(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】クロマトグラフ装置およびロードスイッチ回路
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20221012BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20221012BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20221012BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20221012BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20221012BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20221012BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H02J1/00 309R
G01N30/74 Z
G01N21/17 D
H02H7/00 A
H03K17/16 H
H03K17/687 A
G06F1/26
(21)【出願番号】P 2019005584
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】石原 悠悟
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-032190(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140617(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0180870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
G01N 30/74
G01N 21/17
H02H 7/00
H03K 17/16
H03K 17/687
G06F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフを構成する複数の動作部と、
直流電力の供給をオンおよびオフするロードスイッチ回路とを備え、
前記複数の動作部のうち少なくとも1つの動作部は、前記ロードスイッチ回路に負荷回路として接続され、
前記ロードスイッチ回路は、
直流電圧を受ける第1のノードと前記負荷回路との間に接続され、第2のノードの電位を受ける制御端子を有する第1のスイッチ素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された容量素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された第1の抵抗素子と、
前記第1のスイッチ素子のターンオフ時に前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電流を流すバイパス回路
と、
前記第2のノードと第3のノードとの間に接続された第2の抵抗素子と、
前記第3のノードと基準電位に設定される第4のノードとの間に接続された第2のスイッチ素子とを含み、
前記バイパス回路は、前記第1のスイッチ素子のターンオフ時に前記第1のノードから前記第2のノードへ電流を流す一方向性導通回路を含み、
前記一方向性導通回路は、
前記第3のノードと前記第2のノードとの間に接続されたダイオードを含み、
前記ロードスイッチ回路は、
前記ダイオードのアノードと前記第3のノードとの間に接続された第4の抵抗素子をさらに含む、クロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記一方向性導通回路は、
前記第1のノードと前記ダイオードのアノードとの間に接続された第3の抵抗素子をさらに含む、請求項1記載のクロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記クロマトグラフは、
分析カラムと、
前記分析カラムにより分離された試料の成分を検出する検出器と、
電源回路とを含み、
前記検出器は、前記ロードスイッチ回路および前記負荷回路を含み、
前記ロードスイッチ回路は、前記電源回路と前記負荷回路との間に接続された、請求項1または2記載のクロマトグラフ装置。
【請求項4】
クロマトグラフ装置の負荷回路への直流電力の供給をオンおよびオフするロードスイッチ回路であって、
直流電圧を受ける第1のノードと前記負荷回路との間に接続され、第2のノードの電位を受ける制御端子を有する第1のスイッチ素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された容量素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された第1の抵抗素子と、
前記第1のスイッチ素子のターンオフ時に前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電流を流すバイパス回路と、
前記第2のノードと第3のノードとの間に接続された第2の抵抗素子と、
前記第3のノードと基準電位に設定される第4のノードとの間に接続された第2のスイッチ素子とを含み、
前記バイパス回路は、前記第1のスイッチ素子のターンオフ時に前記第1のノードから前記第2のノードへ電流を流す一方向性導通回路を含み、
前記一方向性導通回路は、
前記第3のノードと前記第2のノードとの間に接続されたダイオードを含み、
前記ロードスイッチ回路は、
前記ダイオードのアノードと前記第3のノードとの間に接続された第4の抵抗素子をさらに含む、ロードスイッチ回路。
【請求項5】
前記一方向性導通回路は、
前記第1のノードと前記ダイオードのアノードとの間に接続された第3の抵抗素子をさらに含む、請求項4記載のロードスイッチ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ装置およびロードスイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ等のクロマトグラフには、吸光度検出器等の検出器が用いられる(例えば、特許文献1)。液体クロマトグラフに用いられる検出器には、重水素ランプ等の光源、シャッタを駆動するモータ、および光学系の温度を調整するヒータ等が設けられる。光源を点灯する回路、モータを駆動する回路、およびヒータを駆動する回路等は、共通の電源回路から直流電力が供給される負荷回路である。電源回路から負荷回路への直流電力の供給をオンおよびオフするためにロードスイッチ回路が用いられる。ロードスイッチ回路には、例えば、電界効果トランジスタが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負荷回路がコンデンサ等の容量成分を有する場合、電界効果トランジスタの高速でのターンオン時に負荷回路の容量成分へ突入電流が流入する。突入電流を低減するために、ロードスイッチ回路に比較的大きな時定数を有するコンデンサが接続されることがある。これにより、電界効果トランジスタのターンオンの速度が低下する。その結果、電界効果トランジスタのターンオン時に電界効果トランジスタに流れるピーク電流を低減することができる。
【0005】
一方、ロードスイッチ回路に比較的大きな時定数を有するコンデンサが設けられた場合には、電界効果トランジスタのターンオフ時間が長くなる。負荷回路に大きな電流が供給されている状態で電界効果トランジスタがターンオフしようとすると、ドレイン・ソース間電圧が発生し、電界効果トランジスタの発熱が一時的に大きくなる。ターンオフ時間が長くなると、発熱量が大きくなるので、大きな定格電流容量を有する電界効果トランジスタを用いる必要が生じる。それにより、部品のコストが高くなる。
【0006】
本発明の目的は、突入電流を低減するとともに低コストで部品の発熱を抑制することが可能なクロマトグラフ装置およびロードスイッチ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係るクロマトグラフ装置は、クロマトグラフを構成する複数の動作部と、直流電力の供給をオンおよびオフするロードスイッチ回路とを備え、前記複数の動作部のうち少なくとも1つの動作部は、前記ロードスイッチ回路に負荷回路として接続され、前記ロードスイッチ回路は、直流電圧を受ける第1のノードと前記負荷回路との間に接続され、第2のノードの電位を受ける制御端子を有する第1のスイッチ素子と、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された容量素子と、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された第1の抵抗素子と、前記第1のスイッチ素子のターンオフ時に前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電流を流すバイパス回路とを含む。
【0008】
本発明の第2の態様に係るロードスイッチ回路は、クロマトグラフ装置の負荷回路への直流電力の供給をオンおよびオフするロードスイッチ回路であって、直流電圧を受ける第1のノードと前記負荷回路との間に接続され、第2のノードの電位を受ける制御端子を有する第1のスイッチ素子と、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された容量素子と、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された第1の抵抗素子と、前記第1のスイッチ素子のターンオフ時に前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電流を流すバイパス回路とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、クロマトグラフ装置において突入電流を低減するとともに低コストで部品の発熱を抑制することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、ロードスイッチ回路において突入電流を低減するとともに低コストで部品の発熱を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係るクロマトグラフ装置における主としてクロマトグラフィ検出器の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1のロードスイッチ回路の構成を示す回路図である。
【
図3】ロードスイッチ回路の他の例を示す回路図である。
【
図4】実施例のロードスイッチ回路の構成を示す回路図である。
【
図5】比較例のロードスイッチ回路の構成を示す回路図である。
【
図6】実施例のロードスイッチ回路のシミュレーション結果を示す波形図である。
【
図7】比較例のロードスイッチ回路のシミュレーション結果を示す波形図である。
【
図8】
図1のクロマトグラフィ検出器を含むクロマトグラフ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態に係るクロマトグラフ装置およびそれに用いられるロードスイッチ回路について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(1)クロマトグラフィ検出器の構成
図1は実施の形態に係るクロマトグラフ装置における主としてクロマトグラフィ検出器の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、クロマトグラフ装置100は、クロマトグラフィ検出器10および電源回路60を含む。クロマトグラフィ検出器10は、ロードスイッチ回路11、ランプ点灯回路12、モータ駆動回路13およびヒータ駆動回路14を含む。ランプ点灯回路12、モータ駆動回路13およびヒータ駆動回路14は、負荷回路15を構成する。クロマトグラフィ検出器10は、ランプ16、ステッピングモータ17、直流ヒータ18、フローセル19、光検出器20および検出器制御部30をさらに含む。
【0015】
電源回路60は、交流電力を直流電力に変換し、直流の電源電圧Vccを生成する。電源電圧Vccは、例えば24Vであるが、これに限定されない。ロードスイッチ回路11は、電源回路60と負荷回路15との間に接続されている。ロードスイッチ回路11は、電源回路60から負荷回路15への直流電力の供給をオンおよびオフする。本実施の形態では、ロードスイッチ回路11にランプ点灯回路12、モータ駆動回路13およびヒータ駆動回路14が接続されている。
【0016】
ランプ点灯回路12は、ロードスイッチ回路11を通して供給される直流電力によりランプ16を点灯させる。モータ駆動回路13は、ロードスイッチ回路11を通して供給される直流電力によりステッピングモータ17を駆動する。ヒータ駆動回路14は、ロードスイッチ回路11を通して供給される直流電力により直流ヒータ18を駆動する。ランプ点灯回路12、モータ駆動回路13およびヒータ駆動回路14は、比較的大きな容量成分を有する。ランプ16は、例えば、重水素ランプおよびタングステンランプである。ステッピングモータ17は、ランプ16とフローセル19との間に配置されるシャッタおよびフィルタを移動させる。直流ヒータ18は、フローセル19を含む光学系の温度を調整する。
【0017】
フローセル19には、後述する
図8の分析カラム140から供給される移動相および試料が流れる。ランプ16により発生された光は、フローセル19に導かれる。光検出器20は、フローセル19を透過した光を検出する。検出器制御部30は、ロードスイッチ回路11、ランプ点灯回路12、モータ駆動回路13およびヒータ駆動回路14の動作を制御するとともに、光検出器20の出力信号を受ける。
【0018】
(2)ロードスイッチ回路11の構成
図2は
図1のロードスイッチ回路11の構成を示す回路図である。ロードスイッチ回路11は、PチャネルMOSFET(金属酸化物電界効果トランジスタ;以下、トランジスタと略記する。)Q1、NチャネルMOSFET(金属酸化物電界効果トランジスタ;以下、トランジスタと略記する)Q2、コンデンサC1、および抵抗R1,R2,R3を含む。
【0019】
トランジスタQ1は、電源回路60により生成される電源電圧Vccを受けるノードN1と負荷回路15との間に接続されている。詳細には、トランジスタQ1のソースがノードN1に接続され、ドレインが負荷回路15に接続されている。トランジスタQ1のゲートはノードN2に接続されている。ノードN1とノードN2との間にコンデンサC1および抵抗R1が並列に接続されている。ノードN2とノードN3との間に抵抗R2が接続されている。ノードN3と接地電位GNDを受けるノードN4との間にトランジスタQ2が接続されている。詳細には、トランジスタQ2のソースがノードN4に接続され、ドレインがノードN3に接続されている。トランジスタQ2のゲートには
図1の検出器制御部30により切替信号SWが与えられる。
【0020】
ノードN1とノードN3との間に抵抗R3が接続されている。ノードN2とノードN3との間にダイオードD1が接続されている。詳細には、ダイオードD1のアノードがノードN3に接続され、カソードがノードN2に接続されている。ダイオードD1および抵抗R3がバイパス回路B1を構成する。本実施の形態では、バイパス回路B1は、ノードN1からノードN3を経由してノードN2に電流を流す一方向性導通回路である。
【0021】
切替信号SWがハイレベルになると、トランジスタQ2がターンオンする。それにより、ノードN2の電位が低下する。ノードN1とノードN2との間の電圧がゲートしきい値電圧を超えると、トランジスタQ1がターンオンする。それにより、電源回路60からの直流電力が負荷回路15に供給される。抵抗R1,R2は、トランジスタQ2のドレイン電流を制限するとともに、トランジスタQ1のゲート電圧を決定する。コンデンサC1は、比較的大きな時定数を有する。そのため、コンデンサC1の時定数によりトランジスタQ1のドレイン電圧の立ち上がり波形が鈍る。それにより、トランジスタQ1のターンオン時の突入電流が低減される。
【0022】
切替信号SWがローレベルになると、トランジスタQ2がターンオフする。それにより、ノードN2の電位が上昇する。ノードN1とノードN2との間の電圧がゲートしきい値電圧未満になると、トランジスタQ1がターンオフする。それにより、負荷回路15が電源回路60から遮断される。この場合、抵抗R1およびコンデンサC1の並列回路を通してノードN2の電位がノードN1の電源電圧Vccに近づくように上昇するとともに、抵抗R3およびダイオードD1を通してノードN2の電位が電源電圧Vccに近づくように上昇する。抵抗R3およびダイオードD1により構成されるバイパス回路B1の時定数は0に近いので、トランジスタQ1のゲートが急速に充電される。そのため、トランジスタQ1のターンオフ時間が短くなる。その結果、トランジスタQ1のターンオフ時に、トランジスタQ1のソース・ドレイン間電圧の発生による発熱が抑制される。
【0023】
なお、トランジスタQ1のターンオン時には、ダイオードD1には逆バイアスが印加されるので、ダイオードD1はオフしている。そのため、ダイオードD1および抵抗R3によるターンオン速度への影響は無視できる。
【0024】
トランジスタQ1,Q2がオンしているときには、抵抗R3に電流が流れるため、電力損失が生じる。一方、トランジスタQ1のターンオフ時にはバイパス回路B1の時定数は無視できるので、抵抗R3の値によるターンオフ時間への影響は少ない。したがって、抵抗R3による電力損失が許容範囲内となるように抵抗R3の値を大きく設定することができる。
【0025】
図3はロードスイッチ回路11の他の例を示す回路図である。ダイオードD1の端子間容量が大きい場合には、トランジスタQ1のターンオン時にノードN1からコンデンサC1およびダイオードD1を経由してトランジスタQ2に突入電流が流れる場合がある。そのため、ダイオードD1の端子間容量は小さいことが望ましい。
図3の例では、ダイオードD1のアノードと抵抗R2との間に電流制限用の抵抗R4が追加されている。それにより、ダイオードD1の端子間容量が大きい場合でも、トランジスタQ2に流れる突入電流が低減される。
【0026】
(3)シミュレーション
本実施の形態に係るロードスイッチ回路11の効果を評価するために、実施例および比較例のロードスイッチ回路11のシミュレーションを行った。
図4は実施例のロードスイッチ回路の構成を示す回路図である。
図5は比較例のロードスイッチ回路の構成を示す回路図である。
【0027】
図4の実施例のロードスイッチ回路11は、
図2の実施の形態に係るロードスイッチ回路11と次の点を除いて同じ構成を有する。
図4のロードスイッチ回路11においては、トランジスタQ2のゲートには、抵抗R5を通して切替信号SWが与えられる。負荷回路15としては、コンデンサC2および抵抗R6が用いられる。コンデンサC2および抵抗R6は、トランジスタQ1のドレインとノードN4との間に並列に接続される。
【0028】
図5の比較例のロードスイッチ回路11aは、
図4のバイパス回路B1を有さない。比較例のロードスイッチ回路11aの他の部分の構成は、
図4の実施例のロードスイッチ回路11の構成と同様である。
【0029】
シミュレーションにおいて、電源電圧Vccは24Vである。コンデンサC1の容量値は4.7μFであり、抵抗R1および抵抗R2の値はそれぞれ100kΩである。抵抗R3の値は10kΩであり、抵抗R5の値は1kΩである。負荷回路15のコンデンサC2の容量値は300μFであり、抵抗R6の値は6Ωである。
【0030】
図6は実施例のロードスイッチ回路11のシミュレーション結果を示す波形図である。
図7は比較例のロードスイッチ回路11aのシミュレーション結果を示す波形図である。
【0031】
図6および
図7において、横軸は時間を表し、左の縦軸は電圧を表し、右の縦軸は電力損失を表す。トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧の波形が一点鎖線L1,L11で示される。また、トランジスタQ1の電力損失の波形が実線L2,L12で示される。
【0032】
図6に示されるように、実施例のロードスイッチ回路11においては、時点t1で切替信号SWがハイレベルに立ち上がると、トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧は対数関数的に上昇する。時点t2でトランジスタQ1のターンオンが開始し、時点t3でトランジスタQ1は完全にオン状態となる。トランジスタQ1のターンオン開始から完全オンまでのターンオン期間に主として突入電流による電力損失のピークPK1が現れる。
【0033】
また、時点t4で切替信号SWがローレベルに立ち下がると、トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧は指数関数的に低下する。この場合、トランジスタQ1のゲートの電位がバイパス回路B1を通して電源電圧Vccに急速に近づくので、トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧は急速に低下する。時点t5でトランジスタQ1がターンオフを開始し、時点t6でトランジスタQ1は完全にオフ状態となる。トランジスタQ1のターンオフ開始から完全オフまでのターンオフ期間に主として抵抗R6を通して流れる過渡電流による電力損失のピークPK2が現れる。
【0034】
図7に示されるように、比較例のロードスイッチ回路11aにおいては、時点t11で切替信号SWがハイレベルに立ち上がると、トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧は対数関数的に上昇する。時点t12でトランジスタQ1のターンオンが開始し、時点t13でトランジスタQ1は完全にオン状態となる。トランジスタQ1のターンオン開始から完全オンまでのターンオン期間に主として突入電流による電力損失のピークPK11が現れる。
【0035】
また、時点t14で切替信号SWがローレベルに立ち下がると、トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧は指数関数的に低下する。この場合、コンデンサC1の時定数によりトランジスタQ1のゲートの電位が緩やかに上昇するので、トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧は緩やかに低下する。時点t15でトランジスタQ1がターンオフを開始し、時点t16でトランジスタQ1は完全にオフ状態となる。トランジスタQ1のターンオフ開始から完全オフまでのターンオフ期間に主として抵抗R6を通して流れる過渡電流による電力損失のピークPK12が現れる。
【0036】
上記のように、実施例のロードスイッチ回路11におけるトランジスタQ1のターンオフ時間は、比較例のロードスイッチ回路11aにおけるトランジスタQ1のターンオフ時間に比べて短い。そのため、実施例のロードスイッチ回路11におけるターンオフ時にトランジスタQ1に流れる過渡電流は、比較例のロードスイッチ回路11aにおけるターンオフ時にトランジスタQ1に流れる過渡電流に比べて少ない。
【0037】
一方、実施例のロードスイッチ回路11におけるトランジスタQ1のターンオン時間は、比較例のロードスイッチ回路11aにおけるトランジスタQ1のターンオン時間とほぼ等しい。このことから、実施例のロードスイッチ回路11におけるバイパス回路B1によりトランジスタQ1のターンオン速度にほとんど影響が与えられないことがわかる。
【0038】
(4)クロマトグラフ装置
図8は
図1のクロマトグラフィ検出器10を含むクロマトグラフ装置の構成を示すブロック図である。
図8のクロマトグラフ装置100は、液体クロマトグラフ装置である。
【0039】
図7のクロマトグラフ装置100は、移動相用のポンプ110、試料導入部120、導入ポート130、分析カラム140、カラムオーブン150およびクロマトグラフィ検出器10を含む。分析カラム140は、カラムオーブン150内に設けられる。カラムオーブン150は、分析カラム140を設定された温度に維持する。
【0040】
ポンプ110は、移動相容器111内の移動相(溶離液)を吸引し、分析カラム140に供給する。試料導入部120は、例えばオートサンプラまたはインジェクタを含み、分析対象である試料を導入ポート130において移動相に導入する。分析カラム140を通過した移動相および試料は、クロマトグラフィ検出器10のフローセル19(
図1)を流れ、廃液容器112に排出される。
【0041】
クロマトグラフ装置100は、分析制御部50、操作部51および表示部52を含む。操作部51は、使用者が分析制御部50に種々の指令を与えるために用いられる。分析制御部50は、ポンプ110、試料導入部120、カラムオーブン150およびクロマトグラフィ検出器10を制御する。また、分析制御部50は、クロマトグラフィ検出器10の出力信号に基づいてクロマトグラムを生成する。生成されたクロマトグラムは表示部52に表示される。
【0042】
(5)実施の形態の効果
本実施の形態に係るクロマトグラフ装置100に用いられるロードスイッチ回路11においては、トランジスタQ1のターンオン時間を確保しつつトランジスタQ1のターンオフ時間を短くすることができる。それにより、突入電流を低減するとともにターンオフ時の発熱量を低減することができる。そのため、小さい定格電流容量を有するトランジスタQ1を用いることができるので、トランジスタQ1のコストおよび寸法を低減することができる。また、抵抗R3およびダイオードD1は、トランジスタQ1に比べて安価である。したがって、ロードスイッチ回路11の部品コストおよび部品サイズを低減することが可能となる。また、クロマトグラフィ検出器10およびそれを用いたクロマトグラフ装置100の部品コストを低減することが可能となる。
【0043】
(6)他の実施の形態
(6-1)
上記実施の形態では、負荷回路15がランプ点灯回路12、モータ駆動回路13およびヒータ駆動回路14を含むが、負荷回路15がランプ点灯回路12、モータ駆動回路13およびヒータ駆動回路14の一部を含んでもよい。
【0044】
(6-2)
上記実施の形態では、ロードスイッチ回路11がクロマトグラフィ検出器10内の負荷回路15に接続されるが、ロードスイッチ回路11がクロマトグラフ装置100の他の動作部に接続されてもよい。例えば、ロードスイッチ回路11が試料導入部120におけるモータ駆動回路またはカラムオーブン150内のヒータ駆動回路等に接続されてもよい。
【0045】
(6-3)
上記実施の形態のロードスイッチ回路11において、トランジスタQ1のソースとノードN1との間に抵抗等の他の回路素子が設けられてもよい。また、トランジスタQ1のドレインと負荷回路15との間に抵抗等の他の回路素子が設けられてもよい。コンデンサC1が他の回路素子を通してノードN1とノードN2との間に接続されてもよい。抵抗R1が他の回路素子を通してノードN1とノードN2との間に接続されてもよい。抵抗R2が他の回路素子を通してノードN2とノードN3との間に接続されてもよい。抵抗R3が他の回路素子を通してノードN1とノードN3との間に接続されてもよい。ダイオードD1が他の回路素子を通してノードN2とノードN3との間に接続されてもよい。トランジスタQ1のゲートが他の回路素子を通してノードN2に接続されてもよい。トランジスタQ2が他の回路素子を通してノードN3とノードN4との間に接続されてもよい。抵抗R4が他の回路素子を通してダイオードD1のアノードとノードN3との間に接続されてもよい。
【0046】
(6-4)
上記実施の形態では、トランジスタQ1,Q2がMOSFETであるが、第1のスイッチ素子としてバイポーラトランジスタまたはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の他の種類のスイッチ素子が用いられてもよく、第2のスイッチ素子としてバイポーラトランジスタまたはIGBT等の他の種類のスイッチ素子が用いられてもよい。
【0047】
(6-5)
上記実施の形態では、第1~第4の抵抗素子として抵抗R1~R4が用いられているが、第1~第4の抵抗素子として抵抗成分を有する他の回路素子が用いられてもよい。また、上記実施の形態では、容量素子としてコンデンサC1が用いられているが、容量素子として容量成分を有する他の回路素子が用いられてもよい。
【0048】
(6-6)
上記実施の形態では、バイパス回路B1が抵抗R3およびダイオードD1により構成されるが、バイパス回路B1がフォトカプラまたはトランジスタ等のスイッチ素子により構成されてもよい。この場合、抵抗R3およびダイオードD1の代わりにスイッチ素子がノードN1とノードN2との間に接続される。スイッチ素子は検出器制御部30等の制御回路によりトランジスタQ1のターンオフ時にオン状態にされる。
【0049】
(6-7)
上記実施の形態では、トランジスタQ1のゲート電位を変化させるために抵抗R1,R2およびトランジスタQ2が設けられているが、抵抗R2およびトランジスタQ2の代わりに他のゲート電位制御回路が設けられてもよい。
【0050】
(6-8)
上記実施の形態では、クロマトグラフ装置100が液体クロマトグラフ装置であるが、クロマトグラフ装置が超臨界流体クロマトグラフ装置等の他のクロマトグラフ装置であってもよい。
【0051】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、ランプ点灯回路12、モータ駆動回路13またはヒータ駆動回路14が動作部の例であり、トランジスタQ1が第1のスイッチ素子の例であり、ゲートが制御端子の例であり、コンデンサC1が容量素子の例であり、抵抗R1が第1の抵抗素子の例であり、抵抗R2が第2の抵抗素子の例であり、抵抗R3が第3の抵抗素子の例であり、抵抗R4が第4の抵抗素子の例である。トランジスタQ2が第2のスイッチ素子の例であり、電源電圧Vccが直流電圧の例であり、接地電位GNDが基準電位の例であり、ノードN1~N4が第1~第4のノードの例である。上記実施の形態では、請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0052】
(8)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項) 一態様に係るクロマトグラフ装置は、
クロマトグラフを構成する複数の動作部と、
直流電力の供給をオンおよびオフするロードスイッチ回路とを備え、
前記複数の動作部のうち少なくとも1つの動作部は、前記ロードスイッチ回路に負荷回路として接続され、
前記ロードスイッチ回路は、
直流電圧を受ける第1のノードと前記負荷回路との間に接続され、第2のノードの電位を受ける制御端子を有する第1のスイッチ素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された容量素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された第1の抵抗素子と、
前記第1のスイッチ素子のターンオフ時に前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電流を流すバイパス回路とを含んでいてよい。
【0053】
第1項に記載のクロマトグラフ装置によれば、ロードスイッチ回路における第1のスイッチ素子がターンオンすると、直流電圧を受ける第1のノードと負荷回路との間が導通する。それにより、負荷回路への直流電力の供給がオンする。この場合、容量素子の時定数により負荷回路に与えられる電圧波形が鈍る。それにより、第1のスイッチ素子のターンオン時の突入電流が低減される。
【0054】
第2のスイッチ素子がターンオフすると、直流電圧を受ける第1のノードと負荷回路とが遮断される。それにより、負荷回路への直流電力の供給がオフする。このとき、バイパス回路により第1のノードと第2のノードとの間で電流が流される。それにより、第1のスイッチ素子の制御端子の電位が急速に変化する。そのため、第1のスイッチ素子のターンオフ時間が短くなる。したがって、第1のスイッチ素子のターンオフ時における第1のスイッチ素子の発熱が抑制されるので、第1のスイッチ素子に大きな定格電流容量が要求されない。それにより、第1のスイッチ素子のコストを低減することができる。
【0055】
その結果、ロードスイッチ回路およびクロマトグラフ装置において突入電流を低減するとともに低コストで部品の発熱を抑制することが可能となる。
(第2項)
第1項に記載のクロマトグラフ装置において、
前記バイパス回路は、前記第1のスイッチ素子のターンオフ時に前記第1のノードから前記第2のノードへ電流を流す一方向性導通回路を含んでもよい。
【0056】
第2項に記載のクロマトグラフ装置によれば、簡単な構成を有する一方向性導通回路により、ターンオン時の第1のスイッチ素子の動作に影響を与えることなく、ターンオフ時に第1のスイッチ素子の制御端子の電位を急速に変化させることができる。
(第3項) 第2項に記載のクロマトグラフ装置において、
前記ロードスイッチ回路は、
前記第2のノードと第3のノードとの間に接続された第2の抵抗素子をさらに含み、
前記一方向性導通回路は、
前記第1のノードと前記第3のノードとの間に接続された第3の抵抗素子と、
前記第3のノードと前記第2のノードとの間に接続されたダイオードとを含んでもよい。
【0057】
第3項に記載のクロマトグラフ装置によれば、簡単な構成によりターンオフ時に第1のノードから第2のノードに電流を流すことができる。
(第4項) 第3項に記載のクロマトグラフ装置において、
前記ロードスイッチ回路は、
前記第3のノードと基準電位に設定される第4のノードとの間に接続された第2のスイッチ素子と、
前記ダイオードのアノードと前記第2のノードとの間に接続された第4の抵抗素子をさらに含んでもよい。
【0058】
第4項に記載のクロマトグラフ装置によれば、第2のスイッチ素子のターンオンまたはターンオフに応答して第1のスイッチ素子がターンオンまたはターンオフする。第1のスイッチ素子のターンオン時に第1のノードから容量素子およびダイオードを経由して突入電流が流れる場合でも、第4の抵抗素子により第2のスイッチ素子に流れる突入電流が低減される。それにより、第2のスイッチ素子に大きな定格電流容量が要求されない。その結果、部品コストおよび部品サイズを低減することが可能となる。
(第5項) 第1項~第4項のいずれか一項に記載のクロマトグラフ装置において、
前記クロマトグラフは、
分析カラムと、
前記分析カラムにより分離された試料の成分を検出する検出器と、
電源回路とを含み、
前記検出器は、前記ロードスイッチ回路および前記負荷回路を含み、
前記ロードスイッチ回路は、前記電源回路と前記負荷回路との間に接続されてもよい。
(第6項) 他の態様に係るロードスイッチ回路は、
クロマトグラフ装置の負荷回路への直流電力の供給をオンおよびオフするロードスイッチ回路であって、
直流電圧を受ける第1のノードと前記負荷回路との間に接続され、第2のノードの電位を受ける制御端子を有する第1のスイッチ素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された容量素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された第1の抵抗素子と、
前記第1のスイッチ素子のターンオフ時に前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電流を流すバイパス回路とを含んでいてよい。
【0059】
第6項に記載のロードスイッチ回路によれば、第1のスイッチ素子がターンオンすると、直流電圧を受ける第1のノードと負荷回路との間が導通する。それにより、負荷回路への直流電力の供給がオンする。この場合、容量素子の時定数により負荷回路に与えられる電圧波形が鈍る。それにより、第1のスイッチ素子のターンオン時の突入電流が低減される。
【0060】
第2のスイッチ素子がターンオフすると、直流電圧を受ける第1のノードと負荷回路とが遮断される。それにより、負荷回路への直流電力の供給がオフする。このとき、バイパス回路により第1のノードと第2のノードとの間で電流が流される。それにより、第1のスイッチ素子の制御端子の電位が急速に変化する。そのため、第1のスイッチ素子のターンオフ時間が短くなる。したがって、第1のスイッチ素子のターンオフ時における第1のスイッチ素子の発熱が抑制されるので、第1のスイッチ素子に大きな定格電流容量が要求されない。それにより、第1のスイッチ素子のコストを低減することができる。
【0061】
その結果、ロードスイッチ回路において突入電流を低減するとともに低コストで部品の発熱を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
10…クロマトグラフィ検出器,11,11a…ロードスイッチ回路,12…ランプ点灯回路,13…モータ駆動回路,14…ヒータ駆動回路,15…負荷回路,16…ランプ,17…ステッピングモータ,18…直流ヒータ,19…フローセル,20…光検出器,30…検出器制御部,50…分析制御部,51…操作部,52…表示部,60…電源回路,100…クロマトグラフ装置,110…ポンプ,111…移動相容器,112…廃液容器,120…試料導入部,130…導入ポート,140…分析カラム,150…カラムオーブン,B1…バイパス回路,C1,C2…コンデンサ,D1…ダイオード,GND…接地電位,L1,L11…一点鎖線,L2,L12…実線,N1~N4…ノード,PK1,PK2,PK11,PK12…ピーク,Q1,Q2…トランジスタ,R1~R6…抵抗,SW…切替信号,Vcc…電源電圧,t1~t6,t11~t16…時点