口27から排気される。第2冷却ファン37の発生する冷却風は、第2変換ユニット30のハウジングの両側面の吸気口から吸い込まれ、フィン41、42によって前方に導風されながら第2変換ユニット30内の両側部の各部品を冷却し、前記ハウジングの中央部において前方から後方に、第2変換ユニット30の幅方向中央部の各部品を冷却しながら流れ、前記ハウジングの後部に設けられた排気口から排気される。
【0023】
図4に示すように、第1変換ユニット10には、電解コンデンサC1、ダイオードD1、スイッチング素子Q1、ダイオードブリッジ14、スイッチング素子としてのトライアック13、インダクタL1等の部品が設けられる。
図5に示すように、第2変換ユニット30には、ダイオードD2、D3、フィン41、42、電解コンデンサC2、C3、絶縁トランス31、スイッチング素子32等の部品が設けられる。
【0024】
図6は、直流電源装置1及び電動工具70の回路ブロック図である。第1変換ユニット10において、外部の交流電源3に接続される2つの端子は、第1入力部である。ケーブル5との接続端子のうち昇圧・平滑回路25の出力端子に接続される2つの端子(+端子10bと-端子10c)は、第1出力部である。第1変換ユニット10は、力率改善回路12と、遮断回路としてのトライアック13と、整流回路としてのダイオードブリッジ14と、昇圧・平滑回路25と、を含む。力率改善回路の入力端子は、交流電源3に接続される。交流電源3から入力される交流電圧のピーク値(第1電圧値)は、例えば80V以上260V未満である。
【0025】
ダイオードブリッジ14の入力端子は、力率改善回路12の出力端子に接続される。トライアック13は、力率改善回路12とダイオードブリッジ14との間の電流経路に設けられる。トライアック13は、第1変換ユニット10の出力/遮断を切り換えるために設けられる。ダイオードブリッジ14は、力率改善回路12の出力電流を整流する。昇圧・平滑回路25は、ダイオードブリッジ14の出力電圧を昇圧する。昇圧・平滑回路25のうち、インダクタL1、ダイオードD1、スイッチング素子Q1、及びドライバ回路22が昇圧回路を構成する。電解コンデンサC1は、昇圧回路の出力電圧を平滑する平滑回路を構成する。昇圧・平滑回路25の出力する直流電圧の電圧値(第2電圧値)、すなわち第1変換ユニット10の出力電圧の電圧値は、例えば200V以上500V未満である。第2電圧値は、第1電圧値よりも高い。
【0026】
第1変換ユニット10において、検出抵抗R1は、昇圧・平滑回路25の出力電流(第1変換ユニット10の出力電流)の経路に設けられる。補助電源15は、ダイオードブリッジ14の出力電圧を、演算部20等の動作電圧(例えばDC5V)に変換する。電流検出回路16は、検出抵抗R1の両端の電圧を基に昇圧・平滑回路25の出力電流を検出し、演算部20にフィードバックする。温度検出回路19は、サーミスタ等の温度検出素子を含み、第1変換ユニット10内の温度を検出し、演算部20にフィードバックする。演算部20は、第1制御部の例示であり、マイクロコントローラを含む。演算部20は、温度検出回路19による温度検出値に応じて第1冷却ファン17を駆動する。また、演算部20は、温度検出回路19による異常温度検出時、電流検出回路16による異常電流検出時、又はケーブル5の断線が検出された時に、トライアック13をオフし、第1変換ユニット10の出力を遮断する。抵抗R2の一端は、補助電源15の出力電圧が供給される電源ラインに接続される。抵抗R2の他端は、演算部20に接続されると共に、異常検出端子10aを介してケーブル5の通電信号送出線5aに接続される。すなわち、演算部20は、異常検出端子10aを介してケーブル5の通電信号送出線5aに接続される。リセット端子18は、ケーブル5の断線時に演算部20がトライアック13をオフとした後、ケーブル5の交換が完了した場合に、演算部20を初期状態に戻すために設けられる。リセット端子18にリセット操作を行うことで、演算部20は、初期状態に戻って再びトライアック13をオンする(非遮断状態とする)。
【0027】
第2変換ユニット30において、ケーブル5との接続端子のうち絶縁トランス31の入力側に接続される2つの端子(+端子30bと-端子30c)は、第2入力部である。電動工具70との接続端子のうち電解コンデンサC3の両端に接続される2つの端子(+端子30eと-端子30f)は、第2出力部(直流電源装置1の出力端子)である。電解コンデンサC2は、第2入力部を構成する2つの端子間に設けられる。絶縁トランス31、スイッチング部としてのスイッチング素子32、ダイオードD2、D3、及び電解コンデンサC3は、変圧部を構成する。スイッチング素子32は、絶縁トランス31の一次側に設けられる。絶縁トランス31の二次側に、ダイオードD2、D3が設けられる。絶縁トランス31の二次側の電圧は、電解コンデンサC3により平滑される。絶縁トランス31の二次側の直流電圧の電圧値(第3電圧値)は、例えば0V以上400V未満であり、特に0V以上70V未満の範囲で、接続する電動工具70の定格電圧に合わせた電圧とすることが望ましい。第3電圧値は、第2電圧値よりも低い。検出抵抗R3は、絶縁トランス31及び電解コンデンサC3の出力電流(第2変換ユニット30の出力電流)の経路に設けられる。電流検出回路35は、検出抵抗R3の両端の電圧を基に、絶縁トランス31及び電解コンデンサC3の出力電流を検出する。電圧検出回路34は、絶縁トランス31の両端の電圧を検出する。スイッチング制御回路33は、電流検出回路35による電流検出値、及び電圧検出回路34による電圧検出値に応じて、スイッチング素子32のオンオフを制御する。電圧検出回路34による電圧検出値は、演算部40にも入力される。スイッチング制御回路33及び演算部40は、第2変換ユニット30の制御部を構成する。
【0028】
絶縁トランス31の二次側には、電解コンデンサC3と並列に、回生抵抗部を構成する抵抗R6、R7、及び遮断部としてのFETやIGBT等のスイッチング素子Qsが設けられる。抵抗R6、R7は、互いに並列接続される。抵抗R6、R7の一端は、+端子(正極端子)30eに接続される。抵抗R6、R7の他端は、スイッチング素子Qsのドレインに接続される。スイッチング素子Qsのソースは、抵抗R3を介して-端子(負極端子)30fに接続される。スイッチング素子Qsの制御端子としてのゲートは、演算部40に接続される。演算部40は、電動工具70の状態に応じて、スイッチング素子Qsのオンオフ(導通及び遮断)を制御する。本実施の形態では、演算部40は、電圧検出回路34による電圧検出値(+端子30eと-端子30fの端子間電圧)に応じて、スイッチング素子Qsのオンオフを制御する。具体的には、演算部40は、端子間電圧が第1の閾値未満である間はスイッチング素子Qsをオフし(遮断させ)、スイッチング素子Qsがオフされた(遮断した)状態で端子間電圧が第1の閾値以上になるとスイッチング素子Qsをオンし(導通させ)、スイッチング素子Qsがオンされた(導通した)状態で端子間電圧が第2の閾値以下になると、再びスイッチング素子Qsをオフする(遮断させる)。第1の閾値は、好ましくは、電動工具70がモータ駆動状態であるときは到達しない電圧値である。また、第1の閾値は、電動工具70が過電圧保護機能により回生制動を中止する閾値(ブレーキ動作解除閾値)よりも小さい電圧値である。第2の閾値は、第1の閾値よりも小さい電圧値であり、好ましくは、電動工具70の定格電圧に等しいか電動工具70の定格電圧よりも大きい。本実施の形態における電動工具70の定格電圧は36Vであり、第1の閾値は45Vであり、第2の閾値は36Vであり、ブレーキ動作解除閾値は50Vである。尚、スイッチング素子Qsがオンされた状態で、端子間電圧が第2の閾値以下になってもスイッチング素子Qsをオフせず、モータ74の回転数が所定値以下まで低下して初めてスイッチング素子Qsをオフする構成としてもよい。
【0029】
補助電源36は、ケーブル5からの入力電圧を、スイッチング制御回路33及び演算部40等の動作電圧に変換する。温度検出回路38は、サーミスタ等の温度検出素子を含み、第2変換ユニット30内の温度を検出し、演算部40にフィードバックする。演算部40は、第2制御部の例示であり、マイクロコントローラを含む。演算部40は、温度検出回路38による温度検出値に応じて第2冷却ファン37を駆動する。また、演算部40は、温度検出回路38による異常温度検出時には、LD端子を介して電動工具70の演算部73にオフ信号(異常検出信号)を送信し、電動工具70の駆動を停止させる。補助電源36の出力電圧が供給される電源ラインとグランドとの間には、抵抗R4、R5が直列接続される。スイッチング素子Q3のゲートは、抵抗R4、R5の相互接続端子に接続される。スイッチング素子Q3のソースは、グランドに接続される。スイッチング素子Q3のドレインは、異常検出端子30aを介してケーブル5の通電信号送出線5aに接続される。抵抗R4、R5及びスイッチング素子Q3は、通電信号発生部を構成する。
【0030】
ケーブル5の非断線時には、スイッチング素子Q3のゲート、ソース間電圧はプラスであり、スイッチング素子Q3はオンである。このため、異常検出端子30a、10aはグランド電位となる。演算部20は、異常検出端子10aがグランド電位である場合(通電信号送出線5aからの通電信号がある場合)、ケーブル5が断線していないと判断する。ケーブル5の断線時には、異常検出端子10aの電圧は、抵抗R2によってプルアップされ、5Vとなる。演算部20は、第1変換ユニット10からケーブル5に直流電圧を出力しているときに異常検出端子10aの電圧が5Vとなった場合(通電信号送出線5aからの通電信号が無くなった場合)、ケーブル5が断線したと判断し、トライアック13をオフし、第1変換ユニット10の出力を遮断する。なお、ケーブル5は、通電信号送出線5aに加え、第1変換ユニット10の出力側に設けられる+端子10bと第2変換ユニット30の入力側に設けられる+端子30bとを接続する+側電源線5bと、第1変換ユニット10の出力側に設けられる-端子10cと第2変換ユニット30の入力側に設けられる-端子30cとを接続する-側電源線5cとを有する三線構造であり、+側電源線5bと-側電源線5cの少なくとも一方が断線し、通電信号送出線5aは断線していない場合もある。この場合、補助電源36の出力電圧が無くなることで、スイッチング素子Q3のゲート、ソース間電圧が0となり、スイッチング素子Q3がオフすることで、異常検出端子10aの電圧は、抵抗R2によってプルアップされ、5Vとなる。
【0031】
電動工具70において、+端子70e及び-端子70fは、直流電源装置1の+端子30eと-端子30f(出力端子)に接続される入力端子である。電動工具70は、操作部としてのトリガスイッチ71と、インバータ回路72と、制御部としての演算部73と、モータ74と、電解コンデンサC4と、を含む。電動工具70は、作業者によってトリガスイッチ71が操作されることにより、モータ74を駆動させるオン状態と、モータ74を停止させるオフ状態と、が切り替わる。トリガスイッチ71と並列に、回生電流を流すためのダイオードD4が設けられる。電解コンデンサC4は、インバータ回路72の入力端子間に設けられる。インバータ回路72は、三相ブリッジ接続されたFETやIGBT等のスイッチング素子Q4~Q9を有する。トリガスイッチ71が作業者にオンされると、電動工具70はモータ駆動状態となり、演算部73は、インバータ回路72を制御することで、モータ74の駆動を制御する。演算部73は、LD端子を介して第2変換ユニット30の演算部40からオフ信号(異常検出信号)を受信すると、トリガスイッチ71の状態に関わらずインバータ回路72をオフし、モータ74の駆動を停止する。演算部73は、ブレーキ手段としても機能する。電動工具70は、トリガスイッチ71が作業者にオフされると、モータ制動状態となり、演算部73は、インバータ回路72を制御することで、モータ74の回生制動を行う。具体的には、例えば、演算部73は、上アーム側のスイッチング素子Q7~Q9をオフに維持しながら下アーム側のスイッチング素子Q4~Q6のうち少なくとも1つを連続的ないし断続的にオンする。下アーム側のスイッチング素子Q4~Q6のうち少なくとも1つをPWM制御することで、デューティ制御により任意の制動力を発生させることができる。演算部73は、+端子70eと-端子70fとの間の電圧がブレーキ動作解除閾値を超えると、トリガスイッチ71がオフであっても回生制動を停止する。
【0032】
図7は、実施の形態1の電動工具システムにおける、電動工具70のトリガスイッチ71のオンオフ状態、直流電源装置1の出力端子間電圧(+端子70eと-端子70fの端子間電圧)、及びモータ74の回転数の時間変化の一例を示すグラフである。時刻t1以前は、トリガスイッチ71がオンであり、直流電源装置1の出力端子間電圧は、設定値(電動工具70の定格電圧に合わせた電圧)である。時刻t1においてトリガスイッチ71がオンからオフに切り替わると、演算部73は、モータ74の回生制動を開始する。演算部
40は、時刻t2において+端子70eと-端子70fの端子間電圧が第1の閾値(抵抗オン閾値)に到達すると、スイッチング素子Qsをターンオンする。スイッチング素子Qsのターンオンにより、モータ74の回生エネルギーが抵抗R6、R7で消費され、+端子70eと-端子70fの端子間電圧が低下する。時刻t3においてモータ74が停止すると、+端子70eと-端子70fの端子間電圧が第2の閾値と等しくなり、演算部
40は、スイッチング素子Qsをターンオフする。このため、再度トリガスイッチ71がオンに切り替わった場合には、抵抗R6、R7に電流が流れることは無い。
【0033】
図8は、直流電源装置1から抵抗R6、R7及びスイッチング素子Qsを無くした比較例の電動工具システムにおける、電動工具70のトリガスイッチ71のオンオフ状態、直流電源装置1の出力端子間電圧、及びモータ74の回転数の時間変化の一例を示すグラフである。演算部73は、
図7の場合と同様、時刻t1においてトリガスイッチ71がオンからオフに切り替わるとモータ74の回生制動を開始する。演算部73は、時刻t4において+端子70eと-端子70fの端子間電圧がブレーキ動作解除閾値に到達すると、回生制動を停止する。時刻t4以降、モータ74は自然減速により減速する。モータ74が停止する時刻t5は、
図7における時刻t3よりも大幅に遅れることになる。
【0034】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0035】
(1) 直流電源装置1は、電動工具70の回生制動により出力端子間電圧が増加するとスイッチング素子Qsをターンオンし、回生エネルギーを抵抗R6、R7で消費させる。このため、電動工具70は、直流電源装置1を電源とする場合でも、作業者がトリガスイッチ71をオフにすると回生制動によりモータ74が迅速に停止するため、作業性を向上させることができる。
【0036】
(2) 直流電源装置1は、電圧検出回路34による電圧検出値(+端子30eと-端子30fの端子間電圧)に応じてスイッチング素子Qsのオンオフを制御するため、スイッチング素子Qsのオンオフを制御するために電動工具70に新たな構成や機能を付加する必要がない。このため、直流電源装置1を電源とする場合の回生制動を既存の電動工具70に容易に適用できる。
【0037】
(実施の形態2)
本実施の形態は、直流電源装置1A、並びに直流電源装置1Aに電動工具70Aを接続した電動工具システムに関する。
図9は、本発明の実施の形態2に係る電動工具システムの回路ブロック図である。以下、
図6に示す実施の形態1の電動工具システムとの相違点を中心に説明する。直流電源装置1Aの第2変換ユニット30は、電源側通信端子30gを備える。電動工具70Aは、工具側通信端子70gを備える。電源側通信端子30g及び工具側通信端子70gが互いに接続される。第2変換ユニット30の演算部40と、電動工具70Aの演算部73は、電源側通信端子30g及び工具側通信端子70gを介して互いに通信する。演算部73は、電動工具70Aの状態信号を工具側通信端子70gに出力する。状態信号は、トリガスイッチ71のオンオフ等、モータ74が駆動状態か制動状態かを示す信号を含む。第2変換ユニット30の演算部40は、電源側通信端子30gに入力される電動工具70Aの状態信号に応じて、スイッチング素子Qsのオンオフを制御する。具体的には、演算部40は、電動工具70Aがモータ駆動状態(トリガスイッチ71がオン状態)であるときにスイッチング素子Qsをオフし、電動工具70Aがモータ制動状態(トリガスイッチ71がオフ状態)であるときにスイッチング素子Qsをオンする。
【0038】
図10は、実施の形態2の電動工具システムにおける、電動工具70Aのトリガスイッチ71のオンオフ状態、直流電源装置1Aの出力端子間電圧、及びモータ74の回転数の時間変化の一例を示すグラフである。
図10において
図7と異なる点は、時刻t1においてトリガスイッチ71がオンからオフに切り替わっても、直流電源装置1Aの出力端子間電圧が高くならない点である。これは、トリガスイッチ71がオフになると、直ちに電動工具70Aの演算部73から直流電源装置1Aの第2変換ユニット30の演算部40にトリガスイッチ71がオフになったこと(電動工具70Aがモータ制動状態になったこと)が報知され、演算部
40がスイッチング素子Qsをターンオンすることによる。
【0039】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様に、直流電源装置1Aを電源とする場合の電動工具70Aの作業性を向上させることができる。また、本実施の形態によれば、電動工具70Aの状態信号を電動工具70Aから直流電源装置1Aに送信する機能を要するものの、当該機能により、直流電源装置1Aの第2変換ユニット30においては、電動工具70Aのトリガスイッチ71がオフになると直ちにスイッチング素子Qsをターンオンして抵抗R6、R7での回生エネルギーの消費を開始できる。
【0040】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0041】
1、1A 直流電源装置、3 交流電源、5 ケーブル、
10 第1変換ユニット、11 電源コード、12 力率改善回路、13 トライアック、14 ダイオードブリッジ、15 補助電源、16 電流検出回路、17 第1冷却ファン、18 リセット端子、19 温度検出回路、20 演算部(第1制御部)、21 AND回路、22 ドライバ回路、23 放電抵抗、25 昇圧回路、26 吸気口、27 排気口、
30 第2変換ユニット、31 絶縁トランス、32 スイッチング素子、33 スイッチング制御回路、34 電圧検出回路、35 電流検出回路、36 補助電源、37 第2冷却ファン、38 温度検出回路、40 演算部(第2制御部)、
70 電動工具、71 トリガスイッチ、72 インバータ回路、73 演算部、74 モータ、75 バッテリパック接続部、
80 バッテリパック