(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/36 20060101AFI20221012BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20221012BHJP
F01N 3/025 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
F01N3/36 B
F01N3/24 R
F01N3/36 C
F01N3/025 101
(21)【出願番号】P 2019007676
(22)【出願日】2019-01-21
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】長田 英樹
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-87629(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2441934(EP,A2)
【文献】特開2010-31802(JP,A)
【文献】国際公開第2011/048703(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0198824(US,A1)
【文献】特開2009-293518(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0301062(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008055056(DE,A1)
【文献】特開2018-96314(JP,A)
【文献】特開2012-127301(JP,A)
【文献】特開2010-24981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/36
F01N 3/24
F01N 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管燃料噴射器が取り付けられた機械で内燃機関の燃焼状態を制御する制御装置であって、
前記排気管燃料噴射器が取り外された状態から前記排気管燃料噴射器が取り付けられた状態に変更された場合に、前記内燃機関の燃焼状態を通常の燃焼状態から煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更する
事を特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関の燃焼状態が前記通常の燃焼状態から前記煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更された後の前記内燃機関の駆動時間が所定の累積時間に到達した場合に、前記内燃機関の燃焼状態を前記煤を意図的に発生させる燃焼状態から前記通常の燃焼状態に戻す
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記排気管燃料噴射器が取り外された状態から前記排気管燃料噴射器が取り付けられた状態への変更は、外部装置からの入力信号を基に検出する
請求項1又は2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
排気管燃料噴射器が取り付けられた機械で内燃機関の燃焼状態を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の排ガス規制の強化に伴って、内燃機関の排気を今迄以上に浄化すべく、排気管にフィルタを取り付ける事で内燃機関の排気に含有された粒子状物質を捕集する事が為されている。
【0003】
フィルタに捕集された粒子状物質の捕集量が規定量に到達した場合は、フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼させる事でフィルタに捕集された粒子状物質を除去する必要が有る。
【0004】
フィルタに捕集された粒子状物質を効率的に燃焼させるには、排気温度を効率的に上昇させる必要が有る為、フィルタの排気上流側に排気管燃料噴射器を取り付ける事で排気管で燃料を噴射させ、排気温度を効率的に上昇させる技術が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-96314号公報
【文献】特開2012-127301号公報
【文献】特開2010-24981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然し乍ら、内燃機関の組み立て後(排気管燃料噴射器を新規に取り付けた後)や排気管燃料噴射器の交換後は、排気から排気管燃料噴射器への熱伝達を阻害する煤が排気管燃料噴射器の表面に全く堆積していない為、排気管燃料噴射器が熱害を受け損傷し易い。
【0007】
以上の事情に鑑み、内燃機関の組み立て後や排気管燃料噴射器の交換後に排気管燃料噴射器が熱害を受け損傷する事を抑制する事が出来る制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
排気管燃料噴射器が取り付けられた機械で内燃機関の燃焼状態を制御する制御装置であって、前記排気管燃料噴射器が取り外された状態から前記排気管燃料噴射器が取り付けられた状態に変更された場合に、前記内燃機関の燃焼状態を通常の燃焼状態から煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更する制御装置を提供する。
【0009】
前記内燃機関の燃焼状態が前記通常の燃焼状態から前記煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更された後の前記内燃機関の駆動時間が所定の累積時間に到達した場合に、前記内燃機関の燃焼状態を前記煤を意図的に発生させる燃焼状態から前記通常の燃焼状態に戻す事が望ましい。
【0010】
前記排気管燃料噴射器が取り外された状態から前記排気管燃料噴射器が取り付けられた状態への変更は、外部装置からの入力信号を基に検出する事が望ましい。
【発明の効果】
【0011】
内燃機関の組み立て後や排気管燃料噴射器の交換後に排気管燃料噴射器が熱害を受け損傷する事を抑制する事が出来る制御装置を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る制御装置の構成を説明する図である。
【
図2】実施の形態に係る制御装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を添付図面に順って説明する。
【0014】
図1に示す様に、制御装置100は、排気管燃料噴射器101が取り付けられた機械(以下、車両)102で内燃機関103の燃焼状態を制御するものであって、電子制御装置(ECU;
Electronic
Control
Unit)や電気回路又は電子回路で構成される。
【0015】
排気管燃料噴射器101は、排気管104に取り付けられたフィルタ105の排気上流側に取り付けられる。排気管燃料噴射器101は、排気管104で燃料を噴射する事で排気温度を効率的に上昇させ、フィルタ105に捕集された粒子状物質(PM;Particulate Matter)の燃焼を促進させる。内燃機関103は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンで構成される。
【0016】
制御装置100は、排気管燃料噴射器101が取り外された状態から排気管燃料噴射器101が取り付けられた状態に変更された場合に、内燃機関103の燃焼状態を通常の燃焼状態から煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更する。
【0017】
通常の燃焼状態とは、内燃機関103がガソリンエンジンであれば、内燃機関103の燃焼効率を最大化すべく、実空燃比を理論空燃比に近付ける様に制御された理想的な燃焼状態を意味する。尚、内燃機関103がディーゼルエンジンであれば、本来の燃料噴射量マップに従って燃料噴射を行った場合の燃焼状態を意味する。即ち、内燃機関103の燃焼状態は、原則的には、通常の燃焼状態と成る様に制御される。
【0018】
煤を意図的に発生させる燃焼状態とは、煤を通常の燃焼状態よりも多く発生させる様に制御された非理想的な燃焼状態を意味する。煤を意図的に発生させる燃焼状態は、一般的には、回避すべき燃焼状態と言え、本来は、内燃機関103の燃焼状態が煤を意図的に発生させる燃焼状態と成る様に制御される事は無い。
【0019】
煤を意図的に発生させる燃焼状態は、実空燃比を理論空燃比よりも低下させたり、着火点を通常の着火点よりも遅角化させたりする事で実現される。実空燃比は、吸気絞り弁106の開度(吸入空気量)や筒内燃料噴射器107の通電時間(燃料噴射量)を制御する事で調整する事が出来る。着火点は、筒内燃料噴射器107の通電時期を調整する事で変化させる事が出来る。
【0020】
車両102が排気再循環(EGR;Exhaust Gas Recirculation)装置を備える場合は、煤が排気再循環流路に流入する事を防止する為、煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更する前に排気再循環弁を閉じておく事が望ましい。
【0021】
更に言えば、内燃機関103の運転に支障が無い限り、煤が排気管燃料噴射器101に到達する迄に通過する経路を除く他の経路に煤が流入する事が無い様に他の経路を閉じておく事が望ましい。
【0022】
制御装置100は、内燃機関103の燃焼状態が通常の燃焼状態から煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更された後の内燃機関103の駆動時間が所定の累積時間に到達した場合に、内燃機関103の燃焼状態を煤を意図的に発生させる燃焼状態から通常の燃焼状態に戻す。
【0023】
所定の累積時間は、排気管燃料噴射器101の表面に熱害を阻害するのに十分な量の煤が堆積する時間を基に決定される。従って、煤を意図的に発生させる燃焼状態が所定の累積時間に亘って断続的又は継続的に維持された場合は、排気管燃料噴射器101の表面に熱害を阻害するのに十分な量の煤が堆積される。
【0024】
例えば、内燃機関103の燃焼状態が通常の燃焼状態から煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更された直後に内燃機関103が停止され、排気管燃料噴射器101の表面への煤の堆積が不十分な場合にも、次に内燃機関103が始動された時に内燃機関103の燃焼状態が煤を意図的に発生させる燃焼状態に維持される為、排気管燃料噴射器101の表面への煤の堆積が確実に行われる。
【0025】
排気管燃料噴射器101が取り外された状態から排気管燃料噴射器101が取り付けられた状態への変更は、外部装置108からの入力信号を基に検出する事が出来る。
【0026】
例えば、排気管燃料噴射器101の交換後に、整備士が外部装置108を使用し制御装置100に信号を手動で送信する事で実現される。更に、制御装置100が排気管燃料噴射器101の取り付けや取り外しを自ら自動で検出する機能を有する事も出来る。
【0027】
次に、制御装置100の動作を具体的に説明する。
【0028】
図2に示す様に、ステップS101では、外部装置108からの入力信号を基に排気管燃料噴射器101が取り外された状態から排気管燃料噴射器101が取り付けられた状態に変更されたか否かを検出する。具体的に言えば、外部装置108からの入力信号が存在する場合に、制御装置100は、排気管燃料噴射器101が取り外された状態から排気管燃料噴射器101が取り付けられた状態に変更されたと判定すると共に、外部装置108からの入力信号を受信した事を示す応答信号を外部装置108に送信し、外部装置108は、制御装置100からの応答信号を受信した場合に、制御装置100への入力信号の送信を停止(リセット)する。
【0029】
排気管燃料噴射器101が取り外された状態から排気管燃料噴射器101が取り付けられた状態への変更が検出された場合は、ステップS102に進み、変更が検出されなかった場合は、リターンする。
【0030】
ステップS102では、フラグがオフであればフラグをオンにすると共に、内燃機関103の燃焼状態を通常の燃焼状態から煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更する。
【0031】
次のステップS103では、内燃機関103の燃焼状態が通常の燃焼状態から煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更された後の内燃機関103の駆動時間が所定の累積時間に到達したか否かを判定する。
【0032】
内燃機関103の燃焼状態が通常の燃焼状態から煤を意図的に発生させる燃焼状態に変更された後の内燃機関103の駆動時間が所定の累積時間に到達したと判定された場合は、ステップS104に進み、内燃機関103の駆動時間が所定の累積時間に到達したと判定されなかった場合は、ステップS103を繰り返す。
【0033】
ステップS104では、フラグをオフにすると共に、内燃機関103の燃焼状態を煤を意図的に発生させる燃焼状態から通常の燃焼状態に戻す。
【0034】
尚、最初のステップS105で、フラグがオンであるか否かを判定し、フラグがオンである場合は、ステップS102に進み、フラグがオフである場合は、ステップS101に進む事で、内燃機関103の駆動時間が所定の累積時間に到達する前に内燃機関103が停止された場合でも、内燃機関103の駆動時間が所定の累積時間に到達する迄、煤を意図的に発生させる燃焼状態を継続させる事が出来る。
【0035】
以上に説明された様に、制御装置100では、内燃機関103の組み立て後や排気管燃料噴射器101の交換後に、内燃機関103の燃焼状態を本来と異なる燃焼状態に制御し、排気から排気管燃料噴射器101への熱伝達を阻害する煤を排気管燃料噴射器101の表面に堆積させる為、排気管燃料噴射器101が熱害を受け損傷する事を抑制する事が出来る。
【0036】
尚、制御装置100は、車両102の内燃機関103の他、産業機械の産業エンジン等にも適用する事が出来る。
【符号の説明】
【0037】
100 制御装置
101 排気管燃料噴射器
102 車両
103 内燃機関
104 排気管
105 フィルタ
106 吸気絞り弁
107 筒内燃料噴射器
108 外部装置